説明

カラーフィルタの研磨装置及びその研磨方法

【課題】ガラス基板上に樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次形成され、樹脂ブラックマトリックスの端部上に突起を有するカラーフィルタの突起を研磨除去する際に、カラーフィルタ搬送方向に対して一定ピッチで発生する研磨ムラの発生がないカラーフィルタの研磨方法を提供する。
【解決手段】液晶表示装置用のカラーフィルタ30の製造に用いる研磨装置で、ステージと、その搬送ライン上にローダー、研磨液供給部、研磨部、洗浄及び乾燥部、アンローダーと配置したカラーフィルタの研磨装置であって、研磨部に矩形の研磨ヘッド12が複数台を基板搬送方向へ配置し、矩形の研磨ヘッドがカラーフィルタ面に接触させ、基板面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨方法であって、各矩形の研磨ヘッドが研磨を開始する位置をずらすためのずらし量の距離だけ間隔を離して配置するカラーフィルタの研磨装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの研磨方法に関するものであり、特に、樹脂ブラックマトリックスと着色画素との重なりにより生じる突起を研磨除去する際に、大サイズのガラス基板であっても、生産性を向上させ、より平坦化するカラーフィルタの研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を模式的に示した図であり、(a)平面図であり、(b)は、図2(a)のX−X’線における側断面図である。図2(a)〜(b)に示すように、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ガラス基板(1)上にブラックマトリックス(31)、着色画素(32)が形成されたものである。
【0003】
ブラックマトリックス(31)は、遮光性を有し、開口部をマトリックス状に配置したものである。着色画素(32)は、例えば、R(赤)色画素(32a)と、G(緑)色画素(32b)と、B(青)色画素(32c)のフィルタ機能を有するものである。ブラックマトリックスは、カラーフィルタの着色画素の位置を定め、大きさを均一なものとし、また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。
【0004】
このブラックマトリックス(31)は、ガラス基板(1)上にブラックマトリックスの材料としてのクロム(Cr)、酸化クロム(CrOX)などの金属、もしくは金属化合物を薄膜状に成膜して、成膜された薄膜上に、例えば、ポジ型のフォトレジストを用いてエッチングレジストパターンを形成し、次に、成膜された金属薄膜の露出部分のエッチングと、そのエッチングレジストパターンの剥膜を行い、Cr、CrOXなどの金属薄膜からなるブラックマトリックス(31)に形成されたものである。
【0005】
また、着色画素(32)の形成は、このブラックマトリックス(31)に形成されたガラス基板(1)上に、例えば、顔料などの色素を分散させたネガ型のフォトレジストを用いて塗布膜を設け、この塗布膜への露光、現像によって着色画素を形成するといった方法がとられている。
【0006】
また、図3は、他のカラーフィルタの側断面図であり、ブラックマトリックスの材料として樹脂を用いた一例を示すものである。このカラーフィルタは、図2に示すカラーフィルタと同様に、ガラス基板(1)上にブラックマトリックス(51)と、着色画素(32a、32b、32c)が形成されたものである。このブラックマトリックス(51)は、ガラス基板(1)上に、例えば、ブラックマトリックス形成用の黒色感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ法によって形成されたものであり、樹脂を用いて形成されたブラックマトリックスを樹脂ブラックマトリックス(51)と称している。
【0007】
樹脂ブラックマトリックスは、例えば、テレビなどのように、高輝度なバックライトを用いた際に、クロムなどの金属をブラックマトリックスとして用いたときに起こる液晶表示装置での内部反射を抑制するために、低反射の樹脂ブラックマトリックスが要望される場合、或いは、例えば、IPS(In Plane Swiching)方式に用いたときに起こる液晶表示装置での電界の乱れを抑制するために、高絶縁性が要望される場合などに採用されていた。
【0008】
カラーフィルタを面付けして大量に製造する際の、ガラス基板が、大サイズ化するに伴
い、ブラックマトリックスの材料としてクロムなどの金属を用い真空装置で薄膜を成膜するブラックマトリックスよりも、黒色感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ法によって形成する樹脂ブラックマトリックスの方が価格的に有利なものとなる。次第に樹脂ブラックマトリックスへと移行が進んでいる。
【0009】
樹脂ブラックマトリックスは、クロムなどの金属を用いたブラックマトリックスのように、膜厚100nm〜200nm程度の薄膜では高濃度を得ることはできず、例えば、0.5μm〜5.0μm程度の厚さにして必要な高濃度を得るようにしている。樹脂ブラックマトリックスの膜厚が厚くなると、図3に示すように、樹脂ブラックマトリックス(51)上にその周縁部を重ねて形成された着色画素(32)は、周縁部が樹脂ブラックマトリックス(51)上にて突起(53)となる。この突起(53)は、カラーフィルタの表面を凹凸のあるものとし、平坦性を悪化させる。このような突起(53)のある、表面の平坦性が悪化したカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、突起の影響によって液晶分子の配向が乱され、表示ムラなど表示品質を低下させることになる。
【0010】
このようなカラーフィルタ表面の突起(53)を除去する、或いは液晶分子の配向に影響のない程度にまで突起の高さを低くするための、カラーフィルタ表面の突起を除去する研磨方法を説明する。
【0011】
図4は、カラーフィルタの研磨方法において用いられる研磨装置の一例の概念を示す平面図であり、(b)は、(a)のX−X’線での側断面図である。
【0012】
図4(a)、(b)に示すように、この研磨装置(10)は、研磨液供給ノズル(11)が設けられた研磨液供給部と、矩形の研磨ヘッド(12)が設けられた研磨部(3)とで構成されている。矩形の研磨ヘッド(12)は、研磨ヘッド(12)を回動する円運動軸と、その上部で一体的に連結されている。ガラス基板を搬送するコロコンベアが、図中、左方の前工程(着色画素を形成する工程)から右方の後工程(水洗工程)へと、研磨装置の研磨液供給部(2)と研磨部(3)を貫いて設けられている。図4の一例では、下定盤は、ガラス基板の着脱が容易な多孔質定盤とし、研磨ヘッド(12)の下支えとなっている。
【0013】
ガラス基板(30)は、白太矢印で示すように、左方の前工程から搬送され、コロコンベアで搬送されながら研磨液供給部(2)において、研磨液供給ノズル(11)から研磨液が供給され、研磨部(3)において、研磨ヘッド(12)のガラス基板(30)面への接触回動によってカラーフィルタ面が平坦化され、右方の後工程(水洗工程)へと搬送される。
【0014】
図4(b)は、カラーフィルタの研磨方法において用いられる研磨装置の側断面図である。図4(b)に示すように、ガラス基板(30)は、図中、左方の前工程(着色画素を形成する工程)からコンベアによって搬送される。水供給ノズルによって、搬送ベルトコンベア上には水が供給されている。搬送ベルト上に載置されるカラーフィルタ基板(30)は、搬送ベルト上の水の界面張力によって、搬送ベルト上に固定された状態になる。
【0015】
研磨液供給ノズル(11)から研磨液の供給を受けたガラス基板(30)は、搬送ベルトコンベアを介した下定盤上で、研磨ヘッド(12)の接触回動によってカラーフィルタ面が平坦化され、右方の後工程(水洗工程)へとコロコンベアによって搬送される。前記研磨ヘッドの接触回動とは、研磨パットは基板に平行に、研磨パットの状態を維持したまま、研磨パッド全体を円運動する研磨方法である。
【0016】
従来のカラーフィルタの研磨方法は、矩形の研磨ヘッドをカラーフィルタ面に接触させ
、回動させることにより平坦化する方法である。研磨ヘッドを回動による研磨方法では、研磨時のカラーフィルタの搬送方向に対して直交する方向に研磨ムラが発生する問題がある。液晶表示装置では表示ムラなど表示品質を低下させることになる。
【0017】
図5を参照に、研磨ヘッドの接触回動と研磨ムラについて説明する。ガラス基板は、基板搬送方向へ水平搬送しながら、研磨ヘッドは、円運動の回動してカラーフィルタ面を研磨しており、この円運動の1サイクルの研磨時、研磨ヘッドの回転方向が逆向きとなるエリアがある。例えば、図5(a1)〜(a3)及び(b1)〜(b3)は、1サイクル間の研磨パッドの位置移動を説明する平面図である。(a1)〜(a3)は、ガラス基板の搬送方向と研磨ヘッドの研磨方向が逆方向となる。一方図5(b1)〜(b3)は、研磨ヘッドの研磨方向と基板搬送方向が同方向となる。そのため、(a1)〜(a3)の逆方向は、その研磨量が多くなり、(b1)〜(b3)の同方向では、相対速度がダウンし、研磨量が少なくなる。この場合、研磨後のガラス基板では、研磨ヘッドと平行する方向、すなわち前半部では研磨量が多く、後半では、研磨量が減少する1サイクルとなる。そのため、基板搬送方向と平行する方向に、研磨量に差ができ、一定ピッチのムラとして可視化される。
【0018】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2005−288649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ガラス基板上に樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次形成され、樹脂ブラックマトリックスの端部上に突起を有するカラーフィルタの突起を研磨除去する際に、研磨ムラの発生がないカラーフィルタの研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係る発明は、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造に用いる研磨装置であって、
カラーフィルタ面に接触させ、
基板面と平行に回動する矩形の研磨ヘッドを複数台、カラーフィルタ搬送方向に対して直交方向へ配置したことを特徴とするカラーフィルタの研磨装置である。
【0021】
本発明の請求項2に係る発明は、研磨されるカラーフィルタ面を上向きにしてカラーフィルタを水平搬送しながら、
研磨部に前置きして設けられた研磨液供給部にて研磨液をカラーフィルタ面に供給し、
研磨部にて基板搬送方向と直交する方向に配置した矩形の研磨ヘッドをカラーフィルタ面に接触させ、基板面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨方法において、
複数台の矩形の研磨ヘッドを使用し、基板搬送方向と直交する方向に配置した各矩形の研磨ヘッドをカラーフィルタ面に接触させ、カラーフィルタ面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨方法であって、
各矩形の研磨ヘッドがカラーフィルタに対して研磨を開始する位置をずらすことによりカラーフィルタ面を平坦化することを特徴とするカラーフィルタの研磨方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカラーフィルタの研磨方法は、研磨されるカラーフィルタ面を上向きにしてカラーフィルタを水平搬送し、研磨部に前置きして設けられた研磨液供給部にて研磨液をカ
ラーフィルタ面に供給し、研磨部にて複数台の矩形の研磨ヘッドを使用し、各研磨ヘッドの研磨を開始する位置をずらしたことにより、基板搬送方向の研磨ムラのピッチを狭くし、研磨ムラの可視化を防ぐことで研磨ムラが消去できる、研磨作業の生産性を向上させたカラーフィルタの研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明のカラーフィルタの研磨方法を説明する図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面断面図であり、(c)は、側断面図である。
【0025】
本発明のカラーフィルタの研磨装置は、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造に用いる研磨装置で、研磨液供給部と、洗浄及び乾燥部との間に、配置した研磨部より構成される装置である。
【0026】
本発明のカラーフィルタの研磨装置研磨部は、矩形の研磨ヘッドが複数台、例えば3台研磨ヘッド12a、12b、12cを基板搬送方向へ配置し、矩形の研磨ヘッドがカラーフィルタ面に接触させ、基板面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨装置である。
【0027】
各矩形の研磨ヘッド12bは、基準の研磨ヘッド12aとの研磨を開始する位置をずらすため研磨を開始する(研磨ヘッドの回転を開始する)位置をずらしたカラーフィルタの研磨装置である。
【0028】
複数の研磨ヘッド間の前記ずらし量は、一台目の研磨ヘッド12aの研磨開始位置を基準位置とし、二台目以降は、
Zi = P(Ki−1)/n ――――式1
Zi:研磨ヘッドi番目のずらし量(単位mm)
P:ピッチ距離(単位mm)
n:研磨パッドの台数
Ki:i番目の研磨ヘッド(i=1,2,3,)
1=1,K2=2,K3=3
式1を用いて、そのずらし量を算出し、そのずらし量の位置で2番目の研磨ヘッド12bが研磨を開始し、次いで、3番目の研磨ヘッド12cを式1から算出し研磨開始位置を設定したカラーフィルタの研磨装置である。つまり、2番目以降の研磨ヘッドの研磨を開始する位置を、1つの研磨ヘッドで発生するムラピッチ範囲内で基板搬送方向に対して均等にずらす。
【0029】
カラーフィルタの研磨では、樹脂膜、すなわち、粘弾性のある膜を研磨する際には、その粘弾性の程度によるが、研磨ヘッドが剛体板と弾性体の複合構造であると、更に良好な、すなわち、研磨が面内で更に均一な結果が得られる。研磨ヘッドの構造例は、研磨ヘッドの上部が剛体板、下部が弾性体の組み合わせとするとよい。
【0030】
また、本発明による研磨方法においては、ガラス基板(カラーフィルタ)(1)の水平搬送の速度が、0.1〜20m/分であると良好に適用できる。また、研磨ヘッドのガラス基板(カラーフィルタ)(1)面への接触回転動の速度が、5〜1000rpmであると良好に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のカラーフィルタの研磨方法を説明する図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面断面図であり、(c)は、側断面図である。
【図2】カラーフィルタの一例を模式的に示した(a)は、平面図である。(b)は、(a)に示すカラーフィルタのX−X’線における側断面図である。
【図3】他のカラーフィルタの側断面図である。
【図4】従来のカラーフィルタの研磨方法において用いられる研磨装置の一例の概念を示す図であり、(a)は、平面図である。(b)は、図1(a)のX−X’線での側断面図である。
【図5】従来のカラーフィルタの研磨ヘッドの回動を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…ガラス基板
2…研磨液供給部
3…研磨部
10…研磨装置
11…研磨液供給ノズル
12…矩形の研磨ヘッド
12a…矩形の研磨ヘッド
12b…矩形の研磨ヘッド
12c…矩形の研磨ヘッド
15…水供給ノズル
22…剛体板
23…弾性体
30…ガラス基板(カラーフィルタ)
31…ブラックマトリックス
32…着色画素
32a…R色画素
32b…G色画素
32c…B色画素
51…樹脂ブラックマトリックス
53…突起
70…カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置用のカラーフィルタの製造に用いる研磨装置であって、
カラーフィルタ面に接触させ、
基板面と平行に回動する矩形の研磨ヘッドを複数台、カラーフィルタ搬送方向に対して直交方向へ配置したことを特徴とするカラーフィルタの研磨装置。
【請求項2】
研磨されるカラーフィルタ面を上向きにしてカラーフィルタを水平搬送しながら、
研磨部に前置きして設けられた研磨液供給部にて研磨液をカラーフィルタ面に供給し、
研磨部にて基板搬送方向と直交する方向に配置した矩形の研磨ヘッドをカラーフィルタ面に接触させ、基板面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨方法において、
複数台の矩形の研磨ヘッドを使用し、基板搬送方向と直交する方向に配置した各矩形の研磨ヘッドをカラーフィルタ面に接触させ、カラーフィルタ面と平行に回動させることによりカラーフィルタ面を平坦化するカラーフィルタの研磨方法であって、
各矩形の研磨ヘッドがカラーフィルタに対して研磨を開始する位置をずらすことによりカラーフィルタ面を平坦化することを特徴とするカラーフィルタの研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296288(P2008−296288A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141483(P2007−141483)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】