説明

カラー印刷物検査用蛍光ランプ

本発明は、一又は二以上の蛍光体含有層(4)でコーティングされ、ガス(7)で満たされたガラスエンベロープ(3)を含む蛍光ランプ(1)に関し、上述の蛍光ランプは、更に、上述のガスを放電可能な手段(6)を含む。上述の蛍光体含有層の組成は、少なくとも印刷の原色であるシアン、マゼンダ及びイエローに対して93より高い特殊演色評価数を得るために調整される。そのランプは、グラフィック業界におけるカラー印刷物の検査に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー印刷物を検査するためのそのような蛍光ランプに関する。より詳細には、本発明は、この目的のために、少なくとも一つの蛍光体含有層でコーティングされ、かつ、ガスで満たされたガラスエンベロープを含む蛍光ランプに関し、上述の蛍光ランプは、更に、上述のガスを放電できる手段を含む。
【背景技術】
【0002】
検査用途におけるランプにとって、与えられた照明が如何に良好に被照シーンにおける物体の色を表現するかを評価することは重要である。国際照明委員会(CIE: the Commision Internationale de L’Eclairage)は、演色評価数を規定する。計算の手順は、当該技術分野で一般的に知られるように、最初、基準ランプによって照らされた場合と考慮中のランプによって照らされた場合との条件の間で注意深く選ばれた8又は14のサンプルにおける色差ΔEを計算することである。そのとき、特殊演色評価数Rは、R=100−4.6ΔEによって計算される。
【0003】
これは、特定の色毎に演色の指標を与える。平均演色評価数Rは、最初の8つのカラーサンプルの平均である。最大値を100としながら、Rは、演色の視覚的印象に良く合う尺度を与える。例えば、80より大きなR値を有するランプは、屋内照明に適しているとされ、また、90より大きなR値を有するランプは、目視検査の目的に適しているとされる。GB1354315は、ガラス管であり、95より大きな演色の値Rを与えるためにその表面の内側に4種類の蛍光体を含む混合蛍光体の層を持つガラス管を含む蛍光ランプを開示する。高演色性蛍光ランプは、カラー印刷物を検査するための光源として使用されるよう提案される。
【特許文献1】英国特許第1354315号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カラー印刷物を検査するための改良された蛍光ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、一又は二以上の蛍光体含有層でコーティングされ、かつ、ガスで満たされたガラスエンベロープを含む蛍光ランプによって達成され、上述の蛍光ランプは、更に、上述のガスを放電できる手段を含み、そこで、上述の蛍光体含有層の組成は、少なくとも印刷の原色であるシアン、マゼンダ及びイエローに対して93より高い特殊演色評価数を得るために調整される。
【0006】
CMYKは、カラー印刷業で使用されるカラーモデルである。このカラーモデルは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の色素の混合に基づく。CMYKにおいて、マゼンダにイエローを加えるとレッドを生成し、マゼンダにシアンを加えるとブルーを生成し、シアンにイエローを加えるとグリーンを生成し、かつ、シアン、マゼンダ及びイエローの組み合わせがブラックを生成する。この黒色は、ブラックインクに比べると濃い黒ではないので、四色印刷は、CMYに加えてブラックインクを使用する。
【0007】
出願人は、印刷カラー原色のシアン、マゼンダ及びイエローが、平均演色評価数Rを決めるときに使用されるサンプルの一部でないことを認識した。従って、従来技術において使用されるような平均演色評価数Rの値は、カラー印刷物検査用の蛍光ランプの適合性を規定するには不適切な指標である。例えば、2003年の国際規格案ISO/DIS2846−5で規定されているように、印刷カラー原色の基準スペクトルに対して一又は二以上の蛍光体含有層の組成を調整することにより、93より大きい特殊演色評価数Rがシアン、マゼンダ及びイエローに対して取得され得る。そのような特性を持つ蛍光ランプは、カラー印刷物の検査のために、グラフィック業界において有利的に利用される。
【0008】
蛍光体含有層の混合のための組成は、少なくとも六つの蛍光体を含む。好適な例は、請求項3で規定される。
【0009】
本発明は、更に、カラー印刷物の検査のための、グラフィック業界におけるそのようなランプの使用に関する。
【0010】
本発明は、更に、本発明に従った好適な実施例を概略的に示す添付図を参照して図解される。当然のことながら、本発明は、如何なる方法であれ、この特定の、又は、好適な実施例に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、8つの異なる基準色の反射スペクトルを示す。横軸に沿って波長が示され、一方で、縦軸に沿って任意の単位で反射率が表される。典型的には、蛍光ランプは、国際照明委員会(CIE)によって規定される8つのサンプルを用いることによって、それらのカラー表現に対して最適化される。概して、結果として生ずる、これら蛍光ランプのための蛍光体の混合は、個別の色を最適に適合させるための妥協案である。
【0012】
国際標準化機構は、四色印刷のための印刷インクの使用に対する国際規格案を2003年に発行した。上述の規格は、ISO/DIS2846−5“グラフィック技術−四色印刷のための印刷インクセットにおける色及び透明度”であり、その添付書類Bが図1を描画するために使用された。図1から観察できるように、シアン(C)、マゼンダ(M)及びイエロー(Y)の反射スペクトルは、Rを決定するための反射スペクトルとは相違する。結果的に、シアン、マゼンダ及びイエローに対する特殊演色評価数R、R、Rは、それぞれ最適ではないものとなる。
【0013】
本発明の一側面に従って、シアン、マゼンダ及びイエローに対する反射スペクトルは、シアン、マゼンダ及びイエローのための特殊演色評価数R、R、Rを最適化すべく、一又は二以上の蛍光体含有層の組成を調整するための計算を実行するために使用された。最初に、蛍光体の重量寄与が均等とされる。蛍光体のための個別の既知のランプスペクトルが入力される。これらのランプスペクトルは、それらランプスペクトルが既に水銀線を含むので、蛍光体パワースペクトルよりむしろ好まれることに注目である。そして、個別の蛍光体スペクトル、並びに、指定された相関性のある色温度における白色点、及び、93より大きな個別のRC、M、Yのような望ましい条件を考慮しながら、多重パラメータの数方程式が解かれる。
【0014】
これらの計算から、シアン、マゼンダ及びイエローに対する特殊演色評価数R、R、Rが得られ、それら全てが、それ自身の下限を含め、93より高い値、好適には93.5、好適には94、好適には95、好適には96、好適には97、好適には98を有する。
【0015】
それらの計算から、5000Kの相関色温度(CCT)が与えられると、そのような組成の例は、以下を含むこととなる。
【0016】
【表1】

その表から、調整された組成もまた、平均演色評価数Rに対するばかりでなく、R、R、Rに対しても優れた値を提供することが推測され得る。パラメータx及びyは、周知のCIE1931の色度図における座標を参照する。RCMYは、R、R及びRの平均値を示す。使用された蛍光体は、全てフィリップス社製蛍光体である。比率は、重量で与えられる。蛍光体の重量比は、有意にRCMYを減少させることなく、相対的に10%変化し得ると推定される。
【0017】
図2は、カラー印刷物2の検査に特に適した蛍光ランプ1を表示する。蛍光ランプ1は、好適には、低圧水銀蒸気放電の蛍光ランプ1であり、当該技術分野で一般的によく知られている。蛍光ランプ1は、透明で光透過型のガラス管、又は、円形断面を有するエンベロープ3を有する。エンベロープ3は、如何なる種類の透明及び/又は半透明の物質を含んでいてもよい。エンベロープ3の内表面は、本発明に従って蛍光体含有層4が備えられる。
【0018】
ランプ1は、両端に取り付けられるベース5により密閉され、かつ、間隔を空けられた一対の電極構造6(放電を提供する手段である。)は、それぞれベース5に搭載される。水銀及び不活性ガスである放電持続充填物7は、ガラス管3内に密封される。その不活性ガスは、典型的には、アルゴン、又は、低圧でのアルゴン及び他の希ガスの混合物であり、少量の水銀と組み合わさって、低蒸気圧の作動方法を提供する。
【0019】
蛍光体含有層4は、好適には、低圧水銀蒸気放電のランプで利用される。それは、当該技術分野で知られているような無電極の蛍光ランプばかりでなく、当該技術分野で知られているような有電極の蛍光ランプにおいても使用され得、そこにおいて、放電を提供するための手段は、高周波電磁エネルギー放射をもたらす構造である。
【0020】
本実施例では、蛍光体含有層が一つだけ存在する。層4は、六つの蛍光体、例えば、上表から選択されるものの混合物を含む。
【0021】
請求項においては、括弧の間に置かれる如何なる参照符号もそれら請求項を限定するものとして解釈されない。単語“含む”は、請求項に記されたもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。要素の前に来る単語“一”又は“一つの”は、そのような要素が複数存在することを除外しない。互いに異なる請求項で所定の手段が復唱されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが利益を得るために使用され得ないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】8つの異なる基準色並びにシアン、マゼンダ及びイエローの反射スペクトルを示す。
【図2】本発明の実施例に従った蛍光体含有層を持つ蛍光ランプを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は二以上の蛍光体含有層でコーティングされ、かつ、ガスで満たされたガラスエンベロープを含む蛍光ランプであって、該蛍光ランプは、更に、前記ガスを放電可能な手段を含み、前記蛍光体含有層の組成は、少なくとも印刷の原色であるシアン、マゼンダ及びイエローに対して93より高い特殊演色評価数を得るために調整される蛍光ランプ。
【請求項2】
少なくとも一つの前記蛍光体含有層が少なくとも六つの蛍光体の混合物を含む、
請求項1に従った蛍光ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体含有層は、
Ca10(PO:Sb;
Ca10(PO(F,Cl):Sb,Mn;
(Ce,Gd)MgB10:Tb;
(Ce,Gd,Tb)MgB10:Mn;
SrAl1425:Eu;
BaMgAl1017:Eu;
BaMgAl1627:Mn;及び
:Eu
から選択される蛍光体を含む、
請求項1に従った蛍光ランプ。
【請求項4】
カラー印刷物を検査するための請求項1に従った蛍光ランプの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−536280(P2008−536280A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506013(P2008−506013)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051042
【国際公開番号】WO2006/109220
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】