説明

カラー画像形成方法

【課題】肌色の色再現性に優れる画像を形成することのできるカラー画像形成方法の提供。
【解決手段】カラー画像形成方法は、各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも4色の静電荷像現像用トナーを用いてカラー画像を形成する方法であって、前記4色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびオレンジトナーであり、前記オレンジトナーは、当該オレンジトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ2 と、前記マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルおける吸収極大波長λ1 との差(λ1 −λ2 )が30〜120nmのものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によるカラー画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)を用いた電子写真方式による画像形成方法においては、従来からのモノクロ画像に加え、近年、カラー画像を形成する機会が増加している。電子写真方式によるカラー画像形成方法においては、印刷用の版を必要としないことから必要枚数分の印刷物をオンデマンドに作製できるので、軽印刷分野において広く利用されている。
【0003】
特にカタログや広告などのカラー画像を形成する場合においては、原物の色相をより忠実に再現することが求められている。そして、このようなカラー画像に人物などが含まれる場合においては、その人物の肌色の色再現性が画像全体の印象を大きく左右するため、より忠実な肌色の色再現性が求められている。
【0004】
一般に、電子写真方式によるカラー画像形成方法は、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーの3色のカラートナーの組み合わせにより色再現を行う。そして、このようなカラー画像形成方法において肌色の画像を形成するときには、イエロートナーによるトナー像とマゼンタトナーによるトナー像とを重ね合わせることにより色再現をする。
しかしながら、このような3色のカラートナーの組み合わせによるカラー画像形成方法においては、波長領域450〜520nmにおける吸収強度が不足しているため、より忠実な肌色を再現することが難しいという問題がある。
【0005】
具体的には、図1に示すように、従来公知のイエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーに係る各分光吸収スペクトルにおいては、特に(Y)で示すイエロートナーに係る分光吸収スペクトルと、(M)で示すマゼンタトナーに係る分光吸収スペクトルとが交わる領域、すなわち波長領域450〜520nmにおける吸光度が低いため、より忠実な肌色を再現することが難しいと考えられる。なお、図1において、(C)はシアントナーに係る分光吸収スペクトルを示す。
【0006】
特許文献1には、マゼンタトナーに含有される着色剤を改良して、肌色の色再現性の向上を図る技術が開示されているが、このようなマゼンタトナーによっても、肌色の色再現性は十分に満足されるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−215255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、肌色の色再現性に優れる画像を形成することのできるカラー画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカラー画像形成方法は、各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも4色の静電荷像現像用トナーを用いてカラー画像を形成する方法であって、
前記4色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびオレンジトナーであり、
前記オレンジトナーは、当該オレンジトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ2 と、前記マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルおける吸収極大波長λ1 との差(λ1 −λ2 )が30〜120nmのものであることを特徴とする。
【0010】
本発明のカラー画像形成方法においては、前記オレンジトナーが、当該オレンジトナーに係る吸収極大波長λ2 が450〜520nmのものであることが好ましい。
【0011】
本発明のカラー画像形成方法においては、前記マゼンタトナーが、当該マゼンタトナーに係る吸収極大波長λ1 が520〜570nmのものであることが好ましい。
【0012】
本発明のカラー画像形成方法においては、前記マゼンタトナーが、当該マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルと、前記イエロートナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルとの当該マゼンタトナーに係る吸収極大波長λ1 よりも短波長側における交点の吸光度が0.8以下のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカラー画像形成方法によれば、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーに加えオレンジトナーを用いると共に、当該オレンジトナーが、マゼンタトナーとの関係において特定範囲の吸収極大波長を有するものであることにより、波長領域450〜520nmにおける吸収強度が十分に得られるので、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来公知のイエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーに係る各分光吸収スペクトルの一例を示す図である。
【図2】本発明のカラー画像形成方法に使用されるカラー画像形成装置の構成の要部の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
<カラー画像形成方法>
本発明のカラー画像形成方法は、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも4色のトナーを用いてカラー画像を形成する方法であって、前記4色のトナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびオレンジトナーであり、前記オレンジトナーは、当該オレンジトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ2 と、前記マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルおける吸収極大波長λ1 との差(λ1 −λ2 )が30〜120nmのものである。
また、オレンジトナーは、差(λ1 −λ2 )が40〜80nmのものであることがより好ましい。
【0017】
差(λ1 −λ2 )が上記範囲であることにより、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができる。
差(λ1 −λ2 )が30nm未満である場合においては、オレンジトナーに係る吸収領域がマゼンタトナーに係る吸収領域と接近して、波長領域450〜520nmにおける吸収強度が十分に得られないために、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができない。一方、差(λ1 −λ2 )が120nmを超える場合においては、オレンジトナーに係る吸収領域がイエロートナーに係る吸収領域と接近して、波長領域450〜520nmにおける吸収強度が十分に得られないために、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができない。
【0018】
本発明において、「吸収極大波長」とは、具体的には、「PODグロスコート紙(128g/m2 )」(王子製紙社製)上に形成されたトナー付着量4.0g/m2 の画像の分光吸収スペクトルにおいて、吸光度(abs.値)の最大値に対して4/5の吸光度となる長波長側の波長と短波長側の波長との平均値をいう。なお、吸光度(abs.値)は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてφ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとする。
【0019】
本発明のカラー画像形成方法においては、図1に示すような分光吸収スペクトルにおいて、マゼンタトナーに係る分光吸収スペクトルとイエロートナーに係る分光吸収スペクトルとの交点の吸光度(abs.値)が0.8以下であることが好ましい。ただし、このときの交点とは、マゼンタトナーに係る吸収極大波長λ1 よりも短波長側における交点のことをいう。
また、「マゼンタトナーに係る分光吸収スペクトル」、「イエロートナーに係る分光吸収スペクトル」とは、具体的には、「PODグロスコート(128g/m2 )」(王子製紙社製)上に形成された、マゼンタトナー単色またはイエロートナー単色によるトナー付着量4.0g/m2 の画像における、各波長の上述の測定方法により測定される吸光度(abs.値)の分布をいう。
マゼンタトナーに係る分光吸収スペクトルとイエロートナーに係る分光吸収スペクトルとの交点における吸光度(abs.値)が0.8以下である場合においては、オレンジトナーによって発現される効果が有効に得られる。
【0020】
本発明のカラー画像形成方法は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびオレンジトナーの少なくとも4色の特定の関係を有するトナーを従来公知のカラー画像形成装置に搭載することにより実行することができる。
本発明のカラー画像形成方法は、上記4色のトナー以外の他色のトナーを用いてもよく、他色のトナーとしては、例えばブラックトナー、グリーントナー、ブルートナーおよびグレートナーなど挙げられる。また、各色のトナーは、各々、結着樹脂および着色剤を少なくとも含有するものである。
【0021】
従来公知のカラー画像形成装置としては、少なくとも下記工程を経ることにより転写材上にカラー画像を形成することができるものであればよい。
(a)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程
(b)静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体に担持させた現像剤で現像してトナー像を形成する現像工程
(c)トナー像を転写材上に転写する転写工程
(d)転写材上に転写させたトナー像を熱定着する定着工程
【0022】
少なくとも4色のトナーを用いてカラー画像を形成する方法としては、具体的には、例えば下記(1)および(2)の方法などが挙げられる。
(1)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を転写材に直接転写するトナー像形成工程を、少なくともイエロートナー、オレンジトナー、マゼンタトナー、シアントナーの4色のトナーを用いて行うことにより、トナー像を担持した転写材を得、これらのトナー像を転写材に定着させることにより画像を形成する、いわゆる直接転写方式のカラー画像形成方法。
(2)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を中間転写体に転写するトナー像形成工程を、少なくともイエロートナー、オレンジトナー、マゼンタトナー、シアントナーの4色のトナーを用いて行うことにより、トナー像を担持した中間転写体を得、これらのトナー像を転写材上に転写し、定着させることにより画像を形成する、いわゆる中間転写方式のカラー画像形成方法。
【0023】
このようなカラー画像形成方法のうち、イエロートナー、オレンジトナー、マゼンタトナーおよびシアントナーの4色のトナーを用いた中間転写方式のカラー画像形成方法について、以下具体的に説明する。
【0024】
図2は、本発明のカラー画像形成方法に使用されるカラー画像形成装置の構成の要部の一例を示す説明用断面図である。
このカラー画像形成装置は、複数の支持ローラ17a〜17d群によって張架された状態で配設された、無端ベルト状の中間転写体(以下、「中間転写ベルト」という。)17を備えており、この中間転写ベルト17の外周面に沿って、各々、イエロートナー像、オレンジトナー像、マゼンタトナー像およびシアントナー像を形成する4つのトナー像形成ユニット30Y,30Or,30M,30Cが、中間転写ベルト17が各々のトナー像形成ユニットにおける、静電潜像担持体である感光体ドラム10Y,10Or,10M,10Cの各々に対接されながら循環移動されるよう、離間して並ぶよう設けられている。
【0025】
イエロートナー像に係るトナー像形成ユニット30Yは、回転される感光体ドラム10Yと、この感光体ドラム10Yの外周面に沿って、各々、感光体ドラム10Yの回転方向に対して動作順に並ぶよう配設された、帯電手段11Y、露光手段12Y、現像手段13Y、一次転写手段14Y、およびクリーニング手段20Yにより構成されている。
一次転写手段14Yは、中間転写ベルト17を介して感光体ドラム10Yに押圧されて一次転写領域(一次転写ニップ部)が形成されるよう設けられた一次転写ローラ141Yと、この一次転写ローラ141Yに接続された転写電流供給手段(図示せず)とにより構成されており、転写電流供給手段によって一次転写ローラ141Yに所定の大きさの転写電流が供給されることにより転写電界が形成され、この転写電界の作用によって感光体ドラム10Y上に形成されたイエロートナー像が中間転写ベルト17上に一次転写される。
【0026】
他のトナー像形成ユニット30Or,30M,30Cの各々についても、現像剤がイエロートナーの代わりにそれぞれオレンジトナー、マゼンタトナー、シアントナーを含むものである他は、イエロートナー像に係るトナー像形成ユニット30Yと同様の構成とされており、図2においては、便宜上、イエロートナー像に係るトナー像形成ユニット30Yと同一の構成部材については、「Y」を、それぞれ、「Or」,「M」,「C」に代えた同一の符号が付してある。
【0027】
中間転写ベルト17の移動方向(図2において矢印で示す。)におけるトナー像形成ユニット配置領域より下流側の位置には、二次転写手段14Sが設けられている。
二次転写手段14Sは、中間転写ベルト17を支持する支持ローラの一であるバックアップローラ17dに中間転写ベルト17を介して押圧されて二次転写領域(二次転写ニップ部)が形成されるよう設けられた二次転写ローラ141Sと、この二次転写ローラ141Sに接続された、転写電圧印加手段(図示せず)とにより構成されており、この転写電圧印加手段によって、一次転写トナー像の電位と逆極性の二次転写バイアス電圧が二次転写ローラ141Sに印加されることにより転写電界が形成され、この転写電界の作用によって中間転写ベルト17上に形成された一次転写トナー像が転写材P上に転写される。
【0028】
図2において、18は、二次転写領域より搬送される転写材P上におけるトナー像を定着させる定着装置であり、例えば、内部に加熱源を具えた加熱ローラ181と、この加熱ローラ181と定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラ182とにより構成されている。
また、20Sは、中間転写ベルト17上における未転写トナーを除去するクリーニングブレードを具えた中間転写体クリーニング手段であり、中間転写ベルト17の移動方向における二次転写領域より下流側の位置に設けられている。
【0029】
このようなカラー画像形成装置においては、まず、各トナー像形成ユニット30Y,30Or,30M,30Cの感光体ドラム10Y,10Or,10M,10C上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト17上に順次転写して重ね合わせられ、中間転写ベルト17上に一次転写されたトナー像が、二次転写手段14Sにより転写材P上に二次転写されて、定着装置18において加熱・加圧することにより転写材P上にトナー像が形成される。
【0030】
〔マゼンタトナー〕
本発明のカラー画像形成方法に係るマゼンタトナーは、結着樹脂、着色剤、並びに、必要に応じて荷電制御剤および離型剤などの内添剤を含むものである。
このマゼンタトナーは、当該マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルおける吸収極大波長λ1 が520〜570nmのものであることが好ましく、より好ましくは540〜570nmのものである。
【0031】
マゼンタトナーに含有される着色剤としては、特に限定されないが、顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド2、同3、同6、同7、同9、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同122、同123、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同208、同209、同222などが挙げられる。染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド3、同14、同17、同18、同22、同23、同49、同51、同53、同87、同127、同128、同131、同145、同146、同149、同150、同151、同152、同153、同154、同155、同156、同157、同158、同176、同179、C.I.アシッドバイオレット43などが挙げられる。
また、下記化学式(1)〜(5)に示す化合物を用いることもできる。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
これらの中でも、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、上記化学式(1)〜(5)に示す化合物の混合物を用いることが好ましい。
【0035】
マゼンタトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜
10質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量部である。
【0036】
〔オレンジトナー〕
本発明のカラー画像形成方法に係るオレンジトナーは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤を含むものである。
このオレンジトナーは、当該オレンジトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ2 が450〜520nmのものであることが好ましく、より好ましくは470〜520nmのものである。
【0037】
オレンジトナーに含有される着色剤としては、特に限定されないが、例えばC.I.ピグメントオレンジ1、同5、同43、同72、同73、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ソルベントレッド72、同73、C.I.ソルベントオレンジ2、同7、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドバイオレット9などが挙げられる。
【0038】
オレンジトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜
10質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量部である。
【0039】
〔イエロートナー〕
本発明のカラー画像形成方法に係るイエロートナーは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤を含むものである。
このイエロートナーは、当該イエローナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ3 が380〜450nmのものであることが好ましく、より好ましくは410〜430nmのものである。
【0040】
イエロートナーに含有される着色剤としては、特に限定されないが、例えばC.I.ピグメントイエロー3、同12、同13、同14、同15、同17、同35、同65、同74、同93、同94、同98、同111、同138、同155、同162、同180、同185、同9、同36、同83、同110、同139、同181、同153などが挙げられる。
【0041】
イエロートナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜
10質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量部である。
【0042】
〔シアントナー〕
本発明のカラー画像形成方法に係るシアントナーは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤を含むものである。
シアントナーに含有される着色剤としては、特に限定されないが、例えばC.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66などが挙げられる。
また、フタロシアニン環の中心に位置する金属原子にケイ素原子(Si)が用いられてなるシリコンフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0043】
シアントナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜
10質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量部である。
【0044】
(結着樹脂)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーに含有される結着樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。
トナーが粉砕法などによって製造される場合には、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、トナーが懸濁重合法、乳化凝集法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、公知の種々の重合性単量体を用いることができ、重合性単量体としては、例えばビニル系単量体などが挙げられ、またイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。また、重合性単量体として多官能性ビニル系単量体を用いることによっては、架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0045】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
【0046】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0047】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0048】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0049】
(トナーの製造方法)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーを製造する方法としては、例えば粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法その他の公知の方法などを挙げることができる。
ここに、乳化凝集法とは、乳化重合法によって製造された結着樹脂よりなる微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤よりなる微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液と混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径および粒度分布を制御しながら凝集を行うと同時に、加熱撹拌することで融着を行って形状制御を行うことにより、トナー粒子を製造する方法である。
【0050】
乳化凝集法によってトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0051】
また、乳化凝集法によってはコア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤の微粒子とを凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0052】
(トナー粒子の粒子径)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーを構成するトナー粒子の粒子径は、例えば体積基準のメジアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜9μmとされる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0053】
トナー粒子の体積基準のメジアン径は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出される。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行い、トナー粒子の分散液を調製し、このトナー粒子の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径とする。
【0054】
(トナーの軟化点温度)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーは、その軟化点温度(Tsp)が70℃以上110℃以下となるものが好ましい。本発明に係るトナーを構成する着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。従って、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
また、トナーの軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行えることができ、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を実現することができる。
【0055】
なお、トナーの軟化点温度(Tsp)は、たとえば、以下の方法を単独で、または、組み合わせることにより制御することができる。すなわち、
(1)結着樹脂を形成すべき単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により結着樹脂の分子量を調節する。
(3)ワックス等の種類や添加量を調節する。
【0056】
トナーの軟化点温度(Tsp)の測定方法は、例えば「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×106 Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とする方法などが挙げられる。
【0057】
(外添剤)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーとしては、トナー粒子をそのままの状態で用いることもできるが、トナー粒子に対して、流動性、帯電性およびクリーニング性などを改良するために、流動化剤およびクリーニング助剤などの外添剤を添加して用いることもできる。
【0058】
外添剤の具体例としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
【0059】
外添剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(現像剤)
本発明のカラー画像形成方法に係る各色のトナーは、非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄等の強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛等の合金、フェライトおよびマグネタイト等の強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0061】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定することができる。
【0062】
(転写材)
以上のような少なくとも4色のトナーを用いたカラー画像形成方法に用いられる転写材としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
以上、本発明のカラー画像形成方法の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0064】
本発明によれば、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーに加えオレンジトナーを用いると共に、当該オレンジトナーが、マゼンタトナーとの関係において特定範囲の吸収極大波長を有するものであることにより、波長領域450〜520nmにおける吸収強度が十分に得られ、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
〔マゼンタトナーの製造例1(粉砕法)〕
(1)混合工程
下記材料を「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)により、撹拌羽の周速を25m/秒に設定して5分間かけて混合して混合物を得た。
・ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物、質量平均分子量20,000)
・着色剤(C.I.アシッドバイオレッド 43) 4質量部
・カルナバワックス(野田ワックス社製) 3質量部
【0067】
(2)混練工程
得られた混合物を二軸押出混練機により110℃に加熱しながら混練し、混練物を得、その後この混練物を冷却した。
【0068】
(3)粉砕工程
得られた混練物を「ハンマーミル」(ホソカワミクロン社製)により粗粉砕した後、「ターボミルT−400型」(ターボ工業社製)により微粉砕した。
【0069】
(4)分級工程
得られた微粉末を風力分級機により微粉分級を行なうことにより、体積平均粒子径が8.0μmのトナー粒子よりなるマゼンタトナー〔1〕を得た。なお、このマゼンタトナー〔1〕に係る吸収極大波長λ1 は、574nmであり、軟化点温度(Tsp)は110℃であった。
【0070】
〔マゼンタトナーの製造例2〜4〕
マゼンタトナーの製造例1において、(1)混合工程における着色剤を下記表1に示すものに変更した他は同様にしてマゼンタトナー〔2〕〜〔4〕を得た。なお、マゼンタトナー〔2〕〜〔4〕に係る吸収極大波長λ1 の値を下記表1に示す。また、マゼンタトナー〔2〕〜〔4〕の軟化点温度(Tsp)は110℃であった。
【0071】
〔マゼンタトナーの製造例5(乳化凝集法)〕
(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製工程
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、「C.I.ピグメントレッド122」4質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理を行って、着色剤微粒子〔1〕が分散されてなる着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
着色剤微粒子〔1〕は、体積基準メジアン径が98nmであった。なお、体積基準メジアン径は、「MICROTRAC UPA−150」(HONEYWELL社製)を用い測定したものである。
【0072】
(2)コア部用樹脂粒子〔1〕の作製工程
下記に示す第1段重合、第2段重合および第3段重合を経て多層構造を有するコア部用樹脂粒子〔1〕を作製した。
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン532質量部、n−ブチルアクリレート200質量部、メタクリル酸68質量部、n−オクチルメルカプタン16.4質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子〔A1〕を作製した。なお、第1段重合で作製した樹脂粒子〔A1〕の質量平均分子量(Mw)は16,500であった。
【0073】
(b)第2段重合(中間層の形成)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1質量部、n−ブチルアクリレート62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部、n−オクチルメルカプタン1.75質量部からなる単量体混合液に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製)93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、樹脂粒子〔A1〕32.8質量部(固形分換算)添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
次いで、この乳化粒子分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂粒子〔A2〕を作製した。なお、第2段重合で調製した樹脂粒子〔A2〕のMwは23,000であった。
【0074】
(c)第3段重合(外層の形成)
樹脂粒子〔A2〕に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、スチレン293.8質量部、n−ブチルアクリレート154.1質量部、n−オクチルメルカプタン7.08質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しコア部用樹脂粒子〔1〕を得た。なお、コア部用樹脂粒子〔1〕のMwは26,800であった。
また、コア部用樹脂粒子〔1〕の体積平均粒径は125nmであった。さらに、このコア部用樹脂粒子〔1〕のガラス転移温度(Tg)は28.1℃であった。
ガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリーメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて、2nd Heatにおけるデータとした。
【0075】
(3)シェル層用樹脂粒子〔1〕の作製工程
コア部用樹脂粒子〔1〕の第1段重合において、スチレンを548質量部、2−エチヘキシルアクリレートを156質量部、メタクリル酸を96質量部、n−オクチルメルカプタンを16.5質量部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、シェル層用樹脂粒子〔1〕を作製した。なお、シェル層用樹脂粒子〔1〕のTgは53.0℃であった。
【0076】
(4)マゼンタトナー〔5〕の作製工程
(a)コア部の形成
コア部用樹脂粒子〔1〕420質量部(固形分換算)と、イオン交換水900質量部と、着色剤粒子分散液〔1〕200質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、会合粒子の体積基準におけるメジアン径(D50)が6.3μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、コア部〔1〕を形成した。なお、コア部〔1〕の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.920であった。
【0077】
(b)シェル層の形成
次いで、65℃においてシェル層用樹脂粒子〔1〕46.8質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、コア部〔1〕の表面に、シェル層用樹脂粒子〔1〕の粒子を融着させた後、75℃で所定の円形度まで熟成処理を行い、シェル層を形成させた。
ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェル層を有する、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.5μm、Tgが31℃のマゼンタトナー粒子〔5〕を得た。
【0078】
(5)外添剤添加工程
マゼンタトナー粒子〔5〕に下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサー」(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、マゼンタトナー〔5〕を作製した。なお、このマゼンタトナー〔5〕に係る吸収極大波長λ1 は、530nmであり、軟化点温度(Tsp)は107℃であった。
・ヘキサメチルジシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
・n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm)0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサーによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0079】
【表1】

【0080】
〔オレンジトナーの製造例1〜6〕
マゼンタトナーの製造例1において、(1)混合工程における着色剤をそれぞれ下記表2に示すものに変更した他は同様にしてオレンジトナー〔1〕〜〔6〕を得た。なお、オレンジトナー〔1〕〜〔6〕に係る吸収極大波長λ2 の値を下記表2に示す。また、オレンジトナー〔1〕〜〔6〕の軟化点温度(Tsp)は110℃であった。
【0081】
〔オレンジトナーの製造例7〕
マゼンタトナーの製造例5において、(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製工程における着色剤を下記表2に示すものに変更した他は同様にしてオレンジトナー〔7〕を得た。なお、オレンジトナー〔7〕に係る吸収極大波長λ2 の値を下記表2に示す。また、オレンジトナー〔7〕の軟化点温度(Tsp)は107℃であった。
【0082】
【表2】

【0083】
〔イエロートナーの製造例1〕
マゼンタトナーの製造例1において、(1)混合工程における着色剤を「C.I.ピグメントイエロー74」に変更した他は同様にしてイエロートナー〔1〕を得た。なお、イエロートナー〔1〕に係る吸収極大波長λ3 は425nmであり、軟化点温度(Tsp)は110℃であった。
【0084】
〔イエロートナーの製造例2〕
マゼンタトナーの製造例5において、(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製工程における着色剤を「C.I.ピグメントイエロー74」に変更した他は同様にしてイエロートナー〔2〕を得た。なお、イエロートナー〔2〕に係る吸収極大波長λ3 は425nmであり、軟化点温度(Tsp)は107℃であった。
【0085】
〔シアントナーの製造例1〕
マゼンタトナーの製造例1において、(1)混合工程における着色剤を「C.I.ピグメントブルー15:3」に変更した他は同様にしてシアントナー〔1〕を得た。
【0086】
〔シアントナーの製造例2〕
マゼンタトナーの製造例5において、(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製工程における着色剤を「C.I.ピグメントブルー15:3」に変更した他は同様にしてシアントナー〔2〕を得た。
【0087】
〔現像剤の作製例〕
マゼンタトナー〔1〕〜〔5〕、オレンジトナー〔1〕〜〔7〕、イエロートナー〔1〕および〔2〕並びにシアントナー〔1〕および〔2〕の各々と、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒子径40μmのフェライトキャリアを、各々のトナーの濃度が6質量%になるようV型混合機によって混合することにより、マゼンタ現像剤〔1〕〜〔5〕、オレンジ現像剤〔1〕〜〔7〕、イエロー現像剤〔1〕および〔2〕並びにシアン現像剤〔1〕および〔2〕を作製した。
【0088】
〔実施例1〜12および比較例1〜4〕
図2に示すカラー画像形成装置に対応する市販の複合プリンタ「bizhub Pro C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に、下記表3に示す組み合わせのマゼンタ現像剤、オレンジ現像剤、イエロー現像剤およびシアン現像剤を装填し、下記の評価を行った。
【0089】
(1)肌色の色再現性の色差評価
日本人女性128人の肌色のL* * * 表色系によるL* 、a* およびb* 値の平均値(L* =67.3、a* =12.1、b* =18.19)を期待色として、肌色のベタ画像を「PODグロスコート紙(128g/m2 )」(王子製紙社製)上に形成し、当該ベタ画像のL* 、a* およびb* 値を測定して、期待色との色差ΔEを算出した。なお、色差ΔEはCMC(2:1)色差式を用いて算出した。色差ΔEが2以下であれば、肌色の色再現性が優れているとして評価した。
ここで、「L* * * 表色系」は、色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、L* 軸方向が明度を示し、a* 軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b* 軸方向が黄−青方向の色相を示すものである。L* 、a* およびb* 値は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてφ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとする。
【0090】
(2)肌色の色再現性の官能評価
日本画像学会「テストチャートNo.7」の画像を出力し、当該画像における特に顔の部分に着目し、評価者10人により下記評価基準により評価した。「A」と評価した人数を表3に示す。なお、「A」と評価した人数が8人以上の場合を合格とした。
−評価基準−
A:顔の肌色部分が「テストチャートNo.7」のサンプルとほぼ同色に感じられ、画像全体からも自然な印象を受ける。
B:顔の肌色部分がサンプルとやや違う色に感じられ、よく見ると少し違和感がある。
C:顔の肌色部分がサンプルとは違う色に感じられ、明らかに違和感がある。
【0091】
【表3】

【0092】
表3の結果により、本発明に係る実施例1〜12によれば、肌色の色再現性に優れる画像を形成することができることが確認された。
【符号の説明】
【0093】
10Y、10Or、10M、10C 感光体ドラム
11Y、11Or、11M、11C 帯電手段
12Y、12Or、12M、12C 露光手段
13Y、13Or、13M、13C 現像手段
14Y、14Or、14M、14C 一次転写手段
141Y、141Or、141M、141C 一次転写ローラ
14S 二次転写手段
141S 二次転写ローラ
17 中間転写体
17a、17b、17c 支持ローラ
17d バックアップローラ
18 定着装置
181 加熱ローラ
182 加圧ローラ
20Y、20Or、20M、20C クリーニング手段
20S 中間転写体クリーニング手段
30Y、30Or、30M、30C トナー像形成ユニット
P 転写材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも4色の静電荷像現像用トナーを用いてカラー画像を形成する方法であって、
前記4色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびオレンジトナーであり、
前記オレンジトナーは、当該オレンジトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ2 と、前記マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルおける吸収極大波長λ1 との差(λ1 −λ2 )が30〜120nmのものであることを特徴とするカラー画像形成方法。
【請求項2】
前記オレンジトナーは、当該オレンジトナーに係る吸収極大波長λ2 が450〜520nmのものであることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成方法。
【請求項3】
前記マゼンタトナーは、当該マゼンタトナーに係る吸収極大波長λ1 が520〜570nmのものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラー画像形成方法。
【請求項4】
前記マゼンタトナーは、当該マゼンタトナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルと、前記イエロートナーのみにより形成された画像の分光吸収スペクトルとの当該マゼンタトナーに係る吸収極大波長λ1 よりも短波長側における交点の吸光度が0.8以下のものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のカラー画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−170023(P2011−170023A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32302(P2010−32302)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】