説明

カラー表示装置

【課題】 時分割で色データを表示する高精細のカラー表示装置においてカラーブレイクを抑制する。
【解決手段】 赤、緑、青の3色のうちの少なくとも2色を時間別に発色する第1の副画素(PL)と、少なくとも前記2色のいずれとも異なる色を発色する第2の副画素(PR)とを含んで画素(P)が構成され、前記第1の副画素が、1フレーム期間を分割した複数のフィールドで前記2色を含む複数の色を発色するカラー表示装置であって、
前記第1の副画素は、前記2色を、引き続く2つのフレーム期間で各フィールドの発色が互いの色を入れ替えるようにして発色し、
前記第2の副画素は、前記2色とは異なる色を、前記第1の副画素が前記2色を発色する2つのフィールドの一方で発色し、引き続く2つのフレーム期間で前記2つのフィールドを互いに切り替えて発色することを特徴とするカラー表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー表示装置、特に、複数の色を時間別に発色する画素を用いて時分割で多色を表示するカラー表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物半導体材料を用いた、電子デバイスの開発が広く行なわれており、発光素子である有機EL(Electro−Luminescence)素子、有機TFT(Thin Film Transistor)、有機太陽電池等の開発が報告されている。中でも、有機EL表示装置は、自発光であることから高画質、高視野角が期待され、また、バックライトがいらないことから薄型、軽量等の利点を生かした携帯装置のディスプレーとして期待されている。
【0003】
カラー表示を行う場合は、一般的には、赤(R)、緑(G)、青(B)の基本3原色を発光する3つの副画素を平面上に配置してこれを画素とし、その空間的混色によって多色表示を行っていた。この場合、各色に対する開口率が低下し、低下した分の輝度を高める必要性からEL素子の寿命に影響を与えていた。また、小型高精細の表示装置の場合、一つの副画素の大きさが非常に小さくなり、作成が困難であった。
【0004】
これらの問題に対して、R、G、Bの基本色を積層し、平面的には1つのピクセルで一つの画素とし、1フレームの映像をR、G、Bの3つのフィールドで時分割表示する、いわゆるフィールドシーケンシャル方式で表示するものが特許文献1に提案されている。
【0005】
フィールドシーケンシャル方式では、各色に対する開口率は上がり、小型高精細の表示装置の作成を容易にする。
【0006】
2色の有機EL素子を積層し、色の組み合わせの異なる2つの副画素で一つの画素を構成したカラー表示装置が特許文献2に提案されている。2つのフィールドで時分割表示を行う。2つの副画素に共通する色の有機EL素子は、他の2色の有機EL素子に比べて半分の電流で発光させるので、寿命を延ばすことができる。
【0007】
図12に特許文献2のカラー表示装置の素子構造を示す。
【0008】
有機EL装置42は、基板43上に、Rの有機層44とGの有機層45を並列に成形し、その上に、Bの有機層46と47を積層したものである。一つの画素は、2つの副画素SP1とSP2から構成される。
【0009】
フレームの表示は2つのフィールドで行われ、RとGを発光させるフィールドとBを発光させるフィールドとで行う。これにより、比較的寿命の短いBの有機層に対しては、開口率を他の色に比べて倍に出来る上、時分割で表示される時間も、特許文献1の例に比べて、1.5倍にできるので、寿命を延ばすことができる。
【0010】
小型高精細の表示装置の製造においても、従来例で示した3つの副画素を並列に配置するものに対し、2つの副画素にしている分、製造が容易になる。
【0011】
フィールドシーケンシャル方式の表示においては、カラーブレイクという表示品質上の問題があることが知られている。
【0012】
カラーブレイクに対しては、特許文献3に、R、G、Bの基本色を液晶シャッターで切り換える装置において、フレーム毎に色の表示順を変えて表示する方法が提案されている。
【0013】
図11(a)(b)にその表示方法の例を示す。
【0014】
図11(a)は、一つのフレームを3つのフィールドに分割して各フィールドで3色を表示する方式である。フレームnからn+3において、基本色R、G、Bの表示がそれぞれのフレームで、(R,G、B)、(B、G、R)、(R,G、B)、(B、G、R)の順で表示するものである。これにより、2つのフレームで、初めの色と、最後の色を反転することで、視覚上カラーブレイクを減少させている。
【0015】
図11(b)は、3つのフレームで、3つの基本色の色を循環させて表示する方式である。
【特許文献1】国際公開特許WO2004/051614号パンフレット
【特許文献2】特開2005−174639号公報
【特許文献3】特開平8−248381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来提案されているカラーブレイクを防止する方法には、上で述べたように、図11(a)の2フレーム周期で行うものと、図11(b)の3フレーム周期で行うものとがある。
【0017】
このうち、図11(a)の2フレーム周期で行うものは、3フィールドの色のうち第1フィールドと第3フィールドの色を入れ替えるものである。第1フィールドと第3フィールドの色は2フレームで見ると混合されるが、第2フィールドの色は分離して見えてしまう。すなわち、この方法ではカラーブレイクの問題を完全には解決できない。
【0018】
さらに、図11(a)の方法では、R、G、Bの基本色の色データの周波数が、一部の色で低下してしまい、フリッカーが目立ってしまうという問題もある。
【0019】
図11(b)の3フレーム周期で行うものについては、すべての色が3フレーム期間で混合され、色割れは生じない。しかし、混合するのに3フレームの時間がかかってしまうことから、2フレーム以下の周期で色が変化する映像に対しては、色の混合の度合いが低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、赤、緑、青の3色のうちの2色を各々異なるタイミングで発色する第1の副画素と、前記2色のいずれとも異なる色を発色する第2の副画素とを含む画素が行列状に配され、前記第1の副画素と第2の副画素とが、1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間でそれぞれ発色し、前記第1の副画素と前記第2の副画素とが前記複数のフィールドにわたって発色する色を合成した色が、1フレーム期間における前記画素の色として表示されるカラー表示装置であって、
前記第1の副画素は、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間で発色する前記2色の色順が、引き続く2つのフレーム期間で前記2色を互いに入れ替えた色順となるようにして、前記2色を順次発色し、
前記第2の副画素は、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間のうち、前記第1の副画素が前記2色を発色する2つのフィールド期間の一方のフィールド期間で前記2色のいずれとも異なる色を発色し、前記2色のいずれとも異なる色を発色するフィールド期間が、引き続く2つのフレーム期間で、前記第1の副画素が前記2色を発色する2つのフィールド期間の間で互いに入れ替わるようにして、前記2色のいずれとも異なる色を発色することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、色分離した表示を2フレームで混合し、元の色に戻すことができるので、2フレームで色が変化する動画映像についてもカラーブレイクのない表示が実現できる。さらに、3色の表示周波数が等しいので、色別のフリッカーを抑えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態であるカラー表示装置を図1に模式的に示す。
【0023】
表示パネル100には、走査線R1,R2,・・・とデータ線D1L,D1R、D2L,D2R、・・・が直交して配置され、交差する部分に画素Pが配置されている。走査線R1,R2,・・・に順次選択信号が与えられ、選択された行の画素にデータ線D1L,D1R,D2L,D2R・・・からデータが取り込まれて蓄えられるとともに、画素Pに備えられた発光素子が発光する。
【0024】
図1において,点線で囲まれた1つの画素Pは、2つの副画素PLとPRで構成されている。データ線DL,DRは各列に2本備えられ、各副画素の輝度信号を与える。
【0025】
本発明は、副画素の色を空間的に混合する並置混合と時間的に混合するフィールドシーケンシャル法とを組み合わせるもので、1フレーム期間を複数のフィールドに等分して、1つのフレームの映像を各フィールドで異なる色の映像として時分割表示し、引き続く2フレームで色の順番を変えて表示することに特徴がある。
【0026】
映像の単位である画素は、従来の1つの画素が3色を時間別に発色するものではなく、図1のPLとPRのように点線で囲んだ1画素を2つの独立に発色する副画素で構成し、少なくとも一方の副画素を時間的に異なるタイミングで2つの色に発色させる。さらに2つの副画素を組み合わせて1つの画素の色を表示する。
【0027】
2色を時間的に異なるタイミングで発色する発光素子としては、第1の色と第2の色を発光する有機EL素子を2層積層したものがある。これを1つの副画素とし、それとは異なる第3の色を発光する有機EL素子と組み合わせ、2つの副画素で一つの画素を構成する。
【0028】
2番目の副画素としては、1番目の副画素と同様の、ただし色の組み合わせが異なる積層有機EL素子を用いるのが好ましいが、2番目の副画素は固定した色を発色するものでもよい。
【0029】
以下、基本色である赤(R)、緑(G)、青(B)のうち、1番目の副画素は、RとBの有機EL素子を積層し、2番目の副画素は、GとBの有機EL素子を積層したもを考える。しかし、本発明はこの色の組み合わせに限らない。2つの副画素の色の組み合わせは任意である。
【0030】
この素子を用いて、1フレームを2つ以上の区間(以下この区間をフィールド,その時間をフィールド期間という)に分けて、各フィールドで積層した2色の一方の色を発色させ、一つのフレームデータを表示する。フィールド期間とは、1回の垂直走査によって表示映像が書き換えられる期間をいう。これに対し、フレームとは1つの完成された映像、フレーム期間はそれが表示される時間を意味する。
【0031】
動画表示において物体が移動し、観察者の視線がそれに合わせて移動するとき、2つのフィールドで時間的に分離して表示された2つの色の映像は、色割れ(カラーブレイク)して観察される。
【0032】
図2は、時間とともに右方向に移動する物体が表示されているときの、(a)表示画面上の位置と、(b)それを目で追いかける観察者の網膜上の結像位置を示した図である。
【0033】
それぞれのフレームは2つのフィールド(1と2)で表示される。図2(a)に示す画上の表示位置は、2つのフィールドでずれることなく同じ位置に表示されている。これは、異動しない静止物体で2フィールドの色が合成されて、元の画像の色が再現されるために必要なことである。
【0034】
次のフレームでは、物体の移動によって画面の右方向にシフトした位置に、同じ2フィールドの映像が表示される。以下同様にフレームごとに順次右にずれていく。
【0035】
一方、これを目で追いかける観察者の視線は、画面上を右方向に動いていく。
【0036】
移動物体を見ているとき、観察者は、物体を網膜上で固定するように視線を動かす。視線は物体の移動と同じ速度で移動するので、図2(a)の矢印「視線の移動」に示すように、視線の移動と物体の移動が一致している。
【0037】
視線が一定速度で移動するため、1フレームの第1と第2のフィールドの映像は、観察者の網膜上の異なる位置に結像するが、図2(b)に示すように、各フレームのフィールドごとの映像は網膜上で同じ位置に来る。
【0038】
いま、2フィールドで1フレームを表示しているので、各フレームの前半のフィールドの映像は網膜上の1つの位置に焦点を結び、後半のフィールドの映像は、前半とは異なるがやはり網膜上の1つの位置に点を結ぶ。図2(b)でいうと、nフレームの第1フィールドのRGで示す位置とその下(時間軸方向)に続くn+1フレーム、n+2フレーム、・・・の各第1フィールドの位置が一致(横軸の位置が同じである)しており、nフレームの第2フィールドのBBで示す位置とその下(時間軸方向)に続くn+1フレーム、n+2フレーム、・・・の各第2フィールドの位置が一致(横軸の位置が同じである)している。
【0039】
それぞれのフィールドについては網膜上の位置は一致するが、フィールドの異なる映像は網膜上での位置がずれているので、観察者は物体を2つの位置に分離して見ることになる。フィールドシーケンシャルカラー方式においては、時間的に分離された、異なるフィールドの映像は、視線が動くときは決して重ならず、従って時間的に合成された色として認識されることはない。各フィールドごとに、複数フレームにわたって時間的に合成されるのみである。
【0040】
しかし、図2(b)で、時間軸方向に色を足し合わせて合成し、かつ2つの副画素の色を足し合わせて空間的に合成することにより得られる色は、2つの分離した映像で同じである。すなわち、第1フィールドの像は、時間とともに、第1の副画素が第nフレームから第1n+3フレームの間でR,B,R,B,・・・の順に発色し、第2の副画素がG,B,G,B、・・・の順に発色するから、ともに黄色になり、副画素同士を合成してやはり黄色が得られる。これに対し、第2フィールドの色は、第1の副画素がB,R,B,R・・・の順に発色し、第2の副画素がB,G,B,G・・・の順に発色するので,まったく同じ色が合成される。
【0041】
このように、フィールドごとに映像は分離するが、色はもとの画像と変わらないので、カラーブレイクは解消されている。
【0042】
このように、本発明では、第1の副画素が引き続く2フレームで各フィールドの色を入れ替えるので、2フレームについて網膜上同じ位置に結像した映像は、色が合成されてもとの色に戻る。したがって、各フィールドの映像は、網膜の異なる位置にはくるが、色はカラーブレイクが生じない静止映像の色と同じになる。
【0043】
さらに、本発明では、第1の副画素の入れ替えられる2色(RとB)が表示されるのと同じフィールドで、第2の副画素がもう一色(G)の映像を表示する。この場合,第2副画素がGを発色するタイミングとして、第1の副画素がRを発色するフィールドとBを発色するフィールドの2つのフィールドがあり、発色する期間はこの2フィールドのいずれか一方とする。そして、1つのフレームでGを発色したフィールドは、次のフレームではGは別のフィールドで発色される。つまりGは、引き続く2フレームで発色フィールドを切り替えて発色される。切り替えられる2つのフィールドは,第1の副画素がRとBを発色する2つのフィールドである。第2副画素がGを発色しないフィールドでは、RまたはBまたはその他の色を発色してよい。また同じGを発色してもよい。このときは第2の副画素の色はGだけに固定されていることになる。
【0044】
これにより、第2副画素の色は、2フレームで合成すると、2つのフィールドのいずれにも表れ、2つのフィールドで同じ合成色を作る。
以上の色順で2つの副画素を発色させることで、1フレームで2つの副画素が2つのフィールドで表示する合成色と、2つの副画素の2フレームにわたるフィールド別の合成色とが同じ色になる。
【0045】
つまり、静止画像の色が動画像の色と一致する。したがってカラーブレイクは解消される。
【0046】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
【0047】
本発明の最も簡単な構成は、1フレームが2つのフィールドに分割される場合である。2つのフィールドは、副画素がそれぞれRとGを発光するフィールドと、両副画素がともにBを発光するフィールドとである。また、2つのフィールドは、副画素がそれぞれRとBを発光するフィールドと、それぞれBとGが発光するフィールドとであってもよい。
【0048】
図3は、本発明のカラー表示装置の第1の実施例における画素の発色順を示す図である。図3においては、2つの副画素が2つのフィールドで表示する色を、連続する4つのフレーム(n番目のフレーム−(n+3)番目のフレーム)について示してある。
【0049】
図3の左端のnフレームでは、第1のフィールドでは、2つの副画素がそれぞれRとGを発光し、第2のフィールドでは、2つの副画素がともにBを発光する。2つのフィールドで表示された色は、時間的に混合され、合成された色が表示されているように見える。また、副画素の色も空間的に混合されて、合成された色の表示として見える。その結果、nフレームのRGBBの4つの発光は、1つの色の表示として観察者に認識される。
【0050】
n+1フレームでは、発光の時間的順番が入れ替わる。第1のフィールドでは、2つの副画素がともにBを発光し、第2のフィールドでは、2つの副画素がそれぞれRとGを発光する。
【0051】
n+2フレームとn+3フレームは、nフレームとn+1フレームの表示順の繰り返しである。すなわち、引き続く2つのフレームの4つのフィールドを一組として、以後これが繰り返される。
【0052】
第1の副画素がRとBを1フィールドずつ発色し、引き続くフレームでは2つのフィールドの色を入れ替えて発色する。第2の副画素はGとBを1フィールドずつ発色し、引き続くフレームでは2つのフィールドの色が入れ替えられる。このとき、1フレーム内での合成色は(R+B)+(G+B)となり、これが静止した画像で表現される色である。
【0053】
一方、フィールド別に2フレームにわたって色を合成すると、第1フィールド(前半)では、(R+B)+(G+B)、第2フィールド(後半)では、(B+R)+(B+G)となる。すなわち、各フィールドでの合成色が等しく、かつそれが静止画像の色と一致する。すなわち、フィールドごとに色再現がなされている。
【0054】
一方の副画素は、2色を色別に切り替えて表示し、引き続くフレームでその色順が入れ替わる。他方の副画素は、第3の色を表示し、その発色フィールドが引き続くフレームで入れ替わる。その結果、1フレームで2つの副画素が2つのフールドで表示する合成色、つまり、静止画像の色と、2つの副画素の2フレームにわたるフィールド別の合成色、つまり動画像の色とが同じ色になる。したがってカラーブレイクは解消される。
【0055】
図2と図3の例では、第2副画素のG発色が、nフレームでは前半のフィールドで、n+1フレームでは後半のフィールドで行われている。Gの発色が行われないフィールドでは、第2副画素は任意の色を発色してよい。このフィールドで第2副画素はBを発光するようになっているが、Rを発光してもよい。またGを発色するようにしてもよい。Gを発色すると第2副画素は2つのフィールドの両方で固定した色の映像を表示することになる。
【0056】
本実施例において、RとGの映像の表示周期とBの映像の表示周期とはともにフレーム周期の2倍である。色別の表示周波数が各色で異なると、遅い周波数の色がフリッカーを起こすが、本発明では色別のフリッカーは生じない。
【0057】
図11(b)のような3色を時間順に表示するフィールドシーケンシャル方式では、各フィールドの色を相殺するのに3フレーム(9フィールド)を必要とする。本発明では、2フレーム(4フィールド)で済み、3フレームより短い周期で色が変化する映像でもカラーブレイクを抑制することが出来る。
【実施例2】
【0058】
図4は,本発明の第2の実施例を説明する図である。第1の副画素がRとBの2色を時間別に発色し,第2の副画素の色がGに固定されている。第2の副画素の作るG色の画像も2つのフィールドに対応して2つに分離するので,第1の副画素のRとBの分離画像のそれぞれに第2の副画素のG画像が付随する。したがって,各フィールドでRGBの3画像が表示され、図3と同様に,2フレームにわたって合成した色はフィールドによらず同じである。
【実施例3】
【0059】
図5は、本発明の第3の実施例を説明するための図である。本実施例では2つの副画素の色順が実施例1とは異なり、第1のフィールドでは、2つの副画素がRとBを発光し、第2のフィールドでは、2つの副画素がGとBを発光する。Bの映像は2つのフィールドで2回繰り返して表示される。
【0060】
引き続く2つのフレームで色順を変えることは、実施例1と同じである。この例では、すべてのフィールドでBの映像が表示されているので、Bに関しては、カラーブレイクが生じない。2フィールドの共通の色は、上で述べたように素子寿命の観点から選んでもよいが、カラーブレイクの現象が目立つ色を常に標示するように選んでもよい。
【0061】
図5では、第2の副画素は、BGGBの色順であるが、実施例1と同様に、Xを任意の色としてXGGXであってよい。第1副画素のフィールドごとの色合成にはGが入ってこないので、第2副画素のGは必ず必要である。
【実施例4】
【0062】
図6は、本発明のカラー表示装置の第4の実施例の表示シーケンスを示す図である。画素の構成は実施例1と同じであり、RとBの有機EL素子を積層した第1の副画素と、GとBの有機EL素子を積層した第2の副画素とで画素を構成する。
【0063】
本実施例では1フレーム期間を4つのフィールドに分割する。
【0064】
nフレームの第1のフィールドでは、副画素がそれぞれRとGを発光し、第2のフィールドでは、副画素がともにBを発光する。第3のフィールドでは、副画素がともにBを発光し、第4のフィールドでは、副画素がそれぞれRとGを発光する。
【0065】
n+1フレームでは、時間順に対応する第1−第4のフィールドでそれぞれの副画素が、nフレームとは異なるもう一方の色を表示する。この結果、図6に示すように、nフレームとn+1フレームで色順が逆転する。
【0066】
n+2フレーム以降はnフレームとn+1フレームの繰り返しである。すなわち2つのフレームの8フィールドを一組として、以後これを繰り返している。
【0067】
1つのフレームの映像は4つのフィールドに分けて時間差をつけて表示される。このため、動画表示においては、網膜上の4つの位置に色の異なる分離した映像が結像する。引き続くフレームでは、異なる色順の分離映像がこれに重なり、観察者には合成された色として見えるので、色分離する前の元の映像と同じ色になる。実施例1のカラーブレイク防止と同じ効果がある。本実施例では、網膜上の結像位置が実施例1よりも近い4つの映像が得られるので、動画のボケ(motion blur)も軽減される。
【0068】
以上、1つのフィールドで同時に表示される色をRとGとし、別のフィールドで表示される色をBとBとして説明した。しかし本実施例はこの組み合わせに限るものではなく、図5のような色の組み合わせ、すなわち、第1副画素の色順がRBBR・BRRBで、第2副画素の色順がBGGB・GBBGであってもよい。
【0069】
また、色別の表示周波数は、実施例1の1.5倍になり、フリッカー抑制もより効果的になる。
【0070】
本発明は、実施例1−4で説明した以外の構成にも適用できる。すなわち、画素は、第1と第2の副画素以外に、従来の固定した色を発色する副画素を含んでいてもよい。それらの画素は、カラーブレイクの発生や本発明の効果に影響しない。
【0071】
1フレーム期間を2分または4分する以外の任意の偶数フィールドに分割した場合にも本発明を適用できる。
【0072】
(カラー表示装置の構成)
以下、実施例1−4に共通した本発明のカラー表示装置について説明する。
【0073】
図7は、本発明に用いる有機EL素子の断面図を模式的に示したものである。
【0074】
図7(a)は、RとBを発光する副画素の構造を示し、(b)は、GとBを発光する副画素の構造を示している。
【0075】
基板1の駆動回路層3には、有機EL素子を駆動するTFT2やその他の不図示の回路要素(スイッチングTFT、データ記憶用の保持容量など)が形成されている。その上に平坦化層4と、平坦化層4を介して第1の電極5があり、第1の接続配線6で駆動TFT2と接続されている。発光部16は、バンク7で囲まれ、第1の有機EL素子部8と、第1のコンタクトホール9によって第1の電極5に接続された第2の電極10、第2の有機EL素子部11、第2のコンタクトホール12によって第2の電極10に接続された第3の電極13、第3の有機EL素子部14、第4の電極15が積層されている。
【0076】
図7(a)の積層素子では、第2の電極10と第3の電極13とは、第2のコンタクトホール12によって結線されている。また、第1の電極7と第4の電極15は不図示の部分で接続されている。
【0077】
図7(b)は第2の副画素の断面図である。図7(a)と同様の部分は同符号をつけた。
【0078】
図7(a)と異なる点は、第2の電極10の一部が途中の部分18で切断され、第2電極10と駆動TFT2に接続された第2の接続配線20に分離していること、第2の電極10は第3のコンタクトホール19によって第1の電極5に接続されていること、および第3の電極13は第2のコンタクトホール12によって第2の接続配線20に接続されていることである。第1の電極5と第4の電極15は不図示の部分で接続されているのは図7(a)と同じである。
【0079】
図8(a)(b)は、図7(a)(b)それぞれの等価回路図である。
図7(a)の赤(R)を発光する第1の有機EL素子部8は図8(a)の素子21に、緑(G)を発光する第2の有機EL素子部11は素子22に、青(B)を発光する第3の有機EL素子部14は素子23に、それぞれ対応する。
【0080】
第2の電極10(図8では24)と第3の電極13(図8では25)は結線されてTFT部に接続され、電圧をV1が印加される。第1の電極5(図8では26)と第4の電極15(図8では27)は不図示の部分で両方とも電源部に接続され、電圧V2が印加される。
【0081】
第2の有機EL素子部(G)22は、両側の電極がショートされているので発光しない。第1の有機EL素子部(R)21と、第3有機EL素子部(B)23の発光の制御は、それぞれ電圧V1とV2で行われる。
【0082】
V1に0v、V2に5vを印加したとすると、第1の有機EL素子部(R)21に対しては順バイアスとなり発光が行われるが、第3有機EL素子部(B)23に対しては逆バイアスとなり発光が行われない。
【0083】
V1を5v、V2を0vにした場合は、第1の有機EL素子部(R)21に対しては逆バイアスとなり発光が行なわれず、第3有機EL素子部(B)23に対しては順バイアスとなり発光が行われる。
【0084】
V1とV2の電圧の極性を切り替えることで、第1の有機EL素子部(R)21と第3有機EL素子部(B)23の発光を切り替えることがでる。V1とV2の電圧差を駆動回路部で制御することにより輝度を制御する。
【0085】
図8(b)は図7(b)の等価回路図である。
【0086】
先に説明したように、第1の電極5(図8では26)と第2の電極10は結線されている。第3の電極13がTFT部に接続され、電圧V1が印加される。第1の電極5と第4の電極15(図8では27)と不図示の部分で電源部に接続され電圧V2が印加される。
【0087】
第1の有機EL素子部(R)21は、両側の電極がショートされているので発光しない。第2の有機EL素子部(G)22と、第3有機EL素子部(B)23の発光の制御はV1とV2に印加される電圧の大きさで行われる。
【0088】
例えば、V1に0v、V2に5vを印加したとすると、第2の有機EL素子部(G)22に対しては順バイアスとなり発光が行われるが、第3有機EL素子部(B)23に対しては逆バイアスとなり発光が行われない。
【0089】
逆に、V1を5v、V2を0vにした場合は、第2の有機EL素子部(G)22に対しては逆バイアスとなり発光が行なわれず、第3有機EL素子部(B)23に対しては順バイアスとなり発光が行われる。
【0090】
以上のように、V1とV2の電圧の極性を切り替えることで、第2の有機EL素子部(G)22と第3有機EL素子部(B)23の発光を切り替えることができ、V1の大きさを制御することで輝度を制御できる。
【0091】
個々の有機EL素子部は、単層タイプ(発光層のみ)、2層タイプ(発光層/正孔注入層)、3層タイプ(電子輸送層/発光層/正孔輸送層)、4層タイプ(電子注入層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層)、5層タイプ(電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層)のいすれを使用してもよい。また、電子または正孔のブロッキング層を設けたタイプでも良い。
【0092】
図9は、図7(a)と(b)の2つの積層発光素子を副画素として画素とし、マトリクス状に画素を配置したカラー表示装置のブロック回路構成を示すものである。
【0093】
図9において、カラー表示装置28は、少なくとも表示制御部30、A/D変換orサンプリング回路31、バッファメモリ32、Xドライバ34、Yドライバ33、及びマトリックス型表示部35を有する。
【0094】
表示制御部30は、外部から入力される映像信号29を各画素のデジタルデータに変換し、マトリックス型の表示部35に表示する一連の操作を制御するものである。
【0095】
映像信号29は、ビデオ信号等のアナログ信号であっても、また、DVD等のデジタル信号であってもよい。映像信号29がカラー表示装置28に入力されると、表示制御部30からの指示に従って、A/D変換orサンプリング回路31によって、各画素の表示データに変換される。各画素の表示データはバッファメモリ32に格納される。
【0096】
一方、バッファメモリ32に格納されている各画素の表示データは、表示制御部30の指示に従って読み出され、Xドライバ34、及びYドライバ33によって、マトリックス型表示部35の対応した各素子に対して、表示データを書き込むことで映像が表示される。
【0097】
マトリクス型表示部35はマトリックス状に画素となる表示素子が並んでいる。ここでは一つの画素が2つの副画素により構成されており、各副画素毎に駆動回路が設けてあり、Xドライバ34とYドライバ33によって、順次選択されたライン毎に映像信号29に従った、映像データが各副画素の駆動回路内にある保持容量に書込まれ、その値に従った発光が行われる。
【0098】
例えば、映像信号29を、60フレーム/秒のデータとする。バッファメモリは、2フレーム分のメモリ容量として、順次1フレームずつ古いデータ上に上書きされるものとする。
【0099】
本発明では、RとGを同時に発行するフィールドと両方ともBを発光するフィールドとを2フィールド、もしくは4フィールド組み合わせて表示するものである。1フレームを2フィールドで表示する場合においては、フィールド周波数は120フィールド/秒となる。また、1フレームを4フィールドで表示する場合においては、フィールド周波数は240フィールド/秒となる。
【0100】
2フレーム分のメモリを持つことで、新しいフレームのデータを記憶している間に、前のフレームデータを基本色毎に読み出し、RとGのデータをそれぞれ副画素に書き込み表示するフィールド走査と、両方の副画素にBのデータを書き込み表示するフィールド走査とを行うことができる。
【0101】
表示の色順は、実施例1−3で示したいずれかの方法によって行う。
【0102】
図10は、本発明のカラー表示装置の応用例を説明する図である。
【0103】
図10(a)は本発明のカラー表示装置を用いたテレビ受像機である。36は、テレビ受像機の筐体であり、筐体36には、カラー表示装置37の他、テレビ放送の受信回路部、音声出力部、映像表示装置を制御する制御部などが内装されており、使用者の命令に従って、テレビ放送の映像をカラー表示装置37に表示することができる。
【0104】
画素として、有機EL素子を用いた場合、自発光しているため、黒表示と白表示の比率であるコントラストが大きく、高画質の表示が行える。また、本発明では、発光素子を積層し、2つの副画素で一つの画素を構成しているので、小型の表示装置においても、高精細な画素を容易に作ることができる。
【0105】
図10(b)は、本発明のカラー表示装置を携帯電話に応用した例である。
【0106】
これらは、静止画、もしくは動画の入力装置や、携帯型の情報入出力装置、さらには、携帯型のゲーム装置などにも応用できる。
【0107】
図10(b)において、39は携帯電話の筐体であり、筐体39には、カラー表示装置38の他、番号等の入力部、小型の映像入力部、音声や映像の送受信部、携帯型装置を制御する制御部などが内装されており、使用者の命令に従って、入力部より入力された内容や、映像入力部によって取り込んだ映像、もしくは、受信した映像をカラー表示装置38に表示することができる。
【0108】
図10(c)は、本発明のカラー表示装置をデジタルスチルカメラに応用した例である。図10(c)において、40は、デジタルスチルカメラの筐体であり、筐体40には、本発明のカラー表示装置の他、映像信号の入力部、映像信号の記録部、映像の取り込み条件を設定する入力部、映像の取り込みの操作を行うスイッチなどが内装されており、使用者の命令に従って、入力部より入力された内容や、入力部によって取り込んだ映像、もしくは、記録部に記録していた映像を表示領域41に表示することができる。
【0109】
図10(b)、(c)のような携帯型装置の場合、手ぶれや使用者の視線の揺れなどが生じやすく、時分割で表示するフィールドシーケンシャル方法では、カラーブレイクが生じやすい。本発明のように、自発光素子である有機EL素子を積層し、2つの副画素で一つの画素を構成し、一つのフレームデータを複数のフィールドで表示し、フィールド毎に適宜基本色の表示順を入れ替えることで、カラーブレイクとフリッカーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態における副画素の表示とその見え方を説明する図である。
【図3】実施例1における副画素の発色順を示す図である。
【図4】実施例2における副画素の発色順を示す図である。
【図5】実施例3における副画素の発色順を示す図である。
【図6】実施例4における副画素の発色順を示す図である。
【図7】本発明のカラー表示装置に用いる有機EL素子の断面を示す模式図である。
【図8】本発明のカラー表示装置に用いる有機EL素子の等価回路図である。
【図9】本発明のカラー表示装置の回路ブロックを示す図である。
【図10】本発明のカラー表示装置を応用した製品を示す図である。
【図11】従来のカラーブレイク防止方法を示す図である。
【図12】従来の積層有機EL素子の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1 基板
2 TFT部
3 駆動回路層
4 平坦化層
6 第1の接続配線
7 バンク部
8、20 第1の有機EL素子部
9 第1のコンタクトホール
10、24 第2の電極
11、21 第2の有機EL素子部
12 第2のコンタクトホール
13、25 第3の電極
14、22 第3の有機EL素子部
15、27 第4の電極
16 発光部
17 第2の接続配線
19 第3のコンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤、緑、青の3色のうちの2色を各々異なるタイミングで発色する第1の副画素と、前記2色のいずれとも異なる色を発色する第2の副画素とを含む画素が行列状に配され、前記第1の副画素と第2の副画素とが、1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間でそれぞれ発色し、前記第1の副画素と前記第2の副画素とが前記複数のフィールドにわたって発色する色を合成した色が、1フレーム期間における前記画素の色として表示されるカラー表示装置であって、
前記第1の副画素は、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間で発色する前記2色の色順が、引き続く2つのフレーム期間で前記2色を互いに入れ替えた色順となるようにして、前記2色を順次発色し、
前記第2の副画素は、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間のうち、前記第1の副画素が前記2色を発色する2つのフィールド期間の一方のフィールド期間で前記2色のいずれとも異なる色を発色し、前記2色のいずれとも異なる色を発色するフィールド期間が、引き続く2つのフレーム期間で、前記第1の副画素が前記2色を発色する2つのフィールド期間の間で互いに入れ替わるようにして、前記2色のいずれとも異なる色を発色することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項2】
前記第2の副画素が、前記第1の副画素の前記2色のいずれとも異なる1色を含む2色を各々異なるタイミングで発色する副画素であって、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間で前記2色を順次発色することを特徴とする請求項1に記載のカラー表示装置。
【請求項3】
前記第2の副画素が異なるタイミングで発色する2色のうちの一方は、前記第1の副画素の発色する前記2色のいずれかと同じ色であることを特徴とする請求項2に記載のカラー表示装置。
【請求項4】
前記第1と第2の副画素が、前記1フレーム期間のうちの同じフィールド期間で前記同じ色を発色することを特徴とする請求項3に記載のカラー表示装置。
【請求項5】
前記第1と第2の副画素が、前記1フレーム期間のうちの異なるフィールド期間で前記同じ色を発色することを特徴とする請求項3に記載のカラー表示装置。
【請求項6】
前記第2の副画素が、前記第1の副画素の前記2色のいずれとも異なる色を、前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間の各々で発色することを特徴とする請求項1に記載のカラー表示装置。
【請求項7】
前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間が1フレーム期間を2分した2つのフィールド期間であり、前記第1の副画素が、前記2つのフィールド期間で前記2つの色を順次発色することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカラー表示装置。
【請求項8】
前記1フレーム期間を分割した複数のフィールド期間が1フレーム期間を4分した4つのフィールド期間であり、前記第1の副画素が前記4つのフィールド期間で前記2つの色を順次発色し、前記4つのフィールド期間の発色が、引き続く2つのフレーム期間ですべて入れ替えられることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカラー表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−14951(P2010−14951A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174567(P2008−174567)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】