説明

カリウムチャネル調節剤として有用な新規のベンズアミジン誘導体

本発明は、カリウムチャネルの強力な調節剤であることが判明し、そのため、カリウムチャネルの調節に反応するもののように多様な疾患又は障害の治療のための重要な候補である、式(I)の新規のベンズアミジン誘導体に関する。立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩であって、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又はBは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、Bは、C=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、残りの変数は請求項1に明記されている通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムチャネルの強力な調節剤であることが判明し、そのため、カリウムチャネルの調節に反応する疾患又は障害などの多様な治療にとって重要な候補である新規のベンズアミジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、全ての細胞の細胞膜を通過するイオンの流れを調節する細胞タンパク質であり、イオン(カリウム、塩素、ナトリウム等)の違いに対する選択的な透過性により分類される。イオンチャネルの最大かつ最も多様なサブグループであるカリウムチャネルは、カリウムイオンを選択的に通過させ、そうすることによって、主として、細胞の静止膜電位を調節し、かつ/又はその励起準位を調節する。
【0003】
カリウムチャネルならびに他のイオンチャネルの機能障害は、細胞制御の喪失を引き起こし、生理的機能を変化させ、疾患状態を生じる。イオンチャネル遮断薬及びイオンチャネル開口薬は、後天性又は遺伝性のチャネル病においてイオンチャネル機能を調節し、かつ/又はイオンチャネル活性を回復するそれらの能力により、広範な病理学的疾患の薬物治療に使用されており、更に広範な治療適応症に対処する可能性を有する。例えば、カリウムチャネル開口薬の主な適応症は、糖尿病、動脈性高血圧症、心血管疾患、尿失禁、心房細胞、てんかん、疼痛及び癌などの多様な状態を包含する。
【0004】
多種のカリウムチャネルの中で、大コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルサブタイプは、薬理学的介入及び新たなカリウムチャネル調節剤の開発に関する明白な部位である。その生理的役割は、それらが神経細胞の興奮性及び神経伝達物質の放出に重要な調整剤である神経系、ならびにそれらが血管、気管支気管、尿道、子宮又は胃腸管の筋肉組織の緊張を調節する際に極めて重要である平滑筋で特に研究されてきた。
【0005】
これらの意味を考えると、BK開放特性を有する小型の薬剤は、喘息、尿失禁及び膀胱痙攣、胃腸管過剰運動性、精神病、脳卒中後の神経保護作用、痙攣、不安神経症及び疼痛等の筋肉及び神経細胞の過剰興奮性の多くの結果を調節及び制御する際に潜在的に強い影響を及ぼすことがある。心臓血管系に関する限りでは、これらのイオンチャネルの生理学的機能は、血管脱分極、血管収縮及び血管内圧の上昇を調節する、基本的な定常状態の機構を表し、BKチャネルの選択的アクチベーターの開発は、高血圧症、勃起障害、冠動脈疾患、及び糖尿病又は高コレステロール血症に伴う血管合併症を含む、血管疾患の潜在的な薬物療法として見なされている。
【0006】
WO第2006/055760号及びWO第2007/139967号は、例えば癌の治療用のHSP90阻害剤として有用なトリアゾール誘導体について記載している。しかし、本発明のベンズアミジン誘導体は記載されておらず、カリウムチャネル調節剤としてのその活性は、全く示唆されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カリウムチャネル調節剤として有用な新規のベンズアミジン誘導体を提供することである。本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩により特徴付けることができる。
[式中、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又は
Bは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、Bは、C=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、
はテトラゾリル基を表し、
及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよく、
及びRは、互いに独立にハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す]。
【0008】
別の態様では、本発明は、治療上有効な量の本発明のベンズアミジン誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、医薬組成物の製造のための本発明のベンズアミジン誘導体の使用に関する。
【0010】
更なる態様では、本発明は、ヒトを含む、生きている動物体の、カリウムチャネルの調節に反応する疾患、障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、それを必要とするこのような生きている動物体に治療上有効な量の本発明のベンズアミジン誘導体を投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様では、本発明は、式Iの新規のベンズアミジン誘導体、
【化2】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩を提供する
[式中、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又は
Bは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、BはC=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、
はテトラゾリル基を表し、
及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよく、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す]。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Iの化合物、立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である
[式中、Aは、窒素(N)原子又は酸素(O)原子を表し、
Bは、存在しないか(即ち、複素環が形成されていない)、又は存在し(即ち複素環の一部を形成する)、存在する場合、BはC=O又はC=Sを表し、
はテトラゾリル基を表し、
及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよく、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す]。
【0014】
別の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Iaの化合物、
【化3】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である
[式中、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又は
Bは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、BはC=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、R、R、R及びRは、上に定義した通りである(即ち、Rは水素を表す)]。
【0015】
第3の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Iaの化合物、立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、A、B、R、R、R及びRは、上に定義した通りである(即ち、Rは、水素を表す)]。
【0016】
第4の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Ibの化合物、
【化4】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である
[式中、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又は
Bは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、Bは、C=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、
、R、R及びRは、上に定義した通りである(即ち、Rは水素を表す)]。
【0017】
第5の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Ibaの化合物、立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、A、B、R、R、R及びRは、上に定義した通りである(即ち、Rは水素を表す)]。
【0018】
第6の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Icの化合物、
【化5】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である
[式中、AはNH2又はOHを表し、
、R、R、R及びRは、上に定義した通りである]。
【0019】
第7の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Icaの化合物、立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、A、R、R、R、R及びRは、上に定義した通りである]。
【0020】
第8の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia若しくはIbの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である
[式中、Bは存在せず(即ち、複素環が形成されておらず)、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、
AはNH又はOHを表す]。
【0021】
より好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia、Ib若しくはIcの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、Aは、窒素(N)原子又は酸素(O)原子を表す]。
【0022】
別のより好ましい実施形態では、Aは窒素(N)原子を表す。
【0023】
第3のより好ましい実施形態では、Aは酸素(O)原子を表す。
【0024】
第4のより好ましい実施形態では、AはNHを表す。
【0025】
第5のより好ましい実施形態では、AはOHを表す。
【0026】
第9の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia若しくはIbの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、Bは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、C=O又はC=Sを表し、AはNH又はOを表す]。
【0027】
より好ましい実施形態では、BはC=Oを表し、AはNH又はOを表す。
【0028】
別のより好ましい実施形態では、BはC=Oを表し、AはNHを表す。
【0029】
第3のより好ましい実施形態では、BはC=Oを表し、AはOを表す。
【0030】
第4のより好ましい実施形態では、BはC=Sを表し、AはNH又はOを表す。
【0031】
第5のより好ましい実施形態では、BはC=Sを表し、AはNHを表す。
【0032】
第6のより好ましい実施形態では、BはC=Sを表し、AはOを表す。
【0033】
第10の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia若しくはIbの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、Bは存在しないか(即ち、複素環が形成されておらず)、又はBは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、BはC=O若しくはC=Sを表す]。
【0034】
より好ましい実施形態では、Bは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、C=O又はC=Sを表す。
【0035】
別のより好ましい実施形態では、Bは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、C=Oを表す。
【0036】
第3のより好ましい実施形態では、Bは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、C=Sを表す。
【0037】
第4のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式Icの化合物であり、即ちBは存在しない(即ち、複素環が形成されていない)。
【0038】
第11の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia、Ib若しくはIcの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、Rはテトラゾリル基を表す]。
【0039】
より好ましい実施形態では、Rは1H−テトラゾール−5−イル基又は2H−テトラゾール−5−イル基を表す。
【0040】
別のより好ましい実施形態では、Rは1H−テトラゾール−5−イル基を表す。
【0041】
第3のより好ましい実施形態では、Rは2H−テトラゾール−5−イル基を表す。
【0042】
第12の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia、Ib若しくはIcの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、R及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよい]。
【0043】
より好ましい実施形態では、R及びRは、互いに独立に水素又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよい。
【0044】
別のより好ましい実施形態では、Rはフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよく、Rは水素を表す。
【0045】
第3のより好ましい実施形態では、Rはハロ、トリフルオロメチル又はヒドロキシで置換されているフェニルを表し、Rは水素を表す。
【0046】
第4のより好ましい実施形態では、Rはトリフルオロメチルで置換されているフェニルを表し、Rは水素を表す。
【0047】
第13の好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、式I、Ia、Ib若しくはIcの化合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩である[式中、R及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す]。
【0048】
より好ましい実施形態では、R及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す。
【0049】
別のより好ましい実施形態では、R及びRは、互いに独立に、ハロ又はトリフルオロメチルを表す。
【0050】
第3のより好ましい実施形態では、R及びRはいずれも、ハロ、トリフルオロメチル又はフェニルを表す。
【0051】
第4のより好ましい実施形態では、R及びRはいずれも、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す。
【0052】
第5のより好ましい実施形態では、R及びRはいずれも、ハロ又はトリフルオロメチルを表す。
【0053】
第6のより好ましい実施形態では、R及びRはいずれも、トリフルオロメチルを表す。
【0054】
最も好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、
N−アミノ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン;
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−4−[3−(2H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−2,4−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−3−オン、若しくは
N−ヒドロキシ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン、又は
それらの医薬として許容できる付加塩
である。
【0055】
本明細書に記載の2つ以上の実施形態の任意の組合せは、本発明の範囲内と見なされる。
【0056】
置換基の定義
本発明の文脈では、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0057】
医薬として許容できる塩
本発明のベンズアミジン誘導体は、意図される投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態としては、本発明のベンズアミジン誘導体の医薬として(即ち、生理的に)許容できる塩及びプレドラッグ又はプロドラッグの形態が挙げられる。
【0058】
医薬として許容できる付加塩の例としては、それだけに限らないが、無毒の、無機酸付加塩及び有機酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩由来、フタル酸塩、サルチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩等が挙げられる。このような塩は、当技術分野で周知であり、かつ記載されている手順により形成することができる。
【0059】
本発明のベンズアミジン誘導体の医薬として許容できるカチオン性塩の例としては、それだけに限らないが、アニオン性基を含有する本発明のベンズアミジン誘導体のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウムの塩等が挙げられる。このようなカチオン性塩は、当技術分野で周知であり、かつ記載されている手順により形成することができる。
【0060】
立体異性体
本発明の化合物が、鏡像体、ジアステレオマー、ならびに幾何異性体(シストランス異性体)を含む、異なる立体異性体の形態で存在し得ることは、当業者であれば認識されよう。本発明は、このような全ての異性体、及びラセミ混合物を含むその任意の混合物を含む。
【0061】
ラセミ形態は、公知の方法及び技法により光学対掌体に分割することができる。ラセミ化合物を光学対掌体に分割する1つの方法は、光学活性マトリックスでのクロマトグラフィーに基づいている。したがって、本発明のラセミ化合物は、例えば、D−又はL−(酒石酸塩、マンデル酸塩又はカンファースルホン酸塩)の塩の分別結晶化によりその光学対掌体に分割することができる。
【0062】
光学異性体を分割するための更なる方法は、当技術分野で公知である。このような方法は、Jaques J、Collet A及びWilen Sによる「鏡像体、ラセミ化合物及び分割(Enantiomers,Racemates and Resolutions)」、John Wiley and Sons、New York(1981)に記載されているものが挙げられる。
【0063】
光学活性化合物は、光学活性出発物質又は光学活性中間体から調製することもできる。
【0064】
調製方法
本発明による化合物は、従来の化学合成法、例えば実施例に記載されている方法により調製してもよい。
【0065】
生物活性
本発明のベンズアミジン誘導体は、標準的な電気生理学的方法により測定した場合、カリウムチャネル調節活性を有することが判明した。カリウムチャネルでのその活性により、本発明のベンズアミジン誘導体は、広範な疾患及び状態の治療に有用であると考えられる。
【0066】
特別な実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管痙攣、冠動脈痙攣、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎障害、多発性嚢胞腎、膀胱過剰興奮性、膀胱痙攣、尿生殖器疾患、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起障害、胃腸障害、胃腸運動低下障害、胃腸運動不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流症、分泌性下痢、閉塞性若しくは炎症性の気道疾患、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、運動失調、外傷性脳損傷、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、自閉症、不安神経症、気分障害、鬱病、躁鬱病、精神病性障害、認知症、学習障害、加齢による記憶喪失、記憶障害及び注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、月経困難症、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、口腔乾燥症、心血管障害、高血圧症、筋強直性ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、痙性、口腔乾燥症、II型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、結腸炎、クローン結腸炎、免疫抑制、難聴、片頭痛、疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、高眼圧症(緑内障)又は脱毛症の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0067】
より好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、呼吸器疾患、尿失禁、勃起障害、不安神経症、てんかん、精神病、統合失調症、双極性障害、鬱病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病又は疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0068】
別のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、精神病、統合失調症、双極性障害、鬱病、てんかん、パーキンソン病又は疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0069】
第3のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、疼痛、軽度、中等度若しくは重度の疼痛、急性、慢性又は再発性の疼痛、片頭痛により生じる疼痛、術後疼痛、幻肢痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、慢性頭痛、中心性疼痛、糖尿病性神経障害、治療後神経痛又は末梢神経損傷と関連する疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0070】
第4のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、心虚血、虚血性心疾患、肥大心、心筋症又は心不全の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0071】
第5のより好ましい実施形態では、本発明の化合物は、心血管疾患の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。より好ましい実施形態では、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、虚血/再かん流、高血圧症、再狭窄、動脈炎、心筋虚血又は虚血性心疾患である。
【0072】
第6のより好ましい実施形態では、本発明の化合物は、心臓のプレコンディショニングを得るために有用であると考えられる。虚血プレコンディショニング及び心筋プレコンディショニングを含むプレコンディショニングは、長期にわたる虚血が開始する前の短期の虚血イベントを示している。本発明の化合物は、このような虚血イベントにより得られたプレコンディショニングと同様の効果を有していると考えられる。プレコンディショニングは、長期にわたる虚血イベントから生じるその後の組織損傷を防ぐ。
【0073】
第7のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、統合失調症、鬱病又はパーキンソン病の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0074】
第8のより好ましい実施形態では、本発明の化合物は、閉塞性又は炎症性の気道疾患の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。より好ましい実施形態では、閉塞性又は炎症性の気道疾患は、気道過敏性、塵肺、例えばアルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、珪肺症、睫毛脱落、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症及び綿肺症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気道過敏性の悪化又は嚢胞性繊維症である。
【0075】
その最も好ましい実施形態では、閉塞性気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。
【0076】
第9のより好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、男性の性的機能不全及び女性の性的機能不全を含み、かつ男性の勃起障害を含む、性的機能不全の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0077】
更により好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、ホスホジエステラーゼ阻害剤、特にホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤、例えばシルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル及びジピリダモールと、又は内皮由来過分極因子を介した反応を強化する薬剤、特にカルシウムドベシル酸若しくは類似の2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸塩類似体と共投与してもよい。
【0078】
最も好ましい実施形態では、本発明のベンズアミジン誘導体は、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル又はカルシウムドベシル酸と共に併用療法で使用される。
【0079】
医薬品有効成分(API)の適切な投与量は、1日当たり約0.1〜約1000mgAPI、より好ましくは1日当たり約10〜約500mgAPI、最も好ましくは1日当たり約30〜約100mgAPIの範囲内であるが、正確な投与方法、それが投与される形態、考えられる適応症、対象、特に関与する対象の体重、更に担当医師若しくは担当獣医師の選択及び経験に依存することが、現在のところ企図されている。
【0080】
本発明の好ましいベンズアミジン誘導体は、サブマイクロモル及びマイクロモルの範囲、即ち1以下〜約100μMの生物活性を示す。
【0081】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、治療上有効な量の本発明のベンズアミジン誘導体を含む新規の医薬組成物を提供する。
【0082】
治療法で使用する本発明のベンズアミジン誘導体は、原料化学化合物の形態で投与してもよく、有効成分を場合により生理的に許容できる塩の形態で、1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体、干渉剤、希釈剤及び/又は他の通例の医薬補助剤と共に医薬組成物中に導入することが好ましい。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明は、1種又は複数の医薬として許容できる担体、従って場合により当技術分野で公知であり使用されている他の治療成分及び/又は予防成分と共に本発明のベンズアミジン誘導体を含む医薬組成物を提供する。担体(複数可)は、製剤の他の成分と相容性であるという意味で「許容できる」ものであり、そのレシピエントに無害でなければならない。
【0084】
本発明の医薬組成物は、所望の治療法に適している任意の好都合な経路により投与してもよい。好ましい投与経路としては、特に錠剤、カプセル、糖衣錠、粉末又は液体形態での経口投与、特に皮膚注射、皮下注射、筋肉注射又は静脈注射での非経口投与が挙げられる。本発明の医薬組成物は、所望の製剤に適した、標準的な方法及び従来の技法を使用することにより、当業者であれば製造することができる。所望される場合、有効成分の持続放出を得るのに適合した組成物を使用してもよい。
【0085】
製剤及び投与の技法の更なる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,PA)の最新版中に見出すことができる。
【0086】
実際の投与量は、治療する疾患の性質及び重症度に依存し、医師の裁量内にあり、所望の治療効果をもたらすために、本発明の特定の状況に対して投与量を滴定することにより変化させてもよい。しかし、個々の用量当たり約1.0〜約500mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの有効成分を含有する医薬組成物が、療法治療に適していることが現在企図されている。
【0087】
有効成分は、1日当たり1回又は数回投与してもよい。十分な結果は、場合によっては、点滴で0.1μg/kg及び経口で1μg/kgと低い投与量で得ることができる。投与量範囲の上限は、点滴で約10mg/kg及び経口で100mg/kgであると現在考えられている。好ましい範囲は、点滴で約0.1μg/kg〜約10mg/kg/日、経口で約1μg/kg〜約100mg/kg/日である。
【0088】
部分の医薬キット・オブ・パーツ
本発明によれば、少なくとも2つの別の単位用量形態(A)及び(B)を含むキット・オブ・パーツも提供する:
(A)本発明のベンズアミジン誘導体、及び
(B1)ホスホジエステラーゼ阻害剤、又は
(B2)内皮由来過分極因子を介した反応を増強する薬剤、ならびに場合により
(C)Aのベンズアミジン誘導体、及びB1のホスホジエステラーゼ阻害剤又はB2の内皮由来過分極因子を介した反応を増強する薬剤をそれを必要とする患者に同時、順次又は別々に投与するための説明書。
【0089】
より好ましい実施形態では、本発明に従って使用するホスホジエステラーゼ阻害剤(B1)は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤であり、更により好ましい実施形態では、本発明に従って使用するホスホジエステラーゼ阻害剤は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤であり、シルデナフィル、タダラフィル又はバルデナフィルである。
【0090】
別のより好ましい実施形態では、本発明に従って使用する内皮由来過分極因子を介した反応を増強する薬剤(B2)は、ドベシル酸カルシウムである。
【0091】
本発明のベンズアミジン誘導体、及び本発明に従って使用するホスホジエステラーゼ阻害剤又は内皮由来過分極因子を介した反応を増強する薬剤は、他方と共に投与するのに適した形態で好ましくは提供することができる。これは、2つの製剤の内のどちらか1つを、他の成分が投与される前、後、及び/又はそれと同時に(場合により繰り返し)投与することができる場合を含むことを企図している。
【0092】
また、本発明のベンズアミジン誘導体、及び本発明に従って使用するホスホジエステラーゼ阻害剤又は内皮由来過分極因子を介した反応を増強する薬剤は、組み合わせた形態で、又は別々に若しくは別々に順次に投与してもよく、ここで順次投与は、時間的に近接しているか、又は時間的に離れている。これは特に、2つの製剤を時間的に十分近接して(場合により繰り返し)投与して、2つの製剤のいずれかを単独で、同じ治療期間にわたって、他方の製剤の不在下で、(場合により繰り返し)投与する場合よりも当該状態の治療の期間にわたって大きな有益な効果が患者にあるようにすることを含み得る。組合せが、特定の状態について及び特定の病状の治療期間にわたってより有益な効果をもたらすかどうかについての決定は、治療又は予防すべき病状に依存すると思われるが、当業者により日常的に実現され得る。
【0093】
これに関連して使用する場合、「順次に投与される」及び「同時投与される」という用語は、陽性アロステリックニコチン受容体調節剤及び認知力向上薬の個々の用量を48時間以内、例えば各々24時間以内に互いに投与することを含む。
【0094】
2つの成分を互いに合せることは、成分(A)及び成分(B)を別々の製剤として(即ち互いに独立して)提供することができ、次いで、併用療法で互いに組み合わせて使用するために一緒にするか、又は併用療法で互いに組み合わせて使用する「組合せパック」の別々の成分として一緒に包装して提供してもよいことを含む。
【0095】
治療法
別の態様では、本発明は、ヒトを含む、生きている動物体の、カリウムチャネルの活性化に反応する疾患、障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、それを必要とするこうした生きている動物体に、治療上有効な量のカリウムチャネルを活性化できる化合物、又はその医薬として許容できる付加塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0096】
本発明により企図される好ましい医学的適応症は、上に記載されているものである。
【0097】
医薬品有効成分(API)の適切な投与量は、1日当たり約0.1〜約1000mgAPI、より好ましくは1日当たり約1〜約500mgAPI、最も好ましくは1日当たり約1〜約100mgAPIの範囲内であるが、正確な投与方法、それが投与される形態、考えられる適応症、対象、特に関与する対象の体重、更に担当医師若しくは担当獣医師の選択及び経験に依存することが、現在のところ企図されている。
【実施例】
【0098】
本発明を、以下の実施例を参照しながら更に例示するが、これらの実施例は特許請求の範囲に規定する本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【0099】
(実施例1)
調製実施例
【化6】

【0100】
本発明の化合物の合成経路を、スキーム1に概説する。この合成経路は、商業的に入手できるか、又は塩化チオニルで処理することにより対応する市販の安息香酸から調製される適切な塩化ベンゾイル(Z)と、いくつかの2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニルアミン(Y)とを結合し、対応するベンズアミド中間体Xを得ることを含む。アニリン誘導体Yは、例えばWO第98/47879号及びValgeirsson等、Journal of Medicinary Chemistry 2004 47(27)6948−6957に即に記載されているように合成するか、又はシアノ置換アリールハロゲン化物とアリールボロン酸との間のパラジウム触媒によるSuzukiクロスカップリング反応の後、得られたシアノ誘導体を対応するテトラゾリル誘導体に変換することにより容易に合成することができる。
【0101】
この後者の実験手順の例として、アニリン中間体C及びDの合成をスキーム2に報告する。ベンズアニリドXの合成の例として、新規の中間体Eの実験手順が報告されている。次いで、ベンズアニリドXを乾燥トルエン(約100℃)中で五塩化リンで処理し、対応する塩化イミノイルを生成し(Elyo F等、European Journal of Medicinal Chemistry 1974 9(6)602−6に記載されているとおり)、次いで無水ヒドラジン又はヒドロキシルアミンの溶液と反応させて、対応するカルボヒドラゾンアミド又はアミドキシム(W)を得た。得られたカルボヒドラゾンアミド又はアミドキシムは最終的に、1,1’−チオカルボニルジイミダゾール、CDI又はトリホスゲンで閉環させて、スキーム1に記載の誘導体Qを得る。
【化7】

【0102】
4−アミノ−4’−クロロ−ビフェニル−3−カルボニトリル(中間体化合物)(C)
市販の2−アミノ−5−ブロモ−ベンゾニトリル(5.5g、1eq)、4−クロロベンゼンボロン酸(4.8g、1.1eq)、炭酸カリウム(12.7g、3.3eq)、ジメトキシエタン(80ml)及び水(40ml)の混合物に、塩化ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(0.2g)を加える。得られた混合物を24時間還流し、次いで蒸発乾燥させる。溶離液としてジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製する(5.32g、収率83%)。
【0103】
4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルアミン(中間体化合物(D)
4−アミノ−4’−クロロ−ビフェニル−3−カルボニトリル(5.3g、1eq)、アジ化ナトリウム(2.3g、1.5eq)及び塩酸トレチルアミン(4.9g、1.5eq)の混合物を、トルエン40mlに懸濁し、終夜加熱(60℃)する。室温まで冷却した反応混合物に、水及び4M HClを加え、白色沈殿物として表題化合物を得る。これを濾過により回収し(4.83g、収率77%)、更なる精製なしに次のステップで使用する。
【0104】
N−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミド(中間体化合物)(E)
ピリジン(4ml)中の3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン(0.25g)(US第2002037905号に記載されているように調製)の撹拌溶液に、市販の3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(0.226g、1eq)を少量づつ加え、室温で12時間撹拌し続ける。得られた反応混合物を蒸発乾燥させ、固体残渣を1N HCl及び水で洗浄し、次の反応にそのまま使用する(0.41、収率91%)。[M−H]−のLC−ESI−HRMSは、544.0804Da.計算値544.081987Da、dev.−2.9ppmを示す。
【0105】
N−アミノ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン(1)
窒素下で保持した乾燥トルエン(25ml)及び乾燥塩化メチレン(3ml)中の中間体E(0.4g)の撹拌溶液に、五塩化リン(0.76g、5eq)を加え、混合物を20時間還流する。次いで、反応混合物を蒸発乾燥させ、残渣を乾燥テトラヒドロフラン(40ml)中に溶解し、−10℃まで冷却する。これに、市販のテトラヒドロフラン(7.3ml、10eq)中の1Mのヒドラジン溶液を加え、反応混合物を自然に室温に達するようにさせ、室温で更に3時間撹拌する。新しい反応混合物を蒸発乾燥させると黄色の油が得られ、それを5mlの石油エーテル40−60で処理すると結晶化した(0.39g、収率95%)。この粗固体を塩化メチレン/石油エーテル(40−60)から結晶化することにより容易に精製した。[M−H]−のLC−ESI−HRMSは、558.1085Da.Calc.558.10887Da、dev.−0.7ppmを示す。
【0106】
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−4−[3−(2H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−2,4−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−3−オン(2)
乾燥ピリジン(3ml)中の化合物1(0.35g)の撹拌溶液に、トリホスゲン(0.111g、0.6eq)を加え、室温で20分撹拌し続ける。溶液を70℃で5時間加熱し、ピリジン溶液をprep−LCMSにより精製し、白色固体として表題化合物を得る(0.04g、収率11%)。H−NMR(DMSO−d):12,43(1H、s、NH)、8.41−7.60(10H、m、芳香族)。
【0107】
N−ヒドロキシ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン(3)
窒素下で保持した乾燥トルエン(40ml)及び乾燥塩化メチレン(6ml)中の中間体E(1.00g)の撹拌溶液に、五塩化リン(1.9g、5eq)を加え、混合物を20時間還流する。次いで、反応混合物を蒸発乾燥させ、油残渣を乾燥テトラヒドロフラン(15ml)中に溶解し、窒素下で、0℃にて、無水エタノール(50ml)中の過剰量のヒドロキシルアミンの撹拌溶液中にカニューレで滴下する。この撹拌溶液は、熱無水エタノール中でナトリウムメトキシド(0.99g)及び塩酸ヒドロキシルアミン(1.27g)を混合し、沈殿した無機材料を濾過除去することにより調製する。反応混合物を室温で20時間撹拌し、次いで蒸発乾燥させる。得られた固体残渣をprep−LCMSにより精製し、黄色固体として表題化合物を得る(0.48g、収率約47%)。[M−H]−のLC−ESI−HRMSは、559.0917Da.Calc.559.092886Da、dev.−2.1ppmを示す。
【0108】
(実施例2)
生物活性
電気生理学的決定
本実験において、ヒトBKチャネルを発現できるXenopus Oocytesで電気生理学的に決定した際の膜電流上に対する本発明の化合物の影響を調べた。チャネルを通過する電流は、伝統的な2電極電圧クランプ技術を用いて記録される。
【0109】
これらの決定の結果は、以下の表1に示されており、基礎電流と比したBK電流の増加として示されている。
【0110】
表1
BK電流への影響
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1のベンズアミジン誘導体、
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、それらのN−オキシド、又はそれらの医薬として許容できる付加塩
[式中、Bは存在しなくてもよく(即ち、複素環が形成されておらず)、存在しない場合、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、AはNH若しくはOHを表し、又は
Bは存在してもよく(即ち、複素環の一部を形成する)、存在する場合、Bは、C=O若しくはC=Sを表し、AはNH若しくはOを表し、
はテトラゾリル基を表し、
及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよく、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す]。
【請求項2】
Bは存在せず(即ち、複素環が形成されておらず)、Bに隣接する窒素は水素を保持し(即ち「NH」)、
AはNH又はOHを表す、請求項1に記載のベンズアミジン誘導体又はその医薬として許容できる付加塩。
【請求項3】
Bは存在し(即ち、複素環の一部を形成する)、C=O又はC=Sを表し、
AはNH又はOを表す、請求項1に記載のベンズアミジン誘導体又はその医薬として許容できる付加塩。
【請求項4】
はテトラゾリル基を表わす、請求項1から3までのいずれか一項に記載のベンズアミジン誘導体又はその医薬として許容できる付加塩。
【請求項5】
及びRは、互いに独立に水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、フェニルは、ハロ、トリフルオロメチル及び/又はヒドロキシで1回又は複数回場合により置換されていてもよい、請求項1から4のいずれか一項に記載のベンズアミジン誘導体又はその医薬として許容できる付加塩。
【請求項6】
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及び/又はフェニルを表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のベンズアミジン誘導体又はその医薬として許容できる付加塩。
【請求項7】
N−アミノ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン;
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−4−[3−(2H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−2,4−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−3−オン若しくは
N−ヒドロキシ−N’−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]−3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミジン、又は
それらの医薬として許容できる付加塩である、
請求項1に記載のベンズアミジン誘導体。
【請求項8】
1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体及び/又は希釈剤と共に、請求項1から7までのいずれか一項に記載の治療上有効な量のベンズアミジン誘導体、又はその医薬として許容できる付加塩若しくはそのプロドラッグを含む医薬組成物。
【請求項9】
ヒトを含む、哺乳動物の、カリウムチャネルの調節に反応する疾患、障害又は状態の治療、予防又は緩和のための組成物/薬剤の製造のための請求項1から7までのいずれか一項に記載のベンズアミジン誘導体、又はその医薬として許容できる付加塩の使用。
【請求項10】
疾患、障害又は状態が、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管痙攣、冠動脈痙攣、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎障害、多発性嚢胞腎、膀胱の過剰興奮性、膀胱痙攣、泌尿生殖器疾患、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起障害、胃腸障害、胃腸運動低下、胃腸運動不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流症、分泌性下痢、閉塞性若しくは炎症性の気道疾患、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、運動失調、外傷性脳損傷、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、自閉症、不安神経症、気分障害、鬱病、躁鬱病、精神病性障害、認知症、学習障害、加齢による記憶喪失、記憶障害及び注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、月経困難症、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、口腔乾燥症、心血管障害、高血圧症、筋強直性ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、痙性、口腔乾燥症、II型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、結腸炎、クローン結腸炎、免疫抑制、難聴、片頭痛、疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、高眼圧症(緑内障)又は脱毛症である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含む、生きている動物体の、カリウムチャネルの調節に反応する疾患、障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、それを必要とするような生きている動物体に、請求項1から7までのいずれか一項に記載の治療上有効な量のベンズアミジン誘導体を投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2010−526119(P2010−526119A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506928(P2010−506928)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055628
【国際公開番号】WO2008/135591
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】