説明

カルバマート官能基を有するポリジオルガノシロキサン、それらの調製、および繊維工業における柔軟剤としてのそれらの使用

本発明は、分岐カルバマート官能基を有するポリジオルガノシロキサン油、それらの調製、および繊維工業における柔軟剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐カルバマート官能基を有するポリジオルガノシロキサン、それらの調製、および繊維工業における柔軟剤としてのそれらの使用に関する。アミノ官能性またはアミド官能性シリコーン化合物についての膨大な文献が存在する。これらの化合物は、繊維工業において例えば可塑剤として、表面処理剤として、増粘剤として、または化粧品工業において使用される。それにもかかわらず、優れた手触りを有する製品をもたらし、使用の際にエマルジョンが不安定であるという欠点のない柔軟化物質が、繊維工業において必要とされている。
【背景技術】
【0002】
米国特許4,104,296号明細書(特許文献1)は、少なくとも3個の炭素原子を有する1つの2価ヒドロカルビル残基を介してシリコーン鎖に結合しているヒドロキシアルキルアミド官能基を有する、有機官能性シリコーン成分を記載している。シリコーン成分は、アミノアルキルシランまたはアミノアルキルシロキサンと、C〜Cの鎖長を有するα,β−ヒドロキシカルボン酸から得られるラクトンとの反応によって調製される。これらの成分は、様々な樹脂の無機物質に対する接着を向上させると考えられている。
【0003】
国際公開2008/008077号(特許文献2)は、エンドキャップされたアミノ官能性ポリオルガノシロキサンと、イソシアナートまたは環状カルボナートとの反応により調製される、カルバマート官能性ポリオルガノシロキサンを記載している。これらの化合物はさらに、それらの遊離OH基を介しラクトンと反応してポリシロキサン−ポリラクトンポリマーを生成する。こうして得られる官能化ポリシロキサンは、海洋環境中の防汚物質のような、様々な状況において有用であり得る。
【0004】
側鎖窒素原子を有する特定のシリコーン油が、環状カルボナートと容易に反応して対応するカルバマート官能化シリコーン油を生成すること、およびこれらの化合物が、繊維工業において柔軟剤として使用されると驚くほど良好な特性を有する安定な水性分散液へと処理することができ、快適で柔らかい手触りを有する製品をもたらすことも、今回見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許4,104,296号明細書
【特許文献2】国際公開2008/008077号
【特許文献3】米国特許3355424号明細書
【特許文献4】米国特許2947771号明細書
【特許文献5】米国特許3890269号明細書
【特許文献6】米国特許5,302,657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、向上した柔軟な感触特性に加えて高い耐黄変性を示し、高剪断適用システムに困難なく適用できる、特に仕上げ剤のための分岐カルバマート官能基を有するポリジオルガノシロキサンを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態において、本発明は、分岐カルバマート官能基を有する一般式(I)のポリジオルガノシロキサン
【0008】
【化1】

に関し、式中、
は同一または異なる1価のC〜C18炭化水素残基を表し、
mは1〜50の平均値を有し、
nは10〜1500の平均値を有する。
【0009】
〜C18炭化水素残基Rの例としては、アルキル残基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル残基、ヘキシル残基、n−ヘプチル残基などのヘプチル残基、2,2,4−トリメチルペンチル残基などのオクチル残基およびイソオクチル残基、n−ノニル残基などのノニル残基、n−デシル残基などのデシル残基、n−ドデシル残基などのドデシル残基など、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル残基、およびメチルシクロヘキシル残基などのシクロアルキル残基、フェニルおよびナフチル残基などのアリール残基、o−、m−、p−トリル残基、キシリル残基、およびエチルフェニル残基などのアルカリル残基、ベンジル残基、α−およびβ−フェニルエチル残基などのアラルキル残基が挙げられる。
【0010】
上記の炭化水素残基は、場合により脂肪族二重結合を含む。それらの例は、ビニル、アリル、5−ヘキセン−1−イル、E−4−ヘキセン−1−イル、Z−4−ヘキセン−1−イル、2−(3−シクロヘキセニル)エチル、およびシクロドデカ−4,8−ジエニル残基などのアルケニル残基である。脂肪族二重結合を有する好ましい残基は、ビニル、アリル、および5−ヘキセン−1−イル残基である。しかし、最大で1%の炭化水素残基Rが二重結合を含むのが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の一般式(I)において、好ましくは独立に、
がメチルおよび/またはフェニルを表し、
mが1〜10の値を有し、
nが40〜600の値を有する。
【0012】
式Iの化合物は、最初に式(II)のアミノアルキル分岐ポリジオルガノシロキサンを合成することによって生成させてもよい。これらのアミノ置換ポリジオルガノシロキサンの合成は、米国特許号明細書3355424(特許文献3)、米国特許号明細書2947771(特許文献4)、米国特許号明細書3890269(特許文献5)に公開されるように当業者に公知であり、アルキルアミノ基を有するジアルコキシアルキルシラン単位がシロキサンの鎖中に挿入されることへとつながる重縮合反応である。反応は通常、酸性またはアルカリ性触媒の存在下で行われる。反応はジアルコキシアルキシランおよび環状シロキサンを用いる重合反応として行うこともできる。
【0013】
続いて、グリセリンカルボナート(式Aの化合物)などの環状カルボナートを加えて、式(I)のヒドロキシアルキルカルバマート分岐ポリシロキサンポリマーを生成させる。
【0014】
したがって、本発明の別の実施形態は、式(II)のアミノ官能性ポリジオルガノシロキサンを、以下の化合物(A)と反応させることによる、上記の式Iのポリジオルガノシロキサンの調製である。
【0015】
【化2】

(式中、Rは式(I)における通りに定義され;Rは−Hまたは−CH−CH−NHであり、
mは1〜50の平均値を有し、
nは10〜1500の平均値を有する)
【0016】
【化3】

【0017】
上記の式(II)において、好ましくは独立に、
がメチルおよび/またはフェニルを表し、
mが1〜10の値を有し、
nが40〜600の値を有する。
【0018】
好ましい一般式(II)の分岐アミノ官能性ポリジオルガノシロキサンは、直鎖α,ωジメチルポリジメチルシロキサンである。
【0019】
式IIの化合物中の滴定可能な窒素の含量は、好ましくはAn=0.01mmol/g〜2.0mmol/g、特に0.1mmol/g〜1.0mmol/gである。Anはアミン数を表す。一般式(II)の分岐アミノポリジオルガノシロキサンは、好ましくは平均粘度が25℃で50〜100,000センチポアズ、特に100〜15,000センチポアズである。
【0020】
反応は場合により適切な溶媒の存在下で行ってもよい。好ましいのはアルコールまたはケトンなどの極性溶媒であり、その例はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、またはエチルメチルケトンである。
【0021】
好ましくは、反応は使用する溶媒に応じて40〜150℃の範囲内の温度で行う。
【0022】
より好ましくは、反応は80〜120℃の範囲内の温度で溶媒を用いずに行う。
【0023】
式Iの得られる化合物中の滴定可能な窒素の含量は、好ましくはAn=0.1mmol/g未満である。Anはアミン数を表す。
【0024】
一般式(I)のポリジオルガノシロキサンは、好ましくは水性配合物の形態で使用される。好ましくは配合物はエマルジョンである。
【0025】
全組成物を基準として、そのような配合物は2〜80重量%の1つまたは複数の式(I)のポリジオルガノシロキサンを含有する。ポリジオルガノシロキサンのエマルジョンの適切な調製方法は、例えば米国特許号明細書5,302,657(特許文献6)で公知である。
【0026】
本発明において、エマルジョンは好ましくは、式Iのポリジオルガノシロキサン中に可溶な乳化剤を用いて2段階で調製され、第1段階で濃縮物が得られ、これは第2段階において水で希釈される。そのようなエマルジョンは、全組成物を基準として、2〜40重量%の1つまたは複数の乳化剤を含有する。
【0027】
特に好適なアニオン性乳化剤としては、以下が挙げられる。
【0028】
1.アルキルスルファート、特に8〜18個の炭素原子の鎖長を有するもの、および疎水性残基中に8〜18個の炭素原子を有し、1〜40個のエチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキルエーテルスルファート。
【0029】
2.スルホナート、特に8〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホナート、タウリド(tauride)、スルホコハク酸と1価アルコールまたは4〜15個の炭素原子を有するアルキルフェノール(場合により、これらのアルコールまたはアルキルフェノールは1〜40個のEO単位でエトキシ化されていてもよい)とのエステルおよび半エステル。
【0030】
3.アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアラルキル残基と共に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ塩およびアンモニウム塩。
【0031】
4.リン酸部分エステルおよびそれらのアルカリ塩およびアンモニウム塩、特に有機残基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスファートおよびアルキルアリールホスファート、アルキルまたはアルカリル残基中に8〜20個の炭素原子を有し1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルまたはアルカリルエーテルホスファート。
【0032】
特に好適な非イオン性乳化剤としては、以下が挙げられる。
【0033】
1.アルキルポリグリコールエーテル、好ましくは4〜40個のEO単位および8〜20個の炭素原子のアルキル残基を有するもの。
【0034】
2.アルキルアリールポリグリコールエーテル、好ましくは4〜40個のEO単位を有しアルキルおよびアリール残基中に8〜20個の炭素原子のアルキル残基を有するもの。
【0035】
3.エチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックポリマー、好ましくは4〜40個のEOまたはPO単位を有するもの。
【0036】
4.6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸。
【0037】
5.天然物質およびそれらの誘導体、例えばレシチン、ラノリン、サポニン、セルロース;アルキル基がそれぞれ4個までの炭素原子を含む、セルロースアルキルエーテルおよびカルボキシアルキルセルロースなど。
【0038】
6.極性基を含む直鎖ポリジオルガノシロキサン、特にポリエーテル基を含む直鎖ポリジオルガノシロキサン。
【0039】
7.8〜24個の炭素原子を有する飽和および不飽和アルコキシ化脂肪アミン。
【0040】
特に好適なカチオン性乳化剤としては、以下が挙げられる。
【0041】
8.8〜24個の炭素原子を有する1級、2級、および3級脂肪アミンと、酢酸、塩酸、およびリン酸との塩。
【0042】
9.4級アルキルベンゼンアンモニウム塩、特にアルキル基が6〜24個の炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、スルファート、ホスファート、およびアセタート。
【0043】
10.アルキルピリジニウム、アルキルイミダゾリニウム、およびアルキルオキサゾリニウム塩、特にアルキル鎖が18個までの炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、スルファート、ホスファート、およびアセタート。
【0044】
エマルジョンの調製に適した乳化剤としてはさらに、脂肪酸ポリグリコールエステル、ポリエトキシ化脂肪酸グリセリドおよびソルビタンエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルエーテルカルボン酸、アルカリルエーテルカルボン酸、エトキシ化4級アンモニウム塩、アミンオキシド、ベタイン、スルホベタイン、およびスルホスクシナートが挙げられる。
【0045】
場合により、有機ヒドロトロピー剤(hydrotropic agent)を、式Iの化合物の水性配合物中で全組成物を基準として0〜20重量%の量で使用できる。「ヒドロトロピー剤」とは、難溶性の物質の水溶性を改善しそのため可溶化剤として作用する物質を意味する。同時に、ヒドロトロピー剤は処理しようとする物質の粘度を低下させる。
【0046】
ヒドロトロピー剤は多官能性アルコールの群から選択できる。したがって、1分子当たり2〜10個、好ましくは2〜6個、特に2〜4個の炭素原子を有するジアルコールを使用できる。それらのモノエーテルおよびジエーテル、ならびにこれらのジアルコールのモノエステルおよびジエステルもまた十分に適している。使用することになるそれらの例としては、より好ましくは1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびブチルジグリコールが挙げられる。
【0047】
場合により、式(I)のポリジオルガノシロキサンの配合物は0〜96重量%の水を含有する。
【0048】
場合により、無機酸および有機酸の両方、および/またはそれらの無水物を、全組成物を基準として0〜5重量%の量で、配合物のpHを調整するために使用できる。したがって、例えば塩酸、硫酸、またはリン酸が無機酸として使用される。あるいは、有機酸を使用してもよく、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、アルドン酸(グルコン酸など)、アスコルビン酸、またはウロン酸(グルクロン酸など)、および多塩基酸として、例えばシュウ酸、クエン酸、またはアルダル酸(グルカル酸など)、または粘液酸などなどである。有機酸の無水物の例として、無水酢酸を挙げることができる。
【0049】
配合物(特にエマルジョン)の形成は、10〜90℃の範囲内の温度で、0.5〜10時間、均一に混合しながら行うことができる。好ましいのは20〜70℃の範囲内の温度である。
【0050】
本発明による配合物(特にエマルジョン)が形成されるまでの反応時間は、適用される温度によって決まる。そのため、非常に低温では、反応時間は好ましくは5〜10時間であるが、一方高温では、より短い反応時間、特に0.5〜5時間の反応時間で十分である。
【0051】
本発明はさらに、特に柔軟で上品な製品の感触を得るための水性浴および適用液中での有機繊維および布地の仕上げにおける式(I)のポリジオルガノシロキサンを使用に関し、、場合により慣用のアミノ官能修飾ポリジオルガノシロキサンと共に使用される。
【0052】
パディング装置(padding machine)において使用される場合、パディングによる強制的な(forced)適用を特に挙げることができ、ドライ・イン・ウェット(dry−in−wet)法およびウェット・イン・ウェット(wet−in−wet)法の両方を使用してもよい。吸尽(Exhausting)、噴霧、または泡による適用法もまた、エマルジョンを適用するのに十分に適している。
【0053】
本発明による式(I)のポリジオルガノシロキサンの配合物で仕上げ処理された白色布地材料は、類似の従来型のアミノ官能性ポリジオルガノシロキサンのエマルジョンと比較して、熱ストレスの間に加えられる高温に起因した黄変が著しく低減されている。
【0054】
これらの有利な特性に加えて、本発明によるエマルジョンは強アルカリ性または強酸性のpH値であっても適用中の安定性が高い。そのため、極めて好ましくない条件が積み重なったとしても、例えば高速の布地仕上げ装置では通例であるような、例えば高pH値および/または高い液温および/または非常に高い剪断応力が同時に起こる場合でも、合体により引き起こされるシリコーン油の沈殿、およびそれに伴う布地製品上のしみが防止される。
【0055】
剪断安定性、黄変およびpH安定性の点で同様の特性プロファイル有するカチオン官能化ポリジオルガノシロキサンのエマルジョンを上回る利点は、本発明による配合物(特にエマルジョン)の著しくより優れたアニオン安定性である。カチオン官能化ポリジオルガノシロキサンのエマルジョンは多くの場合、例えば持ち越されたアニオン性色素残存物またはアニオン性布地補助剤の存在下で、シリコーン油の沈殿および布地製品への移動を引き起こす傾向があり、これは本発明による電気的に中性のカルバマート官能性アミノポリジオルガノシロキサンのエマルジョンが使用される場合には起こらない。
【0056】
本発明によるカルバマート官能性ポリジオルガノシロキサンのエマルジョンは、セルロース架橋剤、架橋触媒、脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミン濃縮品に基づく布地柔軟剤、様々な組成の感触改変ポリマー分散液、および光学的増白剤などの、布地の仕上げにおいて通例である他の化学品といつでも組み合わせてもよい。
【0057】
下記の例は本発明を説明するものとするが、限定的なものとはしない。

【0058】
例において使用される物質:アミノプロピルジメトキシメチルシラン(APMDS)、アミノエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン(DYNAS)(両方ともEvonik(登録商標)Dynasilanシリーズより)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、α,ω−ジヒドロキシ−ポリジメチルシロキサン(Dow Corning(登録商標)200 fluidシリーズ)、およびα,ω−ジメチル−ポリジメチルシロキサン(Wacker(登録商標)AKシリーズ)、Huntsman Chemicals製のJeffsol(登録商標)GCという名称のグリセリンカルボナート。Aldrich Chemicals製のベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中40%溶液)。すべての物質はさらに精製せずに受け取ったままの状態で使用される。
【0059】
式IIの化合物の製造方法
アミノエチルアミノプロピル基を含有するα,ω−アルキル末端ポリジアルキルシロキサンについて、対応する合成は主に、100〜800部のα,ω−ジメチル−ポリジメチルシロキサンを、100〜1000部のα,ω−ジヒドロキシル−ポリジメチルシロキサンまたはオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび10〜150部のアミノプロピルジメトキシメチルシラン(APMDS)またはアミノエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン(DYNAS)と、触媒量のベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの存在下で反応させることによって行われる。オリゴマーの分子量は、関連するアミンに対するα,ω−ジメチル−ポリジメチルシロキサンの比を変化させることによって調整される。反応は80℃にて10時間行われる。反応の完了後、温度を170℃に上昇させ、その温度で1時間保って触媒を分解させる。これにより、m+nが30〜600の数である次式の化合物が得られる。
【0060】
【化4】

【0061】
式Iの化合物の製造方法
例1
4.69g(0.04mol)のグリセリンカルボナートを、滴定可能な窒素の含量がAn=0.53mmol/gである50gのアミノエチルアミノプロピル基含有α,ω−メチル末端ポリジメチルシロキサンへ室温にて加える。混合物を120℃にて8時間撹拌する。得られる白色の油は、最終的な滴定可能窒素の含量がAn=0.015mmol/gである。転化率:97%。この方法により、m+nが70〜100の数である次式の生成物が得られる。
【0062】
【化5】

【0063】
例2
6.4g(0.051mol)のグリセリンカーボナートを、滴定可能な窒素の含量がAn=0.98mmol/gである50gのアミノエチルアミノプロピル基含有α,ω−メチル末端ポリジメチルシロキサンへ加える。混合物を60℃にて90分間撹拌する。得られる油を室温まで冷却した。その窒素含量はAn=0.06mmol/gと測定された。粘度:3620Cps。転化率:94%。
【0064】
例3〜6
表1は式IIの様々なアミノエチルアミノプロピル−ポリジメチルシロキサンをグリセリンカーボナートと反応させた反応生成物の特性のさらなる例を示している。反応は以下の反応パラメータにより例1および2のように行った。An:出発原料の初期アミン含量。An:得られるポリマーの最終アミン含量。ジメチルシロキサン単位およびメチル−アミノシロキサンの合計を、下記の表中でm+nとして示す。
【0065】
【表1】

【0066】
例7
エマルジョン法
例2に従って得られる25gの化合物を、7個のエチレンオキシド単位を有する11gのイソトリデシルエトキシラート、5gのヘキシレングリコール、および64gの水へ室温にて加える。この混合物を室温にて90分間撹拌する。得られるマイクロエマルジョンを酢酸でpH5に調整する。
【0067】
比較例1
粘度が3300mp・sでありAnが0.1mmol/gである滴定可能な窒素含量を有する、36gのアミノエチルアミノプロピル基含有ポリジオルガノシロキサンを、5個のエチレンオキシド単位を有する6gのイソトリデシルエトキシラート、20gの7個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルエトキシラート、および70gの水の混合物へ加えた。混濁エマルジョンを別の68gの水で希釈し、酢酸でpH6に調整して透明なマイクロエマルジョンを得た。
【0068】
特性の評価
例7および比較例1の方法に従って作製される、例1〜6で得られる化合物のエマルジョンを、以下の特性に関して試験する。
【0069】
a)ポリジオルガノシロキサンエマルジョンの酸性媒体中の剪断安定性を、濃度が20g/lである400mlの溶液を調製し、40℃に加熱し、酢酸でpH5に調整することによって試験する。次いで、液体を高速撹拌機(24,000rpm、Janke&Kunkelが供給するUltra Turrax)で1分間撹拌する。24時間後の液体の外観を、濁りおよび沈殿に関して評価する。
【0070】
b)ポリジオルガノシロキサンエマルジョンの弱アルカリ性媒体中の剪断安定性を、濃度が20g/lである400mlの溶液を調製し、40℃に加熱し、10%アンモニア水溶液でpH7.5に調整することによって試験する。次いで、液体を高速撹拌機(24,000rpm、Janke&Kunkelが供給するUltra Turrax)で1分間撹拌する。24時間後の液体の外観を、濁りおよび沈殿に関して評価する。
【0071】
c)アニオン安定性:200mlの水を6gのポリジオルガノシロキサンエマルジョンおよび20gの色素溶液(0.48g/lのSolar Discharge Orange 3LG、および0.24g/lのIndosol Rubinol SF−RGN、両方ともthe Clariant Produkte(Schweiz)GmbHの製品)と混合し、続いて60%酢酸でpH5に調整する。液体をパドル撹拌機で2000rpmにて10分間撹拌し、24時間後に評価する。
【0072】
d)感触特性の評価:感触特性を評価するために、経験豊富なチームを編成し、このチームは例1〜6による化合物のエマルジョンで仕上げ処理され比較例1に従って処理された生地の匿名の感触試料を、0〜10の相対的スケールによりハンド試験を用いて評価し、10の値が最高に柔軟な感触特性を表す。比較試料として、試験シリーズの未処理の生地が含まれる。
【0073】
柔軟性もhandle−0−meter(例えば21 1−5 Twing Albert)を用いて試験できる。仕上げ処理された試料を、評価の前に最初にコンディショニングする(24時間、20℃、相対湿度65%)。
【0074】
e)黄変の傾向の評価。例1〜6による化合物のエマルジョンでの記載の仕上げを行い、比較例1に従って処理した後、上記の光学的増白剤処理した綿織物(100g/m2)を、さらに180℃で1分間乾燥させる。120℃で乾燥後、および180℃で処理した後に、黄変の傾向を評価する。比較試料として、試験シリーズの未処理の生地が含まれる。
【0075】
黄変の度合いは、色測定装置(Minolta Chromameter CR 331C)により立証され、b+値としてとして表される。黄変の減少傾向は、b+値が小さくなることを意味する。
【0076】
適用例
以下の仕上げの操作を行う。
【0077】
吸尽法:
基材(トリコット生地、染色済み、セット処理有りまたは無しの100%綿、またはポリエステル(50%)/綿(50%))を、基材を基準として0.5%〜4.0%の例1〜6による最終生成物を含有する水性液体に、約40℃で6:1〜20:1の液体比で実験用ジェット装置(laboratory jet)中で加える。pH5.0〜6.0(40℃)で20分基材を連続的に撹拌後、基材を液体から取り出し、遠心脱水し張力をかけずに140℃で70〜90秒乾燥させる。
【0078】
パディング法
基材(トリコット生地または織物、染色済み、セット処理有りまたは無しの100%綿、またはポリエステル(50%)/綿(50%)、またはポリエステル(100%)、またはポリアクリロニトリル(100%)、またはナイロン6(100%))を、室温にて、乾燥重量で100%増加するまで、例1〜7による15〜60g/lの最終生成物を含有する水性液体でパディングする。パディングした材料を、続いて140℃で70〜90秒乾燥させる。
【0079】
結論
適用例により、仕上げ処理された布地基材の、非常に柔軟、快適、絹様の、上品な感触が得られる。加えて、得られる生地は高復元力および向上したしわ防止特性を有する。さらに、仕上げ処理品は、比較例1により仕上げ処理された生地と比較して、より良好な親水性を示す。さらに、仕上げ処理品は経時による黄変を示さない。例7に従って作製されたエマルジョンは、良好な全般的安定性(pH安定性および剪断力)および樹脂との優れた適合性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐カルバマート官能基を有する一般式(I)のポリジオルガノシロキサン
【化1】

(式中、
は同一または異なる1価のC〜C18炭化水素残基を表し、
mは1〜50の平均値を有し、
nは10〜1500の平均値を有する)。
【請求項2】
が同一または異なるメチルおよび/またはフェニルであり、
mが1〜10の値を有し、
nが40〜600の値を有する、
請求項1に記載のポリジオルガノシロキサン。
【請求項3】
一般式(II)のアミノ官能性ポリジオルガノシロキサン
【化2】

(式中、
は式(I)における通りに定義され;
は−Hまたは−CH−CH−NHであり、
mは1〜50の平均値を有し、
nは10〜1500の平均値を有する)
を、以下の化合物(A)〜(E)
【化3】

と反応させることによる、請求項1または2に記載のポリジオルガノシロキサンを調製する方法。
【請求項4】
が同一または異なるメチルおよび/またはフェニルを表し、
mが1〜10の値を有し、
nが40〜600の値を有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水性浴および適用液中での有機繊維および布地の仕上げのための、請求項1または2に記載のカルバマート官能性ポリジオルガノシロキサンの使用。
【請求項6】
ポリジオルガノシロキサンを、水性配合物の形態、好ましくはエマルジョンの形態で使用することを特徴とする、請求項5に記載の使用。

【公表番号】特表2011−522944(P2011−522944A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512987(P2011−512987)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057262
【国際公開番号】WO2009/150213
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】