説明

カルボン酸の製造方法

【課題】品質の良いポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を、連続攪拌槽型反応器を用いて効率良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】連続攪拌槽型反応器を用いて、貴金属触媒を含有する液相に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとアルカリ物質、及び酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させてカルボン酸を製造する際に、連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を25〜98%に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの末端をカルボン酸で置換した化合物であり、化粧品、乳化剤、可溶化剤、分散剤、ゲル化剤、洗浄基剤等に使用することができる界面活性剤として知られている。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩は、pHを変化させることによりその性質を調整することができる。耐硬水性に優れ、水溶液はアルミニウム等の各種多価金属イオンに対して安定であり、皮膚に対する作用が穏和であり、酵素阻害性も少ないため、各種用途での応用が期待される。
【0003】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩の製造方法は種々知られているが、その一つに、貴金属触媒の存在下でポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させる方法が知られている(特許文献1〜3)。また、特許文献4には、ポリアルコキシアルコールまたは脂肪アルコールアルコキシレートを酸化してエーテルカルボン酸を製造するにあたり、ポリアルコキシアルコールまたは脂肪アルコールアルコキシレートにエーテルカルボン酸を加えて行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−169644号公報
【特許文献2】特開昭62−198641号公報
【特許文献3】特開昭62−269746号公報
【特許文献4】特開平1−146840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、貴金属触媒の存在下でポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させる方法では、ある程度の反応率(例えば60%程度)を得るために比較的長時間を要する。特許文献4の製法は、反応時間を短縮し得る方法であるとされているが、色相等、品質の良いポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を短時間で効率よく製造するための具体的な条件等については十分に言及されていない。とりわけ、連続攪拌槽型反応器等、工業的な製法で使用し得る装置を用いて、連続的にエーテルカルボン酸を製造する場合に、色相の良いポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を効率よく製造できる方法については特段の示唆はない。
【0006】
本発明の課題は、品質の良いポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩を、連続攪拌槽型反応器を用いて効率良く製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、連続攪拌槽型反応器を用いて、貴金属触媒を含有する液相に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、及び酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させてカルボン酸を製造する、カルボン酸の製造方法であって、連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を25〜98%に制御する、カルボン酸の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色相等、品質の良いポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を、連続攪拌槽型反応器を用いて効率良く製造できる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
RO−(AO)n−H (I)
〔式中、Rは炭素数4〜30の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、nはAOの平均付加モル数であり、1〜100の数である。〕
【0010】
式中の構造は、目的とするカルボン酸の性能、用途等に応じて適宜決定できるが洗浄基剤としての性能の観点からは、Rの炭素数は10〜14が好ましい。Rの炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。また、Rは直鎖でも分岐鎖でもよく、1級、2級でもよい。原料としての汎用性や経済性の観点からは、AOは炭素数2のエチレンオキシ基が好ましく、全AOのうち80モル%以上がエチレンオキシ基であることが好ましい。反応液中における流動性の観点からは、nは1〜10が好ましい。尚、勿論一般式(I)で表される複数の構造の原料を混合した状態で反応することもできる。
【0011】
液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの濃度は、1〜30重量%、更に5〜25重量%が好ましく、特に10〜23重量%が好ましく、連続攪拌槽型反応器における濃度がこの範囲となるように制御することが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる貴金属触媒は、白金族元素から選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましい。具体的には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましく、パラジウム及び白金から選ばれる1種以上の元素を含有することがより好ましい。
【0013】
また、貴金属触媒が、白金族元素から選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第1成分という)を含有する場合、更に、触媒成分として、スズ、ビスマス、セレン、テルル及びアンチモンから選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第2成分という)を含有することが好ましい。
【0014】
更に、貴金属触媒が、触媒第1成分及び触媒第2成分を含有する場合、更に、触媒成分として、希土類元素から選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第3成分という)を含有することができる。
【0015】
貴金属触媒は、担体に担持させた担持触媒として用いられるのが好ましい。担体は無機担体が好ましく、例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、珪藻土等が挙げられる。なかでも共存するアルカリ物質に対する耐久性の観点で活性炭が好ましい。触媒第1成分の担持量は、担持触媒全体の0.1〜20重量%、更に1〜15重量%、更に2〜13重量%が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる貴金属触媒は、特開昭62−269746号公報等、公知の方法で製造することができる。例えば、触媒第1成分の元素を含む化合物(塩化パラジウム、塩化白金酸等)の水溶液、触媒第2成分の元素を含む化合物(塩化ビスマス、五塩化アンチモン等)の水溶液、必要に応じて触媒第3成分の元素を含む化合物(塩化セリウム、塩化ランタン等)の水溶液を、水中で、活性炭等の担体に吸着させた後、触媒成分の還元処理を行う方法で製造できる。
【0017】
貴金属触媒は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して0.1〜20%(重量比)用いることが好ましく、更に0.5〜10%が反応性と経済性の観点から好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸素酸化は、アルカリ物質を含有する液相で行われる。アルカリ物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属水酸化物が好ましい。液相は水を含むことが好ましく、アルカリ物質は、液相のpHが10〜14となるような量で用いることが好ましい。
【0019】
液相となる液体としては、水が好ましく、有機溶媒(エタノール等の低級アルコール等)を使用することもできる。通常、水は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して、3〜100重量倍の量で用いられる。
【0020】
本発明では、連続攪拌槽型反応器を用いて、貴金属触媒を含有する液相に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、及び酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させてカルボン酸を連続的に製造する。その際、連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を25〜98%、好ましくは30〜98%、より好ましくは40〜98%に制御するものである。本発明では、連続攪拌槽型反応器を2つ以上を直列的に用いることが好ましい。連続攪拌槽型反応器を2つ以上直列的に用いて該カルボン酸を製造する場合は、2段目以降の連続攪拌槽型反応器には、25〜98%の反応率に対応して一定濃度でポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を含む液相が連続的に供給される。この場合、1段目の連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率は、全反応器で効率的に反応を行う観点から25〜60%に制御することが好ましく、27〜50%に制御することがより好ましい。また、連続攪拌槽型反応器を2つ以上直列的に用いて該カルボン酸を製造する場合は、最終段の連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を80〜98%に制御することが好ましく、83〜98%がより好ましく、85〜98%が更に好ましい。80%以上では反応後の精製が容易であり、98%以下では効率的に反応を行うことができる。
【0021】
本発明では、連続攪拌槽型反応器における反応率がそれぞれ上記範囲を維持するように制御することが好ましく、具体的には、連続攪拌槽型反応器に供給するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの流量、連続攪拌槽型反応器に在中する反応液量、連続攪拌槽型反応器に供給する酸素の流量を調整することが挙げられる。本発明では、液相へのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、及び貴金属触媒の連続的な供給と、供給量に応じた液相の抜き出しの両方を行う操作により連続攪拌槽型反応器中の液相の量を一定に維持しつつ、液相に酸素を供給してポリオキシエチレンアルキルエーテルを酸素酸化して、定常組成に到達させることが好ましい。なお、反応率は、反応液中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸のモル濃度に対して、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの合計したモル濃度にて除した値で定義される。
【0022】
各連続攪拌槽型反応器における液相への酸素の供給は、液相への酸素ガスもしくは酸素含有混合ガス(空気等)の吹き込みによって行うことができる。連続攪拌槽型反応器では、吹き込みの速度は、連続攪拌槽型反応器に供給するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの流量に対して酸素分子のモル比率が0.1〜2.0の範囲から選定でき、より好ましくは0.25〜1.0の範囲で選定される。
【0023】
本発明においては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸素酸化を行う際の反応温度は、50〜90℃、更に60〜80℃が好ましい。また、反応圧力は、酸素の反応液への溶解度を高める観点及び装置の耐圧性の観点から、絶対圧力として0(常圧)〜1.0MPa、更に0.1〜0.5MPaが好ましい。
【0024】
本発明においては、連続攪拌槽型反応器を用いて液相を撹拌しながらポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸素酸化を行う。攪拌効率の指標として、PV値が0.1以上、更に0.5以上、更に2以上であることが好ましい。ここでPV値とは流体単位体積当たりの撹拌所要動力を意味し、撹拌機の撹拌動力から攪拌による摩擦損失を差し引いた、即ち真の液相に伝えられる攪拌動力(kW)/反応液の体積(m3)で定義される。液相の撹拌は、例えば三枚後退翼、フルゾーン翼、タービン翼、マックスブレンド翼等の攪拌翼を備えた攪拌機により行うことができる。
【0025】
本発明では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、液相、貴金属触媒は、それぞれ、連続的もしくは断続的に、各連続攪拌槽型反応器に仕込むことができる。アルカリ物質は一般に水溶液として使用できるが、この仕込み方法としては、液相のpHが所定の値を維持するよう、連続的又は断続的に仕込んでもよい。
【0026】
粉末状態の触媒を用いた場合には、最終段の連続攪拌槽型反応器から供給される液相には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸と触媒が含まれているので、液相からろ過等の方法で触媒を除去する。触媒を除いた液相には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸が塩の形で溶解しているので、pH調整をした後、そのまま界面活性剤溶液として使用するか、或いは、塩酸等の鉱酸で酸分解して抽出工程を経て、遊離のカルボン酸を得ることができる。尚、触媒を固定床形式で連続攪拌槽型反応器に用いた場合には、先の触媒の除去は省略することも可能となる。
【0027】
本発明では、連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を25〜98%に制御しながらポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸を製造することから、反応器内の反応液の粘度上昇を抑制し、反応初期の誘導期間を回避して反応できるので、短時間で効率的に品質の良い該カルボン酸を製造することができる。
【0028】
連続流通方式の反応としては、連続攪拌槽型反応器の他に流通式管型反応器が知られているが、連続攪拌槽型反応器でのみ本発明の効果を得ることができる。流通式管型反応器は、「新版 化学工学」(社団法人化学工学会編、槇書店、1992年12月新版1刷発行)に記述されるように管内をピストンで押し出されるように移動する過程で反応が進むために、その移動方向に伴って回分方式の反応における反応時間が経過するが如く、反応組成が変化する。このため、反応が余り進行していない組成領域では顕著に増粘する挙動が発生し、輸送での課題が生じる他、反応時間の短縮効果も得ることはできない。本発明の対象とするポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸素酸化によるカルボン酸の製造では、連続攪拌槽型反応器を用いることにより、反応に悪影響を及ぼすと思われる反応率25%未満の組成状態をプロセス中に存在させずに運用できることに利点があるものと考える。
【0029】
連続攪拌槽型反応器の実用における運用形態としては、反応器内にて目標とする定常組成が形成できるのであれば、特に限定されない。連続運転の立ち上げ方法としては、反応器に反応原料を供給しながら、目標の定常組成が得られるまで時間経過を取る方法と、事前に定常組成に近づけた反応物を反応器内に充填して素早く定常組成に到達させる方法がある。また、連続攪拌槽型反応器における本発明の効果以外の利点として、直列に多段の槽を並べ、各反応器で滞留時間、酸素流量、反応圧力を任意に設定し、好適な生産性や品質を得ることができる。
【実施例】
【0030】
実施例1
一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが5.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを17.8g/時間、48%水酸化ナトリウムを66.8g/時間、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を21.0重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを4.2g/時間、空気を常圧、25℃(以下の実施例及び比較例においても空気は常圧、25℃である)で95.2mL/分の速度で500mLのフラスコに供給し、フラスコ中の反応液の在中量が219mLとなるように維持しながら、連続的に反応液を抜き出した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ1.1cm、6枚タイプを1個)にて385rpmの攪拌を施し、フラスコ内の反応物の滞留時間は2.5時間であった。連続攪拌槽型反応器として運転を開始し、10時間を経て、反応器内の反応物の組成が定常化した時点で、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は27%であった。
【0031】
比較例1
一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが5.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを44.6g、48%水酸化ナトリウムを166.9g、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を21.0重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを10.5g、500mLのフラスコに仕込み、空気を95.2mL/分の速度でフラスコ中に供給しながら反応を開始した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ1.1cm、6枚タイプを1個)にて385rpmの攪拌を施している。回分型反応器として運転を開始し、2.5時間を経た後、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は8.0%であった。
【0032】
実施例2
一般式(I)中のRが、炭素数10のアルキル基が10質量%、炭素数12のアルキル基が80質量%、炭素数14のアルキル基が10質量%%の割合の混合アルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが3.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを4.1g/時間、48%水酸化ナトリウムを21.9g/時間、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を15.8重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを1.3g/時間、空気を95.2mL/分の速度で500mLのフラスコに供給し、フラスコ中の反応液の在中量が218mLとなるように維持しながら、連続的に反応液を抜き出した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ0.8cm、6枚タイプを2個)にて350rpmの攪拌を施しており、フラスコ内の反応物の滞留時間は7.9時間である。連続攪拌槽型反応器として運転を開始し、20時間を経て、反応器内の反応物の組成が定常化した時点で、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は47%であった。
【0033】
比較例2
一般式(I)中のRが、炭素数10のアルキル基が10質量%、炭素数12のアルキル基が80質量%、炭素数14のアルキル基が10質量%%の割合の混合アルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが3.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを32.5g、48%水酸化ナトリウムを173.2g、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を15.8重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを10.1g、500mLのフラスコに仕込み、空気を95.2mL/分の速度でフラスコ中に供給しながら反応を開始した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ0.8cm、6枚タイプを2個)にて350rpmの攪拌を施している。回分型反応器として運転を開始し、7.9時間を経た後、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は9.0%であった。
【0034】
実施例3
実施例2で定常的な組成でフラスコから抜き出された反応物をその抜出流量(27.3g/時間)にて、また空気を95.2mL/分の速度で別の500mLのフラスコに供給し、フラスコ中の反応液の在中量が218mLとなるように維持しながら、連続的に反応液を抜き出し、2段目に相当する連続攪拌槽型反応を行った。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ0.8cm、6枚タイプを2個)にて350rpmの攪拌を施しており、フラスコ内の反応物の滞留時間は7.9時間である。連続攪拌槽型反応器として運転を開始し、32時間を経て、反応器内の反応物の組成が定常化した時点で、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は85%であった。また、反応物の色相はAPHAにて229との測定結果を得た。
【0035】
比較例3
一般式(I)中のRが、炭素数10のアルキル基が10質量%、炭素数12のアルキル基が80質量%、炭素数14のアルキル基が10質量%%の割合の混合アルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが3.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを32.5g、48%水酸化ナトリウムを173.2g、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を15.8%重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを10.1g、500mLのフラスコに仕込み空気を95.2mL/分の速度でフラスコ中に供給しながら反応を開始した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ0.8cm、6枚タイプを2個)にて350rpmの攪拌を施している。回分型反応器として運転を開始し、15.8時間を経た後、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は13%であった。
【0036】
比較例4
一般式(I)中のRが、炭素数10のアルキル基が10質量%、炭素数12のアルキル基が80質量%、炭素数14のアルキル基が10質量%の割合の混合アルキル基、AOがエチレンオキシ基、nが3.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを32.5g、48%水酸化ナトリウムを173.2g、触媒(Pd4%、Pt1%、Bi5%)を15.8%重量%濃度でイオン交換水に懸濁したスラリーを10.1g、500mLのフラスコに仕込み、空気を95.2mL/分の速度でフラスコ中に供給しながら反応を開始した。この際、反応液の温度は75℃に保たれ、ディスクタービン翼(幅4.0cm、高さ0.8cm、6枚タイプを2個)にて350rpmの攪拌を施している。回分型反応器として運転を開始し、47時間を経た後、反応物をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行った結果、反応率は82%であった。また、反応物の色相はAPHAにて500を超える測定結果を得た。
【0037】
実施例1〜3及び比較例1〜4の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続攪拌槽型反応器を用いて、貴金属触媒を含有する液相に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、及び酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを酸素酸化させてカルボン酸を製造する、カルボン酸の製造方法であって、連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を25〜98%に制御する、カルボン酸の製造方法。
【請求項2】
連続攪拌槽型反応器を2つ以上直列的に用いて、最終段の連続攪拌槽型反応器内のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの反応率を80〜98%に制御する、請求項1記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
連続攪拌槽型反応器を2つ以上直列的に用いて、1段目の連続攪拌槽型反応器における液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの濃度を25〜60質量%に制御する、請求項1又は2記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1〜3の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。
RO−(AO)n−H (I)
〔式中、Rは炭素数4〜30の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、nはAOの平均付加モル数であり、1〜100の数である。〕
【請求項5】
貴金属触媒が、白金族元素から選ばれる1種以上の元素を含有する、請求項1〜4の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項6】
貴金属触媒をポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して0.1〜10%(重量比)用いる、請求項1〜5の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項7】
アルカリ物質が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩から選ばれる化合物である、請求項1〜6の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項8】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸素酸化を50〜90℃で行う、請求項1〜7の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項9】
液相が水を含む、請求項1〜8の何れか1項記載のカルボン酸の製造方法。

【公開番号】特開2011−136933(P2011−136933A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297083(P2009−297083)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】