説明

カルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物

【課題】スコーチタイムに悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性を改善するゴム加硫用配合剤の提供。
【解決手段】ジチオカルボン酸とアミノアルコールとの反応によって得られる式(I):


(式中、R1及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基で、R1及びR2は互いに結合して環を形成してもよく、Xは炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基を示し、n及びmは0,1又は2の数であり、n+mは1〜4である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含んでなるゴム加硫用配合剤並びにその製造方法及びそれを含むゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩(以下、単にジスルフィドのアミノアルコール塩ということがある)を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ゴムの加硫促進剤として、チウラム系、スルフェンアミド系、メルカプトベンゾチアゾール系などが用いられている。スルフェンアミド系は遅効性促進剤であり、加硫中に熱によりN−S結合が解離し、メルカプトベンゾチアゾールとアミンを再生するとされている。再生されるメルカプトベンゾチアゾールは加硫促進剤として働き、アミンは亜鉛華に配位することで加硫系の活性化並びに加硫中間体との反応などにより加硫反応を促進する重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
これに対し、ジスルフィド系加硫剤であるジベンゾチアゾールジスルフィドは熱によりS−S結合が解離し、メルカプトベンゾチアゾールを再生するが、アミンによる加硫活性能力がないため、加硫が遅く、加硫促進能力においてスルフェンアミド類に劣っているといわれている。ジベンゾチアゾールジスルフィドの加硫促進能力を改善する目的でアミン類を併用することは考えられるが、その場合は遊離アミンの反応性が高いために、低温においても硫黄などの加硫剤と反応することでスコーチ時間に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】Chapman, A.V., Porter, M.:“Sulphur Vulcanization Chemistry ”in the Natural Rubber Science and Technology Roberts, A.D. Ed., Oxford Science Publications, London(1988).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明はスコーチ時間に悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性の改善が可能なカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基で、R及びR2は互いに結合して環を形成してもよく、Xは炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基を示し、n及びmは0,1又は2の数であり、n+mは1〜4である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩を含むゴム加硫用配合剤が提供される。
【0009】
本発明によれば、上記式(I)において、Xが芳香族基である式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含むゴム加硫用配合剤が提供される。
【0010】
本発明に従えば、また、式(II)で表わされるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物と式(III)で表わされるアミノアルコールとを反応させて式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を製造する方法が提供される(以下の反応式(I)参照)。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基で、R及びR2は互いに結合して環を形成してもよく、Xは炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基を示し、n及びmは0,1又は2の数であり、n+mは1〜4である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記式(I)のジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を用いることにより、ジエン系ゴムやハロゲン化ブチルゴムなどに対して高い加硫促進効果を有し、更にスコーチ時間に悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性(例えば耐熱老化性や発熱性)を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物(即ち本発明のジスルフィドのアミノアルコール塩)は、前記式(I)で表わされる化合物である。
【0015】
前記式(I)〜(III)において、R1及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜18のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であることができ、そのような有機基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、ステアリレン基などの鎖式炭化水素基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基などの環式炭化水素基、フェニレン、ナフタレン基などの芳香族基などが挙げられる。それら有機基の鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよく、そのような有機基の例としては、例えばメトキシプロピレン基、メトキシエチレン基などがあげられる。
【0016】
前記式(I)において、Xは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜18の、鎖式炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基から選ばれる有機基である。この有機基の例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、チアゾール基、チアジアゾール基、ピリジレン基、ナフチレン基等が挙げられる。Xが鎖式炭化水素基又は脂環式炭化水素基である場合には、Xは、その炭素鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から成る群から選ばれるヘテロ原子を有していてもよく、メチル、エチルなどのアルキル基、ブロモ、クロロなどのハロゲン基、エーテル基、エステル基などの置換基を有してもよい。Xは炭素数1〜18の、鎖式炭化水素基、芳香族基、複素環基などの芳香族性基であることが好ましく、芳香族基であることが更に好ましい。Xが芳香族性基であると芳香族カルボン酸の方が脂肪族カルボン酸よりも酸性が高く、よりアミンとの塩形成能力が高く、生成されるアミン塩が安定であるためにゴム組成物の混合および低温加工時の焼けなどに悪影響が少なくなると考えられるので好ましい。
【0017】
前記式(III)のアミノアルコールとしては、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、2−アミノ−1−ペンタノール、6−アミノ−2−メチル−2−ヘプタノール、1−アミノ−1−シクロペンタンメタノール、2−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノール、1−アミノメチル−1−シクロヘキサノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(プロピルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、セリノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパノール、3−ピロリジノール、2−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、3−ヒドロキシピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、4−アミノフェネチルアルコール、2−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−o−クレゾール、2−アミノ−p−クレゾール、5−アミノ−2−メトキシフェノール、2−アミノ−4−クロロフェノール、4−アミノ−3−クロロフェノール、4−アミノ−2,5−ジメチルフェノール、チラミン、2−アミノ−4−フェニルフェノール、1−アミノ−2−ナプタノール、4−アミノ−1−ナプタノール、5−アミノ−1−ナプタノール、ドーパミンがあげられ、これらの中で、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−ヒドロキシピペリジン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミンが工業的に入手しやすいことから好ましい。
【0018】
本発明に係るジスルフィドのアミノアルコール塩化合物(I)は、前記反応式(1)に示すように、前記式(II)で示されるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物(式中、Xは前記定義の通りである)と前記式(III)のアミノアルコール(式中、Rは前記定義の通りである)とを反応させることにより製造することができる。この反応には触媒などを必要とすることなく、適当な溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類など)中で式(II)及び式(III)の化合物を混合反応させることによって、製造することができる。
【0019】
前記反応式(1)において、アミノアルコール(III)は、ジスルフィド化合物(II)のカルボン酸基に対して、化学量論的に過剰量(例えば1.01〜1.15当量)で反応させるのが好ましい。
【0020】
前記反応式(1)において、出発原料として用いられるカルボン酸基含有ジスルフィド化合物(II)の具体例としては、例えばジチオジグリコール酸、ジチオジプロピオン酸、4,4’−シチオ酪酸、ジチオサリチル酸、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)などがあげられる。
【0021】
前記反応の反応温度には特に限定はないが、0℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。0℃未満では反応時間が遅くなり、100℃を超える温度では生成物の望ましくない副反応が起こるおそれがある。この反応温度は、更に好ましくは20℃〜70℃の範囲内である。
【0022】
本発明に係るゴム加硫用配合剤に含めることのできる加硫剤の具体例としては、例えば硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム、金属酸化物、及びアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明に係るジスルフィドのアミノアルコール塩と併用できるゴム加硫用配合剤としては、スルフェンアミド系又はチウラム系の加硫促進剤を含むことが好ましい。スルフェンアミド系又はチウラム系の加硫促進剤を用いることにより、ゴム成分の加硫を更に促進し、また、得られる加硫ゴムの物性を更に向上させることができる。スルフェンアミド系の加硫促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。チウラム系の加硫促進剤としては、例えばテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。
【0024】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる未加硫ゴム成分と本発明に係るジスルフィドのアミノアルコール塩(I)を含む。このゴム組成物が含むことができる未加硫ゴム成分としてはジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる。ジエン系ゴムの具体例としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムが挙げられる。また、ハロゲン化ゴムの具体例としては、例えば臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物(例えば臭素化物)、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、塩素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エポキシ化アクリルゴム、ハロゲン系モノマーを共重合させたアクリルゴムが挙げられる。
【0025】
本発明に係るゴム組成物において、本発明に従ったジスルフィドのアミノアルコール塩(I)は単独又は当該技術分野において未加硫ゴムの加硫剤又は加硫促進剤として一般的に使用されている加硫剤又は加硫促進剤と共にゴム加硫用配合剤として使用できる。本発明のジスルフィドのアミノアルコール塩(I)は、当該ジスルフィドのアミノアルコール塩(I)の加硫及び/又は加硫促進作用を妨げずに所望の加硫及び/又は加硫促進効果並びに耐熱老化性の向上を達成できる限り、当該ゴム加硫用配合剤に含まれる他の加硫剤及び/又は加硫促進剤の合計量に対して、任意の割合で使用することができる。しかしながら、望ましい加硫及び/又は加硫促進効果を達成するには、ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる未加硫ゴム成分100重量部に対して0.05〜20重量部であるのが好ましい。前記ジスルフィドのアミノアルコール塩(I)の配合量がこの範囲内であると、実用的な強度及びゴム弾性を発現できるなどのより有利な効果が得られる。また、加硫温度は通常の140℃〜200℃が好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物には、上記加硫促進剤の他に、ゴム組成物に通常配合されるカーボンブラックやシリカ等の補強剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、ステアリン酸や酸化亜鉛及び酸化マグネシウムなどの加硫促進助剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、パラフィンオイル等の軟化剤、可塑剤、老化防止剤等の各種配合剤及び添加剤を、各種用途に応じて一般的に使用される量で一般的な配合方法によって配合してよい。かかる配合は、汎用のゴム用混練機、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練することにより配合できる。
【実施例】
【0027】
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術的範囲を、これらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0028】
調製例1:化合物1の合成:
イソプロパノール1000g中、ジチオサリチル酸306.4g(1mol)と2−アミノエタノール122.16g(2mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、生成物を濾過し、乾燥することにより下記式で示される白色粉末の化合物1を410.2g(収率95.7%)得た。
【0029】
【化3】

【0030】
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ in ppm:2.9(4H,CH2−N),3.6(4H,CH−O),7.1,7.2,7.5,7.8(8H,Ph)
融点(DSC):147.4℃
【0031】
調製例2:化合物2の合成:
イソプロパノール1000g中、3,3’−ジチオジプロピオン酸210.3g(1mol)と2−アミノエタノール122.16g(2mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、生成物を減圧乾燥することにより下記式で示される黄色の液状化合物2を314.4g(収率94.5%)得た。
【0032】
【化4】

【0033】
1HNMR(400MHz,D2O−d2)δ in ppm:2.3(4H,CH2−S),2.8(4H,CH2−COO),2.9(4H,CH2−N),3.6(4H,CH−O)
【0034】
調製例3:化合物3の合成:
イソプロパノール1000g中、ジチオサリチル酸306.4g(1mol)と1−アミノ−2−プロパノール150.2g(2mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、生成物を濾過し、乾燥することにより下記式で示される褐色粉末の化合物3を410.2g(収率95.7%)得た。
【0035】
【化5】

【0036】
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ in ppm:1.1(6H,CH3),2.8(4H,CH2−N),3.9(4H,CH−O),7.1,7.2,7.5,7.8(8H,Ph)
融点(DSC):176.2℃
【0037】
実施例1〜6及び比較例1〜3
ゴム組成物の調製
下記表Iに示す配合成分を1.7リットルのバンバリーミキサーにより5分間混合して均一に分散させ、各実施例及び比較例のゴム組成物を得た。得られた各実施例及び比較例のゴム組成物を下記の各試験法により評価した。結果を表Iに示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表I脚注
*1:RSS#3
*2:日本ゼオン(株)Nipol 1712
*3:日本ブチル(株)Exxon Bromobutyl 2255
*4:三菱化学(株) ダイアブラックE
*5:正同化学(株)酸化亜鉛3種
*6:日本油脂(株)ビーズステアリン酸YR
*7:大内新興化学(株)ノクラック6C
*8:三井化学(株)ハイレッツG−100X
*9:昭和シェル石油(株)デゾレックス3号
*10:鶴見化学(株)金華微粉硫黄
*11:前記調製例1〜3参照
*12:大内新興化学(株)ノクセラーNS−P
*13:大内新興化学(株)ノクセラーD
*14:大内新興化学(株)ノクセラーDM−P
【0040】
試験法
ムーニースコーチ
未加硫のゴム組成物について、JISK6300−1994の規定に準じて、L形ロータを使用し、予熱時間1分、試験温度125℃の条件で、ムーニー粘度を連続的に測定した。ムーニー粘度の最低値をVmとした。また、ムーニー粘度がVmから5ポイント上昇するまで(ML 5UP)のムーニースコーチ時間(分)を測定した。結果を表Iに示す。ムーニースコーチ時間は、スコーチ(ゴム焼け)の指標であり、時間が長い方が好ましい。
【0041】
レオメーター
ASTM D2084に準拠して、150℃での本発明のゴム組成物の加硫特性を測定した(オシレーティングディスクキューブメータを用いた架橋−ゴム特性に対する ASTM法)。T95は、架橋密度が95%になるまでの時間、すなわち、加硫がほぼ完了する時間を示す。
【0042】
次に得られた各ゴム組成物について、150℃で30分間加硫して、15cm×15cm×2mmの加硫シートを作成した。この加硫シートからJIS3号ダンベル形状の試験片を打ち抜き、JIS K6251に従って、伸び100%時のモジュラス(M100)、破断応力(TB)及び破断時伸び(EB)を求め、さらに、JIS K6257に従って、100℃で48時間老化後のM100、TB及びEBを測定し、結果を表Iに示す。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上の通りに、本発明のジスルフィドのアミノアルコール塩化合物(I)を含むゴム加硫用配合剤は、ジエン系ゴム及びハロゲン化ブチルゴムなどに対して高い加硫促進効果を有する。また、加硫促進能の向上に用いられる配合剤であるDPGに比べてゴム組成物の指標であるスコーチ時間への悪影響を示さない。さらに、本発明のジスルフィドのアミノアルコール塩化合物(I)を含むゴム加硫用配合剤を含む未加硫ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムは、従来の加硫剤及び/又は加硫促進剤を含む未加硫ゴム組成物から得られるものよりも高い耐熱老化性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジチオカルボン酸とアミノアルコールとの反応によって得られる式(I):
【化1】

(式中、R及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基で、R及びR2は互いに結合して環を形成してもよく、Xは炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基を示し、n及びmは0,1又は2の数であり、n+mは1〜4である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含んでなるゴム加硫用配合剤。
【請求項2】
式(I)において、Xが芳香族基である請求項1に記載のゴム加硫用配合剤。
【請求項3】
式(II)で表わされるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物と式(III)で表わされるアミノアルコールとを反応させて、式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミノアルコール塩化合物を含むゴム加硫用配合剤を製造する方法。
【化2】

(式中、R及びR2は独立に水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基で、R及びR2は互いに結合して環を形成してもよく、Xは炭素数1〜20のヘテロ原子もしくは/及び置換基を有してもよい有機基を示し、n及びmは0,1又は2の数であり、n+mは1〜4である。)
【請求項4】
カルボン酸基を有するジスルフィド化合物(II)がジチオサリチル酸である請求項3に記載のカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫配合剤の製造法。
【請求項5】
ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の未加硫ゴム成分100重量部並びに請求項1又は2に記載のゴム加硫用配合剤0.05〜10重量部を含んで成るゴム組成物。

【公開番号】特開2009−84415(P2009−84415A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255518(P2007−255518)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】