説明

カルボン酸無水物との反応、およびそれに引き続いた光化学的架橋による、ビニルアルコール基を含む、アセタール化されたポリマーの変性

本発明は、ビニルアルコール基の一部と、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物との反応、および引き続き該反応生成物の光化学的架橋によって得られる、ビニルアルコール基を含む変性ポリマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー溶融物中での少なくとも1のカルボン酸無水物との反応による、およびそれに引き続いた光化学的架橋による、ビニルアルコール基を含む、アセタール化されたポリマーの変性に関する。
【0002】
技術分野
ビニルアルコール基を含む、アセタール化されたポリマー、例えばポリビニルブチラール、またはアセタール化されたエチレン/ポリビニルアルコールのコポリマーはそれぞれ、アセタール化の度合いに従って、または残留ポリビニルアルコールの含有率に従って、特定の特性、例えば非水溶性、または機械的負荷に対する抵抗性を有する。このポリマーの遊離ビニルアルコール基はなお化学的に反応性を有するので、ポリマー類似の、アルコール基に関わる反応により、ベースとなっているポリマーの特性を変える多岐にわたる試験が行われていた。
【0003】
従来技術
WO99/23118は、押出機内でポリビニルアルコールをラクトンと反応させることによる、生分解可能なポリヒドロキシポリマーの製造方法を記載している。
【0004】
WO01/79305は、ポリビニルブチラールと、架橋試薬としての少なくとも1のジカルボン酸誘導体との、および/またはポリカルボン酸誘導体との反応による、高分子架橋ポリビニルブチラールの製造方法を開示している。好ましい架橋試薬は、ジエチルシュウ酸エステル、ジメチルシュウ酸エステルもしくは相応するジカルボン酸である。カルボン酸無水物の使用は、この明細書では言及されていない。
【0005】
アセタール化されていないポリビニルアルコールの、もしくはビニルアルコールコポリマーの、カルボン酸無水物との反応は、US3,548,408に開示されている。ここに記載されているポリビニルアルコールは、90mol%より大きく鹸化されている、すなわち非常に多数のヒドロキシ官能基を有する。こうして1のカルボン酸無水物との反応により、比較的容易に高い転換率、もしくはエステル化反応を達成することができる。
【0006】
JP08283428には、エチレン/ビニルアルコールのコポリマーと、無水マレイン酸との反応、およびそれに引き続いた電子線架橋が記載されている。電子線は、非常に高いエネルギーを有しており、その結果架橋の他に非選択的な、ラジカルな鎖の分解もまた考慮されなければならない。
【0007】
アセタール化されたポリビニルアルコール、すなわち非常に僅少な数の遊離ヒドロキシ官能基との化合物は、この明細書では言及されていない。さらには、ポリマーの光化学的架橋は記載されていない。
【0008】
US特許6,326,125には、光感受性化合物の製造のための中間体として、アセタール化されたポリビニルアルコールと、カルボン酸無水物との反応が記載されている。しかしながらこの中間体自体は光感受性ではなく、1の別の反応において少なくとも1の二重結合を含む1のエポキシドとの反応により反応する。
【0009】
US4,153,526は、光開始剤の存在下でのポリビニルアセタールのUV架橋を開示している。先に述べた無水マレイン酸との反応はここには記載されていない。
【0010】
ポリビニルアセタールの架橋には、これをまずジエステルと反応させ、引き続き熱的に架橋することもできる。US2003/0166788は、そのような反応の実施を開示している。
【0011】
光化学的に架橋可能なポリビニルアセタールは、US4,904,0646にも開示されている。ここでは、アセタール化の際、ヒドロキシアルデヒドを用いて導入される、付加的なアルコール官能基を介した架橋が行われる。無水マレイン酸との反応は、ここでは記載されていない。
【0012】
変性されていないポリビニルアセタールは、顔料に対する良好な分散特性を有し、結合剤として印刷インキに頻繁に使用される。この種の化合物はこうして被覆材料として提供されるが、充分な溶剤抵抗性を有さず、僅少な機械的安定性を有するのみである。
【0013】
課題
従って本発明の課題は、ポリビニルアセタールをそのような用途に相応するように変性することである。
【0014】
発明の開示
驚いたことに、アセタール化されたポリビニルアルコール、またはアセタール化されたエチレン/ビニルアルコールのコポリマーは簡単な方法でカルボン酸無水物と反応させることができ、引き続き光化学的に架橋できることが判明した。
【0015】
従って本発明の対象は、ビニルアルコール基を含むポリマーの、1または複数のアルデヒドを用いた部分的なアセタール化によって、部分アセタール化された、溶融物中でのビニルアルコール基含有ポリマーと、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物とのポリマー類似反応によって、およびそれに引き続く光化学的架橋によって得られる、ビニルアルコール基を含む変性ポリマーである。
【0016】
架橋はとりわけ、オレフィン不飽和カルボン酸無水物を用いて新たに導入される側鎖との架橋によって行われ、好ましくはこの側鎖の二重結合の光二量化によって行われる。
【0017】
好ましくは、ビニルアルコール基を含むポリマーとしてポリビニルアルコール、および/またはエチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールのコポリマーが、アセタール化に使用される。
【0018】
これらの化合物はさらに0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%の酢酸ビニル基を含むことができる、すなわち完全に、または部分的に鹸化されて存在することができる。1または複数のアルデヒドを用いたアセタール化は、当業者に公知の方法で溶液中、好ましくは水性媒体中で酸触媒作用下、酸触媒により行われる。アセタール化には、好ましくは2〜10までの炭素原子を有する脂肪族アルデヒド、とりわけブチルアルデヒドが使用される。
【0019】
こうして得られたなおビニルアルコール基を含むポリビニルアセタールは本発明によれば、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物と反応し、その際ビニルアルコール基の少なくとも一部が反応する。
【0020】
好ましくはカルボン酸無水物と反応する前のポリマーはなお、10〜85mol%、好ましくは15〜41mol%、もしくは22〜35mol%の遊離ビニルアルコール基を含み、その際残りの繰り返し単位は酢酸ビニル基、エチレン基、および/またはビニルアセタール基からなる。
【0021】
好ましくは部分アセタール化されたビニルアルコール基含有ポリマーは、カルボン酸無水物との反応後、なお0.1〜84.9mol%、とりわけ0.1〜50mol%、0.1〜40、0.1〜30、または0.1〜20mol%のビニルアルコール基を含む。ビニルアルコール基の割合は、実施例中に記載されるように規定される。
【0022】
オレフィン不飽和カルボン酸無水物との反応は、部分アセタール化されたビニルアルコール基含有ポリマー中、すなわち部分アセタール化されたポリビニルアルコール中、もしくはエチレン/ポリビニルアルコールのコポリマー中に最初から含まれるすべてのヒドロキシ基が反応してしまうまで行うことができる。その後の充分な架橋を保証するために、少なくとも5%、好ましくは5〜50%、好適には5〜25%もしくは5〜15%の、最初から存在するヒドロキシ基を反応させるのが望ましい。
【0023】
アセタール化されたポリビニルアルコール、もしくはエチレン/ビニルアルコールのコポリマーと、カルボン酸無水物との反応は、おそらくビニルアルコール基の架橋によって行われる。環状カルボン酸無水物を使用する場合、遊離カルボキシ官能基は新たな側鎖中に形成される。場合によっては、および反応条件に依存して、新たな側鎖の、および同一の側鎖の、または1の別のポリマー鎖の遊離カルボン酸基との架橋反応もさらに現れる。
【0024】
これに対応して、部分アセタール化されたポリマーの分子量は、カルボン酸無水物との反応によって、5〜100%、好ましくはほんのわずかに、10〜50%高めることが可能である。反応温度を高めることにより、反応による分子量も明らかに、例えば50〜100%高めることができる。
【0025】
本発明による生成物の製造のために、1または複数の環状または非環状オレフィンカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、または3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物を使用することができる。
【0026】
これに加えて、反応を1〜100質量%、とりわけ1〜30質量%(ポリマーに対して)の可塑剤の存在下で実施することが可能である。この場合、アセタール化されたポリマーと可塑剤の混合溶融物が、オレフィン不飽和カルボン酸無水物との反応のために使用される。ポリマーの量に対して1〜25、好ましくは5〜15質量%の総量で、僅かな量の添加剤、例えばUV安定剤、抗酸化剤、または酸触媒の存在は、妨げにならない。
【0027】
ポリビニルアセタール、とりわけポリビニルブチラールとの適合性に関する記載を含む、市販の可塑剤の一覧は、例えば印刷物Modern Plastics Encyclopedia 1981/1982、710〜719ページから読み取れる。好ましい可塑剤は脂肪族のジオール、とりわけ脂肪族のポリエーテルジオール、もしくは脂肪族のポリエーテルポリオールと、脂肪族のカルボン酸とのジエステル、好適にはポリアルキレンオキシドのジエステル、とりわけジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールと、脂肪族(C6〜C10)のカルボン酸、好適には2−酪酸エチル、およびn−ヘプタン酸とのジエステル、さらには脂肪族または芳香族(C2〜C18)のジカルボン酸、好適にはアジピン酸、セバシン酸、およびフタル酸と、脂肪族(C4〜C12)のアルコール、好適にはアジピン酸ジヘキシル、フタラート、トリメリタート、リン酸エステル、脂肪酸エステル、とりわけトリエチレングリコール−ビス−(2−エチルブチラート)、トリエチレングリコールエチルヘキサノアート(3G8)、芳香族カルボン酸エステル、とりわけジベンゾアート、および/またはヒドロキシカルボン酸エステルとのジエステルである。
【0028】
反応自体は、相応する加熱可能な混練機、撹拌槽、または押出機内で適切に実施する。反応温度は好ましくは120℃〜250℃の間、とりわけ170℃〜230℃の間である。反応時間は30秒〜15分の間であってよい。反応が押出機内で実施される場合、反応時間は30秒〜3分の間で通常充分である。
【0029】
アセタール化されたポリマーとカルボン酸無水物からの反応生成物の架橋はおそらく、二重結合を含む、二つの側鎖の架橋によって、すなわちシクロブタン誘導体の形成のもとで光二量化反応によって、引き続き行われる。この種類の光誘導された架橋は、公知である(例えばA.Schoenberg、「Preparative Organic Photochemistry」、補遺2、改訂版、1968年、図式A参照)
【化1】

【0030】
架橋は、100〜400nmの波長の、すなわちタイプA、タイプB、および/またはタイプCのUV放射を用いて実施することができる。照射時間は数秒から最大5分までが、実地では有利であると実証された。
【0031】
照射を任意で光増感剤(三重項増感剤)、例えばベンゾフェノン、アセトフェノン、フェナトレン、アントラセン、またはケトクマリンの存在下で実施する。
【0032】
こうして得られた架橋ポリマーの分子量は、カルボン酸無水物との反応生成物に比べて、200%より大きく高めることができる。こうして得られた生成物はすべての慣用の溶剤に不溶性であるため、通常分子量の測定は不可能である。
【0033】
部分アセタール化されたポリマー、およびカルボン酸からの反応生成物の光化学的架橋は溶融物中で、または固体においても実施され、後者が好ましい。
【0034】
本発明によるポリマーは特に接着剤として、および/またはプラスチックの、または金属(ビン、机表面、床面被覆などの物品)の被覆材として使用可能である。
【0035】
とりわけ本発明によるポリマーは、紙、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ビン、またはその他のPET表面、ポリマーフィルム、塗料、またはラッカー上への耐水性被覆の製造のため、または表面硬度の改善のため、もしくは耐引掻性被覆材として使用できる。
【0036】
特に好ましくは、部分アセタール化されたビニルアルコール基含有ポリマーと、カルボン酸無水物との反応生成物を製造し、物品上に塗布し、任意で乾燥し、引き続き好ましくは固体で光化学的に架橋することによって、本発明によるポリマーを被覆材として使用するか、もしくは支持体上に塗布する。物品上への反応生成物の塗布は、溶融物、分散液、または溶液として存在しうる。溶剤としては、被覆する支持体とはまず無関係の、溶剤中に反応生成物が溶解性のすべての有機溶剤、例えばアルコール、ケトン、エステル(例えばメチルエチルケトンまたはアセトン)が適している。
【0037】
従って本発明のさらなる対象は、
a)ビニルアルコール基含有ポリマーの、1または複数のアルデヒドによる部分的なアセタール化、
b)部分アセタール化されたビニルアルコール基含有ポリマーと、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物との、ポリマー類似反応、
c)支持体上への反応生成物の塗布、および
d)光化学的架橋
による、ビニルアルコール基を含む変性ポリマーを用いた支持体の被覆方法である。
【0038】
本発明においては、ポリビニルアセタールを含む組成物の少なくとも一部、好適には押出機内へ移送される組成物の全重量に対して、少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%、および極めて好ましくは100質量%を、少なくとも1の、押出機内の主供給部を介して移送することができる。主挿入部(Haupteinzug)は一般的に、L/D比で最大5である。L/D比は当業者において公知である。この際、Lはスクリュー長を表し、Dはスクリューの直径を表す。似たようなL/D比を有する押出機は、一般的に似たような押出特性を有する。従ってL/D比の記載は一般的であり、通常補足的に、スクリューの直径Dが記載される。長さの記載「最大5のL/D比の場合」は、こうして記載のL/D比5と、同様に公知のスクリュー直径Dとの掛け算により得られる。30mmのスクリュー直径の場合、「最大5のL/D比の場合」という記載は、主挿入部がスクリューの開始点に対して、0mm〜150mmの長さの範囲にあることを意味する。10mmの直径ならば、主挿入部は0〜50mmの範囲内にある。主挿入部は長さにわたる広がりを有するので、この記載は開始点に最も近い、主挿入部の点に関することを確認しておくべきである。
【0039】
側方流供給は当業者において公知であり、その際通常添加剤をこの供給部を介して、押出機内でこの溶融物と混合する。無水物の供給はとりわけ、押出機と接続されている側方流供給部を介して行うことができ、その際該供給部は少なくとも1の搬送スクリューを有することができる。この場合、側方流供給部は例えば、1または2の搬送スクリューを有することができる。
【0040】
好適には側方流供給部を冷却し、その結果この装置内で溶融物を発生させずに、ポリビニルアセタールを含む組成物を、例えば粉体として主押出機に添加するようにする。好適には側方流供給における温度は、無水物の溶融範囲より小さい。好適には側方流供給における温度は、100℃以下、特に80℃以下、および特に好ましくは50℃以下である。
【0041】
特別な態様によれば、側方流供給部のスクリュー直径は押出機のスクリュー直径より小さく、その際押出機のスクリュー直径の、側方流供給部のスクリュー直径に対する比は、好適には1.1:1〜10:1、特に好ましくは2:1〜5:1の範囲である。
【0042】
本発明の第二の態様によれば、先に説明した課題を解決するために、押出機の主挿入部から少なくとも15×L/Dの長さ、好適には少なくとも20×L/Dの長さまでの領域を冷却することができる。この際冷却はジャケットの冷却を介して行うことができる。
【0043】
L/D比の意味については、先に説明した。30mmのスクリュー直径の場合、「最大の長さは少なくとも15×L/D」という記載は押出機の主挿入部から少なくとも450mmの長さまでの領域が冷却されることを意味している。直径が10mmであるならば、押出機の主挿入部から少なくとも150mmの長さまでの領域が冷却される。主挿入部は長さにわたる広がりを有するので、この記載は、開始点に最も近い、主挿入部の点に関することを確認しておくべきである。
【0044】
本発明による第三の態様によれば、先に説明した課題を解決するために少なくとも1のスクリュー、好適には押出機のすべてのスクリューを冷却することができる。好適にはこの際スクリューを、押出機の主挿入部から最大で少なくとも5×L/D、特に好ましくは少なくとも10×L/Dの長さまでの領域にわたって冷却する。スクリューの冷却は、当業者においてそれ自体公知である。
【0045】
主要流の押出機の回転数、および場合によっては少なくとも1の側方流供給は、当業者により容易に決定され、適合させることができる。主要流の押出機の回転数は、好適には50回転/分から500回転/分の範囲、特に好ましくは60回転/分から400回転/分の範囲である。
【0046】
本発明の特別な態様によればこの際、溶融液状態への移行の際の温度を変えることができ、その際例えば混合物からの揮発性成分を除去するために、好適には温度上昇を実施することができる。この際、これらの物質の丁寧かつ省エネルギーな除去を達成するために、例えば温度を段階的に高めることができる。好適には温度は例えば押出機内への供給の場合、アセタール化された、ビニルアルコール基含有ポリマーのガラス転移温度以下である。特別な態様によれば、温度は40℃〜120℃の範囲、好適には80〜120℃の範囲であってよい。この温度は引き続き主押出機内で100℃〜220℃の範囲、好適には130℃〜220℃の範囲へ高めることができ、この際この温度上昇は複数の段階を介して行うことができる。揮発性物質、ならびに反応されなかった反応相手は公知の方法で、例えば組成物からの脱ガスで除去することができる。さらには、方法の好ましい変法の場合、押出機のいくつかの帯域は必要とされず、これらを取り外すことができる。これにより、さらなる操作利点が得られる。
【0047】
「押出」方法は、「ストランド押し出し」とも呼ばれる、熱可塑性プラスチック、例えばポリビニルアセタールからの、管、ワイヤ、異形材、ホースなどの製造方法のことである。その際押出が、たいていスクリュー押出機として、まれにピストン押出機として設計されている押出機内で行われる。プラスチックが注入漏斗によって、熱可塑性プラスチックとともに、ならびに場合によってはさらなる添加剤とともに給送され、その後材料を加熱し、均質化し、成型するノズルによって押し出す。押出機は様々な変形で存在するので、例えば搬送スクリューの数に従って、単軸スクリュー押出機と多軸スクリュー押出機を区別する。本発明の範囲では、特に好ましい押出機は単軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機、多軸混練機、混練機、圧延機、およびカレンダーである。
【0048】
先に挙げた専門概念についてのさらなる詳細は、慣用の専門文献、とりわけRoempp’s Chemielexikon、第5版、およびSaechtling、Kunststofftaschenbuch、27版、ならびにそこで記載されている文献箇所で指摘される。
【0049】
押出を生成物の造粒の下で実施することも可能である。その際造粒はそれ自体公知の方法、好適には(とりわけ遠心転動造粒、ブレード型造粒、ウォーターリング造粒、または水中造粒による)ホットカットによって、または(とりわけストランド造粒、またはシート造粒による)コールドカットによって行うことができる。これらの方法は従来技術から周知である。
【0050】
時にはヘッド造粒(Kopfgranulierung)と呼ばれるホットカットの際、ポリマー溶融物を孔板内でストランドに成型し、該溶融物を孔板からの排出の際に直接、所望の粒長に切断し冷却する。その際通常空気中で、水気渦流中で、または水中で行う。接着性が僅少な傾向を有するプラスチックの場合、冷却は空気中でも行うことができ、そうでなければこれに対して通常水を使用する。通常その後、引き続き乾燥が行われるが、ポリマーは基本的に湿らせないので、乾燥は本発明によれば必ずしも必要でない。
【0051】
コールドカット造粒の場合、ストランドまたはシートを押し出し成型し、水浴中で冷却しストランド造粒機内、またはシート造粒機内で顆粒に切断する。シート造粒の場合、シートは横断面に対して、また長さ方向にも切断しなければならない。
【0052】
測定法
ビニルアルコール割合の測定
a)アセタート基の割合(PVアセタート基含有率)の測定
PVアセタート基含有率とは、アセチル基のパーセンテージ割合と理解され、該含有率は1gの物質を鹸化するのに必要な量の水酸化カリウム溶液消費量から得られる。
【0053】
測定方法(EN ISO3681に準拠):
試験すべき物質約2gを、500mlの丸底フラスコ中に1mgまで正確に秤量し、90mlのエタノール、および10mlのベンジルアルコールを用いて還流で溶解する。冷却後に溶液を0.01N NaOHを用いてフェノールフタレインに対して中性に調整する。引き続き25.0mlの0.1NのKOHを添加し、1.5時間還流で加熱する。フラスコを閉鎖して冷却し、過剰アルカリ溶液を0.1Nの塩酸を用いて指示薬としてのフェノールフタレインに対して、不変に無色になるまで逆滴定する。同様に盲検試料を処理する。PVアセタート含有率は次のように算出される:PVアセタート含有率[%]=(b−a)×86/E、aはmlでの試料に対する0.1NのKOHの消費量であり、bはmlでの盲検に対する0.1NのKOHの使用量であり、Eは試験すべき物質に対する乾燥状態でのグラム秤量である。
【0054】
b)非変性ポリビニルアセタールにおける、ビニルアルコール基割合(ポリビニルアルコール含有率)の測定
ポリビニルアルコール含有率は、無水酢酸との事後のアセチル化により検出可能な、ヒドロキシ基の割合である。
【0055】
測定方法(DIN53240に準拠)
モビタール(Mowital)約1gを、300mlの共栓付きエルレンマイヤーフラスコ中に1mgまで正確に秤量し、10.0mlの無水酢酸−ピリジンの混合物(23:77 V/V)を供給し、15〜20時間50℃で加熱する。冷却後、17mlのジクロロエタンを加え、短時間回転振動する。引き続き、撹拌下で8mlの水を添加し、栓でフラスコを閉鎖し、10分間撹拌する。フラスコの首、および栓を50mlの脱塩水で洗浄し、5mlのn−ブタノールで被覆し、遊離酢酸を1Nのソーダ溶液を用いてフェノールフタレインに対して滴定する。同様に盲検試料を処理する。ポリビニルアルコール含有率は次のように算出される:ポリビニルアルコール含有率[%]=(b−a)×440/E、aはmlでの試料に対する1NのNaOHの消費量であり、bはmlでの空試験に対する1NのNaOHの消費量であり、Eは試験すべき物質に対する乾燥状態でのグラムでの重量である。
【0056】
オレフィン不飽和無水物と反応したポリビニルアセタールの、ビニルアルコール基割合の測定のために、アセタート基割合を方法a)を用いて反応の前後に測定する。反応によりアセタート基の割合は無水物と反応したヒドロキシ基の数の分だけが高められる。もともと存在するヒドロキシ基の数は、方法b)によって当初の材料を用いて測定する。この値の差は、オレフィン不飽和無水物と反応したポリビニルアセタール割合中のビニルアルコール基割合に相応する。
【0057】
実施例
部分アセタール化されたビニルアルコールを含有するポリマーの、オレフィン不飽和無水物との反応
30mmのスクリュー直径および44のL/D比を有する、Leistritz社の二軸スクリュー押出機内で、クラレスペシャリティーズヨーロッパ有限会社のモビタールBG30H(ビニルアルコール割合27.7mol%)を15kg/hの速度で押し出し成型した。この際顆粒は主挿入部を介して押出機内に送られ、その際挿入域内の温度は50℃、溶融物帯域中では180℃、およびノズル内では170℃であった。10%の無水マレイン酸(混合物に対して)を第二の重力固体供給を用いて同様に主挿入部に供給した。得られたストランドを造粒し、650g/lのかさ密度を有する顆粒を得た。この試験の場合、高い混合作用、および僅少な切断作用を有するスクリュー構成を選択した。混合作用および切断作用の調整のための、様々な混合要素、および搬送要素の配置は、当業者に公知である。こうして得られたポリマーのビニルアルコール割合は22.3mol%であった。
【0058】
架橋反応
a)溶液の製造:
前述の反応からの、10gの変性BG30Hを90gのエタノールに添加し、撹拌下で溶解する。引き続き0.4gのベンゾフェノンを光増感剤として加え、透明な溶液が生じるまであらためて撹拌する。
【0059】
b)被覆/架橋:
引き続き溶液を、PET担体フィルム上に、200μmの湿潤フィルム層厚で塗布する。適用溶液は、例えばドクターブレード、噴霧被覆、カーテンコート、浸漬、印刷などの、標準的な被覆方法によって行うことができる。被覆の乾燥後(40℃で)、UV照射器(UV−A cube、Hoenle社)中で中圧水銀ランプ(定格出力100W/cm)を用いて120秒間硬化を行う。
【0060】
得られた生成物の分子量は引き続きゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定した。当初のポリマー(モビタール BG 30 H)の分子量はMw=34200であり、無水マレイン酸と反応させた生成物の分子量はMw=37900であった。UV照射により架橋される系はすべての慣用の溶剤に不溶性であったため、分子量は測定できなかった。
【0061】
c)試験
UV架橋された被覆を抵抗性の点で、溶剤に対して溶媒摩擦試験により、および耐摩耗性をテーバー摩擦機試験を用いて検査する。比較例として両方の試験に対して、UV非照射材料を用いた。
【0062】
c1a)溶媒摩擦試験
短棒状の綿、または綿球をアセトン(または1の他の溶剤)を用いて浸漬し、被覆の表面にわたって往復摩擦する。その際「摩擦」の回数が、被覆が摩滅するまで測定される。「摩擦」の回数が多ければ多いほど、使用された溶剤に対する抵抗性が良好である。以下の表1は、その結果を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
c2)テーバー摩耗試験機テスト
DIN52347、もしくはASTM D1044に準拠して、滑面ローラー損耗法を用いて試料を試験する。その際二つの摩擦ローラーにより試料の表面を加圧した。試料が回転し、摩擦ローラーをすべり接触の相対運動へと移行させる。摩擦ローラーと試料の間に、ほぼ直線的な接触帯域が形成される。押圧力は、2.5〜10Nの様々な重量によって変更することができる。摩耗は、所定の回転数の際の重量損失として記載される。
【0065】
試験のために、その都度の被覆を3つの個別の被覆工程でアルミニウム試験板上に塗布し、乾燥し、UV照射した(120秒、Hg中圧、100W/cm)。試験されるべき被覆は、約40μmの層厚を有していた。試験装置としてテーバー摩耗試験機5130(テーバー インダストリーズ社)、および摩擦ローラー「Calibrase CS17」を使用した。吸引性能は70%、重量負荷(押圧力)は500gに調整した。以下の表2、もしくは図1は、その結果を示す。
【0066】
【表2】

【0067】
本発明により製造されるポリマーは、著しく改善された耐溶剤抵抗性、および摩耗耐性を備えることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】c2)のテーバー摩耗試験機テストの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール基を含む変性ポリマーであって、ビニルアルコール含有ポリマーの、1または複数のアルデヒドを用いた部分的なアセタール化、溶融物中の部分アセタール化されたビニルアルコール含有ポリマーと、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物とのポリマー類似反応、およびそれに引き続く光化学的架橋によって得られる、ビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項2】
ビニルアルコール含有ポリマーとして、ポリビニルアルコール、またはエチレン/ビニルアルコールのコポリマーを使用することを特徴とする、請求項1に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項3】
光化学的架橋のために、100〜400nmの波長を有するUV放射を使用することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項4】
光化学的架橋を光増感剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項5】
ビニルアルコール基を含む、部分アセタール化されたポリマーが、カルボン酸無水物との反応後に、0.1〜84.9mol%のビニルアルコール基を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項6】
ビニルアルコール基を含む、部分アセタール化されたポリマーの分子量を、カルボン酸無水物との反応によって5〜100%高めることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項7】
ビニルアルコール基を含む、部分アセタール化されたポリマーの分子量を、カルボン酸無水物との反応、およびそれに引き続く架橋によって、200%より大きく高めることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項8】
光化学的架橋を固体で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項9】
部分アセタール化された、ビニルアルコール基を含むポリマーと、カルボン酸無水物との反応を、1の押出機、混練機、または撹拌槽内で実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のビニルアルコール基を含む変性ポリマー。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の、ビニルアルコール基を含む変性ポリマーの、接着剤および/または被覆としての使用。
【請求項11】
ビニルアルコール基を含む変性ポリマーを用いた、支持体の被覆方法であって、
a)1または複数のアルデヒドを用いた、ビニルアルコール含有ポリマーの部分的なアセタール化
b)部分アセタール化されたビニルアルコール含有ポリマーと、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸無水物との、ポリマー類似反応
c)反応生成物の支持体上への塗布、および
d)光化学的架橋
による、ビニルアルコール基を含む変性ポリマーを用いた、支持体の被覆方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519121(P2009−519121A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544967(P2008−544967)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069395
【国際公開番号】WO2007/068642
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】