説明

カンチレバーホルダ及び走査型プローブ顕微鏡

【課題】 本体部を確実に固定して、カンチレバーの振動状態に影響を与えないこと。
【解決手段】 先端に探針3を有すると共に基端側が平板状の本体部4に片持ち状態に支持されたカンチレバー5を、着脱自在に固定するものであって、本体部4を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部11を有するベース部材12と、本体部4を載置部11に載置した状態で該本体部4の表面4aに少なくとも接触可能とされ、カンチレバー5の長手方向(軸線A方向)に略直交する方向に延びた押さえ部材13と、該押さえ部材13の両端をベース部材12に向けて所定の圧力で押圧し、押さえ部材13を介して本体部4を載置部11に固定すると共に、押圧を解いて押さえ部材13を本体部4の表面4aから離間可能な押圧手段14とを備え、押さえ部材13が、樹脂性材料から形成されているカンチレバーホルダ2を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に探針を有するカンチレバーを着脱自在に固定するカンチレバーホルダ及び該カンチレバーホルダを有する走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)等の、カンチレバーを用いるタイプのSPM(Scanning Probe Microscope;走査型プローブ顕微鏡)では、試料に応じて最適なカンチレバーを使用するため、該カンチレバーはカンチレバーホルダから着脱自在に固定されており、交換することができるようになっている。
カンチレバーをカンチレバーホルダに固定するには、通常、カンチレバーの基端側を片持ち状に支持する本体部をカンチレバーホルダの取付部にセットし、該本体部を各種の押さえ部材で取付部に押さえつけて固定している。
この押さえ部材としては、様々なものが提供されているが、通常はワイヤ(例えば、特許文献1参照)や板ばね(例えば、特許文献2参照)が採用されている。また、これらワイヤや板ばねは、カンチレバーの固定を確実なものにするため、一般的に金属材料が使用されている。
【特許文献1】特開2003−121335号公報
【特許文献2】特開2000−249714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のカンチレバーホルダでは、以下の課題が生じていた。
即ち、SPMでは、試料をより多角的に観察するために、様々な測定モードが用意されており、観察者は目的に応じて最適な測定モードを選択して試料の観察を行っている。
例えば、カンチレバーを所定の周波数(共振周波数又はその近傍)で振動させ、探針と試料との距離が一定になるように制御しながら走査を行うACモードAFMがある。
【0004】
このACモードAFMを行う際、従来のカンチレバーホルダでは本体部を確実に固定できないことがあり、その結果、該カンチレバーを所定の周波数で振動させるのに影響を与えてしまうことがあった。
即ち、ワイヤを利用して固定を行う方法では、例えば図11に示すようにワイヤ43で本体部4をカンチレバーホルダ2に押し付けて固定しているが、ワイヤ43は金属製の硬度を有する線材であるので、カンチレバーホルダ2の外形形状に沿って変形せずに、本体部4の両端部で2点接触した状態になってしまうことがあった。従ってこの場合、本体部4をカンチレバーホルダ2に押し付けて確実に固定することができなかった。
【0005】
また、板バネを利用して固定を行う方法では、板バネと本体部とが一見面接触した状態で固定されているように見えるが、板バネ及び本体部の表面は微小な凹凸形状になっているので、上記ワイヤを利用した固定方法の場合と同様に点接触した状態になってしまうことがあった。この場合は多点接触となるので、上記ワイヤを利用した固定方法での2点接触よりは固定が強固なものとなるが、やはり本体部を確実に固定することが困難なものであった。
【0006】
このように従来の方法では本体部を確実に固定することができないので、カンチレバーの振動に伴って、本体部も振動してしまっていた。そのため、カンチレバーの振動状態に影響を与えてしまい、該カンチレバーを所定の周波数で振動させることができなかった。
また、カンチレバーホルダの振動が本体部に伝達する場合があるが、この場合においても伝達された振動によって本体部が振動してしまい、この振動がさらにカンチレバーに伝達してしまっていた。つまり、本体部の固定が確実ではないので、カンチレバーホルダの振動が本体部を介してカンチレバーまで伝達してしまい、カンチレバーを所定の周波数で振動させることができなかった。
【0007】
そのため、Qカーブ(加振周波数の最適値(動作点)を決定するための共振特性曲線)を測定する際に、測定に影響(例えば、共振点がずれる、振動振幅の大きさが変わる等)を与えてしまい、Qカーブを安定して測定することができない不都合があった。その結果、ACモードAFMでの測定を正確に行うことができなかった。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、本体部を確実に固定して、カンチレバーの振動状態に影響を与えることがないカンチレバーホルダ及び該カンチレバーホルダを有する走査型プローブ顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係るカンチレバーホルダは、先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の表面に少なくとも接触可能とされ、前記カンチレバーの長手方向に略直交する方向に延びた押さえ部材と、該押さえ部材の両端を前記ベース部材に向けて所定の圧力で押圧し、押さえ部材を介して前記本体部を前記載置部に固定すると共に、押圧を解いて押さえ部材を本体部の表面から離間可能な押圧手段とを備え、前記押さえ部材が、樹脂性材料から形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、本体部をベース部材の載置部に載置することで、本体部が所定位置に位置決めされた状態となる。次いで、押圧手段により、カンチレバーの長手方向に略直交する方向に延びた押さえ部材の両端をベース部材に向けて所定の圧力で押圧して、該押さえ部材を本体部の少なくとも表面に押し付ける。これにより、押さえ部材を介して、本体部を載置部に押し付けて固定することができる。従って、本体部を介してカンチレバーを固定することができる。
また、押圧を解くことで押さえ部材を本体部の表面から離間させることができ、カンチレバーを載置部から取り外すことができる。
【0011】
特に、押さえ部材は、樹脂性材料から形成されるので自身の弾性により変形し易い。よって、押さえ部材は、押圧手段によって押圧されたときに、本体部の表面の微小な凹凸及び本体部の外形形状に応じて変形し、密着した状態で接触する。つまり、従来の点接触とは異なり、押さえ部材と本体部との間に隙間がない状態となり、接触面積が増加する。よって、確実に本体部を載置部に押し付けて固定することができる。
従って、ACモードAFMによりカンチレバーを振動させたときに、該カンチレバーの振動が伝達して本体部が振動してしまうのを抑えることができるので、該カンチレバーの振動状態に影響を与えることはなく、カンチレバーを所定の周波数で確実に振動させることができる。その結果、Qカーブを正確に安定して測定することができ、ACモードAFMによる測定結果の信頼性を向上することができると共に取り扱いも容易になる。
特に、押さえ部材は樹脂性材料から形成されるので、自身の弾性により振動を減衰(ダンピング)させることができることからも、カンチレバーの振動状態に影響を与えることはない。
【0012】
また、本発明のカンチレバーホルダは、上記本発明のカンチレバーホルダにおいて、前記押さえ部材が、帯状のシートであることを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、押さえ部材が樹脂性材料からなる帯状のシートであるので、該シートが本体部の表面の凹凸及び本体部の外形形状に応じて変形し、確実に面接触した状態で密着して本体部を載置部に押し付ける。よって、安定して本体部を載置部に固定することができる。
【0014】
また、本発明のカンチレバーホルダは、上記本発明のカンチレバーホルダにおいて、前記押さえ部材が、ワイヤであることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、押さえ部材が樹脂性材料からなるワイヤであるので、該シートが本体部の表面の凹凸及び本体部の外形形状に応じて変形し、確実に線接触した状態で密着して本体部を載置部に押し付ける。よって、安定して本体部を載置部に固定することができる。
【0016】
また、本発明のカンチレバーホルダは、上記本発明のカンチレバーホルダにおいて、前記ワイヤが、内部に金属性材料からなる可撓性の軸芯を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、ワイヤが金属製材料からなる可撓性の軸芯を備えているので、ワイヤがより強固になり、押圧手段からの押し付け力をより効率良く本体部に伝達することができる。よって、より安定且つ確実に本体部を載置部に固定することができる。
また、ワイヤの両端を固定する際に、樹脂部分に極力影響を与えないよう内部の軸芯を利用して固定することが可能である。これにより、樹脂部分に両端からの引張力が作用することを防止できるので、引張力に起因する延びを生じさせることがない。従って、樹脂部分の耐久性を向上することができると共に、自身の弾性を確実に維持することができる。
【0018】
また、本発明のカンチレバーホルダは、上記本発明のカンチレバーホルダにおいて、前記樹脂性材料が、導電性樹脂材料であることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係るカンチレバーホルダは、押さえ部材が導電性樹脂材料から形成されているので、カンチレバーの帯電を防止したり、帯電した静電気を除去したりすることができる。また、これにより、電界や磁界から受ける影響を極力低減することができる。よって、測定結果の信頼性をさらに向上することができる。
なお、導電性樹脂材料としては、樹脂性材料自体が導電性を有しているものを利用しても構わないし、導電性を有していない樹脂性材料に、例えば、カーボンナノチューブ等の炭素材料や金属材料を混合して得られたものを利用しても構わない。
【0020】
また、本発明のカンチレバーホルダは、先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の表面に少なくとも接触可能とされた板状部材と、該板状部材を前記本体部の表面に向けて所定の圧力で押圧して本体部を前記載置部に固定すると共に、押圧を解いて板状部材を本体部の表面から離間可能な押圧手段とを備え、前記板状部材には、前記本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、本体部をベース部材の載置部に載置することで、本体部が所定位置に位置決めされた状態となる。次いで、押圧手段により、板状部材を所定の圧力で押圧して本体部の少なくとも表面に押し付ける。これにより、板状部材を介して本体部を載置部に押し付けて固定することができる。従って、本体部を介してカンチレバーを固定することができる。
また、押圧を解くことで板状部材を本体部の表面から離間させることができ、カンチレバーを載置部から取り外すことができる。
【0022】
特に、板状部材には、本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されているので、押圧手段によって押圧されたときに、本体部の表面の微小な凹凸及び本体部の外形形状に応じて樹脂性の膜が変形して密着した状態で接触する。つまり、従来の点接触とは異なり、板状部材と本体部との間に隙間がない状態となり、接触面積が増加する。よって、確実に本体部を載置部に押し付けて固定することができる。
従って、ACモードAFMによりカンチレバーを振動させたときに、該カンチレバーの振動が伝達して本体部が振動してしまうのを抑えることができるので、該カンチレバーの振動状態に影響を与えることはなく、カンチレバーを所定の周波数で確実に振動させることができる。その結果、Qカーブを正確に安定して測定することができ、ACモードAFMによる測定結果の信頼性を向上することができると共に取り扱いも容易になる。
また、樹脂性の膜は、自身の弾性により振動を減衰(ダンピング)させることができることからも、カンチレバーの振動状態に影響を与えることはない。
【0023】
また、本発明のカンチレバーホルダは、先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の少なくとも表面を所定の圧力で押圧して、本体部を載置部に固定可能な板バネとを備え、該板バネには、前記本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係るカンチレバーホルダにおいては、本体部をベース部材の載置部に載置することで、本体部が所定位置に位置決めされた状態となる。次いで、板バネにより、自身の弾性力を利用して本体部の少なくとも表面を載置部に向けて所定の圧力で押圧する。これにより、本体部を載置部に押し付けて固定することができる。従って、本体部を介してカンチレバーを固定することができる。
また、板バネを持ち上げて該板バネによる押圧を解くことで、カンチレバーを載置部から取り外すことができる。
【0025】
特に、板バネには、本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されているので、自身の弾性で本体部を押圧したときに、本体部の表面の微小な凹凸及び本体部の外形形状に応じて樹脂性の膜が変形して密着した状態で接触する。つまり、従来の点接触とは異なり、板バネと本体部との間に隙間がない状態となり、接触面積が増加する。よって、確実に本体部を載置部に押し付けて固定することができる。
従って、ACモードAFMによりカンチレバーを振動させたときに、該カンチレバーの振動が伝達して本体部が振動してしまうのを抑えることができるので、該カンチレバーの振動状態に影響を与えることはなく、カンチレバーを所定の周波数で確実に振動させることができる。その結果、Qカーブを正確に安定して測定することができ、ACモードAFMによる測定結果の信頼性を向上することができると共に取り扱いも容易になる。
また、樹脂性の膜は、自身の弾性により振動を減衰(ダンピング)させることができることからも、カンチレバーの振動状態に影響を与えることはない。
【0026】
また、本発明のカンチレバーホルダは、上記本発明のカンチレバーホルダにおいて、前記樹脂性の膜が、導電性樹脂材料から形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係るカンチレバーホルダは、樹脂性の膜が導電性樹脂材料から形成されているので、カンチレバーの帯電を防止したり、帯電した静電気を除去したりすることができる。また、これにより、電界や磁界から受ける影響を極力低減することができる。よって、測定結果の信頼性をさらに向上することができる。
なお、導電性樹脂材料としては、樹脂性材料自体が導電性を有しているものを利用しても構わないし、導電性を有していない樹脂性材料に、例えば、カーボンナノチューブ等の炭素材料や金属材料を混合して得られたものを利用しても構わない。
【0028】
また、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明のいずれかのカンチレバーホルダと、先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持され、該本体部を介して前記カンチレバーホルダに着脱自在に固定されるカンチレバーと、試料を載置し、該試料を前記探針に対向配置させることができるステージと、前記探針と前記試料とを試料表面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、前記カンチレバーの変位を測定する測定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡においては、まず、試料に応じたカンチレバーを選択し、本体部を介してカンチレバーホルダに固定する。次いで、カンチレバー先端の探針を、試料表面に接触又は非接触状態にした状態で試料の表面形状や粘弾性等の各種物性情報の測定を開始する。例えば、カンチレバーを所定の周波数で振動させた状態で、移動手段により探針と試料とを相対移動させて走査を行い、測定手段によりこの間のカンチレバーの変位、即ち、カンチレバーの振動状態の変位を測定して、試料の表面形状の測定を行う。
【0030】
特に、カンチレバーホルダは、従来の点接触によるカンチレバーとは異なり、押さえ部材と本体部との間の隙間をなくして両者を密着させ、確実に本体部を載置部に押し付けて固定しているので、カンチレバーの振動状態に影響を与えることなく、該カンチレバーを所定の周波数で確実に振動させることができる。従って、試料の表面形状等を正確に測定でき、測定結果の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るカンチレバーホルダによれば、押さえ部材が樹脂性材料から形成されているので、押圧されたときに、本体部の表面の微小な凹凸及び本体部の外形形状に応じて変形し密着した状態で接触する。つまり、押さえ部材と本体部との間に隙間がない状態となり接触面積が増加するので、確実に本体部を載置部に押し付けて固定することができる。従って、カンチレバーを所定の周波数で確実に振動させて、Qカーブを正確且つ安定に測定でき、ACモードAFMによる測定結果の信頼性を向上することができる。
【0032】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡によれば、カンチレバーの振動状態に影響を与えることなく、確実に固定することができるカンチレバーホルダを備えているので、試料をより正確に測定でき、測定結果の信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るカンチレバーホルダ及び走査型プローブ顕微鏡の第1実施形態を、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、図1に示すように、カンチレバーホルダ2と、先端に探針3を有すると共に基端側が平板状の本体部4に片持ち状態に支持され、該本体部4を介してカンチレバーホルダ2に着脱自在に固定されるカンチレバー5と、試料Sを載置し、該試料Sを探針3に対向配置させることができるステージ6と、探針3と試料Sとを試料表面に平行なXY方向に相対移動させると共に、試料表面に垂直なZ方向に相対移動させるXYスキャナ7及びZスキャナ8とからなる移動手段9と、カンチレバー5の変位を測定する測定手段10とを備えている。
なお、本実施形態では、カンチレバー5を所定の周波数で振動させて、試料Sの表面形状を測定する場合を例にして説明する。
【0034】
上記カンチレバーホルダ2は、図2から図4に示すように、カンチレバー5の軸線Aと水平面とのなす角度θ1が所定の角度となるように、本体部4を所定の位置に位置決めした状態で載置する載置部11を有するベース部材12と、本体部4を載置部11に載置した状態で本体部4の表面4aに少なくとも接触可能とされ、軸線A方向(カンチレバー5の長手方向)に略直交する方向に延びた帯状のシート(押さえ部材)13と、該シート13の両端をベース部材12に向けて所定の圧力で押圧し、シート13を介して本体部4を載置部11に固定すると共に、押圧を解いてシート13を本体部4の表面4aから離間可能な押圧手段14とを備えている。
【0035】
上記ベース部材12は、例えば、上面視略U字状に形成されており、図1に示す取付壁Wに固定されている。そして、図2に示すように、開口部近傍に上記載置部11が設けられている。この載置部11は、本体部4の裏面(探針3が設けられている反対側の面)4b及び本体部4の後端部4cに接触するようになっている。これにより、図4に示すように、カンチレバー5を水平面に対して所定角度θ1だけ傾けた状態で、位置ずれすることなく載置部11に載置できるようになっている。
【0036】
また、ベース部材12には、載置部11から所定距離離間した位置に支柱部15が設けられており、該支柱部15の上部にはピン接合された金属性の押さえ板16が揺動自在に取り付けられている。即ち、押さえ板16は、ピン17を中心として回転するようになっている。
この押さえ板16は、図3に示すように、先端側が上面視U字状に形成されていると共に基端側が上面視長方形状に形成されている。そして、押さえ板16は、先端側の開口部内に上記載置部11が位置するように配されている。即ち、2つの突起部16aが、載置部11を間に挟むように両側に位置している。
また、図4に示すように、押さえ板16の基端側とベース部材12との間には、基端側をベース部材12から離間させるように該ベース部材12を付勢するスプリング18が設けられている。これにより、押さえ板16は、常にピン17を中心に回転して先端側がベース部材12に向けて付勢されるようになっている。
【0037】
上記シート13は、例えば、ポリイミドやポリアミド等の樹脂性材料から形成されており、両端が上記2つの突起部16aにねじ部材19により固定されている。即ち、シート13は、上記本体部4の表面4a(探針3が設けられている側の面)に接触した状態で2つの突起部16aの間に架渡されている。
ここで、押さえ板16は、上述したように先端側が常にベース部材12に向けて付勢されているので、2つの突起部16aに固定されたシート13も同様にベース部材12に向けて付勢されるようになっている。つまり、シート13を介して本体部4の少なくとも表面4aを載置部11に向けて押圧できるようになっている。
即ち、これら押さえ板16、支柱部15及びスプリング18は、上記押圧手段14を構成している。
【0038】
また、本実施形態においては、図1に示すように、載置部11と本体部4との間に、本体部4を介してカンチレバー5を所定の周波数で振動させるピエゾ素子20が設けられている。このピエゾ素子20は、加振電源21から印加された電圧に応じて振動するようになっている。
また、上記ステージ6は、XYスキャナ7上に載置されており、該XYスキャナ7は上記Zスキャナ8上に載置されている。また、Zスキャナ8は、図示しない防振台上に載置されている。このXYスキャナ7及びZスキャナ8は、例えば、ピエゾ素子であり、それぞれXY制御部22及びZ制御部23から電圧を印加されてそれぞれの方向に微小移動するようになっている。
【0039】
また、試料Sの上方には、カンチレバー5の図示しない反射面に向けてレーザ光Lを照射する光照射部24と、反射面で反射されたレーザ光Lを受光する光検出部25が配されている。この光検出部25は、例えば、4分割のフォトディテクタであり、レーザ光Lの入射位置からカンチレバー5の変位、即ち、振動状態を検出するようになっている。そして、光検出部25は、検出したカンチレバー5の振動状態の変位をDIF信号として、出力するようになっている。
そして、制御部26は、出力されたDIF信号に基づいて、上記Z制御部23をフィードバック制御して、探針3と試料Sとの距離が常に一定になるように制御している。また、同時にDIF信号に基づいて試料Sの表面形状を測定できるようになっている。即ち、上記光照射部24及び光検出部25は、上記測定手段10を構成している。
なお、制御部26は、上記各構成品を総合的に制御する機能を有している。
【0040】
このように構成されたカンチレバーホルダ2及び走査型プローブ顕微鏡1により、試料Sの表面形状を測定する場合について、以下に説明する。
まず、試料Sをステージ6上に載置すると共に、試料Sに応じたカンチレバー5を選択し、該カンチレバー5をカンチレバーホルダ2に装着する。カンチレバー5を固定した後、該カンチレバー5の反射面に確実にレーザ光Lが照射されるように、また、反射したレーザ光Lが光検出部25に確実に入射するように、光照射部24及び光検出部25の位置等を調整する。次いで、加振電源21からピエゾ素子20に所定の電圧を印加してカンチレバー5を振動させ、Qカーブの測定を行うと共に動作点(加振周波数の最適値)の設定を行う。
【0041】
上記初期設定が終了した後、試料Sの表面形状の測定を行う。即ち、探針3と試料Sとの距離を一定の距離にした状態で、XY制御部22によりXYスキャナ7を移動させて、試料Sの走査を行う。この際、試料表面の凹凸に応じてカンチレバー5が撓むので、光検出部25に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光)の入射位置が異なる。そして、光検出部25は、この入射位置に応じたDIF信号を制御部26に出力する。制御部26は、このDIF信号に基づいて、試料Sの表面形状を測定すると共に、Z制御部23によりZスキャナ8を移動させて、探針3と試料Sとの距離が常に一定となるようにフィードバック制御する。これにより、試料Sの表面形状を測定することができる。
【0042】
ここで、カンチレバー5の固定方法について、より詳細に以下に説明する。
まず、押さえ板16の基端側をスプリング18の力に抗する力でベース部材12に向けて押圧する。これにより、押さえ板16は、ピン17を中心に回転して先端側がベース部材12から離間するように移動する。この状態で、カンチレバー5の本体部4を載置部11上に載置する。この際、本体部4の裏面4b及び後端部4cが載置部11に接触するので、本体部4が位置ずれせずに確実に位置決めされた状態となる。また、この載置状態で、カンチレバー5の軸線Aと水平面とのなす角度θ1が所定の角度に維持された状態となる。
【0043】
本体部4の載置が終了した後、押さえ板16の基端側の押圧力(押し付け力)を徐々に緩める。押圧力を緩めると、押さえ板16の基端側はスプリング18により常に付勢されているので、押さえ板16の先端側が徐々にベース部材12に向けて移動し始め、シート13が本体部4の表面4aに接触し始める。そして、さらなる押さえ板16の移動により、シート13の両端をベース部材12に向けて所定の圧力で押圧して、シート13を介して本体部4を載置部11に押し付けて固定することができる。
特に、シート13は、樹脂性材料からなるので、自身の弾性により変形し易い。よって、シート13は、本体部4の表面4aの微小な凹凸及び本体部4の外形形状に応じて変形し、密着した状態で接触する。つまり、従来の点接触と異なり、シート13と本体部4との間に隙間がない状態になり接触面積が増加する。よって、確実に本体部4を載置部11に押し付けて固定することができる。
【0044】
従って、カンチレバー5を振動させた時に、該カンチレバー5の振動が伝達して本体部4が振動してしまうのを抑えることができるので、カンチレバー5の振動状態に影響を与えることはなく、カンチレバー5を所定の周波数で確実に振動させることができる。その結果、Qカーブを正確、且つ、安定して測定でき、測定結果の信頼性を向上することができると共に扱いが容易となる。また、シート13を利用しているので、本体部4への接触が面接触となり、固定がより確実なものとなる。また、自身の弾性による減衰(ダンピング)効果も働くことからも、カンチレバー5の振動状態に影響を与えることはない。
【0045】
また、押さえ板16の基端側を再度押圧することで、押さえ板16の先端側をベース部材12から離間させることができるので、カンチレバー5の交換を行うことができる。
なお、樹脂性材料として、ポリイミドやポリアミドを採用することで、延びを極力なくすことができるので、長期間使用したとしても、使用開始時と同じ状態で確実に本体部4を介してカンチレバー5を固定することができる。よって、信頼性を向上することができる。
【0046】
次に、本発明に係るカンチレバーホルダの第2実施形態を、図5から図7を参照して説明する。なお、この実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、シート13を利用して本体部4を固定したが、第2実施形態のカンチレバーホルダは、樹脂性材料から形成されるワイヤを利用して本体部4を固定する点である。
即ち、本実施形態のカンチレバーホルダ30は、本体部4を載置部11に載置した状態で本体部4の表面4aに少なくとも接触可能とされ、軸線A方向に略直交する方向に延びたワイヤ(押さえ部材)31と、該ワイヤ31の両端をベース部材12に向けて所定の圧力で押圧し、ワイヤ31を介して本体部4を載置部11に固定すると共に、押圧を解いてワイヤ31を本体部4の表面4aから離間可能な押圧手段32とを備えている。
なお、本実施形態においては、ベース部材12は、上面視長方形状に形成されている。
【0047】
上記ベース部材12には、カンチレバー5の軸線A方向に直交する方向にワイヤ31の一端を固定するねじ部材33が設けられている。ワイヤ31の一端側は、このねじ部材33の周囲に巻回されることで固定されるようになっている。また、ベース部材12には、載置部11を挟んでねじ部材33の反対側にワイヤ31の軸線に沿って、上面及び側面にそれぞれ開口34a、34bを有する貫通孔34が形成されている。
また、側面の開口34bから貫通孔34の内部に向けて、プラグ35が貫通孔34内を移動自在に挿入されている。また、貫通孔34内には、スプリング36が配されており、プラグ35の基端側を外方に向けて付勢している。
そして、上記ワイヤ31の他端側は、上面の開口34aを介して貫通孔34内に入り、プラグ35の基端側に接続されている。これにより、ワイヤ31は、常に引っ張られた状態となり、載置部11に載置された本体部4をベース部材12に向けて押し付けるようになっている。
即ち、上記ねじ部材33、貫通孔34、プラグ35及びスプリング36は、上記押圧手段32を構成している。
【0048】
このように構成されたカンチレバーホルダ30によりカンチレバー5を固定する場合について、以下に説明する。
まず、プラグ35をスプリング36の力に抗する力で貫通孔34内部に押し込んで、ワイヤ31を弛ませる。この状態で、カンチレバー5の本体部4を載置部11上に載置する。この際、本体部4の裏面4b及び後端部4cが載置部11に接触するので、本体部4が位置ずれせずに位置決めされた状態となる。また、この載置状態で、カンチレバー5の軸線Aと水平面とのなす角度が所定の角度θ1に維持された状態となる。
【0049】
本体部4の載置が終了した後、プラグ35の押し込みを徐々に緩める。これにより、ワイヤ31の他端側がプラグ35に引っ張られ、ワイヤ31が本体部4の表面4aに接触し始める。そして、さらなるプラグ35の移動により、ワイヤ31の両端をベース部材12に向けて所定の圧力で押圧して、ワイヤ31を介して本体部4を載置部11に押し付けて固定することができる。
特に、ワイヤ31は、樹脂性材料からなるので、自身の弾性により変形し易い。よって、図7に示すように、ワイヤ31は、押圧されたときに本体部4の表面4aの微小な凹凸及び本体部4の外形形状に応じて変形し、密着した状態で線接触する。つまり、従来の点接触と異なり、ワイヤ31と本体部4との間に隙間がない状態になり、接触面積が増加する。よって、確実に本体部4を載置部11に押し付けて固定することができる。
従って、上記第1実施形態と同様に、カンチレバー5を、振動状態に影響を与えることなく固定することができるので、Qカーブを正確に安定して測定でき、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態において、ワイヤ31の内部に金属製材料からなる可撓性の軸芯を設けても構わない。こうすることで、ワイヤ31がより強固になり、押し付け力をより効率良く本体部4に伝達することができる。よって、より安定且つ確実に本体部4を固定することができる。
【0051】
次に、本発明に係るカンチレバーホルダの第3実施形態を、図8から図10を参照して説明する。なお、この実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、シート13を利用して本体部4を固定したが、第3実施形態のカンチレバーホルダ40は、押さえ板(板状部材)41自身で本体部4を固定する点である。
即ち、本実施形態のカンチレバーホルダ40は、図8及び図10に示すように、本体部4を載置部11に載置した状態で、本体部4の表面4aに少なくとも接触する押さえ板41を備えている。
この押さえ板41は、上面視長方形状に形成されており、支柱部15にピン接合されている。また、押さえ板41の先端側が本体部4の表面4aに接触しており、基端側がスプリング18により付勢されている。また、押さえ板41には、図10に示すように、本体部4の表面4aと接触する領域(先端側)に樹脂性の膜42が形成されている。
【0052】
このように構成されたカンチレバーホルダ40にカンチレバー5を固定する場合について、以下に説明する。
まず、押さえ板41の基端側をスプリング18の力に抗する力でベース部材12に向けて押圧する。これにより、押さえ板41は、ピン17を中心に回転して先端側がベース部材12から離間するように移動する。この状態で、カンチレバー5の本体部4を載置部11上に載置する。
【0053】
本体部4の載置が終了した後、押さえ板41の基端側の押圧力を徐々に緩める。これにより、押さえ板41の先端側が徐々にベース部材12に向けて移動し、樹脂性の膜42が本体部4の表面4aに接触し始める。そして、さらなる押さえ板41の移動により、押さえ板41の先端側は、樹脂性の膜42を介して本体部4を載置部11に所定の力で押し付けて固定することができる。
特に、押さえ板41と本体部4との接触領域には、樹脂性の膜42が設けられているので、押圧されたときに本体部4の表面4aの微小な凹凸及び本体部4の外形形状に応じて変形し、密着した状態で接触する。つまり、従来の点接触と異なり、樹脂性の膜42と本体部4との間に隙間がない状態になり、接触面積が増加する。よって、確実に本体部4を載置部11に押し付けて固定することができる。
従って、上記第1実施形態と同様に、カンチレバー5を、振動状態に影響を与えることなく固定することができるので、Qカーブを正確に安定して測定でき、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0054】
なお、上記第3実施形態では、押さえ板41の基端側をスプリング18により付勢することで、本体部4を載置部11に押さえつけて固定したが、この構成に限定されるものではない。例えば、スプリング等を用いず、板バネを利用したカンチレバーホルダとしても構わない。
即ち、本体部4を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部11を有するベース部材12と、本体部4を載置部11に載置した状態で該本体部4の少なくとも表面4aを所定の圧力で押圧して、本体部4を載置部4に固定する板バネとでカンチレバーを構成しても構わない。また、この場合には、上記第3実施形態と同様に、板バネの、本体部4の表面4aと接触する領域に樹脂性の膜42を設ければ良い。
【0055】
このように構成することで、板バネ自身の弾性により本体部を載置部に押し付けて固定することができるので、さらなる構成の簡略化を図ることができると共に、製造が容易となる。また、板バネを利用したとしても、上記第3実施形態と同様に、樹脂性の膜42を有しているので、カンチレバー5を、振動状態に影響を与えることなく確実に固定することができる。
【0056】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0057】
例えば、上記各実施形態では、カンチレバーを所定の周波数で振動させて、試料の表面形状を測定する場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、磁気を検知できる探針を有するカンチレバーを、ACモードAFMと同様に振動させ、この際のカンチレバーの撓み振幅や位相を検出することで磁気試料の磁化分布や磁区構造等の測定を行うMFM(Magnetic Force Microscope:磁気力顕微鏡)においても同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
また、上述したMFMだけでなく、例えば、導電性探針(カンチレバー)と試料との間に、ACバイアス電圧を印加し、探針と試料との静電結合によってカンチレバーを振動させ、この際のカンチレバーの撓み振幅を検知することで試料の表面電位分布等の測定を行うKFM(Kelvin Prove Force Microscope:ケルビンプローブフォース顕微鏡)やSMM(Scanning Maxwell-stress Microscope:走査型マクスウェル応力顕微鏡)等のSPMにおいても同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
更には、AFM動作中に、試料を試料表面に平行な水平方向に横振動させ、この際のカンチレバーのねじれ振動振幅を検出することで摩擦力分布を測定するLM−FFM(Lateral Force Modulation Friction Force Microscope:横振動摩擦力顕微鏡)や、AFM動作中に、試料を試料表面に垂直なZ方向に微小振動させて周期的な力を加え、この際のカンチレバーの撓み振幅や、sin成分、cos成分を検出することで粘弾性分布を測定するVE−AFM(Viscoelastic AFM:マイクロ粘弾性測定−原子間力顕微鏡)等においても同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
また、上記各実施形態では、カンチレバーを振動させる構成にしたが、カンチレバーが振動していなくても構わない。この場合においても、本体部が振動しないようカンチレバーホルダが確実に固定されているので、例えば、床から伝達してきた振動や外部から入ってきた音に起因する振動等が伝わってきても、本体部が振動するのを抑えることができ、また、カンチレバーホルダによるダンピング効果(減衰効果)も働くので、カンチレバーにこれらの振動を伝えることはない。よって、この場合においても、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0061】
また、上記各実施形態では、測定手段が光てこ方式によりカンチレバーの変位検出を行ったが、光てこ方式に限定されるものではない、例えば、カンチレバー自身に変位検出機能(例えば、ピエゾ抵抗素子等による)を設けた自己検知方式を採用しても構わない。
【0062】
更に、上記各実施形態において、押さえ部材及び樹脂性の膜が導電性を有するように、例えば、導電性樹脂材料を利用して形成しても構わない。
こうすることで、カンチレバーの帯電を防止したり、帯電した静電気を除去したりすることができる。また、これにより、電界や磁界から受ける影響を極力低減することができる。よって、測定結果の信頼性をさらに向上することができる。
なお、導電性樹脂材料としては、樹脂性材料自体が導電性を有しているものを利用しても構わないし、導電性を有していない樹脂性材料に、例えば、カーボンナノチューブ等の炭素材料や金属材料を混合して得られたものを利用しても構わない。
【0063】
また、上記各実施形態では測定環境について言及していないが、本発明は測定環境によってその適用を限定されない。大気中はもちろん、ガス中、真空中、液中等、走査型プローブ顕微鏡が適用できる測定環境であれば、本発明は適用可能である。低温、高温等の温度制御環境や、湿度制御環境等においても同様である。そして、それらいずれの場合においても、同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す走査型プローブ顕微鏡の構成品であって、本発明に係るカンチレバーホルダの上面図である。
【図3】図2に示すカンチレバーホルダの載置部周辺の拡大図である。
【図4】図3に示すカンチレバーホルダの断面図である。
【図5】本発明に係るカンチレバーホルダの第2実施形態を示す上面図である。
【図6】図5に示すカンチレバーホルダの断面図である。
【図7】図6に示すカンチレバーホルダのワイヤにより本体部を固定している状態を示す拡大断面図である。
【図8】本発明に係るカンチレバーホルダの第3実施形態を示す上面図(載置部周辺の拡大図)である。
【図9】図8に示すカンチレバーホルダの断面図である。
【図10】図9に示すカンチレバーホルダの押さえ板により本体部を固定している状態を示す拡大断面図である。
【図11】従来のカンチレバーホルダのワイヤによりカンチレバーを固定している状態を示す図であって、(a)は側面図、(b)はワイヤと本体部との取付関係を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0065】
A カンチレバーの軸線
S 試料
1 走査型プローブ顕微鏡
2、30、40 カンチレバーホルダ
3 探針
4 本体部
4a 本体部の表面
5 カンチレバー
6 ステージ
7 XYスキャナ
8 Zスキャナ
9 移動手段
10 測定手段
11 載置部
12 ベース部材
13 シート(押さえ部材)
14、32 押圧手段
31 ワイヤ(押さえ部材)
41 押さえ板(板状部材)
42 樹脂性の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、
前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、
前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の表面に少なくとも接触可能とされ、前記カンチレバーの長手方向に略直交する方向に延びた押さえ部材と、
該押さえ部材の両端を前記ベース部材に向けて所定の圧力で押圧し、押さえ部材を介して前記本体部を前記載置部に固定すると共に、押圧を解いて押さえ部材を本体部の表面から離間可能な押圧手段とを備え、
前記押さえ部材が、樹脂性材料から形成されていることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のカンチレバーホルダにおいて、
前記押さえ部材が、帯状のシートであることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項3】
請求項1記載のカンチレバーホルダにおいて、
前記押さえ部材が、ワイヤであることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項4】
請求項3記載のカンチレバーホルダにおいて、
前記ワイヤは、内部に金属性材料からなる可撓性の軸芯を備えていることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のカンチレバーホルダにおいて、
前記樹脂性材料が、導電性樹脂材料であることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項6】
先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、
前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、
前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の表面に少なくとも接触可能とされ
た板状部材と、
該板状部材を前記本体部の表面に向けて所定の圧力で押圧して本体部を前記載置部に固定すると共に、押圧を解いて板状部材を本体部の表面から離間可能な押圧手段とを備え、
前記板状部材には、前記本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されていることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項7】
先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持されたカンチレバーを、着脱自在に固定するカンチレバーホルダであって、
前記本体部を所定位置に位置決めした状態で載置する載置部を有するベース部材と、
前記本体部を前記載置部に載置した状態で該本体部の少なくとも表面を所定の圧力で押圧して、本体部を載置部に固定可能な板バネとを備え、
該板バネには、前記本体部の表面と接触する領域に樹脂性の膜が形成されていることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のカンチレバーホルダにおいて、
前記樹脂性の膜が、導電性樹脂材料から形成されていることを特徴とするカンチレバーホルダ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカンチレバーホルダと、
先端に探針を有すると共に基端側が平板状の本体部に片持ち状態に支持され、該本体部を介して前記カンチレバーホルダに着脱自在に固定されるカンチレバーと、
試料を載置し、該試料を前記探針に対向配置させることができるステージと、
前記探針と前記試料とを試料表面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、
前記カンチレバーの変位を測定する測定手段とを備えることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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