説明

カーエアコン用作動流体

【課題】今後主流となるテトラフルオロプロペンを冷媒とする新たなカーエアコン用作動流体における、テトラフルオロプロペンとの相溶性、テトラフルオロプロペンの分解に係る問題を解消して冷却性能及び安定性を改善する。
【解決手段】テトラフルオロプロペンを冷媒とし、下記条件であるポリオキシプロピレンモノオールを基油とする冷凍機油に溶解してなる事を特徴とするカーエアコン用作動流体。
[製造時に発生する副生成物ポリプロピレンジオールが7質量%以下である、メタノールを出発物質として、プロピレンオキサイドを付加重合した平均分子量800から1200のポリオキシプロピレンモノオール]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロプロペンを冷媒とするカーエアコン用作動流体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンには冷媒を冷凍機油に溶解させた作動流体が使用されているが、従来から、環境面を配慮してR−134a等のように塩素を含有せず、水素、炭素及びフッ素からなるハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒が使用されており、それに伴い、HFC冷媒と相溶性があるポリオールエステル油等のエステル系冷凍機油や、PAG等のグリコール系冷凍機油が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、環境保全への要求はより厳しくなってきており、特に欧州では2011年以降に生産される自動車のカーエアコンに使用する冷媒が地球温暖化係数(GWP) 150以下に規制されており、テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン;HFO−1234yf)が最有力候補となっている(DIRECTIVE 2006/40/EC relating to emissions of f−gas from air conditioning systems fitted to cars.2nd International Workshop on Mobile Air Conditioning and Auxiliary Systems−Trono,Italy Nov.29,2007及びEuropean Automotive A/C Convention, Sep.22−23, 2008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2787083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、テトラフルオロプロペンは、従来のカーエアコンに使用されていた冷凍機油に溶解し難く、比較的低温度で二層分離を起こすという問題がある。また、テトラフルオロプロペンは、大気中で分解することにより成層圏への到達を抑えるため、分解しやすく従来のHFC冷媒に比べて化学的安定性が低くなっている。そのため、分解により発生した重合物による装置配管の閉塞や、分解により発生した酸性化合物による装置の腐食を引き起こす可能性が高く、更には冷凍機油と冷媒劣化物が反応して冷凍機油の粘度が低下するおそれもある。
【0006】
そこで本発明は、今後主流となるテトラフルオロプロペンを冷媒とする新たなカーエアコン用作動流体における、テトラフルオロプロペンと冷凍機油の相溶性、テトラフルオロプロペンの分解に係る問題を解消して冷却性能及び安定性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、下記のカーエアコン用作動流体を提供する。
(1)テトラフルオロプロペンを冷媒とし、下記条件であるポリオキシプロピレンモノオールを基油とする冷凍機油に溶解してなる事を特徴とするカーエアコン用作動流体。
[製造時に発生する副生成物ポリプロピレンジオールが7質量%以下である、メタノールを出発物質として、プロピレンオキサイドを付加重合した平均分子量800から1200のポリオキシプロピレンモノオール]
(2)基油に対し、末端にグリシジル基を有するポリオキシプロピレンを0.5〜5質量%の割合で含有することを特徴とする上記(1)記載のカーエアコン用作動流体。
(3)基油に対し、フェノール系ラジカル反応抑制剤を0.5〜2質量%、分子中にエステル基を持たないエポキシ系酸捕捉剤を0.5〜4質量%及びリン系極圧剤を0.5〜2質量%の割合で含有することを特徴とする上記(1)または(2)記載のカーエアコン用作動流体。
(4)リン系極圧剤の一部もしくは全部を、グリセリンと、分子中に1または2個の不飽和結合を有する脂肪酸とからなるモノエステルで代替してリン酸系極圧剤の含有量を0.5質量%以下にすることを特徴とする上記(3)記載のカーエアコン用作動流体。
【発明の効果】
【0008】
本発明において冷凍機油の基油に用いる、特定の分子量で、副生成物の量を規制し、かつ末端に水酸基及びアルキルエーテル基を有するポリオキシプロピレンモノオールは、流動性に優れ、またテトラフルオロプロペンとの相溶性が高く、テトラフルオロプロペンを分解し難くする効果も備えるため、今後主流となるテトラフルオロプロペンを冷媒とするカーエアコンの運転を長期にわたり安定に維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明のカーエアコン用作動流体では、冷媒としてテトラフルオロプロペンを使用する。テトラフルオロプロペンには異性体が存在し、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン及び1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンがあり、本発明では両方が対象となる。
【0011】
冷凍機油の基油には、上記のテトラフルオロプロペンとの相溶性を高め、更にテトラフルオロプロペンの分解を抑制して安定化を図るために、一方の末端に水酸基、他方の末端にアルキルエーテル基を有し、副生成物である両末端が水酸基であるポリオキシプロピレンジオールの含有量を7%以下にしたポリオキシプロピレンモノオール(以下「特定の変性プロピレンモノオール」)を用いる。この特定の変性プロピレンモノオールは、一方の末端の水酸基がテトラフルオロプロペンの分解による酸の発生を抑制し、他方の末端のアルキルエーテル基がテトラフルオロプロペンとの相溶性を高める、また、製造時の副生物である両末端が水酸基であるポリオキシプロピレンジオールの量を規制することにより相溶性が高まる。他の官能基で変性しても、テトラフルオロプロペンとの相溶性及び分解抑制効果が十分ではない。
【0012】
また、基油として実用上必要な粘性は、100℃での動粘度で9mm/s以上とされており、このような粘性を満足するために特定の変性プロピレンモノオールの平均分子量は800から1200であるのが好ましく、950〜1100であるのが最も好ましい。
【0013】
特定の変成プロピレンモノオールは、メタノールを出発物質とし、プロピレンオキサイドを付加して得られる。出発物質の炭素数が増えていくと、冷媒溶解性の観点から好ましくない。また、プロピレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドは冷媒溶解性、低温流動性の観点から好ましくない。
【0014】
特定の変成プロピレンモノオールには、製造時にメタノール及び付加重合触媒に含まれる水に由来してポリオキシプロピレンジオールが副生成物として生成する。ポリオキシプロピレンジオールは、冷媒溶解性を低下させる。本発明ではポリオキシプロピレンジオールの量を7質量%以下とし、好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下とする。このようなポリオキシプロピレンジオール量に収める為には、製造前に予めメタノール及び付加重合触媒を脱水処理して水分の除去を行う方法が有効である。尚、ポリオキシプロピレンジオールは副生が避けられないため、2質量%前後が実質的な下限となる。
【0015】
上記基油には、種々の添加剤を添加できるが、平均分子量が600〜1200で、末端にグリシジル基を有するポリオキシプロピレンを添加することにより、テトラフルオロプロペンが分解して発生した酸を捕捉することで冷凍システム内の酸性成分を低減することができる。このような酸捕捉効果を確保するには、基油に対し0.5〜5質量%の割合が好ましい。特に、5質量%を超えて添加すると、自身の重合物が析出するようになる。
【0016】
また、テトラフルオロプロペンの分解を抑制するためにフェノール系ラジカル反応抑制剤を添加することが好ましい。フェノール系ラジカル反応抑制剤は、テトラフルオロプロペンの不飽和結合に起因する分解・劣化を効果的に抑制することができる。ラジカル反応抑制剤として、フェノール系以外にもチオリン酸系のものも広く使用されているが、硫黄化合物が析出して好ましくない。フェノール系ラジカル反応抑制剤としては、公知のもので構わないが、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ビス(2,6−ジターシャリーブチルフェノール)などが好適である。
【0017】
また、エポキシ系酸捕捉剤を添加することにより、テトラフルオロプロペンが分解した場合、発生した酸成分を捕捉して冷凍システム内の腐食等を抑えることができる。酸捕捉効果が高いことから、グリシジルエーテルのような分子中にエステル基を持たないエポキシ系酸捕捉剤が好ましく、特にテトラフルオロプロペン及び基油との親和性からポリプロピレンモノオールの両末端をグリシジル化したエポキシ系酸捕捉剤を用いることが好ましい。また、炭素数10以下のアルコールをグリシジル化したエポキシ系酸捕捉剤は、テトラフルオロプロペン中での分散性が高いことから酸捕捉能力が向上して好ましい。
【0018】
また、リン酸系極圧剤を添加することにより、摺動部分の金属面に極圧剤が作用して摩耗や焼付きを防止することができ、更には潤滑性が高まり摩擦熱が少なくなることからテトラフルオロプロペンの分解を抑えることもできる。また、リン酸系極圧剤は金属の腐食を起こし難いことから、冷凍システム内の腐食等を抑制する効果もある。極圧剤として、リン酸系以外にもチオリン酸系のものが広く使用されているが、硫黄化合物が析出して好ましくない。リン酸系極圧剤としては、公知のもので構わないが、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどが好適である。
【0019】
上記のフェノール系ラジカル反応抑制剤、エポキシ系酸捕捉剤及びリン酸系極圧剤は、3者を併用することにより、それぞれ単独で使用する場合に比べて効果が高まる。また、それぞれの添加量は、効果が現れる限り制限はないが、基油に対してフェノール系ラジカル反応抑制剤は0.5〜2質量%、エポキシ系酸捕捉剤は0.5〜4質量%、リン酸系極圧剤は0.5〜2質量%とすることが好ましい。添加量がこれより少ないと、それぞれの効果が十分に発現できず、これより多くても効果が飽和するだけでなく、析出物の生成、異常摩耗等の要因となり好ましくない。
【0020】
尚、リン酸系極圧剤は、分解した場合に酸を発生することから、その一部もしくは全部を、グリセリンと、分子中に1または2個の不飽和結合を有する脂肪酸とからなるモノエステルで代替してリン酸系極圧剤の含有量を0.5質量%以下にすることが好ましい。このモノエステルは油性向上剤として機能し、摩擦熱の発生を抑えてテトラフルオロプロペンの熱分解を抑える。また、酸を発生し難いため、酸によるテトラフルオロプロペンの分解も抑えることができる。
【0021】
その他にも、上記以外の性能を向上させる目的で通常用いられる添加剤を添加してもよい。
【実施例】
【0022】
以下に試験例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない
【0023】
(試験例1:化学安定性)
表1に示す基油と、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンと混合して試料を調製した。ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルは、メタノールに、付加重合触媒を用いてプロピレンオキサイドを付加して製造したが、その際、予めメタノール及び付加重合触媒に脱水処理を施したものを用いることにより、表記の副生成物含有量(ポリオキシプロピレンジオール量)となるように調整した。
【0024】
尚、実施例6及び比較例12以外の基油には、フェノール系ラジカル反応抑制剤として2,6−ジアルキル−4−フェノール、グリシジルエーテル系酸捕捉剤としてアルキルグリシジルエーテル及びリン酸系極圧剤としてトリアリールホスフェートを各1質量%の割合で添加した。また、実施例6では、基油に類似するポリプロピレンモノオールグリシジルエーテルを0.5質量%添加し、更にグリシジルエーテル系酸捕捉剤の添加量を0.5質量%とした。また、比較例12では基油と同等の分子量のポリオキシプロピレングリシジルエーテルを6質量%添加したが、グリシジルエーテル系酸捕捉剤は添加していない。
【0025】
そして、試料15質量%とテトラフロオロプロペン85質量%を規定のガラス管に封入して浴槽によりゆっくり加熱し、均一な層から油層と冷媒層とに分かれる温度を測定して冷媒溶解性を評価した。結果を表1に併記する。
【0026】
また、下記条件にてシールドチューブ試験(JIS K2211準拠)を行い、全酸価及び析出物の有無を評価した。結果を表1に併記する。
・油/冷媒 : 2mL/2mL
・試験温度 : 175℃
・試験期間 : 14日間
・油中水分量: 2000ppm
・触媒 : 鉄線、銅線、アルミ線を各3cm
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1〜4は、本発明に従う特定の変性ポリオキシプロピレンであり、比較例1,2が現行R−134a冷媒用として上市されている一般的なポリアルキレングリコールである。実施例1〜4は比較例1,2と比べて2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとの相溶性が良好で、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの分解を抑制して全酸価も低くなっている。また、実施例6のように、末端にグリシジル基を有するポリオキシプロピレンを0.5〜5質量%の範囲で添加することにより、全酸価が更に低下して安定性をより向上させることができる。但し、比較例12のように、末端にグリシジル基を有するポリオキシプロピレンを5質量%より多く添加すると、自身の重合物による析出物が発生するようになる。比較例3,4のように副生成物量が増えていくと比較例2よりも相溶性が悪くなり、比較例9〜11のように出発物質であるアルコールの種類、分子量を変えることにより比較例2よりも相溶性が悪くなる。
【0029】
(試験例2: 安定性)
実施例1の基油に表2に示す如く添加剤を添加し、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンと混合して試料を調製した。尚、添加量は基油に対する割合である。そして、シールドチューブ試験(JIS K2211準拠)により試料の色、全酸価及び析出物の有無を評価した。試験条件は下記の通りであり、結果を表2に併記する。
・油/冷媒 : 2mL/2mL
・試験温度 : 175℃
・試験期間 : 14日間
・油中水分量: 2000ppm
・触媒 : 鉄線、銅線、アルミ線を各3cm
【0030】
【表2】

フェノール系ラジカル反応抑制剤:ジアルキルメチルフェノール
アミン系ラジカル反応抑制剤:N,N‐ジアリールアミン
フェニルエステル系ラジカル反応抑制剤:(ジアルキルヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル
チオリン酸系ラジカル反応抑制剤:ジアルキルジチオリン酸亜鉛
グリシジルエーテル系酸捕捉剤:アルキルグリシジルエーテル
イミド系酸捕捉剤:ビス(ジアルキルフェニル)カルボジイミド
リン酸系極圧剤:トリアリールホスフェート
チオリン酸系極圧剤:トリアリールチオホスフェート
硫黄系極圧剤:硫化オレフィン
グリセリド系油性向上剤:グリセリンモノエステル
POE系油性向上剤:ポリオールエステル
【0031】
表2の試行例1〜7に示すように、フェノール系ラジカル反応抑制剤、グリシジルエーテル系酸捕捉剤、リン酸系極圧剤、あるいはリン酸系極圧剤の一部もしくは全部に代えてグリセリド系油性向上剤を特定量添加することにより、特定の変性ポリオキシプロピレンの安定性を大きく向上させることができる。また、試行例8〜16に示すように、これらの添加剤を特定量含まない(試行例8)、もしくはこれら何れかの添加剤を含まないと安定性の向上効果は少なくなる。
【0032】
(試験3:添加剤量)
実施例1の基油に、表3に示す如く試験例2で用いたフェノール系ラジカル反応抑制剤、グリシジルエーテル系酸捕捉剤、リン酸系極圧剤及びグリセリド系油性向上剤を、それぞれの添加量を変えて添加して試料を調製した。尚、添加量は基油に対する割合である。そして、シールドチューブ試験(JIS K2211準拠)により試料の色、全酸価及び析出物の有無を評価した。試験条件は下記の通りであり、結果を表3に併記する。
・油/冷媒 :2g/1g
・試験温度 :175℃
・試験期間 :4日間
・油中水分量:2000ppm
・管内空気量:分圧300mmHg相当
・触媒 :鉄線、銅線、アルミ線を各3cm
【0033】
【表3】

【0034】
表3に示すように、フェノール系ラジカル反応抑制剤、エポキシ系酸補足剤、リン系極圧剤及び油性向上剤の各添加量が確認された。
【0035】
(試験例4:添加剤量)
実施例1の基油に、試験例2、3で用いたフェノール系ラジカル反応抑制剤を1質量%、グリシジルエーテル系酸捕捉剤を1質量%添加し、更に表4に示す如く試験例2、3で用いたリン酸系極圧及びグリセリド油性向上剤を添加し、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンと混合して試料を調製した。尚、添加量は基油に対する割合である。そして、FALEX試験(Pin−Vee Block)により耐焼付性及び耐摩耗性を評価した。試験条件は下記の通りであり、結果を表4に併記する。
・耐焼付性:50℃、慣らし250lbs×5分、回転数290rpm
・耐摩耗性:50℃、300lbs×2時間、回転数290rpm
【0036】
【表4】

【0037】
表4の試行例28〜31に示すように、リン酸系極圧剤及びグリセリド系油性向上剤の少なくとも一方を適量添加することにより、全く添加しない試行例32や、過剰に添加した試行例33、34に比べて化学安定性や冷媒溶解性を良好にしたまま耐焼付性や耐摩耗性をより向上させることができる。
【0038】
尚、上記において、平均分子量及び副生成物量は下記のように求めた。
即ち、ポリオキシプロピレンモノオールの分子量については分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
(GPC測定条件)
使用機種 :HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
データ処理装置:SC−8020(東ソー株式会社製)
使用カラム:TSG gel G2500H(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃、検出器:RI、溶媒:テトラヒドロフラン、流速0.6ml/分、試料濃度:0.25%、注入量:10μl
検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン(Polymer Laboratories社製;[EasiCal]PS−2[Polystyrene Standards])
【0039】
そして、GPCで得られた溶出時間−ピーク強度のグラフを描いた際、主成分のピークを平均分子量として検量線から読み取った。また、副生成物のポリオキシプロピレンジオールは主成分のピークより高分子側に現れる主成分の約2倍の分子量のピークとして検出される。よって副生成物の量は以下の式で算出した。
副生成物の質量%=(ポリオキシプロピレンジオールの面積)×100/
(ポリオキシプロピレンジオールの面積+ポリオキシプロピレン
モノオールの面積)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロプロペンを冷媒とし、下記条件であるポリオキシプロピレンモノオールを基油とする冷凍機油に溶解してなる事を特徴とするカーエアコン用作動流体。
[製造時に発生する副生成物ポリプロピレンジオールが7質量%以下である、メタノールを出発物質として、プロピレンオキサイドを付加重合した平均分子量800から1200のポリオキシプロピレンモノオール]
【請求項2】
基油に対し、平均分子量が600〜1200で、末端にグリシジル基を有するポリオキシプロピレンを0.5〜5質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1記載のカーエアコン用作動流体。
【請求項3】
基油に対し、フェノール系ラジカル反応抑制剤を0.5〜2質量%、分子中にエステル基を持たないエポキシ系酸捕捉剤を0.5〜4質量%及びリン酸系極圧剤を0.5〜2質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載のカーエアコン用作動流体。
【請求項4】
リン系極圧剤の一部もしくは全部を、グリセリンと、分子中に1または2個の不飽和結合を有する脂肪酸とからなるモノエステルで代替してリン酸系極圧剤の含有量を0.5質量%以下にすることを特徴とする請求項3記載のカーエアコン用作動流体。

【公開番号】特開2011−246587(P2011−246587A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120503(P2010−120503)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(591084816)日本サン石油株式会社 (7)
【Fターム(参考)】