説明

カーテンウォール

【課題】簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供する。
【解決手段】開口部10及びスパンドレル部20を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体21、24、30と、枠体の内側に配置されるガラスパネル26と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが許容されて枠体に取り付けられる耐火パネル27とを備えるカーテンウォール1であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層Sと、室外の圧力が中空層の圧力より所定の圧力差を有して高くなったときにのみ室外から中空層内への空気の流入を許容し、それ以外には空気の流入を遮断する換気手段とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に用いられるカーテンウォールに関し、詳しくはスパンドレル部に結露が発生し難いとともに耐久性にも優れるカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外装部として、カーテンウォールが用いられることが多くなり、その要望も多岐にわたる。カーテンウォールは、工場で組み立てたカーテンウォールユニットを建物躯体に金具により取り付けるだけでよいため、施工性に優れ、外観の観点からも意匠性が高いので新築及び建て替えビルに広く採用されている。
【0003】
カーテンウォールユニットは、開口部と、該開口部の上下に配置されるスパンドレル部(「腰部」ということもある。)と、を備え、開口部は、ビルの居住空間に対応するビル外周部分に配置され、室内側と室外側とをガラスパネルにより仕切っている。
【0004】
一方、スパンドレル部は、開口部の上下に配置され、ビルの床や天井に対応するビル外周部分に具備される。図11、及び図12に、従来の例によるスパンドレル部120に注目したカーテンウォール101の断面図を示した。図11はカーテンウォール101がビルに取り付けられた姿勢における垂直断面図、図12は同水平断面図である。図11では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。図12では、紙面上が室外側、紙面下が室内側である。
【0005】
スパンドレル部120は開口部110と開口部110との間に配置され、室外に面して配置されたガラスパネル126と、該ガラスパネル126と略平行に所定の間隔を有して室内側に配置される耐火パネル127とを備えている。耐火パネル127は当該部位のビル内部を室外視から隠蔽するとともに防災上の要請から配置されるものである。特に耐火上の理由から耐火パネル127には材料としてケイ酸カルシウムが用いられている。
【0006】
また、ガラスパネル126、及び耐火パネル127の4辺には型材からなる縦枠130、及び横枠121、124が配置される。従って、スパンドレル部120は図11、図12にTで示したように、ガラスパネル126、耐火パネル127、縦枠130及び横枠121、124に囲まれた中空層Tを有している。
【0007】
スパンドレル部120のかかる構成において、従来、スパンドレル部120のガラスパネル126表面に結露を生じることが問題となっていた。この1つの理由として、室内の高温で加湿された空気が耐火パネルと枠体との間隙から中空層T内に流入し、これが冷やされて結露することが挙げられる。また、他の理由として、日射等により耐火パネル127に含まれる水分が上記中空層T内に蒸発して該中空層Tの湿度が上昇し、これが雨や日の陰り等により冷やされたときにガラスパネル126に結露することを挙げることができる。
【0008】
1つ目の理由による結露は、耐火パネルを枠体にシール材等により密閉して取り付け、中空層Tと室内との空気の出入りを禁止することにより防止することができる。2つ目の理由による結露は、枠体に室外と中空層Tとを連結する換気口を設置し、外気温と中空層内の温度差を利用して換気することにより防止することができる。当該排気手段としては例えば特許文献1に排気手段を備えるカーテンウォールが開示されている。
【特許文献1】特開2003−314154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、耐火パネルを枠体に密閉して取り付けることは、施工条件等により必ずしも全てのカーテンウォールに採用することができるとは限らなかった。また、特許文献1のカーテンウォールでは、開口された換気口を意識的に閉鎖しない限り開口したままであり、このときに強い風があった場合、その風圧により中空層内が高圧になってしまう虞があった。スパンドレル部においては室内側が耐火パネルにより形成されているので、その強度によっては中空層内が高圧になると該耐火パネルが損傷する虞があった。
【0010】
そこで、本発明は簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供することを課題とする。また、この際、耐火パネルを含めたスパンドレル部の構成部材の損傷を防止することができるカーテンウォールとすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
請求項1に記載の発明は、開口部(10)及びスパンドレル部(20)を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体(21、24、30)と、枠体の内側に配置されるガラスパネル(26)と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが許容されて枠体に取り付けられる耐火パネル(27)とを備えるカーテンウォール(1)であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層(S)と、室外の圧力が中空層の圧力より所定の圧力差を有して高くなったときにのみ室外から中空層内への空気の流入を許容し、それ以外には空気の流入を遮断する換気手段とを備えるカーテンウォールを提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、開口部(10)及びスパンドレル部(20)を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体(21、24、30)と、枠体の内側に配置されるガラスパネル(26)と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが許容されて枠体に取り付けられる耐火パネル(27)とを備えるカーテンウォール(1)であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層(S)を有し、枠体が、少なくとも1箇所に中空層と、室外とを通じる流通路(B)を具備するとともに、流通路には該流通路の遮断、開放を可能とする外気導入弁(40)を備え、外気導入弁により、室外の圧力が中空層の圧力より所定の圧力差を有して高くなったときにのみ室外から中空層内への空気の流入が許容されることを特徴とするカーテンウォールを提供することにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカーテンウォール(1)の流通路(B)及び外気導入弁(40)が枠体のうちの下横枠(24)に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構造によりスパンドレル部の中空層を換気し、結露の発生を抑制することができる。さらに強い風圧力により中空層内と、室外側との間に大きな圧力差が生じたときに中空層内への空気の出入りを遮断することができ、これにより耐火パネル等が圧力差で損傷することを防止することが可能となる。また、通常時や室外側の圧力が低くなった場合には、中空層と室外との空気の出入りが遮断されているので、室内の高温で加湿された空気が中空層に流入することを抑制することができ、これによっても結露の発生も抑制することができる。
【0016】
また、所定の条件において下横枠に備えられた外気導入弁から中空層内に空気が流入し、中空層内から耐火パネルと枠体との間を通って空気が流出する。これにより、結露の発生を効率的に防止することができる。
【0017】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1には、カーテンウォール1の外観を示した。図1(a)はカーテンウォール1の室外視正面図、図1(b)は垂直断面図である。カーテンウォール1は、ビル内部の室内(いわゆる居住空間)の外周部に対応する位置に配置される開口部10、10、…と、天井及び床の外周部に対応する位置に配置されるスパンドレル部20、20、…とを備えている。開口部10、10、…及びスパンドレル部20、20、…は、それぞれが横方向に一列に並列され、縦方向には、該開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とが交互に並べられている。また、各々の開口部10、10、…及びスパンドレル部20、20、…の縦端辺は縦枠30、30に取り付けられる。従って、開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とにより、カーテンウォール1は室外側正面視で升目状を呈している。
【0020】
図2はカーテンウォール1の1つのスパンドレル部20に注目して示した該カーテンウォール1の垂直断面図である。図3は、図2にA−Aで示した線による水平断面図で、縦枠30に注目した部位である。図2では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。また、図3では紙面上が室外側、紙面下が室内側である。図1〜図3、及び適宜示す図を参照しつつカーテンウォール1についてさらに説明する。
【0021】
開口部10、10はビルの居住空間の建物外周部に対応する部分に配置され、室内側と室外側とを仕切るガラスパネル11、11を備えている。ガラスパネル11、11は、その4辺を後述する上横枠21、下横枠24、及び縦枠30により開口部10、10に固定されている。当該ガラスパネル11、11は透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。
【0022】
スパンドレル部20は、ガラスパネル26、耐火パネル27、枠体としての上横枠21、同下横枠24、同縦枠30、及び外気導入弁40を備えている。スパンドレル部20は開口部10の上下に配置され、ビルの床や天井の建物外周部に対応する部分に具備される。そして、当該ガラスパネル26、耐火パネル27、上横枠21、下横枠24、及び縦枠30に囲まれた部分により中空層Sが形成されている。以下に各構成要素について説明する。
【0023】
ガラスパネル26は、透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。当該ガラスパネル26は、室外に面して配置され、開口部10に具備されるガラスパネル11と略面一とされている。これにより建物の意匠性を高めることができ、外観に優れた建物を提供することが可能となる。
【0024】
耐火パネル27は、ガラスパネル26と略平行に該ガラスパネル26より室内側に配置される。このとき耐火パネル27と、ガラスパネル26との間には所定の間隙が設けられ、中空層Sが形成される。耐火パネル27は、建物内側を室外視から隠蔽するとともに防災上の要請から具備される。従って特に耐火上の観点から材料として、ケイ酸カルシウムが用いられることが多い。
【0025】
上横枠21は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち上の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。図4に上横枠21の部分に注目した垂直断面を示した。従って、上横枠は図4に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。上横枠21は、図4に表されたようにその断面において開口部10側の第一上横枠22と、スパンドレル部20側の第二上横枠23とが組み合わされて形成されている。
【0026】
第二上横枠23の下部で室外側の部位は、ガラスパネル26の上端部を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード23a、23bに挟持されるようにガラスパネル26の上端がここに固定される。一方、第二上横枠23の下部で室内側の部位にはアーム23cが取り付けられ、該アーム23cが耐火パネル27の上端部を受け入れ可能に形成されている。そして耐火パネル27の上端はシール材等を備えることなくアーム23cに取り付けられる。従って、ガラスパネル26の上端はビード23a、23bによりその前後で空気の出入りが遮断されている。これによりガラスパネル26の前後では適切に気密水密が維持されている。一方、耐火パネル27は一般的にはシール材等を介していない。従って、わずかな隙間により、その前後の空気の出入りが許容されている。具体的には、図4に矢印Kで示したように、中空層Sと建物室内側との間でわずかに隙間があり、空気の出入りができる状態になっている。これにより、室内の空気が高温加湿された空気である場合は、該空気が中空層内に流入し、ガラスパネルで結露を生じる虞がある。
【0027】
下横枠24は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち下の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。図5に下横枠24の部分に注目した垂直断面を示した。従って、下横枠は図5に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。
【0028】
下横枠24の上部で室外側の部位は、ガラスパネル26の下端を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード24a、24bに挟持されるようにガラスパネル26の下端がここに固定される。従って、ガラスパネル26の下端はビード24a、24bにより、その前後で空気の出入りが遮断され、気密水密が維持されている。一方、下横枠24の上部で室内側端部には耐火パネル支持部材24cが設けられ、下横枠24の室内側端部、及び耐火パネル支持部材24cにより耐火パネル27の下端部が支持されている。このとき耐火パネル27の下端には一般的にはシール材等が用いられていない。従って、わずかな隙間により、その前後の空気の出入りが許容されている。具体的には、図5に矢印Lで示したように、中空層Sと建物室内側との間にわずかに隙間があり、空気の出入りができるようにされている。これにより室内の空気が高温加湿された空気である場合は、該空気が中空層内に流入し、ガラスパネルで結露を生じる虞がある。
【0029】
また、下横枠24には図5にBで示したように室外と中空層Sとを通じる通風路Bが設けられている。そして通風路Bの中空層S側に外気導入弁40が配設されている。外気導入弁40については後で説明する。通風路Bは、図5に表れているが、下横枠24の長手方向(紙面奥/手前方向)に沿って全長に亘って設けられてはおらず、一部に設けられているのみである。当該通風路B、及び外気導入弁40により後述するように中空層S内の空気が適切に通気され、結露を抑制することが可能となる。
【0030】
次に縦枠30について図3を参照しつつ説明する。縦枠30は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち左右の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。従って、縦枠30は図3に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。また、縦枠30は、隣り合う開口部10、10及びスパンドレル部20、20の間に配置される共有部材である。そして縦枠30は、左右に並列する左縦枠31と、右縦枠32とが合わせられるように形成されている。
【0031】
縦枠30のうちガラスパネル26、26の左右端が配置される部位は、該ガラスパネル26、26の左右端を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード31a、31b、32a、32bに挟持されるようにガラスパネル26、26の左右端がここに固定される。従って、ガラスパネル26、26の左右端はビード31a、31b、32a、32bにより、その前後で空気の出入りが遮断され、気密水密が適切に維持されている。一方、縦枠30のうち耐火パネル27、27の左右端が配置される部位には、アーム31c、32cが設けられる。そして、該アーム部31c、32cが耐火パネル27、27の左右端を受け入れ可能に形成されている。このとき耐火パネル27、27の左右端には一般的にシール材等が設けられていない。従って、わずかな隙間によりその前後で空気の出入りが許容されている。具体的には、図3に矢印M、Nで示したように、中空層Sと建物室内側との間にわずかな隙間があり、空気の出入りができるようにされている。これにより室内の空気が高温加湿された空気である場合は、該空気が中空層内に流入し、ガラスパネルで結露を生じる虞がある。
【0032】
また、縦枠30には、左縦枠31、右縦枠32の各部、及びその間に適宜シール材が配置され、適切に気密水密を維持している。
【0033】
かかる構成の縦枠30は、左縦枠31、及び右縦枠32のそれぞれに取り付けられる連結部材33、34を介して、不図示の固定部材等により建物の基礎鉄骨2に固定される。
【0034】
本実施形態では通風路Bが下横枠24に設けられているが、通風路が設けられる位置はこれに限定されるものではない。これには例えば、縦枠30や上横枠21を挙げることができる。
【0035】
次に外気導入弁40について説明する。上記の通り、外気導入弁40は下横枠24に設けられる。図6は外気導入弁40の外観斜視図である。図7は外気導入弁40の断面図であり、図7(a)は図6にE−Eで示した線に沿った面による垂直断面図、図7(b)は図6にF−Fに示した線に沿った面による垂直断面図、及び図7(c)は図6にG−Gに示した線に沿った面による垂直断面図である。図6及び図7を参照しつつ外気導入弁40について説明する。
【0036】
外気導入弁40は、両端面が開口している筒状体である筒体41と、該筒体41の内側に具備される弁45と、弾性部材48、48、48、48と、を備えている。筒体41は、筒の軸に垂直な断面形状が、両端が半円で形成された略矩形とされている。また、筒体41の内壁面には内周に沿って突起41a、42aが設けられている。従って、当該突起41a、42aの部分では、筒体41の内側開口が狭くなる。突起41a、42aの配置位置は、突起41aが筒体41の軸方向略中央に、突起42aが筒体41の端部である。これら突起41a、42aを筒体41の内側に形成するための方法は特に限定されるものではない。本実施形態では、製造容易性の観点から、突起42aとなる部分を有する突起部材42を別体で筒体41の内側に挿入することにより筒体41の内側に突起42aを形成した。
【0037】
また、筒体41はその内側に該内側を横切るように、対向する内壁面を渡されて設けられた弁支持部材44、44を有している。弁支持部材44、44は、所定の間隔を有して2つ並列されている。弁支持部材44、44は筒体41の突起41aと略同じ軸方向位置に設けられている。さらに弁支持部材44、44は、その長さ方向略中央に、筒体41の軸方向に平行である貫通孔44a、44aを有している。
【0038】
弁45は、プレート46と弁支持棒47、47とを備えている。プレート46は筒体41の内側開口形状と略相似形を有する板状の部材である。当該板状である板面の外周は、筒体41の突起41a、42aの部位における筒体41の内側開口よりも大きく、突起41a、42aが具備されない部位における筒体41の内側開口よりも小さくされている。弁支持棒47、47はプレート46の一面側に立設した棒状部材で、上記弁支持部材44、44に対応する位置に具備されている。弁支持棒47、47の直径は、弁支持部材44、44の貫通孔44a、44aの直径より小さく形成されている。
【0039】
かかる構成を有する弁45は、プレート46の部分が筒体41の軸方向において突起41aと突起42aとの間に配置される。加えて弁支持棒47、47が弁支持部材44、44の貫通孔44a、44aの内側に挿入される。従って、プレート46は、突起41aと突起42aとの間を移動することができるとともに、突起41a、42aのいずれかに当接された場合には筒体41の内側開口を閉鎖することが可能となる。
【0040】
外気導入弁40が下横枠24に備えられる際には、突起42aが中空層Sとは反対側に向けられるように具備される。また、本実施形態において外気導入弁40は、下横枠24に2つ設けられている。しかしこれについても限定されるものではなく、中空層Sの大きさ等により適宜変更することが可能である。
【0041】
弾性部材48、48、48、48は、その圧縮により所定の弾性力を備える部材である。これにはバネや伸縮性を有する発砲体等を挙げることができる。弾性部材48、48、48、48は、その一端をプレート46に、他端は支持部材44、44、44、44に取り付けられている。従って、弁45のプレート46の位置により弾性部材48、48、48、48は付勢される。具体的な弁の動作については後で説明する。
【0042】
図8には、外気導入弁の他の例を示した。外気導入弁40において弾性部材48、48、48、48の一端が支持部材44、44、44、44に取り付けられていた。しかし、他の例である外気導入弁40’では、弾性部材48’、48’、48’、48’の他端はいずれの部材にも取り付けられていない。このような外気導入弁40’を本発明のカーテンウォール1に適用することも可能である。
【0043】
以上説明したような構成により本発明のカーテンウォール1が形成される。これによれば、簡易な構成とされていることがわかる。かかる簡易な構成であるにもかかわらず中空層Sの換気を適切におこなうことができるとともに、耐火パネル27に大きな負荷がかかることを防止することが可能となる。
【0044】
次に具体的に中空層Sの換気、及び耐火パネル27の保護について説明する。はじめに外気導入弁40の動作について説明する。図9に外気導入弁40の各姿勢を説明するための断面図を示した。図9は図7(a)と同じ視点によるものである。図9(a)は外気導入弁40の前後で圧力差がない場合、外気導入弁40にいずれの方向からも風が流入していない場合における外気導入弁40の姿勢である。かかる場合にはプレート46は外気導入弁40の下端に配され、突起42aとプレート46とにより内側が閉鎖されている。かかる場合には室外と中空層Sとは外気導入弁40により遮断されている。
【0045】
図9(a)に示した姿勢から例えば紙面上方の圧力が低くなったり、紙面下方から風が吹いたりした場合、プレート46は紙面下から上方へ向けて力を受ける。この力によりプレート46は紙面上方に移動する。このとき図9(b)に示したように、プレート46と筒体41の内側には隙間が形成され、図9(b)に矢印Hで示したように空気の移動が可能となる。当該プレート46の移動の途中で、弾性部材48、48、48、48はつぶされるが、この時点ではまだ筒体41の内側は開放されたままである。
【0046】
さらに、図9(b)に示した姿勢の外気導入弁40の紙面上方の圧力が低くなったり、紙面下方から強い風が吹いたりした場合、プレート46は紙面下から上方へ向けてさらに大きな力を受ける。この力が弾性部材48、48、48、48の弾性力よりも大きい場合には、プレート46は弾性部材48、48、48、48の弾性力に抗して紙面上方に移動する。そして最終的にプレート46は図9(c)に示したように突起41aに達し、プレート46の外縁部が突起41aに引っ掛かるようにして筒体41の内側を閉鎖する。
【0047】
かかる外気導入弁40を備えたカーテンウォール1により次のように中空層Sの換気、及び耐火パネル27の保護が行われる。図10に説明のための概略図を示した。図10(a)〜図10(c)の各図における左側に記載した図は図9(a)〜図9(c)に対応する図で、右側に記載した図は、カーテンウォール1の垂直断面、及び空気の流れを模式的に示したものである。図10(a)に示した外気導入弁40の姿勢では中空層Sに関して空気の流入、流出が禁止されている。これは、通常時(微風時)や室外側の圧力が中空層Sよりも低い場合における外気導入弁40の姿勢である。かかる姿勢であれば、例えば、ビルの外側で空気渦が発生し、ビルから離れる方向に風が起こり、室外側の方が中空層Sよりも圧力が低くなったときにも、中空層Sから空気が吹き出すことを防止することができる。また、室内から高温加湿された空気が中空層に流れ込むことも抑制することが可能である。吹き出す力が大きい場合にも中空層Sには吹き出す力はかからず、耐火パネル27にも負荷がかからない。従って、耐火パネル27の損傷を防止することが可能となる。
【0048】
図10(a)の姿勢から、ビルに向かって風が吹き、所定の強さに達するとプレート46が上方に移動を始める。これにより外気が外気導入弁40を通過することが可能となり、中空層Sに外気が供給される。そして中空層Sからは耐火パネル27と上下横枠21、24、及び縦枠30との間から図3〜図5にK〜Nで示した通路を通じて室内側へ空気が流出する。これにより中空層Sの空気は換気され、ガラスパネル26に結露を生じることを防止することができる。プレート46が移動し始める力(圧力)は特に限定されることはなく、カーテンウォール1が使用される環境、設計により適宜調整可能あるが、室外と中空層Sとの差圧が100Pa以上であることが好ましい。これを風速に換算すると概ね13m/sである。
【0049】
図10(b)に示した姿勢からさらにビルへ強い風が吹きつけ、流通路Bから風が吹き込み、これが一定の強さを超えた場合には、図10(c)に示した外気導入弁40の姿勢により、中空層S内への空気の流入が遮断される。これにより中空層S内の圧力が所定以上となることを防止し、耐火パネル27が損傷することを防ぐことができる。どの程度の風で外気を遮断するかについては特に限定されるものではないが、室外と中空層S内との差圧が200Pa以上となったときが好ましい。これを風速に換算すると概ね18m/sである。
【0050】
以上のように、本発明のカーテンウォール1により適切に中空層Sの換気ができ、結露の発生を抑制することを可能とするとともに、中空層S内が加圧、又は減圧されることによる耐火パネル27の損傷を防止することができる。
【実施例】
【0051】
実施例として、長さ50mm(図7(a)紙面左右方向長さ)、幅14.4mm(図7(b)紙面左右方向長さ、高さ12mm(図7紙面上下方向長さ)を有する外気導入弁について相当開口面積を求める実験を行った。相当開口面積とは、換気に有効な面積を意味するものである。相当開口面積はαA(cm)で表され、次式(1)から求められる。
αA=2.78(γ/2g)1/2・Q・(Δp)(1/n−0.5) (1)
【0052】
ここで、それぞれの記号は
γ:空気の密度(kg/m
:内外差圧Δp=1mmAq(9.8Pa)の時の漏気量Q(m/h)
g:重力加速度(m/s
n:隙間特性を表す係数(層流時は1、乱流時は2の値をとる。)
を意味する。
【0053】
本発明のカーテンウォールについてQを測定したところQ=1.0946(m/h)を得た。これを式(1)に代入し(n=2)計算するとαA=0.75(cm)となる。これに対し、直径10mmの孔を開けた場合にはαA=0.50(cm)、直径13mmの孔を開けた場合にはαA=0.95(cm)である。従って本発明のカーテンウォールにより直径11〜12mmの孔を開けた場合と略同一の換気性能を得ることができ、十分な換気能力を備えることが確かめられた。
【0054】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォールもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のカーテンウォールの室外視正面図及び垂直断面図である。
【図2】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの垂直断面図である。
【図3】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの水平断面図である。
【図4】上横枠部分に注目した垂直断面図である。
【図5】下横枠部分に注目した垂直断面図である。
【図6】外気導入弁の外観斜視図である。
【図7】外気導入弁の断面図である。
【図8】外気導入弁の変形例の断面図である。
【図9】外気導入弁の動作を説明するための図である。
【図10】中空層の換気及び換気の禁止を説明するための図である。
【図11】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した垂直断面図である。
【図12】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した水平断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 カーテンウォール
2 基礎鉄骨
10 開口部
11 ガラスパネル
20 スパンドレル部
21 上横枠(枠体)
22 第一上横枠(枠体)
23 第二上横枠(枠体)
24 下横枠(枠体)
26 ガラスパネル
27 耐火パネル
30 縦枠(枠体)
31 左縦枠(枠体)
32 右縦枠(枠体)
33、34 連結部材
40、50 外気導入弁
41 筒体
45 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及びスパンドレル部を有し、該スパンドレル部は、
前記スパンドレル部の外枠を形成する枠体と、
前記枠体の内側に配置されるガラスパネルと、
前記ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが許容されて前記枠体に取り付けられる耐火パネルと、を備えるカーテンウォールであって、
前記枠体、前記ガラスパネル、及び前記耐火パネルにより囲まれて形成される中空層と、
室外の圧力が前記中空層の圧力より所定の圧力差を有して高くなったときにのみ前記室外から前記中空層内への空気の流入を許容し、それ以外には空気の流入を遮断する換気手段と、を備えるカーテンウォール。
【請求項2】
開口部及びスパンドレル部を有し、該スパンドレル部は、
前記スパンドレル部の外枠を形成する枠体と、
前記枠体の内側に配置されるガラスパネルと、
前記ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが許容されて前記枠体に取り付けられる耐火パネルと、を備えるカーテンウォールであって、
前記枠体、前記ガラスパネル、及び前記耐火パネルにより囲まれて形成される中空層を有し、前記枠体が、少なくとも1箇所に前記中空層と、室外とを通じる流通路を具備するとともに、前記流通路には該流通路の遮断、開放を可能とする外気導入弁を備え、
前記外気導入弁により、前記室外の圧力が前記中空層の圧力より所定の圧力差を有して高くなったときにのみ前記室外から前記中空層内への空気の流入が許容されることを特徴とするカーテンウォール。
【請求項3】
前記流通路及び前記外気導入弁が前記枠体のうちの下横枠に設けられることを特徴とする請求項2に記載のカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−184817(P2008−184817A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19506(P2007−19506)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】