説明

カーテンエアバッグおよびその製造方法

【課題】膨張展開時の厚さを一定に規制しつつ、簡易な構造であるため製造や収納がしやすく、かつ乗員保護機能に優れたカーテンエアバッグとその製造方法を提供する。
【解決手段】カーテンエアバッグは、2枚の基布を重ね合わせて作製されるカーテンエアバッグであって、主室部と、主室部に連結され、主室部との連結部から延びて自由端を有する副室部とを備え、主室部の厚さを規制する規制部が、連結部近傍から主室部側に延びるように形成されており、副室部が規制部と重なるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、車両に搭載され、側面衝突の衝撃から乗員を保護するカーテンエアバッグとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。その種類については、従来の運転席や助手席用のエアバッグ装置に加えて、近年では、側面衝突(側突)用エアバッグ装置も車両に搭載されるようになっている。この側面衝突用のカーテン状エアバッグ(以下、カーテンエアバッグという)は、前部座席から後部座席までを保護するために面積が大きく、また、座席と車体内側の狭い空間でエアバッグを膨張展開させるため、他の部位のエアバッグに比べ、膨張展開時のエアバッグの厚さや形状を広範囲にわたって規制する必要がある。
【0003】
膨張展開時のエアバッグの厚さや形状を規制するパーツの1つに、テザーベルトがある。たとえば特許文献1には、上ストラップ(テザーベルト)と下ストラップ(テザーベルト)を備えたカーテンエアバッグが開示されている。しかし、このような構造だと、それぞれのテザーベルトの両端をエアバッグの内側のそれぞれの箇所に縫合および/または接着しなければならず、テザーベルトの両端を一度には縫合および/または接着できない。つまり、テザーベルトの一端を縫合および/または接着した後、他端を縫合および/または接着しなければならず、非常に手間の掛かる作業となってしまう。
【0004】
また、車両が横転している数秒間という長時間にわたって展開状態の内圧を保持する必要のあるエアバッグでは、エアバッグの気密性を高めるため、縫合箇所にエア抜け防止用の目止め剤を付加する手法が採用されているが、テザーベルトを設けると、テザーベルトの縫合箇所にも目止め剤を付加しなければならず、工程や作業時間が増えてしまうという問題もある。そのような問題もあってか、カーテンエアバッグについていえば、テザーベルトを備えたものの普及率はそれ程高くないというのが現状である。
【0005】
テザーベルトを用いないエアバッグとして、たとえば特許文献2に、2枚のエアバッグパネル壁面を直に縫い合わせて、膨張展開時におけるチャンバーの厚さを調整することが開示されている。しかしながら、このようにパネル壁面を直に縫い合わせて厚さを調整すると、縫い合わせた部分の厚さが得られず、その部分での乗員拘束性が極端に低くなり、乗員保護機能が低下するという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3には、テザーベルトを用いないエアバッグにおいて、一面側に複数の膨張室を形成し、これら膨張室同士とずらして他面側に複数の膨張室を形成する構成が開示されている。しかし、このエアバッグは、一面側と他面側の膨張室を中間布を用いて分画し、それらを一体的かつ連続的に構成しなければならず、縫合や接着作業が複雑となり、生産効率が低いという問題がある。また、このエアバッグを、接着(シール剤の使用)により作製した場合、中間基布については、表裏の両面をシリコーンコートする必要があり、軽量化の面で不利である。さらに、特許文献3のエアバッグは折りたたみにくい構造であるため、コンパクトな収納に不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−138860号公報
【特許文献2】特開2006−142861号公報
【特許文献3】特開2004−268880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、自由端を有して延在する副室部をエアバッグに形成し、この副室部を規制部に重ねるという従来にない新規かつ実用的な構造を見出したことにより完成された発明である。本発明は、膨張展開時の厚さを一定に規制しながらも、簡易な構造であるため製造や収納がしやすく、かつ乗員保護機能に優れたカーテンエアバッグとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2枚の基布を重ね合わせて作製されるカーテンエアバッグであって、主室部と、主室部に連結され、主室部との連結部から延びて自由端を有する副室部とを備え、主室部の厚さを規制する規制部が、連結部近傍から主室部側に延びるように形成されており、副室部が規制部と重なるように配置されるカーテンエアバッグに関する。このように構成することによって、主室部の厚さは規制部によって一定に規制され、規制部は副室部と重なる。なお、本発明のカーテンエアバッグとは、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために車内側壁と乗員との間に展開するカーテン状のエアバッグをいう。
【0010】
また、規制部が、対向する2枚の基布同士を縫合および/または接着することによって接合したものであることが好ましい。このように構成することによって、規制部は縫合および/または接着によって簡易に形成される。
【0011】
また、主室部および副室部の少なくとも一方には、規制部と重なった状態で副室部を固定するための固定部が設けられていることが好ましい。このように構成することによって、副室部は、規制部と重なった状態で固定部を用いて固定される。
【0012】
また、固定部が副室部の自由端近傍に形成されており、該固定部がカーテンエアバッグの固定対象体への固定部に固定されるものであることが好ましい。このように構成することによって、副室部の固定は、カーテンエアバッグの固定対象体への固定と同時かつ同じ箇所で行われる。
【0013】
本発明は、重ね合わせられる2枚の基布に切込みを入れて、主室部と、主室部に連結され、主室部との連結部から延びて自由端を有する副室部とを形成する工程と、主室部に主室を形成し、副室部に連結部にて主室に連通される副室を形成する工程と、主室部の厚さを規制する規制部を、連結部近傍から主室部側に延びるように形成する工程と、副室部を、規制部と重なるように配置する工程とを含むカーテンエアバッグの製造方法に関する。このように構成することによって、主室部の厚さが規制部によって一定に規制され、規制部と副室部とが重なった構造を有するエアバッグが簡易に製造される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカーテンエアバッグによれば、主室部の厚さが一定に規制されるため、車内空間が確保され、かつ、衝撃吸収性の低い規制部も副室部と重なることにより十分な衝撃吸収性が得られる。そのため、エアバッグは、軽量で製造しやすく、かつ、折りたたみやすく収納しやすい簡易な形状および構成でありながら乗員保護機能に優れる。
【0015】
また、規制部を、対向する2枚の基布同士を縫合および/または接着することによって形成したものは、規制部が簡易に形成されるため、エアバッグ内部にテザーベルトを設けたり、複数の布材を重ねて縫合する場合と比べてエアバッグを製造しやすい。なお、規制部を縫合や接着によって形成することは公知であるが、このような規制手段を採用した場合、規制部が膨張せず衝撃吸収性が得られない。本発明は、この縫合および/または接着による規制手段と、自由端を有し延在する副室部とを組み合わせることによって、簡易な形状で、より製造や収納がしやすく、かつ乗員保護機能にも優れた構成とすることができる。
【0016】
さらに、規制部と重なった状態で副室部を固定する固定部を設けたものは、副室部を容易かつ確実に規制部に重ねて固定することができる。さらに、固定部を副室部の自由端近傍に取り付け、カーテンエアバッグの固定部に固定するよう構成したものは、工程を短縮することができ、固定箇所を兼用することができる。
【0017】
さらに、本発明のカーテンエアバッグの製造方法によれば、車内空間が充分に確保された乗員保護機能に優れるエアバッグを、簡易に製造することができるので、生産効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図である。
【図2】図1のカーテンエアバッグの膨張展開時における概略平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のカーテンエアバッグを折りたたむ前の状態を示した概略平面図である。
【図5】図4のZ−Z断面図である。
【図6】図1のカーテンエアバッグが三つ折りされた状態を示した図である。
【図7】図6のZ−Z断面図であり、図5に対応する図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図である。
【図9】図8のカーテンエアバッグの膨張展開時における概略平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態によるカーテンエアバッグを折りたたむ前の状態を示した概略平面図である。
【図12】図11のY−Y断面図である。
【図13】図11のカーテンエアバッグが三つ折りされた状態を示した図である。
【図14】図13のY−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態によるカーテンエアバッグについて、添付図面に沿って詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図であり、図2は、図1のカーテンエアバッグの膨張展開時における概略平面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。なお、図1および図2は、カーテンエアバッグを乗員側から見た図である。
【0021】
これらの図に示されるように、カーテンエアバッグを構成するエアバッグ本体1は、ほぼ矩形状の2枚の基布2,3が重ね合わせられて、その外周縁の内側を縫合糸12により縫合することによって接合されている。外周縁の一部には接合されていない開口部4があり、エアバッグ本体1は、この開口部4でインフレータ(図示せず)に取り付けられる。なお、外周縁の接合は縫合に限定されるものではなく、シール剤による接合や、縫合とシール剤の併用による接合とすることができる。車両が横転している数秒間という長時間にわたって展開状態の内圧を保持することが求められる場合、縫合とシール剤の併用による接合によって縫合箇所をシリコーン樹脂系などのシール剤で目止めすることが好ましい。
【0022】
図1に示されるように、エアバッグ本体1は、主室部5と、主室部5に連結部13にて連結され、連結部13以外では切込み7によって主室部5から分離されている副室部6とから構成されている。エアバッグ本体1の主要部となる主室部5の内部には、基布2,3とその外周縁の縫合により主室10が形成されている。主室10は、インフレータ(図示せず)からの高圧ガスによって膨張する。
【0023】
主室部5には、後述する連結部13近傍から主室部5側に直線状に延びる規制部8が形成されている。具体的には、規制部8は車体前方側下部(図1の左下方向)から主室部5の中央を横切るように斜上している。この規制部8は、対応する2枚の基布2,3を縫合糸で縫合することによって接合したものであり、これによって、主室部5の厚さを規制する。規制部8は、主室部5の厚さを規制する観点から、主室10の中央近傍を横断するように形成することが好ましく、主室部5の対角線上の近傍に形成することが好ましい。なお、規制部8の形成は、縫合糸による接合に限定されるものではなく、シール剤を用いた接着による形成でも良く、縫合糸とシール剤との併用による形成でも良い。エアバッグに長時間にわたる展開内圧が求められる場合、縫合箇所をシリコーン樹脂系などのシール剤で目止めすることが好ましい。
【0024】
主室部5の車体前方側下部(図1の左下方向)には副室部6が連結されている。副室部6の内部には、基布2,3とその外周縁の縫合により副室11が形成されている。主室10と副室11とは、主室部5と副室部6との連結部13にて非接合部分を設けることによって形成された開口で連通している。そのため、インフレータ(図示せず)からの高圧ガスが主室10に進入すると、主室10とほぼ同時あるいは主室10に次いで副室11も膨張する。
【0025】
副室部6は、主室部5の外形に沿うように形成されており、その一端が連結部13にて主室部5に連結されているほかは主室部5から分離されており、連結部13側から延びて他端が自由端となっている。副室部6は、図2に示されるように、エアバッグの膨張展開時に主室部5に形成された規制部8と重なるように配置される。これによって、膨張展開時に規制部8は接合されているため膨張せず、図3に示されるように主室部5の外表面において衝撃吸収性の低い凹状となるが、副室部6は膨張展開により膨らんで棒状となり、規制部8の外表面の凹状を補完し、エアバッグは全範囲で乗員保護機能に優れたものとなる。なお、副室部6は、本実施の形態では主室部5に対して奥側(車内側壁側)に配置しているが、手前側(乗員側)に配置しても良い。
【0026】
また、副室部6の自由端近傍には、平面形状を有する固定部15が突出するように形成されている。この固定部15は、膨張展開時に規制部8と重なるように副室部6を配置したとき、エアバッグ本体1を固定対象体である車体に固定するための固定部16aと一致するように形成されている。この固定部15と固定部16aとを重ね合わせて、ボルトなどの公知の固定手段で固定することにより、両方の固定を同時かつ同じ箇所で行うことができる。
【0027】
このような形状および構成を有するカーテンエアバッグは、軽量で製造しやすく、かつ、折りたたみやすく収納しやすい簡易な形状および構成でありながら、エアバッグが膨張展開した際、副室部6が規制部8と重なりながら膨張するため、非膨張性の規制部8を原因とする低衝撃吸収性部分が解消され、乗員保護機能に優れる。
【0028】
なお、カーテンエアバッグ本体の材質は特に限定されるものではないが、繊維があげられ、これを布帛の形態にして用いることができる。用いられる繊維としては、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドと芳香族エーテルとの共重合体などに代表される芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、パラフェニレンサルフォンおよびポリサルフォンなどのサルフォン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維およびポリイミド繊維などの有機繊維や、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機繊維などがあげられ、これらは単独または組み合わせて使用される。なかでも、強度、耐久性、コストなど総合的な観点から、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維が好ましい。
【0029】
前記布帛の組織としては、織物、編物、不織布などがあげられる。織物の場合は、平織、朱子織、綾織、パナマ織、袋織などがあげられ、編物の場合は、経編、丸編などがあげられる。なかでも、布帛の伸度および強度の点から織物が好ましく、平織組織のものがより好ましい。
【0030】
これらの布帛は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、少なくとも片面が樹脂などによりコーティングされることが好ましい。コーティングに用いられる樹脂としては、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または組み合わせて使用される。なかでも、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーン樹脂が好ましい。
【0031】
また、縫合糸は特に限定されるものではなく、公知の縫合糸を用いることができ、たとえば上述した繊維材料から得られた縫合糸を用いることができ、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸などを種々用いることができる。縫合方法も特に限定されず、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなど公知の方法を適用することができる。
【0032】
また、シール剤としては、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系などの熱硬化型接着剤やホットメルト接着剤など、接着強度に問題がない範囲内で種々のシール剤を使用することができる。なかでも、エアバッグ本体の基布のコーティングをシリコーン樹脂にて行った場合には、シール剤としてシリコーン樹脂を用いることが接着強度が高くなるため好ましい。その塗布厚としては、0.5〜2.0mmが好ましく、0.5〜1.0mmがより好ましい。塗布厚が0.5mmより少ないと、接着強度が低下する傾向にあり、2.0mmを超えると、接着部が嵩張り、バッグの収納性が悪くなる傾向にある。シール剤の付与方法は特に限定されず、公知の付与方法が適用される。
【0033】
次に、本実施の形態によるカーテンエアバッグの製造方法について説明する。
【0034】
まず、エアバッグ本体1を構成する2枚の基布2,3を、カーテンエアバッグの形状に裁断し、同一形状の基布2,3を重ね合わせる。基布2,3は、長時間にわたって展開内圧を保持するため、片面をシリコーン樹脂にてコーティングし、基布2,3のシリコーン樹脂コーティング面同士を対面させて重ね合わせることが好ましい。
【0035】
次に、重ね合わせた基布2,3の外周縁と切込み7を形成する箇所の周りを縫合糸12で縫合して、主室10と副室11を形成する。連結部13には、主室10と副室11とが連通するよう非接合部分を設ける。これによって、インフレータ(図示せず)からの高圧ガスの進入で主室10と副室11とが膨張するエアバッグ構造が形成される。
【0036】
また、主室10には、規制部8を連結部13近傍から主室10側に延びるように形成する。具体的には基布2,3を縫合し、接合することによって規制部8を形成する。この規制部8によって主室10の膨張展開は規制される。規制部8の形成は、主室10と副室11の形成の前後いずれであっても良い。
【0037】
次に、主室10と副室11を分離し、かつ連結部13にて接続されるように、重ね合わせた基布2,3に切込み7を入れて主室部5と副室部6とを形成する。これによって、主室部5と副室部6とが連結部13で連結された形状となる。このとき、切込み7は、副室部6が長尺形状を有し、膨張したとき棒状となるように基布2,3の外形に平行して形成することが好ましい。これによって、副室部6は、主室部5の外形に沿って簡易に形成され、連結部13から延びて自由端を有する形状となる。なお、切込み7の形成は、基布2,3を重ね合わせた後に行っているが、これに限定されるものではなく、基布2,3を重ね合わせる前に切込み7を形成しても良い。
【0038】
また、副室部6の自由端近傍に固定部15を形成する。具体的には、布帛を副室部6の自由端近傍に縫合することにより取り付け、この布帛を固定部15とすることが好ましい。固定部15は、副室部6の固定前に形成されていれば良い。
【0039】
次に、副室部6を、エアバッグの膨張展開時に規制部8と重なるように配置する。そして、固定部15を、エアバッグ本体1を車体に固定するための固定部16aと一致させて、エアバッグ本体1と副室部6とを併せて固定する。これによって、カーテンエアバッグは製造され、車体に固定される。なお、固定部15による固定はカーテンエアバッグを製造するためには必須の工程ではない。また、シール剤などを用いて副室部6を規制部8と重なるように固定する場合には、固定部は不要となる。さらに、固定部を形成する場合であっても、固定部は、膨張展開時に副室部が規制部と重なるように配置した状態で固定するものであれば良いので、エアバッグ本体を車体に固定するための固定部と一致するものに限定されない。
【0040】
カーテンエアバッグの車体への固定についてより詳しく説明する。
【0041】
図4は、図1のカーテンエアバッグを折りたたむ前の状態を示した概略平面図であり、図5は、図4のZ−Z断面図であり、図6は、図1のカーテンエアバッグが三つ折りされた状態を示した図であり、図7は、図6のZ−Z断面図であり、図5に対応する図である。図4および図5は、エアバッグ本体1を三つ折りに折りたたむ前の状態を示したものであり、図4は先の図1に対応する図である。これらの図において水平方向に延びる2つの一点鎖線が折りたたみの際の折線となる。この折線に沿ってエアバッグ本体1を折りたたむと、図6および図7に示されるようにエアバッグ本体1は三つ折りされた状態になる。エアバッグ本体1は、さらに蛇腹折りやロール折りなどにより小さく折りたたまれる。このように折りたたまれ、車体内側壁に収納しやすいコンパクトな状態にしたものの固定部15および固定部16aを車体に固定する。上述したように固定部15と固定部16aは重ね合わせて車体に固定することが好ましい。カーテンエアバッグは簡易な形状および構成であるため、上述したように折りたたみやすくコンパクトな収納が可能である。
【0042】
図8は、本発明の第2の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図であり、図9は、図8のカーテンエアバッグの膨張展開時における概略平面図である。第2の実施の形態によるカーテンエアバッグの構成は先に説明した第1の実施の形態によるものと基本的に同じなので、相違点を中心に説明する。
【0043】
これらの図に示されるように、第2の実施の形態によるカーテンエアバッグは、主室10が前席部と後席部の左右に2つの小分室を有しており、この小分室が通路を介して連結されている点、前席部の小分室の中央近傍に規制部8が形成されている点、副室部6の長さが主室部5の水平方向の長さの半分程度と短い点、および、固定部15が主室部5の中央より左側に形成された固定部16bと一致するよう構成されている点が第1の実施の形態によるものと異なっている。このように構成することによっても、カーテンエアバッグは、第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0044】
図10は、本発明の第3の実施の形態によるカーテンエアバッグの概略平面図である。第3の実施の形態によるカーテンエアバッグの構成は先に説明した第1の実施の形態によるものと基本的に同じなので、相違点を中心に説明する。
【0045】
図10に示されるように、第3の実施の形態によるカーテンエアバッグは、連結部13近傍から主室部5側に直線状に延びる規制部8が断続的に形成されている点が、第1の実施の形態によるものと異なっている。このように構成することによっても、カーテンエアバッグは、第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。なお、この場合、規制部8の断続を形成する非接合箇所の数は特に限定されるものではなく、規制部8における接合箇所と非接合箇所の比率も特に限定されるものではない。
【0046】
図11は、本発明の第4の実施の形態によるカーテンエアバッグを折りたたむ前の状態を示した概略平面図であり、図12は、図11のY−Y断面図であり、図13は、図11のカーテンエアバッグが三つ折りされた状態を示した図であり、図14は、図13のY−Y断面図である。第4の実施の形態によるカーテンエアバッグの構成は先に説明した第1の実施の形態によるものと基本的に同じなので、相違点を中心に説明する。
【0047】
図11に示されるように、エアバッグ本体1は、連結部13から固定部15までの距離が、連結部13から固定部16aまでの距離よりも短い点、および連結部13から斜方に延びる規制部8の幅が連結部13に向けて広がるように形成されている点が、第1の実施の形態によるものと異なっている。この場合、連結部13から固定部15までの距離が、連結部13から固定部16aまでに距離よりも短いため、膨張展開時にエアバッグ本体1の副室部6の長手方向により大きなテンションがかかることになる。しかし、規制部8を上述したように構成することで、膨張展開時に規制部8における基布2,3が寄せ縮められ、副室部6にかかるテンションが緩和される。これによって、より安定した形状でカーテンエアバッグを膨張展開させることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、エアバッグ本体は2枚の基布を重ね合わせて作製されるものであったが、基布は少なくとも2枚あれば良く、形状、構造、求められる機能に応じて、あるいは補助的に3枚もしくはそれ以上の基布を用いることができる。
【0049】
また、上記実施の形態では、エアバッグ本体の形状(あるいは基布の形状)は、ほぼ矩形状であったが、これに限定されるものではなく、エアバッグの搭載箇所の形状や搭載位置に応じて適宜設計することができる。主室部および主室の形状も、エアバッグ本体と同様に適宜設計することができる。
【0050】
さらに、上記実施の形態では、副室部は長方形状に形成されていたが、副室部の形状は、連結部から延びて自由端を有し、規制部と重なる形状であれば特に限定されるものではない。
【0051】
さらに、上記実施の形態では規制部と副室部は各1部であったが、これに限定されるものではなく、規制部とそれに対応する副室部は複数設けることができる。また、副室部は主室の下部に形成されるものに限定されず、主室部との連結部から延びて自由端を有し、規制部と重なるよう形成されるのであれば、主室の側部から形成されるものであっても良い。同様に、連結部の位置も車体前方側下部に限定されるものではなく、副室部が主室部との連結部から延びて自由端を有し、膨張展開時に規制部と重なるよう形成される範囲内で、主室部と連結する任意の位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 エアバッグ本体
2,3 基布
4 開口部
5 主室部
6 副室部
7 切込み
8 規制部
10 主室
11 副室
12 縫合糸
13 連結部
15 固定部
16a,16b 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基布を重ね合わせて作製されるカーテンエアバッグであって、
主室部と、主室部に連結され、主室部との連結部から延びて自由端を有する副室部とを備え、主室部の厚さを規制する規制部が、連結部近傍から主室部側に延びるように形成されており、副室部が規制部と重なるように配置されるカーテンエアバッグ。
【請求項2】
規制部が、対向する2枚の基布同士を縫合および/または接着することによって接合したものである請求項1記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
主室部および副室部の少なくとも一方には、規制部と重なった状態で副室部を固定するための固定部が設けられている請求項1または2記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
固定部が副室部の自由端近傍に形成されており、該固定部がカーテンエアバッグの固定対象体への固定部に固定されるものである請求項3記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
重ね合わせられる2枚の基布に切込みを入れて、主室部と、主室部に連結され、主室部との連結部から延びて自由端を有する副室部とを形成する工程と、
主室部に主室を形成し、副室部に連結部にて主室に連通される副室を形成する工程と、
主室部の厚さを規制する規制部を、連結部近傍から主室部側に延びるように形成する工程と、
副室部を、規制部と重なるように配置する工程とを含むカーテンエアバッグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−214114(P2012−214114A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80586(P2011−80586)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】