説明

カートリッジの再生方法及び再生カートリッジ

【課題】
環境に優しく、容易に手直し、再生が可能であるカートリッジの再生方法であり、かつ部品の位置決め精度剛性の強い再生カートリッジを提供する。
【解決手段】
電子写真画像形成装置本体に着脱自在であり、少なくともその一部がスチレン系樹脂組成物で形成されているカートリッジの再生方法であり、(1)カートリッジを少なくとも二つの部分に分離する工程と、(2)分離した部分の少なくとも一つと、他の分離した部分及び/又は分離した部分以外の部品とを、テルペン系溶剤を用いて接合する工程を有することを特徴とするカートリッジの再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置に着脱可能なカ−トリッジ、特にプロセスカートリッジに関する。電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成する装置である。電子写真画像形成装置の例としては、電子写真複写機、電子写真プリンター(例えばレーザービームプリンター、LEDプリンター)、ファクシミリ装置及びワードプロセッサが挙げられる。プロセスカートリッジとは、電子写真画像形成プロセスの手段(以下「プロセス手段」と言う)である帯電手段、現像手段、クリーニング手段等と電子写真感光体ドラムとを画像形成装置本体に対して着脱可能なカートリッジに一体化したものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた電子写真画像形成装置においては、電子写真感光体ドラム(以下感光体ドラム)と感光体ドラムに作用するプロセス手段とをプロセスカートリッジに一体化して、このプロセスカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱可能に装着する「プロセスカートリッジ方式」が採用されている。プロセスカートリッジとしては、感光体ドラムと帯電手段、現像手段およびクリーニング手段の少なくとも一つとを一体化したものが挙げられ、少なくとも現像手段を含み構成されるものが特に挙げられる。
【0003】
プロセスカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずにユーザー自身で行うことができるので格段に操作性を向上させることができる。それ故、プロセスカートリッジ方式は、電子写真画像形成装置において広く用いられている。
【0004】
一般的なプロセスカートリッジの例を、図23及び24を用いて説明する。図23に示されるプロセスカートリッジは、三つの枠体:感光体ドラム107、帯電ローラ(不図示)及びクリーニングブレード(不図示)を一体的に支持しているクリーニング枠体113;現像ローラ(不図示)及び現像ブレード(不図示)を一体的に支持している現像枠体(不図示);そして、トナーを収納している現像剤収納枠体(以下、トナー枠体という)111により構成されている。同プロセスカートリッジはさらに、現像枠体及びトナー枠体のもしくはそのいずれかの枠体の側面にて駆動ギア列(不図示)等を覆っているサイドカバー190、191を含み構成されている。尚、符号136はドラムフランジ、符号138はドラム軸受けである。
【0005】
枠体や部品の固定手段としては、ビス止め(図23、24のX、領域dにおいて接合)や熱かしめの他、樹脂接合(溶融樹脂の注入による固定)、ホットメルト、超音波溶着が、一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このようなプロセスカートリッジは、現像剤を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そのため、画像形成を行うに従って現像剤を消費する。そして、画像形成装置の使用者が満足する品質の画像を装置が形成出来なくなるまで現像剤が消費された時点で、プロセスカートリッジとしての使用価値を喪失する。
【0007】
そして、現像剤が消費され使用価値が喪失したプロセスカートリッジを再び商品化する再生技術(リサイクル技術)に関する提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、従来の技術では以下のような課題があった。プロセスカートリッジを再び商品化するには消耗したり破損した部品や枠体を交換する必要がある。部品や枠体を交
換するには、固定手段や結合手段から各部品や枠体を分離する必要がある。ビスによる固定や接合であれば部品や枠体を容易に取り外し再固定、再接合することが可能である。しかし、樹脂接合、溶着等の固定手段を用いた箇所では、容易な取り外し、再固定、再接合ができない。そのため、そのような個所での部品や枠体の交換においては、接合部もしくはその周囲を破壊して部品や枠体を交換した後、再度接着剤、ホットメルト等を塗布して再固定、再接合する等の再結合方法が用いられてきた。しかしそのような再結合方法を必要とする固定手段は、材料リサイクル、環境の観点からは十分であるとは言えなかった。例えば、枠体に使用している材料(HIPSを始めとするスチレン系樹脂組成物)とは異なる接着剤及びホットメルト等の材料を用いる結合方法は、リサイクル材料(再生材料)である枠体や部品の機械的物性及び難燃性の低下といった品質の低下を引き起こす場合が多い。また、ホットメルト等は接着用基材に厚みがある接合方法は、部品間の位置決め精度や、接合強度においても十分であるとは言えなかった。
【0009】
ところで、テルペン系の化合物は、主に植物の水蒸気蒸留によって得られる精油の主成分であり、一般的には、香料として使用できることが知られている。
【0010】
その一方で、テルペン系化合物は、上記以外の用途も知られている。例えば、モノテルペンであるd−リモネンは、分子構造がスチレンと極めて似ており、常温でもポリスチレンを溶かす性質があるため、発砲スチロールの収縮剤として用いられている(例えば、引用文献3参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平10−20744号公報
【特許文献2】特開2002−328579号公報
【特許文献3】特開平5−263065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、リサイクルのための再生が可能で環境に優しく、また、容易に手直しすなわち組立後に部品不良等が発見されて、樹脂接合、溶着等により固定した箇所を分離して解体し補修後再度組立を行うことが可能であるカートリッジの再生方法を提案することにある。
【0013】
本発明の目的は、部品の位置決め精度が高く且つ剛性の強い再生カートリッジを提供することが可能な、カートリッジの再生方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
電子写真画像形成装置本体に着脱自在であり、少なくともその一部がスチレン系樹脂組成物で形成されているカートリッジの再生方法であり、
(1)カートリッジを少なくとも二つに分離する工程と、
(2)分離した部分の少なくとも一つと、他の分離した部分及び/又は分離した部分以外の別途用意した部品とを、テルペン系溶剤を用いて接合する工程を有することを特徴とするカートリッジの再生方法である。分離した部分以外の部品とは、分離した部分が再利用できない場合の代替部品など、カートリッジを構成するために用いられる部品である。
【0015】
上記本発明の再生方法においては、カートリッジを分離する工程が、スチレン系樹脂組成物を含み構成される部分において分離する工程であることは好ましい。
【0016】
また本発明においては、分離される部分におけるスチレン系樹脂組成物のうち少なくとも一種が、ゴム変性スチレン系樹脂100重量部、難燃剤4〜13重量部及び難燃剤0〜5重量部
を含み構成されていることは好ましい。
【0017】
また本発明においては、テルペン系溶剤がd−リモネンであることは好ましい。この場合、分離される部分におけるスチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂とゴム状重合体との混合物であることが好ましく、ゴム状重合体が、平均粒径0.5〜3.0μmの粒子であることはさらに好ましい。該ゴム状重合体が、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム及びエチレン−プロピレン共重合体からなるグループから選択される重合体であることは特に好ましい。
【0018】
また本発明は接合部分へのテルペン系溶剤の供給に毛細管現象を利用したものであることは好ましい。
【0019】
本発明においては、互いに接合する部分及び部品の少なくとも一方に、テルペン系溶剤を注入するための注入口と連通し且つテルペン系溶剤を接合個所に供給するための流路を形成する凹部、スリット又は面取り部が設けられていることは好ましい。
【0020】
該流路は、断面積が0.01〜4.0mmであることが好ましい。
本発明の再生方法が、テルペン系溶剤を付与する前に接合面を清掃する工程を含み構成されていることは、好ましい。
【0021】
また本発明は、上記再生方法の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする再生カートリッジである。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本出願に係る発明は、環境に優しく、容易に手直し、再生が可能であるカートリッジの再生方法であり、かつ部品の位置決め精度が高く剛性の強い再生カートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
【0024】
以下の説明においては、電子写真感光体ドラム(以下「感光体ドラム」と言う)など像担持体の長手方向及びプロセスカートリッジの長手方向は、記録媒体の搬送方向と直交する。
【0025】
〔プロセスカートリッジおよび装置本体の説明〕
図1に本発明に係るプロセスカートリッジの斜視図、図2に本発明に係るプロセスカー
トリッジの主断面図、図3に本発明に係る電子写真画像形成装置(以下画像形成装置という)の主断面図を図示する。これらの図に示した本発明のプロセスカートリッジの一例は、像担持体と、像担持体に作用するプロセス手段とを備えたものである。そのプロセス手段の例としては、像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体にトナー像を形成する現像装置、そして、像担持体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニング手段がある。
【0026】
プロセスカートリッジBは、図2に示すように、感光体ドラム7と、その周囲に配された、帯電手段である帯電ローラ8、クリーニング手段であるクリーニングブレード10a及びそれらを収納したクリーニング枠体13を含み構成されるクリーニングユニットCと、現像ローラ9c及び現像ブレード9dからなる現像装置及び同装置を収納する現像枠体12及びトナーを収納した現像剤収納枠体(以下「トナー枠体」と言う)11を含み構成される現像ユニットDとによって構成されている。
【0027】
その他、現像枠体12とトナー枠体11、もしくはそのいずれかの枠体の側面で、駆動ギア列(不図示)等を覆っているサイドカバー90,91を含み構成されている(図1参照)。
【0028】
このプロセスカートリッジBは、図3に示すような画像形成装置本体Aに装着されて画像形成に用いられる。記録媒体2を、装置下部に装着された給紙カセット3aからピックアップローラ3bで送り出し、搬送ローラ3cによって搬送し、レジストローラ3eで待機させる。この記録媒体の移動と同期させながら感光体ドラム7に露光装置1から選択的な露光をして、潜像を形成する。その後、トナー枠体11に収納したトナーを現像ブレード9dにより現像ローラ9c表面に薄層担持し、現像ローラ9cに現像バイアスを印加する事によって、潜像に応じて感光体ドラム7にトナーを供給し、トナー像を形成する。感光体ドラム7上のトナー像の形成とタイミングを合せて、レジストローラ3eから転写ローラ4と感光体ドラム7が対向している対向部へと記録媒体2を送り出す。転写ローラ4へのバイアス電圧の印加によって、感光体ドラム7上のトナー像を、搬送されてきた記録媒体2上に転写する。転写後、クリーニング手段10によって感光体ドラム7上の残留トナーを除去する。詳細には、クリーニングブレード10aによって感光体ドラム7に残留したトナーを掻き落とすと共に、スクイシート(不図示)によってすくい取り、掻き落とされたトナーを廃トナー溜め10bへ集める。トナー像が転写された記録媒体2は、定着装置5へ搬送され、画像定着され、排紙ローラ3g、3h、3iによって装置上部の排出トレイ6に排出される。
【0029】
〔ドラムの駆動伝達機構〕
次に画像形成装置本体AからプロセスカートリッジBへ駆動力を伝達する駆動力伝達機構であるカップリング手段の構成について説明する。
【0030】
図5は、感光体ドラム7をプロセスカートリッジBに取り付けるためのカップリング部の縦断面図である。同図では、感光体ドラム7がその長手方向の一方の端部にてドラム側カップリング及びカートリッジ側カップリングを介してプロセスカートリッジBに取り付けられている状態が示されている。
ドラム側カップリングは、感光体ドラム7の一方の端部に取り付けられたドラムフランジ36にカップリング凸軸37(円柱形状)を設けたものであり、凸軸37の先端面には凸部37aが形成されている。本実施の形態では、ドラムフランジ36とカップリング凸軸37及び凸部37aは一体に成形されている。なお、凸部37aの端面は凸軸37の端面と平行である。図5では、凸部37aはモータなど駆動力源により近い部品に設けられた凹部39aと嵌合して、感光体ドラム7に駆動力を伝達する役割を担っている。凸軸37は、後述するカートリッジ側カップリング38の突出部38aの内周部38b1に嵌合して、ドラム回転軸として機能する。ドラムフランジ36には、プロセスカートリッジB内部の現像ローラ9cに同軸に固定された現像ローラギア(不図示)と噛み合うはす歯のドラムギア37bが、駆動力を伝達する機能を有する駆動力伝達部品として働くように、一体に設けてある。
【0031】
カートリッジ側カップリング38は、図4及び図5に示すように、大径で管状の突出部38a、それと同心で小径の外周部38b2を有する突出部38b及び両突出部をつなぐ円板部38cが一体に構成されている。両突出部及び円板部の中心軸の方向は感光体ドラムの長手方向と一致している。突出部38aの内周部38b1は、上述したように、ドラム側カップリングの凸軸37と嵌合して、その軸受けとして機能する。このように、カートリッジ側カップリング38は、感光体ドラムの軸受けとして機能するので、以後「ドラム軸受け38」とも呼称する。
【0032】
〔クリーニング枠体とドラム軸受けとの接合〕
図4はドラム軸受け38とクリーニング枠体13の取り付け関係を詳細に示す斜視図である。この図を用いて、ドラム軸受け38のクリーニング枠体13への取り付け、及びユニット化された感光体ドラムユニットEのクリーニング枠体13への取り付けについて具
体的に説明する。
【0033】
図4に示すように、クリーニング枠体13の側壁13dには、ドラム軸受け38の小径突出部38bの外周部38b2が挿入される取り付け穴13hが設けられる。取り付け穴部は取り付け穴の直径よりも小さな対向間隔から成る欠円部13h1を有している。この間隔はカップリング凸軸37の直径よりも大きい。クリーニング枠体13の側面13dに一体に形成して設けた位置決めピン13h2は、ドラム軸受け38のフランジ部38eに設けた穴38e1に密に嵌合するようになっている。また、ドラム軸受け38とクリーニング枠体13の長手の位置は突き当て面(基準)80で決めている。
以上の構造により、ユニット化された感光体ドラム7を軸方向即ち長手方向に交叉方向からクリーニング枠体13へ取り付け可能となると共に、長手方向からドラム軸受け38をクリーニング枠体13へ取り付ける際の、ドラム軸受け38のクリーニング枠体13に対する位置関係が定まる。
【0034】
ユニット化された感光体ドラム7をクリーニング枠体13へ取り付けるには、図4に示すように、感光体ドラム7を長手方向に対して交又する方向に移動し、ドラムギア37bがクリーニング枠体13内にあるようにしてカップリング凸軸37を欠円部13h1を通過させて軸受け取り付け穴13hに挿入する。この状態で、カップリング凸軸37が軸受け部38bに嵌入するようにドラム軸受け38を軸方向に移動し、更に軸方向に移動して軸受け部38bをクリーニング枠体13の軸受け取り付け穴13hに嵌合し、ビス留めを行う。
【0035】
ユニット化された感光体ドラム7をクリーニング枠体13へビス留めにより固定した後、ドラム軸受け38上に形成されたテルペン系溶剤注入口38fから、クリーニング枠体13とドラム軸受け38との接合部にテルペン系溶剤q(詳細は後述)が供給される。テルペン系溶剤qはスポイト等の授注器Yを用いてを供給することができる。供給された溶剤は、該注入口と連通し且つテルペン系溶剤を接合面に供給するための流路を形成する、ドラム軸受けの背面に設けられた凹部(スリット)38gを通り、接合部にいきわたる(図6及び図7及び図9参照)。
【0036】
テルペン系溶剤の接合部への供給は、毛細管現象により行われることが好ましく、テルペン系溶剤注入口38fから接合部近傍までの第一流路の凹部38gは、幅0.1〜2mm、深さ0.1〜2mmであることが好ましく、該凹部によって形成される流路は、断面積が4mm以下であることが好ましい。4mmより大きい断面積の流路では、毛細管現象が生じにくく、接合面へのテルペン系溶剤の供給が困難となる傾向がある。
【0037】
第一流路の凹部38gを通り接合部近傍に供給されたテルペン系溶剤は、更に、図10及び11のZやMで示されるような第二流路Zもしくは微少な凹凸部Mを毛細管現象によって、流路から接合面全体へと広がり、接合面全体に供給される(図7及び図9中の流れを示す矢印を参照)。
【0038】
第一流路を通ってきたテルペン系溶剤を第二流路によって接合面全体に広げる場合、図10にZにて示されたような接合部品間の隙間が大きいと、毛細管現象を利用した接合域eへの供給が難しい。逆に、接合する面同士が強く加圧されていて接触強度が強い場合にも毛細管現象が生じにくく、テルペン系溶剤の供給が困難となる。したがって、接合したい部位同士は、近接、或いは軽く接触している程度が好ましく、接合面の少なくとも一方
に図11にMにて示されたような微少な凹凸を設けることで接触部に毛細管現象でテルペン系溶剤が広がるように空間を設けることも好ましい形態である。そのような凹凸とは、例えばシボでありその深さは平均(Rz)で20〜40μmが望ましい。深さが40μm
を超えると、シボ谷部は相手部品との接合が不十分となるため、全体として接合強度が低下する傾向にある。
【0039】
また、テルペン系溶剤を用いて接合する場合、最終的に2つの部品が結合されるまでには若干の時間がかかるため(例えば、d−リモネンを溶剤として用いる場合には、数分〜数十分)、必要に応じてビス留めを行ったり、図8に示すように樹脂接合部N(溶融樹脂を二部品間に注入することで結合している)を設けて接合したりすることで、テルペン系溶剤によって完全に2部品間が接合されないうちに接合部にて両部品が解離することを抑制できる。
【0040】
〔トナー枠体とサイドカバーの結合〕
次に、トナー枠体11と、駆動ギア列(不図示)等を覆っているサイドカバー90、91との、さらにはドラムの保護部材(ドラムシャッター部材)18との樹脂接合による固定について説明する。
図20及び21、及び図22に示すように、トナー枠体11とサイドカバー90には互いを結合固定するための樹脂接合部90e、11hが設けられており、図20に示す樹脂接合部90e
、11hの隙間98に、図21に示すように溶融樹脂99を注入することによって、両樹脂接
合部は互いに固定される。溶融樹脂99はトナー枠体11、サイドカバー90と同じ材質を用いることが好ましい。例えばHIPS(ハイインパクトポリスチレン)である。
【0041】
〔プロセスカートリッジの分解、再生方法〕
以下に、本発明によるプロセスカートリッジBの分解、再生方法について説明する。ま
ずプロセスカートリッジBを、クリーニングユニットCと現像ユニットDとに分離する。
(図1参照)
【0042】
(実施例1)
<クリーニング枠体とドラム軸受けの分解、再生方法(図16参照)>
プロセスカートリッジBを保持した後、ドラム軸受け38をクリーニング枠体13に固定し
ているビスXを取り外し、テルペン系溶剤にて接合している接合部e近傍の隙間61にドライバーF等の簡易工具を差込、テコの原理を利用し図16中の矢印のように動かすことによ
り接合部を破壊する。
【0043】
そして前記クリーニング枠体13とドラム軸受け38とを分離し、各々で支持されている各部材の何れか、又は総てを分解し、点検して再使用、交換、補修の何れかもしくは総てを行った後、再度テルペン系溶剤にて接合されていた接合部eの分離面にテルペン系溶剤を
塗布し再接合する。
【0044】
前記再接合(溶着)に用いられるテルペン系溶剤としては、例えば、d−リモネン、l−リモネン、dl−リモネン、d−α−ピネン、d−β−ピネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、2−カレン、d−3−カレン、l−3−カレン、フェランドレンが挙げられる。中でも、d−リモネン、l−リモネン又はdl−リモネンを用いることが好ましく、d−リモネンを用いることが特に好ましい。
【0045】
その際、新品のプロセスカートリッジBを組み立てる場合と同様に毛細管現象を利用し
ても良い。d−リモネンは、粘度は25℃で0.98cpと水とほぼ同等であるため、前記のような微少空間を浸透する毛細管現象による供給が可能である。但し、一度接合に利用した面は注入口、スリット及び接合面の荒れ等により再び毛細管現象を利用したd−リ
モネンの供給ができない。そこで、図12、図13の様に一回のリサイクルを想定してあらかじめもう一箇所注入口、スリット及び接合面を設けておく。図12、図13では、最初に内側に設けた注入口38hとスリット38iによる毛細管現象を利用したリモネン接合を
行い、分解再生を行う際には前記のような方法にて部品間を分離させた後に、外側に設けた注入口38j及びスリット38kを利用して毛細管現象により再接合を行う。
【0046】
他の分解/結合の方式を図14、図15を用いて説明する。接合部e近傍を超音波カッ
ター(不図示)等の工具等によりクリーニング枠体13の例えば破断線Pの位置を切断する
ことでクリーニング枠体13とドラム軸受け38を分離する。再結合は分離したドラム軸受け38を用いずに新品のドラム軸受け(第三の部品)150を用いる。この場合もd−リモネン
等の溶剤を新しいドラム軸受け150に設けられている注入口150aと、スリット150bによる
毛細管現象を利用して供給することが好ましい。
尚、実施例1においては、テルペン系溶剤としては、d−リモネンを用い、クリーニング枠体及びドラム軸受けとしては、HIPS(スチレン重合体に、平均粒子径0.8μmのポリブタジエンゴムを8質量%混合したもの)を用いた。
HIPSには、スチレン樹脂100質量部に対して、第1の難燃剤として、臭素系難燃剤のエチレンビスペンタブロモベンゼンを9質量部、第2の難燃剤として三酸化アンチモンを2.5質量部添加した。
尚、上記のクリーニング枠体及びドラム軸受けは、UL−94のV2ランクの難燃性を有するものであった。
【0047】
<トナー枠体とサイドカバーとの分解、再生方法(実施例2)>
プロセスカートリッジを保持した後、図22に示すように、トナー枠体11とサイドカバー90の樹脂接合部近傍である隙間51にドライバーFのような簡易工具を差込、テコの原理を
利用し図中矢印のように動かすことにより接合部を破壊する。
【0048】
その後、前記トナー枠体11とサイドカバー90を分離し(図17参照)、各々で支持されている各部材の何れか、又は総てを分解し、点検して再使用、交換、補修、補給の何れかもしくは総てを行った後、その分離面81にd−リモネン88を塗布し(図18参照)、その後分離面同士を再接合する。(図19参照)
【0049】
図18、図22ではトナー枠体11とサイドカバー90の固定に樹脂接合を用いてあるが、他の固定手段(例えば超音波溶着、熱カシメ等)の場合でも同様の分解再生方法を行うことができる。
その後、クリーニングユニットCと現像ユニットDとを再結合しリサイクルカートリッジとして使用することが可能となる。
【0050】
以上、リサイクルカートリッジの生産方法について述べたが、新品カートリッジにおいても工場の生産工程に置けるキズ等の部品不良、組立不良による部品交換、再度組立調整において接合部の分離、再結合にd−リモネンを始めとするテルペン系溶剤を用いても良い。
【0051】
本発明において、カートリッジの二部品間の再接合(溶着)に、前記テルペン系溶剤(例えば、d−リモネン)を用いるに到ったのは、テルペン系溶剤がスチレン系樹脂組成物を溶解する性質に着目したからであり、接合される枠体・部品は、スチレン系樹脂組成物である必要がある。
【0052】
本発明において接合される枠体・部品は、テルペン系溶剤によって溶解されるスチレン系樹脂組成物であれば、特に限定されないが、カートリッジの材質として好適に用いることのできるスチレン系樹脂組成物としては、ゴム変性スチレン系材料であるHIPS(ハ
イインパクトポリスチレン)が挙げられる。本材料は、安価でかつ流動性が良いPS(ポリスチレン)に、耐衝撃性を向上するため、ゴム状重合体、またはゴム状共重合体を混合したものである。
【0053】
本発明においては、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)としては、平均粒子径0.5〜3.0μmのゴム状重合体或いはゴム状共重合体を混合したものを用いることが好ましい。これは、混合するゴム状重合体或いは共重合体の平均粒子径が小さいと、前記カートリッジ部品を成形する際に、成形時の外観不良(たとえば、スリキズ)が発生しやすくなり、逆に平均粒子径が大きいと、トナーシール部材(不図示)の溶着性が低下してしまう傾向にあるためである。ゴム状重合体或いはゴム状共重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム及びエチレン−プロピレン共重合体からなるグループから選択される重合体が好ましく用いられる。
【0054】
また、前記枠体材料には、火災に対する安全性として、UL−94のV2ランクの難燃性が求められる。そのために、スチレン系樹脂組成物には、第1の難燃剤として臭素系難燃剤(例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA誘導体とポリハロゲン化脂肪族エーテル誘導体など)やリン酸エステル系難燃剤(例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート) など)が添加される。更に、第2の難燃剤を添加することで第1の難燃剤の添加量を減らすことが可能となり、ベースポリマーとなるスチレン系樹脂組成物の物性低下を防ぐこともできる。
第2の難燃剤の具体例としては、臭素系難燃剤には三酸化アンチモンが最も効果が高いため用いられている。リン酸エステル系難燃剤には難燃剤ではなくPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂により難燃性を向上させている。
尚、上記実施例2においては、テルペン系溶剤としては、d−リモネンを用い、トナー枠体及びサイドカバーとしては、HIPS(スチレン重合体に、平均粒子径0.8μmのポリブタジエンゴムを8質量%混合したもの)を用いた。
HIPSには、スチレン樹脂100質量部に対して、第1の難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤のレゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)を7質量部添加し、更にPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂を10質量部添加した。
尚、上記のトナー枠体及びサイドカバーは、UL−94のV2ランクの難燃性を有するものであった。
【0055】
以上述べてきたスチレン系樹脂組成物から本再生カートリッジは構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの主断面概略図である。
【図3】本発明の実施の形態における電子写真画像形成装置本体の主断面概略図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分構成概略を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部品拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部品拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部品拡大図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図14】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図15】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの部分縦断面図である。
【図16】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジに簡易分解治工具(ドライバー)をセットした状態の斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの樹脂接合部の主縦断面概略図及びその分解再生工程のうちの分離工程を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの樹脂接合部の主縦断面概略図及びその分解再生工程のうちの溶剤付与工程を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの樹脂接合部の主縦断面概略図及びその再生工程のうちの接合工程を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの樹脂接合部の、樹脂を注入する前の主縦断面概略図である。
【図21】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの樹脂接合部の主縦断面概略図において樹脂を注入した状態を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジに簡易分解治工具(ドライバー)をセットした状態の斜視図である。
【図23】従来のプロセスカートリッジの斜視図である。
【図24】従来のプロセスカートリッジの部分構成概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
A・・・・・画像形成装置
B・・・・・プロセスカートリッジ
C・・・・・クリーニングユニット
D・・・・・現像枠体ユニット
E・・・・・感光体ドラムユニット
M ・・・・・微少な凹凸
N ・・・・・樹脂接合部
P ・・・・・破断箇所
X ・・・・・ビス
Z ・・・・・隙間
d・・・・・座面
e・・・・・リモネン接合部(溶着部)
q・・・・・リモネン
1・・・・・露光装置
2・・・・・記録媒体
3a・・・・給紙カセット
3b・・・・ピックアップローラ
3c・・・・搬送ローラ
3e・・・・レジストローラ
3g、3h、3i・・・・排紙ローラ
4・・・・・転写ローラ
5・・・・・定着装置
6・・・・・排出トレイ
7・・・・・感光体ドラム
8・・・・・帯電ローラ
9c・・・・現像ローラ
9d・・・・現像ブレード
10・・・・クリーニング手段
10a・・・クリーニングブレード
10b・・・廃トナー溜め
11・・・・トナー枠体
11h・・・樹脂接合部
12・・・・現像枠体
13・・・・クリーニング枠体
13d・・・側壁
13h・・・軸受け取り付け穴
13h1・・・・欠円部
13h2・・・・位置決めピン
18・・・・ドラムの保護部材
36・・・・ドラムフランジ
37・・・・カップリング凸軸
37a・・・凸部
37b・・・ドラムギア
38・・・・ドラム軸受け
38a・・・大径の突出部
38b・・・小径の突出部
38b1・・内周部
38b2・・外周部
38c・・・円板部
38e・・・フランジ部
38e1・・穴
38f・・・注入部
38g・・・スリット(凹部)
51・・・・クリーニング枠体とドラム軸受けの隙間
61・・・・サイドカバーとトナー枠体間の隙間
80・・・・突き当て面(基準)
81・・・・破断面
88・・・・リモネン
90、91・・・・サイドカバー
90e・・・樹脂接合部
98・・・・隙間
99・・・・溶融樹脂(注入された樹脂)
107・・・感光体ドラム
111・・・トナー枠体
113・・・クリーニング枠体
190、191・・・・サイドカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置本体に着脱自在であり、少なくともその一部がスチレン系樹脂組成物で形成されているカートリッジの再生方法であり、
(1)カートリッジを少なくとも二つの部分に分離する工程と、
(2)分離した部分の少なくとも一つと、他の分離した部分及び/又は分離した部分以外の部品とを、テルペン系溶剤を用いて接合する工程を有することを特徴とするカートリッジの再生方法。
【請求項2】
カートリッジを分離する工程が、スチレン系樹脂組成物を含み構成される部分において分離する工程であることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項3】
スチレン系樹脂組成物のうち少なくとも一種は、ゴム変性スチレン系樹脂及び難燃剤を含み構成されていることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項4】
テルペン系溶剤が、d−リモネンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項5】
スチレン系樹脂組成物の少なくとも一種は、スチレン系樹脂とゴム状重合体との混合物であることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項6】
ゴム状重合体がゴム状単独重合体であることを特徴とする請求項5に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項7】
ゴム状単独重合体が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及び天然ゴムからなるグループから選択される重合体であることを特徴とする請求項6に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項8】
ゴム状重合体がゴム状共重合体であることを特徴とする請求項5に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項9】
ゴム状共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体及びエチレン−プロピレン共重合体からなるグループから選択される重合体であることを特徴とする請求項8に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項10】
ゴム状重合体が、平均粒径0.5〜3.0μmの粒子であることを特徴とする請求項5に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項11】
テルペン系溶剤を用いて接合する工程が、毛細管現象を利用して接合部分へテルペン系溶剤を供給することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項12】
テルペン系溶剤を用いて接合する工程が、接合部分に直接塗布又は滴下することによりテルペン系溶剤を供給することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項13】
互いに接合する部分及び部品の少なくとも一方に、テルペン系溶剤を注入するための注入口と連通し且つテルペン系溶剤を接合個所に供給するための流路を形成する凹部、スリット又は面取り部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項14】
該流路は、断面積が0.01乃至4.0mmであることを特徴とする請求項13に記
載のカートリッジの再生方法。
【請求項15】
テルペン系溶剤を付与する前に接合面を清掃する工程を含み構成される、請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の再生方法を用いたことを特徴とする再生カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−30977(P2006−30977A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173541(P2005−173541)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】