説明

カード搬送装置および情報処理機器

【課題】 異物がカードに重なった状態で機器内に挿入されることを防ぐことができると共に、仮に異物がカードに重なった状態でカードと共に挿入されてしまった場合には自動的に排出できるカード搬送装置を提供する。
【解決手段】 カード挿入口20は、カード100のエンボスを含む最大厚さよりも僅かに大きい隙間寸法を持つと共に、カード100の非エンボスエリア100bに対応する領域にエンボスの高さと同じ高さの突起22を備えている。カード位置センサ16は、搬送路11のうちのカード100のエンボスエリア100aに対応する領域に形成されている。搬送路11のうちのカード100のエンボスエリア100aに対応する領域に残留する異物200aを排出する異物排出機構30を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッシュカード等のカード状の記憶媒体(以後、カードと呼ぶ)からの情報の読み出し、もしくは、さらにカードへの情報の書き込みといった情報処理を行う銀行ATM等の情報処理機器に適用され、情報処理すべきカードを情報処理機器内に自動的に挿入すると共に情報処理されたカードを機器外に自動的に排出するカード搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカード搬送装置は、カードの許容範囲内の変形などに対するマージンを確保しているため、レシート、チケット等の薄手の異物がカードに重なった状態であると、カードと異物とを同時に情報処理機器内に挿入できてしまう。
【0003】
カードと重なって情報処理機器内に挿入された異物が、その後、カードと一緒に排出される場合は、異物が正規情報を機器から不正に読み込んだり、逆に不正情報を機器に不正に書き込むものや、機器の構造物に機械的ダメージを及ぼすものでないのであれば、特に問題とはならない。
【0004】
一方、カードと重なって情報処理機器内に挿入された異物が、その後、カードと一緒に排出されずに機器内に残留した場合は、カードの搬送動作や、情報の読み書きに支障を来たす。例えば、残留した異物をカードであると誤認識してカードの排出動作を続行し、それが所定時間以上となると排出エラーと装置は判断し、搬送動作が強制停止される。また、次に挿入されたカードと残留した異物とが搬送方向に沿ってずれた状態が起こると、所定の長さよりも長い規格外のカードが挿入されていると装置は誤認識し、やはり搬送動作が強制停止される。尚、情報処理機器の管理者が異物の残留の事実を知った場合や、異物の残留に起因して搬送動作が強制停止された際に、管理者は、機器の筐体を開け、異物の除去作業を行う必要がある。
【0005】
カード搬送装置の異物対策は、例えば、特許文献1および2に開示されている。
【0006】
特許文献1には、異物検出用の反射型フォトセンサを備えたカード搬送装置が開示されている。しかし、このセンサは、異物として、不正読取用の記録媒体の類を想定しており、如何なるサイズや形状の異物をどのように検出するかについては伏せられており、具体的な構成が不明である。
【0007】
特許文献2には、カードよりも細いサイズ、形状の異物を検出する技術が開示されている。特許文献2に開示された技術においては、カードであればカード位置検出センサの検出信号と、カード搬送用モータが回転していることを示すエンコーダパルスとの両方が検出される一方、細い異物であればエンコーダパルスのみが検出されることにより、カードと、それよりも細い異物とを判別している。尚、この細い異物としては、カードとは個別に機器に挿入されるものを想定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−67525号公報
【特許文献2】特許第3930853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および2に開示されたものも含め、関連技術によるカード搬送装置は、薄手の異物がカードに重なった状態で機器内に挿入されることを防ぐことが不可能であるか、あるいは十分であるとはいえず、また、カードに重なった状態でカードと共に挿入された後に機器内に残留した異物を自動排出することも不可能もしくは十分であるとはいえない。
【0010】
それ故、本発明の課題は、異物がカードに重なった状態で機器内に挿入されることを防ぐことができると共に、仮に異物がカードに重なった状態でカードと共に挿入されてしまった場合には自動的に排出できるカード搬送装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の課題は、そのような搬送装置を有する情報処理機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によればカード状の記憶媒体であるカードを情報処理機器内に自動的に挿入すると共に排出するカード搬送装置であって、カードの搬送方向に延びる搬送路と、カードの搬送路の一端に形成されたカード挿入口と、カードを搬送するカード搬送手段と、前記搬送路上を搬送されるカードの前記搬送方向における位置を検出するカード位置センサとを有するカード搬送装置において、カードは、エンボスが形成されたエンボスエリアと、エンボスが形成されていない非エンボスエリアとを含み、エンボスエリアと非エンボスエリアとは、それぞれ前記搬送方向に沿って延びると共に、互いに並んでおり、前記カード挿入口は、カードのエンボスを含む最大厚さよりも僅かに大きい隙間寸法を持つと共に、カードの非エンボスエリアに対応する領域にエンボスの高さと同じ高さの突起を備え、前記カード位置センサは、前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に形成されており、前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に残留する異物を排出する異物排出機構を有することを特徴とするカード搬送装置が得られる。
【0013】
前記異物排出機構は、前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に前記搬送方向に延びるように形成されたベルトと、ベルトを駆動するモータとによって構成されてもよい。
【0014】
前記カード位置センサによって異物を検出するものであってもよい。
【0015】
排出できない異物を前記異物排出機構によって前記カード位置センサに載らない位置まで移動させるものであってもよい。
【0016】
前記突起は、カードの挿入および排出を妨げないように、テーパ状を呈し、その最高高さがカードのエンボスの高さと同じであってもよい。
【0017】
本発明によればまた、前記カード搬送装置と、前記カード搬送装置によって挿入されたカードからの情報の読み出し、および、カードへの情報の書き込みのうち、少なくとも読み出しを行う手段とを有することを特徴とする情報処理機器が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるカード搬送装置は、異物がカードに重なった状態で機器内に挿入されることを防ぐことができると共に、仮に異物がカードに重なった状態でカードと共に挿入されてしまった場合には自動的に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例によるカード搬送装置を示す平面図である。
【図2】図1に示されたカード搬送装置の動作を説明するための図である。
【図3】図1に示されたカード搬送装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるカード搬送装置は、カード状の記憶媒体であるカードを情報処理機器内に自動的に挿入すると共に排出するカード搬送装置であって、カードの搬送方向に延びる搬送路と、カードの搬送路の一端に形成されたカード挿入口と、カードを搬送するカード搬送手段と、搬送路上を搬送されるカードの搬送方向における位置を検出するカード位置センサとを有している。
【0021】
特に、本カード搬送装置において、カード挿入口は、カードのエンボスを含む最大厚さよりも僅かに大きい隙間寸法を持つと共に、カードの非エンボスエリアに対応する領域にエンボスの高さと同じ高さの突起を備えている。カード位置センサは、搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に形成されている。本カード搬送装置はまた、搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に残留する異物を排出する異物排出機構を有している。
【0022】
本カード搬送装置は、上記構成により、異物がカードに重なった状態で機器内に挿入されることを防ぐことができると共に、仮に異物がカードに重なった状態でカードと共に挿入されてしまった場合には自動的に排出できる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明によるカード搬送装置のより具体的な実施例を説明する。
【0024】
図1を参照すると、本発明の実施例によるカード搬送装置は、カード状の記憶媒体であるカード100を情報処理機器としての銀行ATM内に自動的に挿入すると共に排出するカード搬送装置であって、カード100の搬送方向(図中、左右方向)に延びる搬送路11と、カード100の搬送路11の一端に形成されたカード挿入口20と、カード100を搬送するカード搬送手段と、搬送路11を搬送されるカードの磁気ストライプに摺動する磁気ヘッド14と、搬送路11を搬送された後に所定位置で停止されるカードに内蔵されたICチップのIC接点に接触するICヘッド15と、搬送路11上を搬送されるカード100の搬送方向における位置を検出する複数のカード位置センサ16とを有している。カード搬送手段は、ベルト(無限軌道)32と、モータ12と、搬送路11に沿って定間隔を置いて配置された3個のカード搬送ローラ対13と、モータ12の軸に取り付けられたプーリと、カード搬送ローラ対13の軸に取り付けられたプーリとに張架されたベルトとから成っている。また、複数のカード位置センサ16は、本例では、光学式センサである。
【0025】
尚、カード100は、カードの規格により、カード番号等を示すエンボスが形成されたエンボスエリア100aと、エンボスが形成されていない非エンボスエリア100bとを含んでいる。エンボスエリア100aと、非エンボスエリア100bとは、それぞれ搬送方向に沿って延びると共に、互いに並んでいる。
【0026】
特に、本カード搬送装置において、カード挿入口20は、カード100のエンボスを含む最大厚さ(カードの規格による)よりも僅かに大きい隙間寸法を持っている。ただし、カード挿入口20のうち、カード100の非エンボスエリア100bに対応する領域にエンボスの高さと同じ高さの突起22を備えている。よって、非エンボスエリア100bに対応する領域においては、カード100のエンボスを含まない厚さよりも僅かに大きい隙間寸法となっている。尚、エンボスは、カード100の一方の板面のエンボスエリア100aに形成されるが、突起22は、その一方の面に対向するようにカード挿入口20に設けられている。突起22は、カード100の挿入および排出を妨げないように、搬送方向に沿って曲面のテーパ状、即ち、側面から見るとカマボコ状を呈している。その中心の最高高さは、カード100のエンボスの高さと同じである。尚、図中、符号21は、カード100のエンボスを含む最大厚さよりも僅かに大きい隙間寸法を持つエンボス対応領域を示している。
【0027】
この構成により、カード100にレシートやチケット等の薄手の異物200aが重なった状態でカード挿入口20に挿入される場合、カード100のエンボスエリア100aはカード挿入口20の隙間寸法により、また、カード100の非エンボスエリア100bは突起22により、それぞれ厚さ寸法が規制され、カード100に重なった異物200aの挿入が防止される。
【0028】
本カード搬送装置においてはまた、カード位置センサ16は、搬送路11のうちのカード100のエンボスエリア100aに対応する領域に形成されている。複数のカード位置センサ16は、搬送方向に沿ってほぼ定間隔で配置されている。
【0029】
本カード搬送装置においてはさらに、搬送路11のうちのカード100のエンボスエリア100aに対応する領域、即ち、複数のカード位置センサ16が配置されている領域に残留する異物200aを排出する異物排出機構30を有している。
【0030】
異物排出機構30は、ベルト32と、ベルト32を駆動するためのモータ31と、モータ31の軸に取り付けられたプーリと協働してベルト32をテンションアップするテンションプーリ(図示せず)とによって構成されている。
【0031】
この構成により、図2に示されるように、カード挿入口20に突起22が形成されているにもかかわらず、異物200aがカード100に重なって情報処理機器内に挿入された後に、カード100が排出されて異物200aが残留した場合、カード位置センサ16によって異物200aの残留を検知し、異物排出機構30によって異物200aを排出することができる。
【0032】
あるいは、図3に示されるように、比較的小さい異物200bがカード100に重なって情報処理機器内に挿入された後にカード100が排出されて異物200bが残留した場合、カード位置センサ16によって異物200bの残留を検知し、異物排出機構30によってカード位置センサ16に重ならない位置、即ち、カード搬送装置や情報処理機器の動作に支障を来たさない位置にまで異物200bを移動することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本願特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。例えば、本発明は、情報処理機器としてATMに限らず、マルチメディアキオスク(商標または登録商標)端末などの各種情報処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
11 搬送路
12 モータ
13 搬送ローラ対
14 磁気ヘッド
15 ICヘッド
16 カード位置センサ
20 カード挿入口
21 エンボス対応領域
22 突起
30 異物排出機構
31 モータ
32 ベルト
100 カード
100a エンボスエリア
100b 非エンボスエリア
200a、200b 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状の記憶媒体であるカードを情報処理機器内に自動的に挿入すると共に排出するカード搬送装置であって、カードの搬送方向に延びる搬送路と、カードの搬送路の一端に形成されたカード挿入口と、カードを搬送するカード搬送手段と、前記搬送路上を搬送されるカードの前記搬送方向における位置を検出するカード位置センサとを有するカード搬送装置において、
カードは、エンボスが形成されたエンボスエリアと、エンボスが形成されていない非エンボスエリアとを含み、エンボスエリアと非エンボスエリアとは、それぞれ前記搬送方向に沿って延びると共に、互いに並んでおり、
前記カード挿入口は、カードのエンボスを含む最大厚さよりも僅かに大きい隙間寸法を持つと共に、カードの非エンボスエリアに対応する領域にエンボスの高さと同じ高さの突起を備え、
前記カード位置センサは、前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に形成されており、
前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に残留する異物を排出する異物排出機構を有することを特徴とするカード搬送装置。
【請求項2】
前記異物排出機構は、前記搬送路のうちのカードのエンボスエリアに対応する領域に前記搬送方向に延びるように形成されたベルトと、ベルトを駆動するモータとによって構成される請求項1に記載のカード搬送装置。
【請求項3】
前記カード位置センサによって異物を検出する請求項1または2に記載のカード搬送装置。
【請求項4】
排出できない異物を前記異物排出機構によって前記カード位置センサに載らない位置まで移動させる請求項3に記載のカード搬送装置。
【請求項5】
前記突起は、カードの挿入および排出を妨げないように、テーパ状を呈し、その最高高さがカードのエンボスの高さと同じである請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカード搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカード搬送装置と、前記カード搬送装置によって挿入されたカードからの情報の読み出し、および、カードへの情報の書き込みのうち、少なくとも読み出しを行う手段とを有することを特徴とする情報処理機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108159(P2011−108159A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264974(P2009−264974)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】