説明

カード用コネクタ

【課題】低背化に対応できるとともに、構造が簡単であり、且つ、SIMカードの誤挿入に対してコンタクトが損傷することを防止できるようにした横向きにSIMカードを挿入するタイプのカード用コネクタを提供する。
【解決手段】複数のコンタクトを片持ち梁状に支持するベース部材の底壁を含む縦長のSIMカードを横向きに挿入するカード用コネクタにおいて、前記複数のコンタクトは、挿入されるSIMカードの外部接点に対応して配置され、前記コンタクトは、前記SIMカードのパッドに接触する接点部、該接点部を弾性的に上下方向に変位させることを可能とする2つの弾性変形部、及び一部が底壁に固定され、残りはコネクタが装着される電子機器の外部接点に接続される端子部を有し、前記2つの弾性変形部は、接点部を頂点とし、頂角θを有する二等辺三角形状をなして連結され、前記複数のコンタクトそれぞれは、互いに平行に、カード挿入方向に逆V字形に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、より詳細には、縦長のSIM(Subscriber Identify Module)カードを横向きに挿入するタイプのカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの電子機器においては、機能拡張のためいろいろな集積回路内蔵カード(以下、「ICカード」という。)が使用されてきている。このようなICカードは、通常、カード用コネクタを介して電子機器に装着される。ICカード用コネクタには、ICカードと電子機器とを電気的に接続する複数のコンタクトが設けられている。該コンタクトそれぞれは、細長い板状をなし、一端をコネクタに固定され、他端を自由端とするいわゆる片持ち梁状に支持され、互いに平行に配列されている。ICカードは、通常、平行に配列されたコンタクトの配列方向に沿って挿入される。また、ICカードがその幅(横方向の長さ)が奥行(縦方向の長さ)よりも短い長方形である(以下、このようなICカードを「縦長のICカード」という。)場合、ICカードの従来の挿入方向は、通常、該ICカードの縦方向(縦向き)であることが多い。
【0003】
近年、電子機器の小型化などにより、ICカード用コネクタの配置位置により、ICカードの挿入方向を従来の縦方向から該縦方向に直交する方向すなわち横方向(横向き)に変更せざるをえない場合が生じてきた。このような挿入方向の変更に対応するために、特許文献1に開示されるように、複数のコンタクトがカードの挿入方向に対して傾斜するように配置されたICカード用コネクタが提案されている。
【0004】
特許文献1に開示されるカード用コネクタは、コンタクトをカードの挿入方向に対して傾斜させることで、ICカードが縦方向または横方向に挿入されてもよいように構成されている。すなわち、コンタクトをカード挿入方向に対して傾斜させて配置することで、縦長のICカードが縦方向または横方向に挿入されることに対して挿入されるICカードがコンタクトに対して引っ掛かることなく円滑に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−149394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、縦長のICカードが横方向から挿入されることを要求されるときに、カード用コネクタ内に誤って縦方向に挿入されることが起こり得る(図4参照)。このようなICカードの誤挿入時、従来のコンタクト構造及び配置であると、縦長のICカードの角部がコンタクトの自由端としての端子部に当たり、それにより、コンタクトを変形または座屈させる恐れが生じる。
【0007】
コンタクトの自由端にICカードの角部が当接しないように、例えば、コンタクトの自由端をコンタクトが支持されているカード用コネクタのベース基板に隠すことが考えられる。この場合、必要な接圧を確保するためにはコンタクトの高さを高くしなければならず、近年のカード用コネクタの低背化を図る流れに逆行することになり、また、カード用コネクタ、特にコンタクトの構造も複雑になる。
【0008】
本願発明の目的は、カード用コネクタの低背化に対応できるとともに、構造が簡単であり、且つ、縦長のICカードとしてのSIMカードの誤挿入に対してコンタクトが損傷することを防止できるようにした横向きにSIMカードを挿入するタイプのカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明に係るカード用コネクタは、複数のコンタクトを片持ち梁状に支持するベース部材の底壁を含む縦長のSIMカードを横向きに挿入するカード用コネクタにおいて、前記複数のコンタクトは、挿入されるSIMカードの外部接点に対応して配置され、前記コンタクトは、前記SIMカードのパッドに接触する接点部、該接点部を弾性的に上下方向に変位させることを可能とする2つの弾性変形部、及び一部が底壁に固定され、残りはカード用コネクタが装着される電子機器の外部接点に接続される端子部を有し、前記2つの弾性変形部は、接点部を頂点とし、頂角θを有する二等辺三角形状をなして連結され、前記複数のコンタクトそれぞれは、互いに平行に、カード挿入方向に逆V字形に配置されることを特徴とする。
【0010】
また、本願発明に係るカード用コネクタは、複数のコンタクトを片持ち梁状に支持するベース部材の底壁を含む縦長のSIMカードを横向きに挿入するカード用コネクタにおいて、前記複数のコンタクトは、挿入されるSIMカードの外部接点に対応して配置され、前記コンタクトは、前記SIMカードのパッドに接触する接点部、該接点部を弾性的に上下方向に変位させることを可能とする二等辺三角形状の弾性変形部、及び一部が底壁に固定され、残りはカード用コネクタが装着される電子機器の外部接点に接続される端子部を有し、前記二等辺三角形状の弾性変形部は、接点部を頂点とする頂角θを有し、前記複数のコンタクトそれぞれは、互いに平行に、カード挿入方向に逆V字形に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明のカード用コネクタは、コンタクトを2つの弾性変形部で接点部を頂点として、頂角θを有する二等辺三角形状に形成することで、または接点部を頂点として頂角θを有する二等辺三角形状の弾性変形部を備えることで、コンタクトの構造が簡単であるにもかかわらず、誤挿入されるSIMカードによりコンタクトの変形を抑制することができる。また、頂角θを適切に設定することで、コンタクトの変形を防止することも可能である。さらに、コンタクトは従来と同様に片持ち梁状にベース部材に固定、支持され得るからコネクタの低背化にも対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係るカード用コネクタの一実施態様を示し、(a)は、上面図であり、(b)は、正面図である。
【図2】図1(a)に示されるカード用コネクタにおいて、カバー部材を取り除いた状態のカードコネクタの上面図である。
【図3】図2に示されるカード用コネクタにSIMカードが正しく挿入されている状態を示す図であり、(a)は、上面図であり、(b)は、図3(a)に示されるIII−III線に沿って断面された断面図である。
【図4】図2に示されるカード用コネクタにSIMカードが誤って挿入された状態を示す図である。
【図5】本願発明に係るカード用コネクタに使用されるコンタクトの実施例を示し、(a)は、該コンタクトの一実施例であり、(b)は、別の実施例である。
【図6】本願発明に係るカード用コネクタの別の実施態様の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1ないし6を用いて本願発明に係るカード用コネクタの実施態様について説明する。
【0014】
図1は、本願発明に係るカード用コネクタの一実施態様を示し、(a)は、上面図であり、(b)は、正面図である。図2は、図1(a)に示されるカード用コネクタにおいて、カバー部材を取り除いた状態のカード用コネクタの上面図である。図3は、図2に示されるカード用コネクタにSIMカードが正しく挿入されている状態を示す図であり、(a)は、上面図であり、(b)は、図3(a)に示されるIII−III線に沿って断面された断面図である。図4は、図2に示されるカード用コネクタにSIMカードが誤って挿入された状態を示す図である。図5は、本願発明に係るカード用コネクタに使用されるコンタクトの実施例を示し、(a)は、該コンタクトの一実施例であり、(b)は、別の実施例である。図6は、本願発明に係るカード用コネクタの別の実施態様の上面図である。
【実施例1】
【0015】
最初に、本実施態様に係るカード用コネクタ(以下、単に、「コネクタ」という。)10に挿入されるSIMカード100について簡単に説明する。本実施態様におけるSIMカード100は、図3、4に示されるように、縦方向の長さ(図3において、左右方向の長さ)がLであり、横(幅)方向の長さ(図3において、上下方向の長さ)がDとするときL>Dの縦長の扁平な形状をなしている。本実施態様におけるSIMカード100は、図3において、裏面側に外部接点として複数(本実施態様では、6個)のパッド(不図示)が設けられている。
【0016】
図1(a)、(b)及び図2に示されるように、本願発明に係る第1の実施態様としてのカード用コネクタ10は、概略、カバー部材20、ベース部材30及び複数のコンタクト40を備えている。
【0017】
カバー部材20は、ベース部材30と重ね合わされることでSIMカード100(図3)が挿入され得る箱状のカード収容空間12を形成する。カバー部材20は、概略矩形状の天板21、該矩形状の天板21の3辺から天板21に対して直交するように設けられる第1の側壁22、第2の側壁23、第3の側壁24を備え、図1(a)において下方側及び図1(b)において下方側が開放している。カバー部材20の天板21には、SIMカード100の挿入、取り出しを容易にし得るように、該SIMカード100が挿入されるカード挿入口13側に切欠凹部25が形成されている。また、組み立てられたコネクタ10を電子機器に半田付けなどで固定するために、複数(本実施態様では、4個)の固定片26が第1ないし3の側壁22、23及び24の所定の位置に設けられている。
【0018】
ベース部材30は、概略矩形状の底壁31、該矩形状の底壁の3辺から底壁31に対して直交するように設けられる第1の側壁32、第2の側壁33、第3の側壁34を備えている。ベース部材30の第1ないし3の側壁32、33及び34は、コネクタ10として組み立てられるとき、それぞれ、カバー部材20の第1ないし3の側壁22、23及び24に重ね合わせられ、図1(b)に示されるように、箱状のカード収容空間12を形成するとともに、図1(a)において下方側にカード挿入口13を形成する。すなわち、本実施態様におけるコネクタ10は、縦長のSIMカード100を横(幅)方向に挿入するように構成されている。
【0019】
ベース部材30には、後述する複数のコンタクト40が配置される概略矩形状の開口部35、36が形成される。本実施態様では、挿入されるSIMカード100の複数のパッドの配列位置に対応して、細長い矩形状の第1の開口部35及び第2の開口部36の2つが、図2に明確に示されるように、上下方向に互いに平行に延在している。該1の開口部35は、図2において右側第2の側壁33寄りに、また、第2の開口部36は、左側中央寄りに配置されている。第1及び第2の開口部35、36の左右方向の中心線(図2においては、第1の開口部35の中心線O−Oのみ示されている。)は、第1の側壁32及び第2の側壁33に平行である。すなわち、第1及び第2の開口部35、36の左右方向の中心線(O−O)は、カード挿入方向に平行である。本実施態様においては、第1及び第2の開口部35、36それぞれに3個ずつのコンタクト40が配置される。第1及び第2の開口部35、36の間には、窓部37、38、39が設けられている。窓部37、38、39には、コンタクト40の一方の端子部が配置されている。
【0020】
複数のコンタクト40は、コネクタ10に挿入されるSIMカード100とコネクタ10が取り付けられている電子機器(不図示)との間を電気的に接続する。より詳細には、コンタクト40は、SIMカード100の外部接点であるパッドと電子機器の外部接点とを接続する。複数のコンタクト40それぞれは、導電性の金属薄板からプレス加工により形成される。
【0021】
各コンタクト40は、本実施態様では、図2及び図5(a)に示されるように、接点部41、2本の弾性変形部42、44及び2つの端子部43、45を備えている。接点部41は、コンタクト40の自由端としてSIMカード100のパッドに弾性的に接触するように、2つの弾性変形部42、44が連結される交差部分に設けられ、カード収容空間12内に位置している。2つの弾性変形部42、44は、同じ長さを有し、弾性変形部42、44の外側の稜線42a及び44aが角度θをなすように接点部41に連結され、該接点部41を弾性的に上下方向(図3(b)において、左右方向)に変位させる。これらのことから、接点部41は、角度θをなして交わる2つの弾性変形部42、44で形成される二等辺三角形の頂点に位置することが理解される。したがって、コンタクト40の形状は、これに限定されるものではないが、全体的に上から見て逆V字形状をなしているといえる。2つの弾性変形部42、44それぞれの接点部41とは反対側に位置する端部は、左右2つの端子部43、45に連結している。2つの端子部43、45は、電子機器の外部接点に半田付けなどにより接続されるが、少なくとも1つの端子部43または45が電子機器の外部接点に接続されれば良く、必ずしも2つとも接続される必要はない。該端子部43、45は、角度θをなして交わる2つの弾性変形部42、44で形成される二等辺三角形の底辺の延長線上に延在し、その一部は、コンタクト40をベース部材30の底壁31に固定する固定部として利用される。本実施態様では、コンタクト40の固定方法として、これに限られるものではないが、図2に示されるように、インサート成形により端子部43、45の一部が底壁31に埋め込まれている。したがって、コンタクト40は、図3(b)の断面図に示されるように、横から見て、端子部43、45により、片持ち梁状に、ベース部材30の底壁31に固定され、支持される。
【0022】
本実施態様では、コンタクト40は、第1の開口部35に3個、第2の開口部36に3個、合計6個上下方向に互いに平行に配置される。具体的には、第1の開口部35に配置されるコンタクト40各々は、第1の開口部35の左右方向中心線O−O上に接点部41が位置し、左右の2つの弾性変形部42、44が左右方向中心線O−Oに対して左右対称位置にくるように配置される。また、接点部41がカード挿入方向に対して後方(図2において上方)に位置するように配置される。左右2つの弾性変形部42、44それぞれに続く左右2つの端子部43、45を結ぶ直線(上述した角度θをなして交わる2つの弾性変形部42、44で形成される二等辺三角形の底辺の延長線に一致する。)は、ベース部材30の第3の側壁34に平行である。したがって、第1の開口部35に配置される3個のコンタクト40は、図2に示されるように、それぞれの接点部41が上方に位置する逆V字形状をなして互いに平行に配置される。左右2つの弾性変形部42、44を、同じ長さにすることにより弾性変形部を捩れ難くすることができる。
【0023】
本実施態様では、例えば、第1の開口部35に配置されるコンタクト40の図2において左側の端子部43は、ベース部材30の底壁31に形成された窓部39内に突出するように延在する。他方、コンタクト40の右側の端子部45は、底壁31の第2の側壁33から外側(図2において右側)に突出するように延在する。
【0024】
第2の開口部36に配置される3個のコンタクト40も第1の開口部に配置されるコンタクト40と同じであるので説明を省略する。
【0025】
本実施態様においては、図2に示されるように、第2の開口部36に配置されるコンタクト40において、2つの弾性変形部42、44のなす角度がθであるように示されている。この場合、θ≧θであることが好ましい。このように構成することにより、SIMカード100のパッドの挟ピッチ化に対応し得る。また、このように構成しても、第2の開口部36に配置されるコンタクト40は、後述するように、SIMカード100が誤挿入されたときも、損傷する恐れが少ないためである。
【0026】
本実施態様におけるコンタクト40の形状は、以上の通りであるが、該コンタクト40の形状は、図5(b)に示されるような形状のコンタクト140であってもよい。コンタクト140とコンタクト40とは、コンタクト40における逆V字形状をなす2つの弾性変形部42、44の間のV字形空間部に金属薄板が存在し、接点部141及び弾性変形部142が連続した、頂角がθである二等辺三角形状に形成されている点で相違する。コンタクト140の接点部141が二等辺三角形の頂点に配置され、左右2つの端子部143、145が二等辺三角形の底辺から延長する線状に延在する点は、コンタクト40と同じである。
【0027】
以上、本発明に係る第1の実施態様としてのコネクタ10の構造についてコンタクト40の変形例140を含めて具体的に説明してきた。ここで、コネクタ10にSIMカード100を挿入する動作及びSIMカード100を誤挿入した場合の本発明に係るコネクタ10の動作について、図3及び4を用いて説明する。
【0028】
図3(a)は、コネクタ10に対して縦長のSIMカード100が正しく横方向に挿入されている途中の状態を示している。図3(b)は、図3(a)のIII−III線(III−III線は、第1の開口部35の左右方向の中心線O−Oに一致する。)に沿って断面された断面図である。
【0029】
図3(a)の状態において、SIMカード100を上方に押し込むことで、SIMカード100がコネクタ10のカード収容空間12内に完全に装着される。この時、複数(本実施態様では6個)のコンタクト40それぞれが対応するSIMカード100の複数のパッドそれぞれに所定の接圧で接触する。SIMカード100の取り出しは、カバー部材20の切欠凹部25を介してSIMカード100に指を当てコネクタ10から引き出せばよい。
【0030】
例えば、図4に示されるように、使用者が、SIMカード100を従来からよく知られている縦方向に挿入するタイプと勘違いして、SIMカード100を誤ってベース部材30の第1の側壁31に沿ってカード収容空間12内に挿入する場合が生じる。この時、SIMカード100を図4のように時計回りに回転させると、上述したように、コンタクトが直線状であって、カード挿入方向に片持ち梁状に底壁31に支持されている場合、SIMカード100の角部101がコンタクトの接点部や弾性変形部に当接する恐れがある。場合によっては、コンタクト100の角部101がコンタクトの下に入り込む恐れもある。そうすると、コンタクト40が座屈させられたり、捻られたりされ、コンタクトを傷め、以後の使用に支障をきたす恐れが生じる。
【0031】
しかしながら、本実施態様におけるコンタクト40は、上述したように、コンタクト40の2つの弾性変形部42、44が接点部41を頂点とする角度θ(または、θ)をなして逆V字形状に形成されている。したがって、図4に示されるように、SIMカード100の角部101が左側の弾性変形部42に当接しても、左側の弾性変形部42は傾斜しているため、SIMカード100の角部101による座屈やねじりなどの変形力が分散する。さらに、SIMカード100の角部101が左側の弾性変形部42に当接した場合、右側の弾性変形部44が左側の弾性変形部42を補強する形で支えているため、SIMカードの回転を抑えることができるとともに、左側の弾性変形部42の変形が小さくて済む。
【0032】
さらに、図4には、SIMカード100の左辺103がコネクタ10のベース部材30の第1の側壁32に対して角度θをなすようにSIMカード100が回転した状態が示されている。図4には、また、SIMカード100の右辺102が、第1の開口部35の最上部に配列されるコンタクト40の左側の弾性変形部42と左側の端子部43との交差部としての左側弾性変形部42の根元42bに当接している状態が示されている。なお、この状態が、SIMカード100をコネクタ10内に誤挿入して該SIMカード100を抜き取る場合に起こり得る、コンタクト40に与える悪影響が最も大きい場合と考えられる。また、このような最悪の場合においても、第2の開口部36に配列される複数のコンタクト40は、SIMカード100の形状及びパッドの配置などを勘案すると、通常、誤挿入されるSIMカード100の下に入り込むので、これらのコンタクト40の損傷は考えられない。
【0033】
上述のSIMカード100がθ回転した状態において、左側の弾性変形部42の根元42bを通る第1の側壁32に平行な直線mを引くと、直線mとSIMカードの右辺102とのなす角はθであることは明白である。また、直線mとコンタクト40の左側の弾性変形部42とのなす角は、θ/2であることも明白である。この時、図4に示されるように、θ≦θ/2(すなわち、2θ≦θ)であれば、SIMカード100の角部101は、まだ、コンタクト40の接点部41や左の弾性変形部42には当接していない。この状態からSIMカード100がさらに時計回りに回転すると、SIMカード100の右辺102が、底壁31の上面とほぼ面一の高さに位置する左側弾性変形部42の根元42b側から接点部41側へ接触していく。それにより、SIMカード100の右辺102は、自由端である接点部41を含めて左側弾性変形部42を下方に向けて徐々に弾性変形させ、これを押し下げる。このため、SIMカード100の角部101は、該左側弾性変形部42及び接点部41に当接し得ないことになる。
【0034】
このことは、θ≧2θとなるようにコンタクト40の頂角θを設定すれば、SIMカード100の角部101がコンタクトの接点部41や弾性変形部42に当接することがないことを意味する。すなわち、本願発明のように逆V字形または二等辺三角形状のコンタクト40の頂角θを設定することで、コンタクト40の座屈やねじりによる損傷を防ぐことが可能となることが理解される。
【0035】
上記第1の実施態様に係るコネクタ10は、以上述べたとおり、三辺に側壁22、23、24を有するカバー部材20及び対応する三辺に側壁32、33、34を有するベース部材30を備えている。しかし、本発明に係るコネクタ10はこれに限られるものではない。図6にコネクタの別の実施態様が示される。
【実施例2】
【0036】
図6に示されるコネクタ110は、カバー部材20及びベース部材30の側壁32、33、34が省略された構造を有している。具体的には、コネクタ110は、ベース部材130は、底壁131部分のみを有し、カバー部材20の天板部分やSIMカード100を案内する側壁部分を、コネクタ110が装着される電子機器側に持たせるようにしたものである。底壁131に形成される第1及び第2の開口部35、36及び第1及び第2の開口部35、36に配列されるコンタクト40は、上記実施態様と同じであってよい。
【符号の説明】
【0037】
10 カード用コネクタ
20 カバー部材
30 ベース部材
31 底壁
40、140 コンタクト
41、141 接点部
42、44、142 弾性変形部
43、45,143、145 端末部
100 SIMカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトを片持ち梁状に支持するベース部材の底壁を含む縦長の集積回路内蔵SIMカードを横向きに挿入するカード用コネクタにおいて、
前記複数のコンタクトは、挿入される集積回路内蔵SIMカードの外部接点に対応して配置され、
前記コンタクトは、前記集積回路内蔵SIMカードの外部接点に接触する接点部、該接点部を弾性的に上下方向に変位させることを可能とする2つの弾性変形部、及び一部が底壁に固定され、前記カード用コネクタが装着される電子機器の外部接点に接続される端子部を有し、
前記2つの弾性変形部は、接点部を頂点とし、頂角θを有する二等辺三角形状をなして連結され、
前記複数のコンタクトそれぞれは、互いに平行に、カード挿入方向に逆V字形に配置されることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
複数のコンタクトを片持ち梁状に支持するベース部材の底壁を含む縦長の集積回路内蔵SIMカードを横向きに挿入するカード用コネクタにおいて、
前記複数のコンタクトは、挿入される集積回路内蔵SIMカードの外部接点に対応して配置され、
前記コンタクトは、前記集積回路内蔵SIMカードの外部接点に接触する接点部、該接点部を弾性的に上下方向に変位させることを可能とする二等辺三角形状の弾性変形部、及び一部が底壁に固定され、前記カード用コネクタが装着される電子機器の外部接点に接続される端子部を有し、
前記二等辺三角形状の弾性変形部は、接点部を頂点とする頂角θを有し
前記複数のコンタクトそれぞれは、互いに平行に、カード挿入方向に逆V字形に配置されることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
前記底壁には、第1の開口および第2の開口が形成され、
各開口には、複数の前記コンタクトが配列されていることを特徴とする請求項1および2記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記第1の開口に配列された前記複数のコンタクトの頂角θと、
前記第2の開口に配列された前記複数のコンタクトの頂角θと、の角度が異なることを特徴とする請求項3記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−161012(P2010−161012A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3578(P2009−3578)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】