説明

カード用コネクタ

【課題】カードが正しく装着されているか否かを検出できて小型薄型化にも好適なカード用コネクタを安価に提供すること。
【解決手段】カード装着部2aが形成されたハウジング2と、ハウジング2に設けられてカード10の接触端子11群に接触可能なコンタクト3群と、カード装着部2aを覆う向きに回転する閉動作と逆向きに回転する開動作とが行えるようにハウジング2に回動可能に取り付けられたカバー8とを備えたコネクタ1であって、コンタクト3群は所定の接触端子11(11a)に接触可能な第1コンタクト31および第2コンタクト32を含み、カード10がカード装着部2aに装着されると、該接触端子11を介して両コンタクト31,32が導通されたことによる信号が第1の外部接続部41から出力される。また、導電性のカバー8を閉じてロック位置に配置させると、カバー8を介して一対の固定接点部61,71が導通されたことによる信号が第2の外部接続部62から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えは携帯電話機等の電子機器に用いられICメモリーカード等のカードが装着されるカード用コネクタに係り、特に、カードの接触端子群に接触可能なコンタクト群が配設されたハウジングにカバーが開閉可能(回動可能)に取り付けられ、このカバーによってカードの脱落を防止できるようにしたカード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のカード用コネクタにおいては、カードが脱落の虞なく正しく装着されているか否かを検出して、カードと外部回路との間で不所望なデータ信号の授受が行われないようにし、もって誤操作に起因するデータ破壊や故障等が起こらないように配慮したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる従来のカード用コネクタでは、絶縁性の合成樹脂材料からなるカバーにカード格納部が形成されており、カバーが開状態のとき、このカード格納部に対してカードを挿抜可能である。また、カバーには、カード格納部にカードが正しく格納されると弾性変形するばね片が付設されている。カバーは一端部がハウジングに軸支されて開閉可能であると共に、閉状態のカバーがハウジングに対してスライド移動可能であり、閉じたカバーを所定位置へスライド移動させることによって該カバーがハウジングにロックされるようになっている。ハウジングには複数のコンタクトが固設されており、これらコンタクトの各接点部は閉状態のカバーによって覆われる位置に露出している。また、ハウジングの一側部には弾性変形可能な第1接点片と第2接点片とが接離可能に並設されている。そして、カードをカバーに挿入した後、カードを格納したままカバーを閉じて一方向へスライド移動させると、カードの片面に配設されている接触端子群がコンタクト群の各接点部に接触して電気的に接続されると共に、カバーの前記ばね片に駆動される第1接点片が第2接点片に接触して、カードが脱落の虞なく正しく装着されていることを示す検出信号が出力されるようになっている。すなわち、かかる従来のカード用コネクタは、カードがカバーに正しく格納され、かつカバーが閉じられて所定位置までスライド移動されないと、ばね片を介して第1接点片を第2接点片に接触させるという一連の動作が正しく行われないため、前記検出信号が出力されないようになっている。したがって、この検出信号が出力されたときだけ、カードと外部回路との間でデータ信号の授受が許可されるようにしておけば、誤操作に起因するデータ破壊や故障等が未然に防止できる。
【特許文献1】特許第3546387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来のカード用コネクタでは、カードをカバーに格納させてから該カバーを閉じてスライド移動させることにより、カードが正しく装着されて外部回路との電気的接続が該コネクタを介して行えるようになるが、近年、携帯電話機等の電子機器において、カードをハウジングに装着してからカバーを閉じて脱落を防止するように構成したものが普及している。かかる構成のカード用コネクタの場合、金属板等からなる安価で薄いカバーを使用できるという利点があるものの、前述した従来のカード用コネクタのようにカードを格納させることで弾性変形するばね片をカバーに設けることができず、誤操作に起因するデータ破壊や故障等を回避するためには、カードが正しく装着されているか否かを検出する新たな機構が必要となる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、カードをハウジングに装着してからカバーを閉じるという構造のもので、カードが正しく装着されているか否かを検出できて小型薄型化にも好適なカード用コネクタを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、接触端子群を有するカードを装着させるためのカード装着部が形成されたハウジングと、このハウジングに設けられて前記接触端子群に接触可能なコンタクト群と、前記カード装着部を覆う向きに回転する閉動作と該カード装着部から離れる向きに回転する開動作とが行えるように前記ハウジングに回動可能に取り付けられたカバーとを備え、前記カードを前記カード装着部に装着することで前記接触端子群に前記コンタクト群を接触させると共に、前記カバーを所定の閉位置に配置させた状態で該カードが収納保持されるようにしたカード用コネクタにおいて、前記コンタクト群が前記接触端子群のうちの1つである所定の前記接触端子に接触可能な第1コンタクトおよび第2コンタクトを含むと共に、前記カバーの少なくとも一部が導電性金属板からなり、かつ、前記第1コンタクトから導出されて外部回路に接続される第1の外部接続部と、前記カバーが前記所定の閉位置に配置されたときに該カバーに接触して導通される固定接点部と、この固定接点部から導出されて外部回路に接続される第2の外部接続部とを備えており、これら第1および第2の外部接続部と固定接点部とが前記ハウジングに設けられているという構成にした。
【0007】
このように構成されたカード用コネクタは、カードをハウジングのカード装着部に装着することによって接触端子群にコンタクト群を接触させることができ、このとき、所定の接触端子に第1および第2コンタクトが接触するため、第1および第2コンタクトが導通されたことによる信号に基づいて、カードがカード装着部に正しく装着されているか否かを検出できる。また、カード装着部に装着されたカードを覆うようにカバーを閉じて所定の閉位置に配置させると、カードが固定接点部に接触して第2の外部接続部と導通されたことによる信号に基づいて、カバーが所定の閉位置に配置されているか否かを検出できる。すなわち、このカード用コネクタは、カードがカード装着部に正しく装着され、かつカバーが所定の閉位置に配置されたときにだけ、第1の外部接続部や第2の外部接続部から所望の検出信号を出力させることができるため、誤操作に起因するデータ破壊や故障等を未然に防止できる。しかも、カバーにカード格納部を設ける必要がないため、金属板等からなる安価で薄いカバーを使用できて小型薄型化が図りやすくなる。
【0008】
上記の構成のカード用コネクタにおいて、第2コンタクトから導出されて接地回路に接続される第1の接地端子部を備えており、この第1の接地端子部がハウジングに設けられていると、カードの接地を行いつつ該カードが正しく装着されているか否かを検出できるため好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、固定接点部が、所定の閉位置に配置されたカバーの2箇所と別々に接触する第1固定接点部と第2固定接点部とからなり、第1固定接点部から第2の外部接続部が導出されていると共に、第2固定接点部から導出されて接地回路に接続される第2の接地端子部を備えており、この第2の接地端子部がハウジングに設けられていると、カバーを接地できるのみならず、ハウジングに計4個の取付端子部(第1および第2の外部接続部と第1および第2の接地端子部)を分散して配設することができるため、カード用コネクタを実装基板上に安定した姿勢で取り付けることができる。
【0010】
例えば、ハウジングの一側部の長手方向両端近傍に第1の外部接続部と第2の外部接続部とを配設すると共に、ハウジングの他側部の長手方向両端近傍に第1の接地端子部と第2の接地端子部とを配設しておけば、4個の取付端子部がバランスよく分散配置されるため、カード用コネクタを実装基板上に極めて安定した姿勢で取り付けることができる。
【0011】
また、上記の構成において、カバーが1枚の導電性金属板を折り曲げて形成されており、このカバーの側部に固定接点部に接離可能な弾性片が延在していると、カバーを所定の閉位置に配置させたときに弾性片を固定接点部に確実に接触させうる簡素な構造が安価に実現できるため好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、カバーが閉動作の完了位置と所定の閉位置との間でハウジングに対してスライド移動可能であると共に、所定の閉位置に存するカバーをハウジングが係止するロック機構を備えていると、このロック機構によってハウジングに装着したカードの脱落を確実に防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカード用コネクタによれば、カードをハウジングのカード装着部に正しく装着すると所定の接触端子に第1および第2コンタクトが接触するため、両コンタクトが導通されたことによる信号に基づいて、カードがカード装着部に正しく装着されているか否かを検出できる。また、カード装着部に装着されたカードを覆うようにカバーを閉じて所定の閉位置に配置させると、カードが固定接点部に接触して第2の外部接続部と導通されたことによる信号に基づいて、カバーが所定の閉位置に配置されているか否かを検出できる。すなわち、このカード用コネクタは、カードがカード装着部に正しく装着され、かつカバーが所定の閉位置に配置されたときにだけ、第1の外部接続部や第2の外部接続部から所望の検出信号を出力させることができるため、誤操作に起因するデータ破壊や故障等を未然に防止できる。しかも、カバーにカード格納部を設ける必要がないため、金属板等からなる安価で薄いカバーを使用できて小型薄型化が図りやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るカード用コネクタ(以下、単に「コネクタ」と称する)のカバーを開いた状態を示す斜視図、図2は図1に示すコネクタの上面図、図3は図1に示すコネクタの底面図、図4は図1に示すコネクタの側面図、図5は図1に示すコネクタの正面図、図6は図1に示すコネクタのカバーを閉じた状態を示す斜視図、図7は図6に示すコネクタのカバーをロック位置までスライド移動させた状態を示す斜視図、図8は図1に示すコネクタのハウジングにカードを装着した状態を示す斜視図、図9は図8に対応する上面図、図10は図8に対応する底面図、図11は図8に対応する正面図、図12は図8に示すコネクタのカバーを閉じてロック位置までスライド移動させた状態を示す斜視図、図13は図12に対応する上面図、図14は図12に対応する底面図、図15は図12に対応する側面図、図16は本実施形態例に係るコネクタのコンタクト群を示す斜視図、図17は図16に示すコンタクト群の上面図、図18は図16に示すコンタクト群の正面図、図19は本実施形態例に係るコネクタに装着されるカードの底面図である。
【0015】
図1〜図5に示すように、本実施形態例に係るコネクタ1は、絶縁性の合成樹脂材料を成形して形成されたハウジング2と、細長い導電性金属板からなりハウジング2に固設された複数のコンタクト3と、コンタクト3群と同じ導電性金属板を打ち抜いて形成されハウジング2に固設された4片のリード板4〜7(図16〜図18参照)と、導電性金属板を折り曲げてフォーミングされたカバー8とによって主に構成されている。なお、コンタクト3群およびリード板4〜7はインサート成形技術によってハウジング2に固設されており、カバー8は一端部がハウジング2に軸支されている。このコネクタ1は図示せぬ電子機器の実装基板に半田付け等によって実装され、図12〜図15に示すようにカード10を装着してカバー8を閉じた状態で使用されるが、図8〜図11に示すようにカバー8を開いてカード10を取り外すこともできる。また、カード10の底面には図19に示すように複数の接触端子11が配設されている。
【0016】
ハウジング2には、略平行に延びて対向する一対の側壁部21,22の間にカード装着部2aが形成されており、このカード装着部2aにカード10が装着される。一方の側壁部22にはカード装着部2aへ向かってせり出す幅広部22dや突起部22eが形成されており、これら幅広部22dや突起部22eによってカード10が位置決めできるようになっている。また、側壁部21,22の外壁面には、第1係止部21a,22aと第2係止部21b,22bと傾斜突条部21c,22cがそれぞれ突設されている。さらに、側壁部21,22の長手方向一端部(後端部)には長孔状の軸孔23が形成されており、この軸孔23にカバー8の支軸81が回動可能かつ該長手方向へスライド移動可能に取り付けられている。
【0017】
コンタクト3は帯状に形成されて一端部に接点部3aを有し、この一端部側が斜め上方へ延びて弾性変形可能となっている。図1に示すようにカード10が装着されていないとき、各コンタクト3の接点部3aはハウジング2のカード装着部2a内に入り込んでいる。これら複数のコンタクト3は、カード10がカード装着部2aに正しく装着されると、各接点部3aが該カード10の対応する接触端子11と弾接するように配列されている。ただし、コンタクト3群のうち隣り合う第1コンタクト31と第2コンタクト32は、同一の接触端子11(図中符号11aで示す接地用接触端子)と弾接するように接点部3aどうしが近接させてある。なお、第1および第2コンタクト31,32を除く残余のコンタクト3は、接点部3a側とは逆側の端部3bが電子機器の実装基板上に搭載されて半田付けされるようになっている。
【0018】
リード板4は一端部が第1コンタクト31と連続しており、他端部には外部回路と接続される第1の外部接続部41が形成されている。この第1の外部接続部41はハウジング2の側壁部21の前端近傍から外方へ突出しており、電子機器の実装基板上に搭載されて半田付けされる取付端子部となる。同様に、リード板5は一端部が第2コンタクト32と連続しており、他端部には接地回路と接続される第1の接地端子部51が形成されている。この第1の接地端子部51はハウジング2の側壁部22の前端近傍から外方へ突出しており、電子機器の実装基板上に搭載されて強固に半田付けされる取付端子部となる。
【0019】
リード板6の一端部には第1固定接点部61が形成されており、リード板6の他端部には外部回路と接続される第2の外部接続部62が形成されている。このリード板6はハウジング2の側壁部21に固設されており、第1の外部接続部41と傾斜突条部21cとの間に第1固定接点部61が露出していると共に、側壁部21の後端近傍から外方へ第2の外部接続部62が突出しており、この第2の外部接続部62が電子機器の実装基板上に搭載されて強固に半田付けされる取付端子部となる。同様に、リード板7の一端部には第2固定接点部71が形成されており、リード板7の他端部には接地回路と接続される第2の接地端子部72が形成されている。このリード板7はハウジング2の側壁部22に固設されており、第1の接地端子部51と傾斜突条部22cとの間に第2固定接点部71が露出していると共に、側壁部22の後端近傍から外方へ第2の接地端子部72が突出しており、この第2の接地端子部72が電子機器の実装基板上に搭載されて強固に半田付けされる取付端子部となる。
【0020】
カバー8は1枚の導電性金属板に打ち抜き加工や折り曲げ加工等を施して形成されており、その支軸81がハウジング2に回動可能に取り付けられているため、カバー8はカード装着部2aを覆う向きに回転する閉動作とカード装着部2aから離れる向きに回転する開動作とが行えるようになっている。また、カバー8は、図6に示す閉動作の完了位置と図7に示す所定の閉位置(ロック位置)との間でハウジング2に対してスライド移動可能であり、閉動作を完了させたカバー8は、その一側部が側壁部21の外側に配置され他側部が側壁部22の外側に配置される。このカバー8の一側部には、第1固定接点部61に接離可能な弾性片82が延在していると共に、第1係止部21aに係脱可能なフック片83と第2係止部21bに係脱可能なフック片84とが略L字状に形成されている。同様に、カバー8の他側部には、第2固定接点部71に接離可能な弾性片85が延在していると共に、第1係止部22aに係脱可能なフック片86と第2係止部22bに係脱可能なフック片87とが略L字状に形成されている。後述するように、カバー8が閉動作を完了させた図6に示す状態において、弾性片82,85は固定接点部61,71と接触しておらず、かつフック片83,86は第1係止部21a,22aに係止されておらず、かつフック片84,87は第2係止部21b,22bに係止されていない。そして、このカバー8を図7に示す所定の閉位置までスライド移動させることによって、弾性片82,85が固定接点部61,71と接触し、かつ第1係止部21a,22aがフック片83,86を係止し、第2係止部21b,22bがフック片84,87を係止するようになっている。つまり、図7に示すカバー8はロック位置に配置されてハウジング2に対し勝手に移動できないようになっている。なお、ハウジング2の第1係止部21a,22aおよび第2係止部21b,22bとカバー8のフック片83,84,86,87は、ロック位置に存するカバー8をハウジング2に係止させるロック機構を構成している。
【0021】
次に、このように構成されたコネクタ1にカード10を装着する際の手順について説明する。まず、図1〜図5に示すように、カバー8を開いてハウジング2のカード装着部2aを露出させた後、図8〜図11に示すように、カード装着部2aにカード10を装着する。このとき、カード10の一隅の切欠き部10aがハウジング2の幅広部22dによって位置決めされると共に、カード10の切欠き部10a近傍の凹部10bがハウジング2の突起部22eによって位置決めされるため、カード装着部2aにカード10を正しく装着することは容易である。そして、カード10が正しく装着されると、その接触端子11群がそれぞれ対応するコンタクト3の接点部3aに接触するため、接触端子11群とコンタクト3群とが電気的に接続される。その結果、所定の接触端子11(接地用接触端子11a)を介して第1コンタクト31と第2コンタクト32とが導通されたことによる信号(これを「第1検出信号」と称する)が第1の外部接続部41から出力され、この第1検出信号の有無に基づいて、カード10がカード装着部2aに正しく装着されているか否かを検出できる。ただし、この状態でカバー8はまだ開いており、弾性片82,85が固定接点部61,71に接触していないため、両固定接点部61,71どうしは非導通状態に保たれている。したがって、両固定接点部61,71がカバー8を介して導通されたことによる信号(これを「第2検出信号」と称する)が第2の外部接続部62から出力されることはない。本実施形態例では第1検出信号と第2検出信号が共に出力されたときに、第1および第2コンタクト31,32を除くコンタクト3群を介して行われるカード10と外部回路との間のデータ信号の授受が許可されるように設定してあるため、この時点ではまだデータ信号の授受は実行されない。
【0022】
こうしてハウジング2のカード装着部2aにカード10を装着したなら、支軸81を中心にカバー8を閉方向に回転させることによってカード装着部2aをカバー8にて覆い、さらにこのカバー8をハウジング2の前端側へスライド移動させることによって、図12〜図15に示すようにカバー8をハウジング2にロックさせる。すなわち、かかるスライド移動によってカバー8の弾性片82,85がそれぞれハウジング2の傾斜突条部21c,22cを乗り越えて固定接点部61,71に弾接すると共に、ハウジング2の第1係止部21a,22aがそれぞれフック片83,86を係止し、かつ第2係止部21b,22bがそれぞれフック片84,87を係止するため、カバー8は図12〜図15に示す所定の閉位置(ロック位置)においてハウジング2に係止されたロック状態となっている。それゆえ、この状態で、ハウジング2に装着されているカード10の脱落はカバー8によって確実に阻止されている。また、ロック状態のカバー8はカード10の上面に当接してコンタクト3群を若干押し撓めているため、コンタクト3群が接触端子11群に弾接して十分な接触圧が得られるようになっている。さらに、カバー8がロック位置に配置されると、弾性片82が第1固定接点部61に弾接し弾性片85が第2固定接点部71に弾接するため、両固定接点部61,71がカバー8を介して導通されたことによる第2検出信号が第2の外部接続部62から出力され、この第2検出信号の有無に基づいて、カバー8が所定の閉位置に配置されているか否かを検出できる。そして、前述したように、第1検出信号と第2検出信号が共に出力された場合には、カード10が脱落の虞なく正しく装着されているものと確認できるため、カード10と外部回路との間のデータ信号の授受が許可されるようになっている。
【0023】
以上説明したように本実施形態例に係るコネクタ1は、カバー8を開いてカード10をハウジング2のカード装着部2aに装着することによって接触端子11群にそれぞれ対応するコンタクト3を接触させることができ、このとき所定の接触端子11(接地用接触端子11a)に第1および第2コンタクト31,32が接触するため、第1および第2コンタクト31,32が導通されたことにより出力される第1検出信号に基づいて、カード10がカード装着部2aに正しく装着されていることを検出できる。つまり、カード10がカード装着部2aに未装着または正しく装着されていないときには、第1および第2コンタクト31,32どうしが短絡されないため第1検出信号は出力されない。また、カード装着部2aに装着されたカード10を覆うようにカバー8を閉じ、このカバー8を所定の閉位置(ロック位置)までスライド移動させると、カバー8の弾性片82,85が固定接点部61,71に接触するため、両固定接点部61,71がカバー8を介して導通されたことにより出力される第2検出信号に基づいて、カバー8がロック位置でハウジング2にロックされていることを検出できる。つまり、カバー8が閉じていないか、または閉じていてもロック位置に配置されていないときには、第1および第2固定接点部61,71どうしが短絡されないため第2検出信号は出力されない。そして、第1検出信号と第2検出信号が共に出力されてカード10が脱落の虞なく正しく装着されていることが確認されたときだけ、カード10と外部回路との間のデータ信号の授受が許可されるようにしてあるため、このコネクタ1は誤操作に起因するデータ破壊や故障等を未然に防止できる。
【0024】
また、このコネクタ1は、カード装着部2aに装着されたカード10の接地用接触端子11aと接触する第2コンタクト32から第1の接地端子部51が導出されており、この第1の接地端子部51が接地回路と接続されるため、カード10の接地を行いつつ、このカード10が正しく装着されているか否かを検出できる。しかも、このコネクタ1は、ロック位置に配置されたカバー8と接触する第2固定接点部71から第2の接地端子部72が導出されており、この第2の接地端子部72が接地回路と接続されるため、カバー8の接地を行いつつ、このカバー8がロック位置に配置されているか否かを検出できる。すなわち、このコネクタ1は、カード10が脱落の虞なく正しく装着されているか否かを検出する機構を利用してカード10とカバー8とが接地できるため、構造を複雑化することなくカード装着状態の検出と接地対策とが行えるようになっている。
【0025】
また、このコネクタ1は、カバー8が1枚の導電性金属板を折り曲げて形成されて両側部に弾性片82,85を有しており、このカバー8を所定の閉位置(ロック位置)にスライド移動させると、弾性片82,85がそれぞれ傾斜突条部21c,22cを乗り越えて固定接点部61,71に弾接するように構成されているため、カバー8をロック位置に配置させた状態で弾性片82,85を固定接点部61,71に確実に接触させることができると共に、カバー8が不用意に逆向きにスライド移動してしまう虞がない。しかも、カード格納部が不要で安価かつ薄いカバー8を使用できるため、このコネクタ1は小型薄型化が図りやすく製造コストも抑制しやすい。
【0026】
また、このコネクタ1は、ハウジング2の一側部の長手方向両端近傍に第1の外部接続部41と第2の外部接続部62とを配設し、ハウジング2の他側部の長手方向両端近傍に第1の接地端子部51と第2の接地端子部72とを配設している。したがって、バランスよく分散配置されたこれら4個の取付端子部(第1および第2の外部接続部41,62と第1および第2の接地端子部51,72)によってハウジング2を実装基板上に極めて安定した姿勢で取り付けることができる。
【0027】
なお、上記の実施形態例では、リード板5とリード板7とが不連続な場合について説明したが、両リード板5,7が連続したものであってもよく、その場合、第2コンタクト32および第1の接地端子部51と第2固定接点部71および第2の接地端子部72とは常時導通されて接地回路に接続される。この場合、カード10がカード装着部2aに装着されると共に、カバー8が所定の閉位置に配置されると、第1の外部接続部41と第2の外部接続部62とが短絡されることになり、この短絡を検出することで、カード10のカード装着部2aへの正しい装着とカバー8の所定の閉位置への配置とを同時に検出することができるものとなる。
【0028】
また、上記の実施形態例では、カバー8に接離可能な第1固定接点部61と第2固定接点部71とを備え、第1固定接点部61から第2の外部接続部62が導出されて第2固定接点部71から第2の接地端子部72が導出されている場合について説明したが、カバー8に常時導通される接地端子部を備えていれば、カバー8が第1固定接点部61のみに接離するという構成にすることも可能である。
【0029】
また、上記の実施形態例では、カバー8が閉動作の完了位置とロック位置との間でハウジング2に対してスライド移動可能な場合について説明したが、閉動作が完了した時点でカバー8がハウジング2にロックされるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態例に係るコネクタのカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコネクタの上面図である。
【図3】図1に示すコネクタの底面図である。
【図4】図1に示すコネクタの側面図である。
【図5】図1に示すコネクタの正面図である。
【図6】図1に示すコネクタのカバーを閉じた状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示すコネクタのカバーをロック位置までスライド移動させた状態を示す斜視図である。
【図8】図1に示すコネクタのハウジングにカードを装着した状態を示す斜視図である。
【図9】図8に対応する上面図である。
【図10】図8に対応する底面図である。
【図11】図8に対応する正面図である。
【図12】図8に示すコネクタのカバーを閉じてロック位置までスライド移動させた状態を示す斜視図である。
【図13】図12に対応する上面図である。
【図14】図12に対応する底面図である。
【図15】図12に対応する側面図である。
【図16】本実施形態例に係るコネクタのコンタクト群を示す斜視図である。
【図17】図16に示すコンタクト群の上面図である。
【図18】図16に示すコンタクト群の正面図である。
【図19】本実施形態例に係るコネクタに装着されるカードの底面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 カード用コネクタ(コネクタ)
2 ハウジング
2a カード装着部
3 コンタクト
3a 接点部
4〜7 リード板
8 カバー
10 カード
11 接触端子
11a 接地用接触端子
21a,22a 第1係止部(ロック機構)
21b,22b 第2係止部(ロック機構)
31 第1コンタクト
32 第2コンタクト
41 第1の外部接続部
51 第1の接地端子部
61 第1固定接点部
62 第2の外部接続部
71 第2固定接点部
72 第2の接地端子部
81 支軸
83,84,86,87 フック片(ロック機構)
82,85 弾性片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触端子群を有するカードを装着させるためのカード装着部が形成されたハウジングと、このハウジングに設けられて前記接触端子群に接触可能なコンタクト群と、前記カード装着部を覆う向きに回転する閉動作と該カード装着部から離れる向きに回転する開動作とが行えるように前記ハウジングに回動可能に取り付けられたカバーとを備え、前記カードを前記カード装着部に装着することで前記接触端子群に前記コンタクト群を接触させると共に、前記カバーを所定の閉位置に配置させた状態で該カードが収納保持されるようにしたカード用コネクタであって、
前記コンタクト群が前記接触端子群のうちの1つである所定の前記接触端子に接触可能な第1コンタクトおよび第2コンタクトを含むと共に、前記カバーの少なくとも一部が導電性金属板からなり、かつ、前記第1コンタクトから導出されて外部回路に接続される第1の外部接続部と、前記カバーが前記所定の閉位置に配置されたときに該カバーに接触して導通される固定接点部と、この固定接点部から導出されて外部回路に接続される第2の外部接続部とを備えており、これら第1および第2の外部接続部と固定接点部とが前記ハウジングに設けられていることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第2コンタクトから導出されて接地回路に接続される第1の接地端子部を備えており、この第1の接地端子部が前記ハウジングに設けられていることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記固定接点部が、前記所定の閉位置に配置された前記カバーの2箇所と別々に接触する第1固定接点部と第2固定接点部とからなり、前記第1固定接点部から前記第2の外部接続部が導出されていると共に、前記第2固定接点部から導出されて接地回路に接続される第2の接地端子部を備えており、この第2の接地端子部が前記ハウジングに設けられていることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記ハウジングの一側部の長手方向両端近傍に前記第1の外部接続部と前記第2の外部接続部とを配設すると共に、前記ハウジングの他側部の長手方向両端近傍に前記第1の接地端子部と前記第2の接地端子部とを配設したことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記カバーが1枚の導電性金属板を折り曲げて形成されており、このカバーの側部に前記固定接点部に接離可能な弾性片が延在していることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、前記カバーが前記閉動作の完了位置と前記所定の閉位置との間で前記ハウジングに対してスライド移動可能であると共に、前記所定の閉位置に存する前記カバーを前記ハウジングが係止するロック機構を備えていることを特徴とするカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−79544(P2010−79544A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246303(P2008−246303)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】