説明

カーペットの接地構造

【課題】車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供する。
【解決手段】本構造は、車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペットの接地構造1であって、カーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8と、シールド層に接触して設けられる導電性部材21、22a,22bと、を有し、導電性部材は、車両ボデー側に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットの接地構造に関し、さらに詳しくは、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車、ハイブリッド車等では、複数の電池セルを積層してなる電池パック等の車両用電池が用いられている。この車両用電池の被覆構造としては、例えば、図18に示すように、車両用電池103を金属製のロアケース111及びアッパーケース112で被覆して電池組立品113をなし、金属製の各ケース111,112で車両用電池103を電磁波シールドする被覆構造101が一般に知られている。ここで、上記電池組立品113を車両の座席下に搭載する場合、車両ボデー102に電池組立品113及び金属製のシートフレーム114をボルト締めし、車両ボデー102にカーペット105をクリップ止めし、シートフレーム114にシートクッション110を装着することが考えられる。そして、電池組立品113を構成する金属製のロアケース111を車両ボデー102にボルト締結して接地することが図られる。
【0003】
また、他の従来の車両用電池の被覆構造として、車両用電池を樹脂製のロアケース及びアッパーケースで被覆して電池組立品をなし、この電池組立品を金属製のカバーで被覆して電磁波シールドするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、金属製のカバーを車両ボデーにボルト締結して接地することが開示されている。
【0004】
しかし、上述の従来の車両用電池の被覆構造では、電磁波シールドのために金属製のアッパーケースやカバーを備える必要があるので、重量が非常に重くなる。また、部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。さらに、金属製のケースやカバーを車両ボデーにボルト締結して接地しているので、ボルト締結箇所を複数設定する必要があり、接地のための部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−294048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層と、該シールド層に接触して設けられる導電性部材と、を有し、前記導電性部材は、前記車両ボデー側に固定されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記シールド層は、前記導電性部材と前記車両ボデー側との間に挟持されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記導電性部材は、前記車両ボデー側に締結されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載において、前記導電性部材は、導電性を有するシートフレームに固定される第1導電性部材を有することを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載において、前記導電性部材は、金属製の前記車両ボデーに固定される第2導電性部材を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーペットの接地構造によると、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層と、シールド層に接触して設けられる導電性部材と、を有し、導電性部材は、車両ボデー側に固定されているので、シールド層により、車両用電池から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、導電性部材を介してシールド層と車両ボデー側とが電気的に導通されて接地される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層を容易且つ確実に接地できるとともに、カーペットを車両ボデー側に対して固定して位置決めすることができる。
また、前記シールド層が、前記導電性部材と前記車両ボデー側との間に挟持されている場合は、車両ボデー側に対するシールド層の接触圧が高められ、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
また、前記導電性部材が、前記車両ボデー側に締結されている場合は、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
また、前記導電性部材が、第1導電性部材を有する場合は、第1導電性部材が導電性を有するシートフレームに固定されることにより接地される。
さらに、前記導電性部材が、第2導電性部材を有する場合は、第2導電性部材が金属製の車両ボデーに固定されることにより接地される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るカーペットの接地構造の斜視図である。
【図2】上記カーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図3】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図4】図3のIV矢視部分の拡大図である。
【図5】図3のV矢視部分の拡大図である。
【図6】図3のVI矢視部分の拡大図である。
【図7】図1のVII−VII線断面図である。
【図8】上記カーペットの成形方法を説明するための説明図である。
【図9】実施例2に係るカーペットの接地構造の斜視図である。
【図10】上記カーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図11】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図12】図11のXII矢視部分の拡大図である。
【図13】実施例3に係るカーペットの接地構造の斜視図である。
【図14】上記カーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図15】その他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図16】更にその他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図17】導電性部材のその他の固定形態を説明するための説明図である。
【図18】従来の車両用電池の被覆構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.カーペットの接地構造
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造は、車両ボデー(2)に搭載された車両用電池(3)を被覆するカーペットの接地構造(1、23、25)であって、カーペット(5)は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層(8)と、シールド層に接触して設けられる導電性部材(21、22a、22b、24、26a、26b)と、を有し、導電性部材は、車両ボデー側に固定されていることを特徴とする(例えば、図2、図10及び図14等参照)。
【0012】
なお、上記「車両ボデー側」としては、例えば、導電性を有するシートフレーム、金属製の車両ボデー等を挙げることができる。このシートフレームは、通常、車両ボデーに固定され、シートクッションを支持する機能を有する。また、上記車両用電池としては、例えば、蓄電池、燃料電池等を挙げることができる。
【0013】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記シールド層は、導電性部材と車両ボデー側との間に挟持されている形態を挙げることができる。この場合、例えば、上記シールド層は、カーペットの裏面側に露出するように設けられ、車両ボデー側に接触していることができる(例えば、図4等参照)。これにより、車両ボデー側に対するシールド層の接触圧を更に高めることができる。また、例えば、上記導電性部材は、長尺状に形成され、その両端側で車両ボデー側に固定されていることができる(例えば、図4等参照)。これにより、車両ボデー側に対するシールド層の接触圧を更に高めることができる。
【0014】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記導電性部材は、車両ボデー側に締結されている形態(例えば、図7及び図17等参照)を挙げることができる。
【0015】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、〔1〕上記導電性部材は、導電性を有するシートフレーム(15)に固定される第1導電性部材(21、24、26a、26b)を有する形態、〔2〕上記導電性部材は、車両ボデー(2)に固定される第2導電性部材(22a、22b)を有する形態等を挙げることができる。上記〔1〕形態では、例えば、シールド層のうちの第1導電性部材と接触する部位はシートフレームに接触していることができる。これにより、シートフレームに対する第1導電性部材の接触圧を更に高めることができる。また、上記〔2〕形態では、例えば、シールド層のうちの第2導電性部材と接触する部位は車両ボデーに接触していることができる。これにより、車両ボデーに対する第2導電性部材の接触圧を更に高めることができる。
【0016】
本実施形態1.に係る車両用電池の被覆構造としては、例えば、上記カーペットは、表皮層(6)と、表皮層の裏面側に積層されるバッキング層(7)と、バッキング層の裏面側に積層される上記シールド層(8)と、シールド層の表面側に接触して設けられる導電性部材(21、22a、22b、24、26a、26b)と、を有している形態(例えば、図4等参照)を挙げることができる。これにより、表皮層、バッキング層、シールド層及び導電性部材の4者が一体化された簡易且つ安価な構成にカーペットを採用できる。
【0017】
上述の形態では、例えば、上記カーペットは、成形型(12a、12b)内に、表皮層になる表皮材(6a)と、バッキング層になるバッキング材(7a)と、導電性部材(21、22a、22b、24、26a、26b)と、シールド層になるシート材(8a)と、をこの順にセットし、これらセット物を、少なくともバッキング材を加熱した状態でプレス成形(圧縮成形)して得られることができる(例えば、図8等参照)。これにより、表示層、バッキング層、シールド層及び導電性部材の4者を強固に一体化できる。
【0018】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記車両ボデー(2)には、車両用電池を被覆する立上げ壁(2a)が形成されている形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、更なる軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0019】
以下、図面を用いて実施例1〜3により本発明を具体的に説明する。
【0020】
<実施例1>
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例1に係るカーペットの接地構造1は、図1〜図3に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0021】
上記車両ボデー2には、車両用電池3の下方に位置するように金属製で縦断面略U字状のロアケース11が配設されている。また、車両ボデー2には、シートクッション10を支持するシートフレーム15が配設されている。このシートフレーム15は、車両前後方向に延びる金属製で略L字状の左右のフレーム16a,16bと、これら左右のフレーム16a,16bの間に架設され且つ車両幅方向に延びる金属製で略棒状の前後のフレーム17a,17bと、を有している。これら左右のフレーム16a,16bのそれぞれは、その一端側が車両ボデー2に固定され、その他端側が車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aの頂上部に固定されている。また、各フレーム16a、16b、17a、17bには、カーペット5を介してシートクッション10を実質的に支持する金属製のクッションプレート18が固定されている。
【0022】
上記カーペット5は、図4〜図6に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、このシールド層の表面側(上面側)に接触して設けられる金属製の第1導電性部材21及び第2導電性部材22a,22bと、を有している。
【0023】
上記表皮層6は、1層又は2層以上の基布にパイル糸をタフティングしてなるタフト布である。また、バッキング層7は、カーペット5を形状保持する機能と、車室外側からの音を遮蔽する機能と、を有している。また、シールド層8は、複数の孔14を有するシート材8aからなっている。このシート材8aは、金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の金属メッシュである。また、シールド層8の表面は、バッキング層7の裏面側から露出している。
【0024】
上記第1導電性部材21は、直線状に形成され、車両幅方向に延びて配置されている。この第1導電性部材21の両端側は、図7に示すように、カーペット5の車両幅方向の末端側において、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の端部に対して突出している。そして、第1導電性部材21の両端部は、クッションプレート18(本発明に係る「車両ボデー側」として例示する。)の端部にボルトで締結されている。ここで、上記シールド層8のうちの第1導電性部材21が接触する部位は、クッションプレート18に比較的強い接触圧で接触している。
【0025】
上記第2導電性部材22a,22bは、直線状に形成され、車両幅方向に延びて配置されている。これら各第2導電性部材22a,22bの両端側は、上記第1導電性部材21と略同様にして、カーペット5の車両幅方向の末端側において、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の端部に対して突出している。そして、第2導電性部材22aの両端部は、フレーム16a,16bの一端側とともに車両ボデー2(本発明に係る「車両ボデー側」として例示する。)にボルトで締結されている(図2参照)。また、第2導電性部材22bの両端部は、車両ボデー2(本発明に係る「車両ボデー側」として例示する。)にボルトで締結されている(図2参照)。ここで、上記シールド層8のうちの第2導電性部材22a,22bが接触する部位は、車両ボデー2に比較的強い接触圧で接触している。
【0026】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の組立方法について説明する。先ず、上記カーペット5は、図8に示すように、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、第1及び第2導電性部材21、22a,22bと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形して得られる。
【0027】
そして、車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図2参照)、並びにシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、第1導電性部材21の両端側をシートフレーム15に締結するとともに、各第2導電性部材22a,22bの両端側を車両ボデー2に締結する。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造1が得られる。
【0028】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図3に示すように、シールド層8により、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面が被覆され、上記ロアケース11により、車両用電池3の下面及び車両幅方向の両側面が被覆され、車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aにより、車両用電池3の車両後方側の後面が被覆されている。よって、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。
【0029】
また、第1導電性部材21の両端側がクッションプレート18に締結され、第1導電性部材21の裏面側のシールド層8がクッションプレート18に接触されるとともに、各第2導電性部材22a,22bの両端側が車両ボデー2に締結され、各第2導電性部材22a,22bの裏面側のシールド層8が車両ボデー2に接触される。その結果、シールド層8がシートフレーム15及び車両ボデー2に電気的に導通される。
【0030】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造1によると、カーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8と、シールド層8に接触して設けられる第1及び第2導電性部材21、22a,22bと、を有し、第1及び第2導電性部材21、22a,22bは、車両ボデー側に固定されているので、シールド層8により、車両用電池3から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、第1及び第2導電性部材21、22a,22bを介してシールド層8と車両ボデー側とが電気的に導通される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層8を容易且つ確実に接地できるとともに、カーペット5を車両ボデー側に対して固定して位置決めすることができる。
【0031】
例えば、従来の車両用電池の被覆構造101(図18参照)では、接地のために、車両ボデー102に対するアッパーケース112のボルト締め5点及びナット締め6点の作業が必要である。これに対して、本実施例のカーペットの接地構造1では、第1及び第2導電性部材21、22a,22bの両端側のボルト締め6点のみの作業でカーペット5も固定できるので、作業時間を大幅に短縮できる。
【0032】
また、本実施例では、シールド層8を、第1導電性部材21とシートフレーム15との間、及び第2導電性部材22a,22bと車両ボデー2との間で挟持するようにしたので、シートフレーム15及び車両ボデー2に対するシールド層8の接触圧が高められ、シールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0033】
また、本実施例では、長尺状の第1導電性部材21の両端側をシートフレーム15に固定するようにしたので、シートフレーム15に対するシールド層8の接触圧を更に高めることができる。さらに、本実施例では、長尺状の第2導電性部材22a,22bの両端側を車両ボデー2に固定するようにしたので、車両ボデー2に対するシールド層8の接触圧を更に高めることができる。
【0034】
また、本実施例では、第1及び第2導電性部材21、22a,22bを締結で固定するようにしたので、シールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0035】
また、本実施例では、第1及び第2導電性部材21、22a,22bを組み合わせて採用したので、第1導電性部材21が金属製のシートフレーム15に固定され、且つ、第2導電性部材22a,22bが金属製の車両ボデー2に固定されることにより接地される。よって、シールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0036】
また、本実施例では、カーペット5を、表皮層6と、バッキング層7と、第1及び第2導電性部材21、22a,22bと、シールド層8と、を有して構成したので、表皮層6、バッキング層7、シールド層8及び導電性部材21、22a,22bの4者が一体化された簡易且つ安価な構成にカーペット5を採用できる。
【0037】
また、本実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、第1及び第2導電性部材21、22a,22bと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形してカーペット5を得るようにしたので、表皮層6、バッキング層7、第1及び第2導電性部材21、22a,22b並びにシールド層8の4者を強固に一体化できる。
【0038】
さらに、本実施例では、車両ボデー2に、車両用電池3を被覆する立上げ壁2aを形成したので、更なる軽量化を図ることができる。
【0039】
<実施例2>
次に、本実施例2に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例2のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0040】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例2に係るカーペットの接地構造23は、図9〜図11に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0041】
上記カーペット5は、図12に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、このシールド層の表面側(上面側)に接触して設けられる金属製の第1導電性部材24と、を有している。
【0042】
上記第1導電性部材24は、直線状に形成され、車両幅方向に延びて配置されている。この第1導電性部材24の両端側は、カーペット5の車両幅方向の末端側において、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の端部に対して突出している。そして、第1導電性部材24の両端部は、クッションプレート18(本発明に係る「車両ボデー側」として例示する。)の端部にボルトで締結されている(図2参照)。ここで、シールド層8のうちの第1導電性部材24が接触する部位は、クッションプレート18に比較的強い接触圧で接触している。
【0043】
(2)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。第1導電性部材24の両端側がクッションプレート18に締結され、第1導電性部材24の裏面側のシールド層8がクッションプレート18に接触される。その結果、シールド層8がシートフレーム15及び車両ボデー2に電気的に導通される。
【0044】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造23によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、単一の第1導電性部材24を用いて容易且つ確実に接地することができる。
【0045】
<実施例3>
次に、本実施例3に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例3のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0046】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例2に係るカーペットの接地構造25は、図13及び図14に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0047】
上記カーペット5は、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、このシールド層の表面側(上面側)に接触して設けられる金属製の左右の第1導電性部材26a,26bと、を有している。
【0048】
上記各第1導電性部材26a,26bは、直線状に形成され、車両前後方向に延びて配置されている。これら各第1導電性部材26a,26bの一端側(車両後方端側)は、カーペット5の車両後方の末端側において、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の端部に対して突出している。そして、第1導電性部材26a,26bの一端側は、フレーム16a,16b(本発明に係る「車両ボデー側」として例示する。)の端部とともに車両ボデー2にネジで締結されている(図2参照)。ここで、シールド層8のうちの第1導電性部材26a,26bが接触する部位は、フレーム16a,16bに比較的強い接触圧で接触している。
【0049】
(2)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造25の作用について説明する。各第1導電性部材26a,26bの一端側がフレーム16a,16bに締結され、各第1導電性部材26a,26bの裏面側のシールド層8がフレーム16a,16bに接触される。その結果、シールド層8がシートフレーム15及び車両ボデー2に電気的に導通される。
【0050】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造25によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、左右の第1導電性部材26a,26bを用いて容易且つ確実に接地することができる。
【0051】
尚、本発明においては、上記実施例1〜3に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1〜3では、金属製の導電性部材21、22a,22b、24、26a,26bを例示したが、これに限定されず、例えば、導電性樹脂からなる導電性部材を採用してもよい。
【0052】
また、上記実施例1〜3では、直線状に形成された導電性部材21、22a,22b、24、26a,26bを例示したが、これに限定されず、例えば、湾曲状、屈曲状等に形成された導電性部材を採用したり、枠状の導電性部材を採用したり、平板状の導電性部材を採用したりしてもよい。
【0053】
また、上記実施例1〜3では、導電性部材21、22a,22b、24、26a,26bと車両ボデー2側とを締結で固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、導電性部材と車両ボデー側とを溶着、接着、クランプ具等で固定するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施例1〜3では、金属製のシートフレーム15を例示したが、これに限定されず、例えば、導電性樹脂からなるシートフレームを採用してもよい。
【0055】
また、上記実施例1〜3では、金属メッシュからなるシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、金属板、金属箔、金属フィルム又は金属コーティング層からなるシールド層8を採用してもよい。また、発泡金属、又は導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などからなるシールド層8を採用してもよい。
【0056】
また、上記実施例1〜3では、タフト布からなる表皮層6を例示したが、これに限定されず、例えば、不織布、織物、編物等からなる表皮層6を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、1層のみからなるバッキング層7を例示したが、これに限定されず、例えば、複数層からなるバッキング層7を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、樹脂製のバッキング層7を例示したが、エラストマー又はゴム等からなるバッキング層7を採用してもよい。
【0057】
なお、上記バッキング層7をなす樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。十分な強度及び柔軟性並びに加工性を有しつつ、優れた遮音性を発揮できる。また、上記バッキング層7をなすエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記バッキング層7をなすゴムとしては、ブダジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
また、上記実施例1〜3では、表皮層6の裏面側にバッキング層7を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、表皮層6の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してバッキング層7を間接的に積層するようにしてもよい。さらに、上記実施例1〜3では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッキング層7の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してシールド層8を間接的に積層するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施例1〜3では、ロアケース11で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆する形態を例示したが、これに限定されず、ロアケース11に替えて又は加えて、カーペット5のシールド層8で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施例では、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8を一体成形してなるカーペット5を例示したが、これに限定されず、例えば、各層を接着剤等で接合してなるカーペットを採用してもよい。
【0061】
また、上記実施例1〜3では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、を別々にセットするようにしたが、これに限定されず、例えば、成型型12a,12b内に、表皮層6の裏面側にバッキング層7を一体成形してなる一体物をセットするようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施例1〜3では、バッキング層7の裏面側に露出するシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、バッキング層7の裏面側に埋設されたシールド層8としてもよい。
【0063】
また、上記実施例1〜3では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、バッキング層7の表面側にシールド層8を配設したり、バッキング層7の表裏方向の中央側にシールド層8を配設したりしてもよい。
【0064】
さらに、上記実施例1〜3では、導電性部材21、22a,22b、24、26a,26bと車両ボデー側(クッションプレート18)とを直接的に接触させて固定(締結)するようにしたが、これに限定されず、例えば、図17に示すように、導電性部材21、22a,22b、24、26a,26bと車両ボデー側とをシールド層8を介して固定(締結)するようにしてもよい。
【0065】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0066】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
車両用電池を被覆するカーペットの接地技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などで使用される車両用電池を被覆するカーペットの接地構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0068】
1,23,25;カーペットの接地構造、2;車両ボデー、3;車両用電池、5;カーペット、8;シールド層、15;シートフレーム、21、24、26a,26b;第1導電性部材、22a,22b;第2導電性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、
前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層と、該シールド層に接触して設けられる導電性部材と、を有し、
前記導電性部材は、前記車両ボデー側に固定されていることを特徴とするカーペットの接地構造。
【請求項2】
前記シールド層は、前記導電性部材と前記車両ボデー側との間に挟持されている請求項1記載のカーペットの接地構造。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記車両ボデー側に締結されている請求項1又は2に記載のカーペットの接地構造。
【請求項4】
前記導電性部材は、導電性を有するシートフレームに固定される第1導電性部材を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカーペットの接地構造。
【請求項5】
前記導電性部材は、金属製の前記車両ボデーに固定される第2導電性部材を有する請求項1乃至4いずれか一項に記載のカーペットの接地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−162157(P2012−162157A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23331(P2011−23331)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】