説明

カーボンナノチューブによる多層導電体

本発明は、電子導電性ポリマーを含有する少なくとも一つの導電性層と接触する少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層を含んでなる電子導電性製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子導電性ポリマー層を含有する少なくとも一つの導電性層と接触する少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層を含んでなる電子導電性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、基本的にグラフェンシートが丸まって中空円筒形に形成された細いチューブであって、六角形と五角形に配列されたsp2混成軌道の炭素原子で構成され、外径は0.4 nm-10 nmである。これらのSWCNTは、各末端が、一般にその直径に適応した大きさの半球形のフラーレン(バッキーボール)でキャップされている。しかし、これらの末端のキャップを適切な処理法で除いて、キャップをはずした細いチューブを残すことができる。SWCNTは、単一の細いチューブとしてまたは一般にロープまたはバンドルと呼称される集合形態で存在できる。これらロープまたはバンドルは、ファンデルワールス相互作用で集合されたいくつかのまたは数百のSWCNTを含んでなり、三角ラチスを形成し、そのチューブ間の間隔は約3-4Åである。SWCNTのロープは、SWCNTの会合したバンドルで構成されている。
【0003】
SWCNTは、その固有の特性によって、多くの用途に使うのに魅力的になっている。SWCNTは、高い電子導電性(例えば金属にような導電性)、高い熱伝導性、高いモジュラスと引張強さ、高いアスペクト比およびその外の独特の特性を有している。さらに、SWCNTは、その炭素原子の幾何学的配列およびSWCNTの物理的寸法によって、金属性、半金属性または半導電性になる。単層カーボンナノチューブの大きさおよびコンホメーションを特定するため、以下に述べるシステムが開発されており、現在利用されている。SWCNTは、インデックス(n,m)で表され、そのnとmは、六方晶系グラファイトの単一ストリップが円筒形に丸められるときその端縁がシームレスに接合するように、そのストリップをカットする方式を示す整数である。例えば、n=mで(n,n)の場合、生成するチューブは「アーム-チェア」型または(n,n)型と呼ばれるが、これはそのチューブを、そのチューブの軸線に垂直に切断すると六角形の側部だけが露出し、チューブ端縁の周囲のパターンが、n回繰り返されるアームチェアの肘掛と座部に似ているからである。m=0の場合、生成するチューブは「ジグザク」型または(n,0)型と呼称されるが、これはそのチューブをチューブ軸線に垂直に切断すると、端縁がジグザグパターンになっているからである。n≠mでかつm≠0の場合は、生成するチューブはキラリティを有している。電子特性はそのコンフォメーションで決まり、例えばアームチェア型チューブは金属性であり極めて高い導電性を有している。その外の型のチューブはそのコンフォメーションによって半金属または半導電体である。SWCNTは、そのキラリティに関係なく極めて高い熱伝導率と引張強さを有している。金属型(約4.7 eV)および半導電体型(約5.1 eV)のSWCNTの仕事関数は異なっている。
【0004】
他のタイプのカーボン同素体(例えばグラファイト、ダイヤモンド)と同様に、これらのSWCNTは、扱いにくく、大部分の溶媒に(有機溶媒にも水性溶媒にも)事実上、溶解しない。したがって、SWCNTは各種用途向けに加工することが極めて困難である。SWCNTを各種溶媒に溶解可能にするいくつかの方法が利用されている。第一の方法は、SWCNTの末端を、親水性または疎水性の部分で共有結合的に官能基化する方法である。第二の方法は、高レベルの界面活性剤および/または分散剤(小分子または高分子)を加えてSWCNTの可溶化を助ける方法である。
【0005】
Lavinは、米国特許第6,426,134号で、SWCNTを使ってポリマーコンポジットを製造する方法を開示している。この方法は、SWCNTの少なくとも一方の末端が、線状のまたは分枝したポリアミド、ポリエステル、ポリイミドまたはポリウレタンから選択されるポリマーに化学結合しているSWCNT/ポリマーコンポジットを溶融押出しする方法を提供している。この方法は、溶媒ベースの加工を行う機会を与えずに、パターニングまたは機器製造を行う機会を制限する熔融押出に限定されている。上記化学的に結合したポリマーは一般に高い分子量を有し、SWCNTの周りに巻きついてチューブとチューブの接触を妨げることによって、SWCNTのいくつかの材料特性(例えば電子輸送性または熱輸送性)を損なうことがある。
【0006】
Connellらは、米国特許願公開第2003/0158323 A1号に、電子導電性で透明なポリマー/SWCNTコンポジットの製造方法を記述している。ポリマー(ポリイミド、コポリイミド、ポリアミノ酸、ポリアリーレンエーテル、ポリメチルメタクリレート)およびSWCNTもしくはMWCNTを有機溶媒(DMF、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン)中で混合し流延して、導電率が10-5-10-12の範囲内で、各種の可視スペクトル透過率を有するフィルムを作製している。さらに、生成したポリマーのモノマーを、適当な溶媒中のSWCNTと混合し、これらSWCNTの存在下重合させて、各種質量比のコンポジットを得ることができる。これらポリマーコンポジットで達成される導電率は、数桁も低いので電子導電体またはEMIシールドとして大部分の電子機器に利用するのに最適ではない。さらに、使用される有機溶媒は、有毒でかつ高価なので処理工程で問題を起こす。その上、使用されるポリマーまたは重合されたポリマーは導電性でないので、チューブとチューブの接触を妨げてコンポジットの固有抵抗を増大させる。
【0007】
Kuperらは、国際特許願公開第WO 03/060941 A2号に、カーボンナノチューブを懸濁させる組成物を開示している。その組成物は、液体とSWCNTまたはMWCNTおよび適切な界面活性剤(セチルトリエチルアンモニウムブロミド/クロリド/ヨージド)で構成されている。その実施例に提供された界面活性剤対SWCNTの質量比は、1.4-5.2の範囲内である。この方法は、SWCNTを可溶化するのに極めて多量の界面活性剤が必要なので問題がある。界面活性剤は絶縁性であるからこの組成物から堆積されるフィルムの導電性を阻害する。界面活性剤はフィルムから洗い落とすことができるが、このステップは複雑さが加わり加工効率を低下させる。さらに、かような組成物から堆積されたフィルムに形成された構造からみて、すべての界面活性剤を取り除くことは非常に困難であろう。
【0008】
Papadaopoulosらは、米国特許第5,762,162号に、カーボンナノファイバーが含有され主として帯電防止材料として使用されている画像形成要素を記述している。この材料は、現在の多くの電子装置、特にディスプレイに必要な高透明性でかつ高導電性(低いシート抵抗、Rs)の層を提供できない。
【0009】
Smalleyらは、米国特許第6,645,455号に、各種溶媒中で溶媒和しやすくするためSWCNTを化学的に誘導体化する方法を開示している。主として、各種の誘導体基(アルキル連鎖基類、アシル基類、チオール基類、アミノ基類、アリール基類など)がSWCNTの末端に付加されている。SWCNTの側壁は主としてフッ素基で官能基化されてフッ素化SWCNTが得られる。かような「フルオロチューブ」の2-プロパノール中での溶解限度は、約0.1 mg/mLであり、および水中または水/アセトン混合物中の溶解度は事実上ゼロである。このフッ素化SWCNTはさらに化学反応にかけてメチル化SWCNTが得られたが、これらのチューブはクロロホルムにわずかに溶解するが他の溶媒には溶解しない。このような低濃度は、大量生産を行うのに有用な大部分の堆積技術に対して非実用的で使用できない。さらに、かような高い液体負荷は余分の乾燥を考慮する必要があり、過剰な溶媒による内部混合によってパターンニングされた画像が破壊されることがある。その上、この方法は、各種の官能基化基(アシル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン基、アルキル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基)によって細いチューブの末端を官能基化することを開示しているが、この末端官能基化だけでは、溶媒和によって実用的な分散液を製造するのに十分でない。さらに、側壁の官能基化がフッ素だけで行われその結果アルコールに対する限られた溶解性が付与されるが、製造と製品の加工が一層困難になることがある。その上に、そのフッ素化SWCNTは、フッ素化されているので絶縁体であるから、電子機器に対して特に電子導電体として役に立たない。さらに、SWCNTの末端部分にこれら官能基を付加するのに必要な化学的変換を行うには、追加の加工ステップおよび危険でかつ高価な化学薬剤が必要である。
【0010】
Smalleyらは、米国特許第6,683,783号に、SWCNT材料を精製して、長さが5-500 nmのSWCNTを得る方法を開示している。この特許には、水中に0.1 mg/mLのSWCNTを分散させるために0.5質量%の界面活性剤Triton X-100を使用する配合が開示されている。かような低濃度は、大量生産を行うのに有用な大部分の堆積技術に対して非実用的で使用できない。さらに、かような高い液体負荷は余分の乾燥を考慮する必要があり、過剰な溶媒による内部混合によってパターニングされた画像が破壊されることがある。その上、この方法は、各種の官能基化基(アシル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン基、アルキル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基)によって細いチューブ末端を官能基化することを開示しているが、この末端官能基化だけでは、溶媒和によって実用的な分散液を製造するのに十分でない。さらに、SWCNTの末端部分にこれら官能基を付加するのに必要な化学的変換を行うには、追加の加工ステップおよび危険でかつ高価な化学薬剤が必要である。またこの特許は、単層カーボン分子を少なくとも99質量%含有する組成物を開示しているが、この組成物はそのSWCNTに実施できる官能基化の程度が明らかに限定されるので、その溶媒和性のレベルと加工性が制限される。
【0011】
Rinzlerらは、国際特許願公開第WO2004/009884 A1号に、200オーム/スケアおよび波長が3μmの光の少なくとも30%の透過率を達成するように、多孔質膜上にSWCNTの被膜を形成する方法を開示している。この方法は不利である。というのは、多数の1ミクロン以下の細孔による大容積の空隙を有する多孔質膜(例えばポリカーボネートまたは混合セルロースエステル)を基板として必要とし、この膜は、前記細孔によって相当な量のSWCNT分散液を失って相当な量の材料を浪費するからである。またかような膜は、ディスプレイなどの多くの電子機器に必要な光学的透明性を有していないであろう。さらに、この膜は、かようなシステムの加工性を厳しく制限しSWCNT溶液をロール-ロールコーティングで塗布することが不可能になる真空濾過システム内で硬化される。その上、SWCNTの堆積させるのに使用される分散液の質量%は、水溶液中0.005 mg/mLであった。このような質量%は、かように液体負荷が高いため、ほとんどのコーティングシステムと堆積システムでは非実用的でかつ使用できない。かように液体負荷が高いと、溶媒が拡散して画像がにじみ破壊するので、パターンニングされた画像を作製することは事実上不可能になる。
【0012】
Blancher-Fincherらは、国際特許願公開第WO02/080195 A1号と米国特許願公開第2004/0065970 A1号に、ポリアニリン(PANI)およびSWCNTもしくはMWCNTで構成された高導電性組成物ならびにかような組成物をドナー要素からレシーバー基板に堆積させる方法を例証している。エメラルジンポリアニリンの窒素ベース塩誘導体を、有機溶媒(トルエン、キシレン、turpinol、芳香族溶媒)中のSWCNTと混合しキャストして導電率値が62 S/cm(PANI中1質量%のSWCNT)および44 S/cm(PANI中2質量%のSWCNT)の堆積を製造している。あるいは、これらの堆積は、物質移動システムに適した多層ドナー構造の部分として製造することができる。上記PANI/SWCNTコンポジットは、ドナーシートから適切なレシーバー基板へ、画像様形態で転写される。PANIは非常に着色した導電性ポリマーなので透明性が不十分でしかも着色した導電性コンポジットが生成するから、ディスプレイなどの高い透明性と導電性を要する用途には不適である。さらに、その導電率値は多くの電子装置の用途には不適である。その上、これら組成物は有機溶媒で製造されるので、健康と安全を確保するため特別の取扱いが必要になって製造が困難になりかつコスト高になる。
【0013】
Hsuは、国際特許願公開第WO 2004/027196 A1号に、電子導電性有機ポリマー/ナノ粒子コンポジット用の組成物を開示している。ポリアニリン(Ormecon)またはPEDT(Baytron P)が、モリブデンナノワイヤまたはカーボンナノチュ−ブ(直径8 mm、長さ20μm、60 S/cm)と混合される。この発明に開示されている組成物は導電率が下限に近いので不利である。
【0014】
Artherらは、国際特許願公開第WO 03/099709 A2号に、カーボンナチューブのコーティングをパターンニングする方法を開示している。イソプロピルアルコール(IPA)および水(粘度調整剤を含有させてもよい)中にSWCNTを分散させた希分散液(10-100 ppm)を、基板上にスプレイしてコートさせる。SWCNTをコートした後、結合剤を画像様にプリントして硬化させる。あるいは、標準の写真平版法を利用し、感光性結合剤を使って画像を生成させることができる。結合剤で基板に保持されない材料は洗浄することによって除去される。イソプロピルアルコール(IPA)および水(粘度調整剤を含有している)中にSWCNTを分散させた希分散液(10-100 ppm)を、基板上にグラビアコートさせる。イソプロピルアルコール(IPA)および水(粘度調整剤を含有していてもよい)の中にSWCNTを分散させた希分散液(10-100 ppm)を、基板上にスプレイしてコートさせる。次いで、SWCNTの電子特性を有意に変えるため、そのコートされた被膜を、マスクを通じて高強度の光源に暴露する。このステップに続いて結合剤をコートする。これらの方法で使用する分散液の濃度では、直接溶着法(インクジェット法など)によって、画像を生成させることは非常に困難になる。その上に、固形分の少ない分散液であるため溶媒負荷が高いので、過剰な溶媒の処理は長時間かかりかつ困難である。さらに、これらのパターニング法は、減法混色法であるから、追加の除去ステップによって不必要にSWCNT材料を浪費してコストを高めかつ処理時間が長くなる。この出願は、導電性組成物を作製しその組成物からコーティングを製造する方法を開示しているが、満足すべき方法または満足すべき方法を実行するための組成物を教示していない。
【0015】
インジウム・スズ酸化物(ITO)、アンチモンをドープされた酸化スズおよびスズ酸カドミウム(カドミウム・スズ酸化物)などの金属酸化物の透明な電子導電性層(TCL)は、液晶ディスプレイ装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置、光電池、固体撮像素子およびエレクトロクロミックウインドウなどの電気光学的ディスプレイ装置を製造するのにまたは電磁干渉(EMI)シールディングなどの前記装置の部品として、通常使用されている。またこれらは、抵抗タッチスクリ−ンにも使用されている。
【0016】
フラットパネルディスプレイなどの装置は、一般に、インジウム・スズ酸化物(ITO)の層を透明電極として備えた基板を有している。ITOは、真空スパッタリング法でコートされるが、この方法は基板を250℃まで高温にする必要があるので一般にガラス製基板が使用される。その製造法がコスト高であること、およびそのガラス製基板のみならず無機ITO層が脆いためかような電極の可撓性が低いことから、可能性のある用途の範囲が限定される。したがって、可撓性基板として可塑性樹脂をおよび電極として有機電子導電性ポリマー層を有する全有機装置を製造することに関心が高まっている。かようなプラスチック製電子機器は、新しい特性を有する低コストの装置を提供する。可撓性プラスチック基板には、連続的なホッパー法またはローラーコーティング法(スパッタリング法などのバッチ法と比べて)によって電子導電性ポリマー層を設けることができ、その生成する有機電極によって、より可撓性で低コスト低質量の電子装置を、「ロール-ロール(roll to roll)」法で製造できる。
【0017】
本質的に導電性のポリマーが、電子導電性であるため、最近、各種産業界で注目されている。これらポリマーの多くは、著しく着色しているのでTCLに使用するには余り適していないが、これら本質的に導電性のポリマー類のいくつか、例えば置換または未置換のピロール含有ポリマー(米国特許第5,665,498号および同第5,674,654号に挙げられているような)、置換または未置換のチオフェン含有ポリマー(米国特許第5,300,575号、同弟5,312,681号、同第5,354,613号、同第5,370,981号、同第5,372,924号、同第5,391,472号、同第5,403,467号、同第5,443,944号、同第5,575,898号、同第4,987,042号および同第4,731,408号に挙げられているような)ならびに置換または未置換のアニリン含有ポリマー(米国特許第5,716,550号、同第5,093,439号および同第4,070,189号に挙げられているような)は、少なくとも中程度の被覆度にて薄層でコートした場合、透明でありかつ著しく着色してはいない。これらポリマーは、イオン導電性ではなくて電子導電性であるから、湿度が低くても導電性である。
【0018】
ヨーロッパ特許願公開第A-440 957号には、水性混合物中にて、ドーピング剤としてポリアニオンの存在下酸化重合法でポリチオフェンを製造する方法が記述されている。ヨーロッパ特許願公開第A-686 662号には、水性コーティング溶液からコートされる導電性が高いポリチオフェンの層が、ジ-もしくはポリヒドロキシ酸および/またはカルボン酸、アミドまたはラクタムの基を含有する化合物を、ポリチオフェンのコーティング溶液に添加することによって製造できることを開示している。有機電子導電性ポリマーのコート層は、別の方法を利用してパターンニングして電極アレイを作製できる。公知のウエットエッチィングマイクロリソグラフィ法が、国際特許願公開第WO97/18944号および米国特許第5,976,274号に開示され、この方法では、有機電子導電性ポリマーのコート層の頂部にポジ型またはネガ型のフォトレジストを塗布し、次いでそのフォトレジストを紫外線に選択的に暴露するステップの後、そのフォトレジストを現像し、その電子導電性ポリマー層をエッチングし、最後に現像されなかったフォトレジストを除いてパターンが形成された層が得られる。米国特許第5,561,030号では、パターンを、まだ導電性でないプレポリマーの連続層中に形成させ、次いでマスクを洗い流した後、残っているプレポリマーを酸化反応で導電性にすることを除いて、類似の方法を使ってパターンを形成させている。かような従来のリソグラフィ法を必要とする上記方法は、多くのステップを要しかつ危険な化学薬剤を使う必要があるので面倒である。
【0019】
ヨーロッパ特許願公開第A-615 256号には、3,4-エチレンジオキシチオフェンのモノマー、酸化剤および塩基を含有する組成物をコートし乾燥し、その乾燥された層を、マスクを通して紫外線に暴露し次いで加熱することからなる基板に導電性ポリマーのパターンを形成させる方法が記述されている。そのコーティングの紫外線に暴露された領域は非導電性ポリマーを含み、そして暴露されていない領域は導電性ポリマーを含んでいる。この方法によって導電性ポリマーのパタ−ンを形成させるのに、別個のフォトレジスト層のコーティングとパターンニングする必要はない。
【0020】
米国特許第6,045,977号には、光塩基発生剤を含有する導電性ポリアニリン層をパターニングする方法が記述されている。このような層を紫外線に暴露すると、暴露された領域に導電性を低下させる塩基が生成する。
【0021】
ヨーロッパ特許願公開第A-1 054 414号には、ClO-、BrO-、MnO4-、Cr2O7-2、S282-2およびH2O2からなる群から選択された酸化剤を含有するプリンティング溶液を使って、前記導電性ポリマー層上に電極パターンをプリントすることによって、導電性ポリマー層をパターニングする方法が記述されている。前記導電性層の酸化剤溶液に暴露された領域は非導電性になる。
【0022】
Research Disclosure,November 1998,page 1473(disclosure no.41548)には、選択された領域を、レーザー光線で、基板から除く光剥離法を含む、導電性ポリマーにパターンを形成させる各種の方法が記述されている。かような光剥離法は、通常の乾燥1ステップ法であるが、砕片が発生するので湿式洗浄ステップが必要になりかつ光学機器およびレーザー装置の機構を汚染することがある。また電子導電性ポリマーを除いて電極のパターンを形成させる先行技術の方法は、パターニングされた表面の電子導電性領域と非導電性領域の間に光学濃度の差を誘発するが、これは防止しなければならない。
【0023】
レーザーで画像様加熱を行うことによって、電子導電性の有機ポリマー層のパターニングを行う方法が、ヨーロッパ特許願公開第1 079 397 A1号に開示されている。この方法は、前記層を実質的に剥離または破壊せずに抵抗率を約1/10-1/1000まで低下させる。
【0024】
ディスプレイ関連装置に電子導電性ポリマーを利用することは、過去に予想されている。ヨーロッパ特許願第9910201号には、抵抗型タッチスクリーンに使用する、光透過性の導電性ポリマーコーティングを有する光透過性基板が記述されている。米国特許第5,738,934号には、導電性ポリマーのコーティングを有するタッチスクリーンのカバーシートが記述されている。
【0025】
米国特許第5,828,432号と同第5,976,284号には、液晶ディスプレイ装置に利用される導電性ポリマー層が記載されている。実施例の導電性層は、導電性は高いが一般に透明度は60%以下である。
【0026】
ポリマー分散液晶を含む、ディスプレイの透明なフィールド拡大層としてポリチオフェンを使用することが、米国特許第6,639,637号と同第6,707,517号に開示されている。しかしながら、この特許のポリチオフェン層は事実上、非導電性である。
【0027】
薄いフィルムの無機発光ダイオードを製造するのに、Agfaから入手できるOrgaconなど市販のポリチオフェンをコートしたシートを使うことが、米国特許第6,737,293号に示唆されている。しかし、かような製品の透明度対表面抵抗率は、いくつかの用途では十分でない。
【0028】
液晶ディスプレイの面内切替モードのフリンジフィールドを防止するため高分子導電性フィルムを使用することが、米国特許第5,959,708号に提案されている。しかし、これらフィルムに対する導電性の必要性は余り厳しくないようである。例えば、一実施態様(コラム5、6-10行)では、その高分子フィルムは全く非導電性である。その上、米国特許第5,959,708号は、これらフィルムの透過特性については明記していない。
【0029】
ポリチオフェンと酸化ケイ素のコンポジットを使って陰極線管用のガラス製基板に透明コーティングをもうけることが、米国特許第6,404,120号に開示されている。しかし、この方法は、エチレンジオキシチオフェンのモノマーをガラス上で現場重合させ、高温でベーキングを行い次いでオルトケイ酸テトラエチルで洗浄することを示唆している。このような複雑な方法は、広幅の可撓性プラスティック基板をロール-ロール生産するのに実行することは難しい。
【0030】
現場重合させたポリチフェンとポリピロールを、ITOの代わりに導電性フィルムとして使用することが米国特許願公開第2003/0008135 A1号に提案されている。先に述べたように、かような方法は、導電性コーティングをロール-ロール生産するのに実施することが困難である。この特許願には、粗悪なコーティング特性をもたらすポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の分散液を使った比較例が記載されている。
【0031】
ポリチオフェンを組み入れるために、ジヒドロキシ基もしくはポリヒドロキシ基および/またはカルボキシル基またはアミド基またはラクタム基を有する有機化合物などの導電性増強剤を添加する方法が、米国特許第5,766,515号に示唆されている。最近、米国特許願公開第2003/0193042 A1号に、ポリチオフェンの導電性を、かなりの量のフェノールなどの有機化合物を添加することによってさらに改善する方法が特許請求されている。しかし健康と安全に対する懸念から、このような危険な化合物を、一般的なウエブ製造とコーティングのサイトに導入するには特別の予防策をとる必要があるので、最終製品のコストが増大するであろう。
【0032】
Synthetic Metals,vol.142(2004),p187-193に発表されたB.D.Martin, N.Nikolov, S.K. Pollack,A.Saprigin,R.Shashidhar,F.ZhangおよびP.A.Heineyの表題が「Hydroxylated secondary dopants for surface resistance enhancement in transparent poly(3,4- ethylenedioxythiophene)-poly(styrenesulfonate)thin films」の最近の別の刊行物に、少量のヒドロキシル化二次ドーパントを添加すると、ポリチオフェンフィルムの表面抵抗を、フィルムの透明性を下げることなく大きく低下させることができたと記述されている。
【0033】
抵抗タッチスクリーンなどの装置も、透明の導電体を備えた基板を使用している。一般に、基板は硬質ガラス製で、ITOのコーティングが透明な導電体を形成する。しかしながら、本願では、透明な導電体でコートされた可撓性透明カバーシートが基板に重ねられ、スペーサードットによって基板から隔てられている。その可撓性カバーシートを、操作中、スタイラスまたは指で変形させて、前記二つの透明導電性層を接触させる。ITOも通常、可撓性透明カバーシートの上の透明導電体として利用される。しかしITOは、応力によって割れてその導電性が変化する傾向がある。本願では、より可撓性の導電性ポリマーも検討したが、これらの導電性ポリマーはITOより柔軟であるから、繰り返し接触させると分解する傾向がある。
【0034】
上記のように、当該技術は、ディスプレイやタッチスクリーンに組み込むことができる多種類の電子導電性TCL組成物を開示している。過去に、電子導電性ポリマーをディスプレイやタッチスクリーンの関連する装置に利用しようとされたが、現在のディスプレイ装置またはタッチスクリーンが要求する接触の繰返しのもとでの高い透明性、低い表面電気抵抗、可撓性および堅牢性という厳しい要件は、電子導電性ポリマーによって達成することは極めて困難である。したがって、当該技術分野では、一般的な製造条件下、環境からみて望ましい成分を使って、多種類の基板にロール-ロール法でコートできる透明導電体に対する重要な要望が依然として存在している。TCL層は、優れた電極性能を提供することに加えて、透明性が高くなければならず、パターニング可能でなければならず、湿度の変化の作用に耐えねばならずかつ妥当なコストで生産可能でなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明が関連している先行技術のフィルムより有効に、多様な商業的要求を満たす改良された電子導電性でパターニング可能で好ましくはコートすることができる導電性フィルムを提供することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、電子導電性ポリマーを含有する少なくとも一つの導電性層と接触した少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層を含む電子導電性製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明には多数の利点がある。本発明は、電子導電性ポリマー層および高導電性でかつ機械的に安定なカーボンナノチューブの層の両者を利用することによって電子導電性製品の導電性と堅牢性を改良する簡単な方法を提供するものである。その上、本発明は透明性が高い導電性製品を提供するものである。これらの利点およびそのほかの利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1bを参照すれば、本発明の一実施態様の電子導電性製品299は、基板300の上に形成できる電子導電性ポリマーを含む導電性層302を備えている。カーボンナノチューブの層304が電子導電性ポリマー層302を覆って形成されている。
【0039】
図1aは代わりの電子導電性製品298を示し、この製品は基板300の上に形成できるカーボンナノチューブの層304を備えている。電子導電性ポリマーを含有する導電性層302がカーボンナノチューブの層304を覆って形成されている。
【0040】
本発明の導電性層用に適切なカーボンナノチューブは、当該技術分野で公知のどの方法(レーザー蒸発法、CVD法、アーク放電法)でも製造できる。そのカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブでない炭素質不純物(グラファイト、無定形炭素、ダイヤモンド、非管形のフラーレン類、多層カーボンナノチューブ類)または金属の不純物が最小限であるか全く含有していないほうが好ましい。金属の不純物と炭素質の不純物のレベルが低下すると透明性が有意に増大することが分かっている。層の均一性、表面の粗さおよび粒子の減少で明示されるような導電性層被膜の品質も、金属と炭素質の不純物の量が減少することによって改善される。
【0041】
高い電子導電性を達成するためには、金属性SWCNTが最も好ましいタイプのカーボンナノチューブであるが、半金属性SWCNTと半導電体のSWCNTも使用できる。純粋のSWCNTとは、そのSWCNTの表面が、合成操作、酸による不純物の洗浄、アニーリングまたは指示された官能基化によって共有結合で官能基化された材料を含有していないことを意味する。しかし、本発明の目的を達成するには、SWCNTは官能基化されることが好ましい。好ましい官能基は、カルボン酸、カルボキシレートアニオン(カルボン酸塩)、ヒドロキシル、硫黄含有基、カルボニル、ホスフェート、ニトレートまたはこれら親水性種の組合せから選択される親水性種の基である。いくつかの用途では、ポリマー、小分子またはその組合せなどの他のタイプの官能基化が必要である。例えば、かような官能基化によって、特定のポリマーマトリックス中のSWCNTの適合性を改善できる。
【0042】
ここで図2に移ると、開放末端または閉鎖末端を有する純粋のSWCNTが示されている。純粋なSWCNTは、ほとんどの溶媒中で、特に水性溶媒中では、高レベルの分散剤を使用しなければ、基本的に加工しにくい。したがって、純SWCNT類と水だけを使って水性コーティング組成物を製造することは不可能である。図3は、共有結合で官能基化されたSWCNTの基本構造を例示している。図3中のXは、先に列挙した親水性種のなかから選択される。そのXは、SWCNTの内側表面もしくは外表面、開放末端もしくは閉鎖末端または側壁のどの点に位置していてもよいことは注目すべきである。Xは、潜在的に最も有効に、外表面のいたるところに均一に分布されていることが好ましい。
【0043】
最も好ましい共有結合による表面の官能基化は、カルボン酸またはカルボン酸塩またはその混合物である(以後カルボン酸とのみ呼称する)。カルボン酸ベースの官能基化の場合、SWCNTの官能基化された炭素のレベルは0.5-100原子百分率であり、1原子百分率の官能基化炭素とは、SWCNT中の炭素100個ごとに1個の炭素に官能基が共有結合されていることを意味する。その官能基化された炭素は、ナノチューブのどこにでも(開放末端または閉鎖末端、内側または外側の側壁)存在している。すでに述べたように、官能基化は、SWCNTの外表面の官能基化が好ましい。官能基化の百分率の範囲は、より好ましくは0.5-50原子百分率であり、最も好ましくは0.5-5原子百分率である。これらの基によるこれらの原子百分率の範囲内の官能基化によって、導電性が高くかつ透明なフィルムを通常のコーティング法で製造するのに必要な固形分配合量の安定な分散液を製造できる。この方法によれば、実質的に水性分散液の非常に有効な分散液を得ることができかつ分散助剤を必要としない。その上に、最も有効なレベルの官能基化によって、そのカーボンナノチューブの電子特性を有意に変化させることなく、所望の分散液が提供される。透明性とは、バルク透過率が60%より大きい導電性層と定義する。この透明性は厚さが1μm未満の薄いコーティングを製造することによって達成できる。前記官能基化は、多くの経路で実施できる。一般に、原料(未官能基化)SWCNTを、強力な酸化剤(塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、発煙硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、クロロスルホン酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、氷酢酸、一塩基性有機酸、二塩基性有機酸、過マンガン酸カリウム,過硫酸塩、セラート(cerate)、臭素酸塩、過酸化水素、二クロム酸塩またはこれらの混合物)の浴に添加する。硫酸、硝酸、過マンガン酸塩およびクロロスルホン酸類が、その酸化と官能基化の効力から見て好ましい。SWCNTと強力な酸化剤のこの混合物を、一般に20-120℃の温度で適当に撹拌しながら、1 時間-数日間の処理期間、還流する。この工程の最後に、原料のSWCNTは官能基化されたSWCNTになる。残留酸化剤を、分離法(濾過洗浄法、遠心分離法、クロスフロー濾過法)で除き、次いで適切に加熱乾燥した後、官能基化SWCNT(主としてカルボン酸の官能基)の粉末が残留する。
【0044】
分散液のpHとコーティングの組成が重要である。pHが塩基性になればなるほど(そのカルボン酸基のpKaを超えて)、そのカルボン酸はイオン化してカルボキシレートアニオン、すなわち安定性を助成できる嵩高の反発性基を生成する。好ましいpHの範囲は3-10である。より好ましいpHの範囲は3-6である。
【0045】
そのSWCNTの長さは、20 nm-1mであり、より一般的には、20 nm-50μmである。そのSWCNTは、個々のSWCNTまたはバンドルのSWCNTとして存在していてもよい。導電性層中のSWCNTの直径は0.05 nm-5 nmである。バンドルの形状のSWCNTは直径が1 nm-1μmの範囲内である。好ましくはかようなバンドルは、直径が50 nm未満でありより好ましくは20 nm未満であり、長さは20 nmと50μmの間の値である。より大きい表面積を達成して電子を移動し易くし、そして前記バンドルの大きさを小さくして、バンドルの内部に位置しているため到達できないSWCNTの表面を暴露することによって、利用可能なより大きい表面積を、達成することが重要である。SWCNTの末端は、適切な大きさの半球型のバッキーボールで閉鎖できる。代わりに、SWCNTの両末端は開放されていてもよい。場合によっては、末端の一方が開放されそしてもう一方の末端が閉鎖されていてもよい。
【0046】
官能基化されたSWCNT(上記のようにして製造するかまたは販売者から購入する)を使って、SWCNT固形分配合量が0.05-10質量%(500-100000 ppmの範囲)の水性分散液を作製する。SWCNT固形分配合量はより好ましくは0.1-5質量%である。SWCNT固形分配合量は最も好ましくは0.1-1質量%である。この固形物配合量の範囲によって、コーティングを容易に行うことができまた粘度を最小限にしてロールコーティングおよび/またはインクジェト印刷を標準の常法で実行できる。官能基化されたSWCNTは、粉末/フレークの形状の場合が多く、分散させるのにエネルギーが必要である。典型的な分散法は、高せん断力の混合装置(ホモジナイザー、ミクロフルイダイザー(microfluidizer)、cowles bladeの高せん断力ミキサー、自動媒体ミル、ボールミル)を数分間-1時間使用して行う方法である。本発明の発明者らは、標準の超音波法と浴音波処理法が官能基化されたSWCNTを分散させるのに十分であることも見出したのである。一般に、2-24時間(親水性官能基化によって決まる)の浴音波処理法で、脱イオン水中0.1質量%(1000 ppm)のSWCNT分散液が生成する。この分散工程の後、pHを所望の範囲内に調節できる。遠心分離法または濾過法を利用して大きい粒子を除去する。生成した分散液は、静置して、数ヶ月間安定である(親水性官能基化のレベルによって決まる)。この分散液は、多くのコーティング法にとってワンパスモードで導電性コーティングを製造するのに十分高い固形分配合量を有している。
【0047】
本発明の導電性層は、約0.1-約1000 mg/m2の乾燥コーティング質量の官能基化SWCNTを含有していなければならない。好ましくは、本発明の導電性層は、約0.5 -約500 mg/m2の乾燥コーティング質量の官能基化SWCNTを含有していなければならない。乾燥コーティング中のこの範囲の量のSWCNTは標準のコーティング法で容易に達成することができ、この量によって、最良の透過特性が提供されかつ所望のシート抵抗を達成するためのコストが最小限になる。塗布されるSWCNTの実際の乾燥コーティング質量は、利用される特定の導電性官能基化SWCNTの特性および特定の用途の要件によって決まる。なお、このような要件としては、例えば層の導電度、透明度、光学濃度、コストなどがある。
【0048】
好ましい実施態様では、導電性SWCNTを含有する層は、
a) 式(I):
【化1】

(式中、R1とR2は各々、独立してカルボン酸、カルボキシレートアニオン(カルボン酸塩)、ヒドロキシル、硫黄含有基、カルボニル、ホスフェートおよび/またはニトレートを表し、およびそのチューブは、実質的に六角形の配置構成の炭素原子で構成された単層カーボンナノチューブである)で表されるSWCNT、および随意選択的に
b) 分散剤、および随意選択的に
c) ポリマーの結合剤
を含有する混合物を塗布することによって製造される。
【0049】
置換基R1とR2は、SWCNTのいたるところに均一または不均一に分布させることができる。前記分散液中への分散剤の配合量は最小限-ゼロが好ましい。分散剤の最大配合量は、SWCNTの質量の50質量%が好ましい。分散剤のより好ましい配合量は、SWCNTの質量の5質量%未満の配合量である。分散剤の最も好ましい配合量は0質量%である。分散剤のレベルが低下するにつれて電子導電性が増大する。選択できる分散剤が多数存在する。好ましい分散剤は、オクチルフェノールエトキシレート(TX-100)、ドデシル硫酸ナトトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ(スチレンスルホネート)、ナトリウム塩、ポリ(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのビニルピロリドン ブロックコポリマー)(PluronicsまたはPoloxamers)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij 78,Brij 700)およびオクチルもしくはドデシルトリメチルアンモニウムブロミドである。これらの分散剤は、電子導電性に対する影響を最小限にするために好ましい低い分散剤配合量で、カーボンナノチューブを効果的に分散することができる。これら分散剤の適切な混合物も利用できる。
【0050】
さらに、本発明の官能基化の好ましい実施態様は、その官能基が下記式:
R-SOxZy
(式中、RはSWCNTの格子中の炭素であり、xは1-3の範囲内であり、およびZは水素原子またはNa、Mg、K、Ca、Zn、Mn、Ag、Au、Pd、Pt、Fe、Coなどの金属のカチオンであり、およびyは0-1の範囲内にある)で表される基またはこれら親水性種の組合せから選択される硫黄含有基である実施態様である。上記硫黄含有基は、スルホン酸、スルホン酸および/またはスルホン酸および/または対応するアニオンまたはその混合物でもよい。共有結合で表面を官能基化する最も好ましい硫黄含有基は、スルホン酸またはスルホン酸塩またはその混合物である(以後、スルホン酸とのみ呼称する)。共有結合したスルホン酸は、硫黄含有基の中で、カーボンナノチューブの最良の分散液を提供する。
【0051】
環境上の理由から、カーボンナノチューブの実質的に水性の分散液(その分散液の少なくとも60質量%は水であることを意味する)が、カーボンナノチューブ層を塗布するのに好ましい。
【0052】
本発明を実施するのに適切な電子導電性ポリマーは、有機溶媒または水またはこれらの混合物に可溶性または分散性であればよい。導電性のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は二つの経路で供給できる。第一に、このポリマーはモノマーのエチレンジオキシチオフェン(EDOT)を適切な溶媒(例えばブタノール)に溶解して行う現場重合法で合成できる。過硫酸アンモニウムならびに有機酸および無機酸の鉄(III )塩など、使用できる多数の酸化剤がある。第二に、ポリスチレンスルホン酸などのポリアニオンと混合したカチオンPEDOTの水性分散液を使用できる。環境上の理由から水性組成物が好ましい。
【0053】
好ましい電子導電性ポリマーとしては、3,4-ジアルコキシ置換ポリチオフェンスチレンスルホネートがあるが、これはこのポリマーが比較的中間色であるからである。最も好ましい電子導電性ポリマーとしては、カチオン型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)をポリスチレンスルホン酸とともに含有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンスチレンスルホネート)がある。上記ポリマーを選択する利点は、本来、これらポリマーが光や熱に対して安定なポリマー構造を有し、水がベースの安定な分散液を生成しかつ貯蔵、健康、環境および取扱いについて起こる問題点は最小限であることから生じる。ポリスチレンスルホン酸は、PEDOTポリマーを非常に効果的に安定化しかつ水性系中に分散するのを助けるので好ましい。代わりの電子導電性ポリマーはポリアニリンである。
【0054】
上記のポリチオフェン-ベースのポリマーは、L.B.Groenendaal, F.Jonas, D.Freitag, H.PielartzikおよびJ.R.ReynoldsがAdvanced Materials,(2000),12,No.7,pp.481-494に発表した、表題が「Poly(3,4-etylenedioxythiophene) and its derivatives:past,present and future」の論文およびその中の引用文献に詳細に考察されている。
【0055】
本発明の電子導電性ポリマーの層は、約0.1-約1000 mg/m2の乾燥コーティング質量の電子導電性ポリマーを含有していなければならない。好ましくは、導電性ポリマーの層は、約1-約500 mg/m2の乾燥コーティング質量の電子導電性ポリマーを含有していなければならない。塗布される導電性ポリマーの実際の乾燥コーティング質量は、採用される特定の導電性ポリマーの特性およびその特定の塗布法の要件によって決まる。これらの要件としては、層の導電性、透明性、光学濃度およびコストがある。
【0056】
好ましい実施態様では、電子導電性ポリマーを含有する層は、
a) カチオン型の下記式II:
【化2】

(式中、R1とR2は各々独立して、水素またはC1-4アルキル基を表し、または随意選択的に置換されたC1-4のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基好ましくはエチレン基、随意選択的にアルキル置換されたメチレン基、随意選択的にC1-12アルキル-もしくはフェニルで置換された1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基もしくは1,2-シクロヘキシレン基を表し、およびnは3-1000である)で表されるポリチオフェン、ならびに
b) ポリアニオン化合物
を含有する混合物を塗布することによって製造される。
【0057】
上記電子導電性ポリマーとポリアニオンの混合物は、有機溶媒または水またはその混合物に可溶性または分散性であることが好ましい。環境上の理由から水性系が好ましい。これら電子導電性ポリマーとともに使用されるポリアニオンとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびポリマレイン酸などのポリマーのカルボン酸、ならびにポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などのポリマーのスルホン酸があるが、広範囲に利用可能でありかつ水を使ってコートできるので、ポリマーのスルホン酸のほうが本発明に使用するのに好ましい。またこれらのポリカルボン酸とポリスルホン酸は、アクリル酸のエステルおよびスチレンなどの他の重合性モノマーと共重合させたビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸のモノマーから製造されたコポリマーでもよい。ポリアニオンを提供するポリ酸の分子量は、好ましくは1,000-2000,000であり、より好ましくは2,000-500,000である。ポリ酸またはそのアルカリ塩は、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸として市販されており、または公知の方法を使って製造できる。電子導電性ポリマーおよびポリアニオンを製造するのに必要な遊離酸の代わりに、ポリ酸のアルカリ塩と適当量の一塩基酸の混合物も使用できる。ポリチオフェン対ポリアニオンの質量比は、1:99と99:1の間の範囲で広く変えることができるが、高い導電性と分散液安定性とコーティング性などの最適の特性は、85:1から15:85までの間の比率で得られ、より好ましくは50:50から15:85までの間の比率で得られる。最も好ましい電子導電性ポリマーとしては、カチオン型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸を含有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンスチレンスルホネート)があるが、それは、このポリマーが、光学濃度が低く、安定で、用途が広く、導電性が高くかつ水からコートできるからである。
【0058】
PEDOT/ポリスチレンスルホン酸の導電性が増大するという望ましい結果は、導電性増強剤(CEA)を組み込むことによって達成される。好ましいCEA(低抗率を低下させるのに有効であるため)は、
(1) 下記式II:
(OH)n-R-(COX)m II
(式中、mとnは独立して1から20までの整数であり、Rは2-20個の炭素原子を有するアルキレン基、6-14個の炭素原子をアリーレン連鎖中に有するアリーレン基、ピラン基もしくはフラン基であり、およびXは-OHもしくは-NYZ(式中、YとZは独立して水素もしくはアルキル基である)で表される基、または
(2) 糖、糖の誘導電体、ポリアルキレングリコールもしくはグリセリン化合物、または
(3) N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシドもしくはN-オクチルピロリドンからなる群から選択される基または
(4) 上記基の組合せ
などの、ジヒドロキシ基、ポリヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基もしくはラクタム基を含有する有機化合物である。
【0059】
特に好ましい導電性増強剤は、スクロース、グルコース、フラクトース、ラクトースなどの糖および糖誘導体;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール;2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸などのフラン誘導体およびアルコール類である。エチレングリコール、グリセリン、ジ-もしくはトリ-エチレングリコールは、導電性を最も大きく増大するので最も好ましい。
【0060】
CEAは適切な方法で組み入れることができる。好ましくは、CEAは、SWCNT、電子導電性ポリマーまたは両者を含有するコーティング組成物に添加される。あるいは、SWCNTと電子導電性ポリマーを含有するコートされた層を、適切な方法例えばコーティング後に洗浄する方法でCEAに暴露することができる。
【0061】
コーティング組成物中のCEAの濃度は、使用される特定の有機化合物および導電性の要件によって、広範囲に変えることができる。しかし、本発明を実行する際に効果的に採用できる好都合な濃度は、最小有効量を提供するように、約0.5-約25質量%であり、より好都合なのは0.5-10質量%でありそしてより望ましいのは0.5-5質量%である。
【0062】
ナノチューブと電子導電性ポリマーは、被膜形成ポリマー結合剤を添加せずに塗布できるが、被膜形成結合剤を利用して、層の物理特性を改善できる。かような実施態様では、その層は約1-95%の被膜形成ポリマー結合剤を含有していてもよい。しかしながら、被膜形成結合剤が存在すると層の全表面電気抵抗が増大する。被膜形成結合剤の最適質量%は、カーボンナノチューブと電子導電性ポリマーの電気的特性、ポリマー結合剤の化学組成および特定の回路の用途の要件によって変わる。
【0063】
本発明の導電性層に有用なポリマー被膜形成結合剤としては、限定されないが、水溶性または水に分散性の親水性ポリマー、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、マレイン酸または無水マレイン酸のコポリマー、ポリスチレンスルホネート類、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロース)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびポリ-N-ビニルピロリドンがある。その外の適切な結合剤としては、アクリル酸を含むアクリレート類、メタクリル酸を含むメタクリレート類、アクリルアミド類とメタクリルアミド類、イタコン酸およびその半エステルとジエステル、置換スチレン類を含むスチレン類、アクリロニトリルとメタクリロニトリル、酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル類とハロゲン化ビニリデン類およびオレフィン類;ならびにポリウレタン類およびポリエステルイオノマー類の水性分散液がある。
【0064】
導電性層に含有させてもよいその外の成分としては、限定されないが界面活性剤、消泡剤もしくはコーティング助剤、電荷制御剤、増粘剤もしくは粘度調整剤、粘着防止剤、融合助剤、架橋剤もしくは硬化剤、可溶性および/または固体粒子の染料、艶消しビーズ、無機もしくはポリマーの粒子、定着剤、バイトソルベント(bite solvent)もしくは化学エッチング剤、潤滑剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤もしくは色味剤および当該技術分野で公知の他の添加剤がある。好ましいバイトソルベントとしては、少なくとも一つのヒドロキシ基またはヒドロキシ置換置換基で置換された芳香族環を含む「導電性増大」芳香族化合物として、米国特許第5,709,984号に開示されている揮発性芳香族化合物を挙げることができる。これらの化合物としては、フェノール、4-クロロ-3-メチルフェノール、4-クロロフェノール、2-シアノフェノール、2,6-ジクロロフェノール、2-エチルフェノール、レゾルシノール、ベンジルアルコール、3-フェニル-1-プロパノール、4-メトキシッフェノール、1,2-カテコール、2,4-ジヒドロキシトルエン、4-クロロ-2-メチルフェノール、2,4-ジニトロフェノール、4-クロロレゾシノール、1-ナフトール、1,3-ナフタレンジオールなどがある。これらバイトソルベントは、本発明のポリエステルベースのポリマーシートに特に適している。このグループの中で最も好ましい化合物は、レゾシノールと4-クロロ-3-メチルフェノールである。これらのコーティングに適切な好ましい界面活性剤としては非イオンおよびアニオンの界面活性剤がある。これらのコーティングに適切な好ましい架橋剤としては例えば米国特許第5,370,981号に開示されているシラン化合物がある。
【0065】
導電性層中の電子導電性ポリマーに、性能指数(FOM)を割り当てることができる。かようなFOM値は、(1)各種の厚さ値の導電性層の可視光透過率(T)とシート抵抗(Rs)を測定し、(2)これらデータを、ln(1/T)対1/Rsのスペースにプロットし、次いで(3)これらデータの点に最も良好に合致しかつかようなプロットの原点を通過する直線の勾配を測定することによって決定される。いかなる特定の理論にも縛られることなく、電子導電性ポリマー層、特にカチオン型のポリチオフェンをポリアニオン化合物とともに含有する層のln(1/T)対1/Rsのプロットは、好ましくは原点を通過する直線関係を示し、その直線プロットの勾配が電子導電性ポリマー層のFOMであることが分かる。いかなる特定の理論にも縛られることなく、FOM値が低ければ低いほど、電子導電性層の電気特性と光学特性はより望ましい値になり、すなわち、FOMが低ければ低いほど、導電性多層のRsは低くなりかつその透明度は高くなることも分かる。本発明の場合、<100、好ましくは≦50およびより好ましくは≦40のFOM値が、ディスプレイの用途に最も望ましい結果をもたらすことが分かる。
【0066】
可視光透過度値Tは、コートされていない基板の寄与する程度について修正した後、530 nmの全光学濃度から決定される。530 nmの全光学濃度を測定するModel 361T X-Riteデンシトメーターが、この測定を行うのに最もよく適している。
【0067】
可視光透過度値Tは、530 nmでの修正された全光学濃度すなわちo.d.(corrected)に関連し、式:T=1/(10o.d.(corrected))で表される。
【0068】
Rs値は一般に、標準の四点電気プローブで測定される。
【0069】
本発明の導電性多層のRs値は必要に応じて変えることができる。ディスプレイ装置の電極として使用する場合、本発明の場合、Rs値は一般に10000オーム/スケア未満であり、好ましくは5000オーム/スケア未満であり、より好ましくは1000オーム/スケア未満であり、最も好ましくは500オーム/スケア未満である。
【0070】
本発明の導電性多層の透明性は、必要に応じて変えることができる。従って、本発明の導電性層の可視光透過度値は、>65%であり、好ましくは≧70%であり、より好ましくは≧80%でありそして最も好ましくは≧90%である。この導電性層は、一体構造(integral whole)を形成する必要はなく、厚さが均一である必要はなくおよびベース基板と接触している必要はない。
【0071】
本発明には、従来技術に見られる他の導電体を超える利点が加わっている。ITO、導電性ポリマーおよびカーボンナノチュ−ブは各々わずかに着色しているが、これは一般にディスプレイに利用する場合、受け入れがたい。本願の出願人らは、本発明の多層構造が一層無色であることを確認した。
【0072】
本発明の電子導電性製品は、多種類の方法で製造できる。例えば電子導電性ポリマーを含有する第一導電性層は、液状媒体から製造される。その液状コーティング組成物は、以下に概略を記述する多種類のコーティング法によって基板にコートできる。コーティングの質を改善するため、コーティング助剤を、液状コーティング組成物に添加してもよい。この第一導電性層を乾燥した後、第二導電性層例えば導電性カーボンナノチューブ層を、以下に概略を述べる多種類のコーティング法によって、液状媒体から塗布し次いで乾燥して堅牢で硬く可撓性の導電性層を形成させる。
【0073】
本発明の導電性層は剛性または可撓性の基板の上に形成させることができる。この基板は、例えばディスプレイ装置またはタッチスクリーンの基板またはカバーのようなより大きなシステムの一部材として働くことができる。この基板は透明、半透明または不透明であってもよくおよび着色または無色でもよい。剛性基板としては、ガラス、金属、セラミックおよび/または半導体がある。可撓性基板、特にプラスチック基板を含む可撓性基板は、多用性でありかつ製造、コーティングおよび仕上げを容易に行えるので好ましい。
【0074】
上記可撓性のプラスチック基板は、導電性ポリマー被膜を支持する可撓性の自己支持性プラスチックフィルムでもよい。用語「プラスチック」は、高分子物質を意味し、通常ポリマーの合成樹脂から製造され、硬化剤、充填剤、補強剤、着色剤および可塑剤などの他の成分を混合してもよい。プラスチックとしては、熱可塑性材料と熱硬化性材料がある。
【0075】
上記可撓性のプラスチックフィルムは、自己支持性であるため十分な厚さと機械的結着性を有していなければならずしかも剛性であるような厚さでなければならない。この可撓性プラスチック基板の材料の別の有意な特徴はそのガラス転移温度(Tg)である。Tgは、プラスチック材料がガラス状態からゴム状態に変化するガラス転移温度と定義されている。このガラス転移温度は、その材料が実際に流動する前のある範囲の温度である。可撓性プラスチック基板用に適切な材料としては、例えば150℃を超える高いガラス転移温度の材料のみならず、例えば150℃までの比較的低いガラス転移温度の熱可塑性プラスチックがある。可撓性プラスチック基板用材料は、付着温度およびアニール温度などの製造工程の条件ならびにディスプレイス製造業者の工程ラインなどの製造後の条件などの要因によって選択される。以下で考察するいくつかのプラスチック基板は、少なくとも約200℃まで、約300-350℃までの高い加工温度に、損傷なしで耐えることができる。
【0076】
一般に、可撓性プラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステルイオノマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホンを含むポリエステル;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル;ポリイミド;ポリエーテルエステル;ポリエーテルアミド;硝酸セルロース;酢酸セルロース;ポリ酢酸ビニル;ポリスチレン;ポリオレフィンイオノマー類を含むポリオレフィン類;ポリアミド;脂肪族ポリウレタン類;ポリアクリロニトリル;ポリテトラフルオロエチレン類;ポリフッ化ビニリデン類;ポリ(メチル(x-メタクリレート);脂肪族または環式のポリオレフィン;ポリアリーレート(PAR);ポリエーテルイミド(PEI);ポリエーテルスルホン(PES);ポリイミド(PI);テフロン(登録商標) ポリ(ペルフルオロ-アルボキシ)フルオロポリマー(PFA);ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK);ポリエーテルケトン(PEK);ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)フルオロポリマー(PETFE);およびポリメチルメタクリレートと各種のアクリレート/メタクリレートコポリマー(PMMA);天然紙と合成紙;樹脂をコートもしくはラミネートした紙;ポリマーフォーム、微細ボイド形成ポリマーおよび微細孔材料を含むボイド形成ポリマー;または布地またはこれらの組合せである。
【0077】
脂肪族ポリオレフィン類としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および立体特異的ポリプロピレン(OPP)を含むポリプロピレンがある。環式ポリオレフィン類としてはポリ(ビス(シクロペンタジエン))がある。好ましい可撓性プラスチック基板は環式ポリオレフィンまたはポリオレフィンである。各種の環式ポリオレフィン類が、前記可撓性プラスチック基板に適している。その例としては、日本国東京に所在の(株)日本合成ゴム製造のArton(登録商標)、日本国東京所在のZeon Chemicals L.P.製造のZeanor T、およびドイツのクロンベルク所在のCelanese A.G.製造のTopas(登録商標)がある。Artonは、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))縮合体製のポリマーフィルムである。あるいは、可撓性プラスチック基板はポリエステルでもよい。好ましいポリエステルは、Aryliteなどの芳香族ポリエステルである。基板は、透明、半透明または不透明でもよいが、ディスプレイの大部分の用途に対しては、単一もしくは複数の透明基板を含む透明部材が好ましい。プラスチック基板の各種の例を先に記述したが、可撓性基板は可撓性のガラスおよびセラミックなどの他の材料からも製造できると解すべきである。
【0078】
可撓性プラスチック基板は、硬質コーティングで強化することができる。一般に、その硬質コーティングはアクリルコーティングである。かような硬質コーティングは、厚さが一般に1-15ミクロンであり好ましくは2-4ミクロンであり、適当な重合性材料を熱または紫外線で開始される遊離ラジカル重合反応で提供できる。基板によって、異なる硬質コーティングを使用できる。基板がポリエステルまたはArtonのとき、特に好ましい硬質コーティングは「Lintec」として知られているコーティングである。LintecはUVで硬化するポリエステルのアクリレートおよびコロイドシリカを含有している。Lintecは、Artonに付着させるとその表面組成は、水素を除いて、35原子百分率のC、45原子百分率のOおよび20原子百分率のSiである。もう一つの特に好ましい硬質コーティングは、米国ウイスコンシン州ニューベルリン所在のTekra Corporationが商標「Terrapin」で販売しているアクリルコーティングである。
【0079】
最も好ましい可撓性プラスチック基板はポリエステルである。というのは、ポリエステルが適当な価格で大量に入手できるだけでなく、機械的特性と熱的性質に優れているからである。使用するため選択される特定のポリエステルは、必要に応じてホモポリエステルまたはコポリエステルまたはそれらの混合物でもよい。そのポリエステルは、必要に応じて結晶性または非晶性のものまたはその混合物でもよい。ポリエステルは通常、有機ジカルボン酸と有機ジオールの縮合反応で製造されるので、有用なポリエステルの例示例を、以下に、これらのジオールとカルボン酸の前駆体によって説明する。
【0080】
本発明で使用するのに適切なポリエステルは、芳香族、環式脂肪族および脂肪族のジオールと脂肪族、芳香族および環式脂肪族のジカルボン酸の縮合反応で誘導される環式脂肪族、脂肪族または芳香族のポリエステルである。本発明を実施するのに利用できる有用な環式脂肪族、脂肪族または芳香族のポリエステルの代表的なものは、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンドデケート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン2,7-ナフタレート、ポリメタゲニレンイソフテレート、ポリグリコール酸、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリデカメチレンアゼレート、ポリエチレンセバケート、ポリデカメチレンアジペート、ポリデカメチレンセバケート、ポリヂメチルプロピオラクトン、ポリパラ-ヒドロキシベンゾエート(Ekonol)、ポリエチレンオキシベンゾエート、(A-tell)、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリデカメチレンテレフタレート、ポリ1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(trans)、ポリエチレン1,5-ナフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート、ポリ1,4 -シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(Kodel)(cis)およびポリ1,4 -シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(Kodel)(trans)である。ジオールと芳香族ジカルボン酸の縮合反応から製造されるポリエステル化合物が本発明に使用するのに好ましい。かような有用な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、α-フタル酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,1,3-トリメチル-5-カルボキシ-3-(p-カルボキシフェニル)-イダン、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸、ビス-p(カルボキシ-フェニル)メタンなどである。上記芳香族ジカルボン酸のうちベンゼン環に基づいたもの(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸)は、本発明を実施するため使用するのに好ましい。これら好ましい酸の前駆体のうち、テレフタル酸が特に好ましい酸の前駆体である。
【0081】
本発明を実施するため使用する好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートならびにそのコポリマーおよび/または混合物がある。選択されたこれらポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。というのは、このポリエステルが低価格であり、透過度が高くかつ熱膨張率が低いからである。
【0082】
ディスプレイ装置に利用するのに有用な上記基板は、平坦なおよび/または湾曲した形状でもよい。基板の曲率は曲率半径であることが特徴でありいかなる値でもよい。あるいは、基板は角度をつけるため曲げてもよい。この角度は、0°‐360°の間のすべての角度とすべての範囲を含むどの角度でもよい。基板が電子導電性であるときは、非導電性ポリマーなどの絶縁材料を基板と導電性ポリマーの間に配置する。
【0083】
基板の厚さは、例えば10-8 cm〜1 cmの間のすべての値とすべての範囲を含むどの値でもよい。より厚い層およびより薄い層も使用できる。基板は厚さが均一である必要はない。好ましい形状は正方形または長方形であるが、どのような形状でも利用できる。基板は、導電性ポリマーでコートする前に、例えばラビングを行い、画像をつけ、パターン化接触領域をつけ、別の領域に一色以上の色をつけ、エンボスし、マイクロエンボスし、マイコロレプリケーションを行うことによって、物理的におよび/または光学的にパターニングすることができる。
【0084】
上記基板は、必要に応じて単一の層または複数の層を備えている。その複数の層には、帯電防止層、タイレーヤー(tie layer)、定着層、耐摩耗性層、カーリング防止層、伝達層、バリヤー層、接合層、紫外線吸収層、反射防止層および対反射層などの光学効果層、防水層、接着剤層、画像形成層などが含まれている。
【0085】
上記ポリマー製基板は、押出法、同時押出法、急冷法、延伸法、ヒートセット法、積層法、コーティング法および溶媒流延法などを含む当該技術分野で公知のいずれの方法でも製造できる。ポリマー製基板は、フラットシート法、バブル法またはチューブ法など当該技術分野で公知の適切な方法で製造された延伸シートであることが好ましい。フラットシート法は、材料を、スリットダイを通じてシート形状に押出すかまたは同時に押出し、次いでその押出されたウエブまたは同時押出されたウエブを、冷却流延ドラム上で急冷して、そのシートの一種または複数種のポリマー成分をその凝固温度より低く急冷する。
【0086】
急冷されたシートは、次に、前記一種または複数種のポリマーのガラス転移温度より高い温度で、互いに直行する方向に延伸することによって二軸延伸される。このシートは、一方向に延伸し次いで第二の方向に延伸してもよくまたは両方向に同時に延伸してもよい。延伸方向の好ましい延伸比は、少なくとも3:1である。シートは、延伸した後、シートを両延伸方向に収縮しないようにある程度拘束しながら、ポリマーが結晶化するのに十分な温度まで加熱することによってヒートセットする。
【0087】
ポリマーシートは、押出、同時押出、延伸などの後、または流延と完全延伸の間に、いくつものコーティングおよび処理を受けて、その特性、例えば印刷適性、バリヤー特性、ヒートシール適性、接合性、他の基板および/または画像形成層への接着性を改善できる。かようなコーティングの例は、印刷適性を得るためのアクリルコーティング、ヒートシール特性を得るためのポリハロゲン化ビニリデンである。かような処理の例としては、コーティング適性と接着性を改善する火炎処理、プラズマ処理、コロノ放電処理、紫外線処理、オゾン処理および電子ビーム処理がある。処理のさらなる例は、ウエブの表面に特定の効果が得られるカレンダリング、エンボシングおよびパターニングである。ポリマーシートは、さらに、積層、接着、コールドシーリングもしくはヒートシーリング、押出コーティングまたは当該技術分野で公知の他の方法によって、他の適切な基板中に組み込むことができる。
【0088】
本発明の導電性層は、当該技術分野で公知のいずれの方法でも製造できる。特に好ましい方法としては、エアナイフコーティング法、グラビアコーティング法、ホッパーコーティング法、ローラーコーティング法、スプレーコーティング法、電気化学的コーティング法、インクジェットプリント法、フレクソ印刷法などの公知のコーティング法で適切な液体媒体コーティング組成物からコーティングする方法がある。少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層および電子導電性ポリマーを含有する少なくとも一つの導電性層は順にまたは同時に塗布できる。
【0089】
あるいは、導電性層は、熱および/または圧力を加えることによってドナーメンバーからレシーバーメンバーへ転写させることができる。転写しやすくするため、ドナーメンバーとレシーバーメンバーの間に接着剤層を配置することが好ましい。導電性カーボンナノチューブ層および電子導電性ポリマーを含有する導電性層は、出願人が本願と同じで同時係属中の米国特許願第10/969,889号(2004年10月21日出願、Majumdarら)、同第11/062, 416号(2005年2月22日出願、Irvinら)および同第11/022,155号(2004年12月22日出願、Majumdarら)に記載されているように単一のドナーエレメントからまたは同時に二つの別個のドナーメンバーから塗布できる。
【0090】
別の好ましい導電性層製造法は熱転写法である。この方法は、一連の米国特許と米国特許願、例えばWolkらの米国特許第6,114,088号、同第6,140,009号、同第6,214,520号、同第6,221,553号、同第6,582,876号、同第6,586,153号;Tuttらの米国特許第6,610,455号、同第6,582,875号、同6,252,621号、米国特許願公開第2004/0029039 A1号;Elilisらの米国特許第5,171,650号;Blancher-Fincherの米国特許願公開第2004/0065970 A1号に開示されている。したがって、ドナー基板と多要素転写ユニットを含みかつその多要素転写ユニットが本発明の導電性層を含んでいる熱転写エレメントが製造できると考えられる。かような転写ユニットは、熱を加えることによって、完全にまたは部分的にレシーバー基板に転写されて、本発明の導電性層がレシーバー基板に組み込まれる。
【0091】
上記熱転写エレメントは、本発明の導電性層の本発明の導電性層以外に、他の層を多数含んでいてもよい。これらの追加の層としては、光を熱に変換できる層である放射線吸収層、中間層、剥離層、定着層、作動層(装置の作動に利用される)、非作動層(装置の作動には使用されないが、例えば転写層を転写しやすくして、損傷および/または外側のエレメントとの接触を防止する)がある。
【0092】
本発明の導電性層の熱転写は、熱転写エレメントの選択された部分に、有向熱を加えることによって達成できる。熱は、発熱体(例えば抵抗発熱体)を使って、放射線を変換して(例えば光ビームの熱への変換)および/または電流を熱転写エレメント層に加えて熱を発生させることによって、発生させることができる。
【0093】
有機またはポリマーの発光ダイオードを必要とするようないくつかの特別なディスプレイの用途では、導電性層の粗さが重要である。一般に、コートされた基板の光学的特性とバリヤー特性を最大限にするには、粗さ(Ra)が低い非常に滑らかな表面が望ましい。本発明の導電性層の好ましいRa値は、1000 nm未満であり、より好ましくは100 nm未満でありそして最も好ましくは20 nm未満である。しかしながら、ある種の用途でより粗い表面が必要な場合は、より高いRa値は、当該技術分野で公知の方法によって、本発明の範囲内で達成できると解すべきである。
【0094】
本発明の導電性層の重要な基準には、導電性層の二つの重要な特徴、すなわち透明性およびシート抵抗もしくはシート表面電気抵抗がある。先に少し言及したように、最近のディスプレイ装置の要求する高い透明性と低い抵抗という厳しい要件は、電子導電性層で達成することは極めて難しい。一般に、より低い抵抗値は、カーボンナノチューブまたは電子導電性層をより厚くコートすることによって達成されるが、そうすると望ましくないことであるが透明性が低下する。
【0095】
本発明の特定の実施態様では、導電性カーボンナノチューブ層または電子導電性ポリマー層は、電極またはその外のアレイパターンに形成させることができる。有用なパターニング法としては、インクジェットプリンティング法、リソプレートプリンティング法などの転写プリンティング法、レーザーエッチィング法および熱剥離法などの各種の乾燥エッチィング法、マイクロリソグラフ法などのウエットエッチング法があり、これらの方法は、国際特許願公開第WO97/18944号および米国特許第5,976,274号などに記載されている。
【0096】
本発明の多層導電性製品は、ディスプレイ装置の透明部材に組み込むことができる。そのディスプレイ装置は一般に、電子的に画像形成性の材料を含有している画像形成性層を少なくとも一つ含んでいる。その電子的に画像形成性の材料は発光材料または光変調材料でもよい。発光材料は、事実上、有機物または無機物でもよい。特に好ましいのは、有機発光ダイオード(OLED)またはポリマー発光ダイオード(PLED)である。光変調材料は反射性または透過性でもよい。光変調材料は、Gyricon粒子、エレクトロクロミック材料または液晶などの電気化学的電気泳動材料でもよい。その液晶材料は、ねじれネマチック(TN)液晶、スーパーねじれネマチック(STN)液晶、強誘電性液晶、磁性液晶またはキラルネマチック液晶でよい。特に好ましい液晶はキラルネマチック液晶である。そのキラルネマチック液晶は、ポリマー分散液晶(PDLC)でもよい。しかし、積重ねた画像形成層または多基板層を有する構造は、場合によって追加の利点を提供するため随意選択して利用される。
【0097】
電子導電性ポリマーを含む少なくとも一つの導電性層と接触する少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層を有する本発明の多層導電性製品は、簡単に、上記先行技術の装置中に存在する一つ以上の導電性電極の代わりに使用できる。本発明は、好ましくは、前記導電性層に電流、電圧などを加えるため(すなわち、電子的に接続するため)、基板上の導電性層に取り付けた(接触させた)少なくとも一つの電気リード線を備えている。その単一または複数のリード線は、好ましくは基板と電気的に接触しておらず、パターニングされた堆積金属、導電性もしくは半導電性の材料例えばITOで製造されたものでもよく、導電性層と接触する単純なワイヤでもよく、および/または例えば導電性ポリマー、カーボンおよび/または金属粒子を含有する導電性ペイントでもよい。また本発明の装置は、好ましくは、単一または複数のリード線を通じて導電性電極に電子的に接続された電流源すなわち電圧源を有している。電源、電池などを使用できる。本発明の一実施態様が図4にディスプレイエレメント60として例示されているが、基板62は電子導電性ポリマー層64とカーボンナノチューブ層63でコートされ、そのカーボンナノチューブ層は電気リード線68によって電源66に接続されている。
【0098】
好ましい実施態様では、電子的画像形成性材料は、電界でアドレスされ、次いで電界を除いた後その画像を維持することができる。これは一般に「双安定」と呼称される特性である。「双安定性」を示す特に適切な電子的画像形成材料は、Gyricon 粒子、エレクトロクロミック材料、磁性材料またはキラルネマチック液晶などの電気化学的、電気泳動材料である。特に好ましいのはキラルネマチック液晶である。そのキラルネマチック液晶は、ポリマーを分散させた液晶(PDLC)である。
【0099】
本発明の用途を例示するため、そのディスプレイは主として液晶ディスプレイとして記述する。しかし、本発明は、多数の他のディスプレイの用途にも有用性を見つけることができると考えられる。
【0100】
用語「液晶ディスプレイ」(LCD)は、本願で使う場合、各種電子装置に使用されるフラットパネル型ディスプレイを意味する。少なくとも、LCDは、基板、少なくとも一つの導電性層と液晶層を有している。またLCDは、間に液晶溶液を保有する偏光材料製のシート2枚を備えている。この偏光材料製シートは、ガラス製または透明プラスチック製の基板で構成されている。また前記LCDは機能層を含んでいてもよい。図5に示す一実施態様のLCD製品50では、透明で多層の可撓性基板15が、本発明の電子導電性ポリマー層20と導電性カーボンナノチューブ層21でコートされ、それがパターニングされ、その上に光変調液晶層30がコートされている。本発明の多層も含んでいてよい第二導電性層40が、塗布され次いで導電性行接触子44が取り付けられた誘電層42でオーバーコートされ、そして導電性層と導電性行接触子を相互接続できるvias(図示せず)を含んでいる。図5は、液晶層30と第二導電性層40の間に塗布された、随意選択的にナノピグメントされた機能層35を示している。典型的なマトリックスアドレス発光ディスプレイ装置では、多数の発光装置が、単一基板上に形成されて、レギュラーグリッドパターンのグループで配列されている。起動は行および列でできる。
【0101】
液晶(LC)は光スイッチとして使用される。その基板は、通常、透明な導電性電極で製造され、その電極に「駆動」信号が結合される。その駆動信号は電界を誘発し、その電界はLC材料中に相変化または状態変化を起こし、そのLCは、その相および/または状態によって異なる光反射特性を示す。
【0102】
液晶は、中間相(mesophase)中の分子の配列によって、ネマチック(N)、キラルネマチック(N*)またはスメクチックになる。キラルネマチック液晶(N*LC)ディスプレイは一般に反射性であり、すなわちバックライトが不要なので、偏光フィルムまたはカラーフィルターを使用せずに機能できる。
【0103】
キラルネマチック液晶は、通常出会うLC装置に使われているねじれネマチックおよびスーパーねじれネマチックのLCよりピッチが小さいタイプの液晶を意味する。キラルネマチック液晶はその配合物が通常、ホストのネマチック液晶にキラル剤を添加することによって得られるので非常に有名である。キラルネマチック液晶は、双安定またはマルチ安定のディスプレイを製造するのに使用できる。これらの装置は、その不揮発性「メモリ」の特徴によって、電力消費量が有意に低下する。かようなディスプレイは、画像を維持するために連続的な駆動回路を必要としないから、消費電力は有意に少なくなる。キラルネマチックディスプレイは、フィールドなしで双安定性であり、その二つの安定テクスチャは反射プレーナーテクスチャと弱く散乱する局所円錐テクスチャ(focal conic texture)である。プレーナーテクスチャの場合、キラルネマチック液晶分子のらせん軸は、その液晶が配置されている基板に、実質的に垂直である。局所円錐状態の場合、キラルネマチック液晶分子のらせん軸は、一般にランダムに配向している。キラルネマチック材料中のキラルドーパントの濃度を調節すると、中間相のピッチ長が変調されるので、反射される放射線の波長が変調される。赤外線および紫外線を反射するキラルネマチック材料は、科学研究用に使用されている。市販のディスプレイは、可視光を反射するキラルネマチック材料で製造されることが最も多い。いくつかの知られているLCD装置は、米国特許第5,667,853号に開示されているような、ガラス製基板を被覆する化学的にエッチングされた透明導電性層を有している。
【0104】
一実施態様では、キラルネマチック液晶組成物は連続マトリックス中に分散されている。かような材料は、「ポリマー分散液晶」材料または「PDLC」材料と呼称する。かような材料は各種の方法で製造できる。例えば、Doaneらは、Applied Physics Letters,48,269(1986)に、ポリマー結合剤中に、約0.4μmの大きさの液滴のネマチック液晶5CBを含有するPDLCを開示している。このPDLCは相分離法を使って製造される。モノマーと液晶を含有する溶液を、ディスプレイのセル中に充填し、次いでその材料を重合させる。重合させると、その液晶は不混和性になって核を生成し液滴を形成する。Westらは、Applied Physics Letters,63,147(1993)に、ポリマー結合剤中に、キラルネマチック混合物を含有するPDLCを開示している。このPDLCもやはり相分離法を使って製造される。液晶材料とポリマー(ヒドロキシを官能基化されたポリメチルメタクリレート)をこのポリマー用の架橋剤とともに、共通の有機溶媒トルエンに溶解して、基板上の透明導電性層の上にコートする。トルエンを高温で蒸発させることによって、液晶材料をポリマー結合剤中に分散させる。DoaneらおよびWestらの相分離法は、特定の生産環境では受け入れることができない有機溶媒を使用する必要がある。
【0105】
事実上単一の層のN*LCドメインが二つ以上存在するとディスプレイのコントラストが低下する。本願の出願人らは、用語「事実上単一の層」を、ディスプレイの平面に垂直の方向に、ディスプレイ(または画像形成層)の大部分の点に、好ましくはディスプレイの点(または領域)の75%以上の点に、最も好ましくはディスプレイの点(または領域)の90%以上の点に、電極間にサンドイッチされた単一層のドメインだけがあるということを意味すると定義する。換言すれば、多くても、ディスプレイの点(または領域)の小さい部分(好ましくは10%未満)のみが、電極間に単一ドメインしか存在しないディスプレイの点(または領域)の数(または大きさ)と比べて、ディスプレイの平面に垂直の方向に電極間に2以上の単一ドメインを含有している。
【0106】
単一層に必要な材料の量は、ドメインの完全に閉じてパックされた配列を想定して、個々のドメインの大きさに基づいて計算することによって正確に計算できる(実際には、オーバーラップする液滴またはドメインのためギャップが生じいくつかの凹凸ができるという欠点がある)。これに基づいて、その計算量は、単一層ドメインをカバーするのに必要な量の好ましくは約150%未満、好ましくは約125%を超えず、より好ましくは110%を超えない。さらに、コートされた液滴の形状と大きさおよびブラッグの反射条件に基づいて別様にドープされたドメインを適切に選択することによって、観察角とブロードバンドの特徴を改善できる。
【0107】
本発明の好ましい一実施態様では、ディスプレイ装置またはディスプレイシートは、そのディスプレイの面に垂直な直線にそって、単に、液晶材料の単一の画像形成層、好ましくは可撓性基板にコートされた単一層を有している。かような構造は、対向する基板の間に各々垂直に積層された画像形成層と比べて、単色の棚ラベルなどとしては特に有利である。しかし積層された画像形成層を有する構造は、場合によっては、追加の利点を提供するため随意選択される構造である。
【0108】
好ましくは、これらドメインは、扁平球形で、厚さが平均して長さよりかなり小さく、好ましくは少なくとも50%小さい。より好ましくは、これらドメインは、厚さ(幅):長さの比が、平均して1:2−1:6である。ドメインは、コーティングの適切な配合と十分に速い乾燥によって、扁平にすることができる。ドメインは、平均直径が好ましくは2-30ミクロンである。その画像形成層は、好ましくは、厚さが最初コートされたとき10-150ミクロンで次いで乾燥されたとき2-20ミクロンである。
【0109】
液晶材料の扁平ドメインは、長軸と短軸を有すると定義できる。ディスプレイまたはディスプレイシートの好ましい実施態様では、長軸は、大きさが、ドメインの大部分のセル(すなわち画像形成層)の厚さより大きい。このような寸法の関係は、米国特許第6,061,107号に示されている。
【0110】
最新のキラルネマチック液晶材料は、通常、キラルドーパントを混合されたた少なくとも一種のネマチックホストを含んでいる。一般に、このネマチック液晶相は、有用なコンポジットの特性を提供するため混合された一種または二種以上の中間生成成分で構成されている。かような材料は多種類市販されている。キラルネマチック液晶混合物のネマチック成分は、適切な液晶特性を有するどのような適切なネマチック液晶混合物または組成物で構成されていてもよい。本発明に使用するのに適切なネマチック液晶は、好ましくはネマチック物材料またはネマチック相形成性材料、例えば下記公知のクラスの化合物から選択される低分子量の化合物で構成され、その公知のクラスの化合物としては、アゾキシベンゼン類;ベンジリデンアニリン類;ビフェニル類;テルフェニル類;安息香酸フェニルもしくは安息香酸シクロヘキシル;シクロヘキサンカルボン酸のフェニルエステルもしくはシクロヘキシルエステル;シクロヘキシル安息香酸のフェニルエステルもしくはシクロヘキシルエステル;シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のフェニルエステルもしくはシクロヘキシルエステル;安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸およびシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル;フェニルシクロヘキサン類;シクロヘキシルビフェニル類;フェニルシクロヘキシルシクロヘキサン類;シクロヘキシルシクロヘキサン類;シクロヘキシルシクロヘキセン類;シクロヘキシルシクロヘキシルシクロヘキセン類;1,4-ビス-シクロヘキシルベンゼン類;4,4-ビス-シクロヘキシルビフェニル類;フェニル-もしくはシクロヘキシル-ピリミジン類;フェニル-もしくはシクロヘキシル-ピリジン類;フェニル-もしくはシクロヘキシル-ピリダジン類;フェニル-もしくはシクロヘキシル-ジオキサン類;フェニル-もしくはシクロヘキシル-1,3-ジチアン類;1,2-ジフェニルエタン類;1,2-ジシクロヘキシルエタン類;1-フェニル-2-シクロヘキシルエタン類;1-シクロヘキシル-2-(4-フェニルシクロヘキシル)エタン類;1-シクロヘキシル-2’2-ビフェニルエタン類;1-フェニル-2-シクロヘキシルフェニルエタン類;随意選択的にハロゲン化されたスチルベン類;ベンジルフェニルエーテル類;トラン類;置換ケイ皮酸類とそのエステル類;およびその外のクラスのネマチック材料もしくはネマチック相形成性材料がある。またこれら化合物の1,4-フェニレン基は、側部がモノフッ素化またはジフッ素化されていてもよい。この好ましい実施態様の液晶材料は、このタイプのアキラル化合物に基づいている。最も重要な化合物は、これら液晶材料の成分として可能性のある化合物であるが、式:R’-X-Y-Z-R”で表すことができ、その式中、XとZは同一または異なっていてもよく、それぞれ、互いに独立して、-Phe-、-Cyc-、-Phe-Phe-、-Phe-Cyc-、-Cyc-Cyc-、-Pyr-、-Dio-、-B-Phe-および-B-Cyc-からなる群由来の二価のラジカルであり、Pheは未置換またはフッ素で置換された1,4-フェニレンであり、Cycはトランス-1,4-シクロヘキシレンもしくは1,4-シクロヘキセニレンであり、Pyrはピリミジン-2,5-ジイルもしくはピリジン-2,5-ジイルであり、Dioは1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり、およびBは2-(トランス-1,4-シクロヘキシル)エチル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイルもしくは1,3-ジオキサン-2,5-ジイルである。これら化合物中のYは、以下の二価の基:-CH=CH-、-C≡C-、-N=N(O)-、-CH=CY’-、-CH=N(O)-、-CH2-CH2-、-CO-O-、-CH2-O-、-CO-S-、-CH2-S-、-COO-Phe-COO-または単結合(式中、Y’はハロゲンで好ましくは塩素または-CNである)から選択され;R’とR”は、それぞれ、互いに独立して、炭素原子を1-18個好ましくは1-12個含有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシであるかまたは代わりにR’とR”のうち一方が-F-、-CF3、-OCF3-、-Cl、-NCSもしくは-CNである。大部分のこれら化合物中のR’とR”は、それぞれ、互いに独立して、連鎖長が異なりかつネマチック媒体中の炭素原子の合計数が一般に2-9で好ましくは2-7であるアルキル、アルケニルもしくはアルコキシである。ネマチック液晶相は一般に2-20、好ましくは2-15の成分からなっている。上記リストの材料は、網羅的でも限定的なものでもない。このリストは、使用するのに適切なまたは電気光学的液晶組成物の活性成分を含む混合物に適切な各種の代表的化合物を開示している。
【0111】
適切なキラルネマチック液晶組成物は、好ましくは,正の誘電異方性を有し、および局所円錐テクスチャとねじれプラナーテクスチャを形成するのに有効な量のキラル材料を含有している。キラルネマチック液晶材料は、反射特性、双安定性およびグレースケールメモリーが優れているので好ましい。キラルネマチック液晶材料は、一般に、ネマチック液晶と所望のピッチ長を生成するのに十分な量のキラル材料との混合物である。適切な市販のネマチック液晶としては、例えば、E. Merck(ドイツ、ダルムシュタット所在)が生産しているE7、E44、E48、E31、E80、BL087、BL101、ZLI-3308、ZLI-3237、ZLI-5048-000、ZLI-5049-100、ZLI-5100-100、ZLI-5800-000、MLC-6041-100、TL202、TL203、TL204およびTL205がある。正の誘電異方性を有するネマチック液晶、特にシアノビフェニルが好ましいが、負の誘電異方性を有するものを含めて、当該技術分野で知られている事実上どのネマチック液晶も本発明に使用するのに適しているはずである。他のネマチック材料も、当業者には分かっているように、本発明に使用するのに適している。
【0112】
キラルドーパント
ネマチック混合物に添加して中間相のらせんねじれを誘発して可視光を反射させるキラルドーパントは、どのような有用な構造のクラスのものでもよい。ドーパントの選択は、とりわけそのネマチックホストとの化学的適合性、らせんねじれ力、感温性および耐光堅牢度を含むいくつかの特性によって決まる。多くのキラルドーパントのクラスは当該技術分野で知られており、例えば、G.Gottarelli and G.Spada,Mol. Cryst. Liq.,123,377(1985);G.Spada and G.Proni,Enantiomer,3,301(1998);およびこれらに記載されている引用文献に記載されている。典型的な公知のドーパントのクラスとしては、1,1-ビナフトール誘導体類;米国特許第6,217,792号に開示されているようなイソソルビド(D-1)および類似のイソマンニドエステル類;米国特許第6,099,751号に開示されているようなTADDOL誘導体類(D-2);およびT.Welterらが2003年8月29日に出願した、表題が「Chiral Compounds And Compositions Containing The Same」の米国特許願第10/651,692号に開示されているような同時係属中のスピロインダネスエステル類(spiroindanes esters)(D-3)がある。
【0113】
【化3】

【化4】

【0114】
液晶材料のピッチ長は、式(1):λmax=nav p0(式中、λmaxはピーク反射波長すなわち反射率が最大の波長であり、navは液晶材料の平均屈折率であり、およびp0はキラルネマチックらせんの本来のピッチ長である)に基づいて調節できる。キラルネマチックらせんおよびピッチ長の定義ならびにその測定法は、当業者には知られており、例えば、Blinov,L.M.の著書「Electro-optical and Magneto-Optical Properties of Liquid Crystals」,John Wiley & Sons Ltd. 1983に見ることができる。ピッチ長は、液晶材料中のキラル材料の濃度を調節することによって修正できる。ドーパントが誘発するピッチ長は、キラルドーパントの大部分の濃度で、ドーパントの濃度に反比例している。その比例定数は、式(2):p0=1/(HTP.c)(式中、cはキラルドーパントの濃度であり、およびHTP(いくつかの引用文献では□で表されている)は比例定数である)で表される。
【0115】
いくつかの用途では、強いらせんねじれを示しその結果短いピッチ長を示すLC混合物が望ましい。例えば、選択的に反射するキラルネマチックディスプレイに使用される液晶混合物では、そのピッチは、そのキラルネマチックらせんが反射する最大の波長が可視光の範囲内にあるように選択しなければならない。他の可能性のある用途は、光学素子としてキラル液晶相を有するポリマー薄膜、例えばキラルネマチックブロードバンド偏光子、フィルターアレイまたはキラル液晶位相差板である。これらの中には、能動光学素子と受動光学素子またはカラーフィルターおよび液晶ディスプレイ例えばSTN、TN、AMD-TN、温度補償、ポリマーフリーもしくはポリマー安定化のキラルネマチックテクスチャ(PFCT、PSCT)ディスプレイがある。可能性があるディスプレイ産業の用途としては、ノートコンピュータとデスクコンピュータ、計器盤、ビデオゲーム機、テレビ電話、携帯電話、携帯型PC、PDA、e-book、カムコーダー、衛星ナビゲーションシステム、商店とスーパーマーケットの価格設定システム、幹線道路の標識、情報ディスプレイ、スマートカード、玩具などの電子装置に用いる超軽量で可撓性の安価なディスプレイがある。
【0116】
例えばフラットパネルディスプレイに使用できる、LCDに代わるディスプレイ技術がある。注目すべき例は、有機のまたはポリマーの発光装置(OLED)または(PLED)であり、これらの装置はいくつかの層で構成され、これら層のうち一つは、この装置に電圧を印加することによって電気発光させることができる有機材料で構成されている。OLED装置は、一般にガラスまたはプラスチックポリマーなどの基板で形成されたラミネートである。あるいは、複数のこれらOLED装置を組み立てて、ソリッドステート照明ディスプレイ装置を製造できる。
【0117】
隣接する半導電体層のみならず発光有機固体の発光層は、アノードとカソードの間にサンドイッチされている。その半導電体層は、正孔注入層および電子注入層でもよい。PELDは、発光性有機材料がポリマーであるOLEDの亜種である。発光層は、多くの発光性有機固体、例えば適切に蛍光発光するかまたは化学発光する有機化合物のポリマーから選択される。かような化合物とポリマーとしては、8-ヒドロキシキノレートの金属イオン塩類;三価金属キノレート錯体類;三価金属架橋キノレート錯体類;シッフ塩基の二価金属錯体類;スズ(IV)金属錯体類;金属アセチルアセトネート錯体類;有機リガンドを組み入れた金属二座配位子錯体類、例えば2-ピコリルケトン類、2-キナルジルケトン類もしくは2-(o-フェノキシ)ピリジンケトン類;ビスホスホネート類;二価金属マレオニトリルジチオレート錯体類;分子電荷移動錯体類;希土類混合キレート類;(5-ヒドロキシ)キノキサリン金属錯体;トリス-キノリン酸アルミニウム;ならびにポリp-フェニレンビニレン、ポリジアルコキシフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニルアセチレン、ポリアニリン、ポリ3-アルキルチオフェン、ポリ3-オクチルチオフェンおよびポリN-ビニルカルバゾールなどのポリマーがある。電位差をカソードとアノードの間に印加すると、電子注入層からの電子と正孔注入層からの正孔が発光層に注入されて、電子と正孔が再結合し発光する。OLEDとPLEDは、Forrestらの米国特許第5,707,745号、Forrestらの同第5,721,160号、Forrestらの同第5,757,026号、Bulovicらの同第5,834,893号、Thompsonらの同第5,861,219号、Tangらの同第5,904,916号、Thompsonらの同第5,986,401,号、Forrestらの同第5,998,803号、Burrowsらの同第6,013,538号、Bulovicらの同第6,046543号、Tangらの同第6,048,573号、Burrowsらの同第6,048,630号、Tangらの同第6,066,357号、Forrestらの同第6,125,226号、Hungらの同第6,137,223号、Thompsonらの同第6,242,115号およびBurrowsらの同第6,274,980号に開示されている。
【0118】
典型的なマトリックスアドレス発光ディスプレイ装置では、多数の発光装置が、単一の基板上に形成され、レギュラーグリッドのパターンの群で配列されている。活性化は、行と列によるかまたは個々のカソードとアノードの経路を有する活性マトリックス中で行われる。OLEDは、まず透明電極を基板上に堆積させ次いで電極部分にOLEDをパターニングすることによって製造することが多い。次に、単一または複数の有機層を前記透明電極の上に堆積させる。金属電極を有機層の上に形成させる。例えば、Forrestらの米国特許第5,703,436号に開示されているように、透明なインジウムスズ酸化物(ITO)を正孔注入電極として使用し、およびMg--Ag--ITO電極層を使用して電子を注入する。
【0119】
本発明は、大部分のOLED装置の配置構成に電極として好ましくはアノードとして採用できる。これらOELD装置は、より複雑な装置、例えばアノードとカソードの直交アレーで構成され画素を形成する受動マトリックスディスプレイおよび各画素が独立して例えば薄膜トランジスター(TFT)で制御される活性マトリックスディスプレイに比べて、単一のアノードとカソードで構成された非常に単純な構造である。
【0120】
本発明を成功裡に実施できる多種類の配置構成の有機層がある。典型的な構造は、図6に示してあり、基板101、電子導電性ポリマー層102と導電性カーボンナノチューブ層104を含む本発明の導電性多層103で構成されたアノード、正孔注入層105、正孔搬送層107、発光層109、電子搬送層111およびカソード113で構成されている。これらの層については以下により詳細に記述する。なお基板は、代わりにカソードに隣接して配置してもよくまたは実際にアノードまたはカソードを構成していてもよいことに留意されたい。アノードとカソードの間の有機層は、便宜上エレクトロルミネッセント (EL)素子と呼称する。この有機層の全合計の厚さは好ましくは500 nm未満である。
【0121】
OLEDのアノードとカソードは電気導線260を通じて電圧/電流源250に接続されている。OLEDは、アノードがカソードより正の電位になるように、アノードとカソードの間に電位差を印加することによって作動させる。正孔はアノードから有機EL素子中に注入され、および電子はアノードの有機EL素子中に注入される。OLEDは、場合によっては、サイクルのある期間、ポテンシャルバイアスが逆転して電流が停止するACモードで作動させると、装置の安定性が向上する。AC駆動のOLEDの例は米国特許第5,552,678号に記述されている。
【0122】
EL放射をアノード103を通じて見る場合、アノードは対象の放射に対して透明であるかまたは実質的に透明でなければならない。したがって、本発明の透明性は、かようなOLEDディスプレイ装置にとって重要である。OLEDディスプレイ装置に使用される一般的な透明アノード材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)および酸化スズであるが、限定されないがアルミニウム-もしくはインジウム-ドープド亜鉛酸化物、マグネシウムインジウム酸化物およびニッケルタングステン酸化物を含む他の金属酸化物もアノードとして機能する。これらの酸化物に加えて、窒化ガリウムなどの金属窒化物、セレン化亜鉛などの金属セレン化物および硫化亜鉛などの金属硫化物はアノードとして使用できる。EL放射をカソード電極を通じてのみ見る用途には、アノードの透過特性は一般に、重要でなく、透明、不透明または反射性のどのような導電性材料でも使用できる。この用途向けの代表的な導電体としては、限定されないが、金、イリジウム、モリブデン、パラジウムおよび白金がある。典型的なアノードの材料は、透過性であろうとそうでなかろうと4.1 eV以上の作動機能を有している。望ましいアノード材料は、通常、蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法または電気化学的方法などの適当な方法で堆積される。アノードは公知のフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。アノードは、随意選択的に、他の層を塗布する前に研磨し表面の粗さを減らして、短絡を最小限にしまたは反射性を増大することができる。導電性被膜は、導電性ポリマーPEDOTの被膜形成機能によって許容可能な粗さを有することが期待される。
【0123】
本発明のもう一つの用途はタッチスクリーンであると考えられる。タッチスクリーンは、通常のCRTおよびコンピュータ特にポータブルコンピュータのフラットパネルディスプレイ装置に広く使用されている。本発明は、限定されないが、米国特許願公開第2003/0170456 A1号、同第2003/0170492 A1号、米国特許第5,738,934号および国際特許願公開第WO 00/39835号に開示されているタッチスクリーンを含めて当該技術分野で公知のどのタッチスクリーンの透明導電性部材としても利用できる。特に、本発明は、抵抗性タッチスクリーンと容量性タッチスクリーンに使用することができ、両スクリーンとも、薄くて導電性で透明性が高くかつ耐久性の高い電極に依存している。
【0124】
図7は、第一導電性多層14を有する透明基板12を含む、本発明の抵抗型タッチスクリーン用の多層部材10である。可撓性透明のカバーシート16は、スペーサ素子22によって第一導電性多層14から物理的に分離されている第二導電性多層18を含んでいる。各導電性多層は、導電性カーボンナノチューブ層と接触する電子導電性ポリマー層で構成されている。これら導電性多層間に電圧を印加する。導電性多層14と18の抵抗を選択して、電力消費量を最適化しかつ検出精度を設定する。可撓性カバーシート16が指またはスタイラスなどの外部物体によって変形すると、第二導電性多層18が第一導電性多層14と電気接触を起こして、これら導電性層間に電圧がかかる。この電圧の大きさが、導電性多層18と14の端縁に形成された金属の導電性パターン(図示せず)に接続されたコネクタ(図示せず)を通じて測定されて、前記変形物体の位置を突き止める。
【実施例】
【0125】
下記の非限定の実施例によって、本発明の実施方法を詳細に記述する。
単一層および多層の導電体の実施例:表I
【表1】

【0126】
コーティングAとBは、それぞれ販売主BekaertとKeytecが供給している。BekaertのITOは102μm のPET製基板にコートされる。Keytecの試料は、PETのITOが塗布されている面と反対側の面にコーティングを有している。Keytecの試料に使用したPETは厚さが203μmの基板である。
【0127】
コーティングC、D、EおよびDは以下のようにして作製した。以下の成分を使用して、多層の実施例と単一層の比較実施例を作製するためのコーティング組成物を製造した。
【0128】
コーティング組成物の成分
(a) Baytron P AG:電子導電性ポリチオフェンとポリアニオンすなわちポリ3,4-エチレンジオキシチオフェンスチレンスルホネート、H.C.Starckが供給;
(b) TX-100:非イオン性界面活性剤のコーティング助剤、Rohm & Haasが供給;
(c) エタノール;
(d) ジエチレングリコール:導電性を増大する薬剤、Aldrichが供給;
(e) Silquest A 187:3-グリシドキシ-プロピルトリメチルオキシシラン、Crompton Corporationが供給;および
(f) SWCNT:Carbon Solutionが供給するP3 swcnt製品
【0129】
適切な基板をコートして多層導電体の実施例を製造するため、下記コーティング組成物を調製した。
【0130】
コーティング組成物H
Baytron P AG(1.3%活性水溶液) 266 g
TX-100 1.5 g
ジエチレングリコール 12 g
Silquest A 187 5.4 g
高純度の水 28.47 g
【0131】
コーティング組成物I
Baytron P AG(1.3%活性水溶液) 266 g
TX-100 1.5 g
ジエチレングリコール 12 g
高純度の水 33.87 g
【0132】
コーティング組成物M
P3 swcnt-水中0.075質量%
TX-100-水中0.015質量%
エタノール-水中25質量%
高純度の水を加えて合計100質量%にする。
【0133】
使用した基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であった。そのPET基板は厚さが102μmで表面の粗さRaが0.5 nmの写真グレードのものであった。PETのコーティング面(前面)に、塩化ビニリデンコポリマーの薄い下塗り層を、厚さ80 nmで塗布した。170 mg/m2と350 mg/m2の間のBaytron P AGの乾燥被覆率が得られるように異なる湿潤被覆率で、コーティング組成物HまたはIを、ホッパーによって、基板の前面に塗布し、次に各コーティングを82℃で5分間乾燥した。第二パスにおいて適当なときに、8 mg/m2のSWCNTの乾燥被覆率が得られるように単一の湿潤被覆率で、前記乾燥Baytron P AGコーティング(組成物Hをコーティングすることによって先に堆積させた)の上に、コーティング組成物Mを塗布した。この方法で、本発明に従って、乾燥被覆率が異なる電子導電性Baytron P AGを有する導電性層が、第一層として、基板の表面にコートされ次いでそのBaytron P AGの上に、SWCNTの第二層が塗布された多層導電体の諸実施例を作製した。これらコーティングのシート抵抗Rs(オーム/スケア)を4点電気プローブで測定した。
【0134】
本発明の多層導電体の堅牢度を評価するため、小型のタッチスクリーンを作製して、下記のようにして試験した。
【0135】
図8に移って、単層導電体と多層導電体の材料の組合せの機械的堅牢度を、以下のようなシングルポール-シングルスローのタッチスクリーンを構築して評価した。
【0136】
可撓性基板上の1.27 cm x 3.8 cmの「底部」(装置側)導電性コーティング308を、コートされた大シートから切り出した。その底部導電性コーティング308を、導電性側を上にして25 mm x 75 mmの顕微鏡用スライドガラス301の一方の長端縁に沿って取り付けた。その底部導電性コーティング308は、この被膜片の1.27 cm長の末端を横切って貼り付けられてスライドガラスの2.5 cmの長さを超えて延びる(2)3.8 cmの長さの銅製ホイル(3M 1181 EMI Shielding Tape)で保持した。その過大のテープは、それ自体の上に折り返されて、電気的接続を行うためのアタッチメントタブを形成している。
【0137】
非臨界寸法の16個のスペーサードット303を、底部導電体の中央の1.27 cm x 1.27 cmの正方形領域の上に4 x 4マトリックスで設置した。スペーサードット303の寸法は、動作力を均一にするため直径が0.1-1.0 mmであり、好ましくは0.1-0.3 mmである。ドットは、尖ったアプリケーターを使って手で塗布したエポキシ樹脂(Devcon No.14250)で構成されている。1.27 cmx1.27 cm正方形の非導電性両面テープ305(Polyken)を、スライドガラスに前記スペーサードットマトリックスに隣接して貼り付けた。
【0138】
可撓性基板上の「頂部」(タッチ側)導電性コーティング306の1.27 cm x 3.8 cm片を、導電性側を下にして、前記両面テープの上に取り付けて、スペーサードットアレーを覆う前記片の一方の末端とスライドガラスの2.54 cmの長さを超えて延びるもう一方の末端とで「T」字型に配置した。2.54 cm長の導電性銅製ホイル312テープを、張り出している頂部導電体の周りに巻きつけて電気的アタッチメントを作製した。
【0139】
製造したタッチスクリーンはすべて、頂部と底部の電極の材料および層の構造が同じである。銀の導電性ペイント(Ernest Fullam No.14810)のラインを前記銅製テープ/導電性層の界面に塗布して、ホイルテープの導電性接着剤を強化した。
【0140】
シングルポイント動作試験法(single point actuation testing method)
完成したタッチスクリーンを、ブラシなしリニアモータとフォースモードのモーションコントロールからなる試験機の定置ネスト中に配置した。ポリウレタン製の球面半径が0.79 cmの半球スイッチの作動「フィンガー」(McMaster-Carr#95495K1)がロードセルに取り付けられ、そのロードセルは可動リニアモータステージに取り付けられている。前記フィンガーは、125 mS間のゼロフォース、125 mS間にわたるピークフォースへのリニアランプ、125 mS間のピークフォースでの保持および125 mS間にわたるリニアロード減少からなるフォースプロファイルで前記スイッチを押圧する。このローディングパターンを、試験期間中、1秒当たり2回、連続的に繰り返した。ピークフォースは、200-300gフォースに設定した。タッチスクリーンには、頂部と底部の導電体の間に調整電圧5Vを印加することによって電気的付加を加えた。ピークフォース期間の中央時点に、試験装置への接続を、電気的に切り替えて、動作サイクルの第二ハーフ中に逆方向に電流を流した。タッチスクリーンを流れる電流は、時間と動作フォースの関数として監視した。
【0141】
このタッチスクリーンは、12キロオーム以下の抵抗で作動と作動停止を行うように配慮した。記録したデータは、オン状態での抵抗およびオン状態にするのに必要なフォース例えば状態を切り替えるのに必要なフォースである。このタッチスクリーンは、オン状態での抵抗が常時12キロオームを超えるとき停止するよう配慮した。
【0142】
比較実施例1-−単一層ITO導電体のタッチスクリーン
表IのコーティングA(Bekaert ITO-Lot#5189376)を使ってタッチスクリーンを構築した。シングルポイント動作試験を実施して図9と10に示す結果を得た。Bekaert ITOの単一層は、10,000のシングルポイント動作(SPA)を完了すると早くもフォースの有意な変化を示して作動し始めた。オン状態の抵抗は、85,000 SPAを完了すると早くも有意な偏差を示した。Bekaert ITOの単一層は、88,000 SPAにおいて、オン状態の抵抗が常時12,000オームを超えた。さらに、88,000 SPAによって、動作フォースは大きく分散して安定でない。これらの図から、作動の回数が増大すると、作動させるのに必要な高いフォースおよび望ましくない増大するオン状態の抵抗に対応するデータの有意なばらつきが明示しているように、タッチスクリーンの信頼性が低下することは明らかである。その上に、このばらついたデータは、ポイント選択の決定について問題を起こす可能性があることを示している。
【0143】
比較実施例2-単一層Baytron P AG導電体のタッチスクリーン
表IのコーティングC(344 mg/m2のBaytron P AG)を使ってタッチスクリーンを構築した。SPA試験を実施して図11と12に示す結果を得た。Baytron P AGの単一層は、3,000のシングルポイント動作(SPA)を完了すると早くもフォースの有意な変化を示して作動し始めた。オン状態の抵抗は、6,000 SPAを完了すると早くも有意な偏差を示した。Baytron P AGの単一層は、6,000 SPAにおいて、オン状態の抵抗が永久的に12,000オームを超えて100,000+オームの値に到達した。さらに、6,000 SPAによって、作動フォースは急激に増大してその後すぐに停止した。これらの図から、作動回数が増大すると、作動させるのに必要な高いフォースおよび望ましくない増大するオン状態の抵抗に対応するデータの有意なばらつきで明示されているように、単一層Baytron P AGに基づいたタッチスクリーンの信頼性が低下することは明らかである。その上に、このばらついたデータは、ポイント選択の決定について問題を起こす可能性があることを示している。
【0144】
比較実施例3-単一層Baytron P AG(架橋剤含有)導電体のタッチスクリーン
表IのコーティングD(344 mg/m2のBaytron P AGw/Silquest A187)を使ってタッチスクリーンを構築した。SPA試験を実施した。このタッチスクリ−ンは、比較実施例2と同じオン状態抵抗と作動フォ−スのプロファイルを示し、17,000 SPAの後、停止した。作動回数が増大すると、作動させるのに必要な高いフォースおよび望ましくない増大するオン状態の抵抗に対応するデータの有意なばらつきで明示されているように、単一層の硬化剤含有Baytron P AGに基づいたタッチスクリーンの信頼性が低下することは明らかである。その上に、このばらついたデータは、ポイント選択の決定について問題を起こす可能性があることを示している。
【0145】
比較実施例4-単一層Keytec ITO導電体のタッチスクリーン
表IのコーティングB(400 mg/m2のKeytec ITO)を使ってタッチスクリーンを構築した。SPA試験を実施して図13と14に示す結果を得た。Keytec ITOの単一層は、25,000 SPAを完了すると早くもフォースが直線的に増大し、フォースの有意な変化を示して作動し始めた。オン状態の抵抗は、35,000 SPAを完了すると早くも有意な偏差を示した。Keytec ITOの単一層は、38,000 SPAにおいて、オン状態の抵抗が永久的に12,000オームを超えて13,000+オームの値に到達し、次いで10,000,000+オームという高い値まで増大し続けた。さらに、30,000 SPAによって、作動フォースは急激に増大し、その後作動フォースは有意にばらついてすぐに停止した。これらの図から、作動回数が増大すると、作動させるのに必要な高いフォースおよび望ましくない増大するオン状態の抵抗に対応するデータの有意なばらつきで明示されているように、単一層Keytec ITOに基づいたタッチスクリーンの信頼性が低下することは明らかである。その上に、このばらついたデータは、ポイント選択の決定について問題を起こす可能性があることを示している。
【0146】
本発明の実施例1-多層Baytron P AG(第一層):SWCNT(露出層)導電体のタッチスクリーン
表IのコーティングF(344 mg/m2のBaytron P AGの第一層と8 mg/m2のP3 SWCNTの第二層)を使ってタッチスクリーンを構築した。SPA試験を実施して図15と16に示す結果を得た。これらの結果から分かるように、本発明のタッチスクリーンは、500,000 SPAより大きいSPAが可能であり、そして特に安定なフォースを有し2.27x106のSPAにわたって作動した。そのオン状態での抵抗は、2.27x106のSPAにわたって安定であった。そのオン状態での抵抗は、2.27x106のSPAの全試験にわたって、約1225オームから1270オームまで変化するこの本発明のタッチスクリーンは、500,000 SPAより大きいSPAにおいて作動するためのフォースの変化は、40%より小さかった(約14 gから約19 gまで)。その作動するためのフォースは2.27x106のSPAにわたって、単に約14 gから30 gまで変化した。1000,000の作動にわたって、作動するためのフォースの変化がこのように最小限であるので、このタッチスクリーンを作動させるのに必要なフォースは変化しないから、作動中非常に信頼性が高く堅牢でかつ扱いやすいことを示している。
【0147】
本発明は、先に述べたように堅牢性を有意に改善することは予想外であるが明らかである。本発明の場合、SPAは、安定なオン状態の抵抗および特に安定な駆動力を有している。本発明が、作動の停止および/または顕著な変化なしで比較実施例のタッチスクリーンより有意に多い作動を維持できることは、本発明の信頼性を改善するために重要である。例えば、タッチスクリーンを駆動する力が時間の経過とともに増大するとき(例えば、タッチスクリ−ンの素子で携帯電話を使うとき)、タッチスクリーンの特定の点を選択することは、難しさが増大するであろうが、本発明は、このような問題に煩わされないことは明らかである。本発明の代表的な実施態様は、劇的に改良強化された導電体および/または電極の堅牢性を提供できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1A】本発明の導電性製品の断面図である。
【図1B】本発明の導電性製品の断面図である。
【図2A】純品の単層カーボンナノチューブの細管の両端が閉鎖されたものと開放されたものの概略図である。
【図2B】純品の単層カーボンナノチューブの細管の両端が閉鎖されたものと開放されたものの概略図である。
【図3A】官能基化された純品のカーボンナノチューブの細管の両端が閉鎖されたものと開放されたものの概略図である。
【図3B】官能基化された純品のカーボンナノチューブの細管の両端が閉鎖されたものと開放されたものの概略図である。
【図4】電気リード線で電源に接続された本発明の電子導電性製品を含むディスプレイ素子の概略図である。
【図5】本発明の実施例のポリマーを分散されたLCディスプレイの概略図である。
【図6】本発明のOLEDベースディスプレイの概略図である。
【図7】本発明の実施例の抵抗型タッチスクリーンの概略図である。
【図8】本発明の単層電極と多層電極を試験するため、本発明で作製したタッチスクリーンを示す分解図である。
【図9】比較実施例1の試験結果に基づいて、単層Bekaert ITOのタッチスイッチに対する単一点作動の関数として、オン状態での抵抗のプロファイルを示す。
【図10】比較実施例1の試験結果に基づいて、Bekaert ITOの単層に対する単一点作動の関数として、タッチスイッチを作動させる力を示す。
【図11】比較実施例2の試験結果に基づいて、Baytron P AG(PEDOT/PSS)の単層に対する単一点作動の関数として、タッチスイッチを作動させる力を示す。
【図12】比較実施例2の試験結果に基づいて、単層導電体Baytron P AGのタッチスイッチに対する単一点作動の関数として、オン状態での抵抗のプロファイルを示す。
【図13】比較実施例3の試験結果に基づいて、Keytec ITOの単層に対する単一点作動の関数として、オン状態での抵抗のプロファイルを示す。
【図14】比較実施例3の試験結果に基づいて、単層導電体Keytec ITOのタッチスイッチに対する単一点作動の関数として、オン状態での抵抗のプロファイルを示す。
【図15】本発明の実施例1の試験結果に基づいて、本発明の多層導電体(Baytron P AG底部、SWCNT頂部)に対する単一点作動の関数として、タッチスイッチを作動させるフォースを示す。
【図16】本発明の実施例1の試験結果に基づいて、本発明の多層導電体(Baytron P AG底部、SWCNT頂部)タッチスイッチに対する単一点作動の関数として、オン状態での抵抗のプロファイルを示す。
【符号の説明】
【0149】
10 抵抗型タッチスクリーンの製品
11 透明基板
14 第一導電性多層
15 可撓性基板
16 透明カバーシート
18 第二導電性多層
20 電子導電性ポリマー層
21 導電性カーボンナノチューブ層
22 スペーサー素子
30 光変調液晶層
35 ナノピグメンテッド機能層
40 第二導電性層
42 誘電層
44 導電性行接触子(conductive row contact)
50 LCD製品
60 ディスプレイ素子
62 基板
63 導電性カーボンナノチューブ層
64 電子導電性ポリマー層
66 電源
68 リード電線
101 基板
102 電子導電性ポリマー層
103 本発明の導電性多層で構成されたアノード
104 導電性カーボンナノチューブ層
105 正孔注入層
107 正孔輸送層
109 発光層
111 電子輸送層
113 カソード
250 電圧/電流源
260 導電体
298 導電性製品
299 導電性製品
300 基板
302 電子導電性ポリマーを含む導電性層
304 カーボンナノチューブを含む導電性層
301 顕微鏡用スライドガラス
308 底部装置側の電極
303 誘電スペーサードット
312 銅製ホイルテープ
305 両面接着テープ
306 頂部タッチ側電極
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子導電性ポリマーを含有する少なくとも一つの導電性層と接触する少なくとも一つの導電性カーボンナノチューブ層を含んでなる電子導電性製品。
【請求項2】
前記導電性製品が透明である請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、共有結合された親水性基で官能基化されている請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記少なくとも一つのカーボンナノチューブ層中の前記カーボンナノチューブが、1平方フィート当たり1-100 mgの間の量で存在している請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記少なくとも一つのカーボンナノチューブ層が、40-100質量%の間のカーボンナノチューブを含有している請求項1に記載の製品。
【請求項7】
カーボンナノユーブを含む前記層中の前記カーボンナノチューブが、ポリマーマトリックス中に存在している請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記製品が、さらに、ポリエステル、セルロースエステル、ポリカーボネートまたはガラス製の支持体を含んでいる請求項1に記載の製品。
【請求項9】
前記製品が70%より大きい可視光透過率を有する請求項1に記載の製品。
【請求項10】
カーボンナノチューブを含む前記層または電子伝導性ポリマーを含む前記層が、さらに架橋剤を含有している請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記製品が、順に、導電性カーボンナノチューブ層、電子導電性ポリマーを含む導電性層、および基板を含んでいる請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記電子導電性ポリマーがポリチオフェンとポリアニオンを含有し、前記ポリチオフェンが、カチオン型の下記式:
【化1】

(式中、R1とR2は各々、独立して水素もしくはC1-4アルキル基を表し、または随意選択的に置換されたC1-4アルキレン基もしくはシクロアルキレン基好ましくはエチレン基、随意選択的にアルキルで置換されたメチレン基、随意選択的にC1-12アルキル-もしくはフェニル-で置換された1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、または1,2-シクロヘキシレン基であり;およびnは3-1000である)で表される請求項11に記載の製品。
【請求項13】
電子導電性ポリマーを含む前記導電性層がさらにカーボンナノチューブを含んでいる請求項11に記載の製品。
【請求項14】
前記諸層をプレフォームし次いでともに積層した請求項1に記載の製品。
【請求項15】
前記諸層を順次流延した請求項1に記載の製品。
【請求項16】
前記諸層のうち少なくとも一つがパターニングされている請求項1に記載の製品。
【請求項17】
順に、タッチング電極、スペーサー素子、導電性カーボンナノチューブ層、電子導電性ポリマーを含む導電性層および基板を含むタッチスクリーン。
【請求項18】
前記電子導電性ポリマーがポリチオフェンとポリアニオンを含有し、前記ポリチオフェンが、カチオン型の下記式:
【化2】

(式中、R1とR2は各々、独立して水素もしくはC1-4アルキル基を表し、または随意選択的に置換されたC1-4アルキレン基もしくはシクロアルキレン基好ましくはエチレン基、随意選択的にアルキルで置換されたメチレン基、随意選択的にC1-12アルキル-もしくはフェニル-で置換された1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、または1,2-シクロヘキシレン基であり;およびnは3-1000である)で表される請求項17に記載のタッチスクリーン。
【請求項19】
電子導電性ポリマーを含む前記導電性層がさらにカーボンナノチューブを含んでいる請求項17に記載のタッチスクリーン。
【請求項20】
さらに、前記基板の前記導電性層が塗布されている面に対して反対側の面にコーティングを有する請求項17に記載のタッチスクリ−ン。
【請求項21】
さらに、前記基板の前記導電性層が塗布されている面に対して反対側にコーティングを有する請求項11に記載の製品。
【請求項22】
前記基板の前記導電性層が塗布されている面に対して反対側の面上の前記コーティングが硬質コートを含んでいる請求項17に記載のタッチスクリーン。
【請求項23】
前記基板の前記導電性層が塗布されている面に対して反対側の面上の前記コーティングが硬質コートを含んでいる請求項11に記載の製品。
【請求項24】
前記コーティングが反射防止コーティングである請求項20に記載のタッチスクリーン。
【請求項25】
前記コーティングが対反射コーティングである請求項20に記載のタッチスクリーン。
【請求項26】
前記製品が、10,000オーム/スケアまでのシート抵抗を有する請求項1に記載の製品。
【請求項27】
前記製品が、0.001-500オーム/スケアの間のシート抵抗を有する請求項1に記載の製品。
【請求項28】
個々のカーボンナノチューブが10 nm-1 mの間の長さを有する請求項1に記載の製品。
【請求項29】
個々のカーボンナノチューブが0.5-4 nmの間の直径を有する請求項1に記載の製品。
【請求項30】
さらに、一つまたは二つ以上の導電性層中に形成された導電性エンハンサーを含んでいる請求項1に記載の製品。
【請求項31】
導電性カーボンナノチューブ層または電子導電性ポリマーを含む導電性層が、10 nm-1μmの間の厚さを有する請求項1に記載の製品。
【請求項32】
導電性カーボンナノチューブ層が1nm-1,000 nmの間の厚さを有する請求項1に記載の製品。
【請求項33】
電子導電性ポリマーを含む少なくとも一つの導電性層が、50以下の性能指数を有する請求項1に記載の製品。
【請求項34】
請求項1に記載の電子導電性製品を有するディスプレイス装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−508292(P2009−508292A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529007(P2008−529007)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/019932
【国際公開番号】WO2008/018852
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】