説明

カーボンナノチューブ成長用基板及びその製造方法、並びにカーボンナノチューブの製造方法

【課題】カーボンナノチューブを成長させた場合に膜はがれが生じないカーボンナノチューブ成長用基板及びその製造方法を提供し、さらにまた、膜はがれが生じずにカーボンナノチューブを成長させることができるカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ成長用基板は、基板の対象面に、分散された状態で形成された触媒粒子13と、この触媒粒子13が形成された領域上に、触媒粒子13がその側面に露出するように設けられた非触媒層パターンとを備える。このカーボンナノチューブ成長用基板を製造する。また、このカーボンナノチューブ成長用基板でカーボンナノチューブを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ成長用基板及びその製造方法、並びにカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の微細化に伴って、金属配線としてCuやWを用いた場合の抵抗の増加や電流密度の低さが問題となっているため、低抵抗で電流密度が高いカーボンナノチューブが配線材料として注目されている。カーボンナノチューブを配線として用いるためには、カーボンナノチューブを基板に対して垂直に成長させるのではなく、基板に対して水平に成長させることが必要である。このようなカーボンナノチューブの水平成長方法として、基板上に所定の触媒パターンを形成させる段階と、基板上にカーボンナノチューブの垂直成長を抑制する層を形成する段階と、基板及び垂直成長を抑制する層に開口部を形成して、触媒パターンを露出させる段階、及び露出された触媒パターン位置でカーボンナノチューブを合成して水平成長させる段階を備えたカーボンナノチューブの水平成長方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002―118248号公報(請求項1、段落0034)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる方法を実施すると、カーボンナノチューブが、露出された触媒パターン位置だけでなく露出されていない触媒パターン位置からも成長してしまったり、また、触媒パターンが膨張したりして、膜はがれの原因となるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、カーボンナノチューブを成長させた場合に膜はがれが生じないカーボンナノチューブ成長用基板及びその製造方法を提供し、さらにまた、膜はがれが生じずにカーボンナノチューブを成長させることができるカーボンナノチューブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーボンナノチューブ成長用基板は、基板の対象面に、分散された状態で形成された触媒金属からなる触媒粒子と、この触媒粒子が形成された領域上に、触媒粒子がその側面に露出するように設けられた触媒金属を含有しない非触媒層パターンとを備えたことを特徴とする。
【0007】
従来の膜はがれの原因は、カーボンナノチューブ成長時の炭素含有ガスが、触媒金属を介して触媒層深部まで拡散したことによる。他方、本発明においては、触媒金属を粒子状の触媒粒子とし、この触媒粒子を分散した状態で形成しており、膜のような連続的な形状とはしていないので、触媒金属を介して炭素含有ガスが基板深部まで到達しないため、膜はがれを防止して、カーボンナノチューブを水平方向に成長させることができる。
【0008】
前記非触媒層パターンが、SiO、TiO、ゼオライト及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。これらを用いて形成することで、簡易に触媒粒子の上部からのカーボンナノチューブの成長を防止することができると共に、膜はがれを抑制することが可能である。
【0009】
前記触媒粒子の粒径が、0.5〜10nmであることが好ましい。これらの粒径であれば、膜はがれなくカーボンナノチューブを水平方向に成長させることが可能である。10nmを超えると、1つの触媒粒子から複数のカーボンナノチューブが成長したり、また、カーボンナノチューブが逆に成長しにくくなるという問題がある。他方で、0.5nmより小さいと、カーボンナノチューブが著しく成長しにくくなるからである。
【0010】
本発明のカーボンナノチューブ成長用基板の製造方法は、基板の対象面に触媒粒子を分散させた状態で形成した後、少なくとも触媒粒子が形成された領域を覆うように非触媒膜を形成し、次いで、非触媒膜を加工して、その側面に前記触媒粒子が露出するように非触媒層パターンを形成することを特徴とする。本発明においては、触媒粒子を分散させた状態で形成しているので、得られたカーボンナノチューブ成長用基板でカーボンナノチューブを成長させる場合に、膜はがれを防止することができる。
【0011】
前記カーボンナノチューブ成長用基板の製造方法の好適な実施としては、前記非触媒膜がSiO、TiO、ゼオライト及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
【0012】
前記触媒粒子は、アークプラズマガン法により形成することが好ましい。アークプラズマガン法を用いることで、簡易に所望の触媒粒子を形成することができる。
【0013】
前記基板上に、レジストパターンを設け、次いでこのレジストパターンを含む全面に、前記触媒粒子を分散させた状態で形成し、その後、前記非触媒膜を形成した後に、前記レジストパターンをリフトオフして、前記非触媒層パターンを形成することが好ましい。リフトオフにより非触媒層パターンを形成することで、触媒粒子を露出する構造を簡易に形成できる。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、基板上に、レジストパターンを設け、次いでレジストパターンを含む全面に、触媒粒子を分散させた状態で形成した後、触媒粒子が形成された領域を覆うようにSiO、TiO、ゼオライト、及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなる非触媒膜を形成し、次いで、前記レジストパターンをリフトオフして、その側面に前記触媒粒子が露出するように非触媒層パターンを形成し、その後、加熱して露出した前記触媒粒子を凝集させると共に炭素含有ガスをこの凝集した触媒粒子に接触させて露出した前記触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させることを特徴とする。かかる製造方法で製造されたカーボンナノチューブは、基板に対して水平に成長でき、かつ、膜はがれが生じない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカーボンナノチューブ成長用基板及びその製造方法によれば、カーボンナノチューブ成長時の膜はがれを防止できるという優れた効果を奏する。また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、基板上の膜はがれなくカーボンナノチューブを製造することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1を参照して説明する。図1は、カーボンナノチューブ成長用基板の構造を示す模式的断面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、カーボンナノチューブ成長用基板1は、母基板11を有する。母基板11としては、シリコン、石英、サファイヤ、アルミナなどを用いることができ、本実施形態においては面方位が(100)であるシリコン基板を用いている。この母基板11の表面には、母基板11を構成するシリコンとカーボンナノチューブ成長に用いる触媒との反応を防止するための反応防止層12(ここでは一例としてSiO膜としている)が形成されている。なお、本実施形態では母基板11がシリコンであるため反応防止層12を設けたが、母基板11が触媒金属とは反応しない材料からなるものであれば、反応防止層12を設けなくてもよい。
【0018】
反応防止層12上の一部には、触媒粒子13が分散された状態で反応防止層12に形成されている。この触媒粒子13が設けられた領域上には、非触媒層パターン14が形成され、この非触媒層パターン14の側面には、触媒粒子13が露出している。触媒粒子13は、カーボンナノチューブを成長させることができる触媒金属、つまり、鉄、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1種からなる触媒金属(これらから選ばれた少なくとも2種からなる触媒合金も含む)からなる粒子である。ここで、分散された状態とは、各粒子が結合して連続した膜状とはなっていないことをいう。
【0019】
本実施形態では、触媒金属が膜状となって構成されている触媒層を設けるのではなく、粒子状の触媒粒子13を分散された状態で基板上に形成していることで、膜はがれが生じることを抑制している。これは、以下のようなことによる。即ち、従来のように、触媒金属のみからなる膜状の触媒層を設けた場合には、触媒層の露出面から触媒層の深部まで、カーボンナノチューブ成長時に用いる炭素含有ガスが拡散して、露出面以外の場所からもカーボンナノチューブが成長したり、触媒層が膨張したりして、膜はがれが生じていた。つまり、従来では膜状に触媒層が形成されていたことが膜はがれの原因であった。
【0020】
そこで、本実施形態においては、触媒粒子13を分散された状態で基板上に形成することで、炭素含有ガスが触媒金属を介して深部まで拡散しないようにしている。つまり、本実施形態では、触媒粒子13が膜状ではないので、炭素含有ガスは、非触媒層パターン14の側面において露出している触媒粒子13にのみ接触し、深部まで拡散されない。これにより、本実施形態では膜はがれが生じることを抑制できる。
【0021】
上記したように、効率よく膜はがれを防止しつつ、かつ、効果的にカーボンナノチューブを成長させるためには、触媒粒子13の粒子径は、0.5〜10nm、好ましくは1〜5nm程度である。
【0022】
非触媒層パターン14は、カーボンナノチューブ成長時の条件で変質しないもの、例えば、セラミック系(TiN、AlN等)、酸化物系(SiO、TiO、アルミナ、ゼオライト等)、金属系(クロム、ニッケル)等が挙げられ、好ましくは、SiO、TiO、ゼオライト及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなるものである。本実施形態においては、ハンドリングの面などを考慮してSiOを用いている。非触媒層パターン14を設けることで、触媒粒子13の上部からのカーボンナノチューブの成長を防止して、基板に対して水平方向にカーボンナノチューブを成長させることができる。
【0023】
このようなカーボンナノチューブ成長用基板1を用いて、後述する所定の条件で化学気相成長法(例えば熱CVD法)によりカーボンナノチューブを成長させる。この化学気相成長法の実施により、図1(b)に示すように非触媒層パターン14の側面に露出した触媒粒子13が凝集し、この凝集してなる凝集触媒粒子15からカーボンナノチューブ16が成長する。なお、触媒粒子13が凝集して、例えば膜のような連続形状となることはなく、非触媒層パターン14の側面に露出した触媒粒子13が凝集してなる凝集触媒粒子15同士は接触しない。従って、炭素含有ガスが深部に拡散することがないので、カーボンナノチューブ16は、膜はがれを生じさせずに、凝集触媒粒子15から成長することができる。
【0024】
カーボンナノチューブ成長用基板の製造方法及びカーボンナノチューブの成長方法について、図2を用いて以下説明する。図2は、カーボンナノチューブ成長用基板の製造方法及び得られたカーボンナノチューブ成長用基板を用いたカーボンナノチューブの成長方法の工程を示す模式的断面図である。
【0025】
図2(a)に示すように、初めにシリコンからなる母基板11の対象面にスパッタリング法により酸化膜(SiO膜)21を形成し、反応防止層12とする。なお、予め熱酸化による酸化膜21が形成されている母基板11を用いてもよい。
【0026】
次いで、図2(b)に示すように、レジスト膜を形成した後、リソグラフィー法によってラインアンドスペースのレジストパターン22を形成する。なお、リソグラフィー法としては、フォトリソグラフィー法、エレクトロンビームリソグラフィー法などが挙げられる。
【0027】
このレジストパターン22を含めた対象面に対して触媒粒子13を分散させた状態で形成する。形成方法としては、アークプラズマガン法、触媒粒子13を含んだ塗布液を塗布する液相法、レーザーをターゲットに照射して粒子を形成し、この粒子を基板に堆積させる形成方法などが挙げられる。このうち、簡易に微粒子を形成することができるアークプラズマガン法について、図3を用いて説明する。図3は、アークプラズマガン法を実施するためのアークプラズマガン装置の断面模式図である。
【0028】
アークプラズマガン装置3は、図示しない真空排気系を備えた真空チャンバ31を有している。真空チャンバ31の底壁には、後述する同軸型真空アーク蒸着源4が配置されている。天井壁には、天井壁に設置された基板ホルダ32によって基板Sが保持されるように構成されている。
【0029】
同軸型真空アーク蒸着源4は、基板ホルダ32と対向するようにその一端が開放された円筒状のアノード電極41を有する。アノード電極41の内部には、カソード電極42が金属製の設置台43上に設けられている。この設置台43は、アノード電極41の内部の中央に設けられている。カソード電極42は、触媒材料44,絶縁部材45,絶縁碍子46及びトリガ電極47を備える。
【0030】
カソード電極42について詳細に説明すると、カソード電極42を構成する触媒材料44は、円柱状であり、上述した触媒粒子13の材料である触媒金属からなる。この場合に、触媒材料44は、その中心軸線がアノード電極の中心軸線と一致する様に、設置台43の中央に設けられた凹部431に設置されており、触媒材料44は設置台43と電気的に接続された状態となっている。
【0031】
触媒材料44の外周には、円筒状の絶縁部材(例えばAl23等からなる)45が触媒材料44に接して設けられている。この場合に、触媒材料44の設置位置における基板ホルダ32側の端面が、絶縁部材45の基板ホルダ32側の端面より好ましくは0mm〜1.0mm、特に好ましくは0.5mm〜1.0mm低くなるように構成する。このように構成することで、後述するように、溶融した触媒材料44が絶縁部材45の端面に付着しないため、触媒材料44及びトリガ電極47間が短絡せずアーク放電を安定して行うことができる。
【0032】
絶縁部材45の外周には、円筒状の絶縁碍子46及び円筒状のトリガ電極47が設けられている。絶縁碍子46及びトリガ電極47の外径は略同一であり、トリガ電極47は絶縁碍子46上に載置されている。かかる構成とすることで、筒状のトリガ電極47は、絶縁部材45及び絶縁碍子46により、設置台43及び触媒材料44とは電気的に接続しない状態となる。この場合に、トリガ電極47の基板ホルダ32側の端面の位置が、絶縁部材45の基板ホルダ32側の端面の位置よりも、0mm〜1.0mm、特に好ましくは0.5mm〜1.0mm低くなるように構成する。このように構成することで、後述するように触媒材料44が溶融して、仮にその液滴がアノード電極側に吹き飛び、絶縁部材45の端面に付着した場合であっても、触媒材料44とトリガ電極47との間の電気的絶縁が保持されるためトリガ放電の発生を維持することができる。
【0033】
また、真空チャンバ31の外部には、同軸型真空アーク蒸着源4の電源部5が設けられている。電源部5は、トリガ電源51、アーク電源52及びコンデンサユニット53からなる。
【0034】
電源部5について詳細に説明すると、カソード電極42とトリガ電極47との間にはトリガ電源51が接続されている。トリガ電源51は、パルストランスからなり、入力電圧200Vのパルス電圧を約17倍に昇圧して3.4kV(数μA)にして出力できるように構成され、この昇圧された電圧をカソード電極42に対して正の極性でトリガ電極47に印加できるように接続されている。カソード電極42とアノード電極41との間にはアーク電源52が接続され、アーク電源52には、コンデンサユニット53が並列接続されている。なお、コンデンサユニット53としては、アーク電源により所望の電荷を蓄えることができるものであれば、コンデンサをいくつ備えていてもよく、図中では例として2つ備えている。
【0035】
上記アークプラズマガン装置3を用いて基板上に触媒粒子13を形成する方法について以下説明する。まず、トリガ電源51からトリガ電極47−カソード電極42間に電圧を印加すると、カソード電極42の先端の触媒材料44−トリガ電極47間でトリガ放電が発生し、触媒材料44から微量の電子とイオンとが発生する。このとき、アーク電源52からカソード電極42−アノード電極41間に電圧を印加すると、カソード電極42の先端の触媒材料44−アノード電極41間で、前記微量な電子とイオンとが引き金となって主放電であるアーク放電が発生する。同時に、アーク電源中のアーク電源52により充電されていたコンデンサユニット53から蓄電流(アーク電流)が放出され、このアーク電流がアノード電極41からカソード電極42に向かって流入する。これにより、触媒材料44表面が融解し、かつプラズマ化してイオンと電子が形成される。
【0036】
そして、このアーク電流によって触媒材料44に磁場が発生すると、前記触媒材料44から生成された電子は、初速度に応じたローレンツ力をうけてアノード電極41の開口から真空チャンバ31内に電子流となって放出される。この電子流に前記触媒材料44から生成されたイオンがクーロン引力によって引き寄せられるので、アノード電極41の開口から真空チャンバ内に放出され、基板ホルダ32に設置された基板S上に到達して、触媒粒子が付着する。このようなトリガ放電を多数回繰り返すことで、トリガ放電毎にアーク放電が誘起され、触媒材料44からなる触媒粒子13が基板上に分散した状態で付着(形成)される。本装置においては、この粒子の付着を繰り返すことで成膜をすることも可能であるが、本実施形態においては、粒子が分散された状態で止めることで、膜状の触媒層を形成することに起因する膜はがれを防止するものである。
【0037】
即ち、本実施形態においては、上記アークプラズマガン装置3を用いて以下のように触媒粒子13を形成する。初めに、図2(b)に示す工程を終了した基板を基板ホルダ32に設置する。次いで、トリガ電源51からトリガ電極47−カソード電極42間に電圧(3〜5kV)を印加すると共に、アーク電源52からカソード電極42−アノード電極41間に電圧(60〜400V)を印加する。また、コンデンサユニット53における容量は、360〜8800μFである。360μFより小さいと触媒粒子13が小さくなりすぎ、8800μFよりも大きいと触媒粒子13が大きくなりすぎてしまう。即ち、触媒粒子13の粒径は、このコンデンサユニット53の容量に依存する。この電圧印加を繰り返すことで、図2(c)に示すように、基板上に、分散された状態で直径0.5〜10nmの触媒粒子13を形成することができる。さらに、この時のトリガ放電の回数により、基板上にいくつの触媒粒子13を形成するかを調整することができるので、例えば、10回トリガ放電させることにより、10個の触媒粒子13を基板上に形成することができる。
【0038】
なお、このアークプラズマガン装置3においては、基板を真空チャンバ31の天井面側に設置するように構成しているが、真空チャンバ31の底面側に設置してもよい。例えば、基板を真空チャンバ31の底面側に設置し、天井面側に同軸型真空アーク蒸着源4を設置してもよい。また、同軸型真空アーク蒸着源4を二つ設けてアークプラズマガン装置3を構成してもよい。さらに、二つの同軸型真空アーク蒸着源4のうち、一方には触媒材料44としてTiを用い、他方には触媒材料44としてCoを用いてもよい。このように構成すれば、基板上に2種類の触媒粒子を形成することができる。また、図中では触媒粒子13を基板全面に分散した状態で形成したが、非触媒層の側面となる位置近辺だけに予め触媒粒子を形成することも可能である。この場合には、側面となる位置近辺に開口を有するマスクを設けて触媒粒子を形成する。
【0039】
図2に戻り、図2(d)に示すように、触媒粒子13上に、非触媒膜23を形成する。非触媒膜23の形成方法としては通常用いられる成膜方法、例えばスパッタリング法やCVD法等を用いることができる。
【0040】
その後、図2(e)に示すように、レジストパターン22をリフトオフして、非触媒層パターン14とする。このようにリフトオフした場合には、非触媒層パターン14の側面に触媒粒子13が露出している。また、このような非触媒層パターン14を形成するためには、上述したようにリフトオフを用いることが好ましい。例えば、レジストパターン22を形成せずに、触媒粒子13上に非触媒膜23を形成した後にエッチングにより非触媒層パターン14を形成しようとすると、端面に非触媒層パターン14が残ってしまって触媒粒子13が露出しない場合も考えられるからである。このようにして簡易にカーボンナノチューブ成長用基板1を作製することができる。
【0041】
最後に、図2(f)に示すように、得られたカーボンナノチューブ成長用基板1に対し、熱CVD法によりカーボンナノチューブ16を成長させる。熱CVD法の条件としては、例えば、炭素含有ガス:Nによりエタノールをバブリングさせてなるエタノール蒸気をN500〜2000sccmでCVD装置内に導入したエタノールガス、圧力:大気圧、温度:750〜850℃である。この温度及びガス条件により、触媒粒子13は凝集して凝集触媒粒子15となり、この露出された凝集触媒粒子15からカーボンナノチューブ16は成長し、基板と水平方向に成長する。これにより膜はがれが発生しない。炭素含有ガスとしては、エタノールガス以外にも、例えばCOガス、CHガスなどを用いてもよい。
【0042】
このようなカーボンナノチューブ成長用基板を用いることで、カーボンナノチューブ16を基板と水平方向に成長させることができるので、例えば、図4に示すようなカーボンナノチューブが配線として電極間に架橋してなるトランジスタ素子を作製することができる。図4は、本発明のカーボンナノチューブ成長用基板を用いたトランジスタの(a)断面図、及び(b)上面図である。
【0043】
図4に示すトランジスタ素子6は、図1(a)に示すカーボンナノチューブ成長用基板を用いたバックゲート型のトランジスタ素子であり、母基板11の対象面とは逆の面にバックゲート電極61が形成されている。また、母基板11の対象面には、反応防止層12としての絶縁膜が設けられている。絶縁膜上には、触媒粒子13及び非触媒層パターン14が離間して形成され、それぞれを覆ってソース電極62及びドレイン電極63が形成されている。そして、対向する非触媒層パターン14間で凝集触媒粒子15から成長したカーボンナノチューブ16が接合して、電極間を架橋する配線となっている。この場合に、非触媒層パターン14としては金属(特に好ましくはTi)を用いれば、カーボンナノチューブ16に直接電圧を印加することが可能である。かかるトランジスタ素子6は、基板に対して水平にカーボンナノチューブが成長しているので製造しやすい。
【実施例1】
【0044】
本実施例では、カーボンナノチューブ成長用基板を作製し、カーボンナノチューブを成長させた。
【0045】
初めに、予め反応防止層12である酸化膜21が形成されている母基板11に対して、レジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィー法によってラインアンドスペースのレジストパターン22を形成した。次いで、このレジストパターン22を含めた対象面の全面に対して、アークプラズマガン装置3により、触媒粒子13を形成した。この時のアークプラズマガン法の条件は、アーク電源:100V、コンデンサユニット:1080μF、アノード電極と基板との距離:90mm、トリガ放電回数:50回であり、得られた触媒粒の粒径は2〜5nmであった。
【0046】
次いで、アークプラズマガン法を停止し、基板をスパッタリング装置へ移動した後に、スパッタリング装置においてスパッタリング法により、SiOからなる非触媒膜23を形成した。その後、レジストパターン22をリフトオフして、非触媒層パターン14として、その側面に触媒粒子13が露出するようにした。このようにしてカーボンナノチューブ成長用基板1を作製した。
【0047】
得られた基板をCVD装置内に載置して、熱CVD法によりカーボンナノチューブを成長させた。熱CVD法の条件は、ガス:Nによりエタノールをバブリングさせてなるエタノール蒸気をN:1000sccmでCVD装置内に導入、圧力:大気圧、温度:800℃、成長時間:20分であった。結果を図5に示す。図5は、得られた基板の上面SEM写真である。図5に示すように、カーボンナノチューブは基板に対して水平方向に成長し、膜はがれは確認されなかった。
【0048】
(比較例1)
本比較例では、触媒粒子を触媒金属からなる膜で作製した点以外は全て実施例1と同様にカーボンナノチューブ成長用基板を作製し、このカーボンナノチューブ成長用基板にカーボンナノチューブを成長させた。
【0049】
初めに、予め熱酸化膜が形成されている母基板に対して、レジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィー法によってラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンを含めた対象面の全面に対して、コバルトターゲットを用いたスパッタリング法により、触媒膜を厚さ0.5nmで形成した。次いで、コバルトのスパッタリングを停止して、SiOターゲットを用いたスパッタリング法により、非触媒膜を厚さ50nmで形成した。その後、レジストパターンをリフトオフして、触媒層及び非触媒層からなる積層構造とした。得られた積層構造の側面において、触媒層が露出していた。このようにして得られたカーボンナノチューブ成長用基板に実施例1と同一の条件で熱CVD法を行った。その結果、非触媒層が母基板から全てはがれてしまった。これは、触媒層に熱CVD法で用いられた炭素含有ガスが拡散されて触媒層が膨張したことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のカーボンナノチューブ成長用基板は、膜はがれを生じずにカーボンナノチューブを成長させることができる。従って、半導体製造分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】カーボンナノチューブ成長用基板の断面模式図である。
【図2】カーボンナノチューブ成長用基板の作製工程を説明するための断面模式図である。
【図3】アークプラズマガン装置を示す断面模式図である。
【図4】カーボンナノチューブ成長用基板を用いたトランジスタ素子の模式図である。
【図5】実施例1の結果を示すSEM写真である。
【符号の説明】
【0052】
1 カーボンナノチューブ成長用基板
3 アークプラズマガン装置
4 同軸型真空アーク蒸着源
5 電源部
6 トランジスタ素子
11 母基板
12 反応防止層
13 触媒粒子
14 非触媒層パターン
15 凝集触媒粒子
16 カーボンナノチューブ
21 酸化膜
22 レジストパターン
23 非触媒膜
31 真空チャンバ
32 基板ホルダ
41 アノード電極
42 カソード電極
43 設置台
44 触媒材料
45 絶縁部材
46 絶縁碍子
47 トリガ電極
51 トリガ電源
52 アーク電源
53 コンデンサユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の対象面に、分散された状態で形成された触媒金属からなる触媒粒子と、この触媒粒子が形成された領域上に、触媒粒子がその側面に露出するように設けられた触媒金属を含有しない非触媒層パターンとを備えたことを特徴とするカーボンナノチューブ成長用基板。
【請求項2】
前記非触媒層パターンが、SiO、TiO、ゼオライト及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ成長用基板。
【請求項3】
前記触媒粒子の粒径が、0.5〜10nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ成長用基板。
【請求項4】
基板の対象面に触媒粒子を分散させた状態で形成した後、少なくとも触媒粒子が形成された領域を覆うように非触媒膜を形成し、次いで、非触媒膜を加工して、その側面に前記触媒粒子が露出するように非触媒層パターンを形成することを特徴とするカーボンナノチューブ成長用基板の製造方法。
【請求項5】
前記非触媒膜がSiO、TiO、ゼオライト及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項4記載のカーボンナノチューブ成長用基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板上に、アークプラズマガン法により前記触媒粒子を分散させた状態で形成することを特徴とする請求項4又は5記載のカーボンナノチューブ成長用基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板上に、レジストパターンを設け、次いでこのレジストパターンを含む全面に、前記触媒粒子を分散させた状態で形成し、その後、前記非触媒膜を形成した後に、前記レジストパターンをリフトオフして、前記非触媒層パターンを形成することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ成長用基板の製造方法。
【請求項8】
基板上に、レジストパターンを設け、次いでレジストパターンを含む全面に、触媒粒子を分散させた状態で形成した後、触媒粒子が形成された領域を覆うようにSiO、TiO、ゼオライト、及びクロムから選ばれた少なくとも1種からなる非触媒膜を形成し、次いで、前記レジストパターンをリフトオフして、その側面に前記触媒粒子が露出するように非触媒層パターンを形成し、その後、加熱して露出した前記触媒粒子を凝集させると共に炭素含有ガスをこの凝集した触媒粒子に接触させて露出した前記触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−234845(P2009−234845A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82200(P2008−82200)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】