カーボンナノチューブ製造用触媒、それを用いたカーボンナノチューブの製造方法及び該触媒の製造方法
【課題】700℃以下の低温において、カーボンナノチューブを低コストかつ高収率で製造する。
【解決手段】触媒成分としてニッケル及びマグネシウムを含み、その触媒成分がシリカ担体に担持されている触媒を用い、700℃以下の反応温度で炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造する。
【解決手段】触媒成分としてニッケル及びマグネシウムを含み、その触媒成分がシリカ担体に担持されている触媒を用い、700℃以下の反応温度で炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための触媒、その触媒を用いたカーボンナノチューブの製造方法、及びその触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは高い機械強度及び導電性などの特性により、産業への応用が期待されているが、高価であることが普及へのひとつのハードルとなっている。
【0003】
カーボンナノチューブの一般的製法としては、アーク放電、レーザアブレーション法及びCVD法がある。前2者はナノチューブの炭素源としてグラファイトを蒸発させているのに対し、CVD法ではメタンや一酸化炭素、アルコールなどの分子を利用している点で大きく異なる。大量合成という観点からは、炭素原料を連続的に供給できるCVD法が有利である(非特許文献1参照。)が、さらなるコスト削減が望まれている。
【0004】
CVD法による合成の原料ガスとしては、エチレン、アセチレン及びベンゼンなどが多く用いられるが、これらは有機化合物の合成原料でもあるため高価となる。一方、メタンは天然ガスの主成分であり、工業ガスとしても大量に流通していることから、安価に入手でき、カーボンナノチューブ原料として適しているが、メタンを原料ガスとしてカーボンナノチューブを製造する実用的な方法は確立されていない。
【0005】
CVD法によるカーボンナノチューブの製造方法としては、液体状の炭化水素中に溶解するメタロセンやカルボニル化合物を触媒前駆体化合物として使用し、この触媒前駆体化合物が溶解した炭化水素を加熱帯域に供給することにより、触媒と炭化水素を高温で接触させる方法があるが、1000℃程度の高温を要するため、投入エネルギーが大きくなり、コスト高につながる。
【0006】
CVD法によるもうひとつの製造方法は、触媒を用いる方法である。触媒はアルミナや黒鉛からなる担体に担持して加熱帯域に置き、気相から供給する炭化水素ガスと接触させる。この方法によると1000℃以下の比較的低温でカーボンナノチューブを生成することが可能である。しかし、この方法の一例では、原料ガスとしてエチレン、アセチレン及びベンゼンなどの不飽和炭化水素ガスが使用されている。例えば、原料としてベンゼンを用いると、400から520℃の低温でもカーボンナノチューブを生成することができる(特許文献1参照。)。しかし、これらの不飽和炭化水素ガスは合成原料ガスであって高価であるため、製造コストが高くなることは避けられない。
【0007】
炭化水素の中ではメタンが資源豊富で安価に入手可能であり、また例えばメタンを主成分とする天然ガスを原料ガスとして使用することができれば原料ガスの加工が不要なためさらに安価になる。
【0008】
メタン分解カーボン生成触媒としてMgOに担持した遷移金属8種(Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Ir,Pt)を、反応温度600から1000℃の範囲で性能を比べた報告がなされている(非特許文献2参照。)。その結果によれば、Pd、Ir、Pt、Rh及びRuの貴金属系触媒が鉄族触媒に比べてカーボンナノチューブ収率が高くなる傾向がみられるが、貴金属触媒の使用はカーボンナノチューブ製造コスト上昇につながる。
【非特許文献1】工業材料、2003年1月号(Vol.51, No.1)p.34-37
【非特許文献2】第96回触媒討論会A(平成17年9月)予稿集313頁
【特許文献1】特開2004−74062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、700℃以下の低温において、カーボンナノチューブを低コストかつ高収率で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の触媒は、炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造するための触媒であって、触媒成分としてニッケル(Ni)及びマグネシウム(Mg)を含み、その触媒成分がシリカ(SiO2)担体に担持されているものである。触媒成分のうち、ニッケルは触媒活性成分、マグネシウムは助触媒成分として作用する。
【0011】
触媒中のニッケルとマグネシウムは金属自体、酸化物及びその他の化合物を含む。触媒中のニッケルは、カーボンナノチューブを製造するための反応に供する前の状態が酸化物であっても、還元性ガス(水素又はメタンなど)との接触により還元されて金属成分も生成することが分析により確認されており、これが触媒活性を示す。したがって本発明の触媒は、触媒成分が酸化物その他の化合物の状態のままカーボンナノチューブを製造するための反応に供してもよいし、あるいは予備還元などによりあらかじめ金属の状態にしてからカーボンナノチューブを製造するための反応に供するようにしてもよい。
【0012】
ニッケルは微粒子であることが好ましい。ここでいう微粒子とは粒径が80nm未満であることを意味する。
【0013】
触媒成分においてニッケルに対するマグネシウムの添加量には好ましい範囲が存在する。その一例は、ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が0<x<0.2であり、好ましくは0<x<0.1である。
【0014】
マグネシウムの添加効果は少量加えることにより発現する。例えば、Mg/Ni=0.01も加えれば十分効果を確認できる。しかし、マグネシウムの添加量が少なすぎるとカーボンナノチューブ収率の増加の絶対値が小さすぎて効果の確認が困難となる。シリカ及びニッケルを含んでいてもマグネシウムを全く添加しない触媒では本発明の効果は発現されない。
【0015】
一方、マグネシウムの含有量が過剰になると、触媒活性成分であるニッケルの働きを阻害し、カーボンナノチューブ収率が減少する結果となる。
【0016】
担体シリカの種類は限定されるものではなく、例えば市販のシリカ粒子のほか、噴霧熱分解法やストーバー法等で調製したシリカ粒子も用いることができる。
【0017】
本発明のカーボンナノチューブ製造方法は触媒化学気相成長法(CCVD法)と呼ばれる方法に属する。具体的には、本発明の触媒を使用し、700℃以下の反応温度下で、炭化水素ガスを原料ガスとして触媒に接触させることによりカーボンナノチューブを製造する方法である。
【0018】
好ましい反応温度は550℃から700℃の範囲である。
【0019】
原料炭化水素ガスは、特に限定されるものではなく、メタン、エタン、プロパンなどを選択することができるが、原料が低コストであるほど好ましいことは言うまでもない。原料炭化水素ガスの好ましい例は、メタンのみ、又はメタンを主成分とする他の炭化水素ガスとの混合ガスである。そのような混合ガスとして製造コストの点から最も好ましいのは天然ガスである。
【0020】
カーボンナノチューブ製造方法を実施する反応装置は特に限定されるものではなく、例えば、縦型流通管式反応装置、横型炉、流動床反応装置及び移動床反応装置などのうちから選択することができる。
【0021】
本発明の触媒は含浸法、噴霧熱分解法又はその他の方法により製造したものを含んでいる。本発明の触媒製造方法は、そのうちの1つである噴霧熱分解法である。噴霧熱分解法は、原料を投入した液体を噴霧して微小液滴を作り、高温の反応雰囲気中に導入することによって液滴から水分を蒸発させるとともに、液滴中の原料成分を周囲ガスと反応させるか熱分解させることによって種々の化合物等の粒子を得る方法である。この方法によれば、原料の仕込み濃度などにより広範囲の組成の複合酸化物を容易に一段合成できるという特徴及び球状粒子を合成できるという特徴を活かして、カーボンナノチューブ収率の高い触媒を製造することが可能となる。
【0022】
噴霧熱分解法を適用する第1の形態は、ニッケルとシリカの調製に噴霧熱分解法を適用し、その後にマグネシウムを含浸法により調製する方法である。その第1の形態の触媒製造方法は、ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、発生した液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、生成した複合微粒子にマグネシウム塩溶液を含浸させるマグネシウム添加工程と、マグネシウム添加した複合微粒子を乾燥させた後に焼成する焼成工程とを含んでいる。酸化性雰囲気は、空気、酸素、酸素含有ガスなどによる酸化性ガスによる雰囲気を意味する。
【0023】
噴霧熱分解法を適用する第2の形態は、ニッケル、マグネシウム及びシリカの調製に噴霧熱分解法を適用する方法である。その第2の形態の触媒製造方法は、ニッケル塩とマグネシウム塩の水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該懸濁液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、生成した前記複合微粒子を焼成する焼成工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の触媒を用いた製造方法によれば、700℃以下の低温の反応温度においても、カーボンナノチューブの質を維持しつつ高い収率で低コストに得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施例1)
触媒はシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒である。
【0026】
実施例1の触媒は含浸法により調製した。具体的には、硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムのアセトン溶液に、ニッケルの担持量が10重量%となるように市販のシリカ粒子(AEROSILョ130)を加えて、含浸させた後、これを乾燥後、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0027】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))を表1のように変えた。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例1である。
【0028】
【0029】
使用したシリカ粒子は比表面積が130m2/g、平均粒径が16nmで、5〜25nmの範囲に粒径分布をもっている。
【0030】
得られた触媒のうち、一例としてMg/Ni=0.05の触媒の走査型電子顕微鏡(STEM)の一種のHAADF(High-Angle-Annular-Dark-Field)−STEMによる画像を図1に示す。不定形の白い部分がNiOであり、大きさは1〜80nmである。うすいグレーの部分はシリカであり、その平均一次粒径は16nmである。
【0031】
この画像をさらに拡大したものを図2に示す。その画像中の枠内の白い部分の元素分析をすると、ニッケルとマグネシウムがともに検出された。
【0032】
(1A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた実施例1の触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタンのみからなる原料ガスを用いてメタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン(Ar)気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0033】
このときのカーボンナノチューブ収率を図3に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1の範囲で、より明確には0.025〜0.075の範囲において、マグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することができる。
【0034】
生成炭素繊維の一例としてMg/Ni=0.05の触媒を使用して生成したものを取り上げ、その透過型電子顕微鏡(TEM)による画像を図4と図5に示す。図5は倍率を上げて炭素繊維の先端部を撮影したものである。先端の黒い物体は触媒のニッケル微粒子であり、炭素繊維はニッケル微粒子から成長していることが確認できる。そして、炭素繊維は中空状であり、カーボンナノチューブが生成していることが確認できる。
【0035】
この生成炭素繊維について、生成炭素のラマンスペクトルから求めたIG/IDを表2に示す。
【0036】
【0037】
IG/IDについて詳しく説明すると、次のとおりとなる。結晶性の高いグラファイトでは1585cm-1付近に1本のラマンバンドが観測される。結晶性が低下するにつれて1355cm-1付近に新たなラマンバンドが現れ、試料中の未組織炭素量の増加とともに相対強度が増大することが知られている。1585cm-1付近のバンドの強度をIG、1355cm-1付近のバンド強度をIDとしたとき、これらの相対強度比IG/IDは、グラファイト構造の乱れを反映する指標として用いられており、この値が小さくなるほどグラファイト構造の欠陥が多いことを示している。
【0038】
実施例1の表2に示したものと比較例1以外の生成炭素繊維についても同様な結果が得られており、IG/IDの数値はほとんど同じである。このことから、これらの実施例及び比較例により得られた炭素繊維は、繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであることが確認できる。
【0039】
(1B:メタンを主成分とする混合ガスによるカーボンナノチューブの製造)
触媒として、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0(比較例1に相当)、0.025、0.05及び0.2のものを用い、原料ガスとしてメタンに代えてメタンを主成分とする混合ガスを用い、(1A)のメタンガスによるカーボンナノチューブの製造の実施例と同じ条件でカーボンナノチューブを製造した。
【0040】
原料ガスであるメタン混合ガスの組成は、天然ガスを模したものであり、メタン88%、エタン7%、プロパン3%、n−ブタン1%、iso−ブタン1%であった。
【0041】
このときのカーボンナノチューブ収率を図6に示す。この結果から、原料ガスがメタンを主成分とする混合ガスの場合もニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1程度の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0042】
このメタン混合ガスを原料ガスとして生成された炭素繊維もメタンガスを原料ガスとして生成された炭素繊維と同様のカーボンナノチューブであった。
【0043】
(実施例2)
実施例2の触媒もシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒であるが、実施例1の触媒とは製造方法が異なる。
【0044】
実施例2の触媒は噴霧熱分解法により調製した。噴霧熱分解法自体は触媒調製方法としては既知のものであるが、特に本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒の製造方法として適用すればカーボンナノチューブ製造に対する触媒活性が高まることがわかった。以下に詳述する。
【0045】
噴霧熱分解法は、原料溶液を霧状にし、これを酸化性雰囲気中で熱処理することで触媒微粒子を製造する。この実施例の触媒製造方法で使用した製造装置を図7に示す。図7に示したのは実験装置の段階のものであり、工業的な製造装置として実現する場合には製造規模や量産性を考慮して変更されることになるのは明らかである。
【0046】
噴霧装置2は底部に圧電セラミックスからなる超音波振動子4(振動周波数は例えば1.7MHz)が装着されている。噴霧装置2内に、ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液6を収容した状態で超音波振動子4を作動させると水溶液6の液滴からなる霧が発生する。噴霧装置2の上部には酸化性雰囲気を作るキャリアーガスとして空気を噴霧装置2内に供給するキャリアーガス入口8が設けられ、噴霧装置2の側方には水溶液6の液滴からなる霧をキャリアーガスによって反応管12に噴霧する噴霧口10が設けられている。
【0047】
反応管12は石英製で円筒状をなしており、反応管12の周面には軸方向に沿って加熱炉14−1〜14−4が設けられている。加熱炉14−1〜14−4は噴霧装置2から噴霧された液滴の流れの上流側から下流側に向かって温度が順次高くなるように4段階に分割されている。それらの加熱炉14−1〜14−4の設定温度の一例として、200℃、400℃、600℃及び800℃とした。
【0048】
反応管12の最下流の出口には生成した粒子を捕集するためにフィルター16を備えた粒子捕集器18が設けられている。粒子はフィルター16に捕集され、フィルター16を通過したガスはコールドトラップに導かれて、原料のニッケル塩から発生したガス成分が捕集される。
【0049】
反応管12の形状は特に円筒状でなくてもよく、角筒状でもよい。図示のように横型でなくてもよく、縦型であってもよい。加熱炉14−1〜14−4は赤外線加熱炉、マイクロ波加熱炉、抵抗加熱炉など、いずれのものであってもよい。
【0050】
噴霧熱分解法による実施例2の触媒製造方法を具体的に示す。
シリカ原料としてNanotek(シーアイ化成)の微粒子、NiO原料には硝酸塩を用い、NiO:SiO2(mol比)=40:60となるように調整した。図7の噴霧熱分解を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−SiO2の複合微粒子を得た。
【0051】
硝酸マグネシウムのアセトン溶液にこのNiO−SiO2複合微粒子粉末を加えて含浸させた後、乾燥させ、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0052】
マグネシウム添加前のNiO−SiO2複合微粒子断面のHAADF−STEM画像を図8に、この画像をさらに拡大したものを図9に示す。うすいグレーの部分はシリカであり、凝集前の平均一次粒径は50nmである。白い部分がNiOであり、NiOの粒径は10nmである。
【0053】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))を表1のように変えた。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例2である。
【0054】
(2A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0055】
このときのカーボンナノチューブ収率を図10に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.2の範囲で、より明確には0.01〜0.15の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0056】
生成炭素繊維の一例としてMg/Ni(wt比)が0.025のものを取り上げ、その透過型電子顕微鏡(TEM)による画像を図11と図12に示す。図12は倍率を上げて炭素繊維の先端部を撮影したものである。先端の黒い物体は触媒のニッケル微粒子であり、炭素繊維はニッケル微粒子から成長していることが確認できる。この実施例でも炭素繊維は中空状であり、繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであることが確認できる。
【0057】
図10に示されたカーボンナノチューブ収率は図3及び図6に示されたカーボンナノチューブ収率の数倍大きい。このことは、含浸法により製造した触媒(実施例1)よりも噴霧熱分解法により製造した触媒(実施例2)の方がカーボンナノチューブ製造に対する触媒活性が高いということができる。
【0058】
(実施例3)
実施例3の触媒もシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒であり、実施例2と同様に噴霧熱分解法により製造したものであるが、実施例2とは異なり、一段合成により触媒調製したものである。
【0059】
噴霧熱分解法による実施例3の触媒製造方法は基本的に実施例2と同様である。
シリカ原料としてNanotek(シーアイ化成)の微粒子、NiO原料とMgO原料には硝酸塩を用い、Ni:MgO:SiO2(wt比)=40:3:57、40:13:47となるように調整した。図7の噴霧熱分解装置を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−MgO−SiO2の複合微粒子を得た。これを空気中800℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0060】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))は表1のようになる。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例2である。
【0061】
(3A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0062】
このときのカーボンナノチューブ収率を図13に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0063】
(比較例1)
実施例1(含浸法によるNi−Mg/SiO2触媒)に対する比較例1として、Mgを添加しない触媒を挙げることができる。図3及び図6の結果から、比較例1の触媒はマグネシウムをMg/Ni=0.025−0.075の範囲で添加したものよりもカーボンナノチューブ収率が低い。
【0064】
(比較例2)
実施例2(噴霧熱分解法によるNi−Mg/SiO2触媒)に対する比較例2として、Mgを添加しない触媒を挙げることができる。図10の結果から、比較例2の触媒はマグネシウムをMg/Ni=0.01−0.15の範囲で添加したものよりもカーボンナノチューブ収率が低い。
【0065】
(比較例3)
比較例3として、担体をアルミナ(Al2O3)とし含浸法により調製したNi−Mg/Al2O3触媒を取りあげる。
【0066】
硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムのアセトン溶液に、Niの担持量が10重量%となるように市販のアルミナ粒子(nanophase社製)を加えて、含浸させた後、これを乾燥後、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/Al2O3触媒を得た。
【0067】
得られた触媒を、常圧固定床流通式反応装置に10mg充填し、650℃の条件でメタンを10mL/minの流量で流通させ、メタンの分解を行った。ガス状生成物の分析にはガスクロマトグラフを用い、反応終了後生成物を秤量した。
【0068】
このときのカーボンナノチューブ収率を図14に示す。また、触媒のうち、Mg/Ni(wt比)が0.05のものを用いて生成した炭素の透過型電子顕微鏡写真を図15に示す。図15に示すように、得られた炭素繊維は繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであった。しかしながら、図14に示すように、マグネシウムを添加するにつれてカーボンナノチューブ収率は単調に低下し、マグネシウム添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果は得られない。
【0069】
(比較例4)
比較例4として、担体をアルミナ(Al2O3)とし噴霧熱分解法により調製したNi−Mg/Al2O3触媒を取りあげる。
【0070】
NiO及びAl2O3原料には硝酸塩を用い、Ni:Al2O3(wt%比)=40:60となるように調整した。図7の噴霧熱分解装置を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−Al2O3の複合微粒子を得た。
【0071】
硝酸マグネシウムのアセトン溶液にこのNiO−Al2O3複合微粒子粉末を加えて含浸させた後、乾燥させ、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/Al2O3触媒を得た。
【0072】
得られた触媒を用いて、常圧固定床流通式反応装置にてメタンの分解試験を行った。反応装置では、内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒を10mg充填した。30mL/minのアルゴン気流中、10℃/minの速度で反応温度の650℃まで昇温した後、流通ガスをメタンに切り替えて10mL/minの流量で流通させ、反応温度を一定に保ってメタンの分解反応を行わせた。生成ガスの分析にはガスクロマトグラフを用い、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したら反応が終了したものとしてメタンの供給を停止した。その後、アルゴンを30mL/minで流通させて常温まで降温した。反応終了後、重量測定をすることによりカーボン生成量を求めた。
【0073】
このときのカーボンナノチューブ収率を図16に示す。しかし、図16に示すように、マグネシウムを添加するにつれてカーボンナノチューブ収率は単調に低下し、マグネシウム添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1の触媒のHAADF−STEM画像である。
【図2】同画像の拡大画像である。
【図3】実施例1及び比較例1の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図4】実施例1の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図5】図4の画像の倍率を上げた画像である。
【図6】実施例1及び比較例1の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図7】実施例2,3の触媒及び比較例2,4の触媒の製造に用いた噴霧熱分解装置を示す概略構成図である。
【図8】実施例2の触媒のマグネシウム添加前のNiO−SiO2複合微粒子のHAADF−STEM画像である。
【図9】図8の画像の倍率を上げた画像である。
【図10】実施例2及び比較例2の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図11】実施例2の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図12】図11の画像の倍率を上げた画像である。
【図13】実施例3及び比較例2の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図14】比較例3の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図15】比較例3の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図16】比較例4の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
2 噴霧装置
4 超音波振動子
8 キャリアーガス入口
10 噴霧口
12 反応管
14−1〜14−4 加熱炉
16 フィルター
18 粒子捕集器
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための触媒、その触媒を用いたカーボンナノチューブの製造方法、及びその触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは高い機械強度及び導電性などの特性により、産業への応用が期待されているが、高価であることが普及へのひとつのハードルとなっている。
【0003】
カーボンナノチューブの一般的製法としては、アーク放電、レーザアブレーション法及びCVD法がある。前2者はナノチューブの炭素源としてグラファイトを蒸発させているのに対し、CVD法ではメタンや一酸化炭素、アルコールなどの分子を利用している点で大きく異なる。大量合成という観点からは、炭素原料を連続的に供給できるCVD法が有利である(非特許文献1参照。)が、さらなるコスト削減が望まれている。
【0004】
CVD法による合成の原料ガスとしては、エチレン、アセチレン及びベンゼンなどが多く用いられるが、これらは有機化合物の合成原料でもあるため高価となる。一方、メタンは天然ガスの主成分であり、工業ガスとしても大量に流通していることから、安価に入手でき、カーボンナノチューブ原料として適しているが、メタンを原料ガスとしてカーボンナノチューブを製造する実用的な方法は確立されていない。
【0005】
CVD法によるカーボンナノチューブの製造方法としては、液体状の炭化水素中に溶解するメタロセンやカルボニル化合物を触媒前駆体化合物として使用し、この触媒前駆体化合物が溶解した炭化水素を加熱帯域に供給することにより、触媒と炭化水素を高温で接触させる方法があるが、1000℃程度の高温を要するため、投入エネルギーが大きくなり、コスト高につながる。
【0006】
CVD法によるもうひとつの製造方法は、触媒を用いる方法である。触媒はアルミナや黒鉛からなる担体に担持して加熱帯域に置き、気相から供給する炭化水素ガスと接触させる。この方法によると1000℃以下の比較的低温でカーボンナノチューブを生成することが可能である。しかし、この方法の一例では、原料ガスとしてエチレン、アセチレン及びベンゼンなどの不飽和炭化水素ガスが使用されている。例えば、原料としてベンゼンを用いると、400から520℃の低温でもカーボンナノチューブを生成することができる(特許文献1参照。)。しかし、これらの不飽和炭化水素ガスは合成原料ガスであって高価であるため、製造コストが高くなることは避けられない。
【0007】
炭化水素の中ではメタンが資源豊富で安価に入手可能であり、また例えばメタンを主成分とする天然ガスを原料ガスとして使用することができれば原料ガスの加工が不要なためさらに安価になる。
【0008】
メタン分解カーボン生成触媒としてMgOに担持した遷移金属8種(Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Ir,Pt)を、反応温度600から1000℃の範囲で性能を比べた報告がなされている(非特許文献2参照。)。その結果によれば、Pd、Ir、Pt、Rh及びRuの貴金属系触媒が鉄族触媒に比べてカーボンナノチューブ収率が高くなる傾向がみられるが、貴金属触媒の使用はカーボンナノチューブ製造コスト上昇につながる。
【非特許文献1】工業材料、2003年1月号(Vol.51, No.1)p.34-37
【非特許文献2】第96回触媒討論会A(平成17年9月)予稿集313頁
【特許文献1】特開2004−74062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、700℃以下の低温において、カーボンナノチューブを低コストかつ高収率で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の触媒は、炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造するための触媒であって、触媒成分としてニッケル(Ni)及びマグネシウム(Mg)を含み、その触媒成分がシリカ(SiO2)担体に担持されているものである。触媒成分のうち、ニッケルは触媒活性成分、マグネシウムは助触媒成分として作用する。
【0011】
触媒中のニッケルとマグネシウムは金属自体、酸化物及びその他の化合物を含む。触媒中のニッケルは、カーボンナノチューブを製造するための反応に供する前の状態が酸化物であっても、還元性ガス(水素又はメタンなど)との接触により還元されて金属成分も生成することが分析により確認されており、これが触媒活性を示す。したがって本発明の触媒は、触媒成分が酸化物その他の化合物の状態のままカーボンナノチューブを製造するための反応に供してもよいし、あるいは予備還元などによりあらかじめ金属の状態にしてからカーボンナノチューブを製造するための反応に供するようにしてもよい。
【0012】
ニッケルは微粒子であることが好ましい。ここでいう微粒子とは粒径が80nm未満であることを意味する。
【0013】
触媒成分においてニッケルに対するマグネシウムの添加量には好ましい範囲が存在する。その一例は、ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が0<x<0.2であり、好ましくは0<x<0.1である。
【0014】
マグネシウムの添加効果は少量加えることにより発現する。例えば、Mg/Ni=0.01も加えれば十分効果を確認できる。しかし、マグネシウムの添加量が少なすぎるとカーボンナノチューブ収率の増加の絶対値が小さすぎて効果の確認が困難となる。シリカ及びニッケルを含んでいてもマグネシウムを全く添加しない触媒では本発明の効果は発現されない。
【0015】
一方、マグネシウムの含有量が過剰になると、触媒活性成分であるニッケルの働きを阻害し、カーボンナノチューブ収率が減少する結果となる。
【0016】
担体シリカの種類は限定されるものではなく、例えば市販のシリカ粒子のほか、噴霧熱分解法やストーバー法等で調製したシリカ粒子も用いることができる。
【0017】
本発明のカーボンナノチューブ製造方法は触媒化学気相成長法(CCVD法)と呼ばれる方法に属する。具体的には、本発明の触媒を使用し、700℃以下の反応温度下で、炭化水素ガスを原料ガスとして触媒に接触させることによりカーボンナノチューブを製造する方法である。
【0018】
好ましい反応温度は550℃から700℃の範囲である。
【0019】
原料炭化水素ガスは、特に限定されるものではなく、メタン、エタン、プロパンなどを選択することができるが、原料が低コストであるほど好ましいことは言うまでもない。原料炭化水素ガスの好ましい例は、メタンのみ、又はメタンを主成分とする他の炭化水素ガスとの混合ガスである。そのような混合ガスとして製造コストの点から最も好ましいのは天然ガスである。
【0020】
カーボンナノチューブ製造方法を実施する反応装置は特に限定されるものではなく、例えば、縦型流通管式反応装置、横型炉、流動床反応装置及び移動床反応装置などのうちから選択することができる。
【0021】
本発明の触媒は含浸法、噴霧熱分解法又はその他の方法により製造したものを含んでいる。本発明の触媒製造方法は、そのうちの1つである噴霧熱分解法である。噴霧熱分解法は、原料を投入した液体を噴霧して微小液滴を作り、高温の反応雰囲気中に導入することによって液滴から水分を蒸発させるとともに、液滴中の原料成分を周囲ガスと反応させるか熱分解させることによって種々の化合物等の粒子を得る方法である。この方法によれば、原料の仕込み濃度などにより広範囲の組成の複合酸化物を容易に一段合成できるという特徴及び球状粒子を合成できるという特徴を活かして、カーボンナノチューブ収率の高い触媒を製造することが可能となる。
【0022】
噴霧熱分解法を適用する第1の形態は、ニッケルとシリカの調製に噴霧熱分解法を適用し、その後にマグネシウムを含浸法により調製する方法である。その第1の形態の触媒製造方法は、ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、発生した液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、生成した複合微粒子にマグネシウム塩溶液を含浸させるマグネシウム添加工程と、マグネシウム添加した複合微粒子を乾燥させた後に焼成する焼成工程とを含んでいる。酸化性雰囲気は、空気、酸素、酸素含有ガスなどによる酸化性ガスによる雰囲気を意味する。
【0023】
噴霧熱分解法を適用する第2の形態は、ニッケル、マグネシウム及びシリカの調製に噴霧熱分解法を適用する方法である。その第2の形態の触媒製造方法は、ニッケル塩とマグネシウム塩の水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該懸濁液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、生成した前記複合微粒子を焼成する焼成工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の触媒を用いた製造方法によれば、700℃以下の低温の反応温度においても、カーボンナノチューブの質を維持しつつ高い収率で低コストに得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施例1)
触媒はシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒である。
【0026】
実施例1の触媒は含浸法により調製した。具体的には、硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムのアセトン溶液に、ニッケルの担持量が10重量%となるように市販のシリカ粒子(AEROSILョ130)を加えて、含浸させた後、これを乾燥後、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0027】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))を表1のように変えた。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例1である。
【0028】
【0029】
使用したシリカ粒子は比表面積が130m2/g、平均粒径が16nmで、5〜25nmの範囲に粒径分布をもっている。
【0030】
得られた触媒のうち、一例としてMg/Ni=0.05の触媒の走査型電子顕微鏡(STEM)の一種のHAADF(High-Angle-Annular-Dark-Field)−STEMによる画像を図1に示す。不定形の白い部分がNiOであり、大きさは1〜80nmである。うすいグレーの部分はシリカであり、その平均一次粒径は16nmである。
【0031】
この画像をさらに拡大したものを図2に示す。その画像中の枠内の白い部分の元素分析をすると、ニッケルとマグネシウムがともに検出された。
【0032】
(1A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた実施例1の触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタンのみからなる原料ガスを用いてメタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン(Ar)気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0033】
このときのカーボンナノチューブ収率を図3に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1の範囲で、より明確には0.025〜0.075の範囲において、マグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することができる。
【0034】
生成炭素繊維の一例としてMg/Ni=0.05の触媒を使用して生成したものを取り上げ、その透過型電子顕微鏡(TEM)による画像を図4と図5に示す。図5は倍率を上げて炭素繊維の先端部を撮影したものである。先端の黒い物体は触媒のニッケル微粒子であり、炭素繊維はニッケル微粒子から成長していることが確認できる。そして、炭素繊維は中空状であり、カーボンナノチューブが生成していることが確認できる。
【0035】
この生成炭素繊維について、生成炭素のラマンスペクトルから求めたIG/IDを表2に示す。
【0036】
【0037】
IG/IDについて詳しく説明すると、次のとおりとなる。結晶性の高いグラファイトでは1585cm-1付近に1本のラマンバンドが観測される。結晶性が低下するにつれて1355cm-1付近に新たなラマンバンドが現れ、試料中の未組織炭素量の増加とともに相対強度が増大することが知られている。1585cm-1付近のバンドの強度をIG、1355cm-1付近のバンド強度をIDとしたとき、これらの相対強度比IG/IDは、グラファイト構造の乱れを反映する指標として用いられており、この値が小さくなるほどグラファイト構造の欠陥が多いことを示している。
【0038】
実施例1の表2に示したものと比較例1以外の生成炭素繊維についても同様な結果が得られており、IG/IDの数値はほとんど同じである。このことから、これらの実施例及び比較例により得られた炭素繊維は、繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであることが確認できる。
【0039】
(1B:メタンを主成分とする混合ガスによるカーボンナノチューブの製造)
触媒として、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0(比較例1に相当)、0.025、0.05及び0.2のものを用い、原料ガスとしてメタンに代えてメタンを主成分とする混合ガスを用い、(1A)のメタンガスによるカーボンナノチューブの製造の実施例と同じ条件でカーボンナノチューブを製造した。
【0040】
原料ガスであるメタン混合ガスの組成は、天然ガスを模したものであり、メタン88%、エタン7%、プロパン3%、n−ブタン1%、iso−ブタン1%であった。
【0041】
このときのカーボンナノチューブ収率を図6に示す。この結果から、原料ガスがメタンを主成分とする混合ガスの場合もニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1程度の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0042】
このメタン混合ガスを原料ガスとして生成された炭素繊維もメタンガスを原料ガスとして生成された炭素繊維と同様のカーボンナノチューブであった。
【0043】
(実施例2)
実施例2の触媒もシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒であるが、実施例1の触媒とは製造方法が異なる。
【0044】
実施例2の触媒は噴霧熱分解法により調製した。噴霧熱分解法自体は触媒調製方法としては既知のものであるが、特に本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒の製造方法として適用すればカーボンナノチューブ製造に対する触媒活性が高まることがわかった。以下に詳述する。
【0045】
噴霧熱分解法は、原料溶液を霧状にし、これを酸化性雰囲気中で熱処理することで触媒微粒子を製造する。この実施例の触媒製造方法で使用した製造装置を図7に示す。図7に示したのは実験装置の段階のものであり、工業的な製造装置として実現する場合には製造規模や量産性を考慮して変更されることになるのは明らかである。
【0046】
噴霧装置2は底部に圧電セラミックスからなる超音波振動子4(振動周波数は例えば1.7MHz)が装着されている。噴霧装置2内に、ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液6を収容した状態で超音波振動子4を作動させると水溶液6の液滴からなる霧が発生する。噴霧装置2の上部には酸化性雰囲気を作るキャリアーガスとして空気を噴霧装置2内に供給するキャリアーガス入口8が設けられ、噴霧装置2の側方には水溶液6の液滴からなる霧をキャリアーガスによって反応管12に噴霧する噴霧口10が設けられている。
【0047】
反応管12は石英製で円筒状をなしており、反応管12の周面には軸方向に沿って加熱炉14−1〜14−4が設けられている。加熱炉14−1〜14−4は噴霧装置2から噴霧された液滴の流れの上流側から下流側に向かって温度が順次高くなるように4段階に分割されている。それらの加熱炉14−1〜14−4の設定温度の一例として、200℃、400℃、600℃及び800℃とした。
【0048】
反応管12の最下流の出口には生成した粒子を捕集するためにフィルター16を備えた粒子捕集器18が設けられている。粒子はフィルター16に捕集され、フィルター16を通過したガスはコールドトラップに導かれて、原料のニッケル塩から発生したガス成分が捕集される。
【0049】
反応管12の形状は特に円筒状でなくてもよく、角筒状でもよい。図示のように横型でなくてもよく、縦型であってもよい。加熱炉14−1〜14−4は赤外線加熱炉、マイクロ波加熱炉、抵抗加熱炉など、いずれのものであってもよい。
【0050】
噴霧熱分解法による実施例2の触媒製造方法を具体的に示す。
シリカ原料としてNanotek(シーアイ化成)の微粒子、NiO原料には硝酸塩を用い、NiO:SiO2(mol比)=40:60となるように調整した。図7の噴霧熱分解を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−SiO2の複合微粒子を得た。
【0051】
硝酸マグネシウムのアセトン溶液にこのNiO−SiO2複合微粒子粉末を加えて含浸させた後、乾燥させ、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0052】
マグネシウム添加前のNiO−SiO2複合微粒子断面のHAADF−STEM画像を図8に、この画像をさらに拡大したものを図9に示す。うすいグレーの部分はシリカであり、凝集前の平均一次粒径は50nmである。白い部分がNiOであり、NiOの粒径は10nmである。
【0053】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))を表1のように変えた。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例2である。
【0054】
(2A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0055】
このときのカーボンナノチューブ収率を図10に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.2の範囲で、より明確には0.01〜0.15の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0056】
生成炭素繊維の一例としてMg/Ni(wt比)が0.025のものを取り上げ、その透過型電子顕微鏡(TEM)による画像を図11と図12に示す。図12は倍率を上げて炭素繊維の先端部を撮影したものである。先端の黒い物体は触媒のニッケル微粒子であり、炭素繊維はニッケル微粒子から成長していることが確認できる。この実施例でも炭素繊維は中空状であり、繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであることが確認できる。
【0057】
図10に示されたカーボンナノチューブ収率は図3及び図6に示されたカーボンナノチューブ収率の数倍大きい。このことは、含浸法により製造した触媒(実施例1)よりも噴霧熱分解法により製造した触媒(実施例2)の方がカーボンナノチューブ製造に対する触媒活性が高いということができる。
【0058】
(実施例3)
実施例3の触媒もシリカを担体としてニッケルとマグネシウムを担持したNi−Mg/SiO2触媒であり、実施例2と同様に噴霧熱分解法により製造したものであるが、実施例2とは異なり、一段合成により触媒調製したものである。
【0059】
噴霧熱分解法による実施例3の触媒製造方法は基本的に実施例2と同様である。
シリカ原料としてNanotek(シーアイ化成)の微粒子、NiO原料とMgO原料には硝酸塩を用い、Ni:MgO:SiO2(wt比)=40:3:57、40:13:47となるように調整した。図7の噴霧熱分解装置を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−MgO−SiO2の複合微粒子を得た。これを空気中800℃で焼成してNi−Mg/SiO2触媒を得た。
【0060】
ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))は表1のようになる。マグネシウム添加重量比が0のものは後述の比較例2である。
【0061】
(3A:メタンガスによるカーボンナノチューブの製造)
得られた触媒を用いて、固定床流通反応装置にて、メタン分解試験を行った。内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒10mgを置いた。30mL/minのアルゴン気流中10℃/minで反応温度(650℃)まで昇温し、メタン10mL/minに切り替えて、温度一定でメタンを分解した。生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したらメタンを停止し、アルゴン流通下(30mL/min)常温まで降温した。試験終了後重量測定することにより、カーボン生成量を求めた。
【0062】
このときのカーボンナノチューブ収率を図13に示す。この結果によれば、ニッケルに対するマグネシウム添加重量比(Mg/Ni(wt比))が0〜0.1の範囲でマグネシウムの添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果を確認することかできる。
【0063】
(比較例1)
実施例1(含浸法によるNi−Mg/SiO2触媒)に対する比較例1として、Mgを添加しない触媒を挙げることができる。図3及び図6の結果から、比較例1の触媒はマグネシウムをMg/Ni=0.025−0.075の範囲で添加したものよりもカーボンナノチューブ収率が低い。
【0064】
(比較例2)
実施例2(噴霧熱分解法によるNi−Mg/SiO2触媒)に対する比較例2として、Mgを添加しない触媒を挙げることができる。図10の結果から、比較例2の触媒はマグネシウムをMg/Ni=0.01−0.15の範囲で添加したものよりもカーボンナノチューブ収率が低い。
【0065】
(比較例3)
比較例3として、担体をアルミナ(Al2O3)とし含浸法により調製したNi−Mg/Al2O3触媒を取りあげる。
【0066】
硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムのアセトン溶液に、Niの担持量が10重量%となるように市販のアルミナ粒子(nanophase社製)を加えて、含浸させた後、これを乾燥後、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/Al2O3触媒を得た。
【0067】
得られた触媒を、常圧固定床流通式反応装置に10mg充填し、650℃の条件でメタンを10mL/minの流量で流通させ、メタンの分解を行った。ガス状生成物の分析にはガスクロマトグラフを用い、反応終了後生成物を秤量した。
【0068】
このときのカーボンナノチューブ収率を図14に示す。また、触媒のうち、Mg/Ni(wt比)が0.05のものを用いて生成した炭素の透過型電子顕微鏡写真を図15に示す。図15に示すように、得られた炭素繊維は繊維の成長軸に対してグラファイト層がほぼ平行に配列したカーボンナノチューブであった。しかしながら、図14に示すように、マグネシウムを添加するにつれてカーボンナノチューブ収率は単調に低下し、マグネシウム添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果は得られない。
【0069】
(比較例4)
比較例4として、担体をアルミナ(Al2O3)とし噴霧熱分解法により調製したNi−Mg/Al2O3触媒を取りあげる。
【0070】
NiO及びAl2O3原料には硝酸塩を用い、Ni:Al2O3(wt%比)=40:60となるように調整した。図7の噴霧熱分解装置を用い、その原料水溶液を超音波振動により霧化し、5L/minの空気気流中、図7の4段階の反応温度に保持した電気炉内に導入した。液滴は加熱により乾燥し、さらに熱分解され、NiO−Al2O3の複合微粒子を得た。
【0071】
硝酸マグネシウムのアセトン溶液にこのNiO−Al2O3複合微粒子粉末を加えて含浸させた後、乾燥させ、空気中で400℃で焼成してNi−Mg/Al2O3触媒を得た。
【0072】
得られた触媒を用いて、常圧固定床流通式反応装置にてメタンの分解試験を行った。反応装置では、内径10mmの石英反応管中央部の石英フィルターに石英ウールを設置し、その上に触媒を10mg充填した。30mL/minのアルゴン気流中、10℃/minの速度で反応温度の650℃まで昇温した後、流通ガスをメタンに切り替えて10mL/minの流量で流通させ、反応温度を一定に保ってメタンの分解反応を行わせた。生成ガスの分析にはガスクロマトグラフを用い、生成ガス中の水素が一定濃度以下に達したら反応が終了したものとしてメタンの供給を停止した。その後、アルゴンを30mL/minで流通させて常温まで降温した。反応終了後、重量測定をすることによりカーボン生成量を求めた。
【0073】
このときのカーボンナノチューブ収率を図16に示す。しかし、図16に示すように、マグネシウムを添加するにつれてカーボンナノチューブ収率は単調に低下し、マグネシウム添加によるカーボンナノチューブ収率の増加効果は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1の触媒のHAADF−STEM画像である。
【図2】同画像の拡大画像である。
【図3】実施例1及び比較例1の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図4】実施例1の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図5】図4の画像の倍率を上げた画像である。
【図6】実施例1及び比較例1の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図7】実施例2,3の触媒及び比較例2,4の触媒の製造に用いた噴霧熱分解装置を示す概略構成図である。
【図8】実施例2の触媒のマグネシウム添加前のNiO−SiO2複合微粒子のHAADF−STEM画像である。
【図9】図8の画像の倍率を上げた画像である。
【図10】実施例2及び比較例2の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図11】実施例2の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図12】図11の画像の倍率を上げた画像である。
【図13】実施例3及び比較例2の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図14】比較例3の触媒を用い原料ガスにメタン混合ガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【図15】比較例3の触媒を用いて生成したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による画像である。
【図16】比較例4の触媒を用い原料ガスにメタンガスを用いた場合のカーボンナノチューブ収率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
2 噴霧装置
4 超音波振動子
8 キャリアーガス入口
10 噴霧口
12 反応管
14−1〜14−4 加熱炉
16 フィルター
18 粒子捕集器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造するための触媒であって、
触媒成分としてニッケル及びマグネシウムを含み、
該触媒成分はシリカ担体に担持されており、かつ
ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が、0<x<0.2であることを特徴とする触媒。
【請求項2】
ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が、0<x<0.1である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒を使用し、
700℃以下の反応温度下で、炭化水素ガスを原料ガスとして前記触媒に接触させるカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素ガスはメタン、又はメタンを主成分とする混合ガスである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応温度は550℃から700℃の範囲である請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の触媒を製造する方法であって、
ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、
発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、
生成した複合微粒子にマグネシウム塩溶液を含浸させるマグネシウム添加工程と、
マグネシウム添加した複合微粒子を乾燥させた後に焼成する焼成工程と、
を含む触媒製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の触媒を製造する方法であって、
ニッケル塩とマグネシウム塩の水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、
発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、
生成した前記複合微粒子を焼成する焼成工程と、
を含む触媒製造方法。
【請求項1】
炭化水素ガスを原料としてカーボンナノチューブを製造するための触媒であって、
触媒成分としてニッケル及びマグネシウムを含み、
該触媒成分はシリカ担体に担持されており、かつ
ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が、0<x<0.2であることを特徴とする触媒。
【請求項2】
ニッケル対マグネシウムの重量比x(Mg/Ni(wt比))が、0<x<0.1である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒を使用し、
700℃以下の反応温度下で、炭化水素ガスを原料ガスとして前記触媒に接触させるカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素ガスはメタン、又はメタンを主成分とする混合ガスである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応温度は550℃から700℃の範囲である請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の触媒を製造する方法であって、
ニッケル塩水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、
発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、
生成した複合微粒子にマグネシウム塩溶液を含浸させるマグネシウム添加工程と、
マグネシウム添加した複合微粒子を乾燥させた後に焼成する焼成工程と、
を含む触媒製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の触媒を製造する方法であって、
ニッケル塩とマグネシウム塩の水溶液にシリカ微粒子が懸濁した水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、
発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して複合微粒子とする造粒工程と、
生成した前記複合微粒子を焼成する焼成工程と、
を含む触媒製造方法。
【図3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【公開番号】特開2010−131487(P2010−131487A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308207(P2008−308207)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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