説明

カーボンナノチューブ複合材料体及びその製造方法

【課題】本発明は、カーボンナノチューブ複合材料体及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、少なくとも一本のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体を提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブ構造体における少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、真空条件でカーボンナノチューブ構造体に電流を通して、前記少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、金属被覆層における金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第三ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ複合材料体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は、新型のカーボン材料であり、日本の研究員の飯島澄男よって1991年に発見された(非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブは良好な導電性能、良好な化学的安定性、大きなアスペクト比(長さと直径の比)を有し、その先端の面積が理論的に最良の寸法に達するので、先端の面積が小さいほど局部の電界が集中するという理論により、カーボンナノチューブは、現在最良の電界放出材料の一種である。また、カーボンナノチューブは、超低電子放出電圧で超高密度の電流を伝送でき、該電流が非常に安定であるので、優れた点電子源として応用される。例えば、電界放出表示装置、X線管装置、電離ゲージなど高真空装置の電子放出素子に応用される。
【0003】
従来のカーボンナノチューブからなる電子放出素子は、通常、10−5Torrより高い高真空状態において、優れた電界放出特性が有するが、10−3Torrより低い低真空状態において、放出したイオンの数量が増加することによって、前記電子放出素子の構造に前記イオンが衝突し破壊されやすい。従って、前記電子放出素子の電流が弱まり、安定な作業を維持することができない。実用的なものに電子放出素子を改善するために、修正は必要である。
【0004】
前記の問題を解決するために、典型的な修正方法で、カーボンナノチューブ複合材料体からなる電子放出素子が提供される。前記カーボンナノチューブ複合材料体は、カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの外表面に被覆された炭化ハフニウム層と、を備える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Iijima、“Helical Microtubules of Graphitic Carbon”、Nature、1991年、第354巻、p.56
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記カーボンナノチューブ複合材料体の製造過程では、カーボンナノチューブを加熱するために通常複雑な加熱装置を使用し、また、真空炉で焼結する複雑な工程を含んでいるので、前記典型的な修正方法は複雑である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、前記課題を解決するために、本発明の製造方法は簡易なカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法及びその方法で製造されたカーボンナノチューブ複合材料体を提供する。
【0008】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、少なくとも一本のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体を提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブ構造体における少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、真空条件でカーボンナノチューブ構造体に電流を通して、前記少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、金属被覆層における金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第三ステップと、を含む。
【0009】
前記第三ステップにおいて、前記カーボンナノチューブ構造体を2つの電極の間に固定させ、且つ前記カーボンナノチューブ構造体を前記2つの電極にそれぞれ電気的に接続されて、前記2つの電極に電圧を印加して、前記カーボンナノチューブ構造体に電流を通す。
【0010】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで昇温させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第三ステップと、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱させて、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位に尖端が形成される第四ステップと、を含む。
【0011】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、複数のカーボンナノチューブからなるドローン構造カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップと、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成させる第三ステップと、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで昇温させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第四ステップと、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱させて、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位尖端が形成される第五ステップと、を含む。
【0012】
前記第二温度は、前記第一温度より高い。
【0013】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料体は、少なくとも1つのカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体と、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも1つのカーボンナノチューブの表面に形成された複数の金属炭化物粒子と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
従来の技術と比べて、本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、真空環境で、前記カーボンナノチューブ構造体に電流を通すことによって、前記カーボンナノチューブ構造体の外表面に被覆された金属被覆層を溶融させ、且つ前記カーボンナノチューブ構造体の炭素と反応できるので、複雑な加熱装置が必要ない。また、前記カーボンナノチューブ構造体の加熱方法は簡単である。本発明は従来の技術と比べて、加熱過程及び真空炉での焼結のような複雑な工程を必要としない。前記カーボンナノチューブ構造体に通す電流を制御して、前記カーボンナノチューブ構造体の昇温範囲を調整し、且つカーボンナノチューブ自身の抵抗によって、電―熱転換することができ、カーボンナノチューブから熱を放出して、前記カーボンナノチューブに被覆された金属被覆層を加熱するので、エネルギーの利用率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法の実施例1のフローチャートである。
【図2】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図2中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図4】プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】カーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法の実施例2のフローチャートである。
【図8】本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法の実施例3のフローチャートである。
【図9】ミクロンマーカーが2μmである場合に、ハフニウム層で覆われた図2に示すカーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図9に示すカーボンナノチューブフィルムが有機溶剤に浸漬させて形成されたカーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図10に示すカーボンナノチューブワイヤの外表面に多くの金属炭化物粒子が形成された後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】図10に示すカーボンナノチューブワイヤの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図13】図11に示すカーボンナノチューブワイヤの透過型電子顕微鏡写真である。
【図14】図13に示すカーボンナノチューブワイヤの金属炭化物粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図15】図11に示すカーボンナノチューブワイヤが断裂されて尖端が形成された走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】図15に示すカーボンナノチューブワイヤの尖端の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】図16に示すカーボンナノチューブワイヤの尖端の、ミクロンマーカーが2μmである場合の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】図2中のカーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0017】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例1のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、少なくとも一本のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体を提供するステップS101と、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に金属被覆層を形成するステップS102と、真空条件でカーボンナノチューブ構造体に電流を通して、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層における金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成するS103と、を含む。
【0018】
前記ステップS101では、前記カーボンナノチューブ構造体は、化学気相堆積法で形成されたカーボンナノチューブアレイである。前記カーボンナノチューブアレイは以下のステップによって形成する。まず、基板を準備する。次に、該基板に触媒層を堆積させる。該触媒層は、Fe、Co、Ni又はその合金のいずれか一種からなる。次に、前記触媒層が堆積された前記基板を空気雰囲気において700〜900℃で30〜90分間アニーリングする。次に、前記基板を反応装置に置いて、該反応装置の中に保護ガスを導入して、該反応装置を500〜740℃に加熱させる。前記保護ガスは不活性ガス又は窒素ガスであり、アルゴンガスが好ましい。次に、前記反応装置の内にカーボンを含むガスを導入して、5〜30分間加熱してカーボンナノチューブアレイを成長させる。前記カーボンを含むガスは、アセチレン又はエチレンであり、アセチレンが好ましい。
【0019】
前記カーボンナノチューブアレイは、複数の相互に平行、且つ前記基板に垂直なカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブアレイは高さが100μm程度になる。
【0020】
また、前記ステップS101では、前記カーボンナノチューブ構造体は、単一のカーボンナノチューブ、又は複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造である。前記単一のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。前記自立構造を有するカーボンナノチューブ構造は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤである。
【0021】
本発明の自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体としては、以下の(一)〜(四)のものが挙げられる。
【0022】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、図2に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献2を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている(図18を参照する)。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図2及び図3を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0024】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0025】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施形態において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直するように生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0026】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスとしては例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0027】
本実施形態から提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0028】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0029】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0030】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0031】
図4を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0032】
単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0033】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。
【0034】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造は、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、0.5nm〜1mmである。
【0035】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0036】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ原料(綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの素になるカーボンナノチューブ)を提供する。
【0037】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブ原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、100マイクロメートル以上であり、10マイクロメートル以上であることが好ましい。
【0038】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブ原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0039】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0040】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0041】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0042】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を加熱するか、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0043】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0044】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0045】
(四)カーボンナノチューブワイヤ
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであり、5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5nm〜1cmである。図6を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブからなる。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブ構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0046】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0047】
前記ステップS102では、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層の材料は、ハフニウム、タンタル、チタン又はジルコニウムのいずれか一種の遷移金属である。前記金属被覆層は、マグネトロンスパッタリング方法又は電子ビーム蒸着方法で、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に被覆される。前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面が金属被覆層によって覆われた場合、前記金属被覆層の厚さが1nm〜100nmである。前記金属被覆層は、複数の、直径が1nm〜100nmの金属粒子からなる。本実施例において、前記金属被覆層は、ハフニウム金属からなり、その厚さが50nmである。
【0048】
前記ステップS103では、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を前記カーボンナノチューブと反応させるために、前記カーボンナノチューブ構造体を2つの電極の間に設置して、前記2つの電極と電気的に接続する。前記カーボンナノチューブ構造体を前記2つの電極に電気的に接続する方法としては、以下の例が挙げられる。
【0049】
一つの例として、前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブアレイである。前記カーボンナノチューブアレイは、基板に接着する第一端部と、該第一端部と対向する第二端部を有する。一本の前記電極を、前記カーボンナノチューブアレイの前記第二端部と電気的に接続させる。前記カーボンナノチューブアレイの前記第一端部を露出するために、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板から剥離する。もう一つの前記電極を、前記カーボンナノチューブアレイの前記第一端部と電気的に接続させる。従って、カーボンナノチューブアレイは、前記2つの電極に電気的に接続される。且つ、前記カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブは、それぞれ長手方向に沿って、一つの前記電極からもう一つの前記電極まで伸びる。
【0050】
もう一つの例として、前記カーボンナノチューブ構造体は、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム又は綿毛構造カーボンナノチューブフィルムである。前記カーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブが導電ネット構造を形成しているので、前記2つの電極は、前記カーボンナノチューブ構造体の何れか2つの場所に間隔を置いて、前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続することができる。
【0051】
前記カーボンナノチューブ構造体は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムカーボンナノチューブワイヤである場合、前記2つの電極は、それぞれ前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの縦軸方向に沿って、前記カーボンナノチューブ構造体の対向する2つの端に電気的に接続する。
【0052】
前記カーボンナノチューブ構造体を、真空環境で2つの電極に電気的に接続させた後、前記2つの電極に電圧を印加する。従って、前記2つの電極の間に電流が生じて、前記カーボンナノチューブ構造体を流れる。従って、前記カーボンナノチューブ構造体が所定の温度まで加熱される。前記所定の温度は、前記金属被覆層とカーボンナノチューブとが反応できる温度である。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブは、1600Kでハフニウムの金属被覆層と反応できる。
【0053】
前記所定の温度で、金属被覆層の金属粒子が溶融され、前記カーボンナノチューブ構造体の前記金属被覆層に接触した炭素原子が、前記金属被覆層へ拡散されて前記金属被覆層と反応し、金属炭化物を形成する。前記溶融状態の金属炭化物は、表面張力の作用で粒子状になり、前記カーボンナノチューブの外表面に形成されている。前記金属炭化物粒子の直径が1nm〜100nmである。複数の前記の金属炭化物粒子は、それぞれ間隔を置いて形成され、2つの金属炭化物粒子の間の距離は、1nm〜100nmである。前記金属炭化物粒子は、前記カーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブの壁に挿入するように存在している。
【0054】
真空環境で、前記カーボンナノチューブ構造体に電流を通すことによって、前記カーボンナノチューブ構造体の外表面に被覆された金属被覆層を溶融させ、且つ前記カーボンナノチューブ構造体の炭素と反応できるので、複雑な加熱装置が必要ない。また、前記カーボンナノチューブ構造体の加熱方法は簡単である。本発明は従来の技術と比べて、加熱過程及び真空炉での焼結のような複雑な工程を必要としない。前記カーボンナノチューブ構造体に通す電流を制御して、前記カーボンナノチューブ構造体の昇温範囲を調整し、且つカーボンナノチューブ自身の抵抗によって、電―熱転換することができ、カーボンナノチューブから熱を放出して、前記カーボンナノチューブに被覆された金属被覆層を加熱するので、エネルギーの利用率が高い。
【0055】
(実施例2)
図7を参照すると、本実施例2のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを提供するステップS201と、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に金属被覆層を形成させるステップS202と、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで加熱させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させるS203と、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱することにより、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位に尖端が形成されるS204と、を含む。
【0056】
前記ステップS201では、前記複数のカーボンナノチューブの部分が前記カーボンナノチューブワイヤの長軸方向を沿って伸展されている。前記複数のカーボンナノチューブが分子間力で長さ方向端部同士が接続されている。
【0057】
前記ステップS203では、前記第一温度は前記金属被覆層がカーボンナノチューブの炭素と反応するための温度である。
【0058】
前記ステップS204では、前記カーボンナノチューブワイヤを加熱させる場合、前記カーボンナノチューブワイヤにおける各々の部分の受熱速度又は放熱速度が異なるので、前記各々の部分の昇温状態が異なり、昇温が速い所で断裂、収縮されて、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂部に尖端を形成する。前記カーボンナノチューブワイヤを加熱させる場合、熱応力集中によって熱が前記カーボンナノチューブワイヤの中部に集中するので、前記カーボンナノチューブワイヤの中部の昇温が速い。例えば、前記カーボンナノチューブワイヤは、2つの電極の間に位置し、且つ前記カーボンナノチューブワイヤの対向する両端をそれぞれ2つの電極と電気的に接続する場合、前記2つの電極に電圧を印加した後、電場の作用で前記カーボンナノチューブワイヤが加熱され、上述のようにカーボンナノチューブワイヤの中部の昇温が速く、且つ前記カーボンナノチューブワイヤの、前記2つの電極に固定する端部、又は前記2つの電極に隣接する部分は、前記カーボンナノチューブワイヤの他の部分より、放熱速度が速い(ここで、前記カーボンナノチューブワイヤが、前記2つの電極の間に生じる電場の作用で加熱されるが、前記2つの電極自身は熱を受けないので、前記カーボンナノチューブワイヤが加熱される場合に、放熱器として用いられる)。従って、前記カーボンナノチューブワイヤは第二温度まで昇温する時、前記カーボンナノチューブワイヤの中部に断裂を生じ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部分が収縮して、尖端が形成される。前記尖端は複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続されて形成する束状構造である。前記尖端の端部から一本のカーボンナノチューブが突出して、且つ前記突出した一本のカーボンナノチューブを隣接するカーボンナノチューブに分子間力で固定させる。
【0059】
本本実施例2のカーボンナノチューブ複合材料体は、尖端を有し、且つ前記尖端の端部は前記尖端の他部より小さな直径を有するので、前記尖端を有するカーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ複合材料体を電界放出素子に応用する場合、電界放出するための電圧が低くなる。
【0060】
(実施例3)
図8を参照すると、本実施例3のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法は、実施例1のドローン構造カーボンナノチューブフィルムと2つの電極を提供するステップS301と、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に金属被覆層を形成させるステップS302と、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成させるステップS303と、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで昇温させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させるS304と、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱させて、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位に尖端が形成されるS305と、を含む。
【0061】
図9を参照すると、前記ステップS302では、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの各々のカーボンナノチューブの外表面に全て金属被覆層を形成させることが好ましい。前記カーボンナノチューブの外表面に覆われた金属被覆層の材料はハフニウムであり、その厚さが50nmである。
【0062】
前記ステップS303では、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬して収縮させるので、その耐熱性を高めることが出来る。図10に示すように、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて形成したカーボンナノチューブワイヤの直径が34μmである。前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを機械的にねじった後、有機溶剤に浸漬することもでき、又は、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させた後で、機械的にねじることもできる。
【0063】
前記ステップS304では、前記第一温度は1600Kであり、加熱電圧が10〜20ボルトである。前記ステップS304で形成された溶融状態の金属炭化物は、表面張力の作用でカーボンナノチューブワイヤの直径を28μmまで減少させる(図11を参照する)。即ち、真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤが前記第一温度に達する場合、前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、34μmから28μmまで、約20%の程度で減少される。前記複数の金属炭化物粒子を形成させているカーボンナノチューブワイヤの直径が小さいので、前記カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ複合材料体を電界放出素子に応用する場合、電界増強要因を改善できる。即ち、本発明のカーボンナノチューブ複合材料体の電界放出効果を増強することができる。
【0064】
図12〜図14を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤのカーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる場合、前記金属炭化物粒子の直径が1nm〜100nmである。複数の金属炭化物粒子は、それぞれ間隔を置いて形成され、2つの金属炭化物粒子の間の距離は、1nm〜100nmである。前記金属炭化物粒子は、前記カーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブの壁に挿入するように存在している。さらに、金属炭化物粒子がハフニウム炭化物粒子である場合、各々のハフニウム炭化物粒子は面心立方結晶構造である。
【0065】
前記ステップS305では、前記第二温度は2136Kより大きく、加熱電圧が20ボルトより大きいことが好ましい。前記カーボンナノチューブワイヤの断裂部に尖端を有する。前記尖端の直径が前記カーボンナノチューブワイヤの直径より小さいので、前記カーボンナノチューブ複合材料体の電界放出効果をさらに増強することができる。前記カーボンナノチューブワイヤは、2つの電極の間に位置し、且つ前記カーボンナノチューブワイヤの対向する両端をそれぞれ2つの電極と電気的に接続する場合、前記2つの電極に電圧を印加した後、電場の作用で前記カーボンナノチューブワイヤが加熱され、上述のようにカーボンナノチューブワイヤの中部の昇温が速く、且つ前記カーボンナノチューブワイヤの、前記2つの電極に固定する端部、又は前記2つの電極に隣接する部分は、前記カーボンナノチューブワイヤの他の部分より、放熱速度が速い(ここで、前記カーボンナノチューブワイヤが、前記2つの電極の間に生じる電場の作用で加熱されるが、前記2つの電極自身は熱を受けないので、前記カーボンナノチューブワイヤが加熱される場合に、放熱器として用いられる)。従って、前記カーボンナノチューブワイヤは第二温度まで昇温する時、前記カーボンナノチューブワイヤの中部に断裂を生じ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部分が収縮して、尖端が形成される。(図15〜図17を参照する)。
【0066】
前記実施例1〜3に説明する製造方法で形成されたカーボンナノチューブ複合材料体は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体と、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に形成された複数の金属炭化物粒子と、含んでいる。前記金属炭化物粒子は、前記カーボンナノチューブ構造体の一部の表面又は全部の表面に形成させることが好ましい。さらに前記金属炭化物粒子は、前記カーボンナノチューブ構造体の各々のカーボンナノチューブの表面に均一的に形成させることがより好ましい。前記カーボンナノチューブ複合材料体はイオンに対する優れた耐衝撃性を有するので、前記カーボンナノチューブ複合材料体からなる電界放出素子が低真空環境でも安定に作業することができる。
【符号の説明】
【0067】
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体を提供する第一ステップと、
前記カーボンナノチューブ構造体における少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、
真空条件でカーボンナノチューブ構造体に電流を通して、前記少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、金属被覆層における金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第三ステップと、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法。
【請求項2】
前記第三ステップにおいて、前記カーボンナノチューブ構造体を2つの電極の間に固定させ、且つ前記カーボンナノチューブ構造体を前記2つの電極にそれぞれ電気的に接続させて、前記2つの電極に電圧を印加して、前記カーボンナノチューブ構造体に電流を通すことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法。
【請求項3】
複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを提供する第一ステップと、
前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、
真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで昇温させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第三ステップと、
真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱させて、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位に尖端を形成させる第四ステップと、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法。
【請求項4】
複数のカーボンナノチューブからなるドローン構造カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップと、
前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に金属被覆層を形成させる第二ステップと、
前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成させる第三ステップと、
真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第一温度まで昇温させ、前記カーボンナノチューブワイヤの少なくとも一本のカーボンナノチューブの外表面に形成された金属被覆層を溶融させると同時に、該金属被覆層の金属をカーボンナノチューブの炭素と反応させて、前記カーボンナノチューブの外表面に複数の金属炭化物粒子を形成させる第四ステップと、
真空条件で前記カーボンナノチューブワイヤに電流を通して、前記カーボンナノチューブワイヤを第二温度まで加熱させて、前記カーボンナノチューブワイヤを断裂させ、前記カーボンナノチューブワイヤの断裂した部位に尖端を形成させる第五ステップと、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法。
【請求項5】
前記第二温度は、前記第一温度より高いことを特徴とする請求項3又は4に記載のカーボンナノチューブ複合材料体の製造方法。
【請求項6】
少なくとも一本のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体、を備えるカーボンナノチューブ複合材料体であって、
さらに、前記カーボンナノチューブ複合材料体は、前記カーボンナノチューブ構造体の少なくとも一本のカーボンナノチューブの表面に形成された複数の金属炭化物粒子を含んでいることを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料体。

【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図18】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−202503(P2010−202503A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25833(P2010−25833)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】