説明

カーボンナノチューブ複合構造体および粘着部材

【課題】基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、180°に折り曲げが可能である優れた柔軟性を有するとともに、優れた熱伝導率および優れた導電率を発現できる、カーボンナノチューブ複合構造体を提供する。また、そのようなカーボンナノチューブ複合構造体を含む粘着部材を提供する。
【解決手段】本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、該基材のヤング率が90〜130GPaである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ複合構造体に関する。詳細には、本発明は、基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体に関する。本発明は、また、該カーボンナノチューブ複合構造体を含む粘着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブについては、その優れた熱的特性や電気的特性などから、様々な機能性材料への展開が期待されている。このため、カーボンナノチューブに関し、生産性、用途等、種々の検討がなされている。カーボンナノチューブを機能性材料として実用化させていくためには、例えば、複数のカーボンナノチューブ柱状構造体からなるカーボンナノチューブ集合体とし、その集合体の特性を向上させていくことが挙げられる。
【0003】
カーボンナノチューブ集合体の用途としては、例えば、粘着剤が挙げられる(特許文献1、特許文献2)。産業用途の粘着剤としては、種々の材料が使われているが、そのほとんどは柔軟にバルク設計された粘弾性体である。粘弾性体は、そのモジュラスの低さから被着体にぬれて馴染み、接着力を発揮する。一方、カーボンナノチューブは、その直径がナノサイズであるため、被着体の表面凹凸に追従し、ファンデルワールス力によって接着力を発揮することが明らかとなっている。
【0004】
複数のカーボンナノチューブ柱状構造体からなるカーボンナノチューブ集合体を基材上に備えたカーボンナノチューブ複合構造体は、粘着部材等の様々な用途に適用することが可能である。
【0005】
カーボンナノチューブ複合構造体は、一般に、基材上にて化学蒸着気相法(CVD法)によりカーボンナノチューブを成長形成させて製造される。化学蒸着気相法(CVD法)によるカーボンナノチューブの成長形成は一般に400〜800℃あたりの高温下で行われる。このため、基材としては、高温下でも高い耐久性を示すシリコン基板が代表的に用いられている。
【0006】
しかし、シリコン基板は高価であるという問題がある。また、シリコン基板は硬直であるため、柔軟性(例えば、180°に折り曲げが可能であるなど)が求められる用途に適用し難いという問題がある。さらに、シリコン基板はカーボンナノチューブに比べて熱伝導率や導電率が大きく劣るため、カーボンナノチューブの有する優れた熱伝導率や導電率を活かす用途に適用しようとする場合には、複数のカーボンナノチューブ柱状構造体からなるカーボンナノチューブ集合体を、シリコン基板から別の基材に転写する必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0071870号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0068195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、180°に折り曲げが可能である優れた柔軟性を有するとともに、優れた熱伝導率および優れた導電率を発現できる、カーボンナノチューブ複合構造体を提供することにある。また、そのようなカーボンナノチューブ複合構造体を含む粘着部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、該基材のヤング率が90〜130GPaである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記基材の熱伝導率が100W/mK以上である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記基材の導電率が1.0×10−1・Ω−1以上である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記基材が、銅、または銅を50重量%以上含む銅合金のいずれかからなる。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記カーボンナノチューブ柱状構造体の先端の25℃における対ガラスせん断接着力が15N/cm以上である。
【0014】
本発明の別の実施形態においては、粘着部材を提供する。本発明の粘着部材は、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、180°に折り曲げが可能である優れた柔軟性を有するとともに、優れた熱伝導率および優れた導電率を発現できる、カーボンナノチューブ複合構造体を提供することができる。また、そのようなカーボンナノチューブ複合構造体を含む粘着部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施形態におけるカーボンナノチューブ複合構造体の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態におけるカーボンナノチューブ集合体製造装置の概略断面図である。
【図3】ヤング率測定方法を示す概略断面図である。
【図4】体積抵抗率測定装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態における代表的なカーボンナノチューブ複合構造体の概略断面図(各構成部分を明示するために縮尺は正確に記載されていない)を示す。カーボンナノチューブ複合構造体10は、基材1と、複数のカーボンナノチューブ柱状構造体2を備える。
【0018】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、基材のヤング率が90〜130GPaであり、好ましくは95〜130GPaであり、より好ましくは100〜130GPaである。
【0019】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体において、上記ヤング率が130GPa以下であれば、180°に折り曲げても割れが発生しないほどの優れた柔軟性を有することができる。
【0020】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体において、カーボンナノチューブ柱状構造体の先端の25℃における対ガラスせん断接着力は、好ましくは15N/cm以上、より好ましくは15〜200N/cm、さらに好ましくは20〜200N/cm、特に好ましくは25〜200N/cm、最も好ましくは30〜200N/cmである。カーボンナノチューブ柱状構造体の先端の25℃における対ガラスせん断接着力が上記範囲内にあることにより、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を粘着部材として用いた場合に、非常に優れた粘着特性を示し得る。
【0021】
カーボンナノチューブ柱状構造体は、単層であっても多層であってもよい。また、カーボンナノチューブ柱状構造体の直径、比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0022】
カーボンナノチューブ柱状構造体の形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0023】
カーボンナノチューブ柱状構造体の長さは、任意の適切な長さに設定され得る。カーボンナノチューブ柱状構造体の長さは、好ましくは300〜10000μmであり、より好ましくは400〜5000μmであり、さらに好ましくは500〜3000μmである。カーボンナノチューブ柱状構造体の長さが上記範囲内にあることにより、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を粘着部材として用いた場合に、非常に優れた粘着特性を示し得る。
【0024】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体は、その層数分布の分布幅、該層数分布の最頻値、該最頻値の相対頻度は、任意の適切な値を取り得る。ここで、層数分布の分布幅とは、カーボンナノチューブ柱状構造体の層数の最大層数と最小層数との差をいう。これらの層数や層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、20本以上のカーボンナノチューブ柱状構造体をSEMあるいはTEMによって測定すれば良い。
【0025】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体は、例えば、下記の第1の好ましい実施形態または第2の好ましい実施形態を取り得る。
【0026】
<カーボンナノチューブ柱状構造体の第1の好ましい実施形態>
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体の第1の好ましい実施形態は、層数分布の分布幅が好ましくは10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が好ましくは25%以下である。上記層数分布の分布幅は、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは10〜25層、特に好ましくは10〜20層である。上記層数分布における最大層数は、好ましくは5〜30層、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは15〜30層、特に好ましくは15〜25層であり、上記層数分布における最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。上記層数分布の最頻値の相対頻度は、より好ましくは1〜25%、さらに好ましくは5〜25%、特に好ましくは10〜25%、最も好ましくは15〜25%である。上記層数分布の最頻値は、好ましくは2〜10層に存在し、より好ましくは3〜10層に存在する。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体が上記のような実施形態をとることにより、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を粘着部材として用いた場合に、非常に優れた粘着特性を示し得る。
【0027】
<カーボンナノチューブ柱状構造体の第2の好ましい実施形態>
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体の第2の好ましい実施形態は、層数分布の最頻値が好ましくは層数10層以下に存在し、該最頻値の相対頻度が好ましくは30%以上である。上記層数分布の最頻値は、より好ましくは9層以下に存在し、さらに好ましくは1〜9層に存在し、特に好ましくは2〜8層に存在し、最も好ましくは3〜8層に存在する。上記層数分布における最大層数は、好ましくは1〜20層、より好ましくは2〜15層、さらに好ましくは3〜10層である。上記層数分布における最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。上記層数分布の最頻値の相対頻度は、より好ましくは30〜100%、さらに好ましくは30〜90%、特に好ましくは30〜80%、最も好ましくは30〜70%である。上記層数分布の最頻値は、好ましくは1〜10層に存在し、より好ましくは2〜8層に存在し、さらに好ましくは2〜6層に存在する。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が備えるカーボンナノチューブ柱状構造体が上記のような実施形態をとることにより、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を粘着部材として用いた場合に、非常に優れた粘着特性を示し得る。
【0028】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材は、好ましくは、無機材料、銅、および銅を50重量%以上含む銅合金のいずれかからなる。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材は、より好ましくは、銅、または銅を50重量%以上含む銅合金のいずれかからなる。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材が無機材料、銅、および銅を50重量%以上含む銅合金のいずれかからなることにより、より優れた柔軟性を有するとともに、より優れた熱伝導率およびより優れた導電率を発現できる、カーボンナノチューブ複合構造体を提供することができる。
【0029】
上記無機材料としては、例えば、グラファイトが挙げられる。
【0030】
上記銅を50重量%以上含む銅合金としては、銅を50重量%以上含むものであれば、本発明の効果を発現できる範囲内で任意の適切な他の金属を含み得る。このような他の金属としては、例えば、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、錫、シリコン、マンガン、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、銀、コバルトなどが挙げられる。上記銅合金の具体例としては、例えば、黄銅、白銅、青銅、洋白、コバール合金などが挙げられる。
【0031】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材は、熱伝導率が、好ましくは100W/mK以上であり、より好ましくは150〜5000W/mKであり、さらに好ましくは200〜4000W/mKであり、特に好ましくは300〜3000W/mKである。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材の熱伝導率が上記範囲内にあることにより、より優れた熱伝導率を発現できるカーボンナノチューブ複合構造体を提供することができる。
【0032】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材は、導電率が、好ましくは1.0×10−1・Ω−1以上であり、より好ましくは1.0×10〜50×10−1・Ω−1であり、さらに好ましくは1.0×10〜20×10−1・Ω−1であり、特に好ましくは1.0×10〜10×10−1・Ω−1である。本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材の導電率が上記範囲内にあることにより、より優れた導電率を発現できるカーボンナノチューブ複合構造体を提供することができる。
【0033】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体に含まれる基材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。好ましくは200μm以下であり、より好ましくは0.01〜200μmであり、さらに好ましくは0.1〜100μmであり、特に好ましくは1〜100μmである。上記基材の厚みを上記範囲内とすることにより、より優れた柔軟性を有するカーボンナノチューブ複合構造体を提供することができる。
【0034】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、好ましくは、基材の表面にAl膜を蒸着後に空気中で700℃以上の温度で加熱してAl膜を形成し、該Al膜上に触媒層を形成し、化学蒸着気相法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)によって該触媒層上にカーボンナノチューブを成長させて得られる。
【0035】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を製造する際に用い得る装置としては、任意の適切な装置を採用し得る。例えば、熱CVD装置としては、図2に示すような、筒型の反応容器を抵抗加熱式の電気管状炉で囲んで構成されたホットウォール型などが挙げられる。その場合、反応容器としては、例えば、耐熱性の石英管などが好ましく用いられる。
【0036】
Al膜の形成方法としては、基材の表面にAl膜をスパッタして形成する。
【0037】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体において、Al膜の膜厚は、好ましくは50nm以下、より好ましくは0.01〜30nm、さらに好ましくは0.1〜20nm、特に好ましくは1〜15nmである。
【0038】
上記Al膜の膜厚を上記範囲内とすることによって、Al膜上に触媒の微粒子が均一に形成されて均一な触媒層となるため、得られるカーボンナノチューブ複合構造体における、複数のカーボンナノチューブ柱状構造体と基材との密着力を、より十分に発現することができる。
【0039】
上記Al膜上に触媒層を形成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属触媒をEB(電子ビーム)、スパッタなどにより蒸着する方法、金属触媒微粒子の懸濁液を基板上に塗布する方法などが挙げられる。
【0040】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を製造する際において用い得る触媒(触媒層の材料)としては、任意の適切な触媒を用い得る。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、金、白金、銀、銅などの金属触媒が挙げられる。
【0041】
上記触媒層の厚みは、好ましくは0.01〜20nm、より好ましくは0.1〜10nm、さらに好ましくは0.1〜5nm、特に好ましくは1〜3nmである。上記触媒層の厚みが上記範囲内にあることによって、複数のカーボンナノチューブ柱状構造体と基材との密着力を、より十分に発現することができる。
【0042】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を製造する際において用い得る、カーボンナノチューブの原料となる炭素源としては、任意の適切な炭素源を用い得る。例えば、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;などが挙げられる。
【0043】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、粘着部材とすることができる。本発明の粘着部材は、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。粘着部材としては、例えば、粘着シート、粘着フィルムが挙げられる。
【0044】
本発明の粘着部材は、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体が任意の適切な基板に固定されたものであっても良いし、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体をそのまま用いるものであっても良い。
【0045】
本発明の粘着部材が基板を有する場合、該基板としては、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドが挙げられる。分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0046】
本発明の粘着部材が基板を有する場合、該基板の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、好ましくは1〜10000μm、より好ましくは5〜5000μm、さらに好ましくは10〜1000μmである。
【0047】
上記基板の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理、下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0048】
上記基板は単層であっても良いし、多層体であっても良い。
【0049】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体を基板に固定する場合、その方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、基板に接着層を設けて固定してもよい。また、基板が熱硬化性樹脂の場合は硬化処理を行って固定すれば良い。また、基板が熱可塑性樹脂や金属などの場合は、溶融した状態で圧着させた後に室温まで冷却して固定すれば良い。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量(質量)基準である。
【0051】
≪ヤング率の測定≫
図3に示すような両端支持の板状試料(d×b×Lmm)の中央部に荷重(PN)をかけたときに生じるたわみ(hmm)を差動トランスにて検出し、ヤング率E(N/m)を下記式から算出した。
E=(1/4)(L/(d・b))(P/h)×10
【0052】
≪180°曲げの評価≫
得られたカーボンナノチューブ複合構造体を180°に折り曲げたときに割れが生じるかどうかを確認した。
○:割れが生じずに折り曲げができた。
×:割れが生じた。
【0053】
≪熱伝導率の評価≫
(株)リガク社製の「LE/TCM−FA8510B」装置を用い、レーザーフラッシュ法にて、測定項目として熱拡散率(t1/2法)および比熱(外挿法)を採用し、測定温度25℃での基材の熱伝導率を測定した。
【0054】
≪導電性の評価≫
導電性の評価として、体積抵抗率を測定した。図4に示す装置を用い、垂直方向の体積抵抗率を測定した。すなわち、基材を10mmφ、厚み35μmに切り出し、該基材の両末端を導電性のゴム電極(Ag含有、体積抵抗率=5.07×10−3Ωcm)で挟み込み、上側のゴム電極上にSUSの重り(65g)を載置し、電圧(1.0V)をかけ、電流量から体積抵抗率(ρV)を求めた(体積抵抗率ρV(Ωcm)=〔電圧(V)/電流(A)〕×〔面積(cm)/厚み(cm)〕)。測定した体積抵抗率(ρV)の逆数を導電性とした。
【0055】
≪対ガラスせん断接着力の測定方法≫
ガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm)に、1cm単位面積に切り出したカーボンナノチューブ複合構造体における複数のカーボンナノチューブ柱状構造体の先端が接触するように載置し、5kgのローラーを一往復させてカーボンナノチューブの先端をガラスに圧着した。その後、30分間放置した。引張り試験機(Instron Tensil Tester)で引張速度50mm/minにて、25℃にてせん断試験を行い、得られたピークを対ガラスせん断接着力とした。
【0056】
〔実施例1〕
銅基材(日鉱金属社製、JTCS、厚み35μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al膜(厚み10nm)を形成した。このAl膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み1nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付銅基材をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで35分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基材上に成長させ、カーボンナノチューブ複合構造体(1)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(1)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(1)は、長さが710μm、層数分布の最頻値が層数2層に存在し、該最頻値の相対頻度が62%であった。
結果を表1にまとめた。
【0057】
〔実施例2〕
黄銅基材(日鉱金属社製、C2680、厚み35μm、銅:亜鉛=66:34(重量比))とした以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(2)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(2)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(2)は、長さが700μm、層数分布の最頻値が層数2層に存在し、該最頻値の相対頻度が60%であった。
結果を表1にまとめた。
【0058】
〔実施例3〕
Al膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み0.35nm)を蒸着させて触媒層を形成した以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(3)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(3)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(3)は、長さが720μm、層数分布の最頻値が層数1層に存在し、該最頻値の相対頻度が63%であった。
結果を表1にまとめた。
【0059】
〔実施例4〕
Al膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2.0nm)を蒸着させて触媒層を形成した以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(4)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(4)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(4)は、長さが710μm、層数分布の最頻値が層数3層に存在し、該最頻値の相対頻度が65%であった。
結果を表1にまとめた。
【0060】
〔比較例1〕
基材をシリコン基板(エレクトロニクス エンド製、厚み525μm)とした以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(C1)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(C1)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(C1)は、長さが720μm、層数分布の最頻値が層数2層に存在し、該最頻値の相対頻度が62%であった。
結果を表1にまとめた。
【0061】
〔比較例2〕
基材をSUS304(森松工業社製、厚み35μm)とした以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(C2)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(C2)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(C2)は、長さが680μm、層数分布の最頻値が層数2層に存在し、該最頻値の相対頻度が65%であった。
結果を表1にまとめた。
【0062】
〔比較例3〕
基材をSUS329J4L(森松工業社製、厚み35μm)とした以外は実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブ複合構造体(C3)を得た。
得られたカーボンナノチューブ複合構造体(C3)中のカーボンナノチューブ柱状構造体(C3)は、長さが700μm、層数分布の最頻値が層数2層に存在し、該最頻値の相対頻度が66%であった。
結果を表1にまとめた。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果が示すように、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、180°に折り曲げが可能である優れた柔軟性を有するとともに、優れた熱伝導率および優れた導電率を発現できることが判る。また、本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、対ガラスせん断接着力も十分に発現できており、粘着部材として非常に有効であることも判る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のカーボンナノチューブ複合構造体は、粘着シート、粘着フィルムなどの粘着部材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
2 カーボンナノチューブ柱状構造体
10 カーボンナノチューブ複合構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に複数のカーボンナノチューブ柱状構造体を備えたカーボンナノチューブ複合構造体であって、
該基材のヤング率が90〜130GPaである、
カーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項2】
前記基材の熱伝導率が100W/mK以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項3】
前記基材の導電率が1.0×10−1・Ω−1以上である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項4】
前記基材が、銅、または銅を50重量%以上含む銅合金のいずれかからなる、請求項1から3までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ柱状構造体の先端の25℃における対ガラスせん断接着力が15N/cm以上である、請求項1から4までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合構造体を含む、粘着部材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−132387(P2011−132387A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293881(P2009−293881)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【復代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
【Fターム(参考)】