説明

カール取りローラ

【課題】複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式のOA機器に取り付けられ、カールした紙葉類に対して良好なカール取り効果を発揮し、しかも弾性体の圧縮永久歪みが小さく、耐熱性に優れるカール取りローラの提供を目的とする。
【解決手段】シャフト11の外周に弾性体21を有し、前記弾性体21よりも硬いローラに、カールした紙葉類を前記弾性体21で押し付けて前記紙葉類のカールを緩和あるいは解消するカール取りローラにおいて、弾性体21は、押出成形された筒状のシリコーン発泡体の外周表面が研磨されて外周表面25でセル26が露出し、また、シャフトが挿通される中心孔22の内周表面23にスキン23aを有するものからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式のOA機器に取り付けられるカール取りローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等のOA機器には、トナーを紙葉類(コピー用紙やプリント用紙)に静電気で付着させ、加熱によりトナーを定着させる電子写真方式のものがある。前記電子写真方式のOA機器においては、紙葉類が熱によりカールし易いため、カール取りローラを設けて紙葉類のカールを緩和あるいは解消することが一部の機器で行われている。
【0003】
図4に示すように、従来のカール取りローラ50はシャフト51とその外周に設けられた弾性体53とよりなり、図5に示すように、OA機器の紙葉類搬送経路において搬送用ローラ61の表面に弾性体53が押し付けられて弾性体53の表面が加圧変形した状態で使用される。前記搬送用ローラ61は、前記弾性体53よりも硬い材質、例えば金属とされる。カールした紙葉類80は、搬送用ローラ61とカール取りローラ50間を通る際に、搬送用ローラ61の外周の一部に巻き付いてカール側とは反対側へ曲げられることにより、カールが取り除かれる。符号65は紙葉類80に付着したトナーを加熱により定着させる定着ローラ、67は加圧ローラである。なお、前記カール取りローラ50と組み合わされる搬送用ローラ61は、前記のように1つに限られず、図6に示すように、2つの搬送用ローラ71,72と組み合わされる場合もある。
【0004】
前記カール取りローラ50は、弾性体53がゴムやポリウレタン発泡体等のように加圧変形可能な材質とされる。ところが、近年、OA機器のコンパクト化により、トナー定着用ローラに接近してカール取りローラが設けられることが多くなってきた。その結果、OA機器の使用期間中に、カール取りローラの弾性体が熱によって塑性変形したり、劣化したりして、カール取り効果が得られなくなるおそれがでてきた。特に、カール取りローラは、弾性体が加圧により変形可能で、かつ圧縮永久歪みの小さい材質とする必要がある。
【0005】
耐熱性を高めるため、前記弾性体として、押出成形された筒状のシリコーン発泡体を用いることが考えられる。シリコーン発泡体はポリウレタン発泡体よりも耐熱性に優れるものであり、カール取りローラの耐熱性向上が期待できる。しかも、押出成形によれば、連続的に筒状体(チューブ)を得ることができ、その後カール取りローラの寸法に応じて所定長に切断するだけで所望サイズの弾性体が得られることから、生産性に優れる。さらには押出成形は、型が不用なために、製品のコストダウンが可能となる。
【0006】
そこで、本発明者は、押出成形された筒状のシリコーン発泡体をシャフトの外周に設けてカール取りローラを作製し、使用したところ、弾性体の圧縮永久歪みが大きく、改良が必要であることが判明した。
【0007】
【特許文献1】特開2003−165662号公報
【特許文献2】特公平6−55457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、弾性体の圧縮永久歪みが小さく、良好なカール取り効果を発揮し、しかも耐熱性に優れるカール取りローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、シャフトの外周に弾性体を有し、前記弾性体よりも硬いローラに、カールした紙葉類を前記弾性体で押し付けて前記紙葉類のカールを緩和あるいは解消するカール取りローラにおいて、前記弾性体は、押出成形された筒状のシリコーン発泡体の外周表面が研磨されて外周表面にセルが露出したものからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記弾性体のシャフトが挿通される中心孔の内周表面にスキンを有し、前記研磨された外周表面における平均セルサイズが250μm〜350μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカール取りローラによれば、シャフトの外周に設けられた弾性体がシリコーン発泡体からなるため、従来のカール取りローラよりも耐熱性が良好なものとなる。しかも、本発明のカール取りローラは、弾性体を構成するシリコーン発泡体が押出成形されたものからなるため、製品のコストダウンを実現することができる。
【0012】
さらに、シリコーン発泡体は筒状に押出成形されると、外周表面と中心孔の内周表面に緻密なスキン(被膜)が形成され、前記スキンによってセルが覆われたものとなるが、本発明のカール取りローラでは、押出成形された筒状のシリコーン発泡体の外周表面が研磨されてセルの露出したもので弾性体が構成され、弾性体の外周表面にはスキンが無いことから、弾性体の圧縮時及び圧縮開放時に、弾性体の内部と外部間で空気の流通が容易となり、弾性体の復元性が高まって圧縮永久歪みが小さくなる。これに加えて本発明のカール取りローラは、弾性体において、シャフトが挿通される中心孔の内周表面にスキンが残されているため、シャフトと接する弾性体内周面の強度を高めることができ、弾性体がシャフトとの境界面で破損等するおそれをなくすことができる。
【0013】
なお、本発明のような押出成形されたシリコーン発泡体に代えて、金型を用いる注型成形によって所定寸法の筒状シリコーン発泡体を形成し、その後に外周表面を研磨してカール取りローラの弾性体を得る場合、成形された筒状シリコーン発泡体は外周表面及び内周表面のみならず長さ方向両端面にもスキンを有するため、その両端面のスキンが通気性を妨げて圧縮永久歪みを低下させるおそれがある。したがって、筒状シリコーン発泡体の外周表面に加えて両端面についても、研磨あるいは切断によってスキンを除去しなければならず、本来、長さについては切断加工を行うことなく所定長の製品が得られるという注型成形の利点が損なわれることになり、押出成形の場合と比べて利点が無いばかりか、型使用によるコストアップの不利が大きな問題となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るカール取りローラの正面図と断面図である。図1に示すカール取りローラ10は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式のOA機器における紙葉類のカール取りに用いられるもので、図5及び図6に示したOA機器の紙葉類搬送経路において、従来のカール取りローラ50に代えて用いられる。
【0015】
前記カール取りローラ10は、シャフト11とその外周に設けられた弾性体21とよりなる。前記シャフト11は前記カール取りローラ10の取り付け及び回転軸となるものであり、金属製からなる。
【0016】
前記弾性体21は、図5及び図6に示す搬送用ローラ61,71,72に押し付けられて表面が加圧変形可能なものであり、押出成形された筒状のシリコーン発泡体の外周表面が研磨されたものからなる。前記弾性体21はシャフトが挿通される中心孔22を有し、前記中心孔22の内周表面23にスキン23aを有する。前記スキン23aは、シリコーン発泡体が押出成形により筒状に形成される際に被膜として形成されたものであり、シリコーン発泡体内部のセル(気孔)を覆っている。前記弾性体21の外径及び厚みは、カール取りローラが取り付けられるOA機器に応じた適宜の寸法とされるが、例として外径16〜24mm、厚み3〜8mmを挙げる。
【0017】
前記弾性体21における研磨後の外周表面25は、前記筒状のシリコーン発泡体を押出成形した際にシリコーン発泡体の外周表面に形成されたスキン(被膜)が研磨により除去され、シリコーン発泡体の内部のセル(気孔)26が露出した状態となっている。前記弾性体21は、研磨後の外周表面25でセル(気孔)が露出していることにより、圧縮及び圧縮開放時にシリコーン発泡体の内部と外部間で空気の流通が良好となって弾性体の復元が良好となり、圧縮永久歪みが小さくなる。
【0018】
前記弾性体21は、前記研磨後の外周表面24における平均セルサイズを250μm〜350μmとするのが好ましい。前記範囲の平均セルサイズとすることにより、弾性体21の圧縮永久歪みを小さくできると共に、カール取りのために他のローラに弾性体21が押し付けられた際に弾性体21に求められる変形性を確保することができる。前記平均セルサイズの値は、本実施例では、隣接する10個のセルのセル径を測定し、その平均値とした。さらに、前記弾性体21は、復元性をより良好とするため、圧縮永久歪(JIS K 6401)が5%以下が好ましい。
【0019】
なお、図2に示すように、押出成形された筒状のシリコーン発泡体21A、すなわち研磨される前における筒状のシリコーン発泡体21Aは、外周表面24に所定厚みのスキン(被膜)24aを有し、またシリコーン発泡体内部のセルは、前記スキン24aに接近した部分でセルサイズが小さくなる。そのため、前記押出成形された筒状のシリコーン発泡体21Aにおける外周表面24の除去厚みを調節することにより、研磨後の外周表面に露出するセルの平均サイズを調節することができる。前記弾性体21は、研磨による除去厚みを1.25mm〜6.25mmとすることにより、研磨後の外周表面におけるセルの平均サイズを100μm〜350μmとすることができ、特に好ましくは、研磨による除去厚みを1.5mm〜4mmとすることにより、研磨後の外周表面におけるセルの平均サイズが250μm〜350μmとされたものである。更には、前記研磨後の外周表面におけるセルの平均サイズが250μm〜350μm、圧縮永久歪(JIS K 6401)が5%以下とされたものが、前記弾性体21として、より好ましい。
【0020】
押出成形された筒状のシリコーン発泡体21Aの外周表面24に対する研磨は、適宜の方法で行うことができる。例えば、図3に示すように、押出成形された筒状のシリコーン発泡体21Aの中心孔22に仮シャフト110あるいは前記シャフト11を挿入し、前記仮シャフト110あるいはシャフト11を回転可能に軸支し、その状態でセラミック砥石41を保持した研磨機を前記シリコーン発泡体21Aの外周表面24に押し当てることにより行うことができる。その際、前記のように、研磨による前記外周表面の除去厚みを調節することにより、研磨後の弾性体21を、外周表面におけるセルの平均サイズが100μm〜350μm、特に好ましくは、250μm〜350μmからなり、圧縮永久歪(JIS K 6401)が5%以下のものとすることができる。
【0021】
また、前記弾性体21の長さ方向両端面21a,21aは切断面からなり、スキンが存在せず、セルが露出したものとなっている。
【実施例】
【0022】
シリコーン発泡体を押出成形により内径7mm、外径28.0mm、26.0mからなる2種類の筒状シリコーン発泡体の形状にを形成し、この筒状シリコーン発泡体を長さ300mmに切断した。そして、これにより得られた筒状のシリコーン発泡体の中心孔に直径8mm、長さ350mmの仮シャフトを挿入し、前記仮シャフトの両端を回転可能に軸支して、グラインダー(品名:研磨機LG−70、水口製作所製)を筒状シリコーン発泡体の外周表面に当てて研磨し、外周表面のスキンを除去した。その際、外周表面の除去量(研磨量)を変化させて、複数種類の弾性体を、各10本形成した。
【0023】
このようにして得られた弾性体の外周表面に対して平均セルサイズをキーエンス製マイクロスコープVH−8000を用いて倍率100倍にて拡大観察し、隣接するセル10個の平均を求めた。但し、50μm以下の小さなセルはセルと判断せず、カウントしないこととした。また、前記弾性体の圧縮永久歪みをJIS K 6401に基づき測定した。測定結果を表1及び表2に示す。なお、測定結果は、それぞれ弾性体10個の平均値である。また、比較のため、押出成形したシリコーン発泡体の外周表面を研磨していない弾性体についても、同様に圧縮永久歪みを測定し、平均値を算出した。なお、表1、表2の研磨後の外径は、シャフト圧入状態での値である。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表1及び表2に示すように、外周表面が研磨されてなく、スキンを外周表面に有する実験例(実験No.1)と比べ、研磨により外周表面のスキンが除去されてセルが露出している他の実験例のものは、歪みが小さくなっている。特に、スキンの除去された外周表面の平均セルサイズが250μm〜350μmからなる表1の実験No.4〜13、表2の実験No.4〜8は、歪みが5%以下と少なく、カール取りローラの弾性体として好適なことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るカール取りローラの正面図及び断面図である。
【図2】外周表面のスキンが除去される前の筒状シリコーン発泡体の断面図である。
【図3】筒状シリコーン発泡体の外周表面を除去する際の例を示す断面図である。
【図4】従来のカール取りローラの正面図及び断面図である。
【図5】カール取りローラの使用状態を示す概略図である。
【図6】カール取りローラの他の使用状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10 カール取りローラ
11 シャフト
21 弾性体
23 内周表面
23a 内周表面のスキン
25 スキン除去後の外周表面
26 セル
61,71,72 搬送用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に弾性体を有し、前記弾性体よりも硬いローラに、カールした紙葉類を前記弾性体で押し付けて前記紙葉類のカールを緩和あるいは解消するカール取りローラにおいて、
前記弾性体は、押出成形された筒状のシリコーン発泡体の外周表面が研磨されて外周表面でセルが露出したものからなることを特徴とするカール取りローラ。
【請求項2】
前記弾性体は、シャフトが挿通される中心孔の内周表面にスキンを有し、前記研磨された外周表面における平均セルサイズが250μm〜350μmであることを特徴とする請求項1に記載のカール取りローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−190833(P2009−190833A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32707(P2008−32707)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】