説明

ガイド波センサを備えた非破壊検査装置およびその装置による検査方法

【課題】ガイド波センサの測定性能を維持する技術と検査結果の信頼性向上とを兼ね備えたガイド波を用いた非破壊検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】複数の超音波探触子1を配列し、並列に接続された前記超音波探触子群2a〜2hを有するガイド波センサ3に対してガイド波を生成するための信号を送受信する送受信部8と、前記ガイド波センサ3からの受信信号を処理して解析する信号処理・解析部9と、測定条件の入力部11および測定結果の出力部12と、ガイド波検査装置5の全体を制御する制御部10とから構成されたガイド波を用いて非破壊検査をするガイド波検査装置において、超音波探触子群2a〜2hのインピーダンスを測定するセンサ検査部7と、超音波探触子群2a〜2hの接続先をセンサ検査部と送受信部8とに切り替える信号切替部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状をした構造物に発生した減肉や傷や変形などの部位を、ガイド波を用いて検査する非破壊検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形状をした被検体としての構造物であるタンクや配管は、使用している環境の影響を受けながら時間の経過とともに内外面から腐食が進行する。腐食しやすい箇所では腐食が進行していくと、内容物の漏洩や破断にいたる事故の要因となるため、定期的に非破壊検査や目視検査をすることで、その事故を未然に防止し、タンクや配管の健全性を維持,確認している。
【0003】
従来から良く用いられている非破壊検査は、超音波厚さ計を用いて構造物の厚さを測定することが一般的である。超音波厚さ計は、超音波厚さ計のセンサ部分と被検体との接触面の厚さを一点一点測定するため、測定一点の検査範囲が狭く、表面積の大きいタンクの検査や大口径の配管の検査には長時間費やすため、検査するコストが増大する。
【0004】
そこで、一度に広範囲を検査する手法としてガイド波を利用した非破壊検査が提案されている。ガイド波は、配管や棒や板などの境界面を有する物体中を伝播する超音波の総称である。一般に、板を伝播する波を板波と呼ぶが、厳密にはラム波対称モード,ラム波反対称モード、及び板に対して面内振動するSHガイド波の3種類が存在し、そのうち、棒波と呼ばれる棒を伝搬する波は、板波のラム波対称モードに相当するLモード、ラム波反対称モードに相当するFモード、SH波に相当するTモードの3種類に分類される。ガイド波を利用した非破壊検査は、例えば配管の場合、ガイド波が周方向断面積が変化する位置で反射して戻ってくる特徴を有し、その特徴を利用して、配管にガイド波を長距離伝播させて配管の内外面および長距離区間を一括して検査する方法である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された、ガイド波を用いた非破壊検査装置は、配管全周にわたって複数個の超音波探触子を配置した第1探触子群,第2探触子群を、検査対象の配管の軸方向に並べて配置している(特許文献1の図2参照)。この第1探触子群,第2探触子群は、配管の口径が大きくなるに従って、超音波探触子の個数を増加させる必要がある。
【0006】
一方、他のガイド波を用いた非破壊検査装置では、円筒部材の周方向の一部に、複数個の超音波探触子を配置した第1超音波探触子列,第2超音波探触子列を、検査対象の配管の軸方向に並べて配置している(特許文献2の図1参照)。全周に配置する特許文献1と同様、検査範囲を広くするためには、超音波探触子列の超音波探触子の個数を増加させる必要がある。
【0007】
このように、特許文献1および特許文献2に記載された非破壊検査装置の探触子群や探触子列からなるガイド波センサは、大型のタンクや大口径の配管の検査では、多数の超音波探触子から構成されることになる。その多数の超音波探触子は、全個数を等分割または同一の個数で複数の超音波探触子群または超音波探触子列として、超音波探触子が並列で接続されている。
【0008】
そのため、その並列に接続された超音波探触子群または超音波探触子列の一部の超音波探触子が不具合や破損等で測定不良となった際、そのまま使用してしまうと測定した結果が、実際と誤った検査結果を出す可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平10−507530号公報
【特許文献2】特開2009−109390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
2個以上の超音波探触子を配列し、並列に接続された超音波探触子群のガイド波センサを利用したガイド波を用いた非破壊検査では、前記並列に接続された超音波探触子群の超音波探触子を同時に駆動して被検体にガイド波を伝播させて検査している。
【0011】
この多数で並列に接続されている超音波探触子の一部が不具合や破損等で測定不良が生じていた場合、検査結果の信頼性が損なわれるという問題がある。このようになる前に、ガイド波センサを事前に検査またはモニタすることにより、信頼性の高い検査ができるようになる。
【0012】
しかし、ガイド波センサの健全性の確認を行うために、超音波探触子群の一個一個の超音波探触子を調べるのでは、大型のタンクや大口径の配管で使用されるガイド波センサのようにガイド波センサ内の超音波探触子の個数が多くなると、その健全性の確認に多くの時間を費やすという問題があった。
【0013】
従って、検査結果の信頼性維持のためには、不具合や破損等で測定不良が生じた超音波探触子の有無を簡易な方法で迅速に判定する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、ガイド波センサの健全性を迅速に確認してガイド波を用いた非破壊検査における検査結果の信頼性を担保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の非破壊検査装置は、送受信部に接続される複数の超音波探触子群から成るガイド波センサを備えた非破壊検査装置において、前記超音波探触子群のインピーダンスを測定するセンサ検査部と、前記超音波探触子群の接続先を前記センサ検査部と前記送受信部とに切り替える信号切替部と、を備えたことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置である。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の非破壊検査方法は、複数の超音波探触子群から成るガイド波センサから発信した波動を被検体内にガイド波として伝播させ、前記ガイド波の反射波を受信して受信信号を取得するガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法において、前記超音波探触子群のインピーダンスを測定し、基準とするインピーダンスと前記測定したインピーダンスとの比較に基づいて前記超音波探触子群の健全状態を判定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非破壊検査の検査中や検査前後に、ガイド波センサの超音波探触子群のインピーダンスを測定してその健全状態を基準のインピーダンスとの比較で判定することができるので、ガイド波センサの健全性を迅速に確認してガイド波を用いた非破壊検査における検査結果の信頼性を担保することにある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例によるガイド波センサを備えた非破壊検査装置の系統図である。
【図2】本発明の実施例による非破壊検査装置による検査方法のフローチャート図である。
【図3】本発明の実施例による非破壊検査装置を用いて非破壊検査をした測定結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例によるひとつの超音波探触子群のインピーダンスと周波数の関係を測定した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例による超音波探触子群の不良超音波探触子個数と周波数40kHzでの超音波探触子群のインピーダンスの関係を測定した結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例による超音波探触子群の一群内の超音波探触子の採用個数別に表した、一群内の不良超音波探触子個数と周波数40kHzでの超音波探触子群のインピーダンスの関係を測定した結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例によるガイド波センサの異常判定方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例によるガイド波センサを備えた非破壊検査装置(以下、ガイド波検査装置とも言う。)は、複数の超音波探触子1を配列し、並列に接続された超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hで構成したガイド波センサ3に対してガイド波信号を電気的信号として送受信する送受信部8と、前記ガイド波センサ3からの受信信号を処理して解析する信号処理・解析部9と、測定条件を入力する入力部11および測定結果を出力する出力部12と、ガイド波検査装置5の各部を含む全体を制御し、且つ測定結果等各種データを保存する記憶部を有する制御部10とから構成されたガイド波を用いて非破壊検査をするガイド波検査装置において、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスを測定するセンサ検査部7と、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hの電気的接続先を送受信部8とセンサ検査部7との間で切り替える信号切替部6とをガイド波検査装置に装備されている。出力部12は、出力を可視化するディスプレイを備えることが好ましい。
【0020】
また、センサ検査部7は、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスを測定する際は、インピーダンスを測定する周波数を、ガイド波を用いた非破壊検査であるガイド波検査で使用する周波数またはガイド波検査で使用する周波数の前後の範囲を掃引しながら、ガイド波センサ3の超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスを測定する機能を備えている。
【0021】
このインピーダンスの測定に際しては、信号切替部6は、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのいずれか一群に選択的にセンサ検査部7に接続して、全部の超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスを各群ごとに測定することができる。
【0022】
また、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスの測定は、予め、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hの超音波探触子1の個数を変えてインピーダンスを測定し、その個数の変化に対応したインピーダンスを基準のインピーダンスとして求めて制御部10の記憶部に保存する機能と、ガイド波検査前または検査中または検査後の超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのインピーダンスを測定して測定結果を制御部10の記憶部に保存する機能と、そのガイド波検査前または検査中または検査後に測定したインピーダンスと予め求めておいた基準のインピーダンスとの比較に基づいてガイド波検査前または検査中または検査後に測定したインピーダンスに対応した超音波探触子1の個数を割り出して比較対象の超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hの健全状態を判定する機能を備える。
【0023】
この健全状態を判定する機能は、信号処理・解析部9か制御部10を構成しているコンピュータに割り当てるように設計しても良く、記憶部から出力部12に出力した超音波探触子1の個数に対応した基準のインピーダンスとガイド波検査前または検査中または検査後に測定したインピーダンスとを出力部12のディスプレイに表示させて検査員がその表示を視認して比較判定することであっても良い。
【0024】
また、インピーダンスは温度依存性があるので、インピーダンス測定結果に温度依存性を考慮した補正を加える機能を前述のコンピュータに割り当てるようにすることが好ましい。
【0025】
このような実施例によれば、予め測定して求めた超音波探触子群の超音波探触子個数とインピーダンスの相関関係と、非破壊検査前、または非破壊検査中、または非破壊検査後に測定した超音波探触子群のインピーダンス測定結果を、比較することで、超音波探触子群の超音波探触子の良否および個数を判定することができるので、ガイド波検査で使用したガイド波センサの測定性能の維持が可能となり、非破壊検査結果の信頼性向上が可能となる。
【0026】
本実施例は、並列で接続された超音波探触子群のインピーダンスを指定した周波数で測定することで、予め測定して求めておいた前記周波数のインピーダンスと超音波探触子個数の相関関係とを比較することで、超音波探触子の不良の有無を判定することができる。さらに、超音波探触子を1個または数個はずしながら数回繰返すことで、不良超音波探触子を超音波探触子群の中から選定することができる。このような選定を実施すれば、ガイド波センサの性能を維持するための不良超音波探触子の選定を含む超音波探触子の交換時間を短縮することができる。
【実施例1】
【0027】
以下に、本発明の実施形態を一層詳細に説明する。本発明の第1の実施形態におけるガイド波センサとガイド波検査装置の検査方法の概要を、図1および図2を用いて説明する。
【0028】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るガイド波センサ3とガイド波検査装置5の系統を、図2は本発明の第1の実施の形態に係るガイド波を用いた検査方法のフローチャートを示す。非破壊検査をする対象物の被検体4を配管とした場合について、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。配管を検査するガイド波センサ3は、被検体4である配管の円周方向に複数個の超音波探触子1を等間隔に全周に配列した第1の超音波探触子群と、軸方向に測定周波数の波長以下の間隔で平行に配列した第2の超音波探触子群で構成されているものを使用する。その超音波探触子群を、均等分に分割した場合(ここでは、4分割とし、第1の超音波探触子群2a,2b,2c,2dと第2の超音波探触子群2e,2f,2g,2h)について述べる。その4分割された各々の超音波探触子群(以下、超音波探触子群2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hの内、各々を超音波探触子群2と称す)の超音波探触子1は、並列に接続されている。接続された超音波探触子群2の信号ケーブルは、ガイド波検査装置5のコネクタ端子に接続される。その信号ケーブルは、ガイド波センサ3とガイド波検査装置5の距離によって長さが決定される(ステップS101)。
【0029】
ステップS102で使用するガイド波センサ3の超音波探触子群2の超音波探触子1を検査するかどうかの有無を選択する。検査有りの場合、後で説明するので、以下、ステップS102とステップS104とステップS106の検査無しの場合について説明する。
【0030】
ステップS103で被検体4を配管とした場合のガイド波を用いた非破壊検査を開始する手順について記す。はじめに、入力部から測定条件のパラメータとして、測定周波数,測定波形,測定遅延時間,測定パターン,測定範囲などを入力する。入力したパラメータの指令は、制御部10,信号処理・解析部9,送受信部8を経て、ガイド波センサ3の超音波探触子群2の超音波探触子1から、ガイド波信号を被検体4の配管に送信,伝播される。
【0031】
ここで、ガイド波検査装置5の信号切替部6は、制御部10からの指令で自動的に送受信部8への接続が行われる。被検体4へ伝播されたガイド波は、配管の欠陥や減肉等の形状が変化する部位で反射し、反射したガイド波を超音波探触子1で受けることでガイド波信号をガイド波検査装置の送受信部8で受信する。その受信信号は、デジタル変換するとともに信号処理・解析部9で解析した後、出力部12により測定結果を表示する。例えば、図3のように横軸をセンサからの距離、縦軸を受信信号の強度又は振幅で表す。
【0032】
また、その結果は、ガイド波検査装置5の制御部10に保存し、被検体の配管の取付けた部位での検査が終了する。このようなガイド波を用いた非破壊検査を決められた被検体の配管の測定対象部位に順次ガイド波センサを取付けて非破壊検査を行っていく。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るガイド波センサ3とガイド波検査装置5により、口径500A配管を非破壊検査した測定結果の一例を示す。横軸はガイド波センサを取付けた位置からの距離(ガイド波を送信する方向)を、縦軸は、信号処理・解析部9からの出力の信号強度を示す。用いた配管は、公称径508mm,厚さ9.5mm、内面には厚さ1mm以上のポリエチレンライニングが施工されている。距離5.8mの信号は、配管の管端からの反射信号R1を示し、5m,3.8mの信号は、予め付与した模擬欠陥R2,R3からの信号である。
【0034】
一方、ステップS102とステップS104とステップS106の検査有の場合、ガイド波センサ3の超音波探触子群2の超音波探触子1を検査する方法について説明する。
【0035】
ステップS201でガイド波検査装置5の入力部11からガイド波センサ3において、どの超音波探触子群2を検査対象とするかを選定する。ここでは超音波探触子群の2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hのいずれかを選択する。
【0036】
ステップS202でインピーダンスを測定する周波数は、非破壊検査で使用する周波数または非破壊検査で使用する周波数の前後、例えば、200kHzから10kHzの範囲の中から任意に範囲を設定する。例えば、30kHz,40kHzのように周波数を固定して行うことや、20kHzから100kHzのように周波数を掃引して行う数字を指定する。
【0037】
ステップS203で超音波探触子1の個数別測定を行わない場合(無の場合)、例えば、ステップ201で全ての超音波探触子群2を選択した場合である。センサ信号切替部6のスイッチングは、送受信部8側をすべて開放させた、未接続状態とする。
【0038】
ステップS204でガイド波センサ3の超音波探触子群2の検査は、センサ検査部7の指定又は固定の周波数または指定周波数の範囲を掃引して、信号切替部6のスイッチングを切替えながら、全ての超音波探触子群2(2a〜2h)のインピーダンス測定を順次行って、ステップS205で測定結果をガイド波検査装置5に保存していく。
【0039】
また、ステップS201でどのガイド波センサ3の超音波探触子群2を検査対象とするかを選定するステップにおいて、同時に複数の超音波探触子群2を選定しても信号切替部6のスイッチングにより並列に接続された超音波探触子1の個数が倍増する測定条件となるため、そのインピーダンス測定は、ひとつの超音波探触子群のインピーダンス測定と同じことである。
【0040】
また、ステップS203で超音波探触子の個数別測定を行う場合(有の場合)、並列に接続された超音波探触子群2の超音波探触子1の個数別インピーダンスを測定する場合も同様に、ステップS201で入力部11からインピーダンスを測定する超音波探触子群2を選択し、ガイド波検査装置5の制御部10から信号切替部6へ検査する超音波探触子群2はスイッチングで接続される。
【0041】
ステップS202でインピーダンスを測定する周波数は、非破壊検査で使用する周波数または非破壊検査で使用する周波数の前後、例えば、200kHzから10kHzの範囲の中から任意に範囲を設定する。ステップS301でガイド波センサの超音波探触子群2の検査は、前記設定した周波数固定または設定した周波数範囲で掃引して、超音波探触子群2の超音波探触子1のインピーダンスを測定する。ここでは予め非破壊検査前に同一体系で使用するガイド波センサ3が正常なときの超音波探触子群2のインピーダンスを測定する方法について記す。
【0042】
最初に正常なときの超音波探触子群2のインピーダンスを測定した後、不良超音波探触子を模擬するため、並列に接続された超音波探触子群2の超音波探触子1を一個一個取り外しながら順次インピーダンス測定し、ステップS302で測定結果をガイド波検査装置5の制御部10に保存していく。
【0043】
以上、ステップS205で非破壊検査前または検査途中または検査終了後に測定した結果をガイド波検査装置5の制御部10に保存し、ステップS206で予め同一体系で測定して求めておいた、超音波探触子群2の超音波探触子1の個数とインピーダンスの値を比較することで、超音波探触子群2及び超音波探触子1の異常を判定することができる。詳細については、後述する。
【0044】
図4は超音波探触子群の超音波探触子のインピーダンスと測定周波数の関係を測定した結果を示す図である。ステップS301で測定した一例である。E1の実線は、並列に接続された超音波探触子群2の超音波探触子1が全て正常で不良なしの場合の測定結果を示す。ここで、超音波探触子群2の超音波探触子数は20個の場合の一例である。
【0045】
図4のグラフで、横軸は、測定周波数をkHzで示し、縦軸は、そのインピーダンス値をkΩで示す。並列に接続された超音波探触子群2の超音波探触子1を一個ずつ取り外すことで、不良超音波探触子を模擬した。E2の実線は、超音波探触子群2の超音波探触子が19個不良の場合、即ち、20個のうち一個だけ正常であった場合の測定結果の一例を示す。
【0046】
このように、超音波探触子群2の超音波探触子1のインピーダンスは、測定周波数に依存することがわかる。この並列に接続された超音波探触子群2の超音波探触子1を一個ずつ取り外して測定したインピーダンスと測定周波数の測定結果はガイド波検査装置5の制御部10に保存する。さらに、測定結果を各測定周波数のインピーダンスでデータを整理し、超音波探触子群2の超音波探触子1のインピーダンスと測定周波数の相関関係をガイド波検査装置5の制御部10に保存しておく。
【0047】
例えば、測定周波数が40kHzの場合では、超音波探触子が不良なしの時のインピーダンス値は約0.09kΩ(E1実線と測定周波数40kHzの交点A)であるのに対し、超音波探触子1が19個不良であった時のインピーダンスは、約0.8kΩ(E2実線と測定周波数40kHzの交点B)であることがわかる。超音波探触子1の不良個数が増えるに従って、超音波探触子群2のインピーダンスは、増加する。このインピーダンス値の差が超音波探触子1の不良個数と一対一に対応している関係を用いる。
【0048】
図5は超音波探触子群の不良超音波探触子個数と測定周波数40kHzでのインピーダンスの関係を示す図である。ここで、超音波探触子群2の超音波探触子1の全個数は20個である。不良超音波探触子の個数が0(ゼロ)のインピーダンス値を基準とした。
【0049】
図5中の○印は超音波探触子群2の信号ケーブルに10m延長ケーブルを接続しないで測定した結果を、△印はガイド波センサ3とガイド波検査装置5が離れている場合を仮定して10m延長ケーブルを接続して測定した結果を示す。延長ケーブルの有無でインピーダンスが多少異なるが、いずれも、同一体系で測定すれば不良超音波探触子の個数とインピーダンス差の値は、一対一のよい相関関係があることがわかる。
【0050】
また、図4から分かるようにデータ整理する測定周波数を40kHzの他に、200kHzから10kHzの範囲内で任意の周波数を指定しても、不良超音波探触子個数とインピーダンス差は、よい相関関係があることがわかる。各測定周波数での測定結果の相関関係は、ガイド波検査装置5の制御部10に保存する。例えば、測定した超音波探触子群の超音波探触子のインピーダンスと予め測定して求めておいたインピーダンスの差が0.1kΩであった場合、図5の相関関係から不良超音波探触子の個数は、12個であることが分かる。そこで、超音波探触子群2の不良超音波探触子を交換すれば良いことになる。
【0051】
以上のことから、信号ケーブル長やガイド波センサの超音波探触子数等の同じ測定体系で測定した超音波探触子群のインピーダンスを測定することで、超音波探触子群の不良超音波探触子の有無の判定、および、超音波探触子群の不良超音波探触子の個数が推定できることがわかる。
【0052】
図6は超音波探触子群の超音波探触子の個数が(a)2個,(b)4個,(c)12個,(d)20個の時の不良超音波探触子の個数と測定周波数40kHzでのインピーダンスの関係を示す図である。いずれも、縦軸は、超音波探触子群の超音波探触子の個数のインピーダンス値を基準とした。
【0053】
(a),(b),(c),(d)の結果からわかるように超音波探触子群の超音波探触子の個数の違いで不良超音波探触子個数とインピーダンスの相関関係が決定することがわかる。いずれも、不良超音波探触子の個数が増加するに従って、インピーダンスの差分は、徐々に増加していく傾向であることがわかる。
【0054】
図7はガイド波センサ3の異常判定方法のフローチャートを示す。ステップS401では測定データと同一測定体系条件での予め相関関係を求めておいた基準データを選定する。ステップ402では選定した基準データと測定データを表示する。基準データは、例えば、図6に示した不良超音波探触子個数とインピーダンス差の関係図を表示する。または、不良超音波探触子個数とインピーダンス差の数値を表で表示させても良い。測定データは、インピーダンス差(基準データとの差)を表示する。ステップS403では測定データのインピーダンス差に相当する不良超音波探触子個数を図6に示した関係図などから求めて表示する。
【0055】
ステップS404では超音波探触子群2の超音波探触子個数に対して不良超音波探触子の個数を設定しておき、それ以上の個数で異常とするように設定する。例えば、並列接続が2個の場合1個、4個の場合2個、12個の場合3個、20個の場合4個と設定しておくことでガイド波センサ3の異常の有無を判断する。
【0056】
従って、予め、非破壊検査の測定体系と同一な条件で、各々の超音波探触子群2の超音波探触子1の個数とインピーダンスの相関関係を測定し、基準データとして結果を保存しておくことで、非破壊検査の前,検査途中,検査後の超音波探触子群2のインピーダンスを測定して、前記基準データの相関関係と比較することで不良超音波探触子の個数が推定できる。また、並列に接続された超音波探触子を一個一個または、数個同時に外しながらインピーダンスを測定していくことで、予め測定し求めておいた基準データの相関関係と比較することで不良超音波探触子を選定できる。
【0057】
例えば、超音波探触子群2の超音波探触子1の全個数が20個のうち2個だけ不良が有った場合、従来方法の超音波探触子1を一個一個取り外してインピーダンス測定し不良の有無を判定するより、本方法のように超音波探触子1を複数個同時に取り外してインピーダンスを測定し、相関関係から外した超音波探触子1の不良個数を調べながら数回繰返すことで選定できるためセンサを検査する時間が短縮できる。
【0058】
また、図5,図6に示したインピーダンスを測定した周波数は、検査に使用する周波数を含む範囲を掃引した中から40kHzを選定したものであるが、検査に使用する近傍の指定周波数で不良超音波探触子個数とインピーダンスの相関関係を求めても、同様の結果が得られる。
【0059】
以上述べたインピーダンスは、測定環境温度の影響を受けるため、非破壊検査装置に温度補正機能を備えて、温度補正をすることが重要である。すなわち、実験室や測定現場など測定する場所の違いによる影響や、測定日時による環境の違いによる影響を補正することで誤差を最小限にすることができる。非破壊検査前、予め同一測定体系でインピーダンスと温度の関係を測定し、補正係数(オーム/℃)を求めておき、基準温度(例えば25℃等)におけるインピーダンスに換算して予め求めた相関関係と実際に測定したデータの一方又は両者の補正係数を元に温度補正する。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態のガイド波を用いた非破壊検査装置および検査方法によれば、予め測定して求めておいた超音波探触子群の超音波探触子の個数とインピーダンスの相関関係を、非破壊検査前、または非破壊検査中、並びに非破壊検査後に測定した超音波探触子群のインピーダンス測定結果と比較することで、超音波探触子の良否およびその個数を推定することができるので、検査で使用したガイド波センサの測定性能の維持が可能となり、非破壊検査結果の信頼性向上が可能となる。
【0061】
また、本発明によれば、超音波探触子群の不良超音波探触子の選定が従来の方法より簡素化できるため、不良超音波探触子の選定も含めた交換に要する時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ガイド波センサから被検体へ超音波を伝播させて、その被検体を非破壊的に検査する検査装置に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0063】
1 超音波探触子
2a〜2h 超音波探触子群
3 ガイド波センサ
4 被検体
5 ガイド波検査装置
6 信号切替部
7 センサ検査部
8 ガイド波送受信部
9 ガイド波信号処理・解析部
10 制御部
11 入力部
12 出力部
E1 超音波探触子20個のうち不良なしでのインピーダンス測定値
E2 超音波探触子20個のうち不良19個でのインピーダンス測定値
R1 配管の管端からの反射信号
R2,R3 配管の模擬欠陥からの反射信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信部に接続される複数の超音波探触子群から成るガイド波センサを備えた非破壊検査装置において、前記超音波探触子群のインピーダンスを測定するセンサ検査部と、前記超音波探触子群の接続先を前記センサ検査部と前記送受信部とに切り替える信号切替部と、を備えたことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記測定したインピーダンスを保存する記憶部と、前記測定したインピーダンスの比較基準とするインピーダンスを保存する記憶部とを備えたことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項2において、前記出力部には前記記憶部に保存したインピーダンスを可視化する手段を備えたことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項2において、前記基準のインピーダンスは、前記超音波探触子群内の超音波探触子の個数との相関関係を示すインピーダンスであり、前記非破壊検査装置は前記相関関係を示すインピーダンスと前記測定したインピーダンスとの比較により前記超音探触子の良又は不良の個数を求める機能を有したことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一項において、非破壊検査に用いるものと同一測定体系におけるインピーダンスと温度の関係に基づいて前記測定したインピーダンスを補正する機能を有したことを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置。
【請求項6】
複数の超音波探触子群から成るガイド波センサから発信した波動を被検体内にガイド波として伝播させ、前記ガイド波の反射波を受信して受信信号を取得するガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法において、前記超音波探触子群のインピーダンスを測定し、基準とするインピーダンスと前記測定したインピーダンスとの比較に基づいて前記超音波探触子群の健全状態を判定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項7】
請求項6において、前記超音波探触子群の接続先を非破壊検査装置の送受信部から前記超音波探触子群のインピーダンスを測定するセンサ検査部へ信号切替部で切り替えて前記超音波探触子群のインピーダンスを測定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項8】
請求項7において、前記超音波探触子群のインピーダンスを、指定する周波数または被検体の非破壊検査に使用するガイド波の周波数を用いて、またはその検査で使用する周波数の前後の範囲を掃引しながら用いて、測定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項9】
請求項8において、被検体の非破壊検査前に前記基準とするインピーダンスとして前記超音波探触子群のインピーダンスを測定し、その測定結果を保存し、非破壊検査中または非破壊検査後に、前記超音波探触子群のインピーダンスを測定し、その測定結果を保存し、前記保存の対象である前記各測定結果を比較して、前記超音波探触子群の健全状態を判定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項10】
請求項8において、予め、前記超音波探触子群の超音波探触子個数を変えて超音波探触子個数ごとに前記基準とするインピーダンを測定してそのインピーダンスと超音波探触子個数の相関関係のデータを求めて保存し、非破壊検査前または非破壊検査中または非破壊検査後に超音波探触子群のインピーダンスを測定してその測定結果を保存し、その測定結果と前記データ中のインピーダンスとの比較から前記超音波探触子群の超音波探触子の良又は不良の個数を判定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項11】
請求項6から請求項10までのいずれか一項において、非破壊検査に用いるものと同一測定体系におけるインピーダンスと温度の関係に基づいて前記測定したインピーダンスを補正することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。
【請求項12】
請求項10から請求項11までのいずれか一項において、前記超音波探触子を複数個同時に外した前記超音波探触子群のインピーダンスを測定し、前記測定したインピーダンスと前記相関関係のデータとの比較から外した超音波探触子の不良個数を調べることを数回繰返すことによって不良超音波探触子を選定することを特徴とするガイド波センサを備えた非破壊検査装置による検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102699(P2011−102699A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256629(P2009−256629)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】