説明

ガイド部材および建具

【課題】障子を閉めた際に各召合せ框同士の間隔を適正に維持し、シール性能も確保でき、框同士の衝突やシール材の剪断や音鳴りを防止できるガイド部材を提供すること。
【解決手段】ガイド部材50は、召合せ框16,17の煙返し33が嵌合される嵌合溝53を有する案内部52を備える。案内部52は、他方の召合せ框の煙返し33が当接した際に、その召合せ框を一方の召合せ框に近づく方向に引き寄せる引き寄せ傾斜面521と、他方の召合せ框が当接した際に、その召合せ框を一方の召合せ框から離れる方向に引き離す引き離し傾斜面522とを備える。ガイド部材50によって各框16,17間の間隔を適正な寸法に設定できる。このため、框同士の衝突や、シール材の剪断や、音鳴りを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引違い窓や片引き窓等の建具(引戸)において召合せ材に取り付けられるガイド部材と、このガイド部材が取り付けられた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
引違い窓や片引き窓等の引戸においては、可動障子を閉めた際に各障子の召合せ框(召合せ材)同士を引き寄せてシール材(AT材、エアータイト材)を所定の圧力で各框に当接させ、所定のシール性能を確保するための引寄せ部材を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この引寄せ部材は、外障子および内障子の各召合せ框の一方の框における煙返しの内側に配置され、他方の框の煙返しの端縁を案内して各框同士を互いに近づく方向に引き寄せる傾斜面を備えて構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−217327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建物の外壁部分に設けられる引戸や、浴室出入口に設けられる引戸において、障子の内外で温度差があり、障子の框が熱反りすると、各召合せ框同士が近接し過ぎてしまうことがあった。
この場合、一方の框に取り付けられたシール材の側面に他方の框がぶつかり、障子を閉める際にシール材が負荷となって障子が移動しにくくなったり、シール材が剪断されたり、シール材に框が激しくぶつかって音鳴りが発生してしまうおそれがあった。
さらに、各召合せ框同士が近接しすぎていると、各框同士がぶつかってしまうおそれもあった。このような問題は、障子の召合せ框と窓枠の召合せ枠(召合せ材)とが係合する片引戸等においても同様に発生する。
【0006】
本発明の目的は、障子を閉めた際に各召合せ材同士の間隔を適正に維持し、シール性能も確保でき、召合せ材同士の衝突やシール材の剪断や音鳴りを防止できるガイド部材および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガイド部材は、可動障子の召合せ材と、この可動障子の召合せ材に係合する召合せ材とのいずれか一方の召合せ材に一体に形成された煙返しに取り付けられるガイド部材であって、前記煙返しが嵌合される嵌合溝を有する案内部を備え、この案内部は、前記他方の召合せ材の煙返しが当接した際に、その他方の召合せ材を一方の召合せ材に近づく方向に引き寄せる引き寄せ傾斜面と、前記他方の召合せ材が当接した際に、その他方の召合せ材を一方の召合せ材から離れる方向に引き離す引き離し傾斜面とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記可動障子の召合せ材とは、通常、可動障子の召合せ框を意味する。また、可動障子の召合せ材に係合する召合せ材とは、前記可動障子とは別に設けられた障子の召合せ框または枠体の召合せ枠を意味する。なお、可動障子とは別に設けられた前記障子は、可動障子でもよいし、固定障子でもよい。各障子がそれぞれ可動障子であれば、一般的な引違い窓や引違い戸となり、一方の障子が固定障子であれば、片引き戸となる。
【0009】
このような本発明においては、ガイド部材に引き寄せ傾斜面および引き離し傾斜面が設けられているので、各召合せ材同士がある程度離れて配置されている場合には、一方の召合せ材に取り付けられたガイド部材の引き寄せ傾斜面に、他方の召合せ材の煙返しが当接して各召合せ材同士が所定の間隔になるまで近接させることができる。
一方、各召合せ材同士が近接しすぎている場合には、前記ガイド部材の引き離し傾斜面に、他方の召合せ材が当接して各召合せ材同士を所定の間隔になるまで引き離すことができる。
従って、障子を閉めた際に、各召合せ材同士の間隔を適正な寸法に設定できる。このため、召合せ材同士の衝突や、召合せ材がシール材の基端部などに当接してシール材が剪断されたり、音鳴りが発生することを防止できる。
【0010】
ここで、前記引き寄せ傾斜面は、前記案内部において他方の召合せ材側の先端から煙返し内側に向かって傾斜され、前記引き離し傾斜面は、前記先端から煙返し外側に向かって傾斜され、前記案内部の煙返し内側には、前記引き寄せ傾斜面に連続して設けられ、かつ、障子の移動方向に平行な離間防止平行部が設けられ、前記案内部の煙返し外側には、前記引き離し傾斜面に連続して設けられ、かつ、障子の移動方向に平行な近接防止平行部が設けられていることが好ましい。
【0011】
ガイド部材の各傾斜面に連続する各平行部が設けられているので、各傾斜面によって一方の召合せ材に対して所定の間隔に移動された他方の召合せ材を、その間隔を維持したまま移動することができる。このため、各召合せ材を適切な位置を保ちながらシール材に当接させることができ、シール材の根元に召合せ材をぶつけてシール材が折れたり、剪断されることがなく、適切な力でシール材が召合せ材に当接するので、安定したシール性を確保できる。
【0012】
ここで、前記障子の移動方向に対する前記引き寄せ傾斜面の傾斜角度は、前記障子の移動方向に対する前記引き離し傾斜面の傾斜角度よりも大きくされていることが好ましい。
【0013】
通常、ガイド部材の引き寄せ傾斜面には他方の召合せ材の煙返しの端縁が当接し、引き離し傾斜面には召合せ材の角部が当接する。
召合せ材の角部は、通常、面取りされてR形状とされているので、前記引き離し傾斜面に対しては点接触となり、傾斜面を急角度にすると接触時に召合せ材を傾斜面に沿ってスムーズに案内することができない。一方、煙返しの端縁は、例えば、引き寄せ傾斜面の傾斜角度に沿った傾斜面に形成でき、各傾斜面同士を接触させることができる。このため、引き寄せ傾斜面の傾斜角度が急角度であっても煙返しを傾斜面に沿ってスムーズに案内することができる。
そして、引き寄せ傾斜面を急角度に設定することで、ガイド部材における引き寄せ傾斜面と嵌合溝との間の肉厚を大きくできる。このため、ガイド部材をコンパクトに形成でき、かつ、その剛性も向上できる。
【0014】
ここで、前記他方の召合せ材は、障子を閉めた際に前記ガイド部材の案内部先端が当接する当接ガイド部を備えていることが好ましい。
障子を閉めた際に、一方の召合せ材に取り付けられた前記ガイド部材の案内部先端が、他方の召合せ材の当接ガイド部に当接すれば、ガイド部材が緩衝材となり、召合せ材がシール材に当接する際の衝撃力が弱まり、音鳴りも減少できる。
【0015】
ここで、前記ガイド部材は、障子を閉めた際に他方の召合せ材の煙返しが当接する受け部を備え、この受け部は緩衝体で構成されていることが好ましい。
ガイド部材に前記煙返しが当接する受け部が形成されていれば、障子を閉めた際に、受け部が緩衝材となり、召合せ材がシール材に当接する際の衝撃力が弱まり、音鳴りも減少できる。
なお、緩衝体としては、ゴムや発泡性樹脂材等のように緩衝作用がある材質のものが利用できる。特に、受け部が発泡性樹脂材つまりスポンジ状に形成されていれば、クッション性が高まるので、衝撃力の吸収効果が高まり、音鳴りも大幅に軽減できる。
なお、ガイド部材と材質が相違する受け部は、ガイド部材と別体に形成して接着剤でガイド部材に接着して一体化してもよいし、二色成型等によって一体に成型してもよい。例えば、ガイド部材をシリコンゴムで形成し、受け部を発泡シリコンで形成し、これらを二色成型で一体的に製造すればよい。
【0016】
本発明の建具は、窓枠と、この窓枠内に配置された少なくとも2枚の障子とを備えた建具であって、前記2枚の障子は、互いに係合する召合せ框をそれぞれ備え、いずれか一方の召合せ框に一体に形成された煙返しには前記ガイド部材が取り付けられていることを特徴とする。
すなわち、前記2枚の障子の一方は外障子、他方は内障子となり、外障子の外召合せ框または内障子の内召合せ框のいずれか一方の煙返しに前記ガイド部材が取り付けられていればよい。この際、窓枠内側に支持された室内側および室外側の一対の障子は、これら一対の障子のうちの少なくとも一方の障子が開閉可能に構成されていればよく、他方の障子は可動障子であってもよいし、固定障子であってもよい。
【0017】
また、本発明の建具は、窓枠と、この窓枠内に配置された障子とを備えた建具であって、前記障子は召合せ框を備え、前記窓枠は障子の召合せ框に係合する召合せ枠を備え、前記召合せ框または召合せ枠の一方に一体に形成された煙返しには前記ガイド部材が取り付けられていてもよい。
【0018】
ここで、前記建具は、窓や浴室ドア等の各種出入口等に設けられる建具などに利用できる。
すなわち、本発明の建具としては、開閉可能な障子が1枚以上設けられていればよく、その開閉可能な障子の召合せ框に係合する召合せ框を備える可動または固定の障子や、前記召合せ框に係合する召合せ枠を備える窓枠が設けられていればよい。
なお、外障子および内障子を設けた場合は、建物外壁に設けられる建具においては、2つの障子のうち、室外側を外障子、室内側を内障子とすればよい。また、浴室や室内に設けられる障子においては、例えば浴室側などの一方側を外障子、他方側を内障子とすればよい。
【0019】
従って、建具としては、開閉可能な障子と、開閉不能な固定障子とを備える片引き窓でもよいし、開閉可能な一対の障子を備える引違い窓でもよい。さらに、3枚引違い窓のように3枚以上の障子を備える建具でもよい。3枚以上の障子を備える場合には、各召合せ框部分で外障子および内障子と設定すればよい。すなわち、中間の障子は、最も外側に配置された障子に対しては内障子とし、最も内側に配置された障子に対しては外障子とすればよい。また、障子としては、上框、下框、および左右の縦框(戸先框および召合せ框)を四周框組みした内部にガラスパネル等の面材が嵌め込まれた、一般的な障子が採用可能である。
【0020】
以上の本発明によれば、前述のガイド部材を備えているので、障子を閉めた際に、各召合せ材同士の障子見込み方向の間隔を適正な寸法に設定できる。このため、召合せ材同士の衝突や、召合せ材がシール材の基端部などに当接してシール材が剪断されたり、音鳴りが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る建具である浴室出入口用建具について説明する。
図1は、本実施形態の浴室出入口用建具1を脱衣室側から見た正面図である。
浴室出入口用建具1は、ユニットバス等の浴室の出入口開口部に設けられて浴室と脱衣室とを仕切るもので、枠体としての建具枠2と、この建具枠2内に支持された3枚の障子101,102,103とを備えた連動三連式建具である。
【0022】
建具枠2は、上枠3、下枠4、および左右の縦枠5を四周枠組みして構成されており、上枠3、下枠4および縦枠5は、それぞれアルミ押出形材製の部材で構成されている。
なお、上枠3および下枠4には図示しない3本のレールがそれぞれ形成されており、これら各3本のレールで3枚の障子101〜103を支持するように構成されている。
【0023】
3枚の障子101〜103は、図2にも示すように、それぞれアルミ押出形材製の上框11、下框12、および左右の縦框13,14と、これらを四周枠組みした内部にガラス製や樹脂製の面材15を組み込んで形成されている。
3枚の障子101〜103の下框12には、下枠4のレールに支持される戸車(図示略)が設けられ、縦框13,14の上端には、上枠3のレールに案内される摺動部材(図示略)が取り付けられている。
そして、3枚の障子101〜103のうち、第1の障子である浴室側の障子(戸先障子)101と、この障子101に隣接する第2の障子である障子(中障子)102とは、各レールに案内されて建具枠2内をスライド開閉可能に支持された可動障子とされている。また、脱衣室側の障子(第3の障子)103は、その縦框(戸尻框)14が縦枠5に固定された固定障子とされている。
【0024】
障子101の一方(図1、2中、左側)の縦框(戸先框)13には、浴室側および脱衣室側の両面にハンドル13Aが取り付けられ、このハンドル13Aを引いて障子101の開閉操作が実施できるようになっている。
【0025】
3枚の障子101〜103は、障子101の一方の縦框(戸先框)13が縦枠5に当接するとともに、障子101の他方(図2中、右側)の縦框(召合せ材である召合せ框)14と障子102の一方の縦框(召合せ材である召合せ框)13とが見込み方向に重なり、障子102の他方の縦框(召合せ框)14と障子103の一方の縦框(召合せ框)13とが見込み方向に重なって閉じるようになっている(閉鎖状態)。そして、ハンドル13Aを引いて障子101を開方向(図中、右側)にスライドさせることで、障子102も連動して同一方向にスライド移動し、3枚の障子101〜103が見込み方向に略重なって開くようになっている(開放状態)。さらに、障子101を閉方向(図2中、左側)にスライドさせることで、障子102も連動して同一方向にスライド移動し、3枚の障子101〜103が閉じるようになっている。
【0026】
本実施形態において、障子101,102同士では、障子101を外障子、障子102を内障子とする。従って、障子101,102の召合せ部分では、障子101の縦框14が外召合せ框16となり、障子102の縦框13が内召合せ框17となる。
同様に、障子102,103同士では、障子102を外障子、障子103を内障子とする。従って、障子102,103の召合せ部分では、障子102の縦框14が外召合せ框(召合せ材)16となり、障子103の縦框13が内召合せ框(召合せ材)17となる。
【0027】
次に、各召合せ框16,17の構造に関し、説明する。
各召合せ框16,17は、同じ断面形状のアルミ押出形材で構成されている。すなわち、召合せ框16,17は、図3に示すように、框本体31と、この框本体31から突出されてガスケットを介して面材15を保持する一対の面材保持片32と、框本体31から突出された煙返し33とを備えている。
【0028】
なお、召合せ框16,17の框本体31は平面略矩形状とされ、かつ、障子101〜103を閉めた際に見込み方向に重なる他の召合せ框17,16側に突出した凸部31Aを備えている。
凸部31Aには、他の内召合せ框17,16側に突出するシール材34が、各召合せ框16,17の長手方向(上下方向)に渡って連続して取り付けられている。
【0029】
各面材保持片32は、框本体31から障子見付け方向に延出され、さらに互いに近づく方向に折曲され、全体として断面略L字状に形成されている。そして、面材保持片32の折曲部32Aは、R形状に面取りされている。
【0030】
煙返し33は、框本体31の他の内召合せ框17、16に対向する対向面(障子101〜103の移動方向に沿った面)35に平行に設けられている。煙返し33の先端には対向面35に向かって傾斜する傾斜面33Aが形成されている。
煙返し33および対向面35には、対向して形成された一対の突条36が形成されている。
【0031】
シール材(エアータイト材、AT材)34は、框本体31に保持される保持部34Aと、召合せ框16,17に当接して弾性変形するシール部34Bとを備えて形成されている。シール材34は、前記保持部34Aが硬質樹脂、シール部34Bが軟質樹脂とされた二色成型品である。但し、シール材34としては、軟質樹脂(または硬質樹脂)のみから成形されたものを利用してもよい。なお、シール材34を形成する樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂(TPO)や熱可塑性エラストマー等が利用可能である。例えば、スチレンブロック共重合体(SBC)が利用できる。
なお、シール部34Bは、カセ巻き納入と障子との摩擦を低減するためにR形状に湾曲されている。
【0032】
このような構成の召合せ框16,17の一方には、ガイド部材50が取り付けられている。本実施形態では、図2に示すように、ガイド部材50は、障子102の縦框13(内召合せ框17)、縦框14(外召合せ框16)に取り付けられている。
なお、ガイド部材50は、各框16,17に沿って設けられる長尺のものでもよいが、本実施形態では、各框16,17の高さ寸法(長さ寸法)に比べて短くされた短寸状(ピース状)のものとされている。
なお、ガイド部材50の取付位置は、各召合せ框16,17に取り付けるガイド部材50の数に応じて設定すればよい。例えば、召合せ框16,17にガイド部材50を1つだけ取り付ける場合には、框16,17の上下方向の中間高さに取り付ければよい。一方、2つ取り付ける場合には、例えば、召合せ框16,17の上半分の中間および下半分の中間にそれぞれ取り付ければよい。さらに、3つ取り付ける場合には、召合せ框16,17の上下方向の中間高さと、上端近傍および下端近傍にそれぞれ取り付ければよい。
【0033】
ガイド部材50は、硬質ポリプロピレン樹脂(PP)やシリコーンゴムなどで構成され、押出成型や射出成型などで製造される。このガイド部材50は、固定部51と、案内部52とを備えている。
固定部51は、前記煙返し33および対向面35間に配置され、前記一対の突条36に係合する係合溝511を備えている。
案内部52は、前記煙返し33が嵌合する嵌合溝53を備えるとともに、その外周面には引き寄せ傾斜面521と、引き離し傾斜面522と、離間防止平行部523と、近接防止平行部524とが形成されている。
【0034】
案内部52の先端52Aは、煙返し33よりも、その煙返し33の延出方向(障子101〜103の中心側方向)に突出されている。この先端52Aは円弧状に形成され、前記引き寄せ傾斜面521および引き離し傾斜面522は先端52Aに連続して形成されている。
引き寄せ傾斜面521は、先端52Aから煙返し33の内側(煙返し33および対向面35の間)に向かって傾斜されている。すなわち、引き寄せ傾斜面521は、先端52Aから固定部51に向かうにしたがって、対向面35に近づくように傾斜されている。
【0035】
一方、引き離し傾斜面522は、先端52Aから煙返し33の外側に向かって傾斜されている。すなわち、引き離し傾斜面522は、先端52Aから固定部51に向かうにしたがって、煙返し33から離れるように傾斜されている。
ここで、障子101〜103の移動方向(障子の見付け方向)に対する引き寄せ傾斜面521の傾斜角度は、障子101〜103の移動方向に対する引き離し傾斜面522の傾斜角度よりも大きくされている。
【0036】
離間防止平行部523は、引き寄せ傾斜面521に連続して形成され、障子101〜103の移動方向に平行な面で形成されている。この離間防止平行部523は、受け部525を介して固定部51に連続している。受け部525は、引き寄せ傾斜面521と同様の方向に傾斜された傾斜面とされ、その傾斜角度は引き寄せ傾斜面521の傾斜角度よりも大きくされている。
近接防止平行部524は、引き離し傾斜面522に連続して形成され、障子101〜103の移動方向に平行な面で形成されている。
【0037】
このような構成のガイド部材50は、各召合せ框16,17の端面において、煙返し33を案内部52の嵌合溝53に挿入し、突条36を固定部51の係合溝511に挿入し、そのまま召合せ框16,17に沿って移動して所定の位置に取り付けられる。
【0038】
このような本実施形態において障子101,102を閉めた際の動作について図4〜6をも参照して説明する。
【0039】
[引き寄せ動作]
まず、図4(A)に示すように、障子101,102の召合せ框16,17の見込み方向の間隔が広い場合の動作について説明する。すなわち、各対向面35間の寸法がW1とされ、適切な間隔寸法Wに比べて大きい場合(W1>Wの場合)の動作について説明する。
このような状態で障子101を閉めると(図4において左側に移動すると)、図4(B)に示すように、一方の召合せ框17に取り付けられたガイド部材50の引き寄せ傾斜面521に、他方の召合せ框16の煙返し33が当接する。
この場合、煙返し33の傾斜面33Aと、引き寄せ傾斜面521とは共に同じ方向の傾斜面とされているので、面接触となる。このため、さらに障子101を閉める方向に移動すると、煙返し33は引き寄せ傾斜面521に案内され、召合せ框16,17は互いに引き寄せられる。
【0040】
そして、図4(C)に示すように、煙返し33が離間防止平行部523に達すると、離間防止平行部523は障子見付け方向に平行なので、召合せ框16,17は適切な間隔を維持しつつ、互いにスライド移動する。このため、各召合せ框16,17の面材保持片32は、シール材34の適切な位置(シール部34Bの先端部近傍)に当接し、シール材34に適切な圧力で当接する。
【0041】
障子101を完全に閉めると、図5に示すように、煙返し33の傾斜面33Aが受け部525に当接して各召合せ框16,17同士が見込み方向に重なる所定の位置に配置される。また、ガイド部材50の引き寄せ傾斜面521や引き離し傾斜面522は、突条36にも当接し、煙返し33がガイド部材50に当接する力を分散している。
従って、ガイド部材50が取り付けられる召合せ框16,17の突条36は、ガイド部材50の固定部51を保持するために用いられるが、ガイド部材50の案内部52の先端52Aが当接される他方の召合せ框16,17の突条36は、当接ガイド部として用いられる。
【0042】
この状態で、障子101の縦框13が建具枠2の縦枠5に当接されていない場合には、そのまま障子101を縦枠5に当接するまで移動すれば、障子102も連動して移動する。これらの移動により、各障子101〜103は、建具枠2に対して所定の閉鎖位置に位置し、施錠も可能となる。
【0043】
[引き離し動作]
次に、図6(A)に示すように、障子101,102の召合せ框16,17の見込み方向の間隔が狭い場合の動作について説明する。すなわち、各対向面35間の寸法がW2とされ、適切な間隔寸法Wに比べて小さい場合(W>W2の場合)の動作について説明する。
このような状態で障子101を閉めると(図6において左側に移動すると)、図6(B)に示すように、一方の召合せ框17に取り付けられたガイド部材50の引き離し傾斜面522に、他方の召合せ框16の折曲部32Aが当接する。
さらに障子101を閉める方向に移動すると、折曲部32Aは引き離し傾斜面522に案内され、召合せ框16,17は障子の見込み方向においては互いに離れる方向に移動する。この場合、折曲部32AはR形状とされているので、引き離し傾斜面522に対して図6に示す平面上では点接触となる。しかしながら、引き離し傾斜面522の傾斜角度は引き寄せ傾斜面521に比べて小さいので、折曲部32Aを引き寄せ傾斜面521に当接させた場合に比べると、折曲部32Aを引き離し傾斜面522に当接させた本実施形態のほうが、障子をスムーズに移動できる。
【0044】
そして、図6(C)に示すように、折曲部32Aが近接防止平行部524に達すると、近接防止平行部524は障子見付け方向に平行なので、召合せ框16,17は適切な間隔を維持しつつ、互いにスライド移動する。このため、各召合せ框16,17の面材保持片32は、シール材34の適切な位置(シール部34Bの先端部近傍)に当接し、シール材34に適切な圧力で当接する。
障子101を完全に閉めると、前述の引き寄せ動作の場合と同じく、図5に示すように、煙返し33の傾斜面33Aが受け部525に当接して各召合せ框16,17同士が見込み方向に重なる所定の位置に配置される。以下、前述の引き寄せ動作と同じく、障子101を縦枠5に当接するまで移動すれば、各障子101〜103は、建具枠2に対して所定の閉鎖位置に位置し、施錠も可能となる。
【0045】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)召合せ框16,17の一方に、引き寄せ傾斜面521および引き離し傾斜面522を備えるガイド部材50を取り付けたので、熱反りなどが生じて、各召合せ框16,17同士が近接している場合、および、離れて配置されている場合のいずれの場合も、各召合せ框16,17を適正な間隔に移動できる。
特に、熱反りなどの影響で召合せ框16,17が近接している場合には、一方の框の面材保持片32が他方の框の煙返し33に当接し、框16,17同士が干渉して音鳴りが生じたり、障子101〜103をスムーズに開閉することができない。これに対し、本実施形態では、ガイド部材50に引き離し傾斜面522を設け、近接している召合せ框16,17を適正な間隔まで離すことができるので、框16,17同士が干渉することを防止でき、音鳴りも防止でき、かつ障子もスムーズに開閉できる。
【0046】
(2)また、ガイド部材50で各召合せ框16,17同士の間隔を適正に調整できるので、シール材34と各框16,17との取合いも一定にできる。
特に、本実施形態のガイド部材50は、離間防止平行部523や近接防止平行部524が設けられているので、各框16,17は、所定の間隔を維持しながらシール材34に当接させることができ、障子をスムーズに開閉できるとともに、安定した水密性能を保つことができる。
すなわち、各召合せ框16,17が近接していると、障子を閉めた際にシール材34の基端部近くに框16,17が当接し、シール材34の剪断方向に障子が当たるため、障子の開閉操作が重くなったり、シール材34が折れてしまい、シール材34による安定した水密性能を保つことも困難になる。
これに対し、本実施形態によれば、シール材34と召合せ框16,17の接触位置を適切に調整でき、障子101〜102の開閉もスムーズに行えるとともに、シール材34が折れてしまうこともなく、シール材34による安定した水密性能を保つことができる。
【0047】
(3)ガイド部材50の引き寄せ傾斜面521を引き離し傾斜面522よりも急角度に形成したので、引き寄せ傾斜面521から嵌合溝53までの肉厚を確保でき、案内部52の強度も確保できる。このため、案内部52において嵌合溝53から先端52Aまでの寸法を最小限に抑えることができ、ガイド部材50を小型化することができる。
【0048】
(4)煙返し33の傾斜面33Aを傾斜させたので、引き寄せ傾斜面521が急角度であっても、この引き寄せ傾斜面521に沿って傾斜面33Aを当接させることで煙返し33つまり召合せ框16,17をスムーズに移動できる。
また、面材保持片32の折曲部32AはR形状であって、引き離し傾斜面522に対しては点接触となるが、引き離し傾斜面522の傾斜角度は緩やかなので、面材保持片32つまり召合せ框16,17をスムーズに移動できる。
【0049】
(5)煙返し33の傾斜面33Aは、傾斜された受け部525に当接するため、障子を閉めた際の煙返し33が受け部525に当たりすぎることを防止でき、煙返し33がガイド部材50の受け部525に当接した際に音鳴りが発生することを防止できる。
【0050】
(6)シール材34のシール部34BをR形状に形成しているので、シール材34を確実に障子101〜103に当接して水密性を確保しつつ、障子101〜103とシール材34との摩擦を低減できて障子をスムーズに開閉できる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、図7〜8に示すように、煙返し33に切欠部311を形成し、ガイド部材50Aを框16,17の端面からではなく、切欠部311に直接取り付けることができるように構成したものである。
ガイド部材50Aは、その上端部および下端部に煙返し33が配置される溝部501が形成されている。各溝部501の底面502間の部分は、切欠部311の上下の端面311A間に配置されている。従って、ガイド部材50Aは、底面502が端面311Aに当接することで上下方向に位置決めがなされている。
さらに、ガイド部材50Aには、前記突条36に係合する固定部503を備えている。この固定部503は弾性変形可能に設けられている。このため、前記切欠部311にガイド部材50Aを押し込むと、突条36に固定部503の斜面が当接することで固定部503は弾性変形する。そして、固定部503の溝に突条36が嵌合することで、ガイド部材50Aは煙返し33に取り付けられる。
【0052】
なお、本実施形態のガイド部材50Aも、前記ガイド部材50と同じく、引き寄せ傾斜面521、引き離し傾斜面522、離間防止平行部523、近接防止平行部524を備えて構成されている。
【0053】
このような本実施形態のガイド部材50Aは、前記実施形態と同じ作用効果を奏することができるとともに、ガイド部材50Aを煙返し33に簡単に取り付けることができるので、組立作業を容易に行うことができる利点がある。
【0054】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、図9に示すように、煙返し33が当接される受け部525を案内部52や固定部51と異なる材質で構成してもよい。特に、受け部525はスポンジなどの発泡性樹脂材のように、案内部52等に比べて軟質でクッション性に優れた材料で構成することが好ましい。このような構成にすれば、障子を閉めた際に、煙返し33が受け部525に当接する際の衝撃力を十分に吸収でき、音鳴りを大幅に減少できる。
なお、受け部525は、ガイド部材50と別体に形成して接着剤でガイド部材50に接着して一体化してもよいし、二色成型等によって一体に成型してもよい。例えば、ガイド部材50をシリコンゴムで形成し、受け部525を発泡シリコンで形成し、これらを二色成型で一体的に製造すればよい。
【0055】
前記実施形態では、ガイド部材50の案内部52が当接される当接ガイド部としての突条36を設けていたが、この当接ガイド部は必ずしも設ける必要はない。このため、ガイド部材50が取り付けられない召合せ框16,17においては、突条36を設けなくてもよい。但し、前記実施形態によれば、召合せ框16,17を同一框構造にできるため、生産効率を向上できる利点がある。
【0056】
前記実施形態では、引き寄せ傾斜面521の傾斜角度を引き離し傾斜面522の傾斜角度よりも大きくしていたが、各傾斜角度を同じものにしてもよいし、逆に引き離し傾斜面522の傾斜角度を引き寄せ傾斜面521の傾斜角度よりも大きくしてもよい。これらの傾斜角度は、ガイド部材50の肉厚寸法や、各傾斜面521,522に当接する煙返し33や折曲部32Aの形状に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
離間防止平行部523や近接防止平行部524は必ずしも設ける必要はないが、これらの平行部523,524が設けられていれば、各召合せ框16,17を見込み方向に所定間隔離れた状態のまま、見付け方向にスライド移動でき、シール材34に対して面材保持片32を適切な位置に配置できて、障子の移動をスムーズに行え、かつ、安定したシール性能を維持できる利点がある。
【0058】
ガイド部材50は、短尺のピース状のものに限らず、召合せ框16,17の全長に渡って配置される長尺のものでもよい。このような構成のガイド部材50は、召合せ框16,17の間隔を調整するためだけではなく、各召合せ框16,17間のシールとしても機能するため、シール材34と協働してシール性能を向上できる。
【0059】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することがなければ、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成は、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室出入口用建具を脱衣室側から見た正面図である。
【図2】前記建具を示す横断面図である。
【図3】前記建具の召合せ框を示す横断面図である。
【図4】前記建具を閉める際の召合せ框の動作を示す横断面図である。
【図5】前記建具が閉められた際の召合せ框を示す横断面図である。
【図6】前記建具を閉める際の召合せ框の動作を示す横断面図である。
【図7】第2実施形態の召合せ框を示す図であり、(A)は召合せ框の横断面図、(B)は正面図である。
【図8】第2実施形態の召合せ框を示す横断面図である。
【図9】本発明の変形例の召合せ框を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…浴室出入口用建具、2…建具枠、101〜103…障子、16…外召合せ框、17…内召合せ框、31…框本体、32…面材保持片、32A…折曲部、33…煙返し、33A…傾斜面、34…シール材、34B…シール部、35…対向面、36…突条、50,50A…ガイド部材、51…固定部、52…案内部、52A…先端、53…嵌合溝、311…切欠部、501…溝部、502…底面、503…固定部、511…係合溝、521…引き寄せ傾斜面、522…引き離し傾斜面、523…離間防止平行部、524…近接防止平行部、525…受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動障子の召合せ材と、この可動障子の召合せ材に係合する召合せ材とのいずれか一方の召合せ材に一体に形成された煙返しに取り付けられるガイド部材であって、
前記煙返しが嵌合される嵌合溝を有する案内部を備え、
前記案内部は、前記他方の召合せ材の煙返しが当接した際に、その他方の召合せ材を一方の召合せ材に近づく方向に引き寄せる引き寄せ傾斜面と、前記他方の召合せ材が当接した際に、その他方の召合せ材を一方の召合せ材から離れる方向に引き離す引き離し傾斜面とを備えるガイド部材。
【請求項2】
前記引き寄せ傾斜面は、前記案内部において他方の召合せ材側の先端から煙返し内側に向かって傾斜され、
前記引き離し傾斜面は、前記先端から煙返し外側に向かって傾斜され、
前記案内部の煙返し内側には、前記引き寄せ傾斜面に連続して設けられ、かつ、障子の移動方向に平行な離間防止平行部が設けられ、
前記案内部の煙返し外側には、前記引き離し傾斜面に連続して設けられ、かつ、障子の移動方向に平行な近接防止平行部が設けられている請求項1に記載のガイド部材。
【請求項3】
前記障子の移動方向に対する前記引き寄せ傾斜面の傾斜角度は、前記障子の移動方向に対する前記引き離し傾斜面の傾斜角度よりも大きくされている請求項1または請求項2に記載のガイド部材。
【請求項4】
前記他方の召合せ材は、障子を閉めた際に前記ガイド部材の案内部先端が当接する当接ガイド部を備えている請求項1から3のいずれかに記載のガイド部材。
【請求項5】
前記ガイド部材は、障子を閉めた際に他方の召合せ材の煙返しが当接する受け部を備え、この受け部は緩衝体で構成されている請求項1から4のいずれかに記載のガイド部材。
【請求項6】
窓枠と、この窓枠内に配置された少なくとも2枚の障子とを備えた建具であって、
前記2枚の障子は、互いに係合する召合せ框をそれぞれ備え、
いずれか一方の召合せ框に一体に形成された煙返しには前記請求項1から5のいずれかに記載のガイド部材が取り付けられている建具。
【請求項7】
窓枠と、この窓枠内に配置された障子とを備えた建具であって、
前記障子は召合せ框を備え、
前記窓枠は障子の召合せ框に係合する召合せ枠を備え、
前記召合せ框または召合せ枠の一方に一体に形成された煙返しには前記請求項1から5のいずれかに記載のガイド部材が取り付けられている建具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−120009(P2007−120009A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309349(P2005−309349)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】