説明

ガスセンサ、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法

【課題】個体情報識別部に格納する個体情報の情報量を増大させることができると共に、個体情報識別部を簡単に構成することができるガスセンサ、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ガスセンサ1は、測定ガス中の酸素濃度を測定することにより、エンジンにおける空燃比(A/F)を検出する空燃比センサである。ガスセンサ1は、これに固有の個体情報を格納した個体情報識別部2を有している。個体情報識別部2は、画像認識装置41によって読み取るよう構成した2次元の情報コード21によって構成してある。情報コード21に含まれるセンサ出力値に関する情報によって、エンジンの制御装置へ実際に読み取るセンサ出力読取値の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体情報を格納した個体情報識別部を有するガスセンサ、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関の排気系には、排ガス中の酸素濃度を測定するためのガスセンサが配設されている。このガスセンサには、酸素濃度を測定することによりエンジンにおける空燃比を検出する空燃比(A/F)センサもしくはO2センサ、又はNOx、HCもしくはCO等の特定ガスの濃度を検出する成分検出センサ等がある。
【0003】
ところで、同じ仕様で製造した複数のガスセンサにおいては、ガスセンサを構成する種々の構成部分の個体差により、酸素濃度等を測定したときの各ガスセンサのセンサ出力値にはバラツキが生じる。このバラツキがセンサ出力値に与える影響を小さくするために、ガスセンサには、そのセンサ出力値の誤差量を反映した識別抵抗を設けている場合がある。そして、各ガスセンサのセンサ出力値の誤差量を、上記識別抵抗の抵抗値によって示し、高い精度が要求されるエンジンの制御装置においては、識別抵抗の抵抗値によって、ガスセンサのセンサ出力値の補正を行うことができる。これにより、例えば、吸入空気量に対する燃料噴射量を精密に制御でき、エミッションや燃費を向上させるといったメリットがある。このような識別抵抗を用いて、ガスセンサのセンサ出力値の補正を行う技術としては、例えば、特許文献1、2に開示されたものがある。
【0004】
しかしながら、上記識別抵抗を用いたガスセンサにおいては、以下の問題点がある。
すなわち、識別抵抗の抵抗値によって、センサ出力値の誤差量を示す際に、抵抗値の大きさの違いにより示すことができる誤差量の種類には限りがある。そのため、ガスセンサにおける多種多様の個体情報を管理することは困難であった。さらに、識別抵抗を用いたガスセンサにおいては、出力補正後の精度にも限りがあり、より精度が要求される場合には、識別抵抗の種類が増え、製造コストが増加するなど製造上の管理も困難であった。
また、ガスセンサから引き出したリード部を収束したコネクタ部に識別抵抗を設けると、このコネクタ部の構造を複雑にしてしまい、製造コストも高いという問題点もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−281617号公報
【特許文献2】特開2005−315757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、個体情報識別部に格納する個体情報の情報量を増大させることができると共に、個体情報識別部を簡単に構成することができるガスセンサ、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ガス濃度を検出するガスセンサであって、
該ガスセンサの個体情報を格納した個体情報識別部を有しており、
該個体情報識別部は、画像認識装置によって読み取るよう構成した2次元の情報コードによって構成してあることを特徴とするガスセンサにある(請求項1)。
【0008】
本発明のガスセンサは、上記個体情報識別部として構成した2次元の情報コードに、各ガスセンサに固有の個体情報を格納させてなる。そのため、情報コードには、多種多様のガスセンサの個体情報を格納させることができる。これにより、ガスセンサの個体情報識別部に格納する個体情報の情報量を増大させることができる。
また、本発明のガスセンサにおいては、上記情報コードを用いることにより、個体情報識別部を複雑にすることなく、簡単に構成することができる。
それ故、本発明のガスセンサによれば、個体情報識別部に格納する個体情報の情報量を増大させることができると共に、個体情報識別部を簡単に構成することができる。
【0009】
第2の発明は、上記情報コードを備えたガスセンサを用いて、ガス濃度を検出するよう構成したガス濃度検出システムであって、
上記情報コードに含まれる上記センサ出力値に関する情報によって、内燃機関の制御装置において、当該ガスセンサから実際に読み取るセンサ出力読取値の補正が行ってあることを特徴とするガス濃度検出システムにある(請求項10)。
【0010】
本発明のガス濃度検出システムは、上記個体情報識別部を2次元の情報コードによって構成したガスセンサを用いて、ガスセンサの個体差がガス濃度の検出に及ぼす悪影響を小さくして構成したものである。
具体的には、本発明においては、上記情報コードに含まれるガスセンサの個体情報としてのセンサ出力値に関する情報によって、内燃機関の制御装置において当該ガスセンサから実際に読み取るセンサ出力読取値の補正を行っている。そして、このセンサ出力読取値の補正は、豊富な情報量を格納することができる上記情報コードを用いて行っていることにより、正確に行うことができる。
そのため、本発明によれば、ガス濃度検出システムによるガス濃度の検出精度を向上させることができる。
【0011】
第3の発明は、上記情報コードを備えたガスセンサを用いて、ガス濃度を検出するよう構成したガス濃度検出システムの製造方法であって、
画像認識装置を用いて、上記ガスセンサに設けた上記情報コードからコンピュータへ上記個体情報を読み取る読取工程と、
書込装置を用いて、上記コンピュータに読み取った上記個体情報を、当該ガスセンサを組み付ける内燃機関の制御装置に書き込む書込工程とを含むことを特徴とするガス濃度検出システムの製造方法にある(請求項12)。
【0012】
本発明の製造方法においては、上記個体情報識別部を2次元の情報コードによって構成したガスセンサを用いて、ガスセンサのセンサ出力値の補正又はガスセンサの製造情報の取得等を行って、ガスセンサ及び内燃機関の制御装置を用いたガス濃度検出システムを製造する。
そして、本発明においては、画像認識装置、書込装置及びこれらを接続したコンピュータを用いる。具体的には、画像認識装置、書込装置及びコンピュータを用いて上記読取工程及び書込工程を行い、ガスセンサにおける個体情報を、このガスセンサを組み付ける内燃機関の制御装置に入力する。
【0013】
そのため、本発明によれば、内燃機関の制御装置において、この制御装置に組み付けたガスセンサのセンサ出力値の補正、又はこの制御装置に組み付けた製造情報の取得等を行って、ガス濃度検出システムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上述した第1〜第3の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1〜第3の発明において、上記ガスセンサは、例えば、空燃比(A/F)センサ、酸素濃度センサ、NOx、HC、CO等の成分を検出する成分検出センサとすることができる。
【0015】
上記第1の発明において、上記情報コードは、縦方向及び横方向の2方向に読み取りを行うよう構成したQRコードであることが好ましい(請求項2)。
この場合には、縦方向及び横方向の2方向に向けて情報を有するQRコードにより、情報コードの情報量を飛躍的に増加させることができる。
【0016】
また、上記個体情報には、検出するガス濃度の変化に応じて当該ガスセンサが出力するセンサ出力値に関する情報が含まれていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、各ガスセンサに固有のセンサ出力値に関する情報により、内燃機関の制御装置においてガスセンサから実際に読み取るセンサ出力読取値の補正を行うことができ、ガスセンサによるガス濃度の検出精度を向上させることができる。
【0017】
また、上記センサ出力値に関する情報は、当該ガスセンサのセンサ出力特性値、又はセンサ出力理論値に対する上記センサ出力特性値の偏差量を示すセンサ出力補正値としての情報であることが好ましい(請求項4)。
上記センサ出力特性値とは、ガスセンサから直接出力されるセンサ出力値のことをいい、上記センサ出力理論値とは、各ガスセンサのセンサ出力特性値に個体差(バラツキ)がないときの理論上のセンサ出力値のことをいう。
【0018】
上記センサ出力値に関する情報を各ガスセンサのセンサ出力特性値とした場合には、各ガスセンサのセンサ出力特性値を情報コードに直接格納しておくことができる。一方、センサ出力値に関する情報を各ガスセンサのセンサ出力補正値とした場合には、センサ出力理論値に対するセンサ出力特性値の偏差量を予め算出して、情報コードに格納しておくことができる。
【0019】
また、上記ガスセンサは、限界電流式のガスセンサであり、該限界電流式のガスセンサは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、限界電流が流れるときの電圧を印加しておき、当該一対の電極間に流れる電流値を測定して、内燃機関における空燃比を検出するよう構成してあり、上記センサ出力特性値又はセンサ出力補正値の情報は、理論空燃比のポイントの情報、燃料リッチ領域のポイントの情報及び燃料リーン領域のポイントの情報のうちの少なくとも1つであることが好ましい(請求項5)。
この場合には、限界電流式のガスセンサにおいて、理論空燃比のポイント、燃料リッチ領域のポイント及び燃料リーン領域のポイントのうちの少なくとも1つのポイントにおけるセンサ出力読取値の補正を行うことができる。そのため、内燃機関における空燃比の検出精度を向上させることができる。
【0020】
また、上記ガスセンサは、酸素濃淡起電力式のガスセンサとし、該酸素濃淡起電力式のガスセンサは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、酸素濃度の差によって生ずる起電力を測定して、内燃機関における空燃比を検出するよう構成し、上記センサ出力特性値又はセンサ出力補正値の情報は、燃料リッチ領域のポイントの情報及び燃料リーン領域のポイントの情報のうちの少なくとも1つとすることもできる(請求項6)。
この場合には、酸素濃淡起電力式のガスセンサにおいて、燃料リッチ領域のポイント及び燃料リーン領域のポイントのうちの少なくとも1つのポイントにおけるセンサ出力読取値の補正を行うことができる。そのため、内燃機関における空燃比の検出精度を向上させることができる。
【0021】
また、上記個体情報には、当該ガスセンサの応答性、内部抵抗(素子インピーダンス)、ヒータ抵抗及びセンサ活性時間のうちの少なくとも1つの情報が含まれていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、ガスセンサにおける応答性、内部抵抗(素子インピーダンス)、ヒータ抵抗及びセンサ活性時間のうちの少なくとも1つの個体差を反映して、ガスセンサのセンサ出力特性を改善することができる。また、応答性、内部抵抗、ヒータ抵抗及びセンサ活性時間の情報は、ガスセンサの個体差を反映した補正値の情報とすることができる。
【0022】
また、例えば、応答性の補正値は、応答性の時定数の補正に用いることができる。また、例えば、内部抵抗、ヒータ抵抗及びセンサ活性時間の補正値は、ガスセンサによるガス濃度の検出を開始する時期の補正に用いることができる。
なお、センサ活性時間とは、ガスセンサを始動した後、このガスセンサにおいて適切なガス濃度の検出が可能となるまでに必要とする時間のことをいう。
【0023】
また、上記個体情報には、当該ガスセンサの製造情報が含まれていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、ガスセンサには、上記情報コードとして、品番又は製造番号等の多種多様の製造情報を格納しておくことができる。
【0024】
また、上記情報コードは、当該ガスセンサ本体、当該ガスセンサから引き出したリード部、又は該リード部の先端部に設けたコネクタのいずれかに設けてあることが好ましい(請求項9)。
この場合には、情報コードをガスセンサにおける各部位に容易に設けることができる。
【0025】
また、上記第2の発明において、上記内燃機関の制御装置は、上記センサ出力読取値の補正を行った後、上記ガスセンサを所定期間使用したときには、当該ガスセンサにより測定する測定ガスを大気としたときの耐久時センサ出力値を測定し、特に上記センサ出力読取値に変化が生じた場合には、上記耐久時センサ出力値を用いて、上記センサ出力読取値の再補正を行うよう構成してあることが好ましい(請求項11)。
この場合には、ガスセンサを内燃機関に組み付ける際にセンサ出力読取値の補正を行った後、ガスセンサを用いてガス濃度の検出を行う際においても、センサ出力読取値の補正を行うことができる。
【0026】
ところで、ガスセンサを用いたガス濃度検出システムの使用期間が長くなり、ガスセンサの耐久後には、ガスセンサに種々の劣化等が生じ、このガスセンサのセンサ出力値に変化が生じることがある。このとき、内燃機関の制御装置は、ガスセンサにより測定する測定ガスを大気としてガス濃度の検出を行い、このときのセンサ出力値を耐久時センサ出力値とする。そして、内燃機関の制御装置は、この耐久時センサ出力値を用いて、上記センサ出力読取値の再補正を行う。
これにより、ガスセンサの耐久劣化後においても、ガス濃度検出システムによるガス濃度の検出精度を高く維持することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明のガスセンサ1、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例のガスセンサ1は、図1に示すごとく、測定ガス中の酸素濃度を測定することにより、内燃機関(エンジン)における空燃比(A/F、空気と燃料との混合比)を検出する空燃比センサである。また、本例のガスセンサ1は、これに固有の個体情報を格納した個体情報識別部2を有している。この個体情報識別部2は、画像認識装置41によって読み取るよう構成した2次元の情報コード21によって構成してある。
【0028】
以下に、本例のガスセンサ1、並びにこれを用いたガス濃度検出システム及びその製造方法につき、図1〜図8と共に詳説する。
図1、図7に示すごとく、本例の情報コード21は、縦方向H及び横方向Wの2方向に向けて情報を有するQRコードである。そして、ガスセンサ1における情報コード21に格納した個体情報は、画像認識装置41により、縦方向H及び横方向Wの2方向に読み取りを行って認知することができる。
【0029】
本例のガスセンサ1は、エンジンにおける空燃比を検出するために用いるものであり、限界電流式のガスセンサ1である。このガスセンサ1は、エンジンの排気管に設け、この排気管を通過する燃焼後の測定ガスの酸素濃度を測定するものである。
図2は、横軸に印加電圧(V)をとり、縦軸にセンサ出力値としての電流値(mA)をとって、限界電流式のガスセンサ1の特性を示す図である。限界電流式のガスセンサ1は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、限界電流ILが流れるときの電圧Vi(V)を印加しておき、当該一対の電極間に流れる電流値(mA)を測定して、酸素濃度を測定するよう構成したものである。
【0030】
本例のガスセンサ1を組み付ける車両においては、上記情報コード21を備えたガスセンサ1及びエンジンの制御装置3(ECU)を用いて、ガスセンサ1により測定した酸素濃度に基づき、エンジンにおける空燃比を検出する空燃比検出システム(ガス濃度検出システム)を構築している。
図3は、横軸にエンジンにおける空燃比をとり、縦軸にセンサ出力値(電流値(mA))をとって、センサ出力理論値Iaと空燃比(A/F)との関係マップを示すグラフである。
【0031】
同図に示すごとく、本例のエンジンの制御装置3においては、ガスセンサ1に個体差(バラツキ)がないときの理論上のセンサ出力理論値Iaと、このセンサ出力理論値Iaの大きさに応じて検出する空燃比(A/F)との関係マップが格納されている。この関係マップは、エンジンの制御装置3において、比例関係等の数式表現を用い、ガスセンサ1のセンサ出力理論値Iaに基づいて、エンジンにおける空燃比を算出することができるよう構成してある。
そして、本例においては、上記情報コード21に含まれるセンサ出力値に関する情報によって、上記センサ出力読取値の補正を行うことにより、上記関係マップの補正を行っている。
【0032】
本例のガスセンサ1における情報コード21には、検出する酸素濃度の変化に応じて当該ガスセンサ1が出力するセンサ出力値に関する情報、ガスセンサ1の製造情報等の各ガスセンサ1に固有の個体情報が格納してある。
図4は、情報コード21における個体情報の格納状態を、模式的に示す図である。同図に示すごとく、画像認識装置41が読み取る情報は、例えば、メモリの1〜5番地には品番の情報、6〜11番地には製造番号の情報、12〜17番地には出力補正の情報として、情報コード21に格納することができる。また、例えば、各番地を0〜Fの16通りの保存を可能にしたときには、例えば、出力補正における理論空燃比(ストイキ)領域、燃料リッチ領域及び燃料リーン領域の各情報は、00〜FFの256通りの情報を格納することができる。
【0033】
また、本例の情報コード21におけるセンサ出力値に関する情報は、上記関係マップにおけるセンサ出力理論値Iaに対する、各ガスセンサ1に固有のセンサ出力特性値Ibの偏差量を示すセンサ出力補正値Rとして、情報コード21に格納されている。このセンサ出力補正値Rは、R=(Ib−Ia)/Ia×100[%]として求めてある。
図3に示すごとく、本例のセンサ出力補正値Rの情報は、理論空燃比(A/F=14.5)のポイントのセンサ出力補正値R1、燃料リッチ(A/F<14.5)領域のポイント(本例ではA/F=13)のセンサ出力補正値R2、及び燃料リーン(A/F<14.5)領域のポイント(本例ではA/F=18)のセンサ出力補正値R3として、情報コード21に格納されている。
【0034】
図3に示すごとく、上記関係マップにおいては、理論空燃比のポイントにおけるセンサ出力理論値Ia1、燃料リッチ領域のポイントのセンサ出力理論値Ia2、及び燃料リーン領域のポイントのセンサ出力理論値Ia3が入力されている。そして、ガスセンサ1における情報コード21から、上記センサ出力補正値R1、R2、R3をエンジンの制御装置3に取得したときには、各ポイントのセンサ出力理論値Ia1、Ia2、Ia3に各ポイントのセンサ出力補正値R1、R2、R3をそれぞれ乗算して、ガスセンサ1からエンジンの制御装3に実際に読み取る補正後のセンサ出力読取値を算出している。
【0035】
こうして、本例の空燃比検出システムにおいては、補正後の関係マップを用い、補正後のセンサ出力読取値の大きさに比例してエンジンにおける空燃比をできるだけ正確に算出することができる。
なお、情報コード21には、センサ出力値に関する情報として、各ガスセンサ1に固有のセンサ出力特性値Ibを格納しておくこともできる。この場合には、エンジンの制御装置3において、上記センサ出力補正値Rを求め、上記と同様にセンサ出力読取値の補正(関係マップの補正)を行うことができる。
【0036】
また、上記情報コード21に格納する個体情報には、ガスセンサ1の応答性、内部抵抗(素子インピーダンス)、ヒータ抵抗又はセンサ活性時間の各情報を格納することもできる。
ガスセンサ1の応答性(追従性)は、ガスセンサ1における酸素イオン電流の検出遅れの度合いを示す値として、情報コード21に格納することができる。そして、各ガスセンサ1に固有の応答性をエンジンの制御装置3に取得することにより、各ガスセンサ1に固有の応答性を考慮してガス濃度の検出を行うことができる。
【0037】
ガスセンサ1の内部抵抗(素子インピーダンス)は、一対の電極を設けた固体電解質体の固有抵抗、一対の電極の固有抵抗及び導線部の固有抵抗等の値として、情報コード21に格納することができる。なお、ガスセンサ1においては、ヒータを配設して当該ガスセンサ1の温度が所定の温度範囲内になるよう制御することにより、ガスセンサ1のセンサ出力特性を安定させている。そして、上記内部抵抗はガスセンサ1の温度に応じて変化するため、上記ガスセンサ1の温度制御を行う際には、内部抵抗の値を測定し、この内部抵抗が所定の値になるようにヒータのフィードバック制御を行っている。そのため、各ガスセンサ1に固有の内部抵抗をエンジンの制御装置3に取得することにより、各ガスセンサ1に固有の内部抵抗を考慮してガス濃度の検出を行うことができる。
【0038】
ガスセンサ1のヒータ抵抗は、各ガスセンサ1に設けたジュール熱を利用した通電式のヒータに固有の抵抗値として、情報コード21に格納することができる。ヒータ抵抗の大小は、ガスセンサ1の加温性能に影響する。そのため、各ガスセンサ1に固有のヒータ抵抗をエンジンの制御装置3に取得することにより、各ガスセンサ1に固有のヒータ抵抗を考慮してガスセンサ1の温度制御を行うことができる。
ガスセンサ1のセンサ活性時間は、ガスセンサ1の始動後、このガスセンサ1において適切なガス濃度の検出が可能となるまでに必要とする時間の値として、情報コード21に格納することができる。
【0039】
また、図1に示すごとく、本例の情報コード21は、ガスセンサ本体11に直接設けてある。ガスセンサ本体11は、例えば、300〜500℃の高温に加熱されるため、情報コード21は、ガスセンサ本体11に、耐熱性のあるインクを用いて直接印字又はレーザマーキングを行うことが好ましい。
これ以外にも、情報コード21は、例えば、図5に示すごとく、ガスセンサ1から引き出したリード部12に設けることができる。この場合には、情報コード21は品番等を印字したテープ22に印字しておくことができる。また、この情報コード21を印字したテープ22は、複数のリード部12を束ねて挿通させたチューブ121に取り付けておくことができる。
また、情報コード21は、図6に示すごとく、リード部12の先端部に設けたコネクタ13等に設けることもできる。この場合には、情報コード21を印字したテープをコネクタ13に貼り付けることができ、また、コネクタ13に情報コード21を直接印字又はレーザマーキングして設けることができる。
【0040】
本例の空燃比検出システムを製造するに当たっては、以下の個体情報取得工程、読取工程及び書込工程を行う。
すなわち、まず、個体情報取得工程として、ガスセンサ1を製造した後、このガスセンサ1の個体情報を情報コード21に書き込む。この情報コード21には、当該ガスセンサ1の品番、製造番号等の製造情報(個体情報)を書き込む。また、ガスセンサ1を製造した後には、このガスセンサ1の特性試験を行い、このガスセンサ1におけるセンサ出力値等の特性を測定する。そして、このセンサ出力値等の特性情報(個体情報)を、情報コード21に書き込む。その後、上記各種の個体情報を書き込んだ情報コード21を、ガスセンサ1に取り付ける。
また、個体情報取得工程は、ガスセンサ1を量産する際に、各ガスセンサ1について行っておく。
【0041】
次いで、読取工程及び書込工程を行う際には、画像認識装置41、書込装置42及びこれらを接続したコンピュータ43を用いる。図7は、ガスセンサ1からの情報コード21の読取、及びこの情報コード21のエンジンの制御装置3(ECU)への書込を行う状態を模式的に示す図である。
そして、同図に示すごとく、読取工程として、画像認識装置41を用いて、ガスセンサ1に設けた情報コード21からコンピュータ43へ上記各種の個体情報を読み取る。次いで、書込工程として、書込装置42を用いて、コンピュータ43に読み取った個体情報を、当該ガスセンサ1を組み付ける車両のエンジンの制御装置3に書き込む。
【0042】
なお、書込装置は、エンジンの制御装置3に使用するメモリに対して上記個体情報の書き込みを行うことができる。そして、当該メモリをエンジンの制御装置3に装着することにより、個体情報をエンジンの制御装置3に格納することができる。
その後、ガスセンサ1及びエンジンの制御装置3を車両に組み付けたときには、エンジンの制御装置3において、この制御装置に組み付けたガスセンサ1のセンサ出力値の補正、及び制御装置に組み付けた製造情報の取得等を行って、空燃比検出システムを製造することができる。
【0043】
本例のガスセンサ1は、上記個体情報識別部2として構成した2次元の情報コード21(QRコード)に、各ガスセンサ1に固有の個体情報を格納させてなる。そのため、情報コード21には、多種多様のガスセンサ1の個体情報を格納させることができる。これにより、ガスセンサ1の個体情報識別部2に格納する個体情報の情報量を増大させることができる。
【0044】
また、情報コード21を用いた個体情報識別部2によれば、ガスセンサ1のセンサ出力値等の特性情報と、ガスセンサ1の品番、製造番号等の製造情報とを、1つの情報コード21に集約することができる。そのため、本例の情報コード21を利用したガスセンサ1によれば、従来の識別抵抗を用いる場合に比べて、個体情報識別部2の構成を簡単にすることができる。
【0045】
また、情報コード21を用いた個体情報識別部2によれば、種々の仕様のガスセンサ1に対しても、個体情報識別部2の構成を変更する必要がなく、汎用性に優れた個体情報識別部2を構成することができる。
それ故、本例のガスセンサ1によれば、個体情報識別部2に格納する個体情報の情報量を増大させることができると共に、簡単かつ汎用性に優れた個体情報識別部2を構成することができる。
【0046】
また、本例の空燃比検出システムは、上記個体情報識別部2を2次元の情報コード21によって構成したガスセンサ1を用いて、ガスセンサ1の個体差が空燃比の検出に及ぼす悪影響を小さくして構成したものである。
そして、同一仕様のガスセンサ1を量産する際において、同一仕様であっても各構成部品の個体差、組付状態等により、各ガスセンサ1のセンサ出力値には個体差が生じる。
【0047】
そこで、本例の空燃比検出システムにおいては、上記情報コード21に含まれるガスセンサ1の個体情報としてのセンサ出力補正値Rの情報によって、上記関係マップにおけるセンサ出力理論値Iaに対する当該ガスセンサ1の出力固有値の偏差量(ずれ量)の補正を行うことにより、エンジンの制御装置3において当該ガスセンサ1から実際に読み取るセンサ出力読取値の補正を行っている。そして、このセンサ出力読取値の補正は、豊富な情報量を格納することができる上記情報コード21を用いて行っていることにより、正確に行うことができる。
そのため、本例によれば、空燃比検出システムによる空燃比の検出精度を向上させることができる。
【0048】
図8は、上記情報コード21(QRコード)を設けたガスセンサ1(発明品)により、エンジンの制御装置3において実際に読み取るセンサ出力読取値のバラツキを改善できることを示すグラフである。同図において、情報コード21を用いた本例のガスセンサ1(発明品)においては、より細かい精度によって段階分けを行って、各ガスセンサ1のセンサ出力特性値Ib又はセンサ出力補正値Rをエンジンの制御装置3に入力することができ、センサ出力読取値のバラツキを極力小さくできることがわかる。一方、識別抵抗を用いた従来のガスセンサ(比較品)においては、識別抵抗による補正量の段階分けは粗い精度によってしか行うことができず、センサ出力読取値のバラツキを小さくすることが困難であることがわかる。
【0049】
なお、上記ガスセンサ1は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、酸素濃度の差によって生ずる起電力を測定して、エンジンにおける空燃比を検出するよう構成した酸素濃淡起電力式のガスセンサ1とすることもできる。この場合には、上記情報コード21に格納するセンサ出力特性値Ib又はセンサ出力補正値Rの情報は、燃料リッチ領域のポイント及び燃料リーン領域のポイントのそれぞれについての情報とすることができる。
【0050】
(実施例2)
本例の空燃比検出システムは、図9に示すごとく、ガスセンサ1を車両に組み付ける際にセンサ出力読取値(関係マップ)の補正を行うだけでなく、ガスセンサ1を用いて空燃比の検出を行う際においても、いわゆる大気学習法を用いてセンサ出力読取値の補正を行うものである。
すなわち、本例のエンジンの制御装置3(ECU)は、ガスセンサ1を車両に組み付けてセンサ出力読取値の補正を行った後、ガスセンサ1を所定期間使用したときには、当該ガスセンサ1により測定する測定ガスを大気としたときの耐久時センサ出力値を測定し、この耐久時センサ出力値を用いて、センサ出力読取値の再補正を行うよう構成してある。
【0051】
ところで、ガスセンサ1を用いた空燃比検出システムの使用期間が長くなり、ガスセンサ1の耐久後には、ガスセンサ1に種々の劣化等が生じ、このガスセンサ1のセンサ出力値に変化が生じることがある。このとき、エンジンの制御装置3は、ガスセンサ1により測定する測定ガスを大気状態として酸素濃度の検出を行い、このときのセンサ出力値を耐久時センサ出力値とする。なお、測定ガスの大気状態は、エンジンの燃料噴射装置から噴射する燃料をカットすることにより容易に形成することができる。そして、エンジンの制御装置3は、耐久時センサ出力値を用いて、上記センサ出力読取値の再補正を行う。
これにより、ガスセンサ1の耐久劣化後においても、空燃比検出システムによる空燃比の検出精度を高く維持することができる。
【0052】
図9は、空燃比検出システムにおいて、情報コード21(QRコード)を用いた補正と大気学習法による補正とを行ったときのセンサ出力読取値のバラツキを示すグラフである。
同図に示すごとく、センサ出力読取値のバラツキは、ガスセンサ1の耐久劣化後において大きくなるものの、上記大気学習法による補正を行うことにより、再び情報コード21を用いて補正を行った組付初期時と同等のバラツキに改善できることがわかる。
本例においても、その他は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1において、情報コードを設けたガスセンサを示す説明図。
【図2】実施例1において、横軸に印加電圧をとり、縦軸にセンサ出力値としての電流値をとって、限界電流式のガスセンサの特性を示すグラフ。
【図3】実施例1において、横軸にエンジンにおける空燃比(A/F)をとり、縦軸にセンサ出力値(mA)をとって、これらの関係マップを示すグラフ。
【図4】実施例1において、情報コードにおける個体情報の格納状態を模式的に示す説明図。
【図5】実施例1において、情報コードをガスセンサから引き出したリード部に設けた状態を示す説明図。
【図6】実施例1において、情報コードをリード部の先端部に設けたコネクタに設けた状態を示す説明図。
【図7】実施例1において、ガスセンサからの情報コードの読取、及びこの情報コードのエンジンの制御装置への書込を行う状態を模式的に示す説明図。
【図8】実施例1において、情報コードを設けたガスセンサにより、センサ出力読取値のバラツキを改善した状態を示すグラフ。
【図9】実施例2において、情報コードを用いた補正と大気学習法による補正とを行って、センサ出力読取値のバラツキを改善した状態を示すグラフ。
【符号の説明】
【0054】
1 ガスセンサ
2 個体情報識別部
21 情報コード
3 エンジンの制御装置
41 画像認識装置
42 書込装置
43 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度を検出するガスセンサであって、
該ガスセンサの個体情報を格納した個体情報識別部を有しており、
該個体情報識別部は、画像認識装置によって読み取るよう構成した2次元の情報コードによって構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記情報コードは、縦方向及び横方向の2方向に読み取りを行うよう構成したQRコードであることを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記個体情報には、検出するガス濃度の変化に応じて当該ガスセンサが出力するセンサ出力値に関する情報が含まれていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項3において、上記センサ出力値に関する情報は、当該ガスセンサのセンサ出力特性値、又はセンサ出力理論値に対する上記センサ出力特性値の偏差量を示すセンサ出力補正値としての情報であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
請求項4において、上記ガスセンサは、限界電流式のガスセンサであり、
該限界電流式のガスセンサは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、限界電流が流れるときの電圧を印加しておき、当該一対の電極間に流れる電流値を測定して、内燃機関における空燃比を検出するよう構成してあり、
上記センサ出力特性値又はセンサ出力補正値の情報は、理論空燃比のポイントの情報、燃料リッチ領域のポイントの情報及び燃料リーン領域のポイントの情報のうちの少なくとも1つであることを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項4において、上記ガスセンサは、酸素濃淡起電力式のガスセンサであり、
該酸素濃淡起電力式のガスセンサは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にそれぞれ設けた一対の電極間に、酸素濃度の差によって生ずる起電力を測定して、内燃機関における空燃比を検出するよう構成してあり、
上記センサ出力特性値又はセンサ出力補正値の情報は、燃料リッチ領域のポイントの情報及び燃料リーン領域のポイントの情報のうちの少なくとも1つであることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記個体情報には、当該ガスセンサの応答性、内部抵抗(素子インピーダンス)、ヒータ抵抗及びセンサ活性時間のうちの少なくとも1つの情報が含まれていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記個体情報には、当該ガスセンサの製造情報が含まれていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記情報コードは、当該ガスセンサ本体、当該ガスセンサから引き出したリード部、又は該リード部の先端部に設けたコネクタのいずれかに設けてあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項10】
請求項3〜6のいずれか一項に記載のガスセンサを用いて、ガス濃度を検出するよう構成したガス濃度検出システムであって、
上記情報コードに含まれる上記センサ出力値に関する情報によって、内燃機関の制御装置において、当該ガスセンサから実際に読み取るセンサ出力読取値の補正が行ってあることを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項11】
請求項10において、上記内燃機関の制御装置は、上記センサ出力読取値の補正を行った後、上記ガスセンサを所定期間使用したときには、当該ガスセンサにより測定する測定ガスを大気としたときの耐久時センサ出力値を測定し、該耐久時センサ出力値を用いて、上記センサ出力読取値の再補正を行うよう構成してあることを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のガスセンサを用いて、ガス濃度を検出するよう構成したガス濃度検出システムの製造方法であって、
画像認識装置を用いて、上記ガスセンサに設けた上記情報コードからコンピュータへ上記個体情報を読み取る読取工程と、
書込装置を用いて、上記コンピュータに読み取った上記個体情報を、当該ガスセンサを組み付ける内燃機関の制御装置に書き込む書込工程とを含むことを特徴とするガス濃度検出システムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−212405(P2007−212405A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35398(P2006−35398)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】