説明

ガスセンサ及び、該ガスセンサを製造するためのフリップチップ法

本発明は、ガス反応層を備えた少なくとも1つの半導体素子(5)を有するセンサエレメント(1)であって、該センサエレメント(1)がフリップチップ法によってキャリヤ(3)上に固定され、センサエレメントのガス反応層がキャリヤ(3)に向いており、前記ガス反応層に、検査しようとするガスを供給するための手段が設けられている形式のものに関する。前記半導体素子(5)は被覆部(11)によって包囲されている。また本発明は、センサエレメント(1)を製造するための方法に関する。本発明の方法によれば、ガス反応層がキャリヤ(3)に対面し、検査しようとするガスがガス反応層に供給されるように、ガス反応層を備えた半導体素子(5)を、フリップフリップ法によってキャリヤ(3)上に固定する。次いで半導体素子(5)を固定した後で被覆部(11)を被着するようにした。さらに本発明は、このようなセンサエレメントを、内燃機関の排ガスライン内に使用する使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した、ガス反応層(ガス感応層ともいう、以下ガス反応層という)を備えた少なくとも1つの半導体素子を有するセンサエレメントに関する。本発明はさらに、このようなセンサエレメントを製造するための方法並びにその使用方法に関する。
【0002】
ガス反応層を備えた少なくとも1つの半導体素子を有するセンサエレメントは、一般的に、ガス混合気内の成分を検出するために使用される。このようなガス反応式の電界効果トランジスタにおいては、ゲート電極がコーティングを備えており、該コーティングにおいてガス分子が吸収され、これによって電荷担体密度を介してトランジスタの特性曲線が変化する。これは、それぞれのガスの存在を示す信号である。コーティングとして、検出しようとする所定のガスのために選択可能な材料がそれぞれ選択される。このために、コーティングは一般的に触媒活性材料を含有している。それぞれ特殊なゲートコーティングを有する、種々異なるガス反応式の電界効果トランジスタを使用することによって、種々異なるガスを検出することができる。
【0003】
ガス成分を検出するためのセンサエレメントは、例えば自動車の排ガスライン内に使用することができる。このようなセンサエレメントによって、例えば排ガス中の窒素酸化物、アンモニア及び/又は炭化水素の存在が測定される。しかしながら、内燃機関の排ガスの高い温度に基づいて、センサエレメントに高い要求が課せられる。しかも、排ガス中に、ゲートコーティングの摩耗を生ぜしめる粒子が含まれている。従ってゲートコーティングを保護する必要があるが、このような保護によってセンサエレメントの機能が損なわれないようにしなければならない。
【0004】
開放気泡型の多孔性の反応層は、例えばドイツ連邦共和国特許公開第102005008051号明細書に記載されている。
【0005】
発明の開示
発明の利点
本発明に従って構成されたセンサエレメントは、ガス反応層を備えた少なくとも1つの半導体素子を有しており、前記センサエレメントがフリップチップ法によってキャリヤ上に固定され、センサエレメントの前記ガス反応層がキャリヤに対面しており、前記ガス反応層に、検査しようとするガスを供給するための手段が設けられている。半導体素子は被覆部によって包囲されている。
【0006】
フリップチップ法によって半導体素子を固定し、次いで被覆部によって包囲することによって、半導体素子は外部の影響に対して保護される。従って一方では、ガス反応層がキャリヤ側に向いていて、キャリヤとは反対側の周囲に向いていないことによって、ガス反応層は保護されている。また他方では、追加的に被覆部によって包囲されていることによって、周囲の媒体内の有害成分が半導体素子と相互作用することはない。このような形式で、半導体素子の損傷は効果的に避けられる。
【0007】
検査しようとするガスをガス反応層に供給するために、ガスを供給するための手段が多孔性の層を有しており、この多孔性の層は、半導体素子とキャリヤとの間に配置されていて、多孔性の層は被覆部によって覆われていない領域を有している。多孔性の層の、被覆部によって覆われていない領域を通って、検査しようとするガスは多孔性の層内に侵入することができる。多孔性の層を通って、検査しようとするガスはガス反応層に達する。多孔性の層を使用したことによって、検査しようとするガスの非ガス状の成分、例えばガス内に含まれる粒子がガス反応層に達することは避けられる。このような形式で、多孔性の層は、ガス反応層のための追加的な保護層として働く。
【0008】
多孔性の層は有利な形式で開放した多孔性のセラミックを有している。有利には、多孔性の層内に含まれる開放した多孔性のセラミックは、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト及びこれらの混合物である。
【0009】
多孔性の層は、有利には、半導体素子をキャリヤ上に固定する前に被着される。キャリヤが半導体素子と接触する位置において、多孔性の層に切欠が設けられている。選択的に、多孔性の層に例えば貫通接続部を設けてもよい。多孔性の層は、例えばスクリーン印刷法によって施され、次いで焼結される。また多孔性の層は、例えばプラズマ溶射法、掻き取り(Rakeln)、材料除去(Dispense)又はパッド印刷(Tampondruck)によって設けてもよい。有利には、多孔性の層はスクリーン印刷によって施される。この場合、多孔性の層の多孔性は、例えば孔開け機を使用して調節することができる。またスクリーン印刷法は、多孔性の層を正確に整列させることができる。スクリーン印刷法によって、簡単な形式で平らな表面が得られる。
【0010】
選択的な実施例によれば、ガスを供給するための通路がキャリヤに形成されており、該通路が一方では半導体素子のガス反応層に開口していて、他方では被覆部の外側の所定の位置に開口している。ガスを供給するための通路は、例えばキャリヤに研削によって形成されており、この場合、キャリヤ側の流入部は、半導体素子と同じ側に配置されている。有利には、通路は被覆されていて、1つの小さい流入開口だけが開放しており、それによって検査しようとするガスの、ガス反応層を傷つける成分が通路内に侵入しないようになっている。
【0011】
有利には、前記通路がキャリヤ内の貫通開口として構成されている。この場合、流入開口はキャリヤの下側に配置されていて、半導体素子はキャリヤの上側で通路上に直接配置されている。
【0012】
特にガス流内に含まれる粒子がガス反応層に達することがないようにするために、通路が多孔性の材料で満たされていれば、有利である。通路内に満たされた多孔性の材料は、有利には、前記多孔性の層に用いられたものと同じものである。通路内への多孔性の材料の挿入は、多孔性の層を施すのと同じ方法で行われる。通路に加えて、キャリヤと半導体素子との間に前記のような多孔性の層を形成してもよい。1つのキャリヤが設けられている場合は、多孔性の層は完全に被覆部によって被覆される。何故ならばガスの供給は通路を介して行われるからである。
【0013】
場合によっては、半導体素子を傷つける成分を含む検査ガスが、ガス反応層とだけ接触するようにするために、半導体素子とキャリヤとの間に多孔性の層が設けられているか又はキャリヤに通路(この通路を介してガス反応層にガスが供給される)が設けられている場合に、被覆部を気密に構成することができる。被覆部が気密に構成されている場合、特に検査しようとするガスのガス状成分も半導体素子から遠ざけられる。
【0014】
ガスをガス反応層に供給するための気密な被覆部及び例えば多孔性の層、又はキャリヤに設けられた通路の代わりに、被覆部を多孔性に構成し、半導体素子とキャリヤとを互いに間隔を保って組み付けてもよい。従って、検査しようとするガスは多孔性の被覆部を通って、及び半導体素子とキャリヤとの間を通ってガス反応層に供給される。この実施例では、半導体素子をキャリヤ上に組み付ける際に、半導体素子とキャリヤとの間に、検査しようとするガスがガス反応層に達するためにそれぞれ必要な間隔を保つように配慮しなければならない。
【0015】
選択的に、被覆部が多孔性に構成されていて、キャリヤの半導体素子の下側に通路が形成されており、それによって検査しようとするガスが、多孔性の被覆部を通って及び通路を通ってガス反応層に供給されるようにしてもよい。この実施例では、半導体素子は、半導体素子とキャリヤとの間にギャップが維持されることなしに、キャリヤ上に直接載せられる。通路が多孔性の層によって満たされていてもよい。半導体素子とキャリヤとの間に多孔性の層が形成されていれば、半導体素子とキャリヤとの間の必要な間隔は、多孔性の層によって調整される。
【0016】
半導体素子を被覆する前記被覆部は、有利な形式で酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト及びガラスの群から成る少なくとも1つの材料を有している。有利には、前記被覆部は、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト又はこれらの材料を混合したものから成っている。
【0017】
センサエレメントを製造するための方法は、
(a)ガス反応層を備えた半導体素子を、ガス反応層がキャリヤに対面するように、かつ検査しようとするガスがガス反応層に供給されるように、フリップチップ法によってキャリヤ上に固定し、
(b)半導体素子を固定した後で被覆部を被着する、
ステップを有している。
【0018】
有利な形式で、前記被覆部は、プラズマ溶射法、特に大気圧プラズマ溶射法によって被着される。被覆部をプラズマ溶射法で被着することによって、被覆部の多孔性を所望に調整することができる。例えば、被覆部に設ける小孔の数を著しく多くすることも、また小孔の数を少なくすることも、或いは被覆部を完全にガス不透過性にすることも可能である。半導体素子をフリップチップ法に従って、半導体素子のガス反応層がキャリヤに向くように固定することによって、被覆部を被着する際にガス反応層を付加的に保護することができる。このような形式で、ガス反応層の敏感な構造部が、プラズマ溶射法によって破壊されることはない。プラズマ溶射法によって被覆部の所望の構造が得られる。従って例えば、例えば被覆部の多孔性に変化を付けることができる。
【0019】
大気圧プラズマ溶射法の利点は、特に、一般的に続いて行われる温度処理が必要ないという点にある。しかも、大気圧プラズマ溶射は、ほどよい温度、例えば20℃乃至300℃の範囲の温度において行うことができる。また、例えば被覆部のために使用されたセラミックの多孔性又は混合比によって、被覆部の熱的な膨張係数に適合させることができ、熱誘導された幾何的な応力を避けることができる。
【0020】
また、大気圧プラズマ溶射法を用いることによって、被覆部の被着が行われるコーティングチャンバを排気する必要がない、という利点を有している。これによって、より迅速な処理が可能であり、ひいてはコストを低減することができる。
【0021】
プラズマ溶射法によって被覆部を被着する代わりに、当業者により公知である任意の別の被着法も可能である。従って、特に高い温度で焼結する必要のない被覆部のための材料を用いる場合、又は温度の安定した半導体素子において、被覆部は、例えば材料除去又はパッド印刷によっても施すことができる。
【0022】
ガス反応層を備えた半導体素子は、例えば化学的感受性の電界効果トランジスタである。化学的感受性の電界効果トランジスタにおいては、ガス反応層は一般的にゲート電極である。ガス反応層において、例えば検出しようとするガスの化学反応が行われ、それによって、ガス反応層の特性例えば導電率が変化する。このために、ガス反応層は例えば多孔性の半導体材料より成っており、該多孔性の半導体材料は、検出しようとするガスのための触媒活性材料を含有している。
【0023】
本発明によるセンサエレメントは、例えば、内燃機関特に自動車の内燃機関の排ガスライン内の窒素酸化物、アンモニア及び/又は炭化水素の含有量を測定するために使用される。窒素酸化物、アンモニア及び/又は炭化水素の含有量を測定するために、例えば種々異なる触媒活性物質がガス反応層のために使用されるので、ガス反応層はそれぞれ選択的にこれらのガスのうちの1つに反応する。
【0024】
半導体素子の被覆部によって、半導体素子は、例えば排ガス内に含有される粒子、例えば摩耗作用を有するすす粒子に対して保護される。また、被覆部によって、半導体素子を熱に対して保護することもできる。
【0025】
以下に図示の実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従って構成された第1実施例によるセンサエレメントの概略的な断面図である。
【図2】図1に示したセンサエレメントの平面図である。
【図3】本発明の第2実施例によるセンサエレメントの概略的な断面図である。
【図4】図3に示したセンサエレメントの平面図である。
【0027】
図1には、本発明の第1実施例によるセンサエレメントの断面図が示されている。
【0028】
センサエレメント1はキャリヤ3を有しており、該キャリヤ3上に半導体素子5が実装されている。
【0029】
キャリヤ3は、例えば半導体材料例えば半導体チップ、さらに例えば配線、コンタクトパッド又はこれと類似のものを有している。選択的に、キャリヤ3は例えば、プリント基板を有しており、このプリント基板上に導体路が設けられている。キャリヤ3がプリント基板であれば、キャリヤのための材料として、当業者に公知である任意の材料(一般的な形式でプリント基板が形成される)が適している。
【0030】
半導体素子5は、フリップチップ法によりキャリヤ3上に固定されている。フリップチップ法においては、半導体素子は、その能動側がキャリヤ3に向けて接続されている。この場合、半導体素子5は、例えばコンタクトポイント7(いわゆるコンタクトバンプ)で以てキャリヤ3上に固定される。半導体素子5は、ガス反応層を有しており、該ガス反応層によって、例えば周囲に含まれる特定のガスを検出することができる。適した半導体素子5は、例えばガス反応式の電界効果トランジスタである。
【0031】
一般的に、半導体素子5のガス反応層は、このガス反応層が、特定のガスだけに反応するように構成されている。例えば周囲に含まれる種々異なるガスを検出するために、複数の半導体素子5が必要である。半導体素子5は、例えばキャリヤ3上にアレイとして配置される。しかしながら選択的に、検出しようとする素子のためにそれぞれ1つの独立したセンサエレメント1を設けてもよい。その場合、それぞれ1つの半導体素子5はキャリヤ3上に位置決めされている。
【0032】
半導体素子5をフリップチップ法でキャリヤ3上に固定することによって、半導体素子5のガス反応層はキャリヤ3側に向けられる。従って、検出しようとするガスが半導体素子5のガス反応層に達するようにするために、ガス供給手段を設ける必要がある。図1に示した実施例では、ガス供給手段は、キャリヤ3と半導体素子5との間に介在された多孔性の層9を有している。多孔性の層9は、検出しようとするガスを透過させることができる。多孔性の層9の厚さは一方側が、例えば適当な被着法によって調整することができる。他方側の、多孔性の層9の厚さは、キャリヤ3に対する半導体素子5の間隔によって調整することができる。この間隔は、例えばコンタクトポイント7の高さによって得られる。
【0033】
多孔性の層9の被着は、当業者により公知の適当な任意の方法によって行われる。有利には、多孔性の層9は、半導体素子を被着する前に、スクリーン印刷法によって被着される。層の多孔性は、例えば多孔形成装置によって形成することができる。スクリーン印刷によって多孔性の層9を被着した後で、一般的に多孔性の層9は焼結される。多孔性の層9のための材料として、有利にはセラミック、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト又はこれらの混合物が用いられる。
【0034】
本発明によれば、半導体素子5は被覆部11によって包囲されている。被覆部11が気密に構成されている場合は、多孔性の層9は被覆部11によって完全に包囲されているのではなく、多孔性の層9の一部が、被覆部11とキャリヤ3との間で被覆部11から突き出している。被覆部11から突き出す、多孔性の層9の領域は符号13で示されている。被覆部11から突き出す、多孔性の層9の領域13を介して、ガスは多孔性の層9内に侵入し、半導体素子5のガス反応層に達する。
【0035】
被覆部11が多孔性に構成されており、それによって、検査しようとするガスが被覆部11を通って拡散する場合は、多孔性の層9が、被覆部11から突き出す領域13を有している必要はない。この場合、例えば多孔性の層9は省いてもよい。またこの場合、半導体素子5とキャリヤ3との間に、コンタクトポイント7の高さによって得られる間隔が保たれる。
【0036】
被覆部11が多孔性に構成されている場合は、多孔性の層9の領域13が被覆部11から突き出していてもよい。
【0037】
被覆部11によって、半導体素子5は機械的に保護される。従って例えば、センサエレメント1に供給されるガス内に含まれる摩耗粒子に対する保護が得られる。他方では、被覆部11は、ガス流内に含まれる小さい水滴が加熱された半導体素子5にぶつかることによる熱衝撃負荷に対する保護も提供する。
【0038】
被覆部11は、有利な形式でプラズマ溶射法によって被着される。プラズマ溶射法によって、被覆部11の所望の層厚を調整することができる。しかも被覆部11の多孔性を所望に調整することができる。従って例えば、被覆部11を多孔性に構成するか又は気密に構成することもできる。
【0039】
被覆部11のための材料は、有利には酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト、ガラス又はこれらの混合物である。
【0040】
被覆部11が多孔性に構成されていて、多孔性の層9が設けられていれば、被覆部11と多孔性の層9とは、それぞれ同じ材料より構成されているか、又は異なる材料より構成されていてよい。しかしながら有利には、被覆部11と多孔性の層9とは、同じ材料より製造されている。材料を選択する以外に、被覆部11及び多孔性の層9はそれぞれ異なる多孔性を有していてもよい。従って例えば、多孔性の層9が被覆部11よりも多くの小孔を有していてもよい。選択的に、被覆部11が多孔性の層9よりも多くの小孔を有していてもよい。被覆部11の多孔性と層9の多孔性とがそれぞれ異なっている以外に、被覆部11の多孔性と多孔性の層9の多孔性とが同じであってもよい。
【0041】
半導体素子5をフリップチップ法で設けることによって、半導体素子5のガス反応層は、被覆部11を被着する際に保護される。何故ならば、被覆部11の材料がガス反応層にぶつかることはないからである。これによって、ガス反応性の電界効果トランジスタの、場合によっては敏感なゲート構造の破壊は避けられる。
【0042】
図2は、図1に示したセンサエレメントの平面図を示す。
【0043】
図2に示されているように、多孔性の層9はすべての側が半導体素子5から突き出している。多孔性の層9は、半導体素子5の下側を保護するために用いられる。多孔性の層9が半導体素子5よりも大きいので、半導体素子5の下側の領域で露出している箇所は存在しない。
【0044】
図示の実施例において、多孔性の層9の一方側が被覆部11の下から突き出している。しかしながら、被覆部11から突き出す、多孔性の層9の領域13は、すべての側が被覆部11の下から突き出していてもよい。その場合、被覆部11は多孔性の層9の上に完全に載っている。
【0045】
センサエレメント1の選択的な実施例が図3に示されている。図3に示した実施例は、図1及び図2に示した実施例に対して、多孔性の層9が完全に被覆部11によって包囲されている点で異なっている。半導体素子5にガスが侵入するのを保証するために、キャリヤ3に貫通開口15が形成されている。この貫通開口15は、図3に示されているように、半導体素子5の下側において、キャリヤ3の上側(半導体素子5が被着されている)からキャリヤ3の下側19まで延在している。
【0046】
選択的に、貫通開口15の代わりにキャリヤ3に通路を形成してもよい。この通路は上側17に沿って延在していて、被覆部11から突き出している。このような、検査しようとするガスを半導体素子5のガス反応層に導くことができる貫通開口15又は通路がキャリヤ3に形成されていれば、多孔性の層9を省くことができる。この場合、キャリヤ3と半導体素子5との間に間隔が保たれている。また、キャリヤ3に貫通開口15又は通路が形成されている場合、半導体素子5とキャリヤ3との間に間隔を設けることなしに、半導体素子5をキャリヤ3上に直接載せることも可能である。
【0047】
キャリヤ3又は貫通開口15内に通路が設けられている場合でも、被覆部11をガス透過性に構成することができる。半導体素子5のガス反応層へのガスの侵入は、キャリヤ3に設けられた通路若しくは貫通開口15によって保証される。
【0048】
場合によっては半導体層5のガス反応層を機械的に損傷させる恐れのある、ガスに含まれる粒子が、ガス反応層に達するのを阻止するために、有利には、貫通開口15若しくは通路(これがキャリヤ3に設けられている場合には)に、ガスを通すが粒子の貫流を阻止する多孔性の材料が満たされている。
【0049】
キャリヤ3に貫通開口15又は通路が形成されていれば、この貫通開口15又は通路内に湿気が侵入しないように考慮する必要がある。何故ならば、湿気は半導体素子5を損傷させるからである。
【0050】
図4には、図3に示したセンサエレメント1の平面図が示されている。図示の実施例によれば、貫通開口15が長孔として構成されていることが分かる。このような形状によって、半導体素子5のガス反応層のできるだけ大きい領域がガスに向かって開放して構成されている。図4に示したような長孔としての構成以外に、貫通開口15はその他の任意の形状を有していてよい。1つだけの貫通開口15の代わりに、複数の貫通開口を設けてもよい。これら貫通開口は、例えば孔として構成されていてよい。貫通開口15のその他の任意の横断面形状も考えられる。
【0051】
ガス透過性の被覆部11の代わりに、多孔性でありひいてはガス透過性である被覆部11を設けてもよい。多孔性の被覆部11が設けられていれば、図1及び図2に示されているような、被覆部11から突き出す、多孔性の層9の領域13を省くことができる。キャリヤ3と半導体素子5とが互いに間隔を保っていれば、キャリヤ3に貫通開口15を設ける必要はない。これは、例えば多孔性の層9によって保証される。多孔性の被覆部11によれば、例えば多孔性の層9を省くことも可能である。ガスをガス反応層まで搬送するために必要とされる、半導体素子5とキャリヤ3との間の間隔は、コンタクトポイント7の高さによって調整される。多孔性の被覆部11の場合には、間隔を保つことなしに、半導体素子5をキャリヤ3上に直接載せることができる。この場合、キャリヤ3に通路が形成されており、この通路は、半導体素子5の下方に延在しているので、検査しようとするガスは、多孔性の被覆部及び通路を通って半導体素子5のガス反応層に達する。
【符号の説明】
【0052】
1 センサエレメント、 3 キャリヤ、 5 半導体素子、 7 コンタクトポイント、 9 多孔性の層、 11 被覆部、 15 貫通開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス反応層を備えた少なくとも1つの半導体素子(5)を有するセンサエレメントであって、該センサエレメントがフリップチップ法によってキャリヤ(3)上に固定され、センサエレメントのガス反応層がキャリヤ(3)に対面しており、前記ガス反応層に、検査しようとするガスを供給するための手段が設けられている形式のものにおいて、
前記半導体素子(5)が被覆部(11)によって包囲されていることを特徴とする、センサエレメント。
【請求項2】
ガスを供給するための手段が、多孔性の層(9)を有しており、該多孔性の層(9)が、半導体素子(5)とキャリヤ(3)との間に配置されており、多孔性の層(9)が被覆部(11)によって覆われていない領域(13)を有している、請求項1記載のセンサエレメント。
【請求項3】
前記多孔性の層(9)が少なくとも1つの開放した多孔性のセラミックを有している、請求項2記載のセンサエレメント。
【請求項4】
ガスを供給するための通路がキャリヤ(3)に形成されており、該通路が一方では半導体素子(5)のガス反応層に開口していて、他方では被覆部(11)の外側の所定の位置に開口している、請求項1記載のセンサエレメント。
【請求項5】
前記通路がキャリヤ(3)内の貫通開口(15)として構成されている、請求項4記載のセンサエレメント。
【請求項6】
前記被覆部(15)が気密に構成されている、請求項2から5までのいずれか1項記載のセンサエレメント。
【請求項7】
前記被覆部(11)が多孔性に構成されていて、半導体素子(5)とキャリヤ(3)とが互いに間隔を保っていて、それによって検査しようとするガスが、多孔性の被覆部(11)を通って及び、半導体素子(5)とキャリヤ(3)との間の間隔を通って、ガス反応層に供給される、請求項1記載のセンサエレメント。
【請求項8】
前記被覆部(11)が多孔性に構成されていて、キャリヤ(3)の半導体素子(5)の下側に通路が形成されており、それによって検査しようとするガスが、多孔性の被覆部(11)を通って及び前記通路を通ってガス反応層に供給される、請求項1記載のセンサエレメント。
【請求項9】
前記被覆部(11)が、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、コージライト及びガラスの群から成る少なくとも1つの材料を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサエレメント。
【請求項10】
ガス反応層を有する半導体素子(5)が、化学的感受性の電界効果トランジスタである、請求項1から9までのいずれか1項記載のセンサエレメント。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載のセンサエレメント(1)を製造するための方法において、
(a)ガス反応層を備えた半導体素子(5)を、ガス反応層がキャリヤ(3)に対面するように、かつ検査しようとするガスがガス反応層に供給されるように、フリップフリップ法によってキャリヤ(3)上に固定し、
(b)半導体素子(5)を固定した後で被覆部(11)を被着する、
ステップを有していることを特徴とする、センサエレメント(1)を製造するための方法。
【請求項12】
前記被覆部(11)を、プラズマ溶射法、特に大気圧プラズマ溶射法によって被着する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項記載のセンサエレメント(1)の使用方法において、該センサエレメント(1)を、内燃機関特に自動車の内燃機関の排ガスライン内の窒素酸化物、アンモニア及び/又は炭化水素の含有量を測定するために使用することを特徴とする、センサエレメント(1)の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−526362(P2011−526362A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515262(P2011−515262)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055343
【国際公開番号】WO2010/000518
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】