説明

ガスセンサ装置

【課題】個人で容易に呼気中の特定ガスを検出可能なガスセンサ装置を提供する。
【解決手段】呼気ガスセンサ装置10は、呼気収集ボックス12と、呼気収集ボックス12に試料ガスを導入する外気導入部24と、呼気収集ボックス12内に設けられ、特定化学物質を吸着して電気的抵抗が変化するCNTガスセンサ40a、40b及び40cと、CNTガスセンサ40a等の電気抵抗の変化を検出する検出部と、呼気収集ボックス12の内部の気体を外部に排出する排気部28および29とを含む。CNTガスセンサ40a、40b及び40cは、それぞれ、測定対象の特定化学物質に対応して選択される物質により表面修飾されるCNT構造体を含む。呼気収集ボックス12内部を2つの空間に分離するシャッタ41をさらに設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気をセンシングする呼気ガスセンサ装置に関し、特に、複数種類のガス成分を一度に検出することが可能な呼気ガスセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の日本は高齢化社会を迎え、社会全体の健康への関心は高まる一方である。これに関連し、健康管理、疾病予防及び治療に関する技術の向上が求められている。
【0003】
健康管理などの方法として、例えば、個人で手軽に且つ迅速に健康状態をチェックできるシステムがあげられる。個人の健康状態を把握するために容易にサンプリングできる生体情報としては、血液、尿、汗、唾液、呼気等がある。これらの構成成分のうちある特定の物質は、体調不良、疾病になる可能性が高い何かの兆候、又は既に患っている疾病に起因して発生したり、その量が変化したりする場合があり、その量の変化を知ることで個人の健康状態を把握できる可能性が高い。このような物質をマーカと呼ぶ。マーカのモニタリングが、健康管理及び疾病の早期発見、早期治療に役立つ。
【0004】
生体情報のうち、呼気は、肺の中において毛細血管中の血液と薄膜を隔てて近接して存
在するため、その中には特にマーカを多く含んでいる。呼気に含まれるマーカの例としては、生活習慣病等の原因である酸化ストレスに起因するエタン及びペンタン、気管支炎等の呼吸疾患によるNO及びCO、胃炎等の消化器疾患に起因するH、糖尿病によるアセトン等がある。生体情報の中では、呼気のサンプリングが最も簡単である。このことから、呼気ガスをセンシングする、個人の健康管理のためのシステムが特に求められている。
【0005】
呼気ガスセンシングでは、呼気ガスに含まれるマーカの濃度はppb〜ppmレベルであり、高感度のセンシングが求められる。さらに、個人が操作するため、誰でも簡単に出来、かつ、大掛かりな設備が不要なセンシングが求められる。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、半導体センサがアセトンを吸着する成分で構成されており、半導体センサの抵抗変化により、呼気中のアセトン濃度を測定することが出来る。具体的には、高温時、半導体センサを構成する酸化錫、酸化亜鉛及び酸化インジウム系化合物が呼気中の酸素分子を吸着する。これにより呼気中のアセトンが濃縮される。さらに、半導体センサを構成する、白金、ロジウム、及びパラジウムから選定した元素を含む、タングステン、モリブデン、クロム系酸化物は、アセトンを吸着して酸化する。その後半導体センサを低温にすることにより、酸化されたアセトンは酸化錫、酸化亜鉛及び酸化インジウム系化合物に吸着される。この吸着が酸化錫、酸化亜鉛及び酸化インジウム系化合物のエネルギーバンド状態を変化させる。この結果、半導体センサの抵抗が低下する。
【0007】
この半導体センサを内部に設けた筐体を含む装置において、筐体に呼気を吸引させると、本装置はアセトン濃度を表示する。この装置によれば、簡単な操作によりppmレベルのアセトン濃度を検出することが可能である。そのため、糖尿病に関して、この装置を個人の健康管理、さらには疾患予防及び治療に利用することが出来る。
【特許文献1】特開2001−318069号公報
【非特許文献1】齋藤理一郎、「カーボンナノチューブの概要と課題」、機能材料、 vol.21、No.5、p6−14、2001年5月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の半導体センサは、アセトン以外の呼気成分を検出することが出来ない。したがって、糖尿病以外の疾患に関する情報を得ることが出来ない。
【0009】
これを解決する方法として、例えば、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromathography。以下「GC」と呼ぶ。)等がある。GCは一度の測定で複数の成分を検出することが出来る。しかし、高価で大型の装置であること、並びに、サンプリング及び操作においてGCに関する知識が必要である等の理由により、GCは個人が自身で健康管理を行なうのには適していない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、個人の使用に対応可能な程度に操作手順が簡単で、かつ比較的小型のガスセンサ装置を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、個人の使用に対応可能な程度に操作手順が簡単で、かつ比較的小型であって、しかも一度の測定により測定対象ガス中の複数のガス成分を高感度で選択的にセンシングすることが可能なガスセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の局面に係るガスセンサ装置は、内部に空間が形成された筐体と、この筐体に設けられ、筐体内部の空間に試料ガスを導入するための試料ガス導入手段と、筐体内に設けられた、雰囲気中の特定化学物質を吸着することにより電気抵抗が変化する化学物質センシング素子と、化学物質センシング素子に電気的に結合され、化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段と、筐体に設けられ、筐体内部の空間の気体を筐体外部に排出するための排気手段とを含む。化学物質センシング素子は、特定化学物質に対応して選択される物質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む。
【0013】
好ましくは、カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube。以下「CNT」と呼ぶ。)を含む。
【0014】
CNTはグラファイト構造を有する、直径がナノオーダーのチューブ状炭素材料である。CNTは非常に安定な構造で、その内部ではΠ電子結合に基づく高速な電子移動を許容する導電性を示し、構造によっては金属線よりも優れた導体となる。非特許文献1によれば、CNTに化学物質分子が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、CNTの2点間に、電位差、すなわち、電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質のセンシングが可能となる。さらに、CNTのナノ構造により、CNTによるセンシングに対し優れた応答性及び検出下限が期待でき、上記化学物質センシング素子は高感度で優れた応答性を有するといえる。このため、CNTを検出下限ppm〜ppbレベルを必要とする呼気ガスセンシングに利用することが出来る。加えて、高感度であることから、センシング対象物質を付着させるためのセンシング基体のサイズを比較的小さくすることが出来る。同じ理由で、少量の試料ガスで測定することが出来る。本装置のサイズを比較的小さくすることができる。さらに、ガスが検出されたか否かが電気的抵抗の変化で検出できるため、既に確立されている電気技術を用いて、操作が容易な形で呼気ガスの検出結果を出力できる。また、CNTは表面修飾されており、表面修飾に用いられる物質は、その分子構造及び電気的特性により特定の化学物質と選択的に結合するように、測定対象の化学物質に対応して選択される。そのために、目的の呼気ガス成分を選択的に検出できる。
【0015】
その結果、個人の使用に対応可能な程度に操作手順が簡単で、かつ比較的小型の呼気ガスセンサ装置を提供することができる。
【0016】
好ましくは、特定化学物質はアセトンであり、表面修飾されるカーボンナノ構造体は、アルキル基(以下「CH基」と呼ぶ。)により表面修飾されている。本願発明者は、このようにCH基により表面修飾されたCNTを用いたガスセンサ装置により、試料ガス中のアセトンを検出することが出来、その感度は検出下限100ppb以下であることを確認した。アセトンは糖尿病に関するマーカである。すなわち、本ガスセンサ装置によれば、高感度、及び、高いマーカ選択性により呼気中のアセトンのセンシングを行なうことが出来る。
【0017】
好ましくは、特定化学物質はペンタンであり、カーボンナノ構造体は、金属錯体又はその誘導体により表面修飾されている。さらに好ましくは、金属錯体は金属フタロシアニン(以下「MePc」と呼ぶ。)からなる。
【0018】
本願発明者は、MePcにより表面修飾されたCNTを用いたガスセンサ装置により、試料ガス中のペンタンを検出することが出来、その感度は検出下限100ppb以下であることを確認した。
【0019】
本ガスセンサ装置によれば、高感度、及び、高いマーカ選択性により呼気中のペンタンのセンシングを行なうことが出来る。
【0020】
好ましくは、特定化学物質は一酸化窒素であり、カーボンナノ構造体は、一酸化窒素と選択的に結合する蛍光分子により表面修飾されている。好ましくは、蛍光分子はジアミノフルオレセイン−2(Diaminofluorescein−2。以下「DAF−2」と呼ぶ。)からなる。
【0021】
本願発明者は、DAF−2により表面修飾されたCNTを用いたガスセンサ装置により、試料ガス中のNOを検出することが出来、その感度は検出下限100ppb以下であることを確認した。
【0022】
本ガスセンサ装置によれば、高感度、及び、高いマーカ選択性により呼気中のNOのセンシングを行なうことが出来る。
【0023】
好ましくは、ガスセンサ装置は、複数個の化学物質センシング素子を含む。これら複数個の化学物質センシング素子は、互いに異なる特定化学物質を選択的に吸着する物質で表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む。検出手段は、複数の化学物質センシング素子の各電気抵抗の変化を個別に検出するための手段を含む。
【0024】
各化学物質センシング素子は、異なる特定化学物質の吸着量に応じてその電気的抵抗を変化させる。検出手段は、各化学物質センシング素子の電気抵抗変化を個別に検出する。各表面修飾材料が、呼気中の異なるマーカと各々選択的に結合するものであるため、ユーザは各マーカのセンシング結果を、同時にかつ個別に知ることができる。操作は化学物質センシング素子が1つのときと同じでよい。したがって、簡単な手順により、一度の呼気測定により複数種類の疾患に関する情報を得ることが出来る。
【0025】
好ましくは、ガスセンサ装置は、筐体内部に形成された空間内に設けられ、化学物質センシング素子に対して加熱、光照射又はガスフローを行なうことにより化学物質センシング素子表面に吸着された物質を脱離させるための再生手段をさらに含む。
【0026】
本装置によれば、化学物質センシング素子表面に吸着された物質を除去することが出来る。このため、本ガスセンサ装置によるガスセンシングを繰返し行なうことが出来る。
【0027】
好ましくは、ガスセンサ装置は、筐体の内部の空間のうち、化学物質センシング素子が設けられた第1の空間と、それ以外の第2の空間との間に設けられ、第1の空間と第2の空間とを分離する閉状態と、第1の空間と第2の空間とを連通させる開状態との間で状態を変化させるための分離手段をさらに含む。
【0028】
本ガスセンサ装置において、再生手段により、化学物質センシング素子表面に吸着された物質が除去される。この場合、筐体が外部に対し閉の状態であれば、除去された物質が筐体内に拡散し、筐体内壁を汚染する。分離手段は、閉状態では、筐体内の空間を、化学物質センシング素子が設けられた第1の空間と、それ以外の第2の空間とに分離する。この結果、閉状態にしておけば、化学物質センシング素子から除去された物質が第2の空間に拡散することが防止でき、筐体内壁の汚染を防ぐことが出来る。
【0029】
より好ましくは、試料ガス導入手段は、第1の空間に試料ガスを導入するように筐体に設けられている。ガスセンサ装置はさらに、筐体に設けられ、第2の空間に外部の気体を導入するための外気導入手段をさらに含む。
【0030】
分離手段を閉状態としておいて試料ガス導入手段により試料ガスを第1の空間に導入すると、試料ガスが化学物質センシング素子にはすぐには接しない。測定開始とともに分離手段を開状態とすることで、試料ガスが化学物質センシング素子に接し、特定化学物質が化学物質センシング素子に吸着する。吸着開始のタイミングを所望のタイミングにすることができ、測定が正確に行なえる。測定終了後、化学物質センシング素子の再生時には、分離手段を閉手段としておくことで、素子から脱離した化学物質が筐体内部の空間全体に拡散することが防止できる。この状態で外気導入手段によって第2の空間に不活性な気体を導入すると、分離手段がない場合より迅速にこれら気体を第2の空間から排出し、外気を導入することが出来る。
【0031】
さらに好ましくは、分離手段は、筐体の内部に設けられ、第1の空間と第2の空間との間に設けられたスライド式のシャッタを含む。スライド式のシャッタという簡便な構造で、筐体内壁の汚染を防ぐことができる。
【0032】
好ましくは、ガスセンサ装置は、筐体内に設けられ、筐体内部の気体を攪拌するための攪拌手段をさらに含む。
【0033】
好ましくは、ガスセンサ装置はさらに、試料ガス導入手段に関連して設けられ、試料ガスの除湿を行なうための除湿手段を含む。
【0034】
好ましくは、ガスセンサ装置はさらに、外気導入手段に関連して設けられ、外部気体の除湿を行なうための除湿手段を含む。
【0035】
本ガスセンサ装置において、試料ガス及び外部気体を筐体に導入する際、除湿手段による除湿を行なう。このことにより、筐体内への水分の浸入を防ぎ、化学物質センシング素子表面への水分の吸着を抑える。水分はガスセンシングに対する阻害物質である。水分除去により、高感度、高精度の測定を行なうことが出来る。
【発明の効果】
【0036】
以上のように本発明に係るガスセンサ装置によれば、簡単な操作で特定化学物質の測定を行なうことが出来る。そのセンシングは、物質選択性を有し、高精度、及び高感度である。さらに、高感度であるため、ガスセンサ装置を小型にすることができる。本装置を用いて呼気ガスセンシングを行なうことにより、個人が日常的に健康管理を行なうことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態に係る呼気ガスセンサ装置について説明する。以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同一である。したがって、それらについての詳しい説明は繰返さない。
【0038】
[第1の実施の形態]
−構成−
図1(A)、(B)及び(C)に、本発明の第1の実施の形態に係る呼気ガスセンサ装置10の平面図、正面図及び側面図をそれぞれ示す。なお、以下に説明する呼気ガスセンサ装置10の構成要素のうち、特に記載が無いものに関しては、その構成材料は、その動作温度の範囲ではガスを漏洩せず、変質も変形もしない材料で構成されているものとする。さらに、その材料は、動作温度の範囲においてはガスを発生しない材料であるものとする。
【0039】
図1(A)、(B)及び(C)を参照して、呼気ガスセンサ装置10は、正面11及び裏面(裏面は図1には現れていない。)、右側面72(図1(A)及び(B)における右側の側面)、左側面(図1には現れていないが、図1(A)及び(B)における左側の側面を左側面とする。)、並びに上面13及び下面(図1には現れていない。)とを有する直方体形状の、中空の筐体である呼気収集ボックス12を含む。呼気収集ボックス12は、縦4〜6cm、横16〜20cm、奥行4〜6cm程度のサイズであることが好ましい。
【0040】
呼気収集ボックス12において、右側面72には開孔部16が形成されている。開孔部16は、呼気収集ボックス12内外を貫通し、後述するシャッタつまみの移動を可能にするために設けられる。
【0041】
呼気ガスセンサ装置10はさらに、いずれも正面11上に設けられた電源スイッチ30、呼気センシングの開始/終了の指示を受けるための測定スイッチ32、後述するCNTガスセンサの再生の開始/終了の指示を受けるための再生スイッチ34、呼気センシングの結果を表示するための表示装置36、及び呼気センシングの測定に関する校正処理を行なう際に操作される校正ボタン37を含む。
【0042】
呼気ガスセンサ装置10はさらに、右側面72にそれぞれ設けられた、呼気を呼気収集ボックス12の内部に導入するための呼気導入部22、外気を呼気収集ボックス12の内部に導入するための外気導入部24、及び呼気収集ボックス12の内部に設けられ、呼気収集ボックス12の内部の空間をCNTガスセンサが設けられた空間とそれ以外の部分とに分離するための後述するシャッタ、当該シャッタを開孔部16を介して外部から操作して開閉させるために設けられたシャッタつまみ26、及び、開孔部16に設けられた、開孔部16を閉塞するためのシール部材64を含む。
【0043】
シール部材64は、開孔部16の上辺及び下辺に固定された一対の可撓性のあるゴム辺を含む。この一対のゴム辺の当接する部分にシャッタつまみ26の基部が挿入され、内部のシャッタの端部に接続される。このため、シャッタつまみ26の基部はできるだけ薄いものであることが望ましい。シャッタつまみ26、シャッタ及びシール部材64の詳細については後述する。
【0044】
呼気ガスセンサ装置10はさらに、呼気収集ボックス12の左側面に設けられた、呼気収集ボックス12の内部のガス及び空気を排出するための排気部28及び29を含む。
【0045】
図2に、図1(A)に示す断面2−2における矢視方向断面図を、図3に、図1(B)に示す断面3−3における矢視方向断面図を、それぞれ示す。なお、図2及び図3は、上記したシャッタが開状態の場合を示す。
【0046】
図2及び図3を参照して、呼気収集ボックス12の右側面72の、上面13の近傍及び下面の近傍には、開孔部14及び15が形成されている。右側面72の、開孔部14及び15の間の部分に、上記した開孔部16が形成されている。左側面の上面13の近傍及び下面の近傍には、開孔部18及び20がそれぞれ形成されている。
【0047】
呼気導入部22は、パイプ状で、一端が開孔部14の内部にはめ込まれた呼気導入部材80と、可撓性があるゴムにより構成され、呼気導入部材80の他端を着脱可能に被覆するためのキャップ81と、呼気導入部材80の内孔内に設けられ、呼気に含まれる水分を除去するための除湿部88とを含む。除湿部88は、実質的に乾燥剤であり、シリカゲル若しくは高分子ポリマーまたはその両者で構成されるのが好ましい。
【0048】
外気導入部24は、パイプ状で、一端が開孔部15の内部に外側からはめ込まれた外気導入部材82と、可撓性があるゴムにより構成され、外気導入部材82の他端を着脱可能に被覆するためのキャップ83と、外気導入部材82の内孔内に設けられ、呼気に含まれる水分を除去するための除湿部89とを含む。除湿部89も実質的に乾燥剤であり、シリカゲル若しくは高分子ポリマー又はその双方で構成されるのが好ましい。
【0049】
シャッタつまみ26は、一対のシール部材64の当接する部分70を貫通するように設けられた基部と、この基部に接続されたつまみ部分とを有し、基部は呼気収集ボックス12の内部において、後述するシャッタのスライダの側部に接続される。
【0050】
排気部28及び29は、それぞれ、パイプ状で、一端が開孔部18及び20にそれぞれ外側からはめ込まれた排気口部材84及び86と、可撓性があるゴムにより構成され、排気口部材84及び86の他端をそれぞれ着脱可能に被覆するためのキャップ85及び87とを含む。後述するように呼気収集ボックス12の内部の空間は、呼気が導入される、CNTガスセンサが設けられていない一方の空間部分と、CNTガスセンサが設けられている他方の空間部分とにシャッタにより分離されるが、排気部28及び29はそれぞれ、これら一方及び他方の空間部分の気体を外部に排出するような位置に設けられる。
【0051】
呼気ガスセンサ装置10は、さらに、呼気収集ボックス12の上部内壁に設けられ、呼気収集ボックス12内に導入された試料ガスを攪拌するための複数の攪拌装置44を含む。攪拌装置44は、実質的には複数枚の羽と、当該羽を回転可能に保持する回転軸とを含むファンである。攪拌装置44の羽の差し渡し直径は1〜1.5cm程度であることが好ましい。
【0052】
これらファンの各々は、複数枚の羽を有する。その羽のうち、一枚の先端が他の羽より比重の重い材料で構成されている。羽の回転面が呼気収集ボックス12の長手方向とほぼ平行になるようにこれらファンを設置する。呼気収集ボックス12を手に持ち、呼気収集ボックス12全体をその長手方向に沿って振動させると、羽の重みの違いにより生ずる回転モーメントでファンが回転し、呼気収集ボックス12の内部の試料ガスが攪拌され、一様の分布となって測定が早く完了し、その信頼性も向上する。
【0053】
呼気ガスセンサ装置10はさらに、呼気収集ボックス12の底部内壁に固定された基板50と、基板50の上面に接するように設けられた断熱板52と、断熱板52の上面に設けられた、内部にヒータ62を有する加熱板54とを含む。加熱板54は、後述するように、センサの中枢であるセンシング部に付着した特定化学物質をセンシング部から脱離させるために使用される。この脱離により、センシング部は再び特定化学物質を検出する機能を獲得する。このように、センシングの機能を回復させる処理を「再生」と呼ぶ。
【0054】
呼気ガスセンサ装置10は、さらに、加熱板54の上面に接するように設けられ、呼気収集ボックス12内に導入された試料ガス中の、それぞれ特定の化学物質を検出するための3個のCNTガスセンサ40a、40b、及び40cを含む。これらCNTガスセンサ40a、40b、及び40cは、それぞれ、試料ガス中の特定化学物質を吸着するためのCNTガスセンサ素子132a、132b、及び132cを含む。3つのCNTガスセンサ素子132a、132b、及び132cは、それぞれ、異なる特定化学物質を選択的に検出するためのものである。CNTガスセンサ40a、40b、及び40c、並びにCNTガスセンサ素子132a、132b及び134cについての詳細は後述する。なお、以下ではCNTガスセンサ40a、40b、及び40cを包括的にCNTガスセンサ40、CNTガスセンサ素子132a、132b及び134cを包括的にCNTガスセンサ素子132と呼ぶことがある。
【0055】
呼気ガスセンサ装置10は、さらに、呼気収集ボックス12の内部を、CNTガスセンサ40が設けられた空間とそれ以外の空間とに分離したり、連通させたりするために、呼気収集ボックス12の内部で正面側と背面側との方向にスライド可能に設けられた、スライド式のシャッタ41を含む。シャッタ41は、詳細には図示していないが、呼気収集ボックス12の内部の長手方向の内径とほぼ同じ長さの、長手方向が呼気収集ボックス12の長手方向と一致するように配置された複数個の短冊状の部材をスダレ状に組合わせ、これら部材が形成する面から少なくとも下方向に柔軟に湾曲できる構造となっているスライダ42と、スライダ42を正面側及び背面側にスライド可能に保持するよう、呼気収集ボックス12の内部の両側面に形成された一対のスライダガイド43と、スライダ42を背面側にスライドさせてCNTガスセンサ40が設けられた空間とそれ以外の空間とを連通させたときに、スライダ42を収納するように呼気収集ボックス12の内部の背面側に設けられたスライダ収納部46とを含む。スライダ42の2つの側辺の内、右側面72側はシャッタつまみ26の基部の先端に結合されている。シャッタつまみ26を開孔部16内部でスライドさせると、スライダ42がそれに伴ってスライドし、呼気収集ボックス12の内部を、CNTガスセンサ40が設けられた空間とそれ以外の空間とに分離する状態と、CNTガスセンサ40が設けられた空間とそれ以外の空間とを連通する状態との間で変化させることができる。
【0056】
呼気ガスセンサ装置10による測定の際には、最初にスライダ42を閉じ、試料ガスを呼気収集ボックス12の内部に導入する。その後、スライダ42を開け、CNTガスセンサ40の周辺の空間にその試料ガスを導入する。スライダ42は呼気収集ボックス12の内部空間を2つに分離するためのものなので、スライダ42が閉じているときには、スライダ42を構成する部材の間の隙間がなくなるようにスライダ42を形成することが望ましい。
【0057】
スライダガイド43は、呼気収集ボックス12の内壁の内、右側面側及び左側面側の、開孔部16に対応する位置に形成され、スライダ42をスライド方向に沿って移動可能に保持するためのものである。スライダ収納部46は、スライダ42が呼気収集ボックス12の内部の空間を連通させる位置に移動させたときに、スライダ42の大部分を収納することができるようにスライダガイド43に連続して設けられ、かつ、呼気収集ボックス12の内部の背面側において空間を上部と下部との2つに分離するように形成されている。スライダ収納部46は、呼気収集ボックス12の内部において半円形に湾曲してその底部に達するように形成されており、スライダ42を開いたときには、スライダ42の後部部分がこの部分に収納される。シャッタつまみ26、スライダ42、スライダガイド43及びスライダ収納部46についての詳細は後述する。
【0058】
図4は、スライダ42が閉状態の時の呼気ガスセンサ装置10の概略斜視図を示す図であり、図5(A)及び(C)は、図1(B)に示す5A−5A線における矢視方向断面図を、図5(B)は、図1(B)及び図5(A)に示す5B−5B線における矢視方向断面図を、図5(D)は、図1(B)に示す5B−5B線、及び、図5(C)に示す5D−5D線における矢視方向断面図を、それぞれ示す。図5(A)及び(B)はスライダ42が閉状態の場合を、図5(C)及び(D)は開状態の場合を、それぞれ示す。
【0059】
なお、図の理解を容易にする目的のために、図4及び図5では、呼気収集ボックス12、シャッタつまみ26、スライダ42、スライダガイド43、及びスライダ収納部46のみを示す。
【0060】
図4、並びに、図5(A)及び(B)を参照して、シャッタつまみ26を開孔部16の正面11側の端部16aまで移動させた場合、スライダ42の正面11側の端面が呼気収集ボックス12の正面側の内壁に当接する。この状態においては、呼気収集ボックス12の内部空間は、スライダ42及びスライダ収納部46により、CNTガスセンサ40が設けられた空間と、それ以外の空間とに分離される。
【0061】
図5(C)及び(D)を参照して、シャッタつまみ26を、開孔部16の背面側の端部16bまで移動させた場合、スライダ42の背面側部分は、スライダ収納部46の内部に収納される。この状態では、呼気収集ボックス12の内部でスライダ42により分離されていた2つの空間が連通する。
【0062】
図2から分かるように、呼気導入部22は、呼気収集ボックス12の内部の空間の内で、CNTガスセンサ40が設けられていない空間部分に呼気を導入するような位置に形成されている。一方、外気導入部24は、呼気収集ボックス12の内部の空間の内で、CNTガスセンサ40が設けられている空間部分に外気を導入するような位置に形成されている。シャッタ41を閉じた状態で呼気導入部22から呼気収集ボックス12内部に導入された呼気は、シャッタ41を開けた状態とすることによりCNTガスセンサ素子132と接触する。
【0063】
図6は、呼気ガスセンサ装置10の出力を得るための電気回路の構成を説明するための概略ブロック図である。図6において、太い矢印はパワーラインを、細い矢印はシグナルラインをそれぞれ示す。図6を参照して、呼気ガスセンサ装置10は、後述する電源から表示変換装置112及び表示装置36への電力供給を制御するための電源スイッチ30、電源からCNTガスセンサ40への電力供給を制御するための測定スイッチ32、電源から加熱板54への電力供給を制御するための再生スイッチ34、表示装置36、校正ボタン37、CNTガスセンサ40、及び加熱板54の他に、CNTガスセンサ40の出力を表示装置36に表示するよう変換するための表示変換装置112と、これらに電力を供給するための電源110とを含む。
【0064】
表示変換装置112は、電源110からの電力供給を受けて稼動し、CNTガスセンサ40の出力及び校正ボタン37の出力を受ける様に接続されており、校正ボタン37が押下された際の、CNTガスセンサ40の出力値をゼロ点とし、当該ゼロ点に対するCNTガスセンサ40の出力電圧の変化量を、測定対象である特定化学物質の濃度として表示装置36に表示可能な信号に変換して出力するためのものである。本実施の形態では、表示変換装置112は、予め用意された、3つのCNTガスセンサ40から与えられる電圧の変化量と、それらに対応する3つの特定化学物質の濃度との対応テーブルを記憶しており、入力される電圧変化に基づきテーブルルックアップによってそれぞれそれら特定化学物質の濃度を算出するものとする。
【0065】
図7に、CNTガスセンサ40の概略ブロック図を示す。図7を参照して、CNTガスセンサ40は、図6に示す電源110からの電力供給を受ける直流電源130と、直流電源130のプラス端子に一端が接続されたCNTガスセンサ素子132と、CNTガスセンサ素子132の他端と直流電源130のマイナス端子との間に接続された負荷抵抗134と、CNTガスセンサ素子132及び負荷抵抗134の接点に接続された入力を持ち、この接点の電位変化を増幅するための増幅器136と、この電位変化を検出するための検出装置138とを含む。なお、検出装置138の出力は、図6に示す表示変換装置112の入力に接続される。
【0066】
図8に、CNTガスセンサ素子132の平面図を示す。図8を参照して、CNTガスセンサ素子132は、基板162と、基板162上に板状に作製され、試料ガスのうちの特定化学物質を吸着させ検出するための、CNTからなるセンシング部160と、基板162上に形成され、センシング部160の両端にそれぞれ接続された銀ペースト164及び166と、基板162上に、銀ペースト164及び166にそれぞれ接続するように設けられ、センシング部160の両端の電位差を外部に出力する電極168及び170とを含む。電極168は図7に示す直流電源130のプラス端子に接続される。電極170は図7に示す負荷抵抗134及び増幅器136に接続される。
【0067】
なお、ここでは、3つのセンシング部160(160a、160b、及び160c)は、それぞれ、ペンタン、NO、アセトンを選択的に吸着するものとし、後述するように、センシング部160aはCH基及びMePcにより表面修飾されたCNTを、センシング部160bはCH基及び蛍光分子により表面修飾されたCNTを、センシング部160cはCH基により表面修飾されたCNTを、それぞれ含む。なお、以下ではセンシング部160a、160b、及び160cを包括的にセンシング部160と呼ぶことがある。
【0068】
MePc、蛍光分子及びCH基は、特定化学物質とのみ反応する選択能を有し、3つのセンシング部160は、それぞれ、雰囲気中の異なる特定化学物質を吸着する。これらセンシング部160に電流を通したときのセンシング部160の抵抗値は、センシング部160に物質が吸着したか否かにより異なる。したがって、図7に示すCNTガスセンサ40により、雰囲気中の異なる特定化学物質を選択的に検出できる。すなわち、呼気をCNTガスセンサ40周辺に導入し、増幅器136の出力を検出装置138で測定することにより、呼気中の特定化学物質を選択的に検出できる。
【0069】
―第1のセンシング部160aの製造方法―
第1のセンシング部160aは以下のようにして製造される。
【0070】
容器に用意されたエタノール溶液に市販の分散CNT(CNTが分散する液体)を投入する。容器に超音波発生装置により超音波を照射する。容器内において、CNTはエタノール溶液中に均一に分離分散する。上記工程で得たCNT分散液を、フィルタフォルダを用いて吸引濾過する。その後、当該フィルタ及びフィルタ上のCNTを放置してエタノールを揮発させる。当該フィルタを適当な大きさに切断する。切断したフィルタのCNTに、予め溶液に希釈したMePc溶液を滴下し、CNT表面に付着させる。これにより、CH基及びMePcにより表面修飾されたCNTを含む第1のセンシング部160aを得る。
【0071】
―第2のセンシング部160bの製造方法―
第2のセンシング部160bもセンシング部160aと同様に製造される。ただしMePc溶液に代えて、例えば、DAF−2のような、検出対象の特定化学物質とのみ反応する選択能を有する蛍光分子溶液を用いてCNTの表面修飾を行なう。これにより、CH基及び蛍光分子により表面修飾されるCNTを含む第2のセンシング部160bを得る。
【0072】
―第3のセンシング部160cの製造方法―
第3のセンシング部160cも第1のセンシング部160aと同様に製造される。ただし切断したフィルタのCNTへのMePc溶液滴下を行なわない。これによりCH基が表面に修飾されたCNTを含む第3のセンシング部160aが得られる。
【0073】
−動作−
<呼気ガスセンサ装置10による呼気ガスセンシングの手順>
以降、呼気ガスセンサ装置10の操作手順、および、各手順における呼気ガスセンサ装置10の動作を説明する。なお、ここでは呼気ガスセンサ装置10に含まれるセンシング部160は新規に作成されたものか、又は、再生済であるものとする。さらに、スライダ42は開状態であるものとする。この時、シャッタつまみ26は図5(A)に示すように、開孔部16の背面側の端部16bに設定される。
【0074】
図9に、呼気ガスセンサ装置10による呼気の測定方法を説明するための図を示す。図2及び図9を参照して、排気部28及び29のキャップ85及び87をはずし、呼気収集ボックス12内の気体を、排気口部材84及び86から排気できるようにする。呼気導入部22のキャップ81を外し、呼気導入部材80から試料ガスを導入する。呼気導入部材80から導入される試料ガスにより、呼気収集ボックス12内は陽圧となり、呼気収集ボックス12内に封入されていた気体は外部へ排気される。試料ガス導入の際、除湿部88により、試料ガスの水分が除去される。
【0075】
その後キャップ81、85及び87により、呼気導入部材80並びに排気口部材84及び86を閉じることにより、呼気収集ボックス12内に試料ガスを保持する。
【0076】
図10に示すように、試料ガスの成分分布を一定にする目的で、呼気ガスセンサ装置10を保持してその長手方向に沿って振動させる。
【0077】
このとき、呼気収集ボックス12内では、図2及び図3に示す攪拌装置44は、羽の質量の相違によって羽の回転モーメントが生じ、回転する。この結果、呼気収集ボックス12内に封入された呼気が回転する羽により攪拌され、呼気中のガス成分の分布がより一様になる。ここでは振動作業を5分間続けて行なった後、呼気収集ボックス12を水平な場所に1分間静置することとする。1分間の静置後、電源スイッチ30をONする。
【0078】
図6及び図7を参照して、表示変換装置112及び表示装置36に電力が供給され、表示装置36は初期画面を表示する。
【0079】
その後、測定スイッチ32をONする。3つのCNTガスセンサ40がそれぞれ以下のように稼動する。電源110から直流電源130に電力供給がなされる。直流電源130は、CNTガスセンサ素子132と負荷抵抗134とを直列接続したものの両端に一定電圧をかける。図8を参照して、センシング部160を構成するCNTの表面に試料ガス中の特定化学物質が付着すると、電極168、及び170間の電気抵抗が変化する。その変化を増幅器136の出力電圧の変化として検出装置138により検出する。
【0080】
前述したように、CNTの表面修飾材料による、吸着物質に対する選択能により、各センシング部160には特定化学物質が吸着する。その量は、試料ガス内の特定化学物質の濃度に比例すると考えられる。その結果、試料ガス内の特定化学物質の濃度がCNTガスセンサ素子132における出力電圧変化として検出される。
【0081】
3つのセンシング部160のCNT表面にそれぞれ修飾されたMePc、蛍光分子及びCH基は、それぞれ異なる特定化学物質を選択的に吸着する。このため、3つのCNTガスセンサ素子132の各々について、電気抵抗の変化量を知ることにより、呼気中のそれら特定化学物質の存在の有無及び濃度を確認できる。
【0082】
検出装置138により検出された出力電圧変化は表示変換装置112に出力される。ここでは、出力電圧変化及び特定化学物質濃度は、具体的には以下のように算出され測定されることとする。センシング部160等に吸着しない不活性なガスを校正用ガスとして、特定化学物質の検出時と同様の操作により出力電圧を検出装置138により予め検出する。この時、校正ボタン37を押下することにより、表示変換装置112は、当該出力電圧をゼロ点に設定する。その後測定スイッチ32をOFFにする。試料ガスを呼気収集ボックス12に導入して前述の操作を行い、測定スイッチ32をONにする。検出装置138等は試料ガスに対する出力電圧を検出する。表示変換装置112は、入力される出力電圧とゼロ点との差異(出力電圧変化)を算出する。表示変換装置112は、さらに、算出した出力電圧変化をキーとして対応テーブルからルックアップすることにより、当該特定化学物質の濃度を算出する。算出した特定化学物質の濃度に応じて、表示変換装置112は信号変換処理の後、表示装置36に表示可能な信号を出力する。表示装置36には、例えば、ペンタン、NO、及びアセトンの各濃度がppb単位で表示される。
【0083】
表示装置36により当該特定化学物質の濃度を確認した後、電源スイッチ30及び測定スイッチ32をOFFし、測定を終了する。
【0084】
<センシング部160の再生手順>
以降、センシング部160等の再生のための操作手順、および、各手順における呼気ガスセンサ装置10の動作を説明する。
【0085】
図2を参照して、シャッタつまみ26を、図5(B)に示す開孔部16の正面11側の端部16aに移動させる。呼気収集ボックス12内において、CNTガスセンサ40の周辺部と他の空間とが分離される。
【0086】
再生スイッチ34をONした後、キャップ87を外し、排気口部材86からの排気を可能にする。この状態で、図10に示す攪拌処理と同様にして、呼気ガスセンサ装置10を振動させる。加熱板54に電力が供給され、ヒータ62による加熱が開始される。加熱板54の加熱により、センシング部160が50℃〜70℃になると、センシング部160に吸着した特定化学物質等は脱離する。脱離した物質は気体の対流作用により上昇する傾向にあるが、スライダ42によりこれが抑制される。このため脱離した物質は呼気収集ボックス12の内壁全体には拡散しない。加熱によりCNTガスセンサ40の周辺部の気体は膨張し、排気口部材86から呼気収集ボックス12外部へ移動する。
【0087】
再生スイッチ34をONしてから5分経過後、再生スイッチ34をOFFする。ヒータ62は加熱を停止する。
【0088】
キャップ83をはずし、直ちに外気導入部材82から不活性ガスを呼気収集ボックス12の内部に導入する。この際、除湿部89により、不活性ガスからは水分が除去される。不活性ガスを導入することにより、スライダ42により分離されたCNTガスセンサ40の周辺部は陽圧となり、CNTガスセンサ40の周辺部の気体がさらに排気口部材86から外部へ排出される。この操作を、外気導入部材82から呼気収集ボックス12内に導入された不活性ガスが、排気口部材86から外部へ排出される程度まで継続する。その後キャップ83及び87により、外気導入部材82及び排気口部材86を閉じる。
【0089】
上記作業により、再生によりセンシング部160から脱離した物質は、呼気収集ボックス12内を汚染すること無く外部へ排出される。CNTガスセンサ40の周辺部には不活性ガスが導入される。このため、次回の呼気ガスセンシングまでセンシング部160はクリーンな状態を保持できる。
【0090】
[実施例]
以下に、第1の実施の形態に基づく実施例について説明する。
【0091】
―CNTガスセンサ素子132aの製造方法―
CNTガスセンサ素子132aを以下に述べる方法により製造した。
【0092】
第1のセンシング部160aの製造方法を以下に示す。初めにCNTのCH基修飾を行なった。分散CNT(エーナ社製)を、ビーカーに用意したエタノール溶液に投入した後、このビーカーを、10kHz、8Wの超音波洗浄器内に設置し、ビーカー内試料に対し超音波照射を分散CNTがエタノール溶液全体に分散するまで行なった。分散後、分散CNTを含むエタノール溶液について、穴径0.2μmのPTFE(Polytetrafluoroethylene)メンブレンフィルタ(ミリポア製。以下単に「フィルタ」と呼ぶ。)を装着したフィルタフォルダ及び濾過鐘により吸引濾過を行なった。フィルタ上に残ったCNTを、エタノールを揮発させるため、フィルタごと3時間放置し、CH基により修飾されたCNTを得た。放置後、フィルタを2cm×0.7cmのサイズに切断した。
【0093】
次に、CNTの金属錯体による表面修飾を行なった。Cuフタロシアニン(東京化成工業製)をテトラヒドロフラン(THF)で溶解し、0.1mMのCuフタロシアニン溶液を調製した。その後、Cuフタロシアニン溶液5マイクロリットルをピペットにより、切断後のフィルタ上カーボンナノ構造体表面に滴下した。以上により得た平板状試料を第1のセンシング部160aとした。
【0094】
図8を参照して、絶縁性材料から成る基板162の上に第1のセンシング部160aを設置し、銀ペースト164及び166によりこれを基板162と接続した。さらに同じ銀ペースト164及び166により0.5mmφの金の細線を接続し、これを電極168及び170とし、CNTガスセンサ素子132aの製造を終了した。製造したCNTガスセンサ素子132aを呼気ガスセンサ装置10へ導入した。
【0095】
―CNTガスセンサ素子132bの製造方法―
第2のセンシング部160bの製造方法を以下に示す。はじめに、第1のセンシング部160aの製造方法と同様に、CNTのCH基修飾を行なった。次に、CNTのDAF−2による表面修飾を行なった。ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide。以下「DMSO」と呼ぶ。)550μL中にDAF−2を1mg展開したDAF−2の5mmoL溶液をリン酸緩衝液(0.1mol/L)で500倍に希釈し(約10μmol/L)した。この溶液中10μLをピペットにより、切断後のメンブレンフィルタ上CNT表面に滴下した。以上により得た平板状試料を第2のセンシング部160bとした。その後の処理はCNTガスセンサ素子132aと同様である。
【0096】
――CNTガスセンサ素子132cの製造方法―
第3のセンシング部160cの製造方法は、第1のセンシング部160aの製造方法における、CNTのCH基修飾と同様である。以上により得た平板状試料を第3のセンシング部160cとした。その後の処理はCNTガスセンサ素子132aと同様である。
【0097】
―評価方法(1)ペンタン濃度―
CNTガスセンサ素子132の特性評価方法を次に示す。図1に示す呼気ガスセンサ装置10を、平らなところに静置した。スライダ42を開とした。図2に示すキャップ81を外し、呼気導入部材80に校正用ガスとして窒素ガスを封入したテドラーバックを接続した。テドラーバックに外部から圧力をかけ窒素ガスを呼気収集ボックス12内へ導入した。同時に、キャップ85及び87を外し、呼気収集ボックス12の中に既に封入されていた気体を排気口部材84及び86を介して排気した。テドラーバックがしぼんだところで、排気口部材84及び86にキャップ85及び87をはめて排気を停止した。次に、テドラーバックを呼気導入部材80から外して、直ちに、呼気導入部材80にキャップ81をはめ、呼気導入部材80を閉とした。前述した攪拌作業を5分間行なった後、呼気ガスセンサ装置10を平らなところに静置した。
【0098】
電源スイッチ30及び測定スイッチ32をONした。ここでは、CNTガスセンサ40aにおいて、直流電源130により流した電流は200μAであり、CNTガスセンサ素子132aの初期抵抗はRo=20kΩであった。検出装置138の検出の頻度は1秒毎で、60秒間のうちに検出したCNTガスセンサ素子132aの出力電圧の平均を表示変換装置112に出力するものとした。他のCNTガスセンサについても同様の条件で測定を行った。図1に示す校正ボタン37を押下することにより、表示変換装置112においてこの入力値を初期値と設定した。その後校正ボタン37の押下を停止し、測定スイッチ32をOFFにした。
【0099】
次に、テドラーバッグに封入したペンタン濃度100ppbのセンシング対象ガスを、窒素ガス封入時と同様に呼気収集ボックス12内へ導入した。テドラーバックがしぼんだところで、排気口部材84及び86にキャップ85及び87をはめて排気を停止した。次に、テドラーバックを呼気導入部材80から外して、直ちに、呼気導入部材80にキャップ81をはめ、呼気導入部材80を閉とした。
【0100】
なお、センシング対象ガスは以下の要領で作製した。1ppmの濃度に窒素で希釈されたペンタン標準ガスと、窒素ガスとを1:9の割合で混合することにより、ペンタン標準ガスを希釈し、ペンタン濃度100ppbのセンシング対象ガスとした。
【0101】
攪拌作業を5分間行なった後、呼気ガスセンサ装置10を平らなところに静置した。この状態で、測定スイッチ32をONし表示装置36に表示されるペンタン、NO及びアセトン濃度を確認した。
【0102】
―評価方法(2)NO濃度―
評価方法(1)と同様の方法により、呼気ガスセンサ装置10によるNOを含むセンシング対象ガスの測定を行なった。センシング対象ガスの作成方法は、評価方法(1)と同様であり、ペンタンに代えてNOを使用した。
【0103】
―評価方法(3)アセトン濃度―
評価方法(1)と同様の方法により、呼気ガスセンサ装置10によるアセトンを含むセンシング対象ガスの測定を行なった。センシング対象ガスの作成方法は、評価方法(1)と同様であり、ペンタンに代えてアセトンを使用した。
【0104】
―評価方法(4)ペンタン、NO、及びアセトン濃度―
評価方法(1)と同様の方法により、呼気ガスセンサ装置10によるペンタン、NO、及びアセトンを含むセンシング対象ガスの測定を行なった。なお、センシング対象ガスは以下の要領で作製した。1ppmの濃度に窒素で希釈されたペンタン標準ガスと、ペンタン標準ガスと同様に希釈されたNO標準ガス、及び、アセトン標準ガスとを、それぞれ、等量用意して混合する。この混合ガスと窒素ガスとを3:7の割合で混合することにより、ペンタン濃度100ppb、NO濃度100ppb、及びアセトン濃度100ppbのセンシング対象ガスとした。
【0105】
―評価方法(5)再生処理―
評価方法(4)の実験の後、電源スイッチ30及び測定スイッチ32をOFFし、スライダ42を閉とした。再生スイッチ34をONし、キャップ87を取外し排気口部材86から呼気収集ボックス12内の気体を排気した。5分経過後、再生スイッチ34をOFFした。キャップ83を取外し、外気導入部材82に窒素ガスを封入したテドラーバックを接続した。テドラーバックに外部から圧力をかけ、窒素ガスを呼気収集ボックス12内へ導入した。テドラーバックがしぼんだところでテドラーバックを外気導入部材82からはずし、直ちにキャップ83及び87により、外気導入部材82及び排気口部材86を閉とした。
【0106】
ここで評価方法(1)と同様の攪拌作業を行った後、電源スイッチ30及び測定スイッチ32をONし、表示装置36に表示されるペンタン、NO及びアセトン濃度を確認した。
【0107】
―評価結果―
評価方法(1)において、表示装置36は、ペンタン98ppb、NO0ppb、アセトン0ppbを表示した。
【0108】
評価方法(2)において、表示装置36は、ペンタン0ppb、NO100ppb、アセトン0ppbを表示した。
【0109】
評価方法(3)において、表示装置36は、ペンタン1ppb、NO0ppb、アセトン100ppbを表示した。
【0110】
評価方法(4)において、表示装置36は、ペンタン99ppb、NO101ppb、アセトン102ppbを表示した。
【0111】
評価方法(5)において、表示装置36は、ペンタン0ppb、NO0ppb、アセトン0ppbを表示した。
【0112】
上記の結果により、本呼気ガスセンサ装置は、ペンタン、NO及びアセトンの存在の確認が可能で、その検出下限はそれぞれ100ppb以下であることがわかった。さらに、これら特定化学物質が混合していても、100ppbレベルで検出可能であり、一度の測定で複数種類の呼気中マーカを検出できることを確認した。さらに、再生処理後、各特定化学物質濃度はゼロレベルを示し、センシング部160等における電気抵抗変化はほとんど認められなかった。このことから、再生処理により、センシング部160等に吸着された物質が除去されていることがわかった。
【0113】
以上のように、本ガスセンサ装置によれば、一度の測定で複数の特定化学物質に対して行なうことが出来る。そのセンシングは、物質選択性を有し、高精度、及び高感度である。呼気のセンシングを行なう場合、複数種類の化学物質センシング素子を含むことにより、たとえば、糖尿病、生活習慣病及び呼吸疾患等、複数の疾患に関する情報を得ることが出来る。
【0114】
装置に呼気を導入し、ボタンを押すと、特定化学物質の濃度が表示される。このように簡単な操作で情報を得ることが出来る。さらに、高感度であるため、センシング基体及び装置の呼気収集ボックスを小型にすることができる。これらのことから個人が日常的に健康管理を行なう一方法として、本装置は有効に利用することが出来るといえる。
【0115】
特に、スライダ42を設けたことにより、測定と再生とを繰返しても測定性能が劣化する可能性は小さいということができる。
【0116】
[変形例]
上記実施の形態において、金属錯体としてMePcを挙げたが、本発明において、金属錯体はこれに限定されない。一般的な金属錯体又はその誘導体であって、上記したようにCNTに表面修飾されることが可能であり、吸着物質に対し物質選択性を有するものであれば良い。
【0117】
本発明において、第1のセンシング部160aの製造方法におけるCNTの表面修飾材料はCuフタロシアニンに限定されない。Coフタロシアニン、Niフタロシアニン、Feフタロシアニン及びポルフィリンなどであても良い。
【0118】
上記実施の形態において、CNTガスセンサは複数であり、それぞれが異なる特定化学物質を検出し、各出力電圧の変化に基づいて個別に算出された濃度が個別に表示される。しかし、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、2つのCNTガスセンサにより、基準とする物質及びマーカの濃度比を算出し、当該濃度比に基づいてマーカの濃度レベルが分かるような表示をしても良い。すなわち、基準となる物質の濃度でマーカ濃度を規格化してもよい。
【0119】
具体的な例を以下に示す。呼気ガスセンサ装置は、呼気に高い比率で含まれる成分を検出するための第1のCNTガスセンサと、微量に含まれるマーカを検出するための第2のCNTガスセンサとを含む。呼気に高い比率で含まれる成分の濃度に対するマーカ濃度の比率(以下「濃度比」と呼ぶ。)に関し、予め、レベル分けをしておく。例えば、低濃度〜高濃度まで3段階のレベルがあり、それぞれ、健康な人の呼気における平均的な濃度比の数値範囲、呼吸疾患を発症した人の平均的な濃度比の数値範囲、及び、両者の中間の数値範囲であったとする。表示変換装置は予め当該レベル分けに必要な情報を記憶している。表示変換装置は、第1及び第2のガスセンサからの入力信号により濃度比を算出し、当該濃度比が前述の3レベルのいずれに該当するか判定し、判定結果に基づき表示装置に信号を出力する。表示装置は、例えば、濃度比が健康な人の呼気と同等であれば緑色、発症した人と同等であれば赤色、両者の中間であれば黄色の表示を行なう。この場合であっても、ユーザは自身の(この場合は呼吸疾患に関する)健康状態のチェックを行なうことができる。
【0120】
呼気ガスセンサ装置は、さらに、これら第1及び第2のCNTガスセンサに加え、同様の2対で一体のCNTガスセンサを他に含んでもよい。これらの他のセンサのうちマーカ検出用のセンサは、他のマーカ検出用センサと異なるマーカを検出する。その結果、一度の測定により複数種類のマーカの濃度レベルを確認することが出来る。
【0121】
上記実施の形態では、加熱板54はヒータ62を含み、センシング部を加熱することにより吸着した物質を除去するものとした。しかし、本発明はそのような態様に限定されない。例えば、再生装置は可視光LED(Light Emitting Diode)であり、1mWの可視光をセンシング部に所定の時間照射することにより、吸着した物質を除去する態様であっても良い。別の例として、再生装置はガスフローを行なうための装置であっても良い。この場合、例えば、図2を参照して、呼気ガスセンサ装置10において、スライダ42を閉、排気部29を開(キャップ87をはずす)の状態とする。外気導入部24から当該再生装置により不活性ガスを特定の圧力により一定時間注入する。当該ガスが外気導入部24から排気部29の方向にフローすることにより、センシング部に吸着した物質が脱離し、筐体12外部に排気される。
【0122】
上記実施の形態では、呼気収集ボックス12の内部に導入される呼気及び外気から水分を除去するための乾燥剤を、呼気導入部22及び外気導入部24内部に設けている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、呼気収集ボックス12内部に呼気又は外気が導入される以前にそれらから水分を除去するものであれば、どのようなものをどのような位置に設けてもよい。例えば呼気導入部22および外気導入部24の、呼気収集ボックス12と連結されていない端部に、カートリッジ形式のマウスピースを接続するようにし、その中に乾燥剤を設けるようにしてもよい。
【0123】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る呼気ガスセンサ装置10の3面図である。
【図2】図1(A)に示す断面2−2における呼気ガスセンサ装置10の矢視方向断面図である。
【図3】図1(B)に示す断面3−3における呼気ガスセンサ装置10の矢視方向断面図である。
【図4】呼気ガスセンサ装置10の斜視図である。
【図5】図1(B)に示す断面5A−5A、及び5B−5Bにおける呼気ガスセンサ装置10の概略矢視方向断面図である。
【図6】呼気ガスセンサ装置10のパワーライン及びシグナルラインを説明するための概略ブロック図である。
【図7】CNTガスセンサ40の構成図である。
【図8】CNTガスセンサ素子132の構成図である。
【図9】呼気ガスセンサ装置10による呼気中の特定化学物質を測定する方法を説明するための図である。
【図10】呼気収集ボックス12内の試料ガスを攪拌する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0125】
10 呼気ガスセンサ装置
12 呼気収集ボックス
22 呼気導入部
24 外気導入部
26 シャッタつまみ
28、29 排気部
80、82 導入部材
81、83、85、87 キャップ
84、86 排気口部材
30、32、34 スイッチ
36 表示装置
37 校正ボタン
40 CNTガスセンサ
41 シャッタ
42 スライダ
43 スライダガイド
44 攪拌装置
46 スライダ収納部
50、162 基板
52 断熱板
54 加熱板
62 ヒータ
64 シール部材
112 表示変換装置
130 直流電源
132 CNTガスセンサ素子
134 負荷抵抗
136 増幅器
138 検出装置
160 センシング部
164、166 銀ペースト
168、170 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間が形成された筐体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体の前記空間に試料ガスを導入するための試料ガス導入手段と、
前記筐体内に設けられた、雰囲気中の特定化学物質を吸着することにより電気抵抗が変化する化学物質センシング素子と、
前記化学物質センシング素子に電気的に結合され、前記化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段と、
前記筐体に設けられ、前記空間内部の気体を前記筐体外部に排出するための排気手段とを含み、
前記化学物質センシング素子は、前記特定化学物質に対応して選択される物質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む、ガスセンサ装置。
【請求項2】
前記カーボンナノ構造体は、前記物質により表面修飾されているカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載のガスセンサ装置。
【請求項3】
前記特定化学物質はアセトンであり、前記物質はアルキル基である、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ装置。
【請求項4】
前記特定化学物質はペンタンであり、前記カーボンナノ構造体は、金属錯体又はその誘導体により表面修飾されている、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ装置。
【請求項5】
前記金属錯体は金属フタロシアニンからなる、請求項4に記載のガスセンサ装置。
【請求項6】
前記特定化学物質は一酸化窒素であり、前記カーボンナノ構造体は、一酸化窒素と選択的に結合する蛍光分子により表面修飾されている、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ装置。
【請求項7】
前記蛍光分子はジアミノフルオレセイン−2(Diaminofluorescein
−2)からなる、請求項6に記載のガスセンサ装置。
【請求項8】
複数個の前記化学物質センシング素子を含み、当該複数個の前記化学物質センシング素子は、互いに異なる特定化学物質を選択的に吸着する物質で表面修飾されたカーボンナノ構造体を含み、
前記検出手段は、前記複数の化学物質センシング素子の各電気抵抗の変化を個別に検出するための手段を含む、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ装置。
【請求項9】
前記筐体の前記空間内に設けられ、前記化学物質センシング素子に対して加熱、光照射又はガスフローを行なうことにより前記センシング素子表面に吸着された物質を脱離させるための再生手段をさらに含む、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項10】
前記筐体の内部の前記空間のうち、前記化学物質センシング素子が設けられた第1の空間と、それ以外の第2の空間との間に設けられ、前記第1の空間と前記第2の空間とを分離する閉状態と、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる開状態との間で状態を変化させるための分離手段をさらに含む、請求項9のいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項11】
前記試料ガス導入手段は、前記第1の空間に試料ガスを導入するように前記筐体に設けられており、
前記ガスセンサ装置はさらに、前記筐体に設けられ、前記第2の空間に外部の気体を導入するための外気導入手段をさらに含む、請求項10に記載のガスセンサ装置。
【請求項12】
前記分離手段は、前記筐体の内部に設けられ、前記第1の空間と前記第2の空間との間に設けられたスライド式のシャッタを含む、請求項11に記載のガスセンサ装置。
【請求項13】
前記筐体内に設けられ、前記筐体内部の気体を攪拌するための攪拌手段をさらに含む、請求項1〜請求項12のいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項14】
さらに、前記試料ガス導入手段に関連して設けられ、試料ガスの除湿を行なうための除湿手段を含む、請求項1〜請求項13のいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項15】
さらに、前記外気導入手段に関連して設けられ、外部気体の除湿を行なうための除湿手段を含む、請求項1〜請求項14のいずれかに記載のガスセンサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−257772(P2009−257772A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103728(P2008−103728)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】