説明

ガスセンサ

【課題】大気を導入するための大気連通孔に設けられるフィルタ部材を保護するガスセンサを提供する。
【解決手段】保護部材100は、外筒3の後端側に加締められるグロメット9の大気連通孔91内に配置されるフィルタ部材87を保護するため、外筒3に機械接合される。保護部材100の通気部110は大気連通孔91を軸線方向に延ばした領域に配置されるがメッシュ部材105が接合されており、外筒3の内部と外部との通気性が確保されている。通気部110から径方向へ向けて延びる腕部120,125は、グロメット9の天面99側に設けられた溝部93,95内に配置される。溝部の内壁によって腕部120,125の移動が制止され、保護部材100の軸方向と直交する周方向への回転が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスを検出する検出素子を主体金具や外筒の内部に保持しつつ、その外筒の内部と外部との通気性を確保するための通気構造を有するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジルコニア等のセラミックスからなる固体電解質体を用い、内燃機関の排出する排気ガス中の特定ガス成分(例えば酸素など)を検出する検出素子を備えたガスセンサが知られている。例えば、酸素を検出する酸素センサの検出素子は、排気ガス中に晒される検出電極と、基準となるガス(通常は大気)中に晒される基準電極とが一対となって固体電解質体を挟むようにその表面上に形成された構成を有する。この検出素子は、固体電解質体に隔てられた2つの雰囲気間、すなわち排気ガスと基準ガス(大気)との間における酸素分圧の差に応じ、両電極間に生ずる起電力によって排気ガス中の酸素の検出を行うものである。
【0003】
このような酸素センサが内燃機関の排気管に取り付けられたとき、検出素子は、検出電極側が排気管内を流通する排気ガス中に晒されるように直接または間接的に外部に露出された状態で主体金具内に保持されている。そして、主体金具に固定される外筒と主体金具とで、検出電極側と基準電極側とが隔てられている。また、検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が外筒の外部に引き出されており、そのリード線の引き出し口には、引き出し口を塞ぐための栓部材が組み付けられている。
【0004】
栓部材(グロメット)には、リード線(センサ出力リード線およびヒータリード線)を挿通させるリード線挿通孔の他に、排気管の外側で外筒の内部と外部との間の通気性を確保して基準電極側に大気を導入するための大気連通孔(貫通孔)が設けられている。そして栓部材の大気連通孔には、外筒内に大気を導入しつつも水滴等を進入させないようにするためのフィルタ部材が設けられている(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−208165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の酸素センサでは、フィルタ部材が外部に直接露出されることとなる。通常、酸素センサは自動車の路面近くに配置されるため、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材が直接受ける場合があり、フィルタ部材に破損を生ずる虞がある。そしてフィルタ部材が破損してしまうと、酸素センサが被水した場合に内部に水が侵入し、酸素センサの出力に異常が生じたり、端子が短絡したりする虞があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、大気を導入するための大気連通孔に設けられるフィルタ部材を保護するガスセンサを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、前記検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、当該主体金具に固定され、前記検出素子の後端側の径方向周囲を取り囲む筒状の外筒と、前記外筒の後端側に当該外筒を塞ぐように配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、および、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能とする大気連通孔が、それぞれ前記軸線方向に延びるように形成された栓部材と、を備えたガスセンサにおいて、前記栓部材の前記大気連通孔を前記外筒の外部側から覆い前記フィルタ部材を保護すると共に、前記外筒に機械接合された第1保護部材であって、少なくとも前記大気連通孔を前記軸線方向に延ばした領域に、前記大気連通孔の開口よりも小さい開口を有する通気部と、前記通気部から径方向外側に延びる複数の腕部と、複数の当該腕部に一対一に対応して接続し、前記外筒に機械接合するための複数の掛留部と、が形成された第1保護部材を有し、前記栓部材は、自身の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びる溝部を有し、その溝部内に、少なくとも1つの前記腕部を配置することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第1保護部材は、前記リード線と非接触の状態で前記外筒に機械接合されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明のガスセンサは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記外筒の前記後端側には、前記栓部材を固定する加締部を有し、前記第1保護部材は、前記加締部に外嵌めにて機械接合されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記溝部には、前記栓部材の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びる連結溝部を有し、複数の前記腕部のうちの2つの前記腕部は、前記連結溝部内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明のガスセンサは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記第1保護部材は、前記通気部から径方向外側に向かって延びる突出部を有し、当該突出部は、前記連結溝部以外の前記溝部内に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1保護部材の前記掛留部は、前記腕部の延設方向における自身の先端側の部位を、径方向内側へ向けて折り返した形態となって前記加締部に機械接合されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1保護部材の前記通気部は、軸線方向に貫通する複数の孔を有した形態、軸線方向の開口にメッシュ状の部材を組み付けた形態、または自身に形成された凸部の側面に開口を有した形態のうちのいずれかの形態に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1保護部材の硬度は、前記フィルタ部材の硬度よりも硬いことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、前記検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、当該主体金具に固定され、前記検出素子の後端側の径方向周囲を取り囲む筒状の外筒と、前記外筒の後端側に当該外筒を塞ぐように配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、および、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能にする大気連通孔が、それぞれ軸方向に延びるように形成された栓部材と、を備えたガスセンサにおいて、自身と前記栓部材との間隙を介して前記大気連通孔内と外部との通気を許容する第2保護部材であって、前記ガスセンサを後方側から軸線方向に見たときに、前記フィルタ部材が視認できないように前記フィルタ部材を覆う被覆部と、前記被覆部から径方向外側に延びる複数の腕部と、複数の当該腕部に一対一に対応して接続し、前記外筒に機械接合するための複数の掛留部と、が形成された第2保護部材を備え、前記栓部材は、自身の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びる溝部を有し、その溝部内に、少なくとも1つの前記腕部を配置することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に係る発明のガスセンサは、請求項9に記載の発明の構成に加え、前記第2保護部材は、前記リード線と非接触の状態で前記外筒に機械接合されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る発明のガスセンサは、請求項9または10に記載の発明の構成に加え、前記外筒の前記後端側には、前記栓部材を固定する加締部を有し、前記第2保護部材は、前記加締部に外嵌めにて機械接合されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に係る発明のガスセンサは、請求項9乃至11のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記溝部には、前記栓部材の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びる連結溝部を有し、複数の前記腕部のうちの2つの前記腕部は、前記連結溝部内に配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に係る発明のガスセンサは、請求項12に記載の発明の構成に加え、前記第2保護部材は、前記被覆部から径方向外側に向かって延びる突出部を有し、当該突出部は、前記連結溝部以外の前記溝部内に配置されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項14に係る発明のガスセンサは、請求項9乃至13のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第2保護部材の前記掛留部は、前記腕部の延設方向における自身の先端側の部位を、径方向内側へ向けて折り返した形態となって前記加締部に機械接合されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項15に係る発明のガスセンサは、請求項9乃至14のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第2保護部材の硬度は、前記フィルタ部材の硬度よりも硬いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明のガスセンサでは、栓部材の大気連通孔を外筒の外部側から覆いフィルタ部材を保護する第1保護部材を有するので、フィルタ部材が大気連通孔を介して直接外部に露出しなくなる。よって、外部からの衝撃をフィルタ部材が直接受けなくなり、フィルタ部材が破損する事を防止できる。その結果、ガスセンサ内部への水の侵入を防止できる。一方、第1保護部材には、少なくとも栓部材の大気連通孔を軸線方向に延ばした領域に通気部が設けられているが、この通気部は、大気連通孔の開口よりも小さい開口を有しているので、フィルタ部材が大気連通孔を介して直接外部に露出しない形態で、大気連通孔を介して外筒の内部と外部との通気性を確保できる。
【0023】
そして、その第1保護部材が、外筒に対して機械接合によって組み付けられるので、加締めや溶接等の手間が不要であり、ガスセンサの組み立てが容易である。
【0024】
ところで、この第1保護部材は栓部材の大気連通孔を覆うように外筒の外部側から組み付けられるが、栓部材には大気連通孔と共にリード線のリード線挿通孔が軸線方向に延びるように形成されている。つまりリード線も、軸線方向に沿うように、リード線挿通孔内を挿通されている。すると、第1保護部材を外筒に対して機械接合すると、接合後にセンサの周方向に回転してしまい、リード線を折損してしまうことが考えられる。そこで、本発明に係るガスセンサでは、栓部材に設けられた溝部を利用し、その溝部内に、通気部から径方向外側に延びる腕部を配置させることで、溝部の内側により腕部、ひいては第1保護部材自身の周方向への回転を規制することができる。このため、リード線挿通孔を挿通されたリード線と第1保護部材とが接触することがなく、リード線の折損等の虞を低減することができる。このような溝部としては、栓部材が外部から被水したときに、大気連通孔の通気性能を低下させないように、水捌けを補助するため設けられる溝部を利用すればよい。
【0025】
もっとも、第1保護部材の腕部が溝部内に配置されることにより第1保護部材が軸線方向を中心とする周方向に回転しないため、第1保護部材がリード線と接触した状態であってもリード線を切断する虞はない。しかし、ガスセンサが外部から、例えば振動による負荷を受けた場合に、第1保護部材とリード線とが当接した状態では接触摩擦による摩耗等が生ずる虞がある。そこで請求項2に係る発明のように、第1保護部材が、リード線と非接触の状態で外筒に組み付けられることが望ましい。さらに、第1保護部材とリード線とは1mm以上離間させることが好ましい。
【0026】
第1保護部材を外筒に機械接合するにあたって、請求項3に係る発明のように、栓部材を外筒に固定するために形成された加締部を利用し、その加締部に外嵌めによって第1保護部材を機械接合すれば、外筒もしくは栓部材に第1保護部材の組み付けのための部位を新たに形成することもなく、簡単に組み付けを行うことができる。
【0027】
そして、上記の溝部は、水捌けのために大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びている形態である連結腕部を有することがある。この場合、請求項4に係る発明のように、腕部のうちの2つが連結溝部に配置されていることが好ましい。このように腕部が連結溝部に配置される(つまり2つの腕部が対称になる)ことで第1保護部材を安定して栓部材に固定することができる。
【0028】
また、第1保護部材を外筒に組み付けた際に、通気部は、連結溝部内に配置される腕部によって支えられる形態となるため、外力を受けるとこの腕部を軸に回転方向に傾く場合がある。そこで請求項5に係る発明のように、通気部に設けた突出部を連結溝部以外の溝部(つまり腕部の配置されていない溝部)内に配置させれば、通気部が傾いてしまうことを突出部によって抑制することができる。
【0029】
また、請求項6に係る発明のように、第1保護部材の掛留部の構造を、腕部の延設方向における自身の先端側の部位を径方向内側へ折り返した形態とすれば、掛留部の先端側の縁部分(エッジ)が第1保護部材の外側へ向けて剥き出しとならず、ガスセンサの組み立ての際に第1保護部材の取り扱いを容易とすることができる。
【0030】
なお、第1保護部材の通気部は、フィルタ部材を外部側から覆って保護する一方で、外筒の内部と外部との間における通気性を十分に維持できる構造であることが望まれる。そこで請求項7に係る発明のように、通気部に、軸線方向に貫通する複数の孔を設けるとよい。または、通気部に、軸線方向に設けた開口にメッシュ状の部材を組み付けてもよい。あるいは、通気部に凸部を設け、その側面に開口を形成して通気可能に構成してもよい。こうした形態のうちのいずれかの形態にて通気部が形成されれば、フィルタ部材の保護と通気性の確保とを行うことができる。
【0031】
また、請求項8に係る発明のように、第1保護部材の硬度は、フィルタ部材の硬度よりも硬いことが好ましい。これにより、フィルタ部材が破損することをより確実に防止できる。
【0032】
請求項9に係る発明のガスセンサでは、第2保護部材は、後方側から軸線方向に見たときに、フィルタ部材が視認できないようにフィルタ部材を覆う被覆部を有するので、フィルタ部材が大気連通孔を介して直接外部に露出しなくなる。よって、外部からの衝撃をフィルタ部材が直接受けなくなり、フィルタ部材が破損する事を防止できる。その結果、ガスセンサ内部への水の侵入を防止できる。一方、第2保護部材と栓部材との間隙を介して大気連通孔内と外部との通気を許容する構成となっており、フィルタ部材が大気連通孔を介して直接外部に露出しない形態で、大気連通孔を介して外筒の内部と外部との通気性を確保できる。
【0033】
そして、その第2保護部材が、外筒に対して機械接合によって組み付けられるので、加締めや溶接等の手間が不要であり、ガスセンサの組み立てが容易である。
【0034】
ところで、この第2保護部材は栓部材の大気連通孔を覆うように外筒の外部側から組み付けられるが、栓部材には大気連通孔と共にリード線のリード線挿通孔が軸線方向に延びるように形成されている。つまりリード線も、軸線方向に沿うように、リード線挿通孔内を挿通されている。すると、第2保護部材を外筒に対して機械接合すると、接合後にセンサの周方向に回転してしまい、リード線を折損してしまうことが考えられる。そこで、本発明に係るガスセンサでは、栓部材に設けられた溝部を利用し、その溝部内に通気部から径方向外側に延びる腕部を配置させることで、溝部の内壁より腕部、ひいては第2保護部材自身の周方向に回転を規制することができる。このため、リード線挿通孔を挿通されたリード線と第2保護部材とが接触することがなく、リード線の折損等の虞を低減することができる。このような溝部としては、栓部材が外部から被水したときに、大気連通孔の通気性能を低下させないように、水捌けを補助するために設けられる溝部を利用すればよい。
【0035】
もっとも、第2保護部材の腕部が溝部内に配置されることにより、第2保護部材が軸線方向を中心とする周方向に回転しないため、第2保護部材がリード線と接触した状態であってもリード線を切断する虞はない。しかし、ガスセンサが外部から、例えば振動による負荷を受けた場合に、第2保護部材とリード線とが当接した状態では接触摩擦による摩耗等が生ずる虞がある。そこで請求項10に係る発明のように、第2保護部材が、リード線と非接触の状態で外筒に組み付けられることが望ましい。さらに、第2保護部材とリード線とは1mm以上離間させることが好ましい。
【0036】
第2保護部材を外筒に機械接合するにあたって、請求項11に係る発明のように、栓部材を外筒に固定するために形成された加締部を利用し、その加締部に外嵌めによって第2保護部材を機械接合すれば、外筒もしくは栓部材に第2保護部材の組み付けのための部位を新たに形成することもなく、簡単に組み付けを行うことができる。
【0037】
そして、上記の溝部は、水捌けのために大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びている形態である連結腕部を有することがある。この場合、請求項12に係る発明のように、腕部のうちの2つが連結溝部に配置されていることが好ましい。このように腕部が連結溝部に配置される(つまり2つの腕部が対称になる)ことで第2保護部材を安定して栓部材に固定することができる。
【0038】
また、第2保護部材を外筒に組み付けた際に、被覆部は、連結溝部内に配置される腕部によって支えられる形態となるため、外力を受けるとこの腕部を軸に回転方向に傾く場合がある。そこで請求項13に係る発明のように、被覆部に設けた突出部を連結溝部以外の溝部(つまり腕部の配置されていない溝部)内に配置させれば、被覆部が傾いてしまうことを突出部によって抑制することができる。
【0039】
また、請求項14に係る発明のように、第2保護部材の掛留部の構造を、腕部の延設方向における自身の先端側の部位を径方向内側へ折り返した形態とすれば、掛留部の先端側の縁部分(エッジ)が第2保護部材の外側へ向けて剥き出しとならず、ガスセンサの組み立ての際に第2保護部材の取り扱いを容易とすることができる。
【0040】
また、請求項15に係る発明のように、第2保護部材の硬度は、フィルタ部材の硬度よりも硬いことが好ましい。これにより、フィルタ部材が破損することをより防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、第1の実施の形態として、一例としてのガスセンサ1の構造について図1〜図8を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態のガスセンサ1の構造を示す縦断面図である。図2は、グロメット9の斜視図である。図3は、正面、平面および左側面から見た第1の実施の形態の保護部材100の斜視図である。図4は、保護部材100の平面図である。図5は、保護部材100の正面図である。図6は、保護部材100の右側面図である。図7は、ガスセンサ1を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。図8は、図7の1点鎖線A−Aにおいて矢視方向から見たガスセンサ1の後端側の部分拡大断面図である。
【0042】
なお、図1に示すガスセンサ1は自動車等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスの排気管(図示外)に取り付けられて使用されるものであり、軸線O方向において、排気管内に挿入される検出素子6の先端部に向かう側(閉じている側であり図中下側)を先端側とし、これと反対方向に向かう側(図中上側)を後端側として説明するものとする。
【0043】
図1に示すガスセンサ1は、排気管内を流通する排気ガス中の酸素の有無を検出するためのセンサであり、細長で先が閉じられた筒状の検出素子6を主体金具5や外筒3、プロテクタ4内に保持した構造を有する。ガスセンサ1からは、この検出素子6の出力する信号を取り出したり、検出素子6に併設されるヒータ7への通電を行ったりするためのリード線18が引き出されており、ガスセンサ1とは離れた位置に設けられる図示外のセンサ制御装置あるいは自動車の電子制御装置(ECU)に電気的に接続されている。
【0044】
ガスセンサ1の検出素子6は、ジルコニアを主成分とする固体電解質体61を軸線O方向に延びる有底筒状に形成したものを基体として構成されたものである。固体電解質体61の内面には、PtまたはPt合金からなる基準電極62がそのほぼ全面を覆うように多孔質状に形成されている。また、固体電解質体61の外面にも、基準電極62と同様に、PtまたはPt合金からなる検出電極63が多孔質状に形成されている。検出素子6の先端側(閉じている側)は検出部64として構成され、外面の検出電極63が排気管(図示外)内を流通する排気ガス中に晒される。図示しないがこの検出電極63は耐熱性セラミックスよりなる多孔質状の電極保護層により被覆されており、排気ガスによる被毒から保護されている。また、検出素子6の軸線O方向の略中間位置には、径方向外側に向かって突出する鍔状のフランジ部65が設けられている。そして、検出素子6の筒内には、固体電解質体61を加熱して活性化させるための棒状のヒータ7が挿入されている。
【0045】
検出素子6は、自身の径方向周囲を筒状の主体金具5に取り囲まれた状態で、その主体金具5の筒孔55内に保持されている。主体金具5はSUS430等のステンレス鋼からなる筒状の部材であり、先端側に、排気管の取付部(図示外)に螺合する雄ねじ部52が形成されている。雄ねじ部52よりも先端側には、その外周に後述するプロテクタ4が係合される先端係合部56が形成されている。検出素子6の検出部64は、この先端係合部56よりも先端側に突出されている。
【0046】
主体金具5の雄ねじ部52の後端側には径方向に拡径された工具係合部53が形成されており、ガスセンサ1を排気管の取付部(図示外)に取り付ける際に使用される取り付け工具が係合される。この工具係合部53と雄ねじ部52との間の部位には、排気管の取付部を介したガス抜けを防止するための環状のガスケット11が嵌挿されている。そして主体金具5の後端側には、自身の筒孔55内で保持する検出素子6を加締め固定するための加締部57が設けられている。検出素子6の後端部66は、この加締部57よりも後端側に突出されている。そして、工具係合部53と加締部57との間には、その外周に後述する外筒3の先端部31が係合される後端係合部58が形成されている。
【0047】
次に、主体金具5の筒孔55内の先端側にはその内周を径方向内側に向けて突出させた段部59が設けられており、この段部59に金属製のパッキン12を介し、アルミナからなる筒状の支持部材13が係止されている。支持部材13の内周も段状に形成されており、その段状の部位に配置される金属製のパッキン14を介し、検出素子6のフランジ部65が支持部材13により支持されている。さらに筒孔55内には、支持部材13の後端側に滑石粉末からなる充填部材15が充填され、その充填部材15を支持部材13との間で挟むように、充填部材15の後端側にアルミナ製で筒状のスリーブ16が配置されている。
【0048】
スリーブ16の後端側には環状のリング17が配置されており、主体金具5の加締部57を内側先端方向に加締めることで、リング17を介し、スリーブ16が充填部材15に対して押しつけられている。この加締部57の加締めを通じ、充填部材15が、主体金具5の段部59に係止された支持部材13に向けて検出素子6のフランジ部65を押圧するように圧縮充填されると供に、主体金具5の筒孔55の内周面と検出素子6の外周面との間の間隙が気密に埋められている。このように、検出素子6は、主体金具5の加締部57と段部59との間において挟持された各部材を介し、主体金具5の筒孔55内で保持されている。
【0049】
次に、主体金具5の先端係合部56には、その先端係合部56から軸線O方向の先端側に向け突出された検出素子6の検出部64を覆うプロテクタ4が溶接によって組み付けられている。プロテクタ4は、ガスセンサ1が排気管(図示外)に取り付けられた際に排気管内に突き出される検出素子6の検出部64を、排気ガス中に含まれる水滴や異物等の衝突から保護するものである。プロテクタ4は、有底筒状をなし開放された側の周縁部が先端係合部56に接合される外側プロテクタ41と、その外側プロテクタ41の内部に固定された有底筒状の内側プロテクタ45とからなる2重構造をなすように構成されている。外側プロテクタ41および内側プロテクタ45の外周面には内部に排気ガスを導入し、検出素子6の検出部64へと導くための導入口42がそれぞれ開口されている(内側プロテクタ45のガス導入口は図示せず。)。また、外側プロテクタ41および内側プロテクタ45の底面には、内部に入り込んだ水滴や排気ガスを排出するための排出口43,48がそれぞれ開口されている。
【0050】
また、前述したように、検出素子6の後端部66は、主体金具5の後端(加締部57)よりも後方に突出されている。この後端部66よりも軸線O方向の後端側には、絶縁性セラミックスからなる筒状のセパレータ8が配置されている。セパレータ8は、その内部に、検出素子6の基準電極62および検出電極63や、ヒータ7の有する発熱抵抗体に通電するため後端側にて露出された一対の電極71(図1ではそのうちの一方の電極71を示している。)にそれぞれ電気的に接続される4つの接続端子19(図1ではそのうちの3つの接続端子19を示している。)が、互いに接触しないように分離するためのものであり、各接続端子19が独立して収容される収容部82を有する。この収容部82はセパレータ8を軸線O方向に貫通しており、セパレータ8よりも先端側と後端側との間における大気連通が可能に構成されている。各接続端子19には4本のリード線18の芯線がそれぞれ加締め接合されており(図1ではそのうちの3本のリード線18を示している。)、各リード線18は、後述するグロメット9を介してガスセンサ1の外部に引き出されている。また、セパレータ8の外周面には径方向外側に突出するフランジ部81が設けられており、そのフランジ部81よりも先端側の外周面に、略円筒状の保持金具85が嵌挿されている。
【0051】
次に、主体金具5の後端係合部58には、SUS304等のステンレス鋼からなる筒状の外筒3の先端部31が係合されている。この先端部31は外周側から加締められ、更に外周を一周してレーザ溶接が施されて、後端係合部58に接合されている。外筒3は、軸線O方向に沿って後端側へ向けて延びており、検出素子6の後端部66やそれよりも後端側に配置されるセパレータ8の外周を径方向に取り囲んでいる。セパレータ8の配置位置に相当する外筒3の外周面は径方向に加締められており、これにより、保持金具85が、自身の内部にセパレータ8を保持しつつ、外筒3の内側にて加締め保持されている。
【0052】
また、外筒3の後端側の開口32には、フッ素系ゴムからなるグロメット9が嵌合されている。図2に示すように、グロメット9は、軸線O方向を高さ方向とする略円柱状に形成された栓部材であり、外筒3の後端側を塞いでいる。ガスセンサ1への組み付け時に後端向きの面となる天面99は、径方向の外周側から中央側へ向けて盛り上がる傾斜面として形成されている。そして、その径方向の中央には軸線O方向に貫通する大気連通孔91が形成されており、その大気連通孔91よりも外周側にも、軸線O方向に貫通する4つのリード線挿通孔92が周方向に等間隔となる位置にそれぞれ形成されている。なお、グロメット9が、本発明における「栓部材」に相当する。
【0053】
ここで図1に示すように、大気連通孔91は、グロメット9によって閉栓された外筒3内に大気を導入するために設けられたものである。外筒3内には検出素子6が後端部66を突き出した形態で主体金具5に保持されているが、その検出素子6の筒内に形成された基準電極62が、大気連通孔91およびセパレータ8の収容部82を介し、大気に晒されるように構成されている。また、4つのリード線挿通孔92には、検出素子6の検出電極63および基準電極62やヒータ7の一対の電極71と図示外のセンサ制御装置またはECUとを電気的に接続する4本のリード線18が、それぞれ独立に挿通される(図1ではそのうちの2本のリード線18がリード線挿通孔92に挿通された状態を示している。)。
【0054】
また、図2に示すように、グロメット9の天面99には、大気連通孔91の形成位置を起点とし、外周側へ向けて径方向に沿って溝状に延びる4つの溝部93,94,95,96が形成されている。各溝部93〜96は、天面99上に開口する4つのリード線挿通孔92の位置を避けるように、それぞれ2つのリード線挿通孔92間を通して配置されている。溝部93は溝部95と対をなし、大気連通孔91の形成位置を起点として互いに対称に延びる連結溝部97を構成する。溝部94および溝部96についても同様に、互いが対をなし、大気連通孔91の形成位置を起点として互いに対称に延びる連結溝部98を構成する。そして、天面99を軸線O方向に沿って見たときに、連結溝部97と連結溝部98とは、大気連通孔91の形成位置にて十字状に直交して交差する配置となっている。
【0055】
一方、図1に示すように、グロメット9の大気連通孔91内にはフィルタ部材87およびその留め金具88が挿入されている。フィルタ部材87は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成されたミクロンサイズの網目構造を有する薄膜状のフィルタであり、水滴等は通さず大気は連通可能に構成されたものである。留め金具88は筒状に形成された部材であり、自身の外周と大気連通孔91の内周との間にフィルタ部材87を挟み、グロメット9に固定する。上記したグロメット9の溝部93〜96は、フィルタ部材87を通過できなかった水滴等がフィルタ部材87上で溜まらないように外周側へ導く流路を形成するものである。
【0056】
このように、大気連通孔91にフィルタ部材87および留め金具88が挿入され、リード線挿通孔92にリード線18が挿通されたグロメット9は、セパレータ8に後端側から当接するように外筒3の開口32に嵌合されている。この状態で外筒3の開口32よりやや先端側の部位が外周側から径方向内側に加締められ、グロメット9が外筒3に固定されている。なお、加締めによって形成された加締部35は、外筒3の外周面において径方向に凹んだ状態で周方向に一周する溝状をなしている。
【0057】
次に、グロメット9の大気連通孔91に固定されたフィルタ部材87よりも軸線O方向の後端側には、草木との接触や飛石等の衝突など、外部からの衝撃によるフィルタ部材87の破損を防止するための保護部材100が組み付けられている。保護部材100は、SUS等のステンレス鋼の板材を折り曲げ加工したものに、金網状のメッシュ部材105(図3参照)を設けたものである。なお、保護部材100が、本発明における「第1保護部材」に相当する。
【0058】
図3〜図6に示すように、保護部材100は、円形板状に加工され、内側に円形の開口部115が形成された通気部110を有する。この開口部115には底面側(ガスセンサ1に組み付けた際の先端側にあたる。)から開口部115の開口面積よりも大きめのメッシュ部材105が溶接により接合されている。なお、このメッシュ部材105の1つの開口は、大気連通孔91の開口よりも小さく設定されている。また、通気部110には、周縁から径方向外側へ向けて延びる板状の2本の腕部120,125が形成されている。図4に示すように、腕部120,125は、通気部110を中心に対称となるように設けられている。更に、図5に示すように、腕部120,125の延設方向の先端部121,126側は、それぞれ通気部110の厚み方向底面側向き(下向き)に傾斜されている。なお、保護部材100がガスセンサ1に組み付けられたときに、この腕部120,125の先端部121,126がそれぞれ外筒3の開口32の外周よりも外側に配置されるように、腕部120,125の長さが決められている(図8参照)。
【0059】
次に、図3〜図6に示すように、腕部120,125の先端部121,126には、それぞれ掛留部160,165が延設されている。後述するが、掛留部160,165は保護部材100をガスセンサ1に組み付ける際に外筒3の加締部35に係止させる部位であり、それぞれ第1掛留部130,135、第2掛留部140,145および第3掛留部150,155から構成される。
【0060】
第1掛留部130,135は腕部120,125の先端部121,126からそれぞれ下側(通気部110の厚み方向底面側)へ向けて延びるように延設されている。また、この第1掛留部130,135から更に延設される第2掛留部140,145は、それぞれ第1掛留部130,135の延設方向先端側をガスセンサ1への組み付け時の径方向内側(通気部110を向く側)へ向けて折り曲げ、更に上側(腕部120,125の先端部121,126を向く側)に向けて折り返すように設けられている。すなわち、第1掛留部130,135および第2掛留部140,145は、それぞれ腕部120,125をそのままの板幅で延ばした形状のものを内側に折り曲げた形態をなす。そして第3掛留部150,155は、それぞれ第2掛留部140,145の延設先端において、その板幅を、ガスセンサ1への組み付け時の周方向に沿って両側へ延ばすように湾曲した板状に形成されている。
【0061】
このような構成の保護部材100は、図7,図8に示すように、通気部110を、フィルタ部材87(図1参照)の後端側にて大気連通孔91の内周を軸線方向に延ばした領域に配置させ、この通気部110で大気連通孔91を塞ぐようにして、ガスセンサ1に組み付けられる。このとき、保護部材100の腕部120,125がグロメット9の溝部93,95内に配置され、それぞれの先端部121,126は、溝部93,95を通って外方に突出されるように、外筒3の開口32の外周よりも外側に配置される。先端部121,126から延設される掛留部160,165は、まず第1掛留部130,135が外筒3の外周に沿うように軸線O方向先端側(図8における下側)へ向けて延び、第2掛留部140,145によって径方向内向きに折り返される。そして、第3掛留部150,155の先端側の端部151,156が、加締部35により形成される溝状の凹部内の後端側の壁面(先端向きとなる面)に当接する。
【0062】
ここで、軸線O方向における溝部93,95の傾斜角度と、通気部110に対する腕部120,125の傾斜角度は略同一に設定されている。このため、加締部35内に掛留部160,165が係止された状態では、溝部93,95と腕部120,125とが密接状態となる。このように、保護部材100は、外筒3の加締部35に掛留部160,165を外側から嵌め込み(外嵌めし)、腕部120,125でグロメット9を押さえるようにして、外筒3と機械接合される。換言すると、溝部93,95内に配置される腕部120,125と、加締部35に当接される第3掛留部150,155の端部151,156との間で、外筒3と一体になったグロメット9が挟み込まれることで、保護部材100が外筒3に機械接合されるのである。
【0063】
また、前述したように、外筒3の加締部35は、外筒3の外周面において径方向に凹んだ状態で周方向に一周する溝状をなしている。掛留部160,165の第3掛留部150,155の係止は軸線O方向に沿って後端側へ向けて移動される(付勢される)第3掛留部150,155の先端側の端部151,156が、加締部35の後端側の壁面(先端向きとなる面)に当接することによってなされる。従って、第3掛留部150,155は、加締部35の周方向には係止されていないこととなるが、保護部材100の腕部120,125がそれぞれグロメット9の溝部93,95内に配置されるため、溝部93,95の内壁面が腕部120,125の移動を制止するストッパーとして作用する。これにより、保護部材100の軸線O方向を中心とする回転移動が規制されるので、腕部120,125がリード線18と接触することがないのである。また、リード線18は、腕部120,125および通気部110のいずれからも1mm以上離間されているため、リード線18が曲がっても、これらとの接触による損傷を防止できる。
【0064】
このように、ガスセンサ1の外筒3に機械接合される保護部材100の通気部110は、大気連通孔91内に配置されるフィルタ部材87の後端側にて大気連通孔91の内周を軸線方向に延ばした領域に配置され、フィルタ部材87を外的要因による破損から保護する。一方で、この通気部110で大気連通孔91を塞ぐものの、通気部110の開口部115に設けられたメッシュ部材105によって、通気部110を介した大気連通孔91内の通気性が確保される。そしてフィルタ部材87によって、外筒3内への水滴等の進入が阻止されると共に大気は導入され、検出素子6の基準電極62が大気に晒されることによって検出素子6が機能し、酸素の有無の検出が行われる。
【0065】
次に、本発明に係るガスセンサの第2の実施の形態として、ガスセンサ200をその一例に、図9〜図11を参照しながら説明する。図9は、第2の実施の形態の保護部材250の斜視図である。図10は、第2の実施の形態のガスセンサ200を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。図11は、図10の1点鎖線B−Bにおいて矢視方向から見た第2の実施の形態のガスセンサ200の後端側の部分拡大断面図である。
【0066】
なお、第2の実施の形態のガスセンサ200は、第1の実施の形態のガスセンサ1に用いた保護部材100とは形態の異なる保護部材250を用いて作製されたものである。つまり、ガスセンサ200を構成する部品のうち、保護部材250以外の部品はガスセンサ1のものと同一のものが用いられている。従ってここでは保護部材250について説明し、その他の部位については説明を省略もしくは簡略化する。
【0067】
図9に示す保護部材250は、図3に示した第1の実施の形態の保護部材100とは異なり、通気部110の代わりに円形板状の被覆部260が設けられている。この被覆部260には開口が設けられておらず、円形板状の被覆部260の板面の大きさが、大気連通孔91の開口の大きさとほぼ同じになるように構成されている。被覆部260からは、その周縁から径方向外側へ向けて延びる2本の腕部270,275が対称に延設されており、それぞれの先端側に、保護部材100(図3参照)と同様の掛留部290,295が設けられている。また、掛留部290,295を構成する第1掛留部280,285は、その長さが保護部材100の第1掛留部130,135(図3参照)の長さよりも若干短く構成されている。そして、被覆部260に対する腕部270,275の傾斜角度が、保護部材100の通気部110に対する腕部120,125の傾斜角度よりも大きくなるように設定されている。なお、保護部材250が、本発明における「第2保護部材」に相当する。
【0068】
このように構成された保護部材250は、第1の実施の形態と同様に、掛留部290,295を外筒3の加締部35に係止させてガスセンサ200への取り付けが行われる。このとき、上記のように大気連通孔91の開口とほぼ同じ大きさの被覆部260は、大気連通孔91に蓋をするように配置される。このため、図10に示すようにガスセンサ200を後方側から軸線O方向(図11参照)に沿って見たときに、フィルタ部材87は被覆部260に覆われて、フィルタ部材87(図11参照)を完全に視認できない。これにより、フィルタ部材87は草木との接触や飛石等の衝突などから保護され、外部からの衝撃による破損が防止される。
【0069】
また、被覆部260に対する腕部270,275の傾斜角度が保護部材100(図3参照)のものと異なることから、図11に示すように、グロメット9の軸線O方向における溝部93,95の傾斜角度と、被覆部260に対する腕部270,275の傾斜角度との間には、差が生ずる。このため、保護部材250の腕部270,275は、グロメット9の溝部93,95に当接しながらも、被覆部260に近い側で溝部93,95との間に隙間を生ずる。そして、被覆部260が、溝部93,95の大気連通孔91側の開口よりも軸線O方向後端側に若干ずれた位置にて腕部270,275に支えられる配置構成となり、グロメット9と保護部材250との間に隙間が生ずる。従って、図10に示す、グロメット9の溝部94,96(腕部270,275が配置されていない側)と、保護部材250の被覆部260との間には、間隙210,215が生ずる。これにより、フィルタ部材87(図11参照)が大気連通孔91を介して直接外部に露出しない形態で、間隙210,215を通じ、大気連通孔91を介しての外筒3の内部と外部との通気性が確保されている。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態に限らず、各種変更が可能なことは言うまでもない。例えば、図12に示す保護部材300のように、通気部310を構成する金属板を押し込むように陥没させ、その陥没部315の一部を貫通する形態(いわゆるカマクラ形状)で開口部316を形成してもよい。なお、その他の部位(腕部および掛留部)については本実施の形態と同様であるため説明は省略する。このように、開口部316の大きさ(開口面積)を小さくして草木との接触や飛石等の衝突など、外部からの衝撃によるフィルタ部材87の破損を防止することができる。
【0071】
このようなフィルタ部材87の保護の観点からは、通気部110に形成する開口部115の開口面積が小さいほどよいが、大気連通孔91を介した通気性を確保することも必要である。こうした場合、図13に示す、保護部材320のように、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃を防ぐことができる大きさであれば、通気性確保のため開口部335の開口面積を広げてもよい。つまり、大気連通孔91よりも小さい開口を有する形態であれば良い。また、図14に示す保護部材340のように、通気部350に形成する開口部355の開口面積を小さくした場合には、開口部355の数を増やし、合計での開口面積を大きくするとよい。もちろん、開口部の形状も任意であり、図15に示す保護部材360のように、通気部370の開口部375がスリット状(本変形例では湾曲している。)をなしていても、開口部375の開口面積が十分に大きければ、上記のような大気連通孔91を介した通気性を確保することができる。
【0072】
また、図16に示す保護部材380のように、通気部390から対称に延びる腕部400,405とは異なる方向へ向けて突出する突出部410,415を形成してもよい。このように構成した保護部材380が本実施の形態のガスセンサ1に組み付けられた際には、図7で示したグロメット9の溝部93,95内に腕部400,405がそれぞれ配置される。そして突出部410,415は、それぞれ溝部94,96内に配置されることとなる。通気部390は腕部400,405に支えられるため、外部応力が加わったとき、腕部400または腕部405の一方を持ち上げたりする通気部390の傾きは生じにくい。保護部材380がガスセンサ1に組み付けられた状態において、外部応力によって腕部400,通気部390および腕部405を結ぶ方向を軸に捻り回転が生じても、本変形例では溝部94,96内にそれぞれ突出部410,415を配置させたことで、通気部390の捻り回転を抑制することができる。
【0073】
また、グロメット9は溝部93のみを有し、腕部120が溝部93内に配置されると共に、腕部125は天面99上に配置される構成としても十分に、保護部材100の周方向における回転を抑制することができる。また、腕部120,125は2つに限るものではないが、外筒3への外掛け(掛け留め)を行うためには少なくとも2つ以上あるとよい。そして溝部93〜96についても本実施の形態では4つ形成された場合を例に説明したが、溝部は1つでもよいし2つ以上であってもよく、4つに限定するものではない。
【0074】
また、本実施の形態では、保護部材100の通気部110フィルタ部材87と密着した状態のものを例として説明したが、両者間に間隙が設けられていてもよい。例えば、保護部材100の通気部110のフィルタ部材87側の面をリブ状に凹凸に形成し、フィルタ部材87と通気部110との間に間隙が設けられるようにする。その間隙内に大気が入り込むことができるように、例えばグロメット9に溝状の切り欠きを設ければ、通気部110に開口部115を設けない構成であっても十分に外筒3内に大気を導入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施の形態のガスセンサ1の構造を示す縦断面図である。
【図2】グロメット9の斜視図である。
【図3】正面、平面および左側面から見た第1の実施の形態の保護部材100の斜視図である。
【図4】保護部材100の平面図である。
【図5】保護部材100の正面図である。
【図6】保護部材100の右側面図である。
【図7】ガスセンサ1を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。
【図8】図7の1点鎖線A−Aにおいて矢視方向から見たガスセンサ1の後端側の部分拡大断面図である。
【図9】第2の実施の形態の保護部材250の斜視図である。
【図10】第2の実施の形態のガスセンサ200を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。
【図11】図10の1点鎖線B−Bにおいて矢視方向から見た第2の実施の形態のガスセンサ200の後端側の部分拡大断面図である。
【図12】変形例としての保護部材300の斜視図である。
【図13】変形例としての保護部材320の斜視図である。
【図14】変形例としての保護部材340の斜視図である。
【図15】変形例としての保護部材360の斜視図である。
【図16】変形例としての保護部材380の斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ガスセンサ
3 外筒
5 主体金具
6 検出素子
9 グロメット
18 リード線
35 加締部
56 先端係合部
64 検出部
87 フィルタ部材
91 大気連通孔
92 リード線挿通孔
93,95 溝部
97,98 連結溝部
99 天面
100 第1保護部材
110 通気部
120,125 腕部
160,165 掛留部
250 第2保護部材
260 被覆部
410,415 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、
前記検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、
当該主体金具に固定され、前記検出素子の後端側の径方向周囲を取り囲む筒状の外筒と、
前記外筒の後端側に当該外筒を塞ぐように配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、および、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能とする大気連通孔が、それぞれ前記軸線方向に延びるように形成された栓部材と、
を備えたガスセンサにおいて、
前記栓部材の前記大気連通孔を前記外筒の外部側から覆い前記フィルタ部材を保護すると共に、前記外筒に機械接合された第1保護部材であって、少なくとも前記大気連通孔を前記軸線方向に延ばした領域に、前記大気連通孔の開口よりも小さい開口を有する通気部と、
前記通気部から径方向外側に延びる複数の腕部と、
複数の当該腕部に一対一に対応して接続し、前記外筒に機械接合するための複数の掛留部と、
が形成された第1保護部材を有し、
前記栓部材は、自身の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びる溝部を有し、その溝部内に、少なくとも1つの前記腕部を配置することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第1保護部材は、前記リード線と非接触の状態で前記外筒に機械接合されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記外筒の前記後端側には、前記栓部材を固定する加締部を有し、
前記第1保護部材は、前記加締部に外嵌めにて機械接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記溝部には、前記栓部材の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びる連結溝部を有し、
複数の前記腕部のうちの2つの前記腕部は、前記連結溝部内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記第1保護部材は、前記通気部から径方向外側に向かって延びる突出部を有し、当該突出部は、前記連結溝部以外の前記溝部内に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記第1保護部材の前記掛留部は、前記腕部の延設方向における自身の先端側の部位を、径方向内側へ向けて折り返した形態となって前記加締部に機械接合されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記第1保護部材の前記通気部は、軸線方向に貫通する複数の孔を有した形態、軸線方向の開口にメッシュ状の部材を組み付けた形態、または自身に形成された凸部の側面に開口を有した形態のうちのいずれかの形態に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記第1保護部材の硬度は、前記フィルタ部材の硬度よりも硬いことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項9】
軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、
前記検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、
当該主体金具に固定され、前記検出素子の後端側の径方向周囲を取り囲む筒状の外筒と、
前記外筒の後端側に当該外筒を塞ぐように配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、および、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能にする大気連通孔が、それぞれ軸方向に延びるように形成された栓部材と、
を備えたガスセンサにおいて、
自身と前記栓部材との間隙を介して前記大気連通孔内と外部との通気を許容する第2保護部材であって、
前記ガスセンサを後方側から軸線方向に見たときに、前記フィルタ部材が視認できないように前記フィルタ部材を覆う被覆部と、
前記被覆部から径方向外側に延びる複数の腕部と、
複数の当該腕部に一対一に対応して接続し、前記外筒に機械接合するための複数の掛留部と、
が形成された第2保護部材を備え、
前記栓部材は、自身の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びる溝部を有し、その溝部内に、少なくとも1つの前記腕部を配置することを特徴とするガスセンサ。
【請求項10】
前記第2保護部材は、前記リード線と非接触の状態で前記外筒に機械接合されていることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記外筒の前記後端側には、前記栓部材を固定する加締部を有し、
前記第2保護部材は、前記加締部に外嵌めにて機械接合されていることを特徴とする請求項9または10に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記溝部には、前記栓部材の後端向き面側にて前記大気連通孔を起点にして径方向外側に向かって対称に延びる連結溝部を有し、
複数の前記腕部のうちの2つの前記腕部は、前記連結溝部内に配置されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記第2保護部材は、前記被覆部から径方向外側に向かって延びる突出部を有し、当該突出部は、前記連結溝部以外の前記溝部内に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記第2保護部材の前記掛留部は、前記腕部の延設方向における自身の先端側の部位を、径方向内側へ向けて折り返した形態となって前記加締部に機械接合されることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記第2保護部材の硬度は、前記フィルタ部材の硬度よりも硬いことを特徴とする請求項9乃至14のいずれかに記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−292460(P2008−292460A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65726(P2008−65726)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】