説明

ガスセンサ

【課題】製造工程の簡素化と信頼性の向上を図ることができるジュール熱を利用するガスセンサを提供すること。
【解決手段】ガス導入口8aを供えたケース8にガス検知素子1と温度検出素子5とを収容したガスセンサにおいて、ガス検知素子1がその両端を第一と第二のステー3,3の上端に固定され、また温度検出素子5が、チップ型素子でケース8の底部の蓋を構成する基板6に実装され、ガス検知素子1が収容されている空間と、温度検出素子5が収容されている空間とが連通孔4bを介して接続され、かつ非見通し状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール熱による熱とガスとの作用により電気信号を発生する検出素子と、温度補償素子とを同一のケースに収容したガス検出器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュール熱によりガスとの接触に基づいて電気信号を出力するガス検出素子、例えば接触燃焼式ガス検出素子や半導体ガス検出素子は、特許文献1に見られるようにガス流入口を有するケース内に、温度補償のための補償素子とを、ケースに設けられたリード部を兼ねるステーに固定して構成されている。
【0003】
補償素子は、基本的にはガス検出素子と同一構造、例えば接触燃焼式ガス検出素子用のものに例を採ると、触媒作用が抑制されているだけであるから発熱用の電力が必要となる。
【0004】
また、ガス検出素子のステーへの固定は、信頼性を確保するためスポット溶接が使用されている。しかしサイズが小さいため、ステーの端面に2つの電極を接触させて電流を流すことができないため、ステーの上端(素子を固定する面)とステーの下端とにスポット溶接装置の電極を接触させる必要があり、通電距離が長くなり、余分な発熱を招くという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4024210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは安価で、電力消費を抑えることができるガスセンサを提供することである。
本発明の他の目的は、製造工程の簡素化と信頼性の向上を図ることができるジュール熱を利用するガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を達成するために請求項1の発明は、ガス導入口を供えたケースにガス検知素子と温度検出素子とを収容したガスセンサにおいて、ガス検知素子がその両端を第一と第二のステーの上端に固定され、また前記温度検出素子が、チップ型素子で前記ケースの底部の蓋を構成する基板に実装され、前記ガス検知素子が収容されている空間と、前記温度検出素子が収容されている空間とが連通孔を介して接続され、かつ非見通し状態である。
【0008】
また請求項2の発明は、前記ステーが、上端と、前記上端から所定の距離を隔てた位置にそれぞれ第一、及び第二のフランジが形成され、かつ前記第一のフランジの表面側、及び前記第二のフランジの下端側とを露出させるように高分子材料の基台で固定され、ガス検知素子を構成するリード部がスポット溶接されて固定され、また前記温度検出素子が、チップ型素子からなり、前記ケースの底部の蓋を構成する中継基板に実装されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、温度検出素子により温度補償機能を持たせることができるため、安価に構成できる。また、補償素子のように発熱させることが不要であるため、電力消費を抑えることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、確実なスポット溶接が可能となるばかりでなく、衝撃による振動の振幅を抑制でき、温度検出素子のステーへの固着が不要となり製造工程の簡素化と信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のガスセンサの一実施例を示す組み立て分解図ものである。
【図2】同上センサの要部を示す図である。
【図3】ステー本体の一実施例を示す図である。
【図4】図(a)、(b)は、それぞれステーと素子とのスポット溶接の状態を示す図と要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例を示すものであって、ジュール熱により所定温度まで発熱してガスとの作用により電気信号を発生するガス検出素子1は、例えば接触燃焼式ガス検出素子や半導体ガス検出素子で、その両端のリード部1a,1aが、高分子製の基台2にモールドされた第一、第二のステー3,3の上端に導通状態を維持するようにスポット溶接により固定されている。
【0013】
スペーサ4は、図2に示したように一端が開口した有底の筒状体として構成されており、基台2に固定されたガスセンサ1をこの空間の一半側に収容できるように対応する領域にステー3,3が貫通する窓4aが形成され、また他半側には後述する温度検出素子5の収容空間と連通するように貫通孔4bが設けられ、さらにこれらの境界に仕切り4cが設けられている。
【0014】
スペーサ4は、その底板4dと下端との間に外装ケースの蓋を兼ねる中継基板6に実装された温度検出素子5を収容できる程度の空間が生じるように底板4dがスペーサ4の下端4eからオフセットして設けられている。
【0015】
中継基板6の、スペーサ4の底板4dの貫通孔4bと対向する箇所には前述の温度検出素子5、例えばチップ型サーミスタが固定され、また中継基板6には第三のステー7が固定されている。なお、符号6aは、ステー3が貫通する通孔を示す。
第三のステー7は、中継基板6に形成された図示しない導電パターンにより温度検出素子5の一端に導通している。なお、温度検出素子5の他端は第一、第二のステー3,3のアース側のものに導通している。
【0016】
外装ケース8、この実施例ではフレームアレスタにより構成されており、一端に開口8aを、他端にガス取入れ口8bを備えた筒状体で、上述の各要素を収容した状態でこれの内径程度の外径の中継基板6を挿入して封をされ、接着剤により一体に固定されている。
【0017】
ところでガス検出素子1を固定するステー3は、図3に見られるように検出素子1を固定する幅広面からなる第一のフランジ3aと、この第一のフランジ3aら所定の距離、基台2の厚みより若干短めの距離を置いた位置に第二のフランジ3bが形成されていて、第一のフランジ3aの上面と略同一か若干下側から第二のフランジ3bの上面まで基台2を形成する高分子材料でモールドされている。
このように第一、第二のフランジ3a、3bはモールド部2aで包み込まれているのでステー3は、基台2との位置ずれや脱落が確実に防止される。
【0018】
このように基台2に固定されたステー3は、その第二のフランジ3bの径よりも細く、かつステー本体より大径の孔10aを有する電極10(図4)の孔10aにセットし、上部のフランジ3aの上面にガス検出素子1のリード1aをセットして上部電極11で押圧して通電すると、第二のフランジ3bが上面からの圧力を受けて下部電極10と確実に接触導通するため、スポット溶接が可能となる。
【0019】
このような形態での溶接のための通電は、他方の電極をステー3の下端に電極を当接する従来の方法に比較して、通電経路を大幅に短くできるので、ステー3の発熱を抑えることができる。
【0020】
このように構成されたガスセンサは、外装ケース8のガス導入口8aから可燃性ガスが流入すると、ガスとの相互作用により検知素子1の温度が変化し、電気抵抗が変化する。
【0021】
一方、外装ケース8の空間の気体は貫通穴4bから温度検出素子5に流れ込んで温度が検出される。もとより温度検出素子5は、発熱を伴うガス検出素子1とは仕切り4c及び底板4dによりガス検出素子1からの輻射線が遮蔽されているため、ガス検出素子1が収容されている空間の空気の温度を正確に検出することになる。
【0022】
ところで、ガス検出素子1のリード1aはステー3に比較して熱伝導率の低い高分子製の基板2に接触していてステー間の距離よりも短かくなっているから、ガスセンサ1に振動や衝撃が作用してもリード1aが基板2より詳細には第一、第二のフランジ3a、3bを包み込むように形成されたモールド部2aで支持されて、振動振幅が抑制され断線や感応部の破損を防止できる。
【符号の説明】
【0023】
1 ガス検出素子
2 基台
3 ステー
4 スペーサ
5 温度検出素子
6 中継基板
7 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入口を供えたケースにガス検知素子と温度検出素子とを収容したガスセンサにおいて、
前記ガス検知素子がその両端を第一と第二のステーの上端に固定され、また前記温度検出素子が、チップ型素子で前記ケースの底部の蓋を構成する基板に実装され、前記ガス検知素子が収容されている空間と、前記温度検出素子が収容されている空間とが連通孔を介して接続され、かつ非見通し状態にあるガスセンサ。
【請求項2】
前記ステーが、上端と、前記上端から所定の距離を隔てた位置にそれぞれ第一、及び第二のフランジが形成され、かつ前記第一のフランジの表面側、及び前記第二のフランジの下端側とを露出させるように高分子材料の基台で固定され、
ガス検知素子を構成するリード部がスポット溶接されて固定され、
また前記温度検出素子が、チップ型素子からなり、前記ケースの底部の蓋を構成する中継基板に実装されている請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第一のフランジの上端面が前記基台よりも、スポット溶接用電極の当接時に前記ステーの上端面に接触できる程度に突出している請求項1に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−185115(P2012−185115A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49983(P2011−49983)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】