説明

ガスタービンの制御装置及びその方法並びに発電プラント

【課題】温度上昇による機器損傷を防止しつつ、周波数変動に対して軸出力を速やかに追従させ、Grid Code要求レスポンスを満足させることのできるガスタービンの制御装置及びその方法並びに発電プラントを提供することを目的とする。
【解決手段】系統周波数が低下する等、ガスタービン出力を要求負荷に追従して速やかに上昇させなければならない期間において、温調制御に基づいて決定されるブレードパス制御信号および排ガス制御信号をそれらの値が大きくなる方向に補正することにより、温調制御に基づく燃焼器2への燃料流量制御を回避させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンを備える発電プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンを用いた発電プラントにおいて、電力系統に周波数変動が生じた場合に、その変化に応じてガスタービンへの燃料供給量を制御し、電力系統における系統周波数を安定させることが行われている。例えば、系統周波数が低下した場合には、規定の回転数を維持するためにガスタービンへの燃料供給量を増加させ、ガスタービン出力を上昇させることが行われる。
【0003】
このように周波数変動に対応した運転制御を行う先行技術として、例えば、特開2004−27848号公報(特許文献1)、特開2003−239763号公報(特許文献2)が知られている。特許文献1には、系統周波数の異常が検出された場合に、通常制御と相違した系統周波数の回復を主体とした制御に切り替える技術が示されている。また、特許文献2には、系統周波数の変化率が制限内となるように調整するガバナフリー制御の手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−27848号公報
【特許文献2】特開2003−239763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近、欧州地区におけるGrid Code(系統運用規則)として、系統周波数の変動に対する負荷追従性が100%負荷または(100%+α)負荷まで要求されてきており、また国内でも同様の動きがある。
このような規則に準拠しようとした場合、高負荷帯における周波数低下発生時には、所定の割合で負荷を上昇させる負荷要求が出され、この負荷要求に速やかに追従するようにガスタービンの軸出力を増加させることが要求される。
しかしながら、要求負荷の上昇に伴いガスタービンの軸出力を急激に上昇させると、燃焼温度の上昇(ガスタービン入口温度)や排ガス温度の上昇が発生し、機器保護の観点から温調制御が作動する事象が発生する。このように、温調制御が作動すると、ガスタービンの軸出力が抑制され、要求負荷に対するガスタービンの軸出力の追従性が悪化することが懸念される。
【0006】
また特に、蒸気タービンとガスタービンとが同軸で連結されている一軸のGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)発電設備では、蒸気タービンの出力増加が遅れるため、Grid Codeで規定された軸出力を満足するためには、蒸気タービン出力の不足分をガスタービンの過負荷運転で補う必要があるため、軸出力および温調の両観点からガスタービンにとっては更に厳しい条件が課せられることとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、温度上昇による機器損傷を防止しつつ、周波数変動に対して軸出力を速やかに追従させ、Grid Code要求レスポンスを満足させることのできるガスタービンの制御装置及びその方法並びに発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御装置であって、前記燃焼器に供給する空気流量を制御する空気流量制御手段と、前記燃焼器に供給する燃料流量を制御する燃料流量制御手段とを備え、前記空気流量制御手段は、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグを有効とするフラグ生成手段と、前記フラグが有効の期間において、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる空気流量設定手段とを有し、前記燃料流量制御手段は、前記発電機の出力に基づいて第1燃料供給量を決定する負荷制御手段、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて第2燃料供給量を決定するガバナ制御手段と、排ガス温度制御手段と、ブレードパス温度制御手段とを有し、前記排ガス温度制御手段は、前記ガスタービンの排ガス温度に基づいて第3基準燃料供給量を決定する排ガス制御信号生成手段と、前記フラグが有効の場合に、前記第3基準燃料供給量に所定の第1補正量を加算して、前記第3燃料供給量を得る第1補正手段とを有し、前記ブレードパス温度制御手段は、前記排ガス温度よりも前記ガスタービンに近い場所で計測されるブレードパス温度に基づいて第4基準燃料供給量を決定するブレードパス制御信号生成手段と、前記フラグが有効の場合に、前記第4基準燃料供給量に前記第1補正量よりも小さい値に設定されている所定の第2補正量を加算して、前記第4燃料供給量を得る第2補正手段とを有し、前記第1乃至第4燃料供給量の中から最も値の小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定するガスタービンの制御装置を提供する。
【0009】
このような構成によれば、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグ生成手段によりフラグが有効として生成され、これを受けて空気流量設定手段では、燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる。一般に、タービン入口温度は燃空比(燃料量/燃焼空気量の比)に比例するため、フラグが有効な場合、すなわち、要求負荷に応じてガスタービンの軸出力を速やかに増加させなければならない期間において、燃焼器に供給する燃料流量を増加させることにより、タービン入口温度を低下させることができる。これにより、タービン入口温度をオーバーシュート制限範囲内に抑えることが可能となる。
【0010】
また、更に、フラグが有効な場合には、ガスタービンから排出される温度に応じて決定される第3燃料流量および第4燃料流量をこれらの値が増加する方向に補正するので、第3燃料流量および第4燃料流量を、前記発電機の出力に基づいて決定される第1燃料供給量或いはガスタービンの回転数に基づいて決定される第2燃料供給量よりも大きな値とすることが可能となる。これにより、燃焼器に供給させる燃料流量を第1燃料供給量または第2燃料供給量に基づいて決定することができ、燃焼器に供給する燃料流量が温度制御によって干渉されることを回避することができる。この結果、系統周波数が低下した場合等において、ガスタービンの軸出力を要求負荷に追従して速やかに上昇させることが可能となる。
【0011】
また、排ガス温度は、ブレードパス温度よりもガスタービンから離れた位置で計測される。したがって、排ガス温度に基づく燃料流量制御は、ブレードパス温度に基づく燃料流量制御に比べて制御の応答性が悪い。このため、排ガス温度に基づく温調制御は信頼性が低く、ブレードパス温度に基づく温調制御に比べて、ガスタービンの軸出力制御に干渉する可能性が高いといえる。このような事象に対処するために、第3基準燃料供給量を補正する第1補正値を、第4基準燃料供給量を補正する第2補正値よりも大きな値に設定しておくことで、第3燃料供給量を積極的に増加させ、この第3燃料供給量に基づいて燃焼器への燃料供給量が制御されることを確実に回避させることとしている。
【0012】
また、逆に、第2補正値については、第1補正値よりも小さな値に設定されているので、第4燃料供給量に基づいて燃焼器への燃料供給量が制御される可能性はある。これにより、排ガス温度に基づく温調制御よりも精度の高いブレードパス温度に基づく温調制御については、ガスタービンの軸出力制御に多少影響力を残しておくので、温度上昇による機器破損等の問題についても回避することが可能となる。
なお、上記ブレードパス温度は、例えば、ガスタービン最終段動翼出口でのガス温度である。
【0013】
上記ガスタービンの制御装置において、前記第1補正手段は、前記フラグが有効から無効になった後から所定期間経過後に、前記第3基準燃料供給量への前記第1補正量の加算を停止することとしてもよい。
【0014】
これにより、フラグが有効な期間においては、第3基準燃料供給量を第1補正量で確実に補正することが可能となる。この結果、排ガスに基づく温調制御がガスタービンの軸出力制御に干渉することを確実に防止することができる。
【0015】
本発明は、圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御装置であって、前記燃焼器に供給する空気流量を制御する空気流量制御手段と、前記燃焼器に供給する燃料流量を制御する燃料流量制御手段とを備え、前記空気流量制御手段は、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグを有効とするフラグ生成手段と、前記フラグが有効の期間において、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる空気流量設定手段とを有し、前記燃料流量制御手段は、前記発電機の出力に基づいて第1燃料供給量を決定する負荷制御手段、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて第2燃料供給量を決定するガバナ制御手段と、前記ガスタービンから排出されるガス温度に基づいて第3燃料供給量を決定するとともに、前記フラグが有効の場合には、前記第3燃料供給量が取りうる上限値を第3燃料供給量として出力する温度制御手段と、前記第1乃至第3燃料供給量の中から最も値の小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する最小値選択手段とを具備するガスタービンの制御装置を提供する。
【0016】
このような構成によれば、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグ生成手段によりフラグが有効として生成され、これを受けて空気流量設定手段では、燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる。これにより、要求負荷に応じてガスタービンの軸出力を速やかに増加させなければならない期間において、燃焼器に供給する燃料流量を増加させることができ、タービン入口温度を低下させることができる。この結果、タービン入口温度をオーバーシュート制限範囲内に抑えることが可能となる。
【0017】
また、更に、フラグが有効な場合には、ガスタービンから排出される温度に応じて決定される第3燃料流量にその上限値を設定するので、第3燃料流量を前記発電機の出力に基づいて決定される第1燃料供給量或いはガスタービンの回転数に基づいて決定される第2燃料供給量よりも大きな値とすることが可能となる。これにより、燃焼器に供給させる燃料流量を第1燃料供給量または第2燃料供給量に基づいて決定することができ、燃焼器に供給する燃料流量が温度制御によって干渉されることを回避することができる。この結果、系統周波数が低下した場合等において、ガスタービンの軸出力を要求負荷に追従して速やかに上昇させることが可能となる。
【0018】
上記ガスタービンの制御装置において、前記温度制御手段は、前記フラグが有効から無効になった後から所定期間経過後に、前記第3燃料供給量に前記上限値以外の値を設定することとしてもよい。
【0019】
これにより、フラグが有効な期間においては、確実に、第3燃料供給量をその上限値に設定することができ、排ガスに基づく温調制御がガスタービンの軸出力制御に干渉することを確実に防止することができる。
【0020】
上記ガスタービンの制御装置において、前記圧縮機の前段にIGV調整弁が備えられており、前記IGV調整弁の弁開度を調整することにより、前記燃焼器に供給する空気流量を制御する場合において、前記フラグ生成手段は、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記IGV調整弁の開度が標準全開の状態にある場合にも、前記フラグを有効としてもよい。
【0021】
これにより、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記IGV調整弁の開度が標準全開の状態にある場合にも、温調制御によるガスタービン軸出力への干渉を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明は、圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とが供給される燃焼器と、前記燃焼器で発生する燃焼ガスによって回転するガスタービンと、前記ガスタービンの回転により発電する発電機と、上記いずれかのガスタービンの制御装置とを具備する発電プラントを提供する。
【0023】
本発明は、圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御方法であって、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる第1過程と、前記発電機の出力に基づいて決定された第1燃料供給量、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて決定された第2燃料供給量、前記ガスタービンの排ガス温度に基づいて決定された第3燃料供給量、前記排ガス温度よりも前記ガスタービンに近い場所で計測されるブレードパス温度に基づいて決定された第4燃料供給量の中から最も小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する第2過程とを含み、前記第1過程により前記燃焼器に供給する空気流量が過渡的に増加されている期間において、前記第2過程では、前記第3燃料供給量に第1補正量を加算し、かつ、前記第4燃料供給量に前記第1補正量よりも小さい値に設定されている第2補正量を加算することにより、第3燃料供給量及び前記第4燃料供給の値を増加させるガスタービンの制御方法を提供する。
【0024】
本発明は、圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御方法であって、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる第1過程と、前記発電機の出力に基づいて決定された第1燃料供給量、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて決定された第2燃料供給量、前記ガスタービンから排出されるガス温度に基づいて決定された第3燃料供給量の中から最も小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する第2過程とを含み、前記第1過程により前記燃焼器に供給する空気流量が過渡的に増加されている期間において、前記第2過程では、前記第3燃料供給量として前記第3燃料供給量が取りうる上限値が設定されるガスタービンの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、温度上昇による機器損傷を防止しつつ、周波数変動に対して軸出力を速やかに追従させ、Grid Code要求レスポンスを満足させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発電プラントのガスタービン周辺における主要構成を示した図である。
【図2】図1に示した空気流量制御部の概略構成を示したブロック図である。
【図3】図2に示したIGV制御フラグ生成部の概略構成を示したブロック図である。
【図4】図2に示したIGV制御部の概略構成を示したブロック図である。
【図5】IGV制御部が備える各部で参照されるテーブルの例を示した図である。
【図6】図1に示した燃料流量制御部の概略構成を示したブロック図である。
【図7】図6に示した温度制御器が備えるブレードパス温度制御器の概略構成を示したブロック図である。
【図8】図6に示した温度制御器が備える排ガス温度制御器の概略構成を示したブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るガスタービン制御装置の効果を説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る排ガス温度制御器の概略構成を示したブロック図である。
【図11】排ガス温度制御器の他の構成例を示したブロック図である。
【図12】排ガス温度制御器の他の構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の第1の実施形態に係る発電プラントの一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る発電プラントのガスタービン周辺における主要構成を示した図である。
【0028】
図1に示すように、発電プラント10は、空気を圧縮して出力する圧縮機1、圧縮機1からの圧縮空気と燃料配管を経て供給される燃料とを混合燃焼し、燃焼ガスを出力する燃焼器2、燃焼器2からの燃焼ガスにより駆動されるガスタービン3、及びガスタービン3により駆動される発電機4を備えている。この発電プラント10において、圧縮機1、ガスタービン3、発電機4は同軸により互いに連結されている。
ガスタービン3を通った排気ガスは、排気ダクトを経て蒸気タービン(図示略)等へ送られ、排気ガスのエネルギーが活用される。
【0029】
上記燃焼器2の燃料配管には、燃料流量を調整するための燃料流量調整弁5が設けられている。この燃料流量調整弁5の開度は、後述のガスタービン制御装置20により制御される。
圧縮機1の第1段の翼の前側には、圧縮機1へ供給する空気流量を調整するための入口案内翼(以下「IGV調整弁」という。)6が設けられている。
【0030】
ガスタービン3の最終段部には最終段のブレードを通過したガスの温度(以下、「ブレードパス温度」という。)を計測するためのBPTセンサ7が設けられ、また、BPTセンサ7の配置位置より下流側の排気通路には排ガスの温度(以下、「排ガス温度」という。)を検出するためのEXTセンサ8が設けられている。上述したセンサには、例えば、熱電対等が用いられる。BPTセンサ7、EXTセンサ8により計測された温度は、ガスタービン制御装置20に与えられる。
【0031】
本実施形態に係るガスタービン制御装置20は、圧縮機1に供給する空気流量を調整する空気流量制御部(空気流量制御手段)21と、燃焼器2に供給する燃料流量を制御する燃料流量制御部(燃料流量制御手段)22とを主な構成として備えている。
【0032】
空気流量制御部21は、図2にIGV制御フラグ生成部(フラグ生成手段)31と、IGV制御部(空気流量設定手段)32とを備えている。IGV制御フラグ生成部31は、図3に示すように、電力系統の系統周波数が所定閾値α以下となって周波数低信号が有効となり、且つ発電機4の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合、または、IGV調整弁6の開度が標準全開の状態にある場合に、ANDゲート41によりIGV緊急時全開フラグFLGを有効として生成する。ここで、発電機4の出力が所定値(例えば98[%])以上の場合に高負荷帯にあるとし、また、通常運転(部分負荷運転等)時におけるIGV調整弁6の開度全開状態(例えば0[度]または−4[度])を標準全開の状態とする。
【0033】
IGV制御部32は、IGV調整弁6のアクチュエータへのIGV開度指令を生成する制御部であり、例えば、図4に示すように、基準指令生成部42、指令補正部43、変化率制限部44を主な構成として備えている。
基準指令生成部42は、基本的には、発電機出力(GT出力)に基づいてIGV開度を設定するものであり、乗算器51、テーブル関数器(FX1)52、リミッタ53、補正関数器(FX2)54および制限関数器(FX3)55を備えている。
【0034】
入力されたGT出力はフィルタを介して乗算器51に入力される。また、乗算器51には、テーブル関数器(FX2)54において生成されGT出力補正係数K2が入力され、このGT出力補正係数K2がGT出力に乗算されて、GT出力が補正される。ここで、テーブル関数器(FX2)54において生成されるGT出力補正係数K2は、例えば、図5(b)に示すような圧縮機入口温度に対応した関係に基づき決定される。
【0035】
乗算器51においてGT出力補正係数K2によって補正されたGT出力は、テーブル関数器(FX1)52に入力される。テーブル関数器(FX1)は、例えば、図5(a)に示すようなGT出力とIGV開度とが対応付けられたテーブルを有しており、このテーブルから入力されたGT出力に対応するIGV開度を取得し、このIGV開度を制限関数器(FX3)55に出力する。制限関数器(FX3)55は、例えば、図5(c)に示すような圧縮機入口温度とIGV最大開度との関係を有しており、この関係に基づいてIGV最大開度M1を生成し、テーブル関数器(FX1)52で生成されたIGV開度がIGV最大開度M1を超えないように制限する。制限関数器(FX3)55の出力は、指令補正部43に出力される。
【0036】
指令補正部43は、基準指令生成部42によって生成されたIGV開度指令に対して、IGV緊急時全開フラグFLGに基づく加算量を加えて、IGV開度指令を補正する。具体的には、指令補正部43は、加算器56、信号発生器(SG1)57、信号発生器(SG2)58、信号切換器59、レートリミッタ60を備えている。
信号切換器59は、信号発生器(SG1)57で生成された信号と信号発生器(SG2)58で生成された信号とをIGV緊急時全開フラグFLGに応じて切り換える。信号切換器59によって選択された信号はレートリミッタ60を介して加算器56に送られ、加算器56において基準指令生成部42によって生成されたIGV開度指令(通常運転時におけるIGV開度指令)に加算される。
【0037】
例えば、信号発生器(SG1)57に「0」を、信号発生器(SG2)58に「−8;緊急時全開状態」を設定しておき、IGV緊急時全開フラグFLGが有効になったときには、通常運転時のIGV開度指令に信号発生器(SG2)58の値を加算して、強制的に緊急時全開状態となるようにしている。
【0038】
変化率制限部44は、指令補正部43によって補正されたIGV開度指令の変化率を制限するものであり、変化率制限器61、ORゲート62、信号発生器(SG3)63、信号発生器(SG4)64、及び信号切換器65を備えている。
変化率制限部44において、負荷遮断フラグとIGV緊急時全開フラグFLGとの論理和信号がORゲート62から信号切換器65に入力される。信号切換器65は、信号発生器(SG3)63及び信号発生器(SG4)64により発生された信号を、ORゲート62からの信号に応じて切り換え、これを変化率制限器61に供給してIGV開度の変化率制限値を変える。ここで、信号発生器(SG3)63には通常時の変化率制限値(例えば、400[%/分])が、また信号発生器(SG4)64には負荷遮断時の変化率制限値(例えば、3000[%/分])が、それぞれ設定されている。すなわち、IGV緊急時全開フラグFLGが有効になった時には、負荷遮断時の変化率制限値が適用されることとなる。なお、上記レートリミッタ60は、この変化率制限器61にその機能を持たせて、削除しても良い。
【0039】
このようにして設定されたIGV開度指令は、例えば、図1のIGV調整弁6の弁開度を調整するアクチュエータに与えられ、このIGV開度指令に応じたIGV調整弁6の弁開度制御が実現される。
【0040】
次に、ガスタービン制御装置20が備える燃料流量制御部21について図を参照して説明する。燃料流量制御部21は、図6に示すように、負荷制御器(負荷制御手段)11、ガバナ制御器(ガバナ制御手段)12、温度制御器13、及び最小値選択器(最小値選択手段)14を備えて構成されている。
負荷制御器11は、発電機出力を入力信号として取得し、発電機出力を目標値に一致させるように燃料流量を制御する負荷制御信号LDCSOを算出する。例えば、負荷制御器11は、発電機出力と目標出力との差分に対して比例積分(PI)演算を行い、この結果を負荷制御信号LDCSOとして出力する。
【0041】
ガバナ制御器12は、ガスタービン3の回転速度又は回転数を入力信号として取得し、ガスタービン3の回転速度又は回転数を目標値に一致させるように燃料流量を制御するガバナ制御信号GVCSOを算出する。例えば、ガバナ制御器12は、ガスタービン3の回転速度、言い換えれば発電機4の回転速度と予め設定されているGV設定値との差分に対して比例積分(PI)演算を行い、この結果をガバナ制御信号GVCSOとして出力する。
【0042】
温度制御器13は、ブレードパス温度制御器(ブレードパス温度制御手段)15(図7参照)と排ガス温度制御器(排ガス温度制御手段)16(図8参照)とを備えている。
ブレードパス温度制御器15は、図7に示すように、ブレードパス制御信号BPCSOを算出するBP制御信号生成部(ブレードパス制御信号生成手段)70と、BP制御信号生成部70によって生成されたブレードパス制御信号BPCSOを補正する信号補正部(第2補正手段)71とを備えている。
BP制御信号生成部70は、BPTセンサ7から通知されるブレードパス温度を入力信号として取得し、ブレードパス温度を目標値に一致させるように燃料流量を制御する。例えば、BP制御信号生成部70は、ブレードパス温度とブレードパス温度設定値と予め設定されているブレードパス設定値との差分に対して比例積分(PI)演算を行い、この結果をブレードパス制御信号BPCSOとして出力する。
【0043】
信号補正部71は、第1信号(例えば、0)を発生する信号発生器(SG5)72と、第2信号(例えば、+2)を発生する信号発生器(SG6)73と、信号発生器(SG5)72と(SG6)73とをIGV緊急時全開フラグFLGが有効か無効かに応じて切り替える信号切換器74と、加算器75とを備えている。このような構成により、IGV緊急時全開フラグFLGが無効な場合には、信号切換器74により信号発生器(SG5)72の第1信号が選択され、加算器75で第1信号がBP制御信号生成部70によって生成されたブレードパス制御信号BPCSOに加算される。このとき、第1補正値は「0」に設定されているので、IGV緊急時全開フラグFLGが無効な場合には、BP制御信号生成部70によって生成されたブレードパス制御信号BPCSOが補正後のブレードパス制御信号BPCSO´としてそのまま出力される。
【0044】
これに対し、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、信号切換器74により信号発生器(SG6)73の第2信号が選択され、加算器75で第2信号がBP制御信号生成部70によって生成されたブレードパス制御信号BPCSOに加算される。これにより、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、BP制御信号生成部70によって生成されたブレードパス制御信号BPCSOに、第2信号が加算されることにより増加された補正後のブレードパス制御信号BPCSO´が出力される。
【0045】
排ガス温度制御器16は、図8に示すように、排ガス制御信号EXCSOを算出するEX制御信号生成部(排ガス制御信号生成手段)80と、EX制御信号生成部80によって生成された排ガス制御信号EXCSOを補正する信号補正部(第1補正手段)81とを備えている。
EX制御信号生成部80は、EXセンサ8から通知される排ガス温度を入力信号として取得し、排ガス温度を目標値に一致させるように燃料流量を制御する。例えば、EX制御信号生成部80は、排ガス温度と予め設定されている排ガス設定値との差分に対して比例積分(PI)演算を行い、この結果を排ガス制御信号EXCSOとして出力する。
【0046】
信号補正部81は、第3信号(例えば、0)を発生する信号発生器(SG7)82と、第4信号(例えば、+2)を発生する信号発生器(SG8)83と、信号発生器(SG7)82と(SG8)83とをIGV緊急時全開フラグFLGが有効か無効かに応じて切り替える信号切換器84と、加算器85とを備えている。
【0047】
ここで、信号発生器(SG8)83が発生する第4信号は、ブレードパス温度制御器15が備える信号発生器(SG6)73が発生する第2信号よりも大きな値に設定されている。
【0048】
このような構成により、IGV緊急時全開フラグFLGが無効な場合には、信号切換器84により信号発生器(SG7)82の第3信号が選択され、加算器85で第3信号がEX制御信号生成部80によって生成された排ガス制御信号EXCSOに加算される。このとき、第3信号は0に設定されているので、IGV緊急時全開フラグFLGが無効な場合には、EX制御信号生成部80によって生成された排ガス制御信号EXCSOが補正後の排ガス制御信号EXCSO´としてそのまま出力される。
【0049】
これに対し、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、信号切換器84により信号発生器(SG8)83の第4信号が選択され、加算器85で第4信号がEX制御信号生成部80によって生成された排ガス制御信号EXCSOに加算される。これにより、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、EX制御信号生成部80によって生成された排ガス制御信号EXCSOに、第4信号が加算されることにより増加された補正後の排ガス制御信号EXCSO´が出力される。
【0050】
上記負荷制御器11により算出された負荷制御信号LDCSO、ガバナ制御器12により算出されたガバナ制御信号GVCSO、温度制御器13により算出されたブレードパス制御信号BPCSO´、及び排ガス制御信号EXCSO´は、図6に示すように、最小値選択器14に与えられ、最も低値の制御信号が選択され、燃料流量指令CSOとして図1に示した燃料流量調整弁5へ与えられる。そして、上記燃料流量指令CSOに基づいて燃料流量調整弁5の開閉が調整されることにより、最適な流量の燃料が燃焼器2へ供給されることとなる。
【0051】
以上説明してきたように、本実施形態に係る発電プラント10及びガスタービン制御装置20によれば、例えば、電力系統の系統周波数が低下し、所定閾値α以下となった場合には、ガスタービン制御装置20の空気流量制御部21が備えるIGV制御フラグ生成部31によりIGV緊急時全開フラグFLGが有効として生成されることになる。これを受けてIGV制御部32では、IGV開度指令が強制的に緊急時全開状態の値に設定され、IGV調整弁6の開度は緊急時全開状態となる。
【0052】
一般に、タービン入口温度は燃空比(燃料量/燃焼空気量の比)に比例することから、IGV調整弁6が開く方向にIGV開度を変化させれば、圧縮機1の吸気流量は増加し燃焼空気量が増加するので、燃空比、即ちタービン入口温度は低下する。また一方、「タービン出力=タービン通過流量×タービン熱落差×効率」の関係があり、IGV調整弁6が開く方向にIGV開度を変化させれば、圧縮機1の吸気流量が増加してタービン通過流量も増加するので、タービン入口温度低下による熱落差以上にタービン通過流量の増大が寄与すれば発電機4の出力は増加することになる。このため、タービン入口温度をオーバーシュート制限範囲内に抑えると共に、ガスタービンの軸出力も増加させることができるという効果が得られる。
【0053】
更に、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、図9に示すように、ブレードパス制御信号BPCSOの値および排ガス制御信号EXCSOの値を、これらの値が増加する方向に補正するので、最小値選択器14においてブレードパス制御信号BPCSO´および排ガス制御信号EXCSO´が選択されることを回避することが可能となる。
これにより、系統周波数が低下するなどにより、ガスタービンの軸出力を上昇させなければならい期間において、ガスタービンへ供給される燃料流量を温調制御によって抑制することを回避することができ、ガスタービンの出力を負荷要求に追従して速やかに増加させることが可能となる。
【0054】
また、排ガス温度を計測するEXTセンサ8は、ブレードパス温度を計測するBPTセンサよりも排ガスの排気通路において下流側に設けられている。このため、計測センサ、流動、ダクトの熱容量等の原因により、排ガス温度に基づく温調制御は、ブレードパス温度に基づく温調制御に比べて制御の応答性が悪い。このため、排ガス温度に基づく温調制御は、ブレードパス温度に基づく温調制御に比べて、ガスタービンの軸出力制御に干渉する可能性が高いといえる。本実施形態に係る発電プラント10及びガスタービン制御装置20によれば、上述のように、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合、すなわち、電力系統に周波数変動が発生し、ガスタービンの軸出力を要求出力に速やかに追従させなければならいような場合に、ブレードパス温度制御器15で用いられる第2信号よりも更に大きな値に設定されている第4信号を用いて、積極的に排ガス制御信号EXCSOを増加させる。これにより、後段の最小値選択器14において排ガス制御信号EXCOS´が選択されることを確実に防止することができ、排ガス温度に基づく温調制御によりガスタービンの軸出力の上昇が抑制されることを確実に防止することが可能となる。
【0055】
また、これに対し、ブレードパス温度制御器15で用いられる第2信号は、上記第4信号に比べて小さめに設定されているので、後段の最小値選択器14において、ブレードパス制御信号BPCSO´が選択される可能性を残している。これにより、排ガス温度に基づく温調制御よりも精度の高いブレードパス温度に基づく温調制御については、その機能を有効としておくことが可能となる。このように、温調制御についてもガスタービンの軸出力制御に多少影響度を残しておくので、温度上昇による機器破損等の問題についても回避することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、ブレードパス温度制御器15および排ガス温度制御器16において用いられる第1信号乃至第4信号を固定値として取り扱ったが、これら第1信号乃至第4信号の持たせ方については、第4信号が常に第2信号よりも大きな値に設定されるような構成とされていれば、その他の設定については特に限定されない。例えば、固定値ではなく、IGV調整弁6の弁開度に応じた関数を各信号発生器に持たせておき、この関数に基づいて信号値を決定することとしてもよい。
【0057】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る発電プラント及びガスタービン制御装置について説明する。本実施形態では、温調制御器13が備える排ガス温度制御器の構成が上述した第1の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る排ガス温度制御器16−1について、図10を参照して説明する。
【0058】
図10は、本実施形態に係る排ガス温度制御器16−1の概略構成を示した図である。図10に示すように、排ガス温度制御器16−1は、排ガス制御信号EXCSOを算出するEX制御信号生成部80と、排ガス制御信号EXCSOの上限値EXCSOmaxを発生させる信号発生器(SG9)86と、排ガス制御信号EXCSOと上限値EXCSOmaxとをIGV緊急時全開フラグFLGが有効か無効かに応じて切り替える信号切換器87とを備えている。EX制御信号生成部80は、第1の実施形態と同様の構成である。
【0059】
このような構成により、IGV緊急時全開フラグFLGが無効な場合には、EX制御信号生成部80で生成された排ガス制御信号EXCSOが信号切換器87により選択されて、図6の最小値選択器14に出力される。また、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、信号発生器(SG9)86で発生された排ガス制御信号EXCSOの上限値EXCSOmaxが信号切換器87により選択されて、図6の最小値選択器14に出力される。
【0060】
このように、本実施形態に係る発電プラントおよびガスタービン制御装置によれば、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な場合には、排ガス制御信号EXCSOを上限値EXCSOmaxに設定するので、最小値選択器14において排ガス制御信号EXCSOmaxが選択されることを確実に回避することができる。これにより、周波数変動などにより、ガスタービンの出力を上昇させなければならい期間において、ガスタービン3へ供給される燃料流量を排ガス温度に基づく温調制御によって抑制することを回避することができ、ガスタービン3の出力を負荷要求に追従して速やかに増加させることが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、IGV緊急時全開フラグFLGが有効である期間において、排ガス制御信号EXCSOを上限値EXCSOmaxに設定していたが、これに代えて、例えば、IGV緊急時全開フラグFLGが有効となった時点からタイマを設定し、このタイマがカウントアップ(カウントダウン)するまでの所定期間において、排ガス制御信号EXCSOを上限値EXCSOmaxに設定することとしてもよい。ここで、タイマの計時期間は、IGV緊急時全開フラグFLGが通常有効状態となっている期間よりも長めに設定されている。また、IGV緊急時全開フラグFLGが有効となった時点でタイマを作動させるのではなく、IGV緊急時全開フラグFLGが有効から無効となった時点でタイマの計時を開始することとしてもよい。例えば、IGV緊急時全開フラグFLGが有効から無効に切り替わった後、1分経過後に信号切換器87が選択する信号を切り替えることとしてもよい。このようにすることで、IGV緊急時全開フラグFLGが有効になっている全期間に渡って、確実に排ガス制御信号の上限値EXCSOmaxを出力することが可能となる。
【0062】
なお、上記第2の実施形態においては、温調制御器13がブレードパス温度制御器15(図7参照)と排ガス温度制御器16−1とを備える場合について説明したが、例えば、発電プラントによっては、ブレードパス温度と排ガス温度とを区別していない場合がある。このような場合であっても、IGV緊急時全開フラグFLGが有効な期間において、温調制御を行う制御器、例えば、ガスタービン3から出力される排ガスの温度に基づいて燃料供給量を決定するための制御信号を設定する制御手段から出力される制御信号(本実施形態においては、ブレードパス制御信号BPCSOや排ガス温度制御信号EXCSOに相当)を上限値に切り替えることとすればよい。
【0063】
また、上記第1の実施形態、第2の実施形態においては、排ガス温度に基づく温調制御に応答遅れ等があることから、排ガス温度に基づく温調制御を積極的に回避させるべく、排ガス制御信号EXCSOを補正したり、上限値EXCSOmaxに切り替えたりしていた。これに代えて、例えば、排ガス温度の応答遅れを補償する補償回路を温調制御器13の排ガス温度制御器内に設け、これにより排ガス温度に基づく温調制御の応答遅れを解消することとしてもよい。
【0064】
図11、図12に補償回路を設けた場合の排ガス温度制御器の内部構成の一例を示している。図11は進み位相補償回路91を設け、排ガス温度に進み位相補正を施した後に、減算器92により補償後の排ガス温度と排ガス温度設定値との差分を求め、これにPI制御器93によるPI制御を施すことにより排ガス制御信号EXCSOを算出する。また、図12は、図11に示した回路に、更にむだ時間補償回路94を設けたものである。
【0065】
このように、排ガス温度の応答遅れを補償する補償回路を設けることにより、温調制御の応答遅れを補償回路によって補償することが可能となる。この結果、上述した第1または第2の実施形態で述べたような排ガス制御信号EXCSOの補正または切換え処理を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 ガスタービン
4 発電機
5 燃料流量調節弁
6 IGV調整弁
7 BPTセンサ
8 EXTセンサ
10 発電プラント
11 負荷制御器
12 ガバナ制御器
13 温度制御器
14 最小値選択器
15 ブレードパス温度制御器
16,16−1 排ガス温度制御器
20 ガスタービン制御装置
21 空気流量制御部
22 燃料流量制御部
31 IGV制御フラグ生成部
32 IGV制御部
70 BP制御信号生成部
71 信号補正部
80 EX制御信号生成部
81 信号補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御装置であって、
前記燃焼器に供給する空気流量を制御する空気流量制御手段と、
前記燃焼器に供給する燃料流量を制御する燃料流量制御手段とを備え、
前記空気流量制御手段は、
系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグを有効とするフラグ生成手段と、
前記フラグが有効の期間において、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる空気流量設定手段とを有し、
前記燃料流量制御手段は、
前記発電機の出力に基づいて第1燃料供給量を決定する負荷制御手段、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて第2燃料供給量を決定するガバナ制御手段と、
排ガス温度制御手段と、
ブレードパス温度制御手段とを有し、
前記排ガス温度制御手段は、
前記ガスタービンの排ガス温度に基づいて第3基準燃料供給量を決定する排ガス制御信号生成手段と、
前記フラグが有効の場合に、前記第3基準燃料供給量に所定の第1補正量を加算して、前記第3燃料供給量を得る第1補正手段とを有し、
前記ブレードパス温度制御手段は、
前記排ガス温度よりも前記ガスタービンに近い場所で計測されるブレードパス温度に基づいて第4基準燃料供給量を決定するブレードパス制御信号生成手段と、
前記フラグが有効の場合に、前記第4基準燃料供給量に前記第1補正量よりも小さい値に設定されている所定の第2補正量を加算して、前記第4燃料供給量を得る第2補正手段とを有し、
前記第1乃至第4燃料供給量の中から最も値の小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定するガスタービンの制御装置。
【請求項2】
前記第1補正手段は、前記フラグが有効から無効になった後から所定期間経過後に、前記第3基準燃料供給量への前記第1補正量の加算を停止する請求項1に記載のガスタービンの制御装置。
【請求項3】
圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御装置であって、
前記燃焼器に供給する空気流量を制御する空気流量制御手段と、
前記燃焼器に供給する燃料流量を制御する燃料流量制御手段とを備え、
前記空気流量制御手段は、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、フラグを有効とするフラグ生成手段と、
前記フラグが有効の期間において、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる空気流量設定手段とを有し、
前記燃料流量制御手段は、
前記発電機の出力に基づいて第1燃料供給量を決定する負荷制御手段、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて第2燃料供給量を決定するガバナ制御手段と、
前記ガスタービンから排出されるガス温度に基づいて第3燃料供給量を決定するとともに、前記フラグが有効の場合には、前記第3燃料供給量が取りうる上限値を第3燃料供給量として出力する温度制御手段と、
前記第1乃至第3燃料供給量の中から最も値の小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する最小値選択手段とを具備するガスタービンの制御装置。
【請求項4】
前記温度制御手段は、前記フラグが有効から無効になった後から所定期間経過後に、前記第3燃料供給量に前記上限値以外の値を設定する請求項3に記載のガスタービンの制御装置。
【請求項5】
前記圧縮機の前段にIGV調整弁が備えられており、前記IGV調整弁の弁開度を調整することにより、前記燃焼器に供給する空気流量を制御する場合において、前記フラグ生成手段は、系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記IGV調整弁の開度が標準全開の状態にある場合にも、前記フラグを有効とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガスタービンの制御装置。
【請求項6】
圧縮機と、
前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とが供給される燃焼器と、
前記燃焼器で発生する燃焼ガスによって回転するガスタービンと、
前記ガスタービンの回転により発電する発電機と、
請求項1から請求項5のいずれかに記載のガスタービンの制御装置と
を具備する発電プラント。
【請求項7】
圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御方法であって、
系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる第1過程と、
前記発電機の出力に基づいて決定された第1燃料供給量、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて決定された第2燃料供給量、前記ガスタービンの排ガス温度に基づいて決定された第3燃料供給量、前記排ガス温度よりも前記ガスタービンに近い場所で計測されるブレードパス温度に基づいて決定された第4燃料供給量の中から最も小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する第2過程と
を含み、
前記第1過程により前記燃焼器に供給する空気流量が過渡的に増加されている期間において、前記第2過程では、前記第3燃料供給量に第1補正量を加算し、かつ、前記第4燃料供給量に前記第1補正量よりも小さい値に設定されている第2補正量を加算することにより、第3燃料供給量及び前記第4燃料供給の値を増加させるガスタービンの制御方法。
【請求項8】
圧縮機からの圧縮空気と燃料とを燃焼器に供給して該燃焼器で発生する燃焼ガスによってガスタービンを回転させて発電機を駆動するガスタービンの制御方法であって、
系統周波数が所定閾値以下となり、且つ、前記発電機の出力が所定値以上の高負荷帯にある場合に、前記燃焼器に供給する空気流量を過渡的に増加させる第1過程と、
前記発電機の出力に基づいて決定された第1燃料供給量、及び/又は、前記ガスタービンの回転数に基づいて決定された第2燃料供給量、前記ガスタービンから排出されるガス温度に基づいて決定された第3燃料供給量の中から最も小さい燃料供給量を選択して前記燃焼器に供給する燃料供給量を設定する第2過程とを含み、
前記第1過程により前記燃焼器に供給する空気流量が過渡的に増加されている期間において、前記第2過程では、前記第3燃料供給量として前記第3燃料供給量が取りうる上限値が設定されるガスタービンの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−111996(P2011−111996A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270210(P2009−270210)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】