説明

ガスタービンエンジンのためのフィルタ洗浄システム

【課題】ガスタービンエンジン(10)の空気吸気口(120)のためのフィルタシステム(100)を提供すること。
【解決手段】フィルタシステム(100)は、空気吸気口(110)付近に配置された複数のフィルタ(120)と、フィルタ(120)に噴霧するように配置された水噴霧システム(160)とを含むことができる。フィルタ(120)は、疎水性または疎油性濾材(130)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般にガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ガスタービンの空気吸気口等で使用するためのフィルタ洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンコンプレッサ吸気口および同様のデバイスに入る空気は、圧縮または他の使用の前に濾過するべきである。埃、破片、粉塵粒子、塩、および他の汚染物質を含んだ不純な吸気口空気は、腐食、浸食、詰まり等によって、コンプレッサのブレードを損傷し、冷却路を塞ぎ、他のタイプの発電機器を損傷することがある。そのような損傷は、発電機器の寿命および全体的な性能を損なうことがある。この問題を防ぐために、吸気口空気は、汚染物質を除去するために1つまたは複数のフィルタを通過することができる。
【0003】
しかし、空気フィルタは、埃、破片、および他のタイプの汚染物質が蓄積することにより、寿命が比較的短いことがある。この蓄積はまた、フィルタ要素で圧力降下を引き起こすこともある。圧力降下が起きると、ガスタービンエンジンの全体的な出力および効率が低下する。したがって、フィルタ要素は一般に、機械効率の損失がフィルタ交換費用を上回るとガスタービンのオペレータが考える値に圧力降下が達すると、交換することができる。多くのガスタービンエンジンは、フィルタがあらかじめ定められた設定値に達したこと、およびフィルタ交換が必要であることを知らせる信号を送る自動制御を有することができる。オペレータがアラーム値でフィルタを交換しない場合、フィルタ要素の大きな圧力降下による吸気口またはフィルタの内部破壊を防ぐために、追加の制御装置によってガスタービンエンジンを停止することができる。ガスタービンエンジンは一般に、フィルタ交換のために停止することができる。
【0004】
したがって、頻繁なフィルタ交換によって、ガスタービンのエンドユーザは、労力およびフィルタに関して高い維持費用がかかることになり、エンジンの休止時間および使用不能による収入の損失も生じる。同様に、オンラインでのフィルタ交換は、ガスタービンの内部構成要素の早期摩耗を引き起こすことがある。
【0005】
現在、既知の自己清掃式吸気口空気フィルタ要素は、蓄積した埃、破片、および他の汚染物質をフィルタ要素から払い落とす衝撃波を生成する圧縮空気の逆噴射を利用している。しかし、フィルタ要素の上面にある埃、および破片は蓄積することがあり、圧縮空気による自己清掃では効果的に清掃できないことがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「GDX There is no Substitute for your Challenging Environment」DONALDSON、2004年、4ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改良された吸気口空気フィルタリングシステムが必要とされている。そのようなシステムは、好ましくは、圧力降下を増大させずに、埃、破片、および他の汚染物質の蓄積を防ぐことができる。全体的なシステム効率および性能も改良するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本願は、ガスタービンエンジンの空気吸気口のためのフィルタシステムを提供する。このフィルタシステムは、空気吸気口付近に配置された複数のフィルタと、それらのフィルタに噴霧するように配置された水噴霧システムとを含むことができる。フィルタは、疎水性または疎油性濾材を中に含むことができる。
【0009】
本願は、ガスタービンエンジンのコンプレッサの空気吸気口のためのフィルタシステムをさらに提供する。このフィルタシステムは、コンプレッサの空気吸気口付近に配置された複数のフィルタと、それらのフィルタに水を噴霧するようにそれらのフィルタ付近に配置された複数の噴霧ノズルとを含むことができる。フィルタは、疎水性または疎油性濾材を中に含むことができる。
【0010】
本願のこれらおよび他の特徴は、以下の詳細な説明を、いくつかの図面および添付の特許請求の範囲と併せて読むと、当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】本明細書に説明されている吸気口フィルタシステムの概略図である。
【図3】本明細書に説明されている吸気口空気フィルタシステムの代替実施形態の概略図である。
【図4】本明細書に説明されている吸気口空気フィルタシステムの代替実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで図面を参照すると、いくつかの図を通して同様の番号は同様の要素を示すが、図1はガスタービンエンジン10の概略図を示す。既知のように、ガスタービンエンジン10は、流入する空気流を圧縮するコンプレッサ20を含むことができる。コンプレッサ20は、圧縮された空気流を燃焼器30に送り込む。燃焼器30は、圧縮された空気流を圧縮された燃料流と混合し、混合物に点火する。(単一の燃焼器30のみが図示されているが、ガスタービンエンジン10は任意の数の燃焼器30を含むことができる。)次いで、高温の燃焼ガスはタービン40に送り込まれる。高温の燃焼ガスは、機械的作用を生成するようにタービン40を駆動する。タービン40内で生成された機械的作用は、コンプレッサ20および発電機等の外部負荷50を駆動する。ガスタービンエンジン10は、天然ガス、様々なタイプの合成ガス、および他のタイプの燃料を使用することができる。ガスタービンエンジン10は、他の構成を有することができ、他のタイプの構成要素を使用することができる。複数のガスタービンエンジン10、他のタイプのタービン、および他のタイプの発電機器を併せて使用することもできる。
【0013】
図2は、本明細書に説明されている吸気口空気フィルタシステム100の概略図を示す。吸気口空気フィルタシステム100は、コンプレッサ20の吸気口110または他のタイプの空気吸気口システム付近に配置することができる。
【0014】
吸気口空気フィルタシステム100は、複数のフィルタ120を含むことができる。フィルタ120は、疎水性(「嫌水性」)および/または疎油性(「嫌油性」)濾材130を中に含むことができる。疎水性および/または疎油性濾材130は、ベース材、メンブラン、または別のタイプの被覆および/もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。濾材130は、合成繊維の織布とすることができる。濾材130は、PFTE(ポリテトラフルオロエチレン)、ePFTE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)、および同様のタイプの材料から作製することができる。疎水性および/または疎油性濾材130を有するフィルタ120の例には、ニューヨーク州SchenectadyのGeneral Electric Companyから販売されているF9MHフィルタ、ケンタッキー州LouisvilleのAAF Internationalから販売されているDuravee HXL 98フィルタ、およびミネソタ州MinneapolisのDonaldson Company Inc.から販売されているD−Saltフィルタ、ならびに同様のタイプのフィルタ120および疎水性または疎油性濾材130を含む。
【0015】
この例では、フィルタ120は、グリッド140の形態とすることができる。フィルタ120はそれぞれ、排水しやすいように前方に傾斜することができる。フィルタ120は、静的フィルタ要素150とすることができる。フィルタ120は、プリーツ状または非プリーツ状とすることができる。フィルタ120は、濾材130の一方または両方の側面にフレームを含むことができる。フレームは、全体的なフィルタハウジングの内部の永久構造物を密閉するように構成することができ、または他の配置とすることもできる。
【0016】
吸気口空気フィルタシステム100は、水噴霧システム160を含むこともできる。水噴霧システム160は、水タンク170を含むことができる。水タンク170は、ある容積の水180を中に有することができる。水180は室温とすることができ、または水180はチル冷却することもできる。水タンク170は、任意の数の噴霧ノズル190と連通することができる。噴霧ノズル190は、フィルタ120の上流および/または上に置くことができる。本明細書では他の位置を使用することもできる。任意の数の噴霧ノズル190を使用することができる。
【0017】
使用の際、吸気口空気フィルタシステム100のフィルタ120は、埃、破片、および他のタイプの汚染物質がコンプレッサ20の吸気口110に入らないようにする。フィルタ120の上には、埃、破片、および他の汚染物質が蓄積する。吸気口空気フィルタシステム100は、水噴霧システム160を使用して、フィルタ120を清掃することもできる。具体的には、疎水性または疎油性濾材130を有するフィルタ120は、噴霧ノズル190からの水180によって自己清掃することができる。疎水性または疎油性濾材130を使用することによって、埃、破片、および他の汚染物質を含んだ水が濾材130を通過することを防ぎながら、水噴霧によって、蓄積された埃、破片、および他の汚染物質をフィルタ120から除去する。
【0018】
吸気口空気フィルタシステム100を水噴霧システム160とともに使用することは、ガスタービンエンジン10の出力を増加させるという他の利点も有する。具体的には、水180は水噴霧システム160からの蒸発冷却によって吸気口空気流185を冷却することができ、この場合、冷却は蒸発冷却および/またはチル冷却によって行うことができる。同様に、水180は、水噴霧システム160とともに使用するときにチル冷却することもできる。出力が増加するとき、水180の噴霧は実質的に連続的とすることができ、清掃を連続的に行うことができ、より十分な清掃を行うことができるようになっている。
【0019】
疎水性または疎油性濾材130の使用によって、機器(フィルタ120および水噴霧システム160)の順序を、従来提供されていたものとは逆にすることができる。ここでは水噴霧システム160は疎水性または疎油性メンブランフィルタ材料130の上流にあるので、純粋な水を使用する必要がない。むしろ、より表面張力の小さい溶液を通過させないというフィルタ材料130の性質により、疎油性フィルタ材料130は、より広範囲の不純物に対応することが可能である。
【0020】
したがって、吸気口空気フィルタシステム100は、蓄積された埃、破片、および汚染物質を除去することによってフィルタ120の寿命を長くすることができる。吸気口空気フィルタシステム100は、吸気口の圧力降下を比較的低く維持するよう、フィルタ120に埃、破片、および汚染物質がないように維持することによって、ガスタービンエンジン10の全体的な出力の低下を防ぐこともできる。吸気口空気フィルタシステム100は、蒸発冷却またはチル冷却により吸気口空気流185を冷却することによって、ガスタービンエンジン10全体の出力を増加させることもできる。フィルタ120の寿命を長くすることにより、全体的な維持費用を削減することができる。同様に、フィルタ120の寿命を長くすることにより、ガスタービンエンジン10の可用性も増加することができる。吸気口空気フィルタシステム100は、既存のガスタービンエンジン10で容易に改造可能である。既知の圧縮空気の上述の自己清掃フィルタへの逆流を防ぐことによって、吸気口空気フィルタシステムは、それらの既知のシステムに勝る音に関する利点も有する。
【0021】
吸気口空気フィルタシステム100は、多くの様々な形状を有することができる。例えば、図3は、吸気口空気フィルタシステム200の代替実施形態を示す。吸気口空気フィルタシステム200は、疎水性または疎油性濾材220を中に有する複数のフィルタ210を含むこともできる。この実施形態では、フィルタ210は、クロスフロー構成235で、キャニスタタイプフィルタ230の形態をとることができる。これらのキャニスタフィルタ210は、パルス式自己清掃フィルタ240または静的フィルタとすることができる。静的フィルタ要素150とは反対に、パルス式自己清掃フィルタ要素240は、上記のようにフィルタ210を清掃するのに役立つ空気のパルスを使用することができる。キャニスタタイプフィルタは、ミネソタ州MinneapolisのDonaldson Company,Inc.から入手可能であり、「GDX」または「GDS」という商標で販売されている。本明細書では同様の構成を使用することができる。
【0022】
同様に、図4は空気吸気口フィルタシステム300の他の実施形態を示す。吸気口空気フィルタシステムは、疎水性または疎油性濾材320を中に有する複数のフィルタ310を使用することもできる。これらのフィルタ310はキャニスタ330の形態とすることもできる。この実施形態では、フィルタは、アップフロー位置340を有することができる。本明細書では同様の構成を使用することができる。
【0023】
上記は本願のある実施形態に関するに過ぎず、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲ならびにその均等物から逸脱せずに、多くの変更および修正を行うことができることが理解されよう。
【符号の説明】
【0024】
10 ガスタービンエンジン
20 コンプレッサ
30 燃焼器
40 タービン
50 外部負荷
100 吸気口空気フィルタシステム
110 吸気口
120 フィルタ
130 疎水性または疎油性濾材
140 グリッド
150 静的フィルタ要素
160 水噴霧システム
170 水タンク
180 水
190 噴霧ノズル
200 吸気口空気フィルタシステム
210 フィルタ
220 疎水性または疎油性濾材
230 キャニスタタイプフィルタ
235 クロスフロー構成
240 パルス式フィルタ要素
300 空気吸気口フィルタシステム
310 フィルタ
320 疎水性または疎油性濾材
330 キャニスタ
340 アップフロー位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸気口(110)付近に配置され、疎水性または疎油性濾材(130)を含む、複数のフィルタ(120)と、
前記複数のフィルタ(120)に噴霧するように配置された水噴霧システム(160)とを含む、ガスタービンエンジン(10)の空気吸気口(110)のためのフィルタシステム(100)。
【請求項2】
前記疎水性濾材(130)がポリテトラフルオロエチレンまたは延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項3】
前記複数のフィルタ(120)がグリッド(140)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項4】
前記複数のフィルタ(120)が複数の静的フィルタ(150)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項5】
前記複数のフィルタ(120)が複数のキャニスタフィルタ(230)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項6】
前記複数のフィルタ(120)が複数のパルス式フィルタ(240)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項7】
前記水噴霧システム(160)が、チル冷却された水が中に入っている水タンク(170)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項8】
前記水噴霧システム(160)が複数の噴霧ノズル(190)を含む、請求項1記載のフィルタシステム(100)。
【請求項9】
前記複数の噴霧ノズル(190)がクロスフロー位置(235)を含む、請求項8記載のフィルタシステム(100)。
【請求項10】
前記複数の噴霧ノズル(190)がアップフロー位置(340)を含む、請求項8記載のフィルタシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−249139(P2010−249139A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93631(P2010−93631)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】