説明

ガスタービン燃焼用空気の冷却システム

【課題】熱を有効に利用し、設備費、運転費を低減可能なガスタービン燃焼用空気の冷却システムを提供する。
【解決手段】ガスタービンの燃料用低温液化ガスを気化させる少なくとも2基の気化器と、該ガスタービンの燃焼用空気を冷却する空気冷却器21と、低温液化ガスを気化させる媒体である水を第一気化器11へ送水し、冷却された水を冷媒として該空気冷却器21に送水可能な水循環ライン、水循環ポンプ25を備える水循環装置31と、該水循環ラインの途中であって、該空気冷却器21の出口側に配設された水を加熱する熱交換器41と、該熱交換器41に水を加熱する温海水を供給し、該熱交換器41で水と熱交換し温度を低下させた温海水を、低温液化ガスを気化させる媒体として第二気化器12へ送水可能な海水ライン51と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの燃焼用空気の冷却システムに関し、特にガスタービンの燃料用低温液化ガスの冷熱を利用し、ガスタービンの燃焼用空気を冷却するガスタービンの燃焼用空気の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液化天然ガスを用いた複合発電設備が多く使用されている。液化天然ガスを用いた代表的な複合発電は、低温液化ガスの一種である液化天然ガス(以下LNGと記す)を燃料としてガスタービンを駆動し、排熱回収ボイラでガスタービンから排出される燃焼排ガスの熱を回収して、蒸気タービンを駆動し発電を行う。ガスタービンの燃料となるLNGは、メタンを主成分とする天然ガス(以下NGと記す)を冷却し液化させたもので、発電所等ではLNGタンクに貯留される。LNGは、約−162℃の温度で貯留されているため、これを燃料として使用するときは、加温、ガス化しNGとする必要がある。このLNGのガス化には、オープンラック式気化器、シェルアンドチューブ型気化器など海水を熱媒とする気化器が多く使用されている。
【0003】
ところで複合発電設備のガスタービンは、燃焼用の空気をガスタービンの出力軸に連結させた空気圧縮機で得るため、大気温度が上昇すると、ガスタービンの取入れ空気の密度が低下し、空気圧縮機の送出空気量が低下する。これに伴い、燃料流量も低下させる必要が生じ、ガスタービンの軸出力が低下してしまう。このため従来から、ガスタービンの取入れ空気を冷却する方法が幾つか提案されている。例えば、不凍液をガスタービンの燃料用LNGによって約−40℃にまで冷却して低温蓄冷槽に蓄えておき、大気温度が高く電力需要が増大した時間帯に、低温蓄冷槽内の不凍液を、空気冷却器に送ることによりガスタービンの取入れ空気を冷却するとともに、不凍液と熱交換して気化したNGをガスタービンの燃料とする冷却システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の方法は、−40℃の不凍液で燃焼用空気を冷却するため空気冷却器の表面に着氷が生じ空気冷却性能が低下するおそれがあることが指摘されている。また設備費が高いとの指摘もある。これらの課題を解決すべく、新たなガスタービン燃焼用空気の冷却システムも提案されている(例えば特許文献2参照)。また本発明者らも新しいガスタービン燃焼用空気の冷却システムの発明を行い、既に特許出願を行っている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−209718号公報
【特許文献2】特開2000−18049号公報
【特許文献3】特開2000−145476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の技術は、燃焼用空気の冷却が必要なときは、気化器の熱媒を海水から工業用水等の水に切替え、気化器において冷却された水を、循環ラインを通じて空気冷却器に送ることにより、ガスタービンの取入れ空気を冷却するものである。また本発明者らがなした特許文献3に記載の技術は、燃焼用空気の冷却が必要なときは、海水及び冷却水の循環ラインを連続的に運転することにより、気化器において冷却された海水を冷却水の冷却に利用して、この冷却水でガスタービンの取入れ空気を冷却するものである。
【0006】
特許文献2及び特許文献3に記載の方法によれば、空気冷却器に送られる冷却媒体が0℃以上の温度を有する水であるから、空気冷却器表面での着氷の恐れがない。さらに配管材料も高価な低温材を使用する必要がないなど有用な方法と言える。しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の技術も完全なものとは言えない部分もあり、さらに熱を有効に利用したガスタービン燃焼用空気の冷却システム、又はランニングコストの低い、又は運転の容易なガスタービン燃焼用空気の冷却システムの開発が期待されている。
【0007】
本発明の目的は、熱を有効に利用し、設備費、運転費を低減可能なガスタービン燃焼用空気の冷却システムを提供することである。また、既存のガスタービンの燃焼設備にも容易に適用することが可能なガスタービン燃焼用空気の冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスタービンの燃料用低温液化ガスを気化させる少なくとも2基の気化器と、
該ガスタービンの燃焼用空気を冷却する空気冷却器と、
低温液化ガスを気化させる媒体である水を第一気化器へ送水し、冷却された水を冷媒として該空気冷却器に送水可能な水循環ライン、水循環ポンプを備える水循環装置と、
該水循環ラインの途中であって、該空気冷却器の出口側に配設された水を加熱する熱交換器と、
該熱交換器に水を加熱する温海水を供給し、該熱交換器で水と熱交換し温度を低下させた温海水を、低温液化ガスを気化させる媒体として第二気化器へ送水可能な海水ラインと、
を含むことを特徴とするガスタービン燃焼用空気の冷却システムである。
【0009】
また本発明は、さらに前記熱交換器をバイパスする前記水循環ラインに配設された熱交換器バイパスラインと、
前記熱交換器及び/又は該熱交換器バイパスラインの水の流量を調整可能な前記水循環ラインに配設された気化器送水温度調節弁と、
前記第一気化器に送水される水の温度を検出し、該気化器送水温度調節弁に制御信号を出力する気化器送水温度制御装置と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システムである。
【0010】
また本発明は、さらに前記空気冷却器をバイパスする前記水循環ラインに配設された空気冷却器バイパスラインと、
前記空気冷却器及び/又は該空気冷却器バイパスラインの水の流量を調整可能な前記水循環ラインに配設された空気冷却器温度調節弁と、
前記空気冷却器が冷却する前記ガスタービンの燃焼用空気の出口冷却温度、前記空気冷却器の入口空気温度、又は大気温度の少なくともいずれか1の温度を検出し、該空気冷却器温度調節弁に制御信号を出力する空気冷却器温度制御装置と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システムである。
【0011】
また本発明で、前記温海水は、蒸気を冷却する復水器の該復水器通過後の温海水を含む海水であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システムは、ガスタービンの燃料用低温液化ガスを気化させる少なくとも2基の気化器と、ガスタービンの燃焼用空気を冷却する空気冷却器と、を備え、低温液化ガスを気化させる媒体である水を第一気化器へ送水し、冷却された水を冷媒として空気冷却器に送水するので、低温液化ガスの冷熱を利用して、ガスタービンの燃焼用空気を冷却することが可能となり、熱の有効利用を図ることができる。また、第一気化器と空気冷却器との間を循環する水循環ラインの途中であって、空気冷却器の出口側の水を加熱する熱交換器を有するので、空気冷却器の負荷が低下し、空気冷却器の出口部の水の温度が低下しても、水を加熱して第一気化器へ送水することが可能となり、第一気化器を安定的に運転することができる。
【0013】
さらに空気冷却器の出口側の水を加熱する熱交換器の加熱媒体は、温海水であり、この温海水は、第二気化器の低温液化ガスを気化させる媒体として利用されるので熱の有効利用を図ることができる。このような構成を採用することで、2基の気化器の熱媒体ラインが実質的にはシリーズに連結されたこととなり、一台の気化器海水ポンプで、2基の気化器を運転することができる。従来の気化器の気化システムでは、各々の気化器の基数に対応した数の気化器海水ポンプが必要であったが、本発明では、上記のように1台の気化器海水ポンプで、2基の気化器を運転することができるので、気化器海水ポンプの台数を減少させることが可能であり、設備費を低減することができる。また、気化器海水ポンプの運転費を抑制することができる。さらに、本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システムは、構成が簡単であり、既存のガスタービン燃焼設備に容易に適用することができる。
【0014】
また本発明は、さらに熱交換器をバイパスする水循環ラインに配設された熱交換器バイパスラインと、熱交換器及び/又は熱交換器バイパスラインの水の流量を調整可能な水循環ラインに配設された気化器送水温度調節弁と、第一気化器に送水される水の温度を検出し、気化器送水温度調節弁に制御信号を出力する気化器送水温度制御装置と、を含むので、第一気化器に送水する水の温度を所定の温度に調節することができる。これにより、第一気化器を安定的に運転することが可能になるとともに、空気冷却器の冷却能力を高めることができる。
【0015】
また本発明は、さらに空気冷却器をバイパスする水循環ラインに配設された空気冷却器バイパスラインと、空気冷却器及び/又は空気冷却器バイパスラインの水の流量を調整可能な水循環ラインに配設された空気冷却器温度調節弁と、空気冷却器が冷却するガスタービンの燃焼用空気の出口冷却温度、空気冷却器の入口空気温度、又は大気温度の少なくともいずれか1の温度を検出し、空気冷却器温度調節弁に制御信号を出力する空気冷却器温度制御装置と、を含むので、大気温度が変化しても、空気冷却器と空気冷却器バイパスラインとを流れる水の流量を調整することで、空気冷却器で冷却される空気の温度を調節することが可能となり、ガスタービンの出力を高めることができる。
【0016】
また本発明によれば、温海水は、蒸気を冷却する復水器の復水器通過後の温海水を含む海水であるので、復水器を通過後の温海水が持つエネルギーを有効に利用することができる。本発明を適用することで、従来はそのまま無駄に捨てられていた熱を回収し、有効に利用することができる。また、放水する海水温度を取水海水温度に近づけることになり、環境上好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の第一実施形態としてのガスタービン燃焼用空気の冷却システム1の概略的な構成を示すフロー図である。ガスタービン燃焼用空気の冷却システム1は、ガスタービンの燃料用LNGの持つ冷熱を利用してガスタービン燃焼用の空気を冷却するシステムであって、LNGを気化させる第一気化器11、第二気化器12と、LNGを気化させた水を冷却媒体とするガスタービンの燃焼用空気を冷却する空気冷却器21と、第一気化器11と空気冷却器21との間を水を循環させる水循環装置31と、第一気化器11と空気冷却器21との間を循環する水を加熱する熱交換器41と、熱交換器41及び第二気化器12に温海水を送水する海水ライン51を主に構成される。
【0018】
本実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム1は、後述のように実質的には、2基の気化器のLNGを気化させる媒体(熱媒)ラインを直列に連結し、第一気化器11で温度を低下させた熱媒を第二気化器12の熱媒として使用する点に特徴がある。よって、本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システム1は、第一実施形態に示すように少なくとも2基の気化器が必要である。第一気化器11ではLNGを気化させる熱媒に工業用水などの水を使用し、第二気化器12では、LNGを気化させる熱媒に海水を使用する。
【0019】
第一気化器11、第二気化器12は、ともにオープンラック式気化器(ORV)であり、多数のフィン付伝熱管からなるパネル(図示を省略)、パネルの表面にLNGを気化させる熱媒を供給する樋状のトラフ13、15を有し、パネル内にLNGを流し、熱媒をパネルの表面を流下させLNGを気化させる。第一気化器11、第二気化器12の下方には、パネルを流下する熱媒を回収する下部バス14、16が設けられている。下部バス14は、底部に回収した水を水循環装置31の一部を構成する水槽32に導く管路33を有する。一方、下部バス16の底部には、回収した海水を再び海に戻す管路52が配設されている。
【0020】
空気冷却器21は、第一気化器11でLNGを気化させ温度を低下させた水を冷却媒体として、ガスタービンの燃焼用空気を冷却するもので、水循環装置31を介して冷却媒体を受け取る。水循環装置31は、第一気化器11と空気冷却器21との間を水を循環させる装置であり、空気冷却器21を冷却する工業用水などの循環水(冷却水)を貯留する貯槽32と、貯槽内の循環水を空気冷却器21に送水する水循環ポンプ25と、水循環ポンプ25が送出する循環水を空気冷却器21に送る管路などを含み構成される。水循環ポンプ25の吐出部には、管路34が連結され、管路34は、一端を三方流量調節弁35と連結する。三方流量調節弁35は、空気冷却器21に循環水を送る管路36、及び空気冷却器21をバイパスする空気冷却器バイパス管路37と連結し、空気冷却器温度調節弁として機能する。
【0021】
空気冷却器21は、管路36を通じて送られた循環水を貯槽31に戻すための管路38と接続し、空気冷却器バイパス管路37は、管路38の途中に連結されている。よって管路37を介して空気冷却器21をバイパスさせ、水循環ポンプ25の送出する循環水を貯槽31に戻すことが可能となる。空気冷却器21は、出口冷却空気の温度を検出する温度検出器(図示を省略)を備え、温度検出器の信号は、空気冷却器温度制御装置(図示を省略)に入力される。空気冷却器温度制御装置は、空気冷却器21の出口冷却空気の温度を設定可能な温度設定器を備え、温度検出器の信号に基づき三方流量調節弁35に流量制御の信号を出力する。これにより空気冷却器21と空気冷却器バイパス管路37との流量を任意の割合に調節することが可能となり、空気冷却器21の出口冷却空気を所定の温度とすることができる。
【0022】
管路38は、一端を三方流量調節弁39と連結する。三方流量調節弁39は、管路38を通じて返送される循環水を、熱交換器41に送る管路40、熱交換器41をバイパスする熱交換器バイパス管路42と連結し、気化器送水温度調節弁として機能する。熱交換器41の出口には、加熱した循環水をトラフ13に返送する管路43が配設され、管路43は、熱交換器バイパス管路42と連結する。
【0023】
熱交換器バイパス管路42と管路43との連結部の後流側には、トラフ入口部の循環水温度を検出する図示を省略した温度検出器が装着されており、温度検出器の信号は、図示を省略した気化器送水温度制御装置に入力される。気化器送水温度制御装置は、第一気化器11のトラフ入口部の循環水の温度を設定可能な温度設定器を備え、温度検出器の信号に基づき三方流量調節弁39に流量制御の信号を出力する。これにより熱交換器41と熱交換器バイパス管路42との流量を任意の割合に調節することが可能となり、トラフ入口部の循環水温度を所定の温度に調節することができる。
【0024】
水循環装置31は、上記の構成からなるので、貯槽32、管路34、三方流量調節弁35、管路36、空気冷却器21、管路38、三方流量調節弁39、管路40、熱交換器41、管路43、42、トラフ13、第一気化器11、下部バス14、管路33で循環ラインが形成され、水循環ポンプ25で循環水を循環運転することできる。なお、空気冷却器バイパス管路37及び/又は熱交換器バイパス管路42を使用しても、循環水を循環させることができる。水循環装置31の一部を構成する三方流量調節弁35は、空気冷却器21と空気冷却器バイパス管路37とを流れる循環水量を調節するためのものであるから、三方流量調節弁35に替え、管路36及び空気冷却器バイパス管路37に流量調節弁を装着してもよい。同様に、三方流量調節弁39に替え、管路40及び熱交換器バイパス管路42に流量調節弁を装着してもよい。
【0025】
さらに温度検出器の取付け位置も上記実施形態に限定されるものではない。例えば空気冷却器21においては、管路36、管路38に温度検出器を設置し、循環水の温度を検出、制御することで、冷却空気の出口冷却温度を制御するようにしてもよい。また、空気冷却器21の入口空気温度、又は大気温度を検出可能な温度検出器を設置し、これらの温度を検出することで冷却空気の出口冷却温度を制御するようにしてもよい。
【0026】
熱交換器41は、隔壁式熱交換器であって、空気冷却器21で温度を低下させた冷却水を加熱するためのもので、加熱する媒体に温海水を利用する。ここで温海水とは、通常の海水温度に比較して温度の高い海水を言い、蒸気タービンの排気蒸気を冷却し温度を上昇させた復水器出口の温海水などを含む海水が例示される。熱交換器41への温海水の送水は、海水ライン51を介して行われる。海水ライン51は、放水口などに設置された気化器海水ポンプ27が送水する温海水を熱交換器41に送る管路53、熱交換器41で熱交換を行い温度を低下させた温海水を、第二気化器12の熱媒として送る管路54を含み構成される。管路54は、第二気化器12の樋状のトラフ15と連結し、温海水は第二気化器12のパネル(図示を省略)に導かれる。パネルを流下した温海水は、下部バス16で回収され、管路52を通じて海に返送される。
【0027】
また気化器海水ポンプ27が送水する温海水を熱交換器41に送る管路53は、管路途中に分岐部を有し、この分岐部には熱交換器41をバイパスする海水バイパス管路55が連結する。海水バイパス管路55は、管路途中に弁56を有し、海水バイパス管路55の一端は、管路54と連結する。管路54も管路途中に弁57を有するので、熱交換器41をバイパスさせ海水バイパス管路55を通じて、第二気化器12に温海水を送水することもできる。
【0028】
次に、以上の構成からなるガスタービン燃焼用空気の冷却システム1の使用方法を示す。夏季のような、大気温度が高く電力需要が増大したときは、次の要領でガスタービンの燃焼用空気を冷却する。ガスタービンの燃焼用空気を冷却するため、空気冷却器21に冷却用の媒体である循環水を送る。循環水は、貯槽32、空気冷却器21、熱交換器バイパス管路42、トラフ13、第一気化器11、下部バス14の系統を用いて、水循環ポンプ25を介して循環運転される。
【0029】
循環水は、第一気化器11のLNGを気化させることで温度を低下させ、空気冷却器21に送られ温度の高い燃焼用空気を冷却する。一方、循環水自らは温度上昇させ、温度が上昇した循環水は、温度を保ったまま第一気化器11のLNGを気化させる熱媒として第一気化器11に導かれる。第一気化器11に導かれる循環水は、空気冷却器21で熱を得て温度が高くなっているので、熱交換器41を用いて加熱しなくても、LNGを安定的に気化させることができる。ここでは、LNGの冷熱を利用してガスタービンの燃焼用空気を冷却するシステムが成り立っていると言える。
【0030】
第二気化器12のLNGを気化させるための熱媒には、温海水を使用する。気化器海水ポンプ27を稼働させ、弁56を開け、弁57を閉じることで、管路53、熱交換器41をバイパスする海水バイパス管路55、トラフ15を介して第二気化器12に温海水を供給する。第二気化器12に供給されるLNGは、この温海水でNGとなり、LNGを気化させ温度を低下させた温海水は、下部バス16で回収され、管路52を通じて海に返送される。
【0031】
次に、夏季において、正午前後以外の時間帯のように、空気冷却器21の負荷が高くないときの、ガスタービン燃焼用空気の冷却システム1の使用方法を示す。空気冷却器21の負荷が高くないときは、空気を冷却させるために多量の循環水を空気冷却器21に送る必要がない。一方、空気冷却器21の負荷が高くないときは、空気冷却器21の出口側の循環水温度が十分に高くなっていないので、LNGを気化させる媒体として使用するためには、この循環水の温度を高める必要がある。このことから空気冷却器21の負荷が高くないときは、貯槽32、空気冷却器21及び空気冷却器バイパス管路37、熱交換器41及び熱交換器バイパス管路42、トラフ13、第一気化器11、下部バス14の系統を用いて、水循環ポンプ25を介して循環水を循環運転する。
【0032】
空気冷却器21及び空気冷却器バイパス管路37の流量調節は、ガスタービン燃焼用空気の出口冷却温度が所定の温度となるように、図示を省略した空気冷却器21の出口冷却空気の温度を検出する温度検出器、及び空気冷却器温度制御装置を用いて、三方流量調節弁35に流量制御信号を送ることで行う。同様に熱交換器41及び熱交換器バイパス管路42の流量調節は、トラフ入口部で循環水が所定の温度となるように、図示を省略したトラフ入口部の循環水の温度検出器及び気化器送水温度制御装置を用いて、三方流量調節弁39に流量制御信号を送ることで行う。このように運転を行うことで、空気冷却器21の負荷が高くないときであっても、ガスタービンの燃焼用空気の冷却、第一気化器11でのLNGの気化を問題なく行うことができる。
【0033】
他方、第二気化器12のLNGを気化させる熱媒には、熱交換器41で循環水と熱交換し温度を低下させた温海水を使用する。循環水を加熱するために使用された温海水は、温度を低下させるものの元の海水温度が高いことから、LNGを気化させる熱媒として使用することができる。気化器海水ポンプ27から送出された温海水は、管路53、熱交換器41を通って温度を低下させ、管路54を通じて第二気化器12のトラフ15に送水される。トラフから流下した温海水は、図示を省略したパネルを加熱した後、下部バス16、管路52を通じて海に返送される。
【0034】
夏季以外の大気温度が比較的低く、このためガスタービンの燃焼用空気を冷却する必要がないときは、循環水は、貯槽32、水循環ポンプ25、空気冷却器バイパス管路37、熱交換器41、トラフ13、気化器11、下部バス14の系統を通じて循環運転される。ガスタービンの燃焼用空気を冷却する必要がないときは、空気冷却器21に冷却水を供給する必要がないので、空気冷却器バイパス管路37を通じて、循環水を循環させる。この循環水は、一方で第一気化器11のLNGを気化させるための熱媒として使用されるため、空気冷却器21を通すことなく循環水を循環運転するときは、循環水を管路40を通じて熱交換器41に導き、ここで所定の温度まで加熱する。これにより、第一気化器11には温度の高くなった循環水が供給され、LNGの気化を安定的に行うことができる。
【0035】
他方、第二気化器12のLNGを気化させる熱媒には、熱交換器41で循環水と熱交換し温度を低下させた温海水を使用する。循環水を加熱するために使用された温海水は、温度を低下させるものの元の海水温度が高いことから、LNGを気化させる熱媒として使用することができる。気化器海水ポンプ27から送出された温海水は、管路53、熱交換器41を通って温度を低下させ、管路54を通じて第二気化器12のトラフ15に送水される。トラフから流下した温海水は、図示を省略したパネルを加熱した後、下部バス16、管路52を通じて海に返送される。
【0036】
夏季以外の大気温度が比較的低く、このためガスタービンの燃焼用空気を冷却する必要がないときの各所の温度の一例を示せば、次のようになる。発電所取水口での海水温度が9〜10℃の場合、復水器を出た温海水を含む放流口での海水温度は17℃程度の温度となる。この17℃の温海水を、熱交換器41を通すと約12℃となり、5℃程度温度が低下する。熱交換器41で温度を低下させた約12℃の温海水は、第二気化器12に送られ、LNGを気化させると7〜8℃の温度に低下し、放水路の温海水と合流し9〜10℃の温度となって海に返送される。
【0037】
図2は本発明の第二実施形態としてのガスタービン燃焼用空気の冷却システム100の概略的な構成を示すフロー図である。図1に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム1と同一の部材には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第二実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム100は、第一実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム1と比較すると、気化器の形状、構造が異なることが分かる。
【0038】
第二実施形態に示す第一気化器111、第二気化器112は、シェルアンドチューブタイプの気化器である。シェルアンドチューブタイプの気化器であれば、特に構造、型式などは限定されない。シェルアンドチューブタイプの気化器は、隔壁式熱交換器の一種であり、例えばチューブ側にLNGを供給し、シェル側に熱媒を供給することで、LNGは熱媒から熱を得て気化しNGとなる。シェルアンドチューブタイプの気化器は、オープンラック型気化器と異なり熱媒がシェル内を流通する。よって図2に示すようにシェルアンドチューブタイプの第一気化器111の循環水出口部には、循環水を回収するための下部バス14、循環水を貯留する貯槽32が不要となる。管路33と水循環ポンプ25とを連結することにより、循環水を循環運転することができる。
【0039】
第二実施形態としてのガスタービン燃焼用空気の冷却システム100は、気化器を除ければ基本的な構成は第一実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム1と同一であり、運転方法も第一実施形態に示す方法と同じ方法を採用することができる。なお、第一気化器111と第二気化器112とは、必ずしも同一の型式の気化器である必要はないので、第二気化器112にオープンラック型気化器を採用することも可能である。
【0040】
上記実施形態では、2基の気化器を有するガスタービン燃焼用空気の冷却システムを示したけれども、3基以上の気化器を有する発電設備にも本発明を適用することができる。この場合は、2基の気化器を用いて本実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システムを構築し、残り1基以上の気化器については、従来の気化器の気化システムと同様、気化器海水ポンプで温海水、又は通常の海水を熱媒として供給すればよい。
【0041】
以上のように第一実施形態及び第二実施形態に示すガスタービン燃焼用空気の冷却システム1、100は、ガスタービンの燃料用LNGの冷熱を利用して、ガスタービン燃焼用空気を冷却する優れたシステムである。また、夏季において、正午前後以外の時間帯のように、空気冷却器の負荷が高くないとき、及び夏季以外の大気温度が比較的低く、このためガスタービンの燃焼用空気を冷却する必要がないときは、第一気化器11、111のLNGを気化させる熱媒である循環水を温海水で加温するとともに、循環水と熱交換し温度を低下させた温海水を、さらに第二気化器12、112のLNG気化媒体として使用する。これは、実質的には、2基の気化器の熱媒ラインを直列に結んだものと言える。これにより1台の気化器海水ポンプで2基の気化器に熱媒を送ることが可能となる。
【0042】
従来のガスタービン燃焼用空気の冷却システムが、1基の気化器に1台の気化器海水ポンプで海水を送水していたことと比較すると、本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システム1、100では、気化器海水ポンプ台数減による設備費、及び運転費を低減することができる。本発明は、温度の高い海水を使用することで可能となったシステムであるが、本発明では2基の気化器に使用するための温海水をわざわざ製造するのではなく、例えば復水器出口の温海水を使用するので、温海水の製造設備は不要である。従来、無駄に捨てられていた熱に着目し、この熱を有効に利用した優れたシステムと言える。
【0043】
また、本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システム1、100は、電力需要の高い夏季にガスタービンの燃焼用空気を冷却することができるので、タービンでの発電量を増加させることができる。ガスタービンの燃焼用空気を冷却する冷却媒体には、0℃以上の温度を有する水を使用するので、空気冷却器21の表面に着氷が発生して空気冷却性能が低下することはない。また空気冷却器21には、工業用水などの水を使用するので、高価な材料からなる配管を使用する必要がなく、経済的である。また、大気の温度に応じて、気化器の熱媒を海水から工業用水へ、又は工業用水から海水に変更する必要がなく、これら変更に伴う水槽、配管等の清掃が不要である。このため本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システム1、100は、1年を通じて運転、保守点検が容易である。さらに本発明のガスタービン燃焼用空気の冷却システム1、100は、構成が比較的簡単であるので、既設の発電設備も簡単な改造で本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第一実施形態としてのガスタービン燃焼用空気の冷却システム1の概略的な構成を示すフロー図である。
【図2】本発明の第二実施形態としてのガスタービン燃焼用空気の冷却システム100の概略的な構成を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスタービン燃焼用空気の冷却システム
11 第一気化器
12 第二気化器
21 空気冷却器
25 水循環ポンプ
31 水循環装置
35 空気冷却器温度調節弁
37 空気冷却器バイパス管路
39 気化器送水温度調節弁
41 熱交換器
42 熱交換器バイパス管路
51 海水ライン
100 ガスタービン燃焼用空気の冷却システム
111 第一気化器
112 第二気化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃料用低温液化ガスを気化させる少なくとも2基の気化器と、
該ガスタービンの燃焼用空気を冷却する空気冷却器と、
低温液化ガスを気化させる媒体である水を第一気化器へ送水し、冷却された水を冷媒として該空気冷却器に送水可能な水循環ライン、水循環ポンプを備える水循環装置と、
該水循環ラインの途中であって、該空気冷却器の出口側に配設された水を加熱する熱交換器と、
該熱交換器に水を加熱する温海水を供給し、該熱交換器で水と熱交換し温度を低下させた温海水を、低温液化ガスを気化させる媒体として第二気化器へ送水可能な海水ラインと、
を含むことを特徴とするガスタービン燃焼用空気の冷却システム。
【請求項2】
さらに前記熱交換器をバイパスする前記水循環ラインに配設された熱交換器バイパスラインと、
前記熱交換器及び/又は該熱交換器バイパスラインの水の流量を調整可能な前記水循環ラインに配設された気化器送水温度調節弁と、
前記第一気化器に送水される水の温度を検出し、該気化器送水温度調節弁に制御信号を出力する気化器送水温度制御装置と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システム。
【請求項3】
さらに前記空気冷却器をバイパスする前記水循環ラインに配設された空気冷却器バイパスラインと、
前記空気冷却器及び/又は該空気冷却器バイパスラインの水の流量を調整可能な前記水循環ラインに配設された空気冷却器温度調節弁と、
前記空気冷却器が冷却する前記ガスタービンの燃焼用空気の出口冷却温度、前記空気冷却器の入口空気温度、又は大気温度の少なくともいずれか1の温度を検出し、該空気冷却器温度調節弁に制御信号を出力する空気冷却器温度制御装置と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システム。
【請求項4】
前記温海水は、蒸気を冷却する復水器の該復水器通過後の温海水を含む海水であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のガスタービン燃焼用空気の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−232047(P2008−232047A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74111(P2007−74111)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(507092643)株式会社パワー・エンジニアリング・アンド・トレーニングサービス (1)
【Fターム(参考)】