説明

ガスタービン用圧縮機

本発明は、定置形ガスタービン(12)用圧縮機(10)のハウジング(32)の熱特性をロータ(24)に合わせるための対策に関し、ガスタービン構造部の冷却のために圧縮機の空気流(18)から部分流が分流される。圧縮機(10)で分流された部分流(42)のハウジング(32)の内側面(54)との接触が、媒体流路(14)を環状に取囲む集合室(44)に巧妙に配置された分離要素(46)によって大幅に制限され、ないしは妨げられる。これによって、コールドスタート時のガスタービン(12)ないしハウジング(32)の早期の加熱を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状断面の外壁で半径方向外側が区画され被圧縮媒体を流す環状断面の媒体流路と、外壁を取囲みこの外壁との間に配置された少なくとも1つの集合室を形成する圧縮機ハウジングと、媒体流路を流れる媒体の一部を集合室に分流するために外壁に設けられた少なくとも1つの分流開口と、媒体の分流された部分をハウジングから排出するためのハウジングに設けられた少なくとも1つの開口とを備えたガスタービン用の軸流圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンが高温ガスを吹き付けられる部品をタービン部あるいは燃焼器に有しており、これらが冷却空気で冷却されることは公知である。これらの部品は高温ガスの高温に長期間耐えるべく冷却される。冷却空気としてはよく知られているように圧縮機の空気が使用され、この圧縮機空気は圧縮機の様々な箇所でその主流から取出すことができる。図3はガスタービン12の圧縮機10におけるハウジング側の冷却空気取出し部を縦断面で示している。圧縮された空気42は環状の媒体流路14を流れる空気18から放射状に配置された一連の分流開口40を介して取出され、これらの開口は媒体流路14を外側で区画する外壁26に配置されている。すべての分流開口40は1つの環状室44に通じ、この環状室は外壁26の外側に配置されており、そこに分流された空気が集められる。この室44自体もその半径方向外側が圧縮機10のハウジング32で取囲まれ、区画されている。さらにハウジング32の周上には少数の、例えば3個或いは4個のより大きな開口64が分布し、これらの開口64を通じて環状室44に導かれた圧縮空気の一部42を排出することができ、これにより、分流された空気をさらに外部に設置された、この図では示されていない、ガスタービンまたは燃焼器の配管を介して、目的どおりに高温ガスが吹き付けられる部品の冷却に利用することができる。
【0003】
圧縮機10の環状の媒体流路14には静翼20と動翼22がそれぞれ翼輪状に交互に配置され、静翼20はハウジング側に、すなわち外壁26に回転しないように固定され、動翼22は環状の媒体流路14の内側に、すなわちロータ24にこれと一緒に回転するように固定されている。動翼22の尖端部は空隙36を保って媒体流路14の外壁に対面し、同様に静翼20の尖端部も媒体流路14の内壁24に対面している。ロータ24とステータ間のこの空隙を各々の運転状態においてできるだけ小さく維持するためには、ロータ24とステータをできるだけ良好に熱的に平衡させることが必要である。
【0004】
ロータは質量が大きく且つ内側寄りの媒体流れがより小さいので、ハウジングよりも熱的にゆっくり変化し、これによりハウジングよりもゆっくり膨張する。必要な半径方向および軸方向の空隙を設計する際には、特に例えばコールドスタートやガスタービン停止のような過渡的な運転条件において生じる半径方向および軸方向の延びを考慮しなければならない。この膨張は要求される構造の大きさ、装置の強固さおよび特にガスタービン効率に対して全体的にマイナスの影響を及ぼす。
【0005】
また、特許文献1からは空気取出しを備えた航空機ガスタービン用軸流圧縮機が知られている。ハウジングに設置された空気分流開口の前方に、半径方向に積み重ねられた2つの環状室があり、これらの環状室は共通の隔壁により互いに分離されている。ここで内側の環状室の内側区画壁は圧縮機の媒体流路を形成する環状の壁で構成されている。この環状壁にも隔壁にも複数の開口があり、これらの開口を通じて圧縮機から分流された部分流が分岐される。例えば圧縮機動翼のハウジングでの磨耗により生じ媒体主流で運ばれる粒子を捕捉し方向転換すべく、環状壁の開口と隔壁の開口は互いに軸方向に位置をずらして設置されている。というのはこれらの粒子が比較的薄いハウジングの外壁に衝突することを避けなければならないからである。
【0006】
さらに特許文献2からは複数の分流開口を備えた圧縮機が知られており、圧縮機の媒体主流から分流された空気流が1つの環状室を介して導かれる。周囲に沿って異なる熱負荷を受けるのを避けるべく、各々の分流開口の集合室側に方向転換板が設けられ、この方向転換板は周囲方向に扇形に延びている。これらのガイド板は分流開口領域にのみ局所的に設けられている。この方向転換板により、流入する空気が集合室においてハウジングの内面に沿って流れるのを防ぐことができ、これによりハウジングの不均一な熱負荷を低減することができる。
【0007】
また特許文献3からはタービンの環状案内セグメントが知られており、このセグメントはその内部に配置されたU字形の板により衝突冷却可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5203162号明細書
【特許文献2】米国特許第5160241号明細書
【特許文献3】米国特許第4303371号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、改善された効率を有するガスタービン用圧縮機およびガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は集合室に1つの分離要素が備えられ、この分離要素が集合室を半径方向内側の部分室と半径方向外側の部分室に分離することによって解決される。
【0011】
本発明は、従来は複数の集合室に、すなわち複数の分流室に急速に高い伝熱係数が生じ、これらの伝熱係数がハウジング壁の急速な加熱およびこれに起因する急速な熱膨張をもたらし、他方ではロータの加熱は従来は非常にゆっくり行われるという知見に基づいている。
【0012】
このことから圧縮機側にハウジングとロータのスラスト軸受を有するガスタービンにおいて、ハウジングとロータの全体としての軸方向の膨張が上記の問題に関連していた。コールドスタート時には圧縮機部分のハウジングの急速な加熱がタービンユニット部分のハウジングのずれをも生じさせていた。しかし、ロータはその熱容量が大きいのでハウジングよりもゆっくりと熱くなり、これ故にタービンユニット部分におけるロータの熱膨張による軸方向のずれはタービンハウジングにおけるよりも少ないものであった。機械軸に沿って延び、高温ガスの流れ方向に円錐状に広がるタービンユニットの高温ガス流路と関連して、このずれの違いがハウジングによるタービン動翼の半径方向空隙の狭隘化をもたらす。これはハウジングとロータの加熱中にタービンハウジングのタービンロータ部に対する軸方向におけるタービン出口側に向いたずれが生じることによるものであった。しかし、このずれはロータの加熱と膨張が終わった後で再びバランスする。この空隙の狭まりを考慮して、タービンユニットにおいて、すなわちタービン動翼とその尖端部に向き合っている固定された案内輪との間で、半径方向の空隙が比較的大きく構成された。
【0013】
そこで本発明では、集合室を半径方向内側の部分室と半径方向外側の部分室に分離することにより、コールドスタート時の圧縮機ハウジングの加熱速度を調整することを提案する。取出された部分流のハウジングの内側に沿った強制対流を避ける事により、そこでの媒体とハウジング壁との伝熱係数を大きく減少することができる。ハウジングの内側はもはや、分流されその大部分が非常に熱い部分流で直接に対流を浴びることは無い。大部分が密閉された、好ましくは完全に密閉された室、すなわち半径方向外側の部分室がハウジングの内側面と分流された空気との間にあり、この空気中でのみ自由対流が生じうる。その点でこの外側の部分室は内側部分室とハウジングとの間の分離中空室の役割を果たす。したがって、分離要素はハウジングの遮蔽要素であり、これにより内側部分室内を流れる媒体のハウジングへの熱侵入を、分離要素のない集合室と比べて、大幅に減じることができる。
【0014】
特に、集合室内を流れる媒体とハウジングとの伝熱係数は減少され、これによってコールドスタート時に圧縮機のハウジングは分離要素がない場合よりもゆっくり熱くなる。こうして、ロータとステータの熱的な挙動を一致させることができる。この熱的な挙動の一致はロータとステータの加熱が同時に且つ同じ大きさで生じるように作用する。
【0015】
本発明によるこの分離要素により、圧縮機の主流から分流された部分流の大部分がハウジングの内側面に沿って流れることが妨げられる。これによりハウジングの加熱とその軸方向の膨張が遅らされ、このことがハウジングとロータの熱的な挙動、すなわち熱膨張が一致するように作用する。膨張によるハウジングの軸方向ずれと膨張によるロータの軸方向ずれの時間間隔を非常に小さくすることができる。
【0016】
本発明により、タービンハウジングとタービンロータ部、特にロータ動翼との間の前述した過渡的な軸方向の相対的なずれをコールドスタート期間中に小さくすることができる。というのは、特に圧縮機のハウジングがロータと同様に暖められ、これによりロータとステータの熱膨張が時間的に互いに整合されるからである。これによりタービンの半径方向空隙(コールド空隙)をより小さく設計することができ、このことは定常運転時に半径方向空隙に基づく損失を減少させ、ガスタービンの効率を大いに向上させる。
【0017】
これにより同様に、圧縮機翼の自由端とこれに対向する壁との間の空隙(コールド空隙)の構造的な大きさを小さくすることができ、このことにより圧縮機ないしガスタービンの定常運転における効率が向上する。
【0018】
媒体の分流された流れをハウジングないしは集合室から排出するために分離要素は比較的大きな排出開口を有し、この排出開口はチャネルを介してハウジングに設けられた開口と接続されている。これにより、内側部分室を流れる媒体の部分流を集合室ないしハウジングから排出することができる。この場合、外側部分室は、周方向から見て、ハウジング内に設けられた開口を分離要素に設けられた排出開口と接続するチャネルにより遮断されている。この遮断は外側部分室を、周方向に見て、部分的にのみ分割することもできる。
【0019】
有利な実施形態が従属請求項に示されている。
【0020】
集合室は、圧縮機の軸方向に見て、それぞれハウジングから外壁まで延びている2つの側壁で区画されているのが好都合である。各々の側壁はそれぞれ部分的にあるいは全体的にハウジング部ないし外壁の取り付け部に形成することができ、ハウジング部と外壁部は溝とばねの様式で互いに結合されている。こうして集合室は全体としてハウジングにより半径方向外側を、媒体流路の外壁により半径方向内側を、そして、2つの側壁により両側面を区画されている。
【0021】
分離要素が薄板状であり、2つの側壁がそれぞれ1つの溝を有しており、これらの溝が互いに対向しており、これらの溝に薄板状の分離要素がはめ込まれている場合には、集合室は特に簡単に半径方向内側の部分室と半径方向外側の部分室に分離することができる。ハウジングは一般には上半部と下半部に分割されているので、分離要素も組立のために半分に分割しこれらをそれぞれの側壁の溝に挿入し中央点で固定すればよい。この分離要素は加熱された場合には動くように両方の周回する溝に設置されるのが好ましい。これにより分離要素の応力が低減される。この場合、この分離要素はそれぞれ180°の大きさの2つの薄板セグメントで構成することができる。しかし、より多くの薄板セグメントを使用することもでき、その場合にはこれらの薄板セグメントは当然ながら、機械軸に対して、180°よりも小さい弧状部を有する事になる。
【0022】
この分離要素を外壁の外側面よりもハウジングの内側面に近づけて設置するのが好ましい。媒体流路から取出された媒体のすべての分流された部分は原理的には内側部分室のみを流れる。冷却に必要な全ての冷却空気質量流を内側部分室を通して流さねばならないので、周方向で見た内側部分室の横断面は外側部分室の横断面よりもずっと大きくなる。内側部分室を適切な寸法、すなわち横断面の大きさとすることにより、分流された冷却空気流の比較的損失の少ない案内が可能となる。
【0023】
本発明の他の有利な形態によれば、この分離要素は排出開口よりも小さい横断面の均等に分布された複数の孔を有することができる。これにより、分離要素による覆いによりハウジングに局部的に過大な熱応力が生じるのが妨げられる。複数の孔を配置する事により、さらに、分流された部分流とハウジング間の伝熱係数を、孔の数と周に沿っての孔の分布に応じて可変調整することができる。分離要素に複数の孔を設ける事で、分流された空気の更に一部を内側部分室から外側部分室に移動させ、これにより外側部分室で自由対流と強制対流の混合が生じるようにすることが可能となる。こうしてハウジングの材料に過大な熱応力がかからないように伝熱係数を調整することができる。しかし、これらの孔の横断面が小さいので分流された部分流の全部が外側部分室を流れることはできず、またこのことは必ず避けなければならない。
【0024】
媒体流路から媒体の分流すべき部分をできるだけ均等に集合室に取出すべく、外壁は放射状に配列された複数の分流開口を有している。特にこれにより、集合室に、周に沿って見て、均等に分流された媒体を流すことが可能である。
【0025】
集合室は圧縮機の媒体流路の軸方向の1箇所だけをカバーするのが好ましい。したがって、環状の媒体流路全体がその設置範囲にわたってその媒体流路を取囲む集合室を備えているのではなく、軸方向の1箇所だけが集合室を備えている。この軸方向箇所が軸流圧縮機の後方の圧縮段に設けられていると特に好ましい。媒体の圧縮の際に上昇する媒体温度に因り、本発明は圧縮機において媒体温度が特に高い軸方向箇所に使用されるのが特に有利である。これは圧縮機の出口側に在る後方の圧縮段である。特にこの軸方向箇所では、コールドスタート時には分流された媒体とハウジングとの間により大きな温度差が生じるので、ハウジングを分流された媒体から絶縁するのが有利である。
【0026】
圧縮機が軸方向に互いに間隔を隔てた、それぞれが媒体流路を環状に取り囲む複数の集合室を有していることが目的に適っている。この場合には本発明による分離要素は1つの集合室に、または複数の集合室に、あるいはすべての集合室に設けることができる。
【0027】
このように本発明の適用は複数の後方圧縮段に限定されるものではなく、複数の中央圧縮段にも、あるいは目的に合うならば複数の前方圧縮段にも使用できる。
以下の図で更なる構造的な特徴と利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるガスタービン用圧縮機の長手方向断面図。
【図2】図1による圧縮機の横方向断面図。
【図3】従来技術によるガスタービン用圧縮機の長手方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明に基づくガスタービン12用の圧縮機10の出口側部分を長手方向で示したものである。図3に示された従来技術による圧縮機10と同様にこの圧縮機は機械軸16に沿って延びる媒体流路14を有している。この媒体流路14に機械軸16に沿って複数の静翼20と複数の動翼22が交互にそれぞれ翼輪として配置されている。媒体流路14は半径方向内側がガスタービン12のロータ24の表面23で区画されており、この表面は外皮表面が互いに接している複数のロータ円板27で構成されている。媒体流路14は半径方向外側が環状断面の外壁26で区画されている。この外壁26はロータ24を環状に取囲む静翼支持体28の一部であり、この静翼支持体に圧縮機静翼20が、図示されていない周方向の鉤止め方式ではめ込まれている。静翼支持体28はほぼ円筒形の構造と共に2つの周状突起30を有している。静翼支持体28は環状のハウジング32で取囲まれており、このハウジングは軸方向に互いに間隔をあけ半径方向内側に延びる2つの突起34を介して、半径方向外側に延びる突起30と結合されている。これらの突起30と34は対になってそれぞれ側壁35を形成している。すなわち、軸方向で両方の側壁35の間に、且つ半径方向でハウジング32と外壁26の間に集合室44が配置され、この集合室は断面が環状で、圧縮機10の媒体流路14を機械軸16に対して同心状に取囲む。静翼支持体28とハウジング32との2つの部分から成る構成の替わりに一体型の構成も在りうる。この場合には集合室は一体化された静翼支持体とハウジングとの結合体の壁に設けられる。
【0030】
静翼支持体28の外壁26に複数の分流開口40が放射状に配列されており(図2)、図1の長手断面ではその内の1つだけが示されている。この分流開口40を通って矢印42に従って媒体流路14で圧縮される媒体18、すなわち空気の一部が分流される。
【0031】
集合室44に分離要素46が設置されている。この分離要素46は集合室44を半径方向内側の部分室48と半径方向外側の部分室50に区分する。ここで半径方向で内側と外側はそれぞれ機械軸16から見たものである。両方の側壁35にはそれぞれ全体としては環状の溝が設けられており、これらは互いに向き合っている。この分離要素46は組立のために互いに対向した溝に差し込まれ、加熱された場合には動きうるようにそこにとめられている。
【0032】
分離要素46とハウジング32の内側面54との半径方向間隔は、分離要素46と外壁26の外側面56すなわち分離要素46と静翼支持体28の外側面56との半径方向間隔より著しく小さい。この分離要素46は図2のように比較的大きな排出開口60を有しており、この排出開口はチャネル62を介してハウジング32に設置された開口64と接続されている。これにより、内側部分室48を流れる、媒体18の分流された部分42をチャネル62を介してハウジング32から、ないしは集合室44から排出することが可能であり、これによって分流された媒体流を前記開口から、図示されていない配管を通じて、ガスタービン12のタービン部に導くことができる。このタービン部はガスタービン12の運転期間中の特に長い寿命を達成するために継続的に冷却されねばならない箇所である。
【0033】
圧縮機10の集合室44に分離要素46を取り付けることにより、一方では全ての分流された部分流42がハウジング32の内側面54に沿って吹き抜けることが妨げられ、一緒に搬送された熱がハウジング32の材料に特に早く伝わるのが防がれる。他方、複数の分流開口40を通って半径方向外側に向かって流れる空気が直接ハウジング32の内側面54に衝突することが妨げられ、それによりこの内側面を特に急速に加熱することが妨げられる。これにより全体として、コールドスタート時にハウジング32がガスタービン12の内部に設置されているロータ24よりも早く熱くなることが妨げられる。こうしてハウジング32の熱的挙動がロータ24の熱的挙動と合わせられ、このことによって両方の要素24と32が軸方向のこの領域でほぼ同期して加熱される。こうして静翼20の尖端部とロータ表面23との構造的な空隙および動翼22の尖端部と外壁26との構造的な空隙をより小さく設計することができ、これはガスタービン12の定常運転時の空隙損失を大幅に低減する。同時に、ステータとロータ24の熱的挙動が一致される事により、過渡運転時に生じるタービンユニットにおける半径方向空隙損失が低減される。流れ損失ないし空隙損失の低減により、全体としてガスタービンの効率が向上する。
【0034】
本発明による分離要素46の形態によっては、またハウジング32の内側面54と静翼支持体28の外側面56との間隔の選択によっては、外側部分室50での自由対流により圧縮機10のハウジング32がロータ24よりもゆっくり熱くなることが起こりうる。この場合には、分流された空気42の少なくとも小部分を外側部分室50に導くために、ないしはハウジング32の内側面に沿って吹き流すために、分離要素46に均等に分布された更に小さい複数の孔をあけ、これにより、ハウジング32がロータ24に比べてあまりに遅く加熱されることを防ぐことができる。
【0035】
圧縮機10は原理的には図示された1つの集合室44だけを有するのではなく、異なった圧力と温度の冷却空気を取出すために、軸方向に互いに隣接した複数の集合室を有することができる。要求に応じて、1つの集合室にのみ、または多くの集合室の中の複数の集合室に、あるいはすべての集合室にそれぞれ1つの分離要素を設けることができ、これにより、分流のハウジング32の内側面54との接触を大幅に制限することができ、こうして冷却空気のハウジング32への熱伝達を遅らせることができる。
【0036】
外側部分室50は内側部分室48と分離要素46により可能な範囲で気密に分離されればよい。しかし、外側部分室50は単に絶縁室として、ないしはハウジング32の加熱を遅らせるために作用するので、完全に気密な分離は必ずしも必要ではない。
【0037】
本発明は全体として、定置形ガスタービン12の圧縮機10のハウジング32をそのロータ24と熱的に適合させるための対策に関するものであり、ガスタービン構成部を冷却するために圧縮機の空気流18から部分流42が分離される。圧縮機10において分流された部分流42のハウジング32の内側面54との接触は、媒体流路14を環状に取囲む集合室44の中に分離要素46を巧妙に設置する事により大きく制限され、ないしは全く妨げられ、これにより、圧縮機10のコールドスタート時にガスタービン12ないしハウジング32が早期に加熱されることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0038】
10 圧縮機
12 ガスタービン
14 媒体流路
16 機械軸線
18 媒体の流れ方向
20 静翼
22 動翼
23 ロータ表面
24 ロータ
26 外壁
28 静翼支持体
30 周状突起
32 ハウジング
34 突起
35 側壁
40 分流開口
42 分流
44 集合室
46 分離要素
48 内側部分室
50 外側部分室
52 環状溝
54 ハウジングの内側面
56 外壁の外側面
60 分離要素の排出開口
62 チャネル
64 ハウジングの開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(12)用の圧縮機(10)であって、
環状断面の外壁(26)で半径方向外側が区画され被圧縮媒体(18)を流す環状断面の媒体流路(14)と、
前記外壁(26)を取囲み、この外壁との間に配置された少なくとも1つの集合室(44)を形成する圧縮機ハウジング(32)と、
前記媒体流路(14)を流れる媒体(18)の一部(42)を前記集合室(44)に分流するために外壁(26)に設けられた少なくとも1つの分流開口(40)と、
前記媒体(18)から分流された部分流(42)を前記ハウジング32から排出するためにハウジング(32)に設けられた少なくとも1つの開口(64)とを有し、
前記集合室(44)内にこの集合室(44)を半径方向内側の部分室(48)と半径方向外側の部分室(50)とに分離する分離要素(46)が設けられ、これにより前記内側の部分室(48)を流れる媒体(18)のハウジング(32)への熱侵入をこの分離要素(46)がない場合に比べて大幅に低減し、
前記分離要素(46)が少なくとも1つの排出開口(60)を有し、この排出開口がチャネル(62)を介して媒体(18)の前記部分流(42)をハウジング(32)から排出するために、ハウジング(32)に設置された開口(64)と接続されている圧縮機(10)において、
前記外側の部分室(50)が大部分が密閉された、好ましくは完全に密閉された室として形成され、この室が前記内側の部分室(48)と前記ハウジング(32)との間の絶縁中空室として作用することを特徴とするガスタービン用圧縮機。
【請求項2】
前記集合室(44)が、圧縮機(10)の軸方向から見て、それぞれが前記ハウジング(32)から前記外壁(26)まで延びる2つの側壁(35)で区画されている請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記分離要素(46)が薄板状であり、前記両側壁(35)のそれぞれが1つの溝を有し、これらの溝が互いに対向しその中に前記薄板状の分離要素(46)が取り付けられている請求項2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記分離要素(46)が前記外壁(26)の外側面(56)よりもハウジング(32)の内側面(54)に接近して設置されている請求項1から3の1つに記載の圧縮機。
【請求項5】
前記分離要素(46)が均等に分布された比較的小さい断面の複数の孔を有している請求項1から4の1つに記載の圧縮機。
【請求項6】
前記外壁(26)に放射状に配列された複数の分流開口を有する請求項1から5の1つに記載の圧縮機。
【請求項7】
前記集合室(44)が圧縮機(10)の媒体流路(14)の軸方向の1箇所だけをカバーしている請求項1から6の1つに記載の圧縮機。
【請求項8】
前記軸方向箇所が媒体(18)の流れ方向に関して後方の圧縮段に設けられている請求項7に記載の圧縮機。
【請求項9】
複数の集合室を有し、1つの集合室だけに、または複数の集合室に、あるいはすべての集合室にそれぞれ1つの分離要素(46)が設置されている請求項1から8の1つに記載の圧縮機。
【請求項10】
請求項1から9の1つに記載の圧縮機(10)を備えた定置形軸流ガスタービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−509372(P2011−509372A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541728(P2010−541728)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065761
【国際公開番号】WO2009/086982
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】