説明

ガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置並びにガスバリアフィルム

【課題】可視光域の透過性がよく、水蒸気バリア性にも優れるガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】長尺の基材フィルム1に対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲット42を備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置20を用い、その装置20内の成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とし、デュアルターゲット42を構成する各ターゲット43,43の法線方向の磁束密度を基材フィルム1の幅方向(TD方向)で250G以上として、基材フィルム1を移動させながら基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜する、ガスバリアフィルム10の製造方法によって、上記課題を解決した。デュアルターゲット42には交流波形又はパルス波形の電圧を印加することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置並びにガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア膜を備えたガスバリアフィルムは、食品、医薬品、化粧品、電子部品、電子機器等の包装用フィルムとして広く用いられている。また、ガスバリア膜は、フレキシブルディスプレイ等を構成する有機EL素子や半導体素子を覆う保護膜として用いられている。ガスバリア膜の構成材料としては、アルミニウム等の金属、酸化珪素、酸窒化珪素、窒化珪素等の無機化合物、各種の有機化合物が提案されている。
【0003】
酸化珪素、酸窒化珪素、窒化珪素等の無機化合物からなるガスバリア膜は、通常、蒸着法やスパッタリング法で成膜される。ガスバリア性の高いガスバリア膜は成膜条件を最適化して得ることができるが、特許文献1で提案されるように、製造装置を工夫してガスバリア性を高める検討も行われている。
【0004】
特許文献1で提案されたガスバリアフィルムの製造方法は、ガスバリア膜の成膜時にしばしば起こる基材の劣化を防止できるとともに、良好なガスバリア膜を得ることができるとする方法である。詳しくは、一対のターゲットを相互に対向させて設けてなるスパッタリング装置内で、その装置内の不活性ガスの圧力を0.5Pa以下としてターゲット間に電圧を印加させ、ターゲット間の空間部にターゲット原子が飛散したプラズマ空間を形成させ、ターゲット原子をフィルム上に5nm〜200nmの膜厚で被着させる方法である。
【0005】
なお、特許文献2には、デュアルターゲット方式のスパッタリング装置でガスバリア膜を成膜する技術が提案されており、特許文献3では、デュアルターゲット方式のスパッタリング装置で透明導電膜を成膜する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−335926号公報
【特許文献1】特開2009−196155号公報
【特許文献3】特開2007−70715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されている方法は、対向する一対のターゲットを用いた反応性スパッタリング法で酸化珪素、酸窒化珪素又は酸化アルミニウム等からなるガスバリア膜を成膜する方法である。しかしながら、そのガスバリア膜を備えたガスバリアフィルムは、酸素バリア性について検討されているものの、近年要求されている高い水蒸気バリア性に応えることができないという問題があった。
【0008】
ところで、酸化珪素膜は、バンドギャップが広いことから、組成が変化したり不純物が添加されたりしても、可視光域での透明性が確保されやすいという利点がある。そのため、透明性が必要な用途、例えばディスプレイの透過面に設けるフィルムや、太陽電池の光吸収面に設けるフィルムとして広く使用されている。しかし、酸化珪素膜は、窒化珪素膜等と比較して、高い水蒸気バリア性が出にくいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、可視光域の透過性がよく、水蒸気バリア性にも優れるガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、可視光域の光透過性がよく、水蒸気バリア性にも優れるガスバリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、酸化珪素膜をガスバリア膜として備えたガスバリアフィルムの製造方法についての研究を、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング装置を用いて行っている過程で、デュアルターゲット表面の垂直方向(法線方向)の磁束密度を250G以上にすることで、従来よりも低い圧力である0.05Pa〜0.12Paでプラズマが安定することを見出した。さらに検討した結果、その圧力範囲で成膜された酸化珪素膜が極めて高いガスバリア性を示すことを見出して本発明を完成させた。
【0011】
(1)上記課題を解決するための本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法は、長尺の基材フィルムに対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲットを備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置を用い、該装置内の成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とし、前記デュアルターゲットを構成する各ターゲットの法線方向の磁束密度を前記基材フィルムの幅方向(TD方向)で250G以上として、前記基材フィルムを移動させながら該基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、1組又は2組以上のデュアルターゲットを備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置を用い、その装置内の成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とし、デュアルターゲットを構成する各ターゲットの法線方向の磁束密度を基材フィルムの幅方向(TD方向)で250G以上としたので、基材フィルムの幅方向(TD方向)は250G以上の高い均一な磁束密度のもとでスパッタが行われる。そして、成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下と小さくしたことから、スパッタ原子の平均自由工程が長くなり、デュアルターゲットから放出された珪素原子は高い運動エネルギーで基材フィルムに到達することになる。その結果、基材フィルムの幅方向の表面での膜形成反応が一様に活性化し、緻密な酸化珪素膜が基材フィルムの幅方向で均一に成膜される。こうした酸化珪素膜を備えたガスバリアフィルムは、幅方向の各部での水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなる。また、本発明によれば、長尺の基材フィルムは連続的に移動しながら成膜されるので、緻密な酸化珪素膜が基材フィルムの幅方向のみならず、基材フィルムの長尺方向(MD方向)でも均一に成膜される。その結果、ガスバリアフィルムの全域に渡って、水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなる。なお、TD(Transverse Direction)方向は幅方向の意味であり、MD(Machine Direction)方向は流れ方向(長尺方向)の意味である。
【0013】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法において、前記デュアルターゲットには、交流波形又はパルス波形の電圧を印加する。
【0014】
この発明によれば、デュアルターゲットを構成する各ターゲットに交流波形又はパルス波形の電圧を印加するので、各ターゲットはカソードとアノードの役割を交互に果たす。その結果、長期に渡り、放電が安定したものとなる。
【0015】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法において、前記デュアルターゲットが2組以上配置されている。
【0016】
この発明によれば、2組以上のデュアルターゲットを備えるので、ターゲット数は計4以上となる。その結果、各ターゲット表面では、250G以上の高い均一な磁束密度のもとでスパッタが行われ、水蒸気バリア性に優れた酸化珪素膜を効率的に成膜できる。
【0017】
(2)上記課題を解決するための本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置は、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング装置を用い、該装置が、長尺の基材フィルムを送ると共に該基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜するための成膜ドラムと、前記成膜ドラムに対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲット、該デュアルターゲットの法線方向の磁束密度を前記成膜ドラムの幅方向(TD方向)で250G以上とするマグネトロン磁石、及び該デュアルターゲットに接続されて該デュアルターゲットからスパッタ原子を放出させるためのスパッタリング電源を備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置と、前記基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜するときの圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とする圧力制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング装置が成膜ドラムと反応性マグネトロンスパッタリング装置と圧力制御装置とを備え、デュアルターゲットの法線方向の磁束密度を成膜ドラムの幅方向(TD方向)で250G以上とし、且つスパッタリング時の圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下としたので、高い均一な磁束密度のもとで且つスパッタ原子の平均自由工程が長い条件下で成膜することができる。その結果、基材フィルムの幅方向の表面での膜形成反応が一様に活性化し、緻密な酸化珪素膜が基材フィルムの幅方向で均一に成膜できる。
【0019】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置において、前記スパッタリング電源は、前記デュアルターゲットに交流波形又はパルス波形の電圧を印加する。
【0020】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置において、前記反応性マグネトロンスパッタリング装置は、前記デュアルターゲットを2組以上備える。
【0021】
(3)上記課題を解決するための本発明に係るガスバリアフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた酸化珪素膜とを少なくとも有し、各部の水蒸気透過量が0.01g/m/day未満であり且つそのバラツキが±50%以内であることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、各部の水蒸気透過量が0.01g/m/day未満であり且つそのバラツキが±50%以内のガスバリアフィルムであるので、基材フィルム上に成膜された酸化珪素膜が均一且つ緻密なものとなっている。こうした酸化珪素膜は、上記した本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置で成膜することができ、その酸化珪素膜を備えたガスバリアフィルムは水蒸気バリア性が著しく向上したものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置によれば、基材フィルムの幅方向(TD方向)では250G以上の高い均一な磁束密度のもとでスパッタが行われ、さらに成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下と小さくしたので、スパッタ原子の平均自由工程が長くなり、デュアルターゲットから放出された珪素原子は高い運動エネルギーで基材フィルムに到達することになる。その結果、基材フィルムの幅方向の表面での膜形成反応が一様に活性化し、緻密な酸化珪素膜が基材フィルムの幅方向で均一に成膜される。こうした酸化珪素膜を備えたガスバリアフィルムは、幅方向の各部での水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなる。また、本発明によれば、長尺の基材フィルムは連続的に移動しながら成膜されるので、緻密な酸化珪素膜が基材フィルムの幅方向のみならず、基材フィルムの長尺方向(MD方向)でも均一に成膜される。その結果、ガスバリアフィルムの全域に渡って、水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなる。
【0024】
本発明に係るガスバリアフィルムによれば、緻密な酸化珪素膜が基材フィルム上に均一に成膜されているので、各部の水蒸気透過量が0.01g/m/day未満であり且つそのバラツキが±20%以内のガスバリアフィルムである。こうしたガスバリアフィルムは、上記した本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法及び製造装置で得ることができ、水蒸気バリア性が著しく向上したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るガスバリアフィルムの例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置の一例を示す模式的な構成図である。
【図3】本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置の他の一例を示す模式的な構成図である。
【図4】デュアルターゲットについての説明図である。
【図5】図4に示すデュアルターゲットの他の説明図である。
【図6】デュアルターゲットを構成する2つのターゲットに印加される電圧波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において任意に変形して実施することができる。最初に、ガスバリアフィルムの構成について説明した後、そのガスバリアフィルムを製造するための製造装置と製造方法について説明する。
【0027】
[ガスバリアフィルム]
本発明に係るガスバリアフィルム10(10A,10B,10C)は、図1(A)〜(C)に示すように、基材フィルム1と、その基材フィルム1上に設けられた酸化珪素膜2(2A,2B)とを少なくとも有している。本発明では、ガスバリアフィルム10の各部の水蒸気透過量が、0.01g/m/day未満であり且つそのバラツキが±50%以内である。このガスバリアフィルム10が優れた水蒸気バリア性を示すのは、緻密な酸化珪素膜2が基材フィルム1上に均一に成膜されているためである。
【0028】
なお、「少なくとも有する」とは、基材フィルム1上に酸化珪素膜2以外の膜が設けられていてもよいことを意味し、最終的に得られたガスバリアフィルム10には、ガスバリア膜として機能する有機膜が設けられていてもよいし、保護膜等の他の機能膜が設けられていてもよい。
【0029】
(基材フィルム)
基材フィルム1は、酸化珪素膜2を形成することができるフィルムであれば特に制限はない。基材フィルム1の構成材料としては、例えば、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン(APO)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、シクロポリオレフィン(CPO)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロ−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体(EPA)等を挙げることができる。
【0030】
また、基材フィルム1の構成材料として、上記の樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、前記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メタクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解した樹脂組成物等の光硬化性樹脂組成物、及びこれらの混合物等を用いることもできる。さらに、これらの樹脂組成物の1種又は2種以上をラミネート又はコーティング等の手段により積層させたものを基材フィルム1として用いることもできる。
【0031】
上記の構成材料からなる基材フィルム1の中でも、ディスプレイ用途では、可視光域で透明で、ある程度の耐熱性を有する基材フィルムが特に好ましい。その理由は、ガスバリアフィルム10をディスプレイ用途に使用する場合、150℃以上の温度がガスバリアフィルム10に加わる場合が多く、少なくともガラス転移温度が60℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上であるような耐熱性を有する基材フィルム1を用いることが好ましい。こうした基材フィルム1としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリカーポネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、透明ポリイミド(PI)樹脂、シクロポリオレフィン(CPO)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂のいずれかからなるフィルムを好ましく挙げることができる。
【0032】
基材フィルム1の厚さは、3μm以上500μm以下、好ましくは12μm以上300μm以下程度であることが好ましい。この範囲内の厚さの基材フィルム1は、フレキシブルであるとともに、ロール状に巻き取ることもできるので好ましい。
【0033】
基材フィルム1は、長尺材であってもよいし枚葉材であってもよいが、長尺の基材フィルムを好ましく用いることができる。長尺の基材フィルム1の長手方向の長さは特に限定されないが、例えば10m以上の長尺フィルムが好ましく用いられる。なお、長さの上限は限定されず、例えば10km程度のものであってもよい。
【0034】
(酸化珪素膜)
酸化珪素膜2は、水蒸気バリア膜として機能するガスバリア膜であり、図1に示すように、基材フィルム1の片面又は両面に設けられている。酸化珪素膜2は、図1(A)(B)に示すように、少なくとも基材フィルム1の一方の面に設けられている。図1(A)に示すように単層として設けられていてもよいし、図1(B)に示すように2層(2A,2B)又はそれ以上の積層として設けられていてもよい。酸化珪素膜2が単層であるか積層であるかは、膜断面の形態解析や組成分析によって評価できるが、積層した各層の組成が同じ場合には、成膜時には積層状態で成膜しても単層として評価されることがある。
【0035】
また、酸化珪素膜2(2A,2B)は、図1(C)に示すように、基材フィルム1の両面に設けられていてもよい。この場合も、各面に設けられている酸化珪素膜2は単層であっても積層であってもよい。
【0036】
酸化珪素膜2は、珪素と酸素を含有し、SiOxで表される。xが2の化学量論組成SiOが代表的な酸化珪素であるが、xは2から僅かに前後した値(例えば1.9〜2.1、好ましくは1.94〜2.06)であってもよい。
【0037】
酸化珪素膜2が、上記の組成範囲であるか否かは、例えば、SiとOの原子数比を求めることにより確認することができる。こうした原子数比を求める方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、XPS(X線光電子分析装置)等の分析装置で得られた結果で評価できる。本発明においては、XPSの測定は、XPS(VG Scientific社製、ESCA LAB220i−XL)により測定している。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300K(キロ)cps〜1M(メガ)cpsとなるX線源であるMg−Kα線を用い、直径約1mmのスリットを使用している。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行っている。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行っている。このとき、C:1sのピークのうち、炭化水素に該当するピークを基準として、各ピークシフトを修正し、ピークの結合状態を帰属させる。そして、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、O=2.85)を行い、原子数比を求めている。得られた原子数比について、Si原子数を1とし、Oの原子数を算出して成分割合としている。
【0038】
酸化珪素膜2の屈折率は1.45程度であり、高分子材料からなる基材フィルム1の屈折率に近い。そのため、ディスプレイ用途に用いた場合に、その酸化珪素膜2を空気層と接する最表面に設ければ、その酸化珪素膜2は低反射膜として作用し、空気層(屈折率=1.0)との界面での光の反射を低減することができ、ガスバリアフィルム10全体の可視光域での光透過率の向上に寄与することができる。なお、酸化珪酸化珪素膜2の厚さ方向の各部の屈折率の測定は、その各部と同一組成のガスバリア膜の屈折率を屈折率計(エリプソメーター)によって測定して評価できる。
【0039】
一方、Si−N結合で構成された窒化珪素(Si)膜は膜密度が高く、ガスバリア性が高い。さらに、屈折率が2.0程度と高いことから、酸化珪素膜2に比べて空気層(屈折率=1.0)との界面での光の反射が起こり、ガスバリアフィルム10全体の可視光域での光透過率が低下する。そのため、例えば、基材フィルム1上に窒化珪素膜が設けられている場合には、その窒化珪素膜上に、水蒸気バリア性がよく低屈折率の酸化珪素膜2を設ければ、前記同様、ディスプレイ用途に用いることができる。
【0040】
酸化珪素膜2には、上記の作用効果を損なわない範囲で、例えば炭素等の不純物や添加剤が含まれていてもよいが、その含有量は10%以下であることが望ましい。炭素が酸化珪素膜2に含まれる場合があるが、この炭素は、基材フィルム1の構成成分である炭素が酸化珪素膜2中に入り込んだり、又は、後述する平滑化膜等の有機膜を設ける場合には、その構成成分である炭素が酸化珪素膜2中に入り込んだりしたものである。
【0041】
酸化珪素膜2の厚さは、図1(A)(C)に示す単層であるか図1(B)に示す積層であるかは問わず、通常5nm以上、好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、通常10μm以下、好ましくは1000nm以下、特に好ましくは500nm以下である。酸化珪素膜2の厚さを上記範囲とすれば、可視光域での光透過率と色味に優れ、水蒸気バリア性にも優れた酸化珪素膜2とすることができる。酸化珪素膜2の厚さが5nm未満では、酸化珪素膜2で基材フィルム全体を覆うことができず、高い水蒸気バリア性が得られないことがあり、その厚さが10μmを超えると、クラックが発生し易く、水蒸気バリア性が低下することがある。
【0042】
こうした酸化珪素膜2を、可視光域での透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子のガスバリア膜として用いる場合には、酸化珪素膜2は可視光域で透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの可視領域の範囲内での酸化珪素膜2の平均光透過率が75%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。
【0043】
酸化珪素膜2の成膜手段は、後述するように、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング法が採用される。デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング法は、真空チャンバー内にデュアルターゲットを設置し、高電圧をかけてイオン化した希ガス元素(通常はアルゴン)をターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子をはじき出し、基材フィルム1上に酸化珪素を付着させ、酸化珪素膜2を成膜する方法である。このとき、チャンバー内に所定量の酸素ガスを流すことにより、ターゲットからはじき出された元素と、酸素とを反応させて酸化珪素膜2を形成する。
【0044】
(その他の膜)
ガスバリアフィルム10には、必要に応じて各種の膜を設けることができる。例えば、平滑化膜、透明導電膜、ハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等から選ばれるいずれかを挙げることができる。これらのうち、平滑化膜、透明導電膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタを、ガスバリアフィルム10の構成要素として設けることが好ましい。
【0045】
中でも、平滑化膜(図示しない)を、基材フィルム1と酸化珪素膜2との間に形成したり、酸化珪素膜2の上(表面)に形成したりすることが好ましい。基材フィルム1と酸化珪素膜2との間に平滑化膜を形成すれば、基材フィルム1の表面が有する凹凸や突起をなくして平滑面にすることができるので、酸化珪素膜2を欠陥なく均一に形成することができ、水蒸気バリア性をより高めることができる。また、酸化珪素膜2の上に平滑化膜を形成すれば、ガスバリア膜表面が有する凹凸や突起をなくして平滑面にすることができるので、特にディスプレイ用途に適用した場合に、ムラやぎらつき等をなくすことができる。
【0046】
平滑化膜としては、従来公知のものを適宜用いればよく、その材料としては、例えば、ゾルゲル材料、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及びフォトレジスト材料等を挙げることができる。こうした有機材料で形成した平滑化膜は、応力緩和機能も兼ね備えることから好ましい。平滑化膜の形成材料としては、アクリレートを含む高分子化合物が汎用的なものとして挙げられるが、他には、スチレン、フェノール、エポキシ、ニトリル、アクリル、アミン、エチレンイミン、エステル、シリコーン、アルキルチタネート化合物、イオン高分子錯体等、光硬化あるいは熱硬化性のもの、高分子化合物と金属アルコキシドの加水分解生成物の混合物等を含む、高分子化合物が適宜使用される。
【0047】
特にガスバリア機能を保持させつつ膜の形成を容易にする観点からは、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、エポキシ基をもつ反応性のプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した電離放射線硬化型樹脂組成物;その電離放射線硬化型樹脂に必要に応じてウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ビニル系等の熱可塑性樹脂を混合して液状とした液状組成物;のような、分子中に重合性不飽和結合を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂組成物、を好ましく用いることができる。
【0048】
平滑化膜は、こうした樹脂組成物を、例えば、ロールコート法、ミヤバーコート法、及びグラビアコート法等の従来公知の塗布方法で塗布、乾燥、硬化させることにより形成することができる。また、平滑化膜の形成材料として、酸化珪素膜2との良好な密着性を確保する観点からは、酸化珪素膜2と同材料系の塗膜を形成できるゾルゲル法を用いたゾルゲル材料を用いることも好ましい。ゾルゲル法とは、有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤と、このシランカップリング剤が有する有機官能基と反応する有機官能基を有する架橋性化合物とを少なくとも原料として構成された塗料組成物の塗工方法のことをいう。有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができる。また、平滑化膜の材料として、耐熱性の観点からは、従来公知のカルドポリマーを用いることも好ましい。平滑化膜の厚さは、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下とする。
【0049】
透明導電膜(図示しない)を、酸化珪素膜2の上に設けてもよい。特に、本発明に係るガスバリアフィルム10を有機ELディスプレイ用途に用いる場合、酸化珪素膜2の上に設けられた透明導電膜を、有機EL素子の陽極として利用することができる。透明導電膜は、特に限定されないが、その形成材料としては、インジウム−錫系酸化物(ITO)、インジウム−錫−亜鉛系酸化物(ITZO)、ZnO系、CdO系、及びSnO系等を挙げることができ、特にITO膜が好ましい。これらは、抵抗加熱蒸着法、誘導加熱蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、及びプラズマCVD法等の真空成膜法によって形成することができる。また、透明導電膜を、金属アルコキシド等の加水分解物、又は、透明導電粒子と金属アルコキシド等の加水分解物、を塗布して形成される無機酸化物を主成分とするコーティング膜としてもよい。透明導電膜の厚さは、通常10nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは450nm以下、より好ましくは200nm以下とする。
【0050】
なお、上記の平滑化膜、透明導電膜以外の機能膜であるハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等についての説明は省略するが、それらの膜については、従来公知の技術を適用できる。
【0051】
(水蒸気バリア性)
本発明に係るガスバリアフィルム10は、水蒸気透過量が0.01g/m/day以下、好ましくは0.005g/m/day以下であり、優れた水蒸気バリア性を発現する。特に本発明のガスバリアフィルム10は、その優れた水蒸気透過量が、ガスバリアフィルム10の各所において、バラツキが±50%以内、好ましくは±20%以内であることに特徴がある。こうしたバラツキの小ささは、酸化珪素膜2の成膜が、高い均一な磁束密度の条件下で行われ且つスパッタ原子の平均自由工程が長い条件下で行われたためであり、ターゲットから放出された珪素原子が高い運動エネルギーで基材フィルムに到達して緻密な酸化珪素膜2が基材フィルム1上に均一に成膜されたためである。
【0052】
高い水蒸気バリア性を有するガスバリアフィルム10は、各種の用途に適用可能であり、例えば、液晶表示パネル用、有機EL表示パネル用、太陽電池用、電子デバイス等のパッケージ材料用、食品や医薬品等の包装材料用等に利用可能である。
【0053】
特に可視光域での透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子用途に用いる場合には透明性に優れていることが好ましい。本発明に係るガスバリアフィルム10は、低屈折率の酸化珪素膜2を有するので、良好な透過率を示すことができ、ディスプレイ用途として好ましく用いることができる。具体的には、本発明に係るガスバリアフィルム10の全光線透過率は、少なくとも75%以上で、好ましくは80%以上であり、また、色味(YI)は、少なくとも5以下で、好ましくは3以下である。YIが高いほどガスバリアフィルム10が黄色く見えるため、YIは上記範囲に制御される。なお、全光線透過率及びYIの測定は、例えば、分光測色計を用いて測定することができる。本発明においては、全光線透過率及びYIの測定は、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用し、JIS K7105に準拠して測定している。
【0054】
なお、本発明に係るガスバリアフィルム10は、枚葉形態としても、ロール形態としてもよく、用途や適用工程に応じて任意に作製できる。例えば、有機ELディスプレイ等に本発明に係るガスバリアフィルム10を適用する場合には、適用工程に応じていずれかの形態のガスバリアフィルム10を適用できる。
【0055】
[ガスバリアフィルムの製造装置及び製造方法]
次に、本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置及び製造方法について説明する。以下では、製造装置について説明するが、本発明の製造方法の構成も同様であるので、製造装置と製造方法を併せて説明する。
【0056】
本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置20(20A,20B)は、図2及び図3示すように、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング装置を用いたものである。この製造装置20(20A,20B)は、基材フィルム1を供給する供給装置21と、酸化珪素膜2を形成した後のフィルム(ガスバリアフィルム)10を巻き取る巻取装置22と、供給装置21と巻取装置22との間に設けられて酸化珪素膜2を形成する成膜装置30(30A,30B)とを少なくとも有している。
【0057】
成膜装置30(30A,30B)は、長尺の基材フィルム1を送ると共にその基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜するための成膜ドラム31と、成膜ドラム31の回転方向に対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲット42(図2に示す42A、図3に示す42A,42B)、そのデュアルターゲット42の法線方向の磁束密度を前記成膜ドラム31の幅方向(TD方向)で250G以上とするマグネトロン磁石44、及びデュアルターゲット42に接続されてデュアルターゲット42からスパッタ原子を放出させるためのスパッタリング電源45を備えたスパッタリング装置41と、基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜するときの圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とする圧力制御装置51と、を備えていることを特徴とする。以下、各構成を詳しく説明する。
【0058】
(供給装置)
供給装置21は、長尺の基材フィルム1を供給する装置であり、例えば芯材24上に巻かれたロール状フィルム23を両側から回転可能に保持するクランプ部材(図示しない)等を有している。この供給装置21は、一定の速度で基材フィルム1を送り出すことができるように制御可能な駆動モータ(図示しない)を備えている。駆動モータによる送り出しの制御は、例えば、いずれかのガイドローラ27に設けられたロータリーエンコーダ(図示しない)の回転信号を受信して行うことができる。また、この供給装置21から送り出された基材フィルム1を成膜装置30に一定の張力下で安定して供給するために、供給装置21と成膜装置30との間のガイドローラ27が設けられている領域に、張力調製のためのダンパー(図示しない)を設けてもよい。
【0059】
供給装置21が配置される領域Aと、成膜装置30が配置されている領域Bとの間は、図2及び図3に示すように、仕切板33で区切られている。供給装置21と仕切板33との間では、成膜前の基材フィルム1を脱ガスしてもよいし、加熱ロール(図示しない)を設置して基材フィルム1を加熱してもよい。また、同様に、基材フィルム1を表面処理して酸化珪素膜2との密着を高める等の目的のため、プラズマ処理装置等による表面処理を行ってもよい。そうした表面処理は、図2に示すように、成膜装置30内の任意の領域35で行ってもよい。
【0060】
(巻取装置)
巻取装置22は、基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜したフィルム(ガスバリアフィルム10)を芯材26上に巻き取る装置である。この巻取装置22も上記の供給装置21と同様、一定の速度でガスバリアフィルム10を巻き取ることができるように制御可能な駆動モータ(図示しない)を備えている。駆動モータによる巻き取り制御は、例えば、いずれかのガイドローラ28に設けられたロータリーエンコーダ(図示しない)の回転信号を受信して行うことができる。また、ガスバリアフィルム10を一定の張力下で安定して巻き取るために、巻取装置22には可変可能なトルク装置を設けることが好ましい。
【0061】
巻取装置22が配置される領域Aと、成膜装置30が配置されている領域Bとの間は、図2及び図3に示すように、仕切板33で区切られている。成膜ドラム31の一部は、領域Aの側に入り込んでいる。なお、供給装置21及び巻取装置22が配置される領域Aには、その領域Aの圧力を調整するための排気装置(図示しない)が設けられていてもよい。
【0062】
(成膜装置)
成膜装置30(30A,30B)は、成膜ドラム31と、スパッタリング装置41と、圧力制御装置51とを有し、さらに反応性マグネトロンスパッタリング装置が備える他の付帯機器(ポンプ、バルブ、弁、流量計、その他)を有している。本発明で用いる成膜装置30は、成膜ドラム31の外周に配した基材フィルム1を連続搬送しながら、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタで酸化珪素膜2を成膜する装置である。成膜装置30は、酸化珪素膜2を成膜するための成膜室36を有し、その成膜室36には、マグネトロン磁石44を備えたデュアルターゲット42が、成膜ドラム31上で搬送される基材フィルム1に対向する位置に1又は2以上配置されている。
【0063】
成膜ドラム;
成膜ドラム31は、長尺の基材フィルム1をその表面に接触させた状態で、基材フィルム1を一定速度で連続搬送するように回転する。通常、基材フィルム1の幅以上の幅をもつ円筒状のドラムが用いられる。成膜ドラム31の直径は特に限定されず、成膜ドラム31の外周上の成膜有効長さ、また、基材フィルム1の搬送速度等によって構造設計される。例えば実施例に記載のように、直径100cm程度で軸方向長さが35cm程度の円柱形態を例示できる。
【0064】
成膜ドラム31の周りには、必要に応じて、アースシールド32が成膜ドラム31と所定の間隔を隔てて設けられている。供給装置21から供給された基材フィルム1は、アースシールド32の開口部34から成膜ドラム31に供給されて、後述のスパッタリング装置41によって成膜される。成膜された後のガスバリアフィルム10は、アースシールド32の開口部34から領域Aに入り、巻取装置22で巻き取りされる。
【0065】
成膜ドラム31には、基材フィルム1を加熱又は冷却するための温度制御手段が付加されていることが好ましい。成膜ドラム31の温度制御手段としては各種のものを挙げることができ、例えば成膜ドラム内部にチラー(冷却器)から排出される熱媒を通す経路を設け、その熱媒をドラム表面に熱伝達させる手段や、成膜ドラム上部(フィルムをだいていない部分)にIRランプを設けてドラム表面を加熱する手段や、成膜ドラム上部(フィルムをだいていない部分)にプラズマ加熱装置を設けてドラム表面を加熱する手段や、ヒーターをドラムの内部に巻き付けたりする手段や、冷却媒体を成膜ドラム31の内部に通過させる手段等を例示できる。こうした温度制御手段によって成膜ドラム表面の温度を制御することができ、成膜組成や膜質を調整することができる。なお、制御温度としては、基材フィルム1のガラス転移温度又は基材フィルム1の分解開始温度を超えないことが好ましい。
【0066】
スパッタリング装置;
スパッタリング装置41は、成膜ドラム31で連続搬送される基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜するための装置である。具体的には、図2及び図3に示すように、成膜ドラム31の回転方向に対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲット42(図2に示す42A、図3に示す42A,42B)と、そのデュアルターゲット42の法線方向の磁束密度を成膜ドラム31の幅方向(TD方向)で250G以上とするマグネトロン磁石44と、デュアルターゲット42に接続されてデュアルターゲット42からスパッタ原子を放出させるためのスパッタリング電源45と、を少なくとも備えている。
【0067】
デュアルターゲット42(42A,42B)は、図4及び図5に詳しく示すように、ターゲット43,43を横に2つ並べて構成されており、成膜ドラム31の回転方向に並べて対向配置されている。このデュアルターゲット42は、図2では1組設けられており、図3では2組設けられている。3組以上のデュアルターゲット42が設けられていてもよい。
【0068】
各ターゲット43,43としては、Siで構成されたSiターゲット、導電率を向上させるためB又はP等をドーピングしたSiターゲット、又は、それ以外の元素を含むSi化合物ターゲットを用いることができる。なお、ターゲット43,43は、ターゲット電極又はマグネトロン電極と呼ばれることがある。
【0069】
デュアルターゲット方式のマグネトロンスパッタリングは、図2、図3及び図5に示すように、2つのターゲット43,43を1組として構成されたものであり、その2つのターゲット43,43間に交流波形又はパルス波形の電圧を印加するスパッタリング手法である。この手法は、金属ターゲットを用いて酸化珪素膜等の絶縁膜を成膜する際に主に適用される。この手法で酸化珪素膜2を成膜することにより、図6に示すように、2つのターゲット43,43に交流波形又はパルス波形の電圧が交互に印加される。各ターゲット43,43は、カソードとアノードの役割を交互に果たし、下記の問題を生じることなく、長期にわたり放電を安定させることができる。
【0070】
デュアルターゲット方式の原理は、一対のスパッタリングターゲット43,43に、図6(1)(2)に示すような交番電界を印加することにより、それぞれのターゲットをアノードとカソードとに交互に変化させ、ターゲット間で電子を移動させてスパッタリングを行う手段である。その交番電界により、アノードからカソード方式に変換したときに、アノード時にターゲット表面に付着した不完全反応物(チャージアップの原因)がスパッタされてクリーニングされ、元の正常な状態となる。その結果、長期にわたって放電が安定するという利点がある。
【0071】
また、マグネトロンスパッタリング法の原理は、図4及び図5に示すように、ターゲットの裏面に磁石を配置して磁界を発生させ、ガスイオン原子がターゲット表面に衝突し、叩き出される二次電子をローレンツ力で捕らえてサイクロトロン運動で不活性ガス(アルゴンガス等)のイオン化を促進させることができるというものである。この方法は、負イオンや二次電子を磁界で捕らえることができるため、基材フィルムの温度上昇を抑えることができる。また、捕らえた電子で不活性ガスをイオン化できるので、成膜速度を高速にできるという利点がある。
【0072】
なお、金属ターゲットから絶縁膜を成膜する際に、2つのターゲット43,43に直流電圧を印加すると、非エロージョン部に絶縁膜が形成され、その上下で電荷が蓄積してしまい、最終的にはアーキングが発生して安定した成膜ができないという問題が生じる。また、シングルターゲットに交流電圧を印加すると、アーキングは防止できるものの、成膜室内に徐々に絶縁膜が形成され、最終的にはアノード(この場合は、アース)がなくなるアノード消失現象が生じて、プラズマ状態が変化してしまうという問題が生じる。
【0073】
デュアルターゲット42を構成する2つのターゲット43,43の大きさは特に限定されないが、例えばMD方向(流れ方向、基材フィルムの長尺方向)の寸法は20mm〜150mm程度である。一方、TD方向(幅方向)の寸法は、図4(A)(B)に示すように、ターゲット表面の磁束密度が250G以上になる幅であればよく、例えば後述の実施例では成膜ドラム31の幅よりも100mm以上大きいものを採用している。また、デュアルターゲット42を構成する2つのターゲット43,43は、MD方向に50mm以下の間隔で並べて配置することが好ましい。このとき、図5に示すように、ターゲット43,43の表面が、成膜ドラム31上で搬送される基材フィルム1面に平行になるように対向配置されていることが望ましい。
【0074】
デュアルターゲット42を構成するターゲット43,43と基材フィルム1との距離Dは、20mm〜200mm前後の範囲内であることが好ましい。その距離Dが20mm未満では、基材フィルム1がプラズマダメージを受けることがある。一方、その距離Dが200mmを超えると、成膜速度の低下や膜質の低下が起こることがある。なお、そうしたプラズマダメージ、成膜速度及び膜質の観点からは、距離Dが40mm〜100mmの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
マグネトロン磁石44は、デュアルターゲット42を構成する各ターゲット43,43の背面に、バッキングプレート47を間に介して設けられている。このマグネトロン磁石44は、デュアルターゲット42の法線方向の磁束密度が前記成膜ドラム31の幅方向(TD方向)で250G(ガウス)以上となるように、その種類と大きさが選択されて設けられている。ここで、250Gは、デュアルターゲット42の法線方向に、各ターゲット43,43の表面位置での磁束密度である。その磁束密度は、例えば株式会社マグナのハンディガウスメーター(型名:MG-701)によって測定することができる。なお、1G(ガウス)は、磁束の方向に垂直な面の1平方センチメートル(cm)につき1マクスウェル(Mx)の磁束密度と定義され、ガウスはマクスウェル毎平方センチメートル(Mx/cm)と表すことができる。
【0076】
マグネトロン磁石44,44としては、デュアルターゲット42の法線方向の磁束密度が成膜ドラム31のTD方向で250G以上となるように、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石(Nd−Fe−B)等の強磁場を発生させることができる永久磁石が好ましく用いられる。デュアルターゲット42の法線方向の磁束密度が250G未満では、0.05Pa以上0.12Pa以下、好ましくは0.05Pa以上0.10Pa以下の低い成膜圧力の条件でのプラズマが不安定となり、成膜ができない、又は、成膜ができたとしても水蒸気バリア性に優れる膜が得られない。なお、磁束密度の上限は特に限定されないが、300G、500Gさらには1000Gとしてもよい。
【0077】
バッキングプレート47とは、ターゲット43,43間での電子の移動を交互に行うために設けられるものであり、交流波形又は矩形波形の電圧を印加するスパッタリング電源45に接続されている。
【0078】
こうして構成されたスパッタリング装置41は、1組又は2組以上のデュアルターゲット42を備え、且つ各ターゲット表面で250G以上の高い均一な磁束密度となるようにマグネトロン磁石44を設けるので、デュアルターゲット42から放出された珪素原子は高い運動エネルギーで基材フィルム1に到達する。その結果、基材フィルム1上に緻密な酸化珪素膜2が効率よく成膜される。
【0079】
スパッタリング電源;
スパッタリング電源45は、図2、図3及び図5に示すように、デュアルターゲット42に接続されて、デュアルターゲット42に交流波形又はパルス波形の電圧を印加して、スパッタ原子を放出させるための電源である。交流波形とパルス波形は、いずれも、数kHz〜数百kHzのサイン波又は矩形波であり、電力としては、数百kW〜数kW程度である。スパッタリング電源45は、こうした電圧を2つのターゲット43,43に交互に印加する。電圧が印加されたターゲット43,43は、図6に示すように、バッキングプレート47によってターゲット43,43間での電子の移動が交互に行われ、交互にカソードとアノードになる。
【0080】
パルス波形の電圧を印加した場合、ターゲット43,43のアーキング状況に応じてデューティ比や正負の電圧値を調整することが好ましい。こうした調整によって、より高速成膜することが可能となる。負電圧は、100V〜1000Vの範囲で調整されるが、成膜速度を上げるためには、できるだけ負電圧の印加時間の割合を増すことが好ましい。一方、正電圧は、アーキングを防止するため、及びアノードの役割のため、必要最小限の値で構わない。
【0081】
圧力制御装置;
圧力制御装置は、成膜室36の圧力を制御する装置であり、ガス供給装置51と排気装置61とで構成される。本発明では、この圧力制御装置によって、基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜するときの圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下の範囲内、好ましくは0.05Pa以上0.10Pa以下の範囲内に低減する。圧力を低減することで、成膜室36内の平均自由工程が長くなる。これにより、ターゲット43,43から放出されたSi粒子が気体分子と衝突しにくくなり、Si粒子が高い運動エネルギーで基材フィルム1に到達することになる。その結果、基材フィルム1の表面での膜形成反応が活性化し、緻密な酸化珪素膜2を成膜できる。
【0082】
圧力が0.12Paを超えると、平均自由工程が短くなり、Si粒子が高いエネルギーで基材フィルム1に到達できず、緻密な酸化珪素膜2にならずに急激にバリア性能が低下する。一方、圧力が0.05Pa未満では、Siターゲット原料から酸化珪素膜2を成膜する際に必要な酸素分圧の比率が大きくなり、スパッタに必要なアルゴンガスの分圧が充分にとれず、成膜速度が急激に低下するという問題がある。また、放電も非常に不安定になるという問題もある。
【0083】
この圧力範囲で得られた酸化珪素膜2は、従来の水蒸気透過量に比べ、1桁以上高い水蒸気バリア性(水蒸気透過量として0.01g/m/day以下、好ましくは0.005g/m/day以下)が得られる。しかも、その優れた水蒸気透過量が、ガスバリアフィルム10の各所において、バラツキが±50%以内、好ましくは±20%以内となる。こうしたバラツキの小ささは、酸化珪素膜2の成膜が、高い均一な磁束密度の条件下で行われ且つスパッタ原子の平均自由工程が長い条件下で行われたためであり、ターゲットから放出された珪素原子が高い運動エネルギーで基材フィルム1に到達して緻密な酸化珪素膜2が基材フィルム1上に均一に成膜されたためである。
【0084】
ガス供給装置51は、成膜室36に酸素を含んだガスを供給する装置である。ガス供給装置51には供給配管52が連結され、その供給配管52の先端にはガス導入口53が設けられている。ガス供給装置51によって、成膜室内に所定流量の酸素ガスとアルゴンガスが供給される。そのとき、プラズマのインピーダンスが変化した場合には、ガスの供給流量を調整してプラズマ状態を一定に保つ。インピーダンスでのプラズマ制御が困難な場合は、プラズマの発光状態からガス流量を調整して、プラズマ状態を一定に保つ。
【0085】
排気装置61は、成膜装置30に設けられて成膜室36の内部圧力を調整する。ここでは排気装置61の詳細な説明は省略するが、一般的に適用される拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、圧力調整バルブ、弁、等々が設けられている。
【0086】
こうした成膜装置30によって、基材フィルム1上に酸化珪素膜2が成膜される。酸化珪素膜2の厚さは、成膜条件によって任意に調整できる。例えば、成膜ドラム31の回転を増減して成膜時間を調整し、その厚さを調整できる。
【0087】
以上、本発明に係るガスバリアフィルムの製造装置及び製造方法は、デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタ装置を用い、Siターゲット裏面のマグネトロン用磁石を強化してターゲット表面の垂直方向(法線方向)の磁束密度を250G以上にし、酸素ガスを添加した小さい圧力下で酸化珪素膜2を成膜する。
【0088】
この発明によれば、基材フィルム1の幅方向(TD方向)では250G以上の高い均一な磁束密度のもとでスパッタを行い、且つ0.05Pa以上0.12Pa以下と小さい成膜圧力でスパッタを行うので、スパッタ原子の平均自由工程が長くなり、デュアルターゲット42から放出された珪素原子が高い運動エネルギーで基材フィルム1に到達することを可能にする。その結果、基材フィルム1の幅方向の表面での膜形成反応が一様に活性化し、緻密な酸化珪素膜2が基材フィルム1の幅方向で均一に成膜される。こうした酸化珪素膜2を備えたガスバリアフィルム10は、幅方向の各部での水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなる。また、本発明によれば、長尺の基材フィルム1を連続的に移動させながら酸化珪素膜2を成膜するので、緻密な酸化珪素膜2が基材フィルム1の幅方向のみならず、基材フィルム1の長尺方向(MD方向)でも均一に成膜される。その結果、ガスバリアフィルム10の全域に渡って、水蒸気バリア性が一様で且つ著しく向上したものとなるガスバリアフィルム10の製造を可能にする。
【実施例】
【0089】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0090】
[実施例1]
図2に示したガスバリアフィルムの製造装置20Aを使用して、基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜し、図1(A)に示す態様のガスバリアフィルム10Aを作製した。先ず、厚さ100μm、幅30cmで長さ1kmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムのロール巻きを基材フィルム1として供給装置21に装着した。次に、基材フィルム1の先端を、成膜装置30Aの成膜ドラム31に巻いた状態で引き出し、巻取装置22の芯材26に固定し、基材フィルム1を0.2m/分の一定速度で回転させながら巻き取りを開始した。その状態で、反応性マグネトロンスパッタリング法により、基材フィルム1上に酸化珪素膜2を成膜した。
【0091】
用いた成膜装置30Aは、デュアルターゲット42が設けられた反応性マグネトロンスパッタリング装置であり、酸化珪素膜2を成膜する成膜室36を有している。成膜ドラム31は、直径100cmで軸方向長さが35cmの円柱形態であり、冷却、加熱できるようになっている。基材フィルム1が成膜ドラム31の外周で搬送され、成膜室36を通過して成膜される時間は120秒であり、酸化珪素膜2の厚さが約50nmとなるように成膜条件を設定した。デュアルターゲット42として、Bドープした低抵抗のSiターゲット43,43を使用した。各ターゲット43のMD方向(流れ方向、長尺方向)の寸法は60mmであり、TD方向(幅方向)の寸法は成膜ドラム31の幅よりも100mm以上大きくした。各ターゲット43,43は、図2に示すように、MD方向に50mm以下の間隔で並べて配置した。ターゲット43,43の表面と基材フィルム1との距離は80mmとした。各ターゲット43,43の背面に設けられるマグネトロン磁石44,44は、高磁束密度を得るためにサマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石(Nd−Fe−B)を用いるが、今回はネオジム磁石を用いた。各ターゲット43,43には、スパッタリング電源45から40kHz、4kWの交流電圧が印加され、スパッタリングを行った。
【0092】
成膜室36は、ターボ分子ポンプとコンダクタンスバルブで調整して減圧し、アルゴンガス(30sccm)と酸素ガス(20sccm)を流して、0.03Paの成膜圧力下で成膜した。各ガスは一定の量が流れるように設定したが、プラズマのインピーダンスが変化した場合にはガス流量を調整して、プラズマ状態を一定に保った。インピーダンスでのプラズマ制御が困難な場合は、プラズマの発光状態からガス流量を調整して、プラズマ状態を一定に保つようにした。なお、磁束密度は、ターゲット43,43の表面で、ガウスメーターによって測定した結果を示している。得られた酸化珪素膜2は、全領域において、Si含有量が約40原子%で、酸素含有量が約60原子%であった。
【0093】
こうした装置20Aにより、基材フィルム1上に厚さ80nmの酸化珪素膜2を成膜してなる、実施例1のガスバリアフィルムを作製した。
【0094】
[実施例2〜4]
実施例1において、成膜圧力を表1に示す値に調整して酸化珪素膜2を成膜した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4のガスバリアフィルムを作製した。
【0095】
[比較例1〜9)
実施例1において、成膜圧力と磁束密度を表1に示す値に調整して酸化珪素膜2を成膜した。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1〜9のガスバリアフィルムを作製した。
【0096】
[特性評価]
得られたガスバリアフィルム10の水蒸気透過量及びそのバラツキと、全光線透過率とを表1に示した。実施例1〜4のガスバリアフィルム10の水蒸気透過量は、いずれも0.01g/m/day未満であった。また、ガスバリアフィルム10の全光線透過率は、いずれも80%以上であった。ここで、水蒸気透過量(WVTR)は、水蒸気透過量測定装置(MOCON社製、AQUATRAX)を用い、40℃、100%Rhの条件で測定した。水蒸気透過量のバラツキは、作製したガスバリアフィルム10をTD方向(幅方向)に300mm間隔で5点、MD方向(流れ方向)に100mm間隔で2点の計10点測定した結果で評価した。水蒸気透過量の測定限界は0.0005g/m・dayである。また、全光線透過率は、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用い測定した。
【0097】
【表1】

【符号の説明】
【0098】
1 基材フィルム
2,2A,2B 酸化珪素膜
10,10A,10B,10C ガスバリアフィルム
20,20A,20B ガスバリアフィルムの製造装置
21 供給装置
22 巻取装置
23,25 ロール状フィルム
24,26 芯材
27,28 ガイドローラ
30 成膜装置
31 成膜ドラム
32 アースシールド
33 仕切板
34 開口部
35 領域
36 成膜室
41,41A,41B スパッタリング装置
42,42A,42B デュアルターゲット
43 ターゲット
44 マグネトロン磁石
44N N極
44S S極
45 スパッタリング電源
46 筐体
47 バッキングプレート
51 圧力制御装置
52 供給配管
53 ガス導入口
61 排気装置
D 基材フィルムからターゲット表面までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材フィルムに対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲットを備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置を用い、該装置内の成膜圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とし、前記デュアルターゲットを構成する各ターゲットの法線方向の磁束密度を前記基材フィルムの幅方向(TD方向)で250G以上として、前記基材フィルムを移動させながら該基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記デュアルターゲットには、交流波形又はパルス波形の電圧を印加する、請求項1に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記デュアルターゲットが2組以上配置されている、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項4】
デュアルターゲット方式の反応性マグネトロンスパッタリング装置を用い、
前記装置が、
長尺の基材フィルムを送ると共に該基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜するための成膜ドラムと、
前記成膜ドラムに対向配置させた1組又は2組以上のデュアルターゲット、該デュアルターゲットの法線方向の磁束密度を前記成膜ドラムの幅方向(TD方向)で250G以上とするマグネトロン磁石、及び該デュアルターゲットに接続されて該デュアルターゲットからスパッタ原子を放出させるためのスパッタリング電源を備えた反応性マグネトロンスパッタリング装置と、
前記基材フィルム上に酸化珪素膜を成膜するときの圧力を0.05Pa以上0.12Pa以下とする圧力制御装置と、を備えたことを特徴とするガスバリアフィルムの製造装置。
【請求項5】
前記スパッタリング電源は、前記デュアルターゲットに交流波形又はパルス波形の電圧を印加する、請求項4に記載のガスバリアフィルムの製造装置。
【請求項6】
前記反応性マグネトロンスパッタリング装置は、前記デュアルターゲットを2組以上備える、請求項4又は5に記載のガスバリアフィルムの製造装置。
【請求項7】
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた酸化珪素膜とを少なくとも有し、各部の水蒸気透過量が0.01g/m/day未満であり且つそのバラツキが±20%以内であることを特徴とするガスバリアフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246552(P2012−246552A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120661(P2011−120661)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】