説明

ガスバリア性包装体

【課題】 無機酸化物層との優れた接着性を有し、それにより蒸着後のガスバリア性に優れ,かつ、内容物充填後による接着性,ガスバリア性が悪化しないプラスチックフィルムおよびその包装体を提供すること。
【解決手段】 基材フィルムの少なくとも片面に、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂からなる易接着層が形成され、ATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比が,0.010以上であることを特徴とする易接着性ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性包装体およびその製造方法に関する。更に詳しくは優れたバリア性・蒸着金属層と優れた接着性を有し、内容充填後もこれらの特性が低下しない、ガスバリア性包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐熱性および透明性に優れており、工業用途や食品包装用フィルムとしても広く使用されている。しかし、ポリエステルフィルム単独では、食品包材にとって極めて重要な性能の一つである、酸素および水蒸気遮断性などのいわゆるガスバリア性に欠ける。したがって、フィルム表面にアルミニウムをはじめとする金属ないしは金属酸化物などの蒸着、いわゆるガスバリア層を形成することによりガスバリア性を改善し、食品保存性をさらに高めている。
【0003】
ポリエステルフィルムは優れた特性を有するが、その表面が高度に配向結晶化し表面の凝集性が高く、一般に接着性は低い。そのため、コロナ放電処理やプラズマ処理などの物理的処理方法や、酸、アルカリなどの化学薬品を使用してフィルム表面を活性化させる化学的処理方法により表面改質を図り、各種蒸着層の接着性を高める試みがなされている。しかし、このような物理的方法では、工程は簡便であるが得られる接着性は不十分であり、化学的方法では、工程は複雑となり作業環境悪化などの問題がある。
【0004】
上記の物理的、化学的処理方法とは別に、基材フィルムに接着活性を有する下塗り剤を塗布して、易接着層を積層する方法があるが、この方法は易接着層の上にコートされる各種の蒸着層に応じて易接着成分を選択できることなどから広く利用されている。
【0005】
易接着層の構成成分としては、作業性、安全性およびコスト面から水性樹脂が汎用されているが、蒸着金属との接着性向上にはとりわけポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂などが好適に使用される。
【0006】
また、前記の水性樹脂に各種の硬化剤を配合し、易接着層としての性能、特に耐水性、耐熱性を向上させることが実施されている。この目的で使用される硬化剤としては、たとえばイソシアネート化合物やメラミン化合物およびエポキシ化合物などが挙げられる(例えば、特許文献1、2参照)。イソシアネート化合物を使用して易接着性フィルムを得る方法が記載されている。
【特許文献1】特公昭56−151562号公報
【特許文献2】特公昭61−10311号公報
【0007】
しかしながら、これら既存の技術を用いた易接着層は、製袋後に内容物を充填するとそれにより接着性が低下してしまうという問題があった。
【0008】
すなわち、水性易接着コート剤として用いられる各種硬化剤、架橋剤は、添加量が少なく,十分な層間接着性が得られておらず、昨今の食品包材に対する厳しい品質水準に鑑みて、その要求に応えられないことがしばしばある。
【0009】
易接着層としてポリウレタンやポリエステル系樹脂等の水性樹脂に実質的に水不溶性のアミノ樹脂を添加することにより、耐熱性ならびに耐水性に優れた易接着性プラスチックフィルムが得られるが、アミノ樹脂が水不溶性であるため、安定した樹脂水溶液もしくは水分散液を調製することが困難である。
一方、ポリエステルフィルムに水分散性樹脂とトリアジン環を有するアミノ樹脂を易接着層として設け、該易接着層上に無機酸化物層を積層したバリア性フィルムが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献3】特開2005−74879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決し、無機酸化物層との優れた接着性を有し、それにより蒸着後のガスバリア性に優れ,かつ、内容物充填後による接着性,ガスバリア性が悪化しないプラスチックフィルムおよびその包装体を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂からなる易接着層が形成され、ATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比が,0.010以上であることを特徴とする易接着性ポリエステルフィルムである。
【0012】
本発明のガスバリア性包装体は基材フィルムの少なくとも片面に、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂からなる易接着層を含む。前記易接着層は、基材フィルムとの密着性に優れており,かつ,蒸着層を積層する場合の衝撃に十分耐える強度を有しており,蒸着層との密着性にも優れることにより、高いバリア性を発現することができる。
【0013】
加えて、本発明のガスバリア性包装体は、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂を、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂成分と同量あるいはそれ以上の量を配合することにより、蒸着後のガスバリア性に優れるという特徴を有する。
【0014】
これらにより、製袋充填後の内容物の作用による蒸着層の基材フィルムからの剥がれ,浮き、蒸着層の割れが抑制され、優れた接着性・ガスバリア性を発現することができ、ガスバリア包装用途に好適な包装体が得られる。
【0015】
これは、からし・わさび等の香気成分が微量ではあるが包装体を透過していく際に蒸着層,易接着層へ作用して、界面の接着性が低下してしまうことを見出し、また接着性の低下により、基材からの蒸着層の剥がれ・浮き、蒸着層の割れが発生して、結果的にバリア性も低下することを見出したことによる。
【0016】
前記特長は、ATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比が0.010以上であることという物性で表現することができる。この吸光度比が0.010未満の場合はバリア効果の悪化により、ガスバリア性包装用途として好適な包装体が得られない。
【0017】
蒸着フィルムのガスバリア性において,蒸着層と基材フィルム間の密着性がポイントとなり,蒸着層の密着性が弱いとガスが層間に浸透しガスの透過する面積が広がるため,ガスバリア性は低下する。トリアジン環を有するアミノ樹脂成分の添加は,この密着性向上に寄与している。 ATR−IR法による測定は,この密着性を向上させる架橋材成分の存在量を,非常に薄い易接着層から精度よく定量することが可能となる。
【0018】
前記のATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比は,水蒸気バリア性の観点から0.010以上が好ましく,特に好ましくは0.015以上,更に好ましくは0.020以上である.また,この吸光度が大きくなると,それは膜厚の上昇を意味し,得られたポリエステルフィルムの屈曲性に悪影響を及ぼす.この観点から,ATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比は0.2以下が好ましい。
【0019】
また,上記易接着層を設けることにより,加熱時の基材フィルムからのオリゴマー析出/凝集も抑制されている.このことにより,蒸着時の異物による欠陥が抑制されており,よりハイレベルなガスバリアフィルムを形成することができる。
【0020】
この場合において、前記水溶性もしくは水分散性樹脂がポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂の少なくとも1種であることが好適である。
【0021】
また、この場合において、前記易接着層を形成する前記各成分(A)、(B)において、成分(A)と成分(B)の質量比が50/50〜5/95であることが好適である。
【0022】
さらにまた、この場合において、前記水溶液または水分散液を二軸配向結晶化終了前の基材フィルムに塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理することが好適な製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、接着性・ガスバリア性に優れ、内容物充填によるフイルム特性の劣化を防止し、性能維持することが可能なプラスチックフィルム、包装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明における易接着層の構成に適用される水溶性もしくは水分散性樹脂としては、ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,アクリル樹脂があげられる.中でも,ウレタン樹脂またはポリエステル樹脂が混合しやすく,バリア性発現においても好ましい。
【0026】
本発明における易接着層の構成に適用される水溶性もしくは水分散性ポリウレタン樹脂としては、各種ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリ尿素樹脂およびそれらのプレポリマー等が例示できる。このようなウレタン樹脂の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどのジイソシアネート成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコールなどのジオール成分との反応物、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、アミノ化合物、アミノスルホン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、重亜硫酸などとの反応物などを挙げることができる。
【0027】
また、水溶性もしくは水分散性ポリエステル樹脂としては、各種ポリエステル樹脂およびそれらの変性物が例示できる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどのジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などによる変性物も含まれる。
【0028】
本発明における易接着層には、トリアジン環を有するアミノ樹脂を用いることが必要である。アミノ樹脂としては、例えばメラミン、ベンゾグアナミンなどのホルムアルデヒド付加物、さらにこれらの炭素原子数が1〜6のアルコールによるアルキルエーテル化合物を挙げることができる。具体的にはメトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメトキシ化メチロールベンゾグアナミンであり、それぞれ単独または併用して使用することができる。
【0029】
本発明における易接着層において、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂と(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂の構成比はA/B=50/50〜5/95(質量比)にする必要があり、好ましくは45/55〜10/90,更に好ましくは45/50〜15/85である。この範囲内とすることにより、水分散性を確保することができるとともに、基材フィルムと蒸着層間の接着性に優れ、優れたガスバリア性を発揮することができる。(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂の,(A)水溶性もしくは水分散性樹脂に対する配合比が50質量%より低いと内容物による接着性の低下が得られず、また95質量%より多くしても得られる接着性に大きな向上は認められず、配合液のポットライフが低下する悪影響がある。
【0030】
本発明において、フィルム基材に塗工する易接着層の水溶液もしくは水分散液の濃度は、1〜30質量%とするのが適当であり、フィルムへの塗工性ならびに作業性から3〜10質量%がさらに好ましい。
【0031】
また、該水溶液または水分散液ならびに基材フィルムには、本発明の効果を妨げない範囲において、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤等の各種添加剤を配合することも可能である。
【0032】
本発明におけるフィルム基材は特に限定されないが、特にポリエステルフィルムを適用すると優れた効果が得られる。ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレートなどが例示できるが、特にポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が最も好ましい。機械的性質、耐熱性および透明性などに優れ、好適な食品包材である。
ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造には特に制限は無く、公知の方法を用いることができるが、フィルム物性・生産コストの点から逐次二軸延伸法が好ましい。
また、該フィルムは同種もしくは異種の積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0033】
本発明におけるポリエステルフィルム厚みは特に限定されないが、一般的には5〜250μmであり、包装体へ使用される場合は10〜60μmであることが望ましい。
【0034】
本発明における易接着層の水溶液または水分散液を基材フィルムにコーティングする方法として、たとえば二軸配向結晶化終了前の基材フィルム、すなわち未延伸ないしは一軸延伸フィルムに上記水溶液または水分散液を塗布し、延伸熱処理を経て二軸延伸フィルムを得るいわゆるインラインコート法に適用できる。インラインコート法は、未延伸ないしは一軸延伸フィルムに上記水溶液または水分散液を塗布したのち延伸熱処理を実施するため、延伸後コーティングを施すポストコート法よりも易接着層を薄くすることが可能であり、基材フィルムと蒸着層等の密着性を高めることができる。また、易接着層の塗布工程が基材フィルムの製造工程に組み込まれていることから、低コストで該易接着コートフィルムの製造が可能である。なお基材フィルムの延伸方法に関しては、材質に応じてテンター式同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法を適用することができる。
【0035】
本発明において、水溶液または水分散液を塗布、熱処理してなる易接着層の厚みは、0.01〜0.5μmが好ましい。0.01μmより薄いと接着性が低下し、0.5μmより厚いと易接着性向上等に有意な変化が見られず、むしろフィルム巻物にブラッシングないしはブロッキングが生じ、易接着層の裏写りやフィルム巻出し時の易接着層損壊やさらにはフィルム切断が発生するなど弊害が生じ、コスト面にも不利である。水分散液の塗布方法としては、既知の任意の方法を選択することができ、例えば、バーコート法、エアーナイフコート法、リバースロールコート法、グラビアロールコート法を適用することができる。中でも、生産性・塗工精度の点からバーコート法もしくはリバースロールコート法が好適である。
【0036】
本発明により提供されるガスバリア性包装体の表面にコロナ処理をはじめとする表面活性処理を施したり、印刷、各種機能コーティング、ラミネート等を行うことにより諸性能を付加し、その利用価値をさらに向上させることも可能である。
【0037】
本発明における無機酸化物層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法、あるいはCVD法(化学蒸着法)などが適宜用いられる。
無機酸化物は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど薄膜にできるものなら特に制限はないが、より好ましくは酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含む多元系無機酸化薄膜の方が効果は大きい。ここでいう、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含む多元系無機酸化物薄膜とは、無機酸化物からそれ自体公知の方法で形成された薄膜であって、無機酸化物とは、酸化珪素・酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど薄膜化できる無機酸化物であれば特に制限はないが、好ましい無機酸化物は酸化アルミニウム、酸化珪素を含む多元系無機酸化物薄膜、より好ましくは酸化珪素・酸化アルミニウム二元系無機酸化物薄膜である。
【0038】
本発明におけるヒートシール性樹脂とは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体、アイオノマーなどにより形成されたヒートシール性を有するフィルムである。実用的には、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、線状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンからなるフィルムをヒートシール性樹脂層として用いることが多い。このヒートシール性樹脂層の厚みとしては、3〜100μm程度、好ましくは5〜70μm程度であるのが一般的である。
【0039】
また、ヒートシール層の形成方法としては押出しラミネート法により直接溶融押出ししてもよいし、あらかじめ、フィルム状にしたシーラントフィルムを用い、ドライラミネート又は押出しラミネートで接着してもよい。
【0040】
製袋方法としては特に制限は無く、用途・目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
製袋方法により袋形態も異なるが、これについても制限は無い。わさび・からし等を充填・製袋する場合は生産性の点から、自動充填機による四方シールの形態が好適である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0042】
(1)ATR法による1540cm-1と1340cm-1の吸光度測定
フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製,)を使用し、固体ATR法により吸光度を求めた。クリスタルはSe結晶を用い、バックグラウンド測定、サンプル測定とも資料室内を十分に窒素置換した後に測定を行った。定量は、ベースラインとして該当ピークの前後の最小値を結んだ線をベースラインとして(1540cm-1では、1510付近、1600cm-1付近の最小値を結んだ線、1340cm−1では1310cm-1付近、1360cm-1付近の最小値を結んだ線)、該当波長のピーク高さを読み取り,計算した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0043】
(2)ラミネートフィルムの作成
蒸着源として、3mm〜5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とAl23(純度99.9%)を用いて、電子ビーム蒸着法で、得られた易接着フィルム上に酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の混合ガスバリア層の形成を行った。真空層内には、巻き出し部、コーティング部、巻取り部が入っており、連続でフィルムに蒸着が可能である。蒸着時の圧力を1.0×10-4Torrになるように調整した。SiO2とAl23は、混合せずに2つに区切って入れた。加熱源として、電子銃(以下EB銃)を用い、2種類の原料をそれぞれ時分割で加熱した。その時のEB銃のエミッション電流を1.2Aとし、SiO2とAl23の加熱比を1:2で加熱した。フィルムの送り速度は、130m/minとし、150Å(オングストローム)厚の膜を作った。また、蒸着時のフィルムを冷却する為のロールの温度を−10℃に調整した。次に、フィルムの蒸着面にポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製,TM−590/CAT56)を約3μm塗布し、80℃で熱処理した後、低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡績製 L4102 厚み40μm)を80℃に加熱した金属ロール上で490kPaのニップ圧力でドライラミネートを実施して、ラミネートフィルムを得た。
【0044】
(3)耐内容物性評価の処理方法
3方をヒートシールした袋を作成し、その中にからし・わさびをそれぞれ充填後、口をヒートシールして4方シール袋とし、その状態で40℃環境下に30日保管後した。
【0045】
(4)ガスバリア性の測定
前記処理を実施した包装体の酸素透過率を酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製 OX−TRAN100,測定条件23℃×65%RH)を用いて測定した。
【0046】
(5)接着性の測定
前記処理を実施後した包装体を15mm巾の短冊状にカットして、引張り試験機(東洋精機製 ストログラフV10−C)によりT型剥離強度(N/15mm)を測定した。
【0047】
(実施例1)
トリアジン環を有するアミノ樹脂(サイメル370,三井サイテック(株)製,固形分88%)22質量部に、水性ポリウレタン樹脂(HW340,大日本インキ株式会社製,固形分25%)78質量部を加え30分間撹拌したのち、水,イソプロパノールで希釈して総固形分濃度が5質量%となるよう濃度調整し、さらに20分間撹拌して水性樹脂配合液を得た。極限粘度0.62(30℃、フェノール/テトラクロロエタン=60/40)のPETを予備結晶化後,本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に100℃4.0倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムの片面に,上記塗布液をファウンテンバーコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.1μmとなる様に塗布し,引き続き乾燥しつつテンターに導き、100℃で予熱し、横延伸を120℃で4.0倍延伸し、6%の横方向の弛緩を行いながら225℃で熱処理を行い,厚さは12μmのニ軸延伸ポリエステルフィルムを得た。該易接着層コートフィルムに蒸着加工を施し、接着性・ガスバリア性を測定した結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2,3)
樹脂の配合比を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様の手順で水性樹脂配合液および易接着層コートフィルムを得た。水性樹脂配合液を評価した結果、および、フィルム特性を測定した結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
ポリエステル基材上に易接着層を設けないこと以外は、実施例1と同様の手順で二軸延伸ポリエステルフィルム,蒸着加工を施して、フィルム特性を評価した。
【0050】
(比較例2,3)
樹脂の配合比を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様の手順で水性樹脂配合液およびコートフィルムを作成し、水性樹脂配合液・フィルム特性の評価を実施した。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のガスバリア性包装体は、わさび・からし等の内容物充填後においても接着性・ガスバリア性が良好であるため、包装材料の幅広い用途に利用することができ、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂からなる易接着層が形成され、ATR−IR法による測定で1540cm-1の吸光度/1340cm-1の吸光度の比が0.010以上のポリエステルフィルムであり、該易接着層上に無機酸化物によるガスバリア層、ヒートシール樹脂層を順次積層したことを特徴とするガスバリア性包装体。
【請求項2】
請求項1記載のガスバリア性包装体であって、前記水溶性もしくは水分散性樹脂がポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂の少なくとも1種であることを特徴とするガスバリア性包装体。
【請求項3】
請求項1記載のガスバリア性包装体であって、前記易接着層を形成する前記各成分(A)、(B)において、成分(A)と成分(B)の質量比が50/50〜5/95であることを特徴とするガスバリア性包装体。
【請求項4】
請求項1記載のガスバリア性包装体であって、前記水溶液または水分散液を二軸配向結晶化終了前の基材フィルムに塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理することを特徴とするガスバリア性包装体の製造方法。

【公開番号】特開2007−176054(P2007−176054A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378308(P2005−378308)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】