説明

ガスバリア性成形積層体の製造方法およびガスバリア性成形積層体

【課題】ガスバリア性に優れるガスバリア性成形積層体および該フィルムを得るための、成形性に優れるガスバリア性成形積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程(A1)と、前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程(B1)と、前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)と、前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)とを有することを特徴とするガスバリア性成形積層体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性成形積層体の製造方法およびガスバリア性成形積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐水性に優れるガスバリア性フィルムの製造方法としては、プラスチックフィルム上へ、ポリカルボン酸系重合体と、ポリアルコール系重合体とを含有するコーティング液を塗工し、乾燥することによって形成されたコート層を有する積層フィルムを延伸することによって形成される延伸積層フィルムが知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。該延伸積層フィルムは熱処理することにより、ポリカルボン酸系重合体中のカルボキシル基と、ポリアルコール系重合体中の水酸基とのエステル結合が形成されており、該エステル結合が存在するためガスバリア性と耐水性に優れる積層フィルムであった。しかしながら、ガスバリア性と耐水性とを得るためには、高温長時間の熱処理によって、充分なエステル結合を形成する必要があり、生産性に劣る傾向にあった。また、エステル結合が充分に形成されていない場合には、ガスバリア性の低下の原因となり、未だ改善の余地があった。
【0003】
また、延伸フィルム上へポリカルボン酸とハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基が結合した金属原子を含む化合物の加水分解縮合物とを含む層が形成されたガスバリア性積層体が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
しかし、該積層体はガスバリア層の柔軟性(延伸性)に欠けるため、積層体を延伸するとガスバリア性が劣化するものであった。
【特許文献1】特開平10-316779号公報
【特許文献2】特開2000-37822号公報
【特許文献3】国際公開第05/053954号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、様々な形状のガスバリア性成形積層体を製造することができる成形性に優れるガスバリア性成形積層体の製造方法および該製造方法で得られるガスバリア性に優れるガスバリア性成形積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法によって得られるガスバリア性成形積層体は、ガスバリア性および成形性に優れることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1のガスバリア性成形積層体の製造方法は、
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程(A1)と、
前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程(B1)と、
前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)と、
前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)と
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2のガスバリア性成形積層体の製造方法は、
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A2)を積層し、積層体(A2)を形成する工程(A2)と、
前記積層体(A2)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C2)を形成する工程(C2)と、
前記成形積層体(C2)の層(A2)上に、多価金属化合物を含む層(B2)を積層し、成形積層体(B2)を形成する工程(B2)と、
前記成形積層体(B2)の層(A2)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B2)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D2)と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3のガスバリア性成形積層体の製造方法は、
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A3)を積層し、積層体(A3)を形成する工程(A3)と、
前記積層体(A3)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C3)を形成する工程(C3)と、
前記成形積層体(C3)の層(A3)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D3)と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4のガスバリア性成形積層体の製造方法は、
基材上に、多価金属化合物を含む層(B4)を積層し、積層体(B4)を形成する工程(B4)と、
前記積層体(B4)の層(B4)上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成する工程(A4)と、
前記積層体(A4)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C4)を形成する工程(C4)と、
前記成形積層体(C4)の層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B4)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D4)と
を有することを特徴とする。
【0011】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていても
よい。)
前記工程(D1)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C1)に施す工程であることが好ましい。
【0012】
前記工程(D2)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(B2)に施す工程であることが好ましい。
前記工程(D3)が、成形積層体(C3)を多価金属化合物を含む液中に浸漬し乾燥する工程および成形積層体(C3)の有する層(A3)に多価金属化合物を含む液を噴霧し乾燥する工程からなる群から選択される少なくとも1種の工程が好ましい。
【0013】
前記工程(D4)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C4)に施す工程であることが好ましい。
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体と、可塑剤との重量比が99.5:0.5〜70:30であることが好ましい。
【0014】
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体と、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物との重量比が99.5:0.5〜40:60であることが好ましい。
【0015】
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体が、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む(共)重合体、または該(共)重合体の混合物であることが好ましい。
【0016】
前記コーティング液(A)に含まれる可塑剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、澱粉およびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤であることが好ましい。
【0017】
前記層(B1)、(B2)または(B4)に含まれる多価金属化合物がカルシウム化合物または亜鉛化合物であることが好ましい。
前記工程(D3)において、多価金属化合物がカルシウム化合物または亜鉛化合物であることが好ましい。
【0018】
前記ガスバリア性成形積層体の形状が、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、容器、タンクおよびタイヤからなる群から選択されるいずれかの形態であることが好ましい。
また、本発明には上記ガスバリア性成形積層体の製造方法によって製造されたガスバリア性成形積層体を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法は成形性に優れるため、様々な形状のガスバリア性成形積層体を製造することができ、得られるガスバリア性成形積層体は、ガスバリア性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法としては、以下の第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法が挙げられる。
【0021】
なお、第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法を、それぞれ第1〜4の製造方法
とも記す。
すなわち、本発明の第1のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程(A1)と、前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程(B1)と、前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)と、前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明の第2のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A2)を積層し、積層体(A2)を形成する工程(A2)と、前記積層体(A2)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C2)を形成する工程(C2)と、前記成形積層体(C2)の層(A)上に、多価金属化合物を含む層(B2)を積層し、成形積層体(B2)を形成する工程(B2)と、前記成形積層体(B2)の層(A2)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B2)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D2)とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の第3のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A3)を積層し、積層体(A3)を形成する工程(A3)と、前記積層体(A3)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C3)を形成する工程(C3)と、前記成形積層体(C3)の層(A3)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D3)とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の第4のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、多価金属化合物を含む層(B4)を積層し、積層体(B4)を形成する工程(B4)と、前記積層体(B4)の層(B4)上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成する工程(A4)と、前記積層体(A4)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C4)を形成する工程(C4)と、前記成形積層体(C4)の層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B4)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D4)とを有することを特徴とする。
【0025】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
以下、本発明に用いる各成分(基材、ポリカルボン酸系重合体、加水分解縮合物等)、
コーティング液等について詳述し、その後、ガスバリア性成形積層体の製造方法およびガスバリア性成形積層体について詳述する。
【0026】
<基材>
本発明で用いる基材は、プラスチックスやゴムからなる。
基材としては、通常プラスチックスやゴムから成形されたフィルムやシートを用いる。基材の成形法としては特に限定は無く、たとえば押出成形、射出成形、ブロー成形等の方法で成形されたものを用いることができる。
【0027】
また、基材は、単一の層から構成されるものであってもよく、あるいはラミネーション等によって複数の層から構成されるものであってもよい。
本発明で用いる基材は、後述する工程(A1)〜工程(A3)において層(A1)〜層(A3)、工程(B4)において層(B4)を積層させるためのものである。
【0028】
本発明で用いるプラスチックスからなる基材の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合体やそれらの共重合体、およびそれらの酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸
ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート等のポリエステル系重合体やそれらの共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,66共重合体、ナイロン6,12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体等のポリアミド系重合体やそれらの共重合体;ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の塩素系およびフッ素系重合体やそれらの共重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系重合体やそれらの共重合体;ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系重合体やそれらの共重合体;ポリイミド系重合体やその共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、塗料用に用いるエポキシ樹脂等の樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン等の天然高分子化合物が挙げられる。
【0029】
前記材質としては、ガスバリア性およびフィルム強度の点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン6,66共重合体、ポリスチレンが好ましい。
【0030】
また、本発明で用いるゴムからなる基材の材質としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロブレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0031】
このようなプラスチックスまたはゴムからなる基材の延伸後の厚さ(工程(C1)〜工程(C4)によって延伸した後の基材の厚さ)は、その用途などによっても異なるが、通常は5μm〜5cmである。本発明の製造方法によって得られるガスバリア性成形積層体の形状が、フィルムやシートの場合は5〜800μmが好ましく、10〜500μmがさらに好ましい。ガスバリア性成形積層体の形状が、ボトル、カップ、トレー、容器、タンクの場合は、100μm〜1cmが好ましく150μm〜80mmがさらに好ましい。ま
たガスバリア性成形積層体の形状が、タイヤである場合には、1〜5cmが好ましい。基材の厚さが前記範囲内であると、各用途での作業性および生産性に優れる。
【0032】
本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法によって得られる、ガスバリア性成形積層体は、基材と層(A1)〜層(A3)または層(B4)との、剥離強度を向上させるという観点から、基材の表面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等で表面活性化処理を施したものを用いてもよく、さらには、表面にアンカーコート層を設けた基材を用いてもよい。
【0033】
このようなアンカーコート層に用いられる樹脂としては例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂を用いることができ、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0034】
特に、ウレタン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂を構成するポリオールとしては、ポリエステル系ポリオールが好ましく、ポリエステル系ポリオールとしては、例えば多価カルボン酸などと、グリコール類とを反応させて得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。
【0035】
またウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
アンカーコート層が設けられた基材を用いる場合には、該アンカーコート層の厚みは、密着性と外観の観点から0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがより好ましい。
【0037】
本発明に用いるプラスチックスからなる基材は、未延伸のものを用いても、延伸されたものを用いても良い。例えば、基材としてTダイ方式にて溶融押出しを行い形成した厚さ120μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを90℃程度の温度で延伸倍率3倍程度の縦軸延伸を行ったものを、基材として用いてもよい。
【0038】
(ポリカルボン酸系重合体)
本発明に用いるコーティング液(A)は、ポリカルボン酸系重合体を含んでいる。ポリカルボン酸系重合体は、カルボン酸系の重合性単量体が重合したものであり、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。このようなポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0039】
また、このようなエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。さらに、これらのエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルが挙げられる。
【0040】
このようなポリカルボン酸系重合体の中でも、得られるガスバリア性成形積層体のガスバリア性の観点から、ポリカルボン酸系重合体が、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびクロトン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む(共)重合体、または該(共)重合体の混合物であることが好ましく、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む(共)重合体、または該(共)重合体の混合物であることが特に好ましい。なお、該(共)重合体において、前記重合性単量体から誘導される構成単位が80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし全構成単位を100mol%とする)。また、前記重合性単量体から誘導される構成単位以外の構成単位が含まれる場合には、その他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和単量体(ただし、エチレン性不飽和カルボン酸を除く)などが挙げられる。
【0041】
本発明に用いるポリカルボン酸系重合体は、通常は数平均分子量が2,000〜10,000,000の範囲である。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性成形積層体は充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると粘度が高いため塗工性が損なわれる。さらに、得られるガスバリア性成形積層体の耐水性の観点から、このようなポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は好ましくは5,000〜1,000,000の範囲である。
【0042】
なお、本発明に用いるポリカルボン酸系重合体としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(加水分解縮合物)
コーティング液(A)は、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物を含んでいる。下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物は、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を、ゾルゲル法を用いて加水分解および縮合反応を行うことによって得ることができる。
【0043】
なお、本明細書において「一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物」を単に「加水分解縮合物」とも記す。
また、加水分解縮合物には、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の部分加水分解縮合物、完全加水分解縮合物が含まれ、これらの混合物であってもよく、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の部分加水分解物、完全加水分解物が含まれていてもよい。
【0044】
加水分解縮合物を、ゾルゲル法を用いて製造する際の方法としては、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物に水を加えることによって加水分解およびそれに続く縮合を行う方法が挙げられる。加水分解反応を促進するために酸を添加しても良い。また、加水分解縮合物の溶解性を向上するためにアルコールを添加しても良い。
【0045】
また、本発明に用いる加水分解縮合物は、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を複数回に分けて加水分解、縮合することによって製造してもよい。つまり、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を2〜10量体程度の縮合物とした後に、該2〜10量体程度の縮合物をさらに加水分解、縮合することにより加水分解縮合物として製造してもよい。
【0046】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6
のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物としては、下記一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物および/または一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。
【0047】
2(OR3k2l2g-k-l ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、TiまたはZrであり、R3は炭素数1〜6のアルキル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基で置換された有機基である。
また、gはM2の原子価を示し、kは0〜(g−1)の整数を示し、lは0〜(g−1)の整数を示す。また1≦k+l≦(g−1)である。
3、X2、Z2が複数存在する場合には各R3、X2、Z2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR4p5j-p-q3q ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、TiまたはZrであり、R4は炭素数1〜6のアルキル基であり、R5は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X3はハロゲン原子である。
また、jはM3の原子価であり、pは0〜jの整数を示し、qは0〜jの整数を示し、1≦p+q≦jである。
4、R5、X3が複数存在する場合には各R4、R5、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0048】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0049】
コーティング液(A)は、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物を含み、好ましくは、一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物および/または一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物を含む。
【0050】
この加水分解縮合物は、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物、好ましくは一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物および/または一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物のアルコキシ基(OR1、OR3、OR4)およびハロゲン原子(
1、X2、X3)の少なくとも一部が水酸基に置換され加水分解物となり、さらに該加水
分解物が縮合することによって、金属原子(M1、M2、M3)が酸素を介して結合した化
合物が形成される。この縮合が繰り返されることにより、加水分解縮合物が得られる。
【0051】
本発明に用いる、加水分解縮合物としては、一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物、一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物、または一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物と一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物との加水分解縮合物が好ましい。
【0052】
コーティング液(A)に含まれる一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物の量は、ガスバリア性成形積層体のガスバリア性および耐水性の観点から、ポリカルボン酸系重合体と一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物との重量比(ポリカルボン酸系重合体:一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物)が99.9:0.1〜30:70であることが好ましく、99.5:0.5〜40:60であることがより好ましい。
【0053】
特に、ポリカルボン酸系重合体と、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物との重量比が、70:30〜30:70の範囲内にある時は、一般式(1)で表される化合物として、一般式(2)および一般式(3)で表される化合物の混合物を好適に用いることができる。一般式(1)で表される化合物として一般式(2)および一般式(3)で表される化合物を用いる場合、一般式(2)で表される化合物の割合が大きい場合は積層体(A1)〜積層体(A4)の有する層(A1)〜層(A4)の柔軟性に優れる傾向があり、一般式(3)で表される化合物の割合が大きい場合は、得られるガスバリア性成形積層体のガスバリア性に優れる傾向がある。一般式(1)で表される化合物としては、一般式(2)および一般式(3)で表される化合物の混合物でなくても構わないが、一般式(2)および一般式(3)で表される化合物の混合物を用いる場合、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とのモル比(一般式(2)で表される化合物:一般式(3)で表される化合物)は、0.1:99.9〜40:60の範囲にあることが好ましく、1:99〜20:80の範囲にあることがより好ましい。
【0054】
(可塑剤)
コーティング液(A)には可塑剤が含まれている。可塑剤としては、融点が低く、ポリカルボン酸系重合体と相溶する化合物であることが好ましく、具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリスリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸、澱粉、フタル酸エステルなどを例示することができる。これらは必要に応じて、混合物で用いてもよい。
【0055】
またこれらの中でも、水酸基を有するものが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、澱粉、グリセリンが、延伸性とガスバリア性の観点から好ましい。
【0056】
コーティング液(A)に含まれる可塑剤は、ポリカルボン酸系重合体と可塑剤との重量比(ポリカルボン酸系重合体:可塑剤)は通常は99.5:0.5〜70:30の範囲であり、99:1〜80:20であることが好ましい。
【0057】
可塑剤が前記範囲よりも少ない場合には、積層体(A1)〜積層体(A4)の有する層(A1)〜層(A4)の延伸および成形性が劣る傾向にある。一方、可塑剤が前記範囲よ
りも多い場合には、ガスバリア性に劣る傾向がある。
【0058】
(添加剤)
コーティング液(A)には、その他の成分として各種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、酸素吸収剤、無機塩等があげられる。
【0059】
コーティング液(A)に添加剤が含まれている場合には、ポリカルボン酸系重合体と添加剤との重量比(ポリカルボン酸系重合体:添加剤)は通常は99.9:0.1〜70:30の範囲であり、98:2〜80:20であることが好ましい。
【0060】
上記無機塩としては、溶解性の観点から、例えば次亜リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムが好適に用いられる。これらの無機塩は、エステル化反応の触媒作用があるため、可塑剤として水酸基を有するものを用いた場合には、添加することにより、熱固定を行った場合にはポリカルボン酸系重合体と可塑剤とのエステル結合が形成されやすくなる。
【0061】
前記無機塩を用いる場合、コーティング液(A)における無機塩の含有量は、ガスバリア性およびコート層の成膜性の観点から、コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、0.05化学当量以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01化学当量以下である。
【0062】
<コーティング液(A)>
本発明の第1〜第3のガスバリア性成形積層体の製造方法における工程(A1)〜工程(A3)は、基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A1)〜層(A3)を積層し、積層体(A1)〜積層体(A3)を形成する工程である。
【0063】
また、本発明の第4のガスバリア性成形積層体の製造方法における工程(A4)は、積層体(B4)の層(B4)上に、ポリカルボン酸系重合体と、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成する工程である。
【0064】
コーティング液(A)は、前記ポリカルボン酸系重合体と、一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液であり、必要に応じて添加剤等を含んでいてもよい。
【0065】
なお、コーティング液(A)に含まれる加水分解縮合物には、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の部分加水分解物、完全加水分解物、部分加水分解縮合物、完全加水分解縮合物が含まれる。
【0066】
コーティング液(A)に用いる溶媒としては、一般式(1)で表される化合物の加水分解反応においては水が必要であることを除いては、特に限定が無く、水、水と有機溶媒との混合溶媒等を用いることができるが、ポリカルボン酸系重合体の溶解性の点で水が最も好ましい。アルコール等の有機溶媒は一般式(1)で表される化合物の溶解性、コーティング液(A)の塗工性を向上する点で好ましい。さらに一般式(1)で表される化合物の加水分解反応を促進するため酸を添加してもよい。
【0067】
水としては、精製された水が好ましく、例えば蒸留水、イオン交換水などを用いること
ができる。
有機溶媒としては、炭素数1〜5の低級アルコールおよび炭素数3〜5の低級ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。
【0068】
また、水と有機溶媒との混合溶媒としては、上述した水や有機溶媒を用いた混合溶媒が好ましい。なお、混合溶媒としては、通常は水が20〜95重量%の量で存在し、該有機溶媒が80〜5重量%の量で存在する(ただし、水と有機溶媒との合計を100重量%とする)。
【0069】
また、コーティング液(A)においては、ガスバリア性および塗工性の観点から、コーティング液(A)中のポリカルボン酸系重合体と加水分解縮合物と可塑剤と添加剤との含有量(固形分重量)がコーティング液(A)の総重量に対して、1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、2〜20重量%がさらに好ましい。
【0070】
(多価金属化合物)
本発明の第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法には、層(A1)〜層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)〜(D4)が含まれる。
【0071】
本発明に用いる多価金属化合物とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属化合物である。多価金属化合物に含まれる多価金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウム、ケイ素が挙げられ、中でも透明性、ガスバリア性の観点からカルシウムまたは亜鉛が好ましい。また多価金属化合物としては、例えば前記多価金属の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、または無機酸塩や、前記多価金属のアンモニウム錯体または2〜4級アミン錯体、あるいはそれらの炭酸塩または有機酸塩が挙げられる。
【0072】
これらの多価金属化合物は、工程(D1)〜(D4)の態様によって、好適に用いられるものが異なる。例えば、工程(D3)が、成形積層体(C3)を多価金属化合物を含む液中に浸漬し乾燥する工程であり、該液が水溶液である場合には、水への溶解性およびガスバリア性の観点から、多価金属化合物としてカルシウムまたは亜鉛の有機酸塩または無機酸塩を用いることが好ましく、カルシウムや亜鉛の酢酸塩、乳酸塩、塩化物を用いることが特に好ましい。この場合、多価金属イオンを含有する水溶液における、多価金属化合物の含有量は、多価金属イオンを含有する水溶液の総重量を100重量%とすると0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましい。
【0073】
例えば、工程(D1)が成形積層体(C1)に調湿処理、ボイル処理またはレトルト処理を施す工程である場合や、工程(D2)が成形積層体(B2)に調湿処理、ボイル処理またはレトルト処理を施す工程である場合には、得られるガスバリア性成形積層体のガスバリア性の観点から、多価金属化合物として、アルカリ土類金属、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム等の多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩を用いることが好ましく、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムが特に好ましい。この場合、これらの多価金属化合物の形態は粒子状であっても、非粒子状であっても良いが、ガスバリア性の観点からは粒子状であることが好ましい。
【0074】
多価金属化合物を含む層(B1)や層(B2)を形成する場合は、上記多価金属化合物を含むコーティング液(B)を層(A1)や層(A2)上に塗布して形成することができ、また多価金属化合物を含む層(B4)を形成する場合は、上記多価金属化合物を含むコーティング液(B)を基材上に塗布して形成することができるが、蒸着法を用いて直接形成することもできる。蒸着法は公知の方法を用いるが、例えば物理蒸着法や化学蒸着法が挙げられる。物理蒸着法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があり、化学蒸着法には、プラズマCVD法や、レーザーCVD法等がある。以下には、コーティング液(B)を用いて層(A1)、層(A2)、基材上に塗布する場合について述べる。
【0075】
(コーティング液(B))
本発明において多価金属化合物を含む層(B1)、層(B2)または層(B4)は、前記多価金属化合物を蒸着法によって層(A1)、層(A2)または基材上に形成することもできるが、生産性の点で、工程(B1)、工程(B2)または工程(B4)は、前記多価金属化合物を含むコーティング液(B)を層(A1)、層(A2)または基材上に塗布して層(B1)、層(B2)または層(B4)を形成することが好ましい。
【0076】
コーティング液(B)を塗布して層(B1)、層(B2)または層(B4)を形成する場合、コーティング液(B)は上記多価金属化合物を含むコーティング液であり、各種添加剤等を含んでいてもよい。
【0077】
添加剤としては、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を用いることができる。
コーティング液(B)には、塗工性および成膜性を向上させる目的で、用いた溶媒に可溶または分散可能な樹脂を混合して用いることが好ましい。このような樹脂としては例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0078】
また、コーティング液(B)には、多価金属化合物の分散性を向上させる目的で、用いた溶媒に可溶または分散可能な分散剤を混合して用いることが好ましい。
コーティング液(B)に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチルが好ましく、また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0079】
また、これらの溶媒は1種の単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
本発明で用いるコーティング液(B)に含まれる前記多価金属化合物の含有量は、
ガスバリア性の観点から0.1〜50重量%の範囲内であることが好ましい。
【0080】
コーティング液(B)を塗布して、層(B1)、層(B2)または層(B4)を形成する方法としては、特に限定されないが、ディッピング法やスプレー塗布およびコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。コーターの種類としては、例えばエアナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター、およびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
【0081】
コーティング液(B)を乾燥させる方法としては、コーティング液(B)に含まれている溶媒を除去できればよく、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、アーチドライヤー、フローティングドライヤー、
ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等の乾燥機を用いる方法を挙げることができる。また乾燥条件としては、溶媒、乾燥方法や、装置によって適宜選択できるが、通常は40〜250℃の範囲で、0.5秒〜10分である。
【0082】
<ガスバリア性成形積層体の製造方法>
本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法としては、上述の第1〜4の製造方法が挙げられる。以下、それぞれについて詳述する。
【0083】
[第1のガスバリア性成形積層体の製造方法]
第1のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程(A1)と、前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程(B1)と、前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)と、前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)と
を有することを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0084】
(工程(A1))
工程(A1)とは、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程である。
【0085】
層(A1)は、通常上記コーティング液(A)を基材上に塗工し、乾燥することにより形成される。コーティング液(A)を基材上に塗工する方法としては、特に限定はないが、ディッピング法やスプレー塗布およびコーター、印刷機を用いて塗工する方法が挙げられる。コーター、印刷機の種類、塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター;リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
【0086】
前記コーティング液(A)を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。
【0087】
また、乾燥の条件としては、コーティング液(A)に含まれる溶媒が除去される条件である。具体的には、乾燥温度は50〜160℃であることが好ましく、60〜140℃であることがより好ましく、70〜120℃であることが特に好ましい。また、乾燥時間は0.5秒〜10分間であることが好ましく、1秒〜5分間であることがより好ましく、1秒〜2分間であることが特に好ましい。
【0088】
工程(A1)において、前記コーティング液(A)から形成された層(A1)の厚さは通常は0.001〜100μmであり、好ましくは0.01〜30μmであり、さらに好ましくは0.05〜10μmである。
【0089】
なお、工程(A1)でコーティング液(A)を塗工する基材としては、未延伸フィルムを用いても、延伸フィルムを用いても良い。延伸フィルムを用いる場合は、コーティング液(A)の塗工性および基材と層(A1)との密着性を損なわない範囲で、一軸、あるいは二軸延伸された基材を用いることが好ましい。例えば、工程(A1)で一軸(縦軸)延
伸された基材表面上にコーティング液(A)を塗工・乾燥して積層体(A1)を形成し、後述する工程(C1)においてさらに一軸(横軸)延伸および熱固定処理してもよい。
【0090】
(工程(B1))
工程(B1)とは、前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程である。
【0091】
積層体(A1)の層(A1)上に、層(B1)を形成する方法としては、上述の多価金属化合物の説明で記載した方法、好ましくはコーティング液(B)の説明で記載した方法で形成することができる。
【0092】
層(B1)の厚さとしては、工程(C1)で行われる延伸の面積倍率によっても異なるが、通常は0.1〜100μmであり、好ましくは0.1〜70μmであり、さらに好ましくは0.2〜50μmである。
【0093】
なお、第1の製造方法においては、層(A1)と層(B1)との間に、他の層を設けてもよい。
層(A1)と層(B1)との間に設けられる層としては、例えばポリイソシアネート層が挙げられる。積層体(B1)が層(B1)上に接着剤層を介して他の基材とラミネートされた場合や、ロール状に巻き重ねられている場合は問題ないが、ガスバリア性成形積層体を製造する前の積層体(B1)の状態で長時間保存する場合には、層(A1)と層(B1)とが隣接していると、層(A1)中のポリカルボン酸系重合体が、層(B1)中の多価金属化合物に由来する多価金属イオンによってイオン架橋を形成し、その後の工程(C1)における延伸性が低下する傾向がある。一方、層(A1)と層(B1)との間にポリイソシアネート層等の他の層を設けた場合には、イオン架橋の形成が遅くなるため、工程(C1)における積層体(B1)の延伸性を維持することができる。
【0094】
なお、層(A1)と層(B1)との間にポリイソシアネート層を設けた積層体(B1)は、工程(C1)で延伸されることにより、ポリイソシアネート層を薄層とすることができ、その後、工程(D)を行うことにより、層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させることができ、ガスバリア性成形積層体を製造することができる。
【0095】
(工程(C1))
工程(C1)とは、前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)を形成する工程である。
【0096】
延伸は通常、予熱処理を行った後に行う。積層体(B1)の予熱条件は、使用する基材のガラス転移点や、結晶化温度などの性質に依存するが、予熱温度は、通常35〜250℃であり、好ましくは40〜240℃であり、最も好ましくは50〜230℃である。予熱時間は通常は、1〜180秒であり、好ましくは3〜120秒である。
【0097】
延伸方法は、特に限定されないが、テンターを用いて一軸および二軸に平面に延伸する方法や、深絞り用成形機を用いてカップ、トレー等の容器状に成形する方法や、タイヤに成形する方法が挙げられる。積層体の延伸条件は使用する基材のガラス転移点や結晶化温度等の性質に依存するが、延伸温度は通常は35〜250℃であり、好ましくは40〜240℃であり、最も好ましくは50〜230℃である。
【0098】
また、本発明において、基材としてプラスチックフィルムを用いた場合であって、フィルムまたはシート状に成形する場合には、延伸を行った後に熱固定することにより、延伸
によって基材や層(A1)中に生じた分子配向が固定されるだけでなく、層(A1)に含まれている、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物が、完全加水分解縮合物で無い場合には縮合反応が促進される。熱固定の条件としては、具体的には100〜380℃で1秒〜60分間、より好ましくは100〜350℃で5秒〜30分間、最も好ましくは100〜300℃で30秒〜15分間保持することにより行うことができる。また、コーティング液(A)が添加剤として無機塩を含む場合には、熱固定条件を緩和することができる。熱固定の方法としては、例えば熱ロール加熱法および熱風過熱法等によって成形積層体を固定した状態で加熱することにより行うことができる。
【0099】
(工程(D1))
工程(D1)とは、前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程である。工程(D1)としては、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C1)に施す工程であることが好ましい。
【0100】
なお、レトルト処理とは、一般に食品保存のために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法である。通常は、食品を包装した成形積層体(C1)を、105〜140℃、0.15〜0.3MPaで、5〜120分の条件で加圧殺菌処理する。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧過熱水を利用する熱水式等があり、内容物となる食品の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。
【0101】
一方ボイル処理は、食品保存のため湿熱で殺菌する方法である。通常は、内容物にもよるが、食品を包装した、成形積層体(C1)を60〜100℃、大気圧下で、5〜120分の条件で殺菌処理を行う。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行うが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し、一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して殺菌する連続式がある。
【0102】
また調湿処理とは、通常は成形積層体(C1)を、10〜99℃、大気圧下、相対湿度20〜100%の雰囲気下に置くことである。調湿時間は、温度と湿度によってその最適な範囲が異なり、低温低湿度であるほど長時間の調湿を必要とし、高温高湿度であるほど短時間で処理を終えることができる。例えば、20℃で相対湿度80%の条件下では10時間以上、40℃で相対湿度90%の条件下では3時間以上、60℃で相対湿度90%の条件下では30分以上調湿処理を行えば、通常充分なガスバリア性を有する積層体とすることができる。また、成形積層体(C1)の層(B1)上に接着剤を介して他の基材をラミネートした場合は、ラミネートしていない場合に比べて充分なガスバリア性を発現するために必要な調湿時間は長くなる。
【0103】
[第2のガスバリア性成形積層体の製造方法]
第2のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A2)を積層し、積層体(A2)を形成する工程(A2)と、前記積層体(A2)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C2)を形成する工程(C2)と、前記成形積層体(C2)の層(A2)上に、多価金属化合物を含む層(B2)を積層し、成形積層体(B2)を形成する工程(B2)と、前記成形積層体(B2)の層(A2)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B2)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D2)とを有することを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0104】
(工程(A2))
工程(A2)とは、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A2)を積層
し、積層体(A2)を形成する工程であり、上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(A1)と同様な方法で行うことができる。
【0105】
(工程(C2))
工程(C2)とは、前記積層体(A2)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C2)を形成する工程である。
【0106】
工程(C2)としては、上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(C1)において、延伸する対象が積層体(A2)であること以外は同様な条件で行うことができる。
【0107】
(工程(B2))
工程(B2)とは、前記成形積層体(C2)の層(A2)上に、多価金属化合物を含む層(B2)を積層し、成形積層体(B2)を形成する工程である。
【0108】
成形積層体(C2)の層(A2)上に、層(B2)を形成する方法としては、上述の多価金属化合物の説明で記載した方法、好ましくはコーティング液(B)の説明で記載した方法で形成することができる。
【0109】
層(B2)の厚さとしては、通常は0.05〜10μmであり、好ましくは0.1〜5μmであり、より好ましくは0.1〜3μmである。
なお、第2の製造方法においては、層(A2)と層(B2)との間に、他の層を設けてもよい。
【0110】
(工程(D2))
工程(D2)とは、成形積層体(B2)の層(A2)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B2)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程である。工程(D2)としては、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(B2)に施す工程であることが好ましい。
【0111】
なお、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理は、それぞれ上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(D1)に記載した調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理と同様な方法で行うことができる。
【0112】
[第3のガスバリア性成形積層体の製造方法]
第3のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A3)を積層し、積層体(A3)を形成する工程(A3)と、前記積層体(A3)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C3)を形成する工程(C3)と、前記成形積層体(C3)の層(A3)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D3)とを有することを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0113】
(工程(A3))
工程(A3)とは、基材上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A3)を積層し、積層体(A3)を形成する工程であり、上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(A1)と同様な方法で行うことができる。
【0114】
(工程(C3))
工程(C3)とは、前記積層体(A3)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延
伸し、成形積層体(C3)を形成する工程であり、上記第2のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(C2)と同様な方法で行うことができる。
【0115】
(工程(D3))
工程(D3)とは、前記成形積層体(C3)の層(A3)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程である。工程(D3)としては、成形積層体(C3)を多価金属化合物を含む液中に浸漬し乾燥する工程(以下、工程(D3−1)とも記す。)および成形積層体(C3)の有する層(A3)に多価金属化合物を含む液を噴霧し乾燥する工程(以下、工程(D3−2)とも記す。)からなる群から選択される少なくとも1種の工程であることが好ましい。
【0116】
成形積層体(C3)を多価金属化合物を含む液中に浸漬し乾燥する工程(D3−1)とは、前記多価金属化合物を含有する液中、好ましくは水溶液中に、成形積層体(C3)を浸漬し乾燥することにより、工程(C3)によって延伸された層(A3)中に残存するカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させ、イオン架橋を形成し、優れたガスバリア性を有するガスバリア性成形積層体を形成する工程である。
【0117】
工程(D3−1)としては、前記多価金属化合物を含有する水溶液が貯蔵された処理槽中へ、成形積層体(C3)を連続的に搬送させて浸漬することが好ましい。
該工程(D3−1)において、処理槽は通常大気圧開放型であり、搬送ローラーを設置する数や間隔等を調整することにより、成形積層体の浸漬経路を調整することができる。
【0118】
多価金属化合物の含有量としては、得られるガスバリア性成形積層体のガスバリア性の観点から、多価金属イオンを含有する水溶液の総重量を100重量%とすると、0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましい。多価金属化合物の含有量が、0.5重量%未満では、充分なガスバリア性が得られない場合があり、50重量%を超えると、ガスバリア性成形積層体表面に余分な多価金属化合物が付着し外観不良となる場合がある。
【0119】
また、多価金属化合物を含有する液は、水溶液であることが好ましいが、アルコールを含んでいてもよい。
該工程(D3−1)における多価金属イオンを含有する液の温度は、イオン架橋を形成できる温度であれば特に限定されないが、水溶液の場合には、好ましくは5〜100℃の範囲であり、より好ましくは10〜95℃の範囲であり、さらに好ましくは15〜95℃の範囲である。浸漬時間は、多価金属イオンを含有する水溶液の温度によっても異なるが、通常は0.1秒〜60分であり、より好ましくは0.1〜30分である。
【0120】
該工程(D3−1)においては、浸漬と乾燥との間に洗浄処理を行うことが好ましい。本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法は、洗浄処理を行わない場合であっても、ガスバリア性に優れた成形積層体を得ることができる。しかし、洗浄処理を行わずに得られたガスバリア性成形積層体は、積層体表面に多価金属化合物が付着し、外観が劣る場合や、多価金属化合物として臭気を有する物質を用いた場合にはその臭気が問題となる場合がある。
【0121】
洗浄処理としては、多価金属イオンを含有する水溶液に、成形積層体(C3)を浸漬した後に、該浸漬後の成形積層体(C3)の表面に付着している過剰な多価金属化合物等を除去できれば特に限定はなく、洗浄液を貯蔵する洗浄槽を通過させてもよいし、洗浄液をシャワー状に吹き付けてもよい。
【0122】
洗浄処理に用いる洗浄液は、浸漬時に付着した余分な多価金属化合物等を除去できれば
特に限定は無く、水道水や蒸留水あるいはイオン交換水等を使用することができる。また洗浄液の温度は、通常は5〜100℃であり、洗浄時間は0.1〜60分である。
【0123】
浸漬あるいは洗浄処理の後に、浸漬後の成形積層体(C3)を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、アーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等の乾燥機を用いる方法を挙げることができる。また、乾燥条件としては、乾燥方法や装置によって適宜選択できるが、通常は40〜250℃の範囲で、0.5秒〜10分である。
【0124】
成形積層体(C3)の有する層(A3)に多価金属化合物を含む液を噴霧し乾燥する工程(D3−2)とは、多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液を成形積層体(C3)の有する層(A3)に噴霧し、乾燥することにより、工程(C3)によって延伸された層(A3)中に残存するカルボキシル基と多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋を形成することにより、優れたガスバリア性を有するガスバリア性成形積層体を形成する工程である。
【0125】
工程(D3−2)としては、多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液、を噴霧するための多湿処理槽を設けインラインで、前記成形積層体(C3)を連続的に多湿処理槽へ搬送させて、多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液を噴霧することが好ましい。
【0126】
多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液を噴霧するための多湿処理槽を用いた場合には、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液に含まれる多価金属化合物の多価金属イオンとから形成されるイオン架橋を、短時間に効率よく形成することができる。噴霧による多湿化は、好ましくは、シャワー状に微細な多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液を霧化撒布してその霧により多湿状態とされる。
【0127】
上記多湿処理槽は、基本的には処理槽上部に1個ないしは多数の噴霧口(噴霧ノズル)を設け、噴霧口から、多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液をシャワー状に噴霧して処理槽内部をその霧化した多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液によって多湿状態にされる。
【0128】
別の方法としては多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液と共に加熱水蒸気を噴霧して、相対湿度80%以上の高温多湿処理槽にて、多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液を噴霧する方法が挙げられる。これらの方法を用いることにより、上述したイオン架橋を、短時間に効率よく形成することができる。
【0129】
工程(D3−2)に用いる多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液における多価金属化合物の含有量は、ガスバリア性の観点から多価金属化合物を含む液、好ましくは水溶液の総重量を100重量%とすると、0.1〜50重量%であり、好ましくは1〜30重量%であり、3〜20重量%が最も好ましい。多価金属化合物の含有量が0.1重量%未満では、充分なガスバリア性が得られない場合があり、50重量%より大きいと、ガスバリア性成形積層体表面に余分な多価金属化合物が付着し、外観不良となり、長時間の洗浄処理が必要となる傾向がある。
【0130】
工程(D3−2)において、噴霧する際の多価金属化合物を含む水溶液の温度としては、通常水の沸点を超えない100℃以下で行う。沸点を超えると高圧下での処理が必要となるため、特殊な処理装置が必要となる。温度範囲としては好ましくは5〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは、10〜95℃の範囲であり、特に好ましくは、15〜95℃の範囲である。
【0131】
前記範囲を下回るとイオン架橋の形成に時間がかかり過ぎる場合があり、工業的な製造に適さない。また前記範囲を上回ると、高圧下での処理が必要となるため特殊な処理装置が必要となってしまう。
【0132】
工程(D3−2)において、噴霧時間は、噴霧する多価金属化合物を含む水溶液の温度などによっても異なるが、多価金属化合物を含む水溶液を常温で噴霧する場合には、通常は0.1秒〜60分であり、好ましくは0.1秒〜10分であり、より好ましくは0.1秒〜1分である。
【0133】
該工程(D3−2)においては、噴霧と乾燥との間に洗浄処理を行うことが好ましい。本発明のガスバリア性成形積層体の製造方法は、洗浄処理を行わない場合であっても、ガスバリア性に優れた積層体を得ることができる。しかし、洗浄処理を行わずに得られたガスバリア性成形積層体は、積層体表面に多価金属化合物が付着し、外観が劣る場合や、多価金属化合物として臭気を有する物質を用いた場合にはその臭気が問題となる場合がある。
【0134】
洗浄処理としては、前記工程(D3−1)に記載の洗浄方法を用いることができる。
噴霧あるいは洗浄処理の後に、噴霧後の成形積層体(C3)を乾燥させる方法としては、特に限定されず、前記工程(D3−1)に記載の乾燥方法を用いることができる。
【0135】
[第4のガスバリア性成形積層体の製造方法]
第4のガスバリア性成形積層体の製造方法は、基材上に、多価金属化合物を含む層(B4)を積層し、積層体(B4)を形成する工程(B4)と、前記積層体(B4)の層(B4)上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成する工程(A4)と、前記積層体(A4)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C4)を形成する工程(C4)と、前記成形積層体(C4)の層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B4)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D4)とを有することを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0136】
(工程(B4))
工程(B4)とは、基材上に、多価金属化合物を含む層(B4)を積層し、積層体(B4)を形成する工程である。
【0137】
基材上に、層(B4)を形成する方法としては、上述の多価金属化合物の説明で記載した方法、好ましくはコーティング液(B)の説明で記載した方法で形成することができる。
【0138】
(工程(A4))
工程(A4)とは、前記積層体(B4)の層(B4)上に、上記コーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成するである。
【0139】
工程(A4)としては、上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(A1)において、コーティング液(A)を塗工する対象が層(B4)上であること以外は同様な条件で行うことができる。
【0140】
なお、第4の製造方法においては、層(B4)と層(A4)との間に、他の層を設けてもよい。他の層としては、第1の製造方法と同様なポリイソシアネート層が例示される。
(工程(C4))
工程(C4)とは、前記積層体(A4)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C4)を形成する工程である。
【0141】
工程(C4)としては、上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(C1)において、延伸する対象が積層体(A4)であること以外は同様な条件で行うことができる。
【0142】
(工程(D4))
工程(D4)とは、前記成形積層体(C4)の層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B4)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程である。工程(D4)としては、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C4)に施す工程であることが好ましい。
【0143】
なお、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理は、それぞれ上記第1のガスバリア性成形積層体の製造方法の工程(D1)に記載した調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理と同様な方法で行うことができる。
【0144】
上記第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法において工程(D1)〜(D4)の工程を行うことにより得られるガスバリア性成形積層体に優れたガスバリア性を付与することができる。
【0145】
上記第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法は可塑剤を含んだコーティング液(A)を用いるため成形性に優れ、様々な形状のガスバリア性成形積層体を製造することができる。上記第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法の中でも、得られるガスバリア性成形積層体のガスバリア性の観点から、第1、2、4のガスバリア性成形積層体の製造方法が好ましい。
【0146】
なお、第1および4のガスバリア性成形積層体の製造方法において工程(C1)および工程(C4)を行う前に、積層体(B1)の層(B1)上、および積層体(A4)の層(A4)上に接着剤を介して他の基材をラミネートすることもできる。特に、ボトル、カップ、トレー、容器、タンクに成形する場合は、ガスバリア性や外観の観点から、ラミネートした後に工程(C1)および工程(C4)で延伸することが好ましい。ラミネートの方法としては公知のラミネート法が挙げられ、具体的にはドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出しラミネート法がある。
【0147】
ラミネートの態様は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。第1の製造方法における具体的な態様としては、例えば基材/層(A)/層(B)/ポリオレフィン、基材/層(A)/層(B)/ナイロン、基材/層(A)/層(B)/ナイロン/ポリオレフィン、基材/層(A)/層(B)/金属蒸着ナイロン/ポリオレフィン等が挙げられる。第4の製造方法における具体的な態様としては、上記第1の製造方法における具体的な態様の層(A)と層(B)の順序を入れ替えた積層構成が挙げられる。
【0148】
また、第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法において、工程(D1)、(D2)、(D4)の前後、あるいは工程(D3)の後にさらに他の基材をラミネートすることもできる。他の基材とラミネートすることで、強度、シール性やシール時の易開封性、意匠性、光遮断性、防湿性等の性能を付与することができる。ラミネートの方法としては、上記の方法が挙げられる。ラミネートの態様は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。第1、2の製造方法における具体的な態様としては、例えば基材/層(A)/層(B)/ポリオレフィン、基材/層(A)/層(B)/ナイロン、基材/層(A)/層(B)/ナイロン/ポリオレフィン、基材/層(A)/層(B)/金属蒸着ナイロン/ポリオレフィン等が挙げられる。また、第3の製造方法における具体的な態様としては、上記積層構成から層(B)を除いた態様が挙げられる。さらに第4の製造方法における具体的な態様としては、上記第1、2の製造方法における具体的な態様の層(A)と層(B)とを逆の順で積層した態様が挙げられる。
【0149】
また、上記第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法において、工程(D1)〜(D4)を行う前に、予め積層体を袋状に成形し、被包装物を包装してもよい。特に被包装物が食品である場合等は、食品を包装後、工程(D1)、(D2)、(D4)として、レトルト処理や、ボイル処理を施すことにより、該食品を同時に加熱殺菌することができる。
【0150】
<ガスバリア性成形積層体>
本発明のガスバリア性成形積層体は、上述の第1〜4のガスバリア性成形積層体の製造方法によって得ることができる。
【0151】
本発明のガスバリア性成形積層体はガスバリア性に優れ、酸素等の影響により劣化しやすい、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品などの包装材料、ボイル、レトルト等の高温殺菌処理を必要とする物品の包装材料、あるいはそれらの包装体として好適に用いることができる。
【0152】
また本発明のガスバリア性成形積層体としては、温度20℃、相対湿度80%における酸素透過度が通常は300cm3(STP)/m2・day・MPa以下であり、好ましくは100cm3(STP)/m2・day・MPa以下であり、より好ましくは10cm3
(STP)/m2・day・MPa以下である。本発明のガスバリア性成形積層体の酸素
透過度としては、低いほど好ましく、その下限としては特に限定はないが、本発明のガスバリア性成形積層体の温度20℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度としては、通常は0.01cm3(STP)/m2・day・MPa以上である。
[実施例]
本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0153】
なお、実施例、比較例で得られたガスバリア性成形積層体(Z)についての測定および評価は、以下のように行った。
(1)ガスバリア性
得られたガスバリア性成形積層体(Z)について、酸素透過度測定装置(Modern
Control社製 OXTRAN 2/20)を用いて温度20℃、相対湿度80%の条件で酸素透過度を測定した。測定方法は、JIS K−7126、B法(等圧法)、およびASTM D3985−81に準拠し、測定値は単位[cm3(STP)/m2・day・MPa]で表記した。なお、(STP)は酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。
【実施例1】
【0154】
<コーティング液(A−1)の製造>
数平均分子量200,000のポリアクリル酸水溶液(PAA:東亞合成製 アロンA−10H、固形分濃度25重量%)80gを蒸留水120gで溶解し、水溶液中の固形分濃度が10重量%であるポリアクリル酸水溶液を得た。
【0155】
次に、テトラメトキシシラン(TMOS)6.84gをメタノール8.2gに溶解し、
続いてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.36gを溶解した後、蒸留水0.51gと0.1Nの塩酸1.27gとを加えてゾルを調製し、これを攪拌しながら10℃で1時間かけて加水分解および縮合反応を行い、加水分解縮合物を得た。
【0156】
得られた加水分解縮合物を蒸留水18.5gで希釈した後、攪拌下の上記10重量%ポリアクリル酸水溶液63.4gに添加し、さらに可塑剤としてグリセリン(和光純薬製)1.3gを添加してコーティング液(A−1)を得た。
【0157】
<ガスバリア性成形積層体(Z−1)の製造>
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)(Voridian Eastman製、9921)を270℃の温度でTダイ方式にて溶融押出しを行い、15℃の冷却ロールで冷却を行い、厚さ120μmの未延伸PETフィルムを成膜した。この未延伸PETフィルムを、周速の異なる87℃の一対のロール間で縦方向に3倍延伸した。
【0158】
次いで、得られたフィルム表面上にグラビアコーターを用いてコーティング液(A−1)を塗工した後、塗工面を100℃で15秒間乾燥して層(A−1)を形成し、積層フィルム(積層体)(A2−1)を得た。得られた積層フィルム(A2−1)を100℃で30秒間予熱した後に、延伸温度100℃で横方向に3倍延伸した。その後200℃で5分間熱固定を行い、PETフィルムの厚さ13μm、層(A2−1)の厚さ0.5μmの成形積層体(C2−1)を得た。
【0159】
得られた成形積層体(C2−1)の層(A2−1)表面上に、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液(B−1))(住友大阪セメント製、ZS303、平均粒子径0.02μm、固形分濃度30重量%、分散溶剤トルエン)を乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにグラビアコーターを用いて塗工した後、90℃で2分間乾燥させてコーティング液(B−1)に由来する層(B2−1)を形成し、[PET(13μm)/層(A2−1)(0.5μm)/層(B2−1)(0.5)μm]の構成を有する成形積層体(B2−1)を得た。
【0160】
得られた成形積層体(B2−1)の層(B2−1)表面上に、未延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPとも記す。)(東レフィルム加工製、トレファンNO ZK93FM、厚さ60μm)を2液型の接着剤(三井武田ポリウレタン製、A620およびA65)を用いてドライラミネート法によってラミネートし、[成形積層体(B2−1)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する成形積層体(B2−1’)を得た。
【0161】
成形積層体(B2−1’)を15cm×20cmの大きさで2枚切り出し、CPP同士を重ねて三辺をヒートシールすることで袋状にし、平パウチを作製した。
その中に、水250mlを注入した後、残りの一辺をヒートシールして水充填パウチを作製した。このパウチを、貯湯式レトルト釜を用いて120℃で40分間レトルト処理を行った。その後、水充填パウチを取り出し、ヒートシール部を切り取って注入した水を抜き取り、フィルムに付着した水を拭き取り、ガスバリア性成形積層体(Z−1)を得た。
【0162】
ガスバリア性成形積層体(Z−1)についてガスバリア性を評価した。
ガスバリア性成形積層体(Z−1)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例2】
【0163】
<コーティング液(A−2)の製造>
実施例1のコーティング液(A−1)の製造において、グリセリン1.3gをポリビニルアルコール(和光純薬製、平均重合度1,500、以下、PVAとも記す。)1.5g
に替えた以外は同様に行い、コーティング液(A−2)を得た。
【0164】
<ガスバリア性成形積層体(Z−2)の製造>
実施例1のガスバリア性成形積層体(Z−1)の製造において、コーティング液(A−1)をコーティング液(A−2)に替えることで層(A−2)を形成した以外は同様にして、[PET(13μm)/層(A2−2)(0.5μm)/層(B2−2)(0.5)μm]の構成を有する成形積層体(B2−2)を得て、[成形積層体(B2−2)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する成形積層体(B2−2’)を得た。
【0165】
成形積層体(B2−2’)に実施例1と同様な方法でレトルト処理を施し、ガスバリア性成形積層体(Z−2)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−2)についてガスバリア性を評価した。
【0166】
ガスバリア性成形積層体(Z−2)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例3】
【0167】
<コーティング液(A−3)の製造>
数平均分子量200,000のポリアクリル酸水溶液(PAA:東亞合成製 アロンA−10H、固形分濃度25重量%)20gを蒸留水58.9gで溶解し、その後アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS:アルドリッチ製)0.44gを添加し、さらにグリセリン1.3g添加した後、攪拌し、コーティング液(A−3)を得た。
【0168】
<ガスバリア性成形積層体(Z−3)の製造>
実施例1と同様にして、厚さ120μmの未延伸PETフィルムを成膜した後、周速の異なる87℃の一対のロール間で縦方向に3倍延伸した。
【0169】
次いで得られたフィルム表面上に、実施例1で使用した、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液B−1)をグラビアコーターを用いて塗工した後、塗工面を90℃で2分間乾燥させてコーティング液(B−1)に由来する層(B4−1)を形成し積層体(B4−1)を得た。次いで積層体(B4−1)の層(B4−1)上にグラビアコーターを用いてコーティング液(A−3)を塗工した後塗工面を100℃で15秒間乾燥して層(A4−1)を形成し、積層体(A4−1)を得た。
【0170】
得られた積層体(A4−1)を100℃で30秒間予熱した後に、延伸温度100℃で横方向に3倍延伸した。
その後200℃で5分間熱固定を行い[PET(13μm)/層(B4−1)(0.5μm)/層(A4−1)(0.5μm)]の構成を有する成形積層体(C4−1)を得た。
【0171】
得られた成形積層体(C4−1)の層(A4−1)表面上に、実施例1と同様にしてラミネートを施し、[成形積層体(C4−1)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する成形積層体(C4−1’)を得た。
【0172】
成形積層体(C4−1’)に実施例1と同様な方法でレトルト処理を施し、ガスバリア性成形積層体(Z−3)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−3)についてガスバリア性を評価した。
【0173】
ガスバリア性成形積層体(Z−3)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例4】
【0174】
<コーティング液(A−4)の製造>
実施例2のコーティング液(A−2)の製造において、PVA1.5gを還元澱粉糖化物(東和化成工業製 PO20、固形分濃度70重量%、以下澱粉とも記す。)2.1gに替えた以外は同様にして、コーティング液(A−4)を得た。
【0175】
<ガスバリア性成形積層体(Z−4)の製造>
PETを270℃の温度でTダイ方式にて溶融押出しを行い、15℃の冷却ロールで冷却を行い、厚さ120μmの未延伸PETフィルムを成膜した。未延伸PETフィルムを、周速の異なる87℃の一対のロール間で縦方向に3倍延伸した。
【0176】
次いで、得られたフィルム表面上に、グラビアコーターを用いてコーティング液(A−4)を塗工した後、塗工面を100℃で15秒間乾燥し、層(A1−1)を形成し、積層体(A1−1)を得た。
【0177】
得られた積層体(A1−1)の層(A1−1)表面上に、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液(B−1))を乾燥後の厚さが1μmとなるようにグラビアコーターを用いて塗工した後、90℃で2分間乾燥させてコーティング液(B−1)に由来する層(B1−1)を形成し、積層体(B1−1)を得た。
【0178】
得られた積層体(B1−1)を100℃で30秒間予熱した後、延伸温度100℃で横方向に3倍延伸した。
その後200℃で5分間熱固定を行い[PET(13μm)/層(A1−1)(0.5μm)/層(B1−1)(0.3μm)]の構成を有する成形積層体(C1−1)を得た。
【0179】
得られた成形積層体(C1−1)の層(B1−1)表面上に、実施例1と同様にしてラミネートを施し、[成形積層体(C1−1)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する成形積層体(C1−1’)を得た。
【0180】
成形積層体(C1−1’)に実施例1と同様な方法でレトルト処理を施し、ガスバリア性成形積層体(Z−4)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−4)についてガスバリア性を評価した。
【0181】
ガスバリア性成形積層体(Z−4)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例5】
【0182】
<ガスバリア性成形積層体(Z−5)の製造>
PETを270℃の温度でTダイ方式にて溶融押出しを行い、15℃の冷却ロールで冷却を行い、厚さ120μmの未延伸PETフィルムを成膜した。
【0183】
次いで、得られたフィルム表面上に、グラビアコーターを用いてコーティング液(A−1)を塗工した後、塗工面を100℃で15秒間乾燥し、層(A1−2)を形成し、積層体(A1−2)を得た。
【0184】
得られた積層体(A1−2)の層(A1−2)表面上に、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液(B−1))を乾燥後の厚さが1μmとなるようにグラビアコーターを用いて塗工した後、90℃で2分間乾燥させてコーティング液(B−2)に由来する層(B1−2)を形成し、積層体(B1−2)を得た。
【0185】
得られた積層体(B1−2)を、深絞り型高速自動真空包装機(大森機械工業株式会社
製 FV−603型)を用いて110℃に加熱軟化させ、次いで真空成形して、成形物のサイズがφ100mm、深さ10mmの容器状の成形積層体(C1−2)を得た。上記容器の面積倍率は1.4倍であった。
【0186】
得られた成形積層体(C1−2)を、40℃、相対湿度90%の恒温槽に2日間保持し、ガスバリア性成形積層体(Z−5)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−5)についてガスバリア性を評価した。
【0187】
ガスバリア性成形積層体(Z−5)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例6】
【0188】
<コーティング液(A−5)の製造>
実施例3のコーティング液(A−3)の製造において、グリセリン1.3gをPVA1.5gに替えた以外は同様に行い、コーティング液(A−5)を得た。
【0189】
<ガスバリア性成形積層体(Z−6)の製造>
未延伸ポリプロピレンシート(CPP、東レフィルム加工製 トレファンNO ZK93FM、厚さ60μm)上に、グラビアコーターを用いてコーティング液(A−5)を塗工した後、塗工面を100℃で15秒間乾燥し、層(A1−3)を形成し、積層体(A1−3)を得た。
【0190】
得られた積層体(A1−3)の層(A1−3)表面上に、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液(B−1))を乾燥後の厚さが1μmとなるようにグラビアコーターを用いて塗工した後、90℃で2分間乾燥させてコーティング液(B−2)に由来する層(B1−3)を形成し、積層体(B1−3)を得た。
【0191】
得られた積層体(B1−3)の層(B1−3)表面上に、実施例1と同様にしてラミネートを施し、[積層体(B1−3)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する積層体(B1−3’)を得た。
【0192】
得られた積層体(B1−3’)を真空・圧空成形機(東葛大和製作所製 PF−2940型)を用いて210℃に加熱軟化させ、溶融、絞り成形して、成形物のサイズが、横180mm、縦120mm、深さ50mmの容器状の成形積層体(C1−3)を得た。上記容器の面積倍率は2.4倍であった。
【0193】
得られた成形積層体(C1−3)に実施例1と同様な方法でレトルト処理を施し、ガスバリア性成形積層体(Z−6)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−6)についてガスバリア性を評価した。
【0194】
ガスバリア性成形積層体(Z−6)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
【実施例7】
【0195】
<ガスバリア性成形積層体(Z−7)の製造>
PETを270℃の温度でTダイ方式にて溶融押出しを行い、15℃の冷却ロールで冷却を行い、厚さ120μmの未延伸PETフィルムを成膜した。未延伸PETフィルムを、周速の異なる87℃の一対のロール間で縦方向に3倍延伸した。
【0196】
次いで、得られたフィルム表面上に、グラビアコーターを用いて、実施例6で用いたコーティング液(A−5)を塗工した後、塗工面を100℃で15秒間乾燥し、層(A3−1)を形成し、積層体(A3−1)を得た。
【0197】
得られた積層体(A3−1)を100℃で30秒間予熱した後、延伸温度100℃で横方向に3倍延伸した。
その後、200℃で5分間熱固定を行い、PETフィルムの厚さ13μm、層(A3−1)の厚さ0.5μmの成形積層体(C3−1)を得た。
【0198】
得られた成形積層体(C3−1)を、60℃に加温した10重量%酢酸亜鉛含有水溶液に10秒間浸漬し、次いで水道水で洗浄した後、90℃で2分間乾燥させて[PET(13μm)/層(A3−1)(酢酸亜鉛浸漬後)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Y−7)を得た。
【0199】
得られたガスバリア性成形積層体(Y−7)の層(A3−1)(酢酸亜鉛浸漬後)表面上に、実施例1と同様にしてラミネートを施し、[ガスバリア性成形積層体(Y−7)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Z−7)を得た。
【0200】
ガスバリア性成形積層体(Z−7)についてガスバリア性を評価した。
ガスバリア性成形積層体(Z−7)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
[比較例1]
<コーティング液(A−6)の製造>
実施例1のコーティング液(A−1)の製造において、グリセリンを添加しなかった以外は同様に行い、コーティング液(A−6)を得た。
【0201】
<ガスバリア性成形積層体(Z−8)の製造>
実施例7のガスバリア性成形積層体(Z−7)の製造において、コーティング液(A−5)をコーティング液(A−6)に替えることで層(A3−1C)を形成した以外は同様にして、PETフィルムの厚さ13μm、層(A3−1C)の厚さ0.5μmの成形積層体(C3−1C)を得て、[PET(13μm)/層(A3−1C)(酢酸亜鉛浸漬後)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Y−8)および[ガスバリア性成形積層体(Y−8)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Z−8)を得た。
【0202】
ガスバリア性成形積層体(Z−8)についてガスバリア性を評価した。
ガスバリア性成形積層体(Z−8)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
比較例1は実施例と比較してガスバリア性が劣っているが、これは可塑剤を用いていないため、延伸した際に層(A3−1C)に亀裂が入ったためと考えられる。
【0203】
[比較例2]
<コーティング液(A−7)の製造>
実施例3のコーティング液(A−3)の製造において、グリセリンを添加しなかった以外は同様に行い、コーティング液(A−7)を得た。
【0204】
<ガスバリア性成形積層体(Z−9)の製造>
実施例7のガスバリア性成形積層体(Z−7)の製造において、コーティング液(A−5)をコーティング液(A−7)に替えることで層(A3−2C)を形成し、さらに10重量%酢酸亜鉛含有水に替えて酢酸カルシウム水溶液を用いた以外は同様にして、PETフィルムの厚さ13μm、層(A3−2C)の厚さ0.5μmの成形積層体(C3−2C)を得て、[PET(13μm)/層(A3−2C)(酢酸カルシウム浸漬後)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Y−9)および[ガスバリア性成形積層体(Y−9)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有するガスバリア性成形積層体(Z−9)を得た。
【0205】
ガスバリア性成形積層体(Z−9)についてガスバリア性を評価した。
ガスバリア性成形積層体(Z−9)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
比較例2は実施例と比較してガスバリア性が劣っているが、これは可塑剤を用いていないため、延伸した際に層(A3−2C)に亀裂が入ったためと考えられる。
【0206】
[比較例3]
<ガスバリア性成形積層体(Z−10)の製造>
比較例1で用いたコーティング液(A−6)を用い、実施例1のガスバリア性成形積層体(Z−1)の製造と同様にして、PET上にコーティング液(A−6)を塗工して層(A2−1C)を形成し、積層体(A2−1C)を得た後、延伸および熱固定を行い、PETフィルムの厚さ13μm、層(A2−1C)の厚さ0.5μmの成形積層体(C2−1C)を得た。得られた成形積層体(C2−1C)の層(A2−1C)上に、微粒子酸化亜鉛分散液(コーティング液(B−1))を用いて層(B2−1C)を形成し、[PET(13μm)/層(A2−1C)(0.5μm)/層(B2−1C)]の構成を有する成形積層体(B2−1C)を得た。
【0207】
さらに得られた成形積層体(B2−1C)の層(B2−1C)上に、実施例1と同様にしてラミネートを施し、[成形積層体(B2−1C)/接着剤層/CPP(60μm)]の構成を有する成形積層体(B2−1C’)を得た。
【0208】
得られた成形積層体(B2−1C’)に実施例1と同様な方法でレトルト処理を施し、ガスバリア性成形積層体(Z−10)を得た。
ガスバリア性成形積層体(Z−10)についてガスバリア性を評価した。
【0209】
ガスバリア性成形積層体(Z−10)の構成を表1および2、評価結果を表3に示す。
比較例3は実施例と比較してガスバリア性が劣っているが、これは可塑剤を用いていないため、延伸した際に層(A2−1C)に亀裂が入ったためと考えられる。
【0210】
【表1】

【0211】
【表2】

【0212】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A1)を積層し、積層体(A1)を形成する工程(A1)と、
前記積層体(A1)の層(A1)上に、多価金属化合物を含む層(B1)を積層し、積層体(B1)を形成する工程(B1)と、
前記積層体(B1)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C1)を形成する工程(C1)と、
前記成形積層体(C1)の層(A1)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B1)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D1)と
を有することを特徴とするガスバリア性成形積層体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A2)を積層し、積層体(A2)を形成する工程(A2)と、
前記積層体(A2)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C2)を形成する工程(C2)と、
前記成形積層体(C2)の層(A2)上に、多価金属化合物を含む層(B2)を積層し、成形積層体(B2)を形成する工程(B2)と、
前記成形積層体(B2)の層(A2)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B2)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D2)と
を有することを特徴とするガスバリア性成形積層体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
基材上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A3)を積層し、積層体(A3)を形成する工程(A3)と、
前記積層体(A3)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(
C3)を形成する工程(C3)と、
前記成形積層体(C3)の層(A3)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D3)と
を有することを特徴とするガスバリア性成形積層体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
基材上に、多価金属化合物を含む層(B4)を積層し、積層体(B4)を形成する工程(B4)と、
前記積層体(B4)の層(B4)上に、ポリカルボン酸系重合体と、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物と、可塑剤とを含むコーティング液(A)を塗工して層(A4)を積層し、積層体(A4)を形成する工程(A4)と、
前記積層体(A4)を面積倍率が1.1〜100倍になるように延伸し、成形積層体(C4)を形成する工程(C4)と、
前記成形積層体(C4)の層(A4)に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と、層(B4)に含まれる多価金属化合物に由来する多価金属イオンとを反応させる工程(D4)と
を有することを特徴とするガスバリア性成形積層体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、TiまたはZrであり、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基、アリール基、
アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、またはメタクリロキシ基で置換されたアルキル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はグリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、またはイソシアネート基を含有する有機基である。また、mはM1の原子価を示し、nは0〜mの整数を示し、sは0または1であり、
tは0〜mの整数を示す。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記工程(D1)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C1)に施す工程であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(D2)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(B2)に施す工程であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項7】
前記工程(D3)が、成形積層体(C3)を多価金属化合物を含む液中に浸漬し乾燥する工程および成形積層体(C3)の有する層(A3)に多価金属化合物を含む液を噴霧し乾燥する工程からなる群から選択される少なくとも1種の工程であることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項8】
前記工程(D4)が、調湿処理、ボイル処理、およびレトルト処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を成形積層体(C4)に施す工程であることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項9】
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体と、可塑剤との重量比が99.5:0.5〜70:30であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体と、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物の加水分解縮合物との重量比が99.5:0.5〜40:60であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング液(A)に含まれるポリカルボン酸系重合体が、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む(共)重合体、または該(共)重合体の混合物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項12】
前記コーティング液(A)に含まれる可塑剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、澱粉およびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項13】
前記層(B1)、(B2)または(B4)に含まれる多価金属化合物がカルシウム化合物または亜鉛化合物であることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、8、9、10、11、12のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項14】
前記工程(D3)において、多価金属化合物がカルシウム化合物または亜鉛化合物であることを特徴とする請求項3、7、9、10、11、12のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項15】
前記ガスバリア性成形積層体の形状が、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、容器、タンクおよびタイヤからなる群から選択されるいずれかの形態であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のガスバリア性成形積層体の製造方法によって製造されたガスバリア性成形積層体。

【公開番号】特開2009−18473(P2009−18473A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182177(P2007−182177)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】