説明

ガスバーナ及びかまど

【課題】 燃焼ガスの火炎の流れを安定化し、燃焼騒音を低くできるガスバーナ等を提供する。
【解決手段】 本ガスバーナ50は、内燃焼筒51、内筒底部61、外燃焼筒71、及びヘッドリング81を備える。このガスバーナ50内では、パイロットバーナの火炎、さらには、メインバーナの火炎が、内筒底部61の整流ボス63により上方に安定的に流れ、下方にゆれない。そのため、火炎が安定化し、燃焼騒音を小さくすることができる。また、内燃焼筒51の炎口配列面55上に傾斜端面56を形成し、この傾斜端面56上で各炎口53がほぼ円形に開口しているため、メインバーナの火炎の笛吹き音や共鳴が起こりにくい。さらに、このガスバーナ50では、パイロットバーナ火炎用の混合ガス中のエアを、メインバーナ火炎の二次燃焼空気として利用できるため、メインバーナ火炎に充分な燃焼空気を供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ等のガス機器に使用されるガスバーナ、及び、そのようなガスバーナを備えるかまどに関する。特には、燃焼ガスの火炎の流れを安定化し、燃焼騒音を低くできるガスバーナ等に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、ガスバーナの一例を示す側面断面図である。
図9に示すガスバーナ100は、内燃焼筒101、内筒底部111、外燃焼筒121及びヘッドリング131を備えている。
内燃焼筒101には、内外側面を貫通する多数の炎口103が形成されている。炎口103は、内燃焼筒101の上、中、下3段の炎口群にわかれて配列されている。内燃焼筒101の内面(炎口配列面)105において、各炎口103は、径断面と異形状(ほぼ楕円形)に開口している。各炎口103からは、メインバーナ火炎が噴き出る。
内筒底部111は、内燃焼筒101の下端に嵌め合わされている。内筒底部111は、皿状をしており、内底面がフラットとなっている。内筒底部111には、複数のパイトッロバーナ孔115が形成されている。各パイロットバーナ孔115からは、パイロットバーナ火炎が噴き出る。
【0003】
外燃焼筒121は、内燃焼筒101及び内筒底部111を取り囲むように配置されている。外燃焼筒121は、下側中央部にスリーブ状のパイロット用ガス導入部123を備えている。このパイロット用ガス導入部123には、内壁部125及び外壁部127が一体形成されている。内壁部125の上端には、内筒底部111の下端外周縁が嵌め合わされる。外壁部127の下部には、メイン用ガス導入部129が形成されている。外燃焼筒121の内壁部125と内筒底部111との間のスペースPGSは、パイロットバーナ火炎用の燃焼ガスの通路となる。外燃焼筒121の内外壁部125、127間と内燃焼筒101との間のスペースMGSは、メインバーナ火炎用の混合ガス(燃焼ガス+燃焼用空気)の通路となる。
ヘッドリング131は、内外燃焼筒101、121の上端間に嵌め合わされている。このヘッドリング131で、メインバーナ火炎用の混合ガスの通路であるスペースMGSの上端が閉塞される。
【0004】
このようなガスバーナ100は、内筒底部111の内底面がフラットであるため、パイロットバーナの火炎、さらには、メインバーナの火炎の流れる方向が上下にゆれる現象(息をつく現象)が起こる。このような現象が起こると、火炎が不安定になるとともに、燃焼騒音が大きくなる。また、内燃焼筒101の筒内面(炎口配列面105)において、各炎口103がほぼ楕円形に開口しているため、メインバーナの火炎の笛吹き音や共鳴が起こり易い。
【0005】
次に、ガスバーナを具備するかまどの公知文献として、特許文献1(特許第2883559号公報)を例に採って説明する。
特許文献1に開示された『ガス直火型かまど』は、かまど本体壁を備えている。かまど本体壁内には、内外二層の断熱層が設けられている。内側断熱層内には燃焼室が構成され、ここに鍋が取り囲まれて配置される。内外の断熱層間には、排気ジャケットが構成される。かまど本体壁内の内側断熱層の底部には、ガスバーナが配置されている。内側断熱層内(燃焼室内)に鍋が配置された状態において、鍋の底部とガスバーナとの間は、火炎の高さの約2〜3倍の間隔が保たれるよう寸法設定されている。内側断熱層には、排気ダクトが連通している。排気ダクトは、かまど本体壁から外部へと延び出る煙突に繋がっている。排気ジャケット内及び排気ダクト内のそれぞれには、複数の外気吸入孔から外気が吸入される。
【0006】
このようなガス直下型かまどは、鍋の底部とガスバーナとの間に、火炎の高さの約2〜3倍の間隔が保たれているので、鍋内の調理品が焦げ付いたり、ガスバーナの燃焼ガスが不完全燃焼したりすることがない等とされている。また、このガス直下型かまどでは、内側断熱層内(燃焼室内)の排気ガスは、排気ジャケット及び排気ダクトを通って煙突から外部へと排気されるが、この排気の際に各外気吸入孔から外気が引き込まれ、排気ガスが冷却されるので、火災事故の防止の一助となる等とされている。
ところが、特許文献1では、単に鍋の底部とガスバーナとの間の寸法を規定しているだけで、かまど内におけるバーナの火炎の流れについては考慮されていない。
【0007】
【特許文献1】特許第2883559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、中華料理レストラン等で使用される大型のレンジ台には、主にガスバーナの燃焼火炎からの熱で被加熱物を加熱するかまどと、このかまどから排気ガスを導いて被加温物を加温するポットとを備えるタイプのものがある。このタイプのレンジ台は、一般に、かまど底部にガスバーナが配置されており、かまどと排気口との間に排気通路を介してポットが設置されている。かまど内で発生した排気ガスは、ポット内へと導入された後に、排気口から外部へと排気される。
【0009】
ここで、このタイプのレンジ台では、排気ガスをポット内に送るため、かまど底部を密閉して、排気ガスがかまど底部から逃げるのを防いでいる。このような底部が密閉されたかまど内で前述した図9のガスバーナを使用すると、かまど下方からの二次燃焼空気の自然供給ができず、メインバーナの火炎に燃焼空気不足が生じ、火炎が不安定になって燃焼騒音が大きくなる。そこで、このようなかまど内の排気ガスの熱を利用するタイプのレンジ台においても、燃焼ガスの火炎の流れを安定化し、燃焼騒音を低くすることが求められている。
【0010】
本発明は、燃焼ガスの火炎の流れを安定化し、燃焼騒音を低くできるガスバーナを提供することを目的とする。
また、そのようなガスバーナを備えるかまどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1のガスバーナは、多数の炎口の配列された内面(炎口配列面)、及び、筒底部を有する内燃焼筒と、 該内燃焼筒の外周を取り囲むように配置された外燃焼筒と、 これら両燃焼筒間に形成された混合ガス(燃焼ガス+燃焼用空気)の通路と、 前記内燃焼筒の前記炎口配列面の下方に設けられたパイロットバーナと、 前記内燃焼筒の前記筒底部の中央部で上方に立ち上がる、前記パイロットバーナの火炎を上方に安定的に導く凸部(整流ボス)と、を具備することを特徴とする。
【0012】
整流ボスのないガスバーナ(底部がフラットなガスバーナ)では、パイロットバーナの火炎、さらには、メインバーナの火炎(内燃焼筒の炎口配列面からの炎)の流れる方向が上下にゆれる現象(息をつく現象)が起こる。このような現象が起こると、火炎が不安定になるとともに、燃焼騒音が大きくなる。これに対し、本ガスバーナのような整流ボスがあると、火炎が上方に安定的に流れて下方にゆれない。そのため、火炎が安定化し、燃焼騒音を小さくすることができる。さらに、炎口配列面の下方にパイロットバーナを設けたことで、パイロットバーナがメインバーナの火炎に晒されないので、パイロットバーナの耐久性を向上することができる。
【0013】
本発明の第2のガスバーナは、多数の炎口の配列された内面(炎口配列面)、及び、筒底部を有する内燃焼筒と、 該内燃焼筒の外周を取り囲むように配置された外燃焼筒と、 これら両燃焼筒間に形成された混合ガス(燃焼ガス+燃焼用空気)の通路と、を具備し、 前記炎口配列面に、前記各炎口の軸芯に対してほぼ垂直に傾斜した傾斜端面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このようなガスバーナでは、おそらく炎口周辺での渦等の気流の乱れを抑制できることから、各炎口から噴き出される火炎の笛吹き音や共鳴が起こりにくく、よって燃焼騒音を小さくできる。
【0015】
本発明の第1のガスバーナにおいては、前記内燃焼筒の前記各炎口に送る混合ガスよりも空気過剰率の高い混合ガスを、前記パイロットバーナに送ることができる。この場合、パイロットバーナに送る混合ガス中の空気が、メインバーナの火炎(内燃焼筒の各炎口からの火炎)の二次燃焼空気となる。これにより、メインバーナの火炎に充分な燃焼空気を供給できるので、良好な燃焼を実現できる。
さらに、前記炎口配列面に、前記各炎口の軸芯に対してほぼ垂直に傾斜した傾斜端面が形成されているものとすることができる。この場合、前述した本発明の第2のガスバーナと同様に、各炎口から噴き出される火炎の笛吹き音や共鳴が起こりにくくなり、よって燃焼騒音を小さくできる。
【0016】
本発明のガスバーナにおいては、前記各炎口が、前記内燃焼筒の周方向にねじれた方向で、斜め上に傾斜するよう形成されており、 前記内燃焼筒の周方向には、前記炎口が複数口ずつ近接配列された組(連口)と、該連口の形成されていない非炎口スペースとが交互に配列されており、 前記内燃焼筒の上下方向には、前記炎口が複数段に配列されているとともに、前記連口と前記非炎口スペースとが上下に千鳥状に配列されているものとすることができる。
この場合、各炎口からの火炎が、内燃焼筒の周方向・上下方向に満遍なくスパイラル状に巻き上がり、安定的に噴き出される。そのため、燃焼騒音を一層小さくできる。
【0017】
本発明のかまどは、被加熱物を加熱するかまどであって、 前記被加熱物の底が嵌入される上部開口が設けられた、有底状のかまど本体と、 該かまど本体の上部開口周縁に設けられた、前記被加熱物を載置する開口枠と、 前記かまど本体の側面から横方向に引き出された排気通路と、を備え、 前記かまど本体内の底部に、前記請求項1〜5いずれか1項記載のガスバーナが設けられていることを特徴とする。
【0018】
このかまどによれば、かまど本体内でガスバーナが燃焼作動して発生した排気ガスが、かまど本体から排気通路へと導かれる。ここで、例えば排気通路の先にポット等の加温機器を設置する場合は、排気ガスの熱を利用してポット内の被加温物を加温することができる。かまど本体内のガスバーナは、前述の整流ボスを具備しているため燃焼騒音が小さく、よってかまどの燃焼騒音も小さくできる。さらに、ガスバーナの内燃焼筒の各炎口に送る混合ガスよりも空気過剰率の高い混合ガスをパイロットバーナに送る場合は、この混合ガス中の空気を、かまど本体内でガスバーナが燃焼作動する際の燃焼ガスの二次燃焼空気として用いることができる。そのため、かまど本体の底側から外部空気を導入しなくとも、燃焼ガスは充分に完全燃焼する。また、外部空気によって排気ガスの温度が低下することがないため、排気通路の先にポット等の加温機器を設置する場合は、排気ガスの熱を有効に利用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃焼ガスの火炎の流れを安定化し、燃焼騒音の低いガスバーナ等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るかまどを備えるレンジ台の全体構成を示す斜視図である。
図2は、図1のレンジ台のかまど、ポット及び排気口を示す断面図である。
図3は、図1のレンジ台のかまど、ポット及び排気口を示す平面図である。
図4は、かまどの構成を示す図である。(A)は平面図であり、(B)は側面断面図であり、(C)は正面図である。
【0021】
図5は、図4のかまどのガスバーナの構成を示す図である。(A)は側面断面図であり、(B)は平面図(上面図)である。
図6は、ガスバーナの内燃焼筒の構成を示す図である。(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は側面断面図である。
図7(A)は図6(C)のA−A線断面図であり、図7(B)は図6(C)のB−B線断面図であり、図7(C)は図6(C)のC−C線断面図である。
図8は、ガスバーナへの混合ガスの供給系統を模式的に示す系統図である。
【0022】
まず、図1に示すレンジ台1の全体構成について述べる。
図1のレンジ台1は、箱型の本体3を備えている。本体3の下面四隅には、脚4が設けられている。本体3の背部には、後部壁5が立ち上げられている。後部壁5の前面には、蛇口7(計2つ)、ザル受け8が取り付けられている。本体3内には、かまど20(図2〜図4参照)、湯沸用かまど40(図2、図3参照)、直火湯沸用かまど43、湯沸ポット47が設けられている。これらかまど20、湯沸用かまど40及び直火湯沸用かまど43は、本体3の上面(トッププレート3A)に一体化している。本体3のトッププレート3Aは、後部壁5から手前側に向けて下方に傾斜している。本体3の手前縁部には、排水溝(図示されず)が設けられている。清掃時にトッププレート3A上に流した水は、本体3の後部壁5から手前側に集められ、排水溝から排水される。
【0023】
レンジ台1のかまど20内には、図5〜図8に示すガスバーナ50が設けられている。このガスバーナ50は、図8に示す混合ガスの供給系統に繋がっている。この供給系統は、レンジ台1の本体3前面のガスコック11や、火力調整レバー13に接続されるノズル付きガス−エア混合器94(図8参照)等を含む。火力調整レバー13を操作すると、ガスバーナ50の火力調整を行うことができる。さらに、本体3の前面には、シャワー用のバルブ15、送風機97(図8参照)のスイッチ17、エアダンパー96(図8参照)の調整ツマミ(図示されず)の手前に位置した開閉窓19、直火湯沸用かまど43用のガスコック48が設けられている。
【0024】
以下、このレンジ台1の各部について詳細に述べる。
図2〜図4のうち、図4に最もわかり易く示すかまど20は、鋳物製の円管状部材であるかまど内筒21を備えている。このかまど内筒21の側面の一部(図4(B)中左側)には、排気口23が嵌め込まれている。この排気口23は、一定の強度をもつ耐火性素材(例えばセラミックス等)で成形されている。かまど内筒21は、かま枠本体27内に収容されている。かまど内筒21外面とかま枠本体27内面との間には、耐火セメント(キャスタブル)25が流し込まれている。この耐火セメント25は、排気口23付近を除く外周面ほぼ全体に流し込まれている。
【0025】
かま枠本体27は、ステンレス製の有底筒状部材である。かま枠本体27の上部開口外周には、かま枠28が形成されている。かま枠28の外縁部は、滑らかな曲面状に湾曲している。かま枠28の外縁部下端は、本体3のトッププレート3A(図1参照)に一体化している。かま枠本体27のかま枠28内側には、鋳物製の開口枠30が嵌め込み固定されている。開口枠30内側の開口30aには、調理用の鍋2の底が嵌入される。かま枠本体27のかま枠28及び開口枠30の高さは、手前側が奥側よりも低くなるよう傾いている(図4(B)、(C)参照)。かま枠本体27のかま枠28及び開口枠30が傾いていることで、かまど20の開口枠30上に調理用の鍋2が載置されたとき(図2参照)、この鍋2が手前側に傾き易くなり、調理者の使い勝手が良好になる。
【0026】
図2に示すように、かまど20のかまど内筒21に嵌め込まれた排気口23には、鉄製の排気パイプ31が繋がれている。この排気パイプ31は、かま枠本体27の側面を貫通して横方向(図2中右方向)に延び出ている。排気パイプ31の内側には、排気スリーブ33が嵌められている。この排気スリーブ33は、高温耐久性を有する耐火セメントをスリーブ状に成形したものである。さらに、かまど20のかま枠本体27の底面には、ガスバーナ50(図5〜図8参照)が貫通固定されている。かまど20内部において、前述の各部材間の隙間には、耐火セメントが充填されている。かま枠本体27内の底面において、ガスバーナ50の先端部周囲にも耐火セメント37が充填されている。
【0027】
図2、図3に示すように、排気パイプ31の先には、排気口39を介して湯沸用かまど40のポット枠41が繋がれている。このポット枠41は、ステンレス等製の有底筒状体であって、本体3のトッププレート3A(図1参照)に一体化している。ポット枠41の側壁内及び湯沸用かまど40の底部には、前述と同素材の耐火セメント42が充填されている。湯沸用かまど40の上部内側には、湯沸ポット47が配置される。この湯沸用かまど40では、湯沸ポット47内に溜められた水は、かまど20内から湯沸用かまど40内へと導入したガスバーナ50(図5〜図8参照)の排気ガスの熱で加温する。湯沸ポット47内の湯は、例えば鍋2を洗浄する際等に用いることができる。
【0028】
図2、図3に示すように、湯沸用かまど40のポット枠41と、本体3の後部壁5下端との間は、排気口44及び排気パイプ45で繋がれている。本体3の後部壁5内部には、排気通路となる排気スペース5Aが形成されている。後部壁5の上端には、排気口(フード)5Bが取り付けられている。かまど20内でガスバーナ50(図5〜図8参照)が燃焼すると、その排気ガスが排気口23、39内を通って湯沸用かまど40内へと導入され、さらに排気口44内を通って後部壁5の排気スペース5A内に至り、排気口5Bから外部へと排気される。
なお、図1に示す直火湯沸用かまど43は、かまど20及び湯沸用かまど40とは独立に設けられている。この直火湯沸用かまど43底部には、ガスバーナ(図示されず:このガスバーナは図1のガスコック48の操作で作動する)が配置されている。直火湯沸用かまど43内で発生した排気ガスは、図1中左側の排気スペース5Aから排気口5Bを通って外部へと排気される。
【0029】
図5〜図8のうち、図5に最もわかり易く示すガスバーナ50は、内燃焼筒51、内筒底部61、外燃焼筒71、及びヘッドリング81を備えている。このガスバーナ50は、図2に示すように、かまど20のかま枠本体27の底面に貫通固定されている。
【0030】
内燃焼筒51には、同壁を貫通する多数の炎口53が形成されている。各炎口53は、斜め上に傾斜するとともに、円周方向にねじれた方向で形成されている。この例の内燃焼筒51には、炎口53が次の通りに配列されている。すなわち、図6及び図7に示すように、炎口53は、内燃焼筒51の上、中、下3段の炎口群にわかれて配列されている(図6(B)、(C))。内燃焼筒51の周方向には、炎口53が複数口ずつ近接配列された組(連口)53A、53Bと、連口の形成されていない非炎口スペース53Cとが交互に配列されている。上段及び中段の炎口群の連口53Aは3連口であり(図7(A)、(B))、下段の炎口群の連口53Bは2連口である(図7(C))。内燃焼筒51の上下方向には、上、中、下段の炎口群の連口53A、53Bと、非炎口スペース53Cとが千鳥状に配列されている(図6(B))。このような炎口53により、火炎が内燃焼筒51の周方向・上下方向に満遍なくスパイラル状に巻き上がり(図5(B)参照)、安定的に噴き出される。
【0031】
図5(A)、図6(C)に示すように、内燃焼筒51の内面(炎口配列面)55には、各炎口53の軸芯に対してほぼ垂直に傾斜した傾斜端面56が形成されている。そして、炎口配列面55の傾斜端面56上において、各炎口53は、各炎口53に至る燃焼用混合ガス流路53′の軸方向垂直断面と同一形状(ほぼ円形)に開口している。このような各炎口53の開口形状により、各炎口53から噴き出される火炎の笛吹き音や共鳴が起こりにくくなる。
【0032】
内筒底部61は、図5に示すように内燃焼筒51の下端に嵌め合わされている。内筒底部61は、皿状をしており、内側中央部には上方に立ち上がる凸部(整流ボス)63が形成されている。この整流ボス63は、内燃焼筒51の各炎口53から噴き出る火炎(メインバーナ火炎)を上方に安定的に導き、火炎の流れを安定化して燃焼騒音を小さくする役割を果たす。この例の整流ボス63は、円錐台状に形成されている。内筒底部61には、複数のパイトッロバーナ孔65が形成されている。各パイロットバーナ孔65は、内筒底部61の底壁を上下に内側斜め方向に貫通している。各パイロットバーナ孔65は、内燃焼筒51の炎口配列面55の下方に位置している。各パイロットバーナ孔65からは、パイロットバーナ火炎が噴き出る。前述の整流ボス63により、このパイロットバーナ火炎も上方に安定的に導かれる。
【0033】
ここで、前述の整流ボス63周辺の部材の寸法例について述べる。
・内燃焼筒51、内筒底部61の内径D=95mm
・内筒底部61底面から内燃焼筒51の下段の炎口中心までの高さH=40mm
・整流ボス63の根元部外径d1=42mm
・整流ボス63の頂部外径d2=37.5mm
・整流ボス63の高さh=30mm
・整流ボス63の頂部アールr1=4mm
・整流ボス63の根元部アールr2=5mm
【0034】
外燃焼筒71は、図5に示すように内燃焼筒51及び内筒底部61を取り囲むように配置されている。外燃焼筒71は、下側中央部にスリーブ状のパイロット用ガス導入部73を備えている。このパイロット用ガス導入部73には、内壁部75及び外壁部77が一体形成されている。内壁部75の上端には、内筒底部61の下端外周縁が嵌め合わされる。外壁部77の下部には、メイン用ガス導入部79が形成されている。外燃焼筒71の内壁部75と内筒底部61との間のスペースPGSは、パイロットバーナ孔65から噴き出されるパイロットバーナ火炎用の混合ガスの通路となる。外燃焼筒71の内外壁部75、77間と内燃焼筒51との間のスペースMGSは、炎口53から噴き出されるメインバーナ火炎用の混合ガスの通路となる。
【0035】
ヘッドリング81は、内外燃焼筒51、71の上端間に嵌め合わされている。このヘッドリング81で、外燃焼筒71の内外壁部75、77間と内燃焼筒51との間のスペースMGS(メインバーナ火炎用の混合ガスの通路スペース)の上端が閉塞される。
【0036】
このようなガスバーナ50には、図8に示す混合ガスの供給系統から、燃焼ガスと燃焼用空気とが混合した混合ガスが供給される。
図8に示す混合ガスの供給系統は、同図の左下に示すガスコック11を備えている。このガスコック11は、レンジ台1の本体3の前面に配置されており(図1参照)、図示せぬガス源に繋がっている。ガスコック11には、パイロットバーナ行きガス配管91とメインバーナ行きガス配管93が取り付けられている。パイロットバーナ行きガス配管91の先には、パイロットノズル91aを介して、ガス−エア混合器92が繋がれている。ガス−エア混合器92は、ガスバーナ50のパイロット混合ガス導入部73に繋がっており、ガスバーナ50内のスペースPGSに連通している。
【0037】
メインガスバーナ行き配管93の図8中右側には、ノズル付きガス−エア混合器94が繋がれている。このノズル付きガス−エア混合器94は、ガスバーナ50のメイン用ガス導入部79に繋がっており、ガスバーナ50内のスペースMGSに連通している。ノズル付きガス−エア混合器94は、前述したようにレンジ台1の本体3前面の火力調整レバー13(図1参照)によって操作される。ノズル付きガス−エア混合器94の図8中右側には、エア配管95が繋がっている。このエア配管95は、エアダンパー96を介して送風機97に接続されている。さらに、エアダンパー96と前述のパイロットバーナ用のガス−エア混合器92との間は、エアバイパス配管98で繋がれている。
【0038】
図示せぬガス源から供給されるガスは、ガスコック11を操作することで、パイロットバーナ行きガス配管91にのみ流れるか、又は、パイロットバーナ行きガス配管91に流れるとともにメインバーナ行きガス配管93に流れる(図8では両混合器92、94にガスが流れる状態が描かれている)。一方、送風機97から供給されるエアは、エアダンパー96において分流し、メインバーナ行きのエア配管95を経てノズル付きガス−エア混合器94側に流れるとともに、パイロットバーナ行きのエアバイパス配管98を経てガス−エア混合器92側に流れる。
【0039】
パイロットバーナ行きガス配管91からのガスとエアバイパス配管98からのエアは、ガス−エア混合器92内で混合し、その混合ガスがガスバーナ50のパイロットバーナ火炎用のスペースPGS内に供給される。一方、メインバーナ行きガス配管93からのガスとエア配管95からのエアは、ノズル付きガス−エア混合器94内で混合し、その混合ガスがガスバーナ50のメインバーナ火炎用のスペースMGS内に供給される。ここで、パイロットバーナ火炎用の混合ガスの空燃比は一例で1:7程度(過剰空気比1.4程度)であり、メインバーナ火炎用の混合ガスの空燃比は一例で1:5程度(理論空気量と同じ)であって、メインバーナ火炎用の混合ガスの空気過剰率よりも、パイロットバーナ火炎用の混合ガスの空気過剰率が高い。これにより、パイロットバーナ火炎用の混合ガス中のエアをメインバーナ火炎の二次燃焼空気として利用することができ、メインバーナ火炎に充分な燃焼空気を供給できる。なお、混合ガスの空気過剰率の調整は、前述のエアダンパー96のエア調整で行うことができる。このエア調整の際には、図1の開閉窓19を開けて本体3内部の調整ツマミ(図示されず)を操作する。
【0040】
このようなガスバーナ50は、パイロットバーナの火炎、さらには、メインバーナの火炎が整流ボス63により上方に安定的に流れて下方にゆれない。そのため、火炎が安定化し、燃焼騒音を小さくすることができる。また、内燃焼筒51の炎口配列面55上に傾斜端面56を形成し、この傾斜端面56上で各炎口53がほぼ円形に開口しているため、メインバーナの火炎の笛吹き音や共鳴が起こりにくくなる。さらに、このガスバーナ50では、パイロットバーナ火炎用の混合ガス中のエアを、メインバーナ火炎の二次燃焼空気として利用できるため、メインバーナ火炎に充分な燃焼空気を供給できる。さらに、炎口配列面55の下方にパイロットバーナ孔65を設けたことで、パイロットバーナがメインバーナの火炎に晒されないので、パイロットバーナの耐久性を向上することができる。このように、本ガスバーナ50は、火炎の流れを安定化して燃焼騒音を小さくでき、前述したような底部の密閉されたかまど20内での使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態に係るかまどを備えるレンジ台の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1のレンジ台のかまど、ポット及び排気口を示す断面図である。
【図3】図1のレンジ台のかまど、ポット及び排気口を示す平面図である。
【図4】かまどの構成を示す図である。(A)は平面図であり、(B)は側面断面図であり、(C)は正面図である。
【図5】図4のかまどのガスバーナの構成を示す図である。(A)は側面断面図であり、(B)は平面図(上面図)である。
【図6】ガスバーナの内燃焼筒の構成を示す図である。(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は側面断面図である。
【図7】図7(A)は図6(C)のA−A線断面図であり、図7(B)は図6(C)のB−B線断面図であり、図7(C)は図6(C)のC−C線断面図である。
【図8】ガスバーナへの混合ガスの供給系統を模式的に示す系統図である。
【図9】ガスバーナの一例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 レンジ台 2 鍋
3 本体 5 後部壁
5A 排気スペース 5B 排気口(フード)
11 ガスコック 13 火力調整レバー
20 かまど
21 かまど内筒 23、39、44 排気口
25、37、42 耐火セメント
27 かま枠本体 28 かま枠
30 開口枠 30a 開口
31、45 排気パイプ 33 排気スリーブ
40 湯沸用かまど
41 ポット枠 43 直火湯沸用かまど
47 湯沸ポット
50 ガスバーナ
51 内燃焼筒 53 炎口
53A、53B 連口 53C 非炎口スペース
55 炎口配列面 56 傾斜端面
61 内筒底部 63 凸部(整流ボス)
65 パイトッロバーナ孔 71 外燃焼筒
73 パイロット用ガス導入部 75 内壁部
77 外壁部 79 メイン用ガス導入部
81 ヘッドリング
91 パイロットバーナ行きガス配管 91a パイロットノズル
92 ガス−エア混合器 93 メインバーナ行きガス配管
94 ノズル付きガス−エア混合器 95 エア配管
96 エアダンパー 97 送風機
98 エアバイパス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の炎口の配列された内面(炎口配列面)、及び、筒底部を有する内燃焼筒と、
該内燃焼筒の外周を取り囲むように配置された外燃焼筒と、
これら両燃焼筒間に形成された混合ガス(燃焼ガス+燃焼用空気)の通路と、
前記内燃焼筒の前記炎口配列面の下方に設けられたパイロットバーナと、
前記内燃焼筒の前記筒底部の中央部で上方に立ち上がる、前記パイロットバーナの火炎を上方に安定的に導く凸部(整流ボス)と、
を具備することを特徴とするガスバーナ。
【請求項2】
多数の炎口の配列された内面(炎口配列面)、及び、筒底部を有する内燃焼筒と、
該内燃焼筒の外周を取り囲むように配置された外燃焼筒と、
これら両燃焼筒間に形成された混合ガス(燃焼ガス+燃焼用空気)の通路と、
を具備し、
前記炎口配列面に、前記各炎口の軸芯に対してほぼ垂直に傾斜した傾斜端面が形成されていることを特徴とするガスバーナ。
【請求項3】
前記内燃焼筒の前記各炎口に送る混合ガスよりも空気過剰率の高い混合ガスを、前記パイロットバーナに送ることを特徴とする請求項1記載のガスバーナ。
【請求項4】
前記炎口配列面に、前記各炎口の軸芯に対してほぼ垂直に傾斜した傾斜端面が形成されていることを特徴とする請求項1又は3記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記各炎口が、前記内燃焼筒の周方向にねじれた方向で、斜め上に傾斜するよう形成されており、
前記内燃焼筒の周方向には、前記炎口が複数口ずつ近接配列された組(連口)と、該連口の形成されていない非炎口スペースとが交互に配列されており、
前記内燃焼筒の上下方向には、前記炎口が複数段に配列されているとともに、前記連口と前記非炎口スペースとが上下に千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のガスバーナ。
【請求項6】
被加熱物を加熱するかまどであって、
前記被加熱物の底が嵌入される上部開口が設けられた、有底状のかまど本体と、
該かまど本体の上部開口周縁に設けられた、前記被加熱物を載置する開口枠と、
前記かまど本体の側面から横方向に引き出された排気通路と、
を備え、
前記かまど本体内の底部に、前記請求項1〜5いずれか1項記載のガスバーナが設けられていることを特徴とするかまど。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−336928(P2006−336928A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161225(P2005−161225)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(592181440)株式会社マルゼン (29)
【Fターム(参考)】