説明

ガスメーター用感震装置

【課題】設置状態による感震精度ばらつきを抑制し、精度の高い感震装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス流路の開閉を行う遮断弁8と、遮断弁8の開閉を行う駆動手段9と、3軸方向の変位を検知できる加速度センサー10と、ガスメーターの設置状態を判定する設置状態判定手段11と、設置状態設定スイッチ12と、地震の判定を行う地震判定手段13とを備え、設置完了時に、加速度センサーで変位量を検知し、変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、変位量を設置定数として保存し、駆動手段により遮断弁を開放することにより、ガスメーターの設置状態の適否を判定することができるため、ガスメーターが異常な状態で設置されることを防止することができるとともに、設置定数を保存することで、設置状態のばらつきに対応して、適切に異常状態を判定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメーターの設置状態のばらつきを補正できる感震装置と、異常な設置や使用環境下でのガス遮断に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスメーター用感震装置は、振動を検知する感震素子を内蔵した容器に支持体と支持体に接続された吊り部を設け、その吊り部を棒状のフックに吊るした機構が設けられている。
【0003】
この吊り部とフックはクロス状に吊るされており、その接点を軸に比較的自由に揺れることができる。そのため、感震装置が傾斜状態にて設置されても、一定範囲内であれば水平性を確保することができる。
【0004】
そして地震発生時、上記感震装置に振動が加わっても水平性を確保しながら感震器素子で検知する構造を持っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4は、特許文献1に記載された従来の感震器を示すものである。図4に示すように、感震器1の感震素子2には吊り部4が設けられ、支持体5の上に設けられた溝に自由度がある状態でハンガー6が保持され、吊り部4がハンガー6に吊りさげられ、容器3の傾きが所定範囲内であれば重力により感震素子2が正規姿勢となる構成である。
【0006】
また別の事例として、1軸方向を検知できる加速度センサーを一定の傾斜方向に設置し、変位量を傾斜方向に変換し、設置状態および振動を検知する構造を持っている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図5は、特許文献2に記載された従来の感震装置を示すものである。図5に示すように、加速度センサー7は検出方向Mへの加速度に応じた信号を出力する。加速度センサー7はこの検出方向Mに垂直な平面がガスメーターの設置状態における鉛直方向(z方向)および水平面(x−y方向)に対して、a=b=c=45°傾斜するように取り付けられる。これによって1つの加速度センサー7で鉛直方向および水平方向の振動を検出することができる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−068687号公報
【特許文献2】特開2000−205921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成では、感震装置の水平性確保には限りがある。よって、ガスメーターの設置ばらつき、およびガスメーター内に取り付ける感震装置の取り付けのばらつきを最小限するための管理などが必要となっていた。
【0010】
特に、ガスメーターの設置については、地中から突出したガス管とガスメーターの接続が必要であり、X軸・Y軸方向の水平性を確保するには、困難な作業でもあった。
【0011】
また特許文献1では、吊り部とフックが点接点で吊るされているとは言え、360°の自由度はなく、かつ機械的接点であるため、接点部の形状ばらつきによっては、自由度を制限してしまう要素が含まれていることは否めない。
【0012】
また特許文献2では、あらかじめ加速度センサーを傾斜させているが、その傾斜に設置するばらつきは吸収できず、検知値から換算する値に誤差を生じる可能性は否めない。
【0013】
次に、ガスメーターの初期設置時は問題ないことを確認するが、その後何らかの外的要因により、設置状態が変化してしまう可能性がある。例えば、自転車やボールなどがガスメーターに衝突した場合、地盤が変化した場合などが実際に発生している。
【0014】
また、設置状態としては異常でない場合でも、何らかの外的要因により、ガスメーターに支障ある振動が加わる場合がある。例えば、車道や線路などが近くにあり、常時あるいは一時的にでも大きな振動が加わる場合などが実際に発生している。
【0015】
このようなことが発生した場合、地震による振動の検知が正しくできなくなり、遮断弁を閉止する判定が本来の判定とは違い、誤動作の原因となる。
【0016】
この感震装置は安全装置であるため、閉止のタイミングが遅くなっては不安全となり、一方早ければ日常生活で必需品であるガス供給を停止することで不便となり、安全性と信頼性の確保という観点から未だ改良の余地あった。
【0017】
本発明は、上記従来技術の有する課題を鑑みてなされたものであり、あらかじめ決められたタイミングで適切にガス供給を停止することにより、安全性と信頼性の高いガスメーター用感震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のガスメーター用感震装置は、ガスメーターのガス流路の開閉を行う遮断弁と、遮断弁の開閉動作を行う駆動手段と、3軸方向の変位を検知できる加速度センサーと、ガスメーターの設置状態を判定する設置状態判定手段と、設置状態設定スイッチと、地震の判定を行う地震判定手段とを含み、ガスメーターの設置完了時に、設置状態設定スイッチの操作によって、加速度センサーは、前記ガスメーターの設置時の3軸方向の変位量を検知し、設置状態判定手段は、変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、変位量を設置定数として保存し、駆動手段により遮断弁を開放することを特徴とするガスメーター用感震装置である。
【0019】
これにより、設置状態判定手段により、ガスメーターの設置状態の適否を判定することができるため、ガスメーターが異常な状態で設置されることを防止することができるとともに、設置定数を保存することで、設置状態のばらつきに対応して、適切に異常状態を判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガスメーターの地震を検知する感震装置が、ガスメーターの設置ばらつきや感震装置の取り付けばらつきの影響を受けず、また感震装置の取り付け方向性を限定することなく、適切なガス遮断タイミングで遮断することができる。
【0021】
また、ガスメーターの設置状態の変化にも対応して補正することができ、異常設置状態と判定すればガス遮断することができ、安全性と利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるガスメーター用感震装置の機能ブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるガスメーター用感震装置のフローチャート
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるガスメーター用感震装置のフローチャート
【図4】従来の特許文献1の感震装置の構造図
【図5】従来の特許文献2の感震装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、ガスメーターのガス流路の開閉を行う遮断弁と、前記遮断弁の開閉動作を行う駆動手段と、3軸方向の変位を検知できる加速度センサーと、前記ガスメーターの設置状態を判定する設置状態判定手段と、設置状態設定スイッチと、地震の判定を行う地震判定手段とを含み、前記ガスメーターの設置完了時に、前記設置状態設定スイッチの操作によって、前記加速度センサーは、前記ガスメーターの設置時の3軸方向の変位量を検知し、前記設置状態判定手段は、前記変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、前記変位量を設置定数として保存し、前記駆動手段により前記遮断弁を開放することを特徴とする、ガスメーター用感震装置である。
【0024】
これにより、設置状態判定手段により、ガスメーターの設置状態の適否を判定することができるため、ガスメーターが異常な状態で設置されることを防止することができるとともに、設置定数を保存することで、設置状態のばらつきに対応して、適切に異常状態を判定することが可能となる。
【0025】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記地震判定手段は、地震発生時に前記加速度センサーが検知した変位量から前記設置定数を減算した変位量が、異常振動状態と判定する変異量に達した場合、前記駆動手段は前記遮断弁を閉止するものである。
【0026】
これにより、地震判定手段は地震発生時に加速度センサーが実際に検知した変位量から設置状態に係わる変位量を差し引いた地震本来の変位量に基づき判定することが可能となり、適切にガスを遮断することが可能となるとともに、不必要な誤遮断を抑制することが可能となり、感震の精度と信頼性を向上することが可能となる。
【0027】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記加速度センサーで定期的に変位量を検知し、前記変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、前記変位量を設置定数として都度書き換えて保存し、前記設置状態判定手段で異常設置状態と判定する変位量に達した場合は、前記駆動手段により前記遮断弁を閉止するものである。
【0028】
これにより、設置後に設置状態の変化に合わせて設置定数を書き換えるため、地震判定手段は常に正確な判定が可能となり、所定のガス遮断タイミングで遮断することができるとともに、設置状態に異変が生じた場合は、短時間の中にガスを遮断して安全性を確保することができるものである。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態におけるガスメーター用感震装置の機能ブロック図、図2は同装置の動作を示すフローチャートである。
【0031】
図1において、ガスメーター内部には、ガス流路の開閉を行う遮断弁8と、遮断弁8の開閉動作を行う駆動手段9、3軸方向の変位を検知できる加速度センサー10と、ガスメーターの設置状態を判定する設置状態判定手段11、設置状態設定スイッチ12と、地震の判定を行う地震判定手段13が設置されている。
【0032】
図2において、ガスメーターの設置完了後、設置状態設定スイッチ12をONすると、加速度センサー10で3軸方向の変位量Aを検知し、設置状態判定手段11で初期の設置定数TをT=Aと設定する。この設定が完了すれば、遮断弁8が開動作を行い、ガスメーターの設置が完了する。
【0033】
一方、加速度センサー10で検知した変位量Aが、設置状態判定手段11に予め設定されているガスメーターの設置状態が異常と判定する所定の値Sに対して、A>Sの場合は、遮断弁の開動作は行われない。
【0034】
もし、その初期の設置定数Tの設定がなされなければ、設置をやり直して再度、設置状態設定スイッチ12をONする操作が必要となり、遮断弁8の開動作に移行しない。
【0035】
次に、ガスメーター設置完了後の感震装置の機能動作について、常時地震などによる振動を検知するため、加速度センサー10で3軸方向の変位量Bを検知し続ける。
【0036】
地震判定手段13で地震かどうかを判定する値として、常時検知する変位量Bから初期の設置定数Tである変位量Aを減算した値B−Aが、遮断を必要とする所定の値Rに対して、B−A<Rの場合は継続してガス使用ができるが、否の場合は駆動手段9に遮断指示信号を出力し、遮断弁8を閉止する。
【0037】
また、地震判定手段13で継続使用を判定し続ける限り、定期的に設置状態判定手段11で設置状態が異常に変化していないかの判定するため、3軸方向の変位量Cを検知し、異常と判定する所定の値Sに対して、C<Sの場合は継続してガス使用ができるが、否の場合は駆動手段9に遮断指示信号を出力し、遮断弁8を閉止する。
【0038】
以上のように、本実施の形態における感震装置は、ガスメーターの設置状態の適否を判定することができるため、ガスメーターが異常な状態で設置されることを防止することができる。
【0039】
また、ガスメーターの設置時の変位量を設置定数として保存することで、設置状態のばらつきに対応して、適切な感震を判定することが可能となり、適切なタイミングでガスを遮断することができるため、安全性と信頼性を確保することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施の形態におけるガスメーター用感震装置の動作を示すフローチャートである。
【0041】
図3において、ガスメーターの設置完了後、設置状態設定スイッチ12をONすると、加速度センサー10で3軸方向の変位量Aを検知し、設置状態判定手段11で初期の設置定数TをT=Aと設定する。この設定が完了すれば、遮断弁8が開動作を行い、ガスメーターの設置が完了する。
【0042】
もし、その初期の設置定数Tの設定がなければ、再度、設置状態設定スイッチ12をONする操作が必要となり、遮断弁8の開動作に移行しない。
【0043】
本実施の形態が実施の形態1と異なるのは、初期の設置定数Tが設定され、遮断弁8の開動作が正常になされた後の感震装置の機能動作である。
【0044】
図3に示すように、加速度センサー10で定期的に変位量Dを検知し、変位量Dが初期に設定した設置定数Tである変位量Aより変化した場合は設置定数TをDに書き換えて設定し直す。
【0045】
次に、常時地震などによる振動を検知するため、加速度センサー10で3軸方向の変位量Bを検知し続ける。
【0046】
地震判定手段13で地震かどうかを判定する値として、常時検知する変位量Bから書き換えた設置定数Tである変位量Dを減算した値B−Dが、遮断を必要とする所定の値Rに対して、B−D<Rの場合は継続してガス使用ができるが、否の場合は駆動手段9に遮断指示信号を出力し、遮断弁8を閉止する。
【0047】
また、地震判定手段13で継続使用を判定し続ける限り、定期的に設置状態判定手段11で設置状態が異常に変化していないかの判定するため、3軸方向の変位量Cを検知し、異常と判定する所定の値Sに対して、C<Sの場合は継続してガス使用ができるが、否の場合は駆動手段9に遮断指示信号を出力し、遮断弁8を閉止する。
【0048】
以上のように、本実施の形態における感震装置は、設置状態の変化に対応して設置定数を書き換えるため、常に設置状態に影響されずに正確な感震に基づくガスの遮断を行うことができるので、安全性と信頼性をより向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明によれば、ガスメーター用感震装置の設置状態のばらつきによる感震判定の精度を向上することができるため、地震検知を必要とする各種デバイスへも利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
8 遮断弁
9 駆動手段
10 加速度センサー
11 設置状態判定手段
12 設置状態設定スイッチ
13 地震判定手段
T 設置定数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスメーターのガス流路の開閉を行う遮断弁と、
前記遮断弁の開閉動作を行う駆動手段と、
3軸方向の変位を検知できる加速度センサーと、
前記ガスメーターの設置状態を判定する設置状態判定手段と、
設置状態設定スイッチと、
地震の判定を行う地震判定手段と、を含み、
前記ガスメーターの設置完了時に、前記設置状態設定スイッチの操作によって、前記加速度センサーは、前記ガスメーターの設置時の3軸方向の変位量を検知し、
前記設置状態判定手段は、前記変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、前記変位量を設置定数として保存し、
前記駆動手段により前記遮断弁を開放することを特徴とする、
ガスメーター用感震装置。
【請求項2】
前記地震判定手段は、地震発生時に前記加速度センサーが検知した変位量から前記設置定数を減算した変位量が、異常振動状態と判定する変異量に達した場合、
前記駆動手段は前記遮断弁を閉止することを特徴とする、
請求項1に記載のガスメーター用感震装置。
【請求項3】
前記加速度センサーで定期的に変位量を検知し、
前記変位量が正常状態と判定する変位量である場合は、前記変位量を設置定数として都度書き換えて保存し、
前記設置状態判定手段で異常設置状態と判定する変位量に達した場合は、前記駆動手段により前記遮断弁を閉止することを特徴とする、
請求項1または2に記載のガスメーター用感震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−18033(P2012−18033A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154576(P2010−154576)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】