説明

ガスレーザ共振器

【課題】ガスレーザ共振器において、複数の放電管を互いに連結する放電管連結ホルダ自体の熱変形、及びガスレーザ共振器の移動に伴って放電管連結ホルダに加わる加速度を考慮する。
【解決手段】レーザ共振器10は、軸線方向へ整列する2つの放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cをそれぞれに有する3つの放電管列3A、3B、3Cと、各放電管列の放電管を互いに連結して支持する放電管連結ホルダ5と、放電管1cの一端に配置される出力鏡11を備えるエンドプレート15と、放電管2aの一端に配置されるリア鏡12を備えるエンドプレート16と、両端がそれぞれエンドプレート15、16に固定された4本の支持棒21〜24とを備える。放電管連結ホルダ5は、クランプ(剛性部材)25を介して下側の支持棒21、22に固定され、クランプ(弾性部材)26、27を介して上側の支持棒23、24に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管内に導入したレーザガスを放電によって励起してレーザ光を発生するガスレーザ共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスレーザ等のガスレーザ共振器は、高効率で高出力が得られ、発生するレーザビームのビーム特性も良好であるため、精密なレーザ加工に用いるのに有利である。近年、ガスレーザ共振器は、発生ビームのワークへの照射位置などを制御するための数値制御装置と組み合わされることによって、複雑な形状を高速加工可能なレーザ加工機で、広く使用されている。
【0003】
図7は、従来のガスレーザ共振器の全体構成を模式的に示す図である(このガスレーザ共振器に類似する構成が、特許文献1に記載されている。)。このガスレーザ共振器は、例えば炭酸ガスレーザであり、図7(a)に示す例では、内部にレーザガスが供給され、供給されたレーザガス中に放電を起こすための不図示の電極が設けられた2つの放電管151、152を有している。2つの放電管151、152は、放電管連結ホルダ155を介して、互いに軸線が一直線に並ぶように連結されている。
【0004】
一方の放電管151の、放電管連結ホルダ155とは反対側の端部には、出力鏡161を備えるエンドプレート165が、放電管ホルダ156を介して取り付けられている。同様に、他方の放電管152の、放電管連結ホルダ155とは反対側の端部には、リア鏡162を備えるエンドプレート166が、放電管ホルダ157を介して取り付けられている。
【0005】
これにより、出力鏡161とリア鏡162が、互いに向かい合うように配置されたファブリペロー型の共振器が構成されている。出力鏡161とリア鏡162とが、互いに精度良く向かい合って配置され、すなわち、良好に光軸合わせがされるように、一対のエンドプレート165、166は、支持棒170によって互いに連結されている。気温変化や、ガスレーザ共振器の内部の温度の上昇が生じても、出力鏡161及びリア鏡162の両者の光軸にずれが生じないように、支持棒170は、熱膨張率の小さいインバ合金から形成されている。
【0006】
また、2つの放電管151、152を互いに連結する放電管連結ホルダ155は、それと一体に形成されて水冷等により強制冷却されるホルダクランプ175を介して、支持棒170に固定されている。レーザガスは図の矢印のように流れる。放電により温められたレーザガスが流れることにより放電管連結ホルダ155は温度上昇するが、ホルダクランプ175は強制冷却されている。それによって、支持棒170に対する放電管連結ホルダ155の位置ずれが抑制され、そのような放電管連結ホルダ155の位置ずれに起因する出力鏡161とリア鏡162との光軸合わせへの影響が生じないようになっている。
【0007】
図7(b)は、上記基本構成を有するガスレーザ共振器を高出力化した構成を例示する。この高出力レーザでは、それぞれが一対の放電管151a、152a、151b、152b、151c、152cを有する複数の放電管列153A、153B、153Cを並列に配置して、並列方向両側端の放電管列153A、153Cの一端に出力鏡161とリア鏡162とをそれぞれ設置するとともに、並列する放電管列153A、153B、153Cの端部同士の間に折返鏡163、164をそれぞれ設置している。この構成により、レーザ光軸が多段に折り返されて、全ての放電管151a、152a、151b、152b、151c、152cが光学的に直列に接続されることになる。各放電管列153A、153B、153Cの一対の放電管151a、152a、151b、152b、151c、152cは、全ての放電管列153A、153B、153Cに共通する放電管連結ホルダ155により互いに連結され、この放電管連結ホルダ155が、ホルダクランプ175により支持棒170に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3614450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来技術では、放電に伴うガスレーザ共振器の温度上昇時にも、支持棒に対する放電管連結ホルダの位置ずれが抑制され、出力鏡とリア鏡との光軸合わせに影響が生じないように考慮されている。しかしながら、特に複数の放電管列を備えた高出力のガスレーザ共振器において、放電に伴い放電管連結ホルダ自体が熱変形することによる出力鏡とリア鏡との光軸合わせに対する影響や、ガスレーザ共振器が物理的に移動させられるときにガスレーザ共振器に加わる加速度に起因する放電管連結ホルダの位置ずれについては、十分な考慮がなされていない。
【0010】
本発明の目的は、複数の放電管列を備えたガスレーザ共振器において、各放電管列が有する複数の放電管を互いに連結する放電管連結ホルダ自体の熱変形、及びガスレーザ共振器の移動に伴って放電管連結ホルダに加わる加速度を考慮して、出力鏡とリア鏡との光軸合わせの信頼性及びレーザビームの出力安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、軸線方向へ整列する複数の放電管をそれぞれに有する複数の放電管列と、複数の放電管列を、それら放電管列の軸線が互いに平行又は交差する方向へ延びるように支持する支持機構と、複数の放電管列を、それら放電管列が有する複数の放電管の全てが光学的に直列に並ぶように互いに光学的に連結する光学部品とを具備し、光学部品は、支持機構に支持された複数の放電管列の全ての放電管のうちの、光学的直列配置の両端に位置する一対の放電管の、それぞれの一端部に設置される出力鏡及びリア鏡と、支持機構に支持された複数の放電管列の、光学的連結部に設置される折返鏡とを備え、支持機構は、複数の放電管列の各々における複数の放電管を、軸線方向へ整列した状態で互いに連結して支持する放電管連結ホルダと、複数の放電管列の各々の軸線方向両端に配置され、それら放電管列を、軸線が互いに平行又は交差する方向へ延びる状態で支持する一対のエンドプレートと、両端で一対のエンドプレートに固定されて、それらエンドプレートの間に延設される支持棒と、放電管連結ホルダを支持棒に連結する弾性部材とを備えること、を特徴とするガスレーザ共振器を提供する。
【0012】
この構成によれば、放電管連結ホルダは、弾性部材を介して支持棒に連結されているので、ガスレーザ共振器に加速度が加わったときに生じ得る、慣性による放電管連結ホルダの位置ずれを、弾性部材の弾性復元力により抑制することができる。また、放電管での放電に伴う加熱によって放電管連結ホルダが熱膨張したときに、そのような熱膨張による放電管連結ホルダの変形を、弾性部材の弾性変形によって吸収することができる。このようにして、支持棒に位置ずれや歪みが生じることが防止される。
【0013】
上記構成において、出力鏡とリア鏡とを、両者の光軸が合致した状態に維持するために、支持機構は、一対のエンドプレートの間に延設される複数の支持棒を備えることが有利である。この場合、支持機構は、放電管連結ホルダを少なくとも1つの支持棒に連結する弾性部材と、放電管連結ホルダを他の少なくとも1つの支持棒に固定する剛性部材とを備えることが好ましい。この構成によれば、ガスレーザ共振器に加速度が加わったときに、剛性部材による固定作用によって、放電管連結ホルダを支持棒に対し正規の位置に安定して保持し、慣性による放電管連結ホルダの位置ずれを効果的に抑制できる。一方、放電管連結ホルダを他の少なくとも1つの支持棒に弾性部材を介して連結したから、レーザ発生時の放電管連結ホルダの熱膨張を、弾性部材の変形によって有効に吸収し、放電管連結ホルダの熱膨張による支持棒の位置ずれや歪みを防止できる。
【0014】
弾性部材としては、ばねや板金を用いることができる。
【0015】
また、通常、ガスレーザ共振器には、放電管内にレーザガスを循環させる循環系が設けられる。この循環系は、放電管連結ホルダが複数設けられる構成の場合、少なくとも1つの放電管連結ホルダを介して放電管列にレーザガスを供給し、他の少なくとも1つの放電管連結ホルダを介して放電管列からレーザガスを回収する構成とすることができる。この際、レーザガスは、放電管での放電によって加熱されるので、放電管列からの回収時に高温となり、したがって、レーザガスを回収する位置に配置される放電管連結ホルダが加熱される一方、レーザガスを供給する位置に配置される放電管連結ホルダはほとんど加熱されない。そこでこの構成では、支持機構は、レーザガスを回収する位置に配置される放電管連結ホルダを、弾性部材を介して支持棒に連結して、加熱による放電管連結ホルダの熱膨張が弾性部材によって吸収されるようにすることが好ましい。一方、レーザガスを供給する位置に配置される放電管連結ホルダは、熱膨張をほとんど生じないので、支持棒に弾性部材を介して連結する必要はなく、剛性部材を介して支持棒に固定して、ガスレーザ共振器に加わる加速度による放電管連結ホルダの位置ずれの抑制効果を高めることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性部材を介して放電管連結ホルダを支持棒に連結することによって、ガスレーザ共振器に加速度が加わったときに生じ得る、慣性による放電管連結ホルダの位置ずれを抑制でき、また、レーザ発生時に生じ得る放電管連結ホルダの熱膨張による変形を弾性部材の弾性変形によって吸収できる。その結果、放電管連結ホルダに加速度が加わったとき、及び放電管連結ホルダが熱変形したときのいずれに際しても、支持棒に位置ずれや歪みが生じることを防止でき、支持棒の歪み等に起因するエンドプレート同士の位置ずれ(傾き等)を抑制して、出力鏡とリア鏡との光軸のずれの発生を防止できる。したがって本発明によれば、ガスレーザ共振器の移動時や作動中に、エンドプレート同士の平行度及び位置関係を精度よく維持し、所望の品質のレーザビームを安定して出力することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態によるガスレーザ共振器を模式図的に示す図であって、(a)正面図、(b)平面図、(c)I−I断面図である。
【図2】変形例によるガスレーザ共振器を模式図的に示す図であって、(a)正面図、(b)平面図である。
【図3】他の変形例によるガスレーザ共振器を模式図的に示す図である。
【図4】さらに他の変形例によるガスレーザ共振器の支持機構の構成を模式図的に示す図である。
【図5】さらに他の変形例によるガスレーザ共振器の支持機構の構成を模式図的に示す図であって、(a)断面図、(b)正面図である。
【図6】さらに他の変形例によるガスレーザ共振器を模式図的に示す図であって、放電管列の光学的連結部に設置される折返鏡が、(a)1個の場合の平面図、(b)2個の場合の平面図、(c)3個の場合の平面図、及び(d)3個の場合の連結部の側面図である。
【図7】従来のガスレーザ共振器を模式図的に示す図であって、(a)正面図、(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるガスレーザ共振器10(以下、レーザ共振器10と略称する。)の全体構成を模式図的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図、図1(c)は、図1(a)の線I−Iに沿った断面図である。
【0019】
図示実施形態のレーザ共振器10は、軸線方向へ整列する複数(図では一対)の放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cをそれぞれに有する複数(図では3つ)の放電管列3A、3B、3Cと、複数の放電管列3A、3B、3Cを、それら放電管列3A、3B、3Cの軸線が互いに平行する方向へ延びるように支持する支持機構4と、複数の放電管列3A、3B、3Cを、それら放電管列3A、3B、3Cが有する複数の放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cの全てが光学的に直列に並ぶように互いに光学的に連結する光学部品9とを備える。
【0020】
各放電管列3A、3B、3Cにおける一対の放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cは、3つの放電管列3A、3B、3Cに共通する放電管連結ホルダ5(支持機構4の構成要素)を介して、互いに軸線が直線状に並ぶように連結されている。放電管連結ホルダ5は、内部に中空空間が形成されて、真空容器を形成している。各放電管列3A、3B、3Cにおける一対の放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cは、それらの内部空間が、放電管連結ホルダ5を介して軸線方向に連通し、両者間を軸線方向に光が伝播できるようになっている。
【0021】
各放電管列3A、3B、3Cにおける一方の放電管1a、1b、1cの、放電管連結ホルダ5とは反対側の端部には、共通の放電管ホルダ6を介してエンドプレート15(支持機構4の構成要素)が取り付けられている。また、各放電管列3A、3B、3Cにおける他方の放電管2a、2b、2cの、放電管連結ホルダ5とは反対側の端部には、共通の放電管ホルダ7を介してエンドプレート16(支持機構4の構成要素)が取り付けられている。放電管ホルダ6、7は、放電管連結ホルダ5と同様に真空容器を形成している。それらエンドプレート15、16は、各放電管列3A、3B、3Cの軸線方向両端に配置され、放電管ホルダ6、7を介してそれら放電管列3A、3B、3Cを、軸線が互いに平行する方向へ延びる状態で支持する。
【0022】
光学部品9は、支持機構4に支持された複数の放電管列3A、3B、3Cの全ての放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cのうちの、光学的直列配置の両端に位置する一対の放電管1c、2aの、それぞれの一端部に設置される出力鏡11及びリア鏡12と、支持機構4に支持された複数の放電管列3A、3B、3Cの、光学的連結部8に設置される折返鏡13、14とを備える。図示の構成では、エンドプレート15に、放電管1a、1b、1cの軸線上に位置し、放電管1a、1b、1cの一端に面するように、一組の折返鏡13及び出力鏡11がそれぞれ備えられている。またエンドプレート16に、放電管2a、2b、2cの軸線上に位置し、放電管2a、2b、2cの一端に面するように、リア鏡12及び一組の折返鏡14がそれぞれ備えられている。このようにして、放電管列3A、3B、3Cの全ての放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cによって形成される光発生部の両端に、出力鏡11とリア鏡12が、光学的に互いに向かい合うように配置されたファブリペロー型の共振器が構成されている。出力鏡11としては、レーザビームを取り出すためにハーフミラーが用いられる。リア鏡12としては、全反射鏡が用いられる場合が多い。
【0023】
一対のエンドプレート15、16は、放電管列3A、3B、3Cに対して平行に延びる4本の支持棒21、22、23、24(支持機構4の構成要素)によって互いに連結されている。各支持棒21、22、23、24は、両端で一対のエンドプレート15、16に固定されて、それらエンドプレート15、16の間に延設される。図1(c)に示すように、エンドプレート15、16は、放電管列3A、3B、3Cの軸線(すなわちレーザ共振器10の主たる光軸)に垂直な断面が矩形の外形を有しており、この矩形の四隅付近に4つの支持棒21〜24のそれぞれが配置されている。両エンドプレート15、16が支持棒21〜24によって互いに固定されることにより、出力鏡11とリア鏡12とが、互いに精度良く向かい合って、両者の光軸が合致することが保証されている。このようにして、レーザ共振器10は、4つの支持棒21〜24と2つのエンドプレート15、16とにより、放電管列3A、3B、3C(放電管1a、2a、1b、2b、1c、2c)、放電管ホルダ6、7、及び放電管連結ホルダ5が内側に収められた箱型に構成されている。
【0024】
支持棒21〜24は、気温変化や、レーザ共振器10の内部の温度の上昇が生じても、出力鏡11及びリア鏡12の両者の光軸にずれが生じないように、熱膨張率の小さいインバ合金から形成されていることが好ましい。支持棒21〜24の材料としては、通常の使用温度範囲で、熱膨張係数が十分に小さく、熱変形量が許容範囲内となる他の材料を用いてもよい。
【0025】
放電管連結ホルダ5は、クランプ25、26、27(支持機構4の構成要素)を介して支持棒21〜24に連結されている。図示構成では、重力方向下側の2つの支持棒21、22に対し、放電管連結ホルダ5は、剛性材料からなる共通(つまり単一)のクランプ(すなわち剛性部材)25を介して連結されている。また、重力方向上側の2つの支持棒23、24に対し、放電管連結ホルダ5は、弾性材料からなる別個(つまり2個)のクランプ(すなわち弾性部材)26、27によってそれぞれ連結されている。各クランプ25、26、27は、放電管連結ホルダ5の、光軸方向の両端部付近に1つずつ、計2つ配置されている。クランプ25の剛性材料としては、例えばアルミ合金等を使用できる。また、クランプ26、27の弾性材料としては、例えばばね鋼等を使用できるが、後述する複合構造のクランプを用いることが好ましい。
【0026】
図1(a)に示すように、放電管連結ホルダ5及び放電管ホルダ6、7の内部の空間には、レーザガスの循環系が接続されている。放電管連結ホルダ5及び放電管ホルダ6、7からは、それぞれ配管31、32、33が延びており、これら配管31、32、33は、送風機35に接続されている。送風機35は、例えばターボブロワであり、配管31を吸込側とし、配管32、33を吐出側として、レーザガスを強制的に送るように構成されている。それによって、各放電管列3A、3B、3Cの全ての放電管1a、2a、1b、2b、1c、2c内には、レーザガスが、矢印40によって模式図的に示すように、エンドプレート15、16に隣接する放電管ホルダ6、7から中央の放電管連結ホルダ5へ向かって流れる。配管31、32、33によって形成されるレーザガスの経路中には、それぞれ、レーザガスを冷却するための熱交換器36、37、38が設けられている。
【0027】
図示しないが、レーザガス中で放電を起こしてレーザガスを励起するために、各放電管列3A、3B、3Cには電極が配置され、この電極に、高周波電源が接続されている。また、レーザ共振器10は、一端で2ヶ所、他端で1ヶ所の計3ヵ所で、ベアリング(図示せず)を介してフレーム(図示せず)に固定されている。
【0028】
図示のレーザ共振器10では、送風機35によって放電管列3A、3B、3Cの全ての放電管1a、2a、1b、2b、1c、2c内に矢印40の方向へレーザガスを流した状態で、放電管1a、2a、1b、2b、1c、2c内で高周波放電が行われる。それによって、レーザガスが励起されて光を発生し、出力鏡11とリア鏡12との間で共振が起こって光が増幅され、矢印45で模式図的に示すように、所望の強度のレーザビームが出力鏡11から取り出される。
【0029】
レーザビームの発生中には、放電管列3A、3B、3Cの放電管1a、2a、1b、2b、1c、2c内での放電によってレーザガスが加熱される。加熱されたレーザガスは、放電管連結ホルダ5を介して配管31へと送り出され、配管31によって形成される経路中に配置された熱交換器36で冷却されて、送風機35に入る。送風機35から送り出されたレーザガスは、各配管32、33によって形成される経路中に配置された熱交換器37、38により圧縮熱を取り去られて所定の温度に調節されて、各放電管ホルダ6、7に送り込まれる。
【0030】
図示しないが、レーザ共振器10は、送風機35、熱交換器36〜38、及び放電管列3A、3B、3Cの放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cへの供給電力を、所望のレーザ出力などに応じて制御する制御部を有することができる。レーザ共振器10の出力は、好適に、ワークのレーザ加工に用いることができる。この場合、レーザ共振器10はレーザ加工機(図示せず)に組み込まれ、レーザ共振器10から出力されたレーザビームは、レーザ加工機のベンダミラーで方向を変えられてレーザ加工部に導入され、ワークに照射される。この際、ワークの所望の位置にレーザビームを入射させるため、ワークやベンダミラーやレーザ共振器10の位置及び姿勢が、アクチュエータによって必要に応じて調整される。このような調整は、よく知られているように、数値制御装置によって行うことができる。この数値制御装置は、レーザ共振器10の制御部と協働するものとすることができ、或いは、レーザ共振器10の制御部を、数値制御装置の一部として構成することもできる。
【0031】
図示のレーザ共振器10では、放電管連結ホルダ5が、クランプ(剛性部材)25及びクランプ(弾性部材)26、27を介して、放電管連結ホルダ5の四隅に位置する4つの支持棒21〜24に連結されて支持されている。したがって、例えばレーザ共振器10が、前述のようにアクチュエータによって移動させられたり、所望の設備への設置のために移動させられたりするときに、放電管連結ホルダ5に加わる加速度に起因して放電管連結ホルダ5の位置ずれが生じることを抑制できる。つまり、放電管連結ホルダ5に加速度が加わったときに、主としてクランプ(剛性部材)25が、支持棒21〜24に対して放電管連結ホルダ5を正規の位置に安定して保持するように作用する。このとき、クランプ(弾性部材)26、27は、慣性による放電管連結ホルダ5の僅かな変位を許容する一方で、弾性復元力により放電管連結ホルダ5を正規の位置に迅速に復帰させる。また図示のように、放電管連結ホルダ5が、その四隅で支持棒21〜24に支持される構成とすれば、例えば一側方に偏った位置で支持される場合に生じやすい支持部位を中心とした傾くような位置ずれを、効果的に抑制できる。このようにして、レーザ共振器10では、加速度に起因する放電管連結ホルダ5の位置ずれにより支持棒21〜24や放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cなどの梁状の各構成部材に歪みが生じることを防止できるとともに、そのような部材歪みに起因するエンドプレート15、16同士の位置ずれ(傾き等)を抑制して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれの発生を防止でき、以てレーザビーム出力の安定性を確保することができる。
【0032】
他方、放電管連結ホルダ5は、前述のように、放電管列3A、3B、3Cにおける放電によって加熱されたレーザガスとの接触により、レーザ発生開始から経時的に熱膨張を生じる。図示のレーザ共振器10では、放電管連結ホルダ5を支持棒21〜24に連結するクランプ25、26、27のうち、上方の2つのクランプ26、27を弾性材料から形成している。したがって、レーザ発生時の放電管連結ホルダ5の熱膨張が、クランプ(弾性部材)26、27の弾性変形(弾性収縮)によって吸収されて、支持棒21〜24に伝達されなくなる。このようにして、レーザ共振器10では、放電管連結ホルダ5の熱変形により支持棒21〜24や放電管1a、2a、1b、2b、1c、2cなどの梁状の各構成部材に歪みが生じることを防止できるとともに、そのような部材歪みに起因するエンドプレート15、16同士の位置ずれ(傾き等)を抑制して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれの発生を防止でき、以てレーザビーム出力の安定性を確保することができる。
【0033】
図示実施形態のように、放電管連結ホルダ5を、下側の2つの支持棒21、22に、剛性材料からなるクランプ(剛性部材)25によって固定し、上側の2つの支持棒23、24に、弾性材料からなるクランプ(弾性部材)26、27を介して連結した構成は、特に、支持棒21〜24の間隔が、水平方向(支持棒21と支持棒22との間、及び支持棒23と支持棒24との間)の距離よりも、上下方向(支持棒21と支持棒23との間、及び支持棒22と支持棒24との間)の距離の方が長い場合に適している。すなわち、この場合、放電管連結ホルダ5の熱膨張の影響は、支持棒間の距離が長い上下方向に生じやすく、それにより各支持棒21〜24の歪みが、一対のエンドプレート15、16を、上下方向に対して傾ける(つまり水平軸線の周りで回転させる)ような形態で現れがちである。そこで、重力の影響が小さい放電管連結ホルダ5の上端側を、弾性材料からなるクランプ(弾性部材)26、27を介して上側の2つの支持棒23、24に連結し、放電管連結ホルダ5の熱膨張時にその上端側がそれら支持棒23、24に対して変位できるようにしておくことによって、エンドプレート15、16の上下方向に対する傾斜の発生を抑制できる。その結果、エンドプレート15、16同士の平行度の変化を抑制し、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれの発生を効果的に防止することができる。
【0034】
放電管連結ホルダ5を各支持棒21〜24に連結する部材としては、支持棒21〜24の配置や本数、放電管連結ホルダ5の構造などに応じて、適宜、弾性部材と剛性部材とのいずれかを選択して用いることができる。レーザ共振器10に加速度が加わったときの慣性による放電管連結ホルダ5の位置ずれ及びその結果としての梁状部材の歪みと、レーザ発生中に放電管連結ホルダ5に生じる熱膨張及びその結果としての梁状部材の歪みとの、双方を効果的に抑制するためには、放電管連結ホルダ5と少なくとも1つの支持棒21〜24とを、弾性部材を介して連結すれば良い。前述したように、慣性による放電管連結ホルダ5の位置ずれは一時的なものであるから、支持棒の本数に関わらず、全ての支持棒に対して放電管連結ホルダ5を弾性部材で連結しても良い。なお、図示のように複数の支持棒を用いる構成では、少なくとも1つの支持棒に対する放電管連結ホルダ5の連結を剛性部材によって行い、かつ、他の少なくとも1つの支持棒に対する放電管連結ホルダ5の連結を弾性部材によって行うことが、放電管連結ホルダ5の位置ずれ防止作用の信頼性を向上させる観点で好ましい。
【0035】
図2は、図1のレーザ共振器10の変形例として、3つの放電管列55A、55B、55Cの各々が、軸線方向へ整列する4個の放電管51a、52a、53a、54a;51b、52b、53b、54b;51c、52c、53c、54cを備えた構成を示す。この変形例では、総計12個の放電管51a〜54cのうちの4個ずつが、3つの放電管列55A、55B、55Cにいずれも共通する3つの放電管連結ホルダ61、62、63を介して、互いに軸線が直線状に並ぶように連結されている。なお、図2の変形例において、図1に示す構成要素に対応する構成要素は、図1と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図2に示す構成においても、各放電管連結ホルダ61、62、63を、下側の支持棒21、22に剛性材料からなるクランプ(剛性部材)25を介して固定し、上側の支持棒23、24に弾性材料からなるクランプ(弾性部材)26、27を介して連結している。これにより、3つの放電管連結ホルダ61、62、63を4本の支持棒21〜24によって安定した状態に保持できる。すなわち、レーザ共振器10に加速度が加わったときに、クランプ(剛性部材)25及びクランプ(弾性部材)26、27の協働によって、慣性による放電管連結ホルダ61、62、63の位置ずれを抑制して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれを防止でき、かつ、レーザ発生中に放電管連結ホルダ61、62、63が熱膨張したときに、クランプ(弾性部材)26、27の弾性変形によって放電管連結ホルダ61、62、63の熱膨張を吸収して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれを防止できる。
【0037】
上記変形例のように複数個の放電管連結ホルダを有する構成において、レーザ発生時にあまり加熱されない放電管連結ホルダが存在する場合、そのような放電管連結ホルダについては、支持棒との連結に弾性部材を用いずに剛性部材のみを用いた構成としてもよい。図3は、このような構成を有するさらに他の変形例によるレーザ共振器10を示す。図3の変形例において、図1及び図2に示す構成要素に対応する構成要素は、図1及び図2と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図3に示す変形例では、3個の放電管列55A、55B、55C(放電管列55Cのみ図示)を、レーザガスが矢印65で示すように流れる。すなわち、レーザガスは、図1で説明した循環系から、両端のエンドプレート15、16に連結された放電管ホルダ6、7と、中央の1つの放電管連結ホルダ62とに、それぞれ供給される。そして、各ホルダ6、7、62に供給されたレーザガスは、放電管列55A、55B、55Cの放電管51a、52a、53a、54a;51b、52b、53b、54b;51c、52c、53c、54cを介して、放電管連結ホルダ62と各放電管ホルダ6、7との間に位置する中間の放電管連結ホルダ61、63に流れ、それら放電管連結ホルダ61、63から循環系に回収される。
【0039】
この際、前述のように、レーザガスは、放電管列55A、55B、55Cにおける放電によって加熱されて循環系に戻されるが、循環系から放電管ホルダ6、7及び放電管連結ホルダ62に供給される時には、冷却されて所定の温度に調整されている。したがって、3個の放電管連結ホルダ61〜63のうち、中央の放電管連結ホルダ62は、循環系から冷却されたレーザガスを受け取るだけであって、放電管で加熱されたレーザガスに接触することがないので、ほとんど加熱されない。
【0040】
そこで、図3に示す構成では、中央の放電管連結ホルダ62は、下側の支持棒21、22に対するクランプ(剛性部材)25と同様に、上側の支持棒23、24に対しても、剛性材料からなるクランプ(剛性部材)67によって固定されている。クランプ67には、下側のクランプ25と同様の構成のものを用いることができる。放電管連結ホルダ62は、剛性材料からなるクランプ(剛性部材)25、67を介して4つの支持棒21〜24に連結されて支持されるので、図2に示す構成に比べて一層安定した状態に保持され、レーザ共振器10に加速度が加わったときに、慣性による位置ずれが効果的に抑制される。しかも、中央の放電管連結ホルダ62は、レーザ発生中にもほとんど加熱されないので、放電管連結ホルダ62の熱膨張に起因して出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれが生じることもない。
【0041】
一方、図3の構成においても、中間の放電管連結ホルダ61、63については、下側に剛性材料からなるクランプ(剛性部材)25が用いられ、上側に弾性材料からなるクランプ(弾性部材)26、27が用いられている。それによって、放電管連結ホルダ61、63については、図2の構成と同様に、加速度が加わったときの慣性による位置ずれに起因する光軸のずれと、レーザ発生時の熱膨張に起因する光軸のずれとの両方が、効果的に防止される。
【0042】
図1〜図3の構成において、放電管連結ホルダ5、61〜63を支持棒21〜24に連結する部材の構造は、一体物として例示したクランプ25、26、27に限られない。特に、弾性変形可能なクランプ(弾性部材)26、27は、その全体が弾性材料からなるものでなくてもよく、少なくとも部分的に弾性変形することによって、放電管連結ホルダ5、61〜63の上端側部分の変位を許容する構造(例えば、放電管連結ホルダ5、61〜63と支持棒21〜24との間に介在するクランプ装置の一部に弾性部材を配置した構造)とすることができる。
【0043】
このようなクランプ装置の一部に配置される弾性部材としては、ばねや所望形状の板金を用いることができる。図4は、支持機構4の変形例として、一部にばね(弾性部材)を用いたクランプ装置70を備える構成を示す。なお図4は、放電管連結ホルダ5の周辺部分のみを示しており、ガスレーザ共振器の他の部分については、図1と同様の構成であってよい。図4の変形例において、図1に示す構成要素に対応する構成要素は、図1と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図4に示す構成では、前述したクランプ27の代わりのクランプ装置70として、放電管連結ホルダ5の上面の、レーザ光軸方向の両端領域の互いに対応する位置に、突出部73、74がそれぞれ形成されるとともに、上方の支持棒24の、突出部73、74に対応する位置に、クランプ75、76がそれぞれ取り付けられ、突出部73、74とクランプ75、76とが、それぞればね(弾性部材)71、72によって連結されている。また図示しないが、前述したクランプ26の代わりとして、放電管連結ホルダ5の上面と上方の支持棒23との間にも、同様のクランプ装置70を設けることができる。図4に示す構成によっても、ばね71、72の弾性変形により、放電管連結ホルダ5の上下方向及び光軸方向の熱膨張を吸収して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれを防止することができる。
【0045】
図5は、支持機構4の他の変形例として、一部に板金(弾性部材)を用いたクランプ装置80を備える構成を示すものであり、図5(a)は、放電管連結ホルダ5の光軸方向からクランプ装置80を示す一部断面図、図5(b)は、同光軸に直交する方向からクランプ装置80を示す正面図である。図5の変形例において、図1に示す構成要素に対応する構成要素は、図1と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図5(a)では、図5(b)に示す板金91〜94などの図示を省略し、図5(b)では、図5(a)に示す板金81〜84などの図示を省略する。
【0046】
図示の構成では、図5(a)に示すように、放電管連結ホルダ5の上端側部分の、レーザ光軸に直交しかつ水平な(つまり重力方向に直交する)方向(図5(a)で左右方向)の変位を許容しつつ、この方向への支持力を確保するために、板厚方向がレーザ光軸に直交しかつ水平な方向に向けられた弾性変形可能部分を有する板金81〜84が用いられている。すなわち、前述したクランプ26、27の代わりのクランプ装置80として、放電管連結ホルダ5の上面の、レーザ光軸に直交する方向の両端領域に、上方へ延びる弾性変形可能部分を有する板金81、82がそれぞれ固定されるとともに、上方の支持棒23、24には、単一のクランプ101が固定されて、クランプ101の下面の、レーザ光軸に直交する方向の両端領域に、下方へ延びる弾性変形可能部分を有する板金83、84がそれぞれ固定され、板金81と板金83とが互いに止めねじ85によって連結され、板金82と板金84とが互いに止めねじ86によって連結されている。
【0047】
図5(b)に示すように、支持棒23、24には、クランプ101と同様のクランプ102が、レーザ光軸に沿った方向へ互いに離間して取り付けられている。そしてクランプ102についても、放電管連結ホルダ5の上端部分の、レーザ光軸に直交しかつ水平な方向の変位を許容しつつ、この方向への支持力を確保するように、上記と同様の板金81〜84を用いて、放電管連結ホルダ5をクランプ102に連結する構成とすることができる。
【0048】
図示のクランプ装置80ではさらに、図5(b)に示すように、放電管連結ホルダ5の上端側部分の、レーザ光軸に平行な方向(図5(b)で左右方向)の変位を許容しつつ、この方向への支持力を確保するために、板厚方向がレーザ光軸に平行な方向に向けられた弾性変形可能部分を有する板金91〜94が用いられている。すなわち、前述したクランプ26、27の代わりのクランプ装置80として、放電管連結ホルダ5の上面の、レーザ光軸方向の両端領域に、上方へ延びる弾性変形可能部分を有する板金91、92がそれぞれ固定されるとともに、上方の支持棒23、24に固定されたクランプ101、102の下面に、下方へ延びる弾性変形可能部分を有する板金93、94がそれぞれ固定されている。
【0049】
板金91〜94は、放電管連結ホルダ5の上端側部分の、上下方向の変位を許容しつつ、この方向への支持力を確保するようにも作用する。その目的で、放電管連結ホルダ5に固定される板金91、92は、放電管連結ホルダ5から上方へ延びる部分91a、92aの上端に、レーザ光軸方向へ延びる弾性変形可能部分91b、92bが接続され、それら部分91b、92bの他端にさらに、上方へ延びる弾性変形可能部分91c、92cが接続される、クランク状の屈曲形状を有している。また、クランプ101、102に固定される板金93、94は、クランプ101、102から下方へ延びる弾性変形可能部分93a、94aの下端に、レーザ光軸方向へ延びる弾性変形可能部分93b、94bが接続される、L字状の屈曲形状を有している。そして、放電管連結ホルダ5に固定された板金91、92の、レーザ光軸方向へ延びる弾性変形可能部分91b、92bと、クランプ101、102に固定された板金93、94の、レーザ光軸方向へ延びる弾性変形可能部分93b、94bとが、互いに止めねじ95、96によってそれぞれ連結されるとともに、板金91、92の上方へ延びる弾性変形可能部分91c、92cと、板金93、94の下方へ延びる弾性変形可能部分93a、94aとが、互いに止めねじ97、98によってそれぞれ連結される。
【0050】
板金91〜94は、板金81〜84に干渉しない位置(例えば各クランプ101、102の中央(図5(a)で上方の支持棒23、24の間の位置))に設置される。この場合、クランプ101に固定される一組の板金83、84、93を一体の部材から形成するとともに、それらに連結されて放電管連結ホルダ5に固定される一組の板金81、82、91を一体の部材から形成することができる。同様に、クランプ102に固定される一組の板金83、84、94を一体の部材から形成するとともに、それらに連結されて放電管連結ホルダ5に固定される一組の板金81、82、92を一体の部材から形成することができる。
【0051】
図5に示す構成によっても、板金81〜84、91〜94の弾性変形により、放電管連結ホルダ5の上下方向、光軸方向及びそれらに直交する方向の熱膨張を吸収して、出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれを防止することができる。なお、この構成では、クランプ装置80は、放電管連結ホルダ5が常温の状態で、板金81〜84、91〜94が適当に曲げられて予備的に応力を生じている一方、放電管連結ホルダ5が熱膨張したときに、そのような板金81〜84、91〜94の応力が弱まるように構成することが好ましい。このような構成によって、ガスレーザ共振器の通常運転中に、支持機構4にできるだけ応力が生じないようにすることができる。
【0052】
本発明に係るガスレーザ共振器は、上記実施形態の構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術範囲内で様々に変更することができる。例えば、ガスレーザ共振器が有する放電管列の個数、各放電管列における放電管の個数等は、図示以外の種々の個数を採用できる。図6は、図1のレーザ共振器10の変形例として、様々な構成の放電管列を備えた形態を示す。なお図6の変形例において、図1に示す構成要素に対応する構成要素は、図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
図6(a)は、軸線方向へ整列する一対の放電管1a、2a、1b、2bをそれぞれに有する2つの放電管列3A、3Bが、支持機構4によって、それら放電管列3A、3Bの軸線が互いに交差する方向へ延びるように支持されてなるガスレーザ共振器を示す。この構成では、放電管列3A、3Bの光学的連結部8に、1個の折返鏡13が設置される。また、図6(b)、(c)は、軸線方向へ整列する一対の放電管1a、2a、1b、2bをそれぞれに有する2つの放電管列3A、3Bが、支持機構4によって、それら放電管列3A、3Bの軸線が互いに平行する方向へ延びるように支持されてなるガスレーザ共振器を示す。図6(b)の構成では、放電管列3A、3Bの光学的連結部8に、2個の折返鏡13が設置される。他方、図6(c)の構成では、放電管列3A、3Bの光学的連結部8に、3個の折返鏡13が設置される。図6(b)に示す2面折返鏡構造によれば、出力鏡11から90度直線偏光レーザビームが出射され、図6(c)及び(d)に示す3面折返鏡構造によれば、出力鏡11から45度直線偏光レーザビームが出射される。いずれの構成においても、前述した特徴的な支持機構4により、放電管連結ホルダ5の慣性及び熱膨張に起因する出力鏡11とリア鏡12との光軸のずれが防止される。
【符号の説明】
【0054】
1a、1b、1c、2a、2b、2c、51a、51b、51c、52a、52b、52c、53a、53b、53c、54a、54b、54c 放電管
3A、3B、3C、55A、55B、55C 放電管列
4 支持機構
5、61、62、63 放電管連結ホルダ
8 光学的連結部
9 光学部品
10 レーザ共振器
11 出力鏡
12 リア鏡
13、14 折返鏡
15、16 エンドプレート
21、22、23、24 支持棒
25 剛性部材(クランプ)
26、27 弾性部材(クランプ)
71、72 ばね
81、82、83、84、91、92、93、94 板金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向へ整列する複数の放電管をそれぞれに有する複数の放電管列と、
前記複数の放電管列を、それら放電管列の軸線が互いに平行又は交差する方向へ延びるように支持する支持機構と、
前記複数の放電管列を、それら放電管列が有する前記複数の放電管の全てが光学的に直列に並ぶように互いに光学的に連結する光学部品とを具備し、
前記光学部品は、
前記支持機構に支持された前記複数の放電管列の全ての前記放電管のうちの、光学的直列配置の両端に位置する一対の前記放電管の、それぞれの一端部に設置される出力鏡及びリア鏡と、
前記支持機構に支持された前記複数の放電管列の、光学的連結部に設置される折返鏡とを備え、
前記支持機構は、
前記複数の放電管列の各々における前記複数の放電管を、前記軸線方向へ整列した状態で互いに連結して支持する放電管連結ホルダと、
前記複数の放電管列の各々の軸線方向両端に配置され、それら放電管列を、前記軸線が互いに平行又は交差する方向へ延びる状態で支持する一対のエンドプレートと、
両端で前記一対のエンドプレートに固定されて、それらエンドプレートの間に延設される支持棒と、
前記放電管連結ホルダを前記支持棒に連結する弾性部材とを備えること、
を特徴とするガスレーザ共振器。
【請求項2】
前記支持機構は、前記一対のエンドプレートの間に延設される複数の前記支持棒と、前記放電管連結ホルダを少なくとも1つの前記支持棒に連結する前記弾性部材と、前記放電管連結ホルダを他の少なくとも1つの前記支持棒に固定する剛性部材とを備える、請求項1に記載のガスレーザ共振器。
【請求項3】
前記弾性部材はばねである、請求項1又は2に記載のガスレーザ共振器。
【請求項4】
前記弾性部材は板金である、請求項1又は2に記載のガスレーザ共振器。
【請求項5】
前記支持機構は、前記複数の放電管列にレーザガスを供給する位置に配置される少なくとも1つの前記放電管連結ホルダと、前記複数の放電管列からレーザガスを回収する位置に配置される他の少なくとも1つの前記放電管連結ホルダと、前記レーザガスを供給する位置に配置される前記放電管連結ホルダを前記支持棒に固定する剛性部材と、前記レーザガスを回収する位置に配置される前記放電管連結ホルダを前記支持棒に連結する前記弾性部材とを備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスレーザ共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−45336(P2010−45336A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154221(P2009−154221)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】