説明

ガス回収システム

【課題】ガスハイドレート層内にて移動回収機を移動させながらガスハイドレートを効率良く回収することが可能なガス回収システムを提供する。
【解決手段】地中のガスハイドレート層CからガスハイドレートDを回収するガス回収システムであって、ガスハイドレート層Cにて移動しながらガスハイドレートDを取り込む移動回収機4を備え、移動回収機4には、燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応によって発電する燃料電池71が動力源として搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレート層からガスを回収するガス回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地表面下または海底面下の地中に存在するメタンハイドレートなどのガスハイドレート層からガスハイドレートを回収するガス回収装置が開発されている。
このガス回収装置としては、ガスハイドレート層内にヘッド部を配置し、このヘッド部からガスハイドレートに熱エネルギーを供給して分解し、ガスを回収するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−52395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスハイドレート層は、広がりは大きいが、層の厚さが数100mと薄く、しかも、石油や天然ガスのように自噴しない。したがって、ガスハイドレート層からガスを効率よく回収するには、ヘッド部からなる回収機をガスハイドレート層内にて移動させる必要がある。
このため、回収機をガスハイドレート層内にて移動させるための効率の良い動力源を、ガスハイドレート層内の回収機に搭載させることが要求されている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ガスハイドレート層内にて移動回収機を移動させながらガスハイドレートを効率良く回収することが可能なガス回収システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のガス回収システムは、地中のガスハイドレート層からガスハイドレートを回収するガス回収システムであって、前記ガスハイドレート層にて移動しながら前記ガスハイドレートを取り込む移動回収機を備え、前記移動回収機には、燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応によって発電する燃料電池が動力源として搭載されている。
【0007】
この構成によれば、移動回収機に燃料電池を搭載したので、この燃料電池にて発電した電力を動力源として移動回収機をガスハイドレート層内にて移動させながらガスハイドレートを効率良く回収することができる。
【0008】
また、前記移動回収機には、前記燃料電池にて発電された電力を蓄電する二次電池が搭載されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス回収システムによれば、ガスハイドレート層内にて移動回収機を移動させながらガスハイドレートを効率良く回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係るガス回収システムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1はガス回収システムを示す全体構成図、図2は移動回収機を示す断面図である。
図1に示すように、ガス回収システム1は、海水面Aに浮かべられるプラットホーム2と、海底面Bに配置される充填タンク3と、メタンハイドレートなどのガスハイドレートDが層状に存在するガスハイドレート層C内に配置される複数台の移動回収機4とを備えている。
【0011】
プラットホーム2には、浮き袋11及び移動用大型空気袋12が設けられ、これら浮き袋11及び移動用大型空気袋12の浮力により海水面Aに浮かべられている。このプラットホーム2は、太陽電池13及びバッテリー14を備えており、太陽電池13にて発電された電力がバッテリー14に蓄えられる。また、プラットホーム2には、GPS(Global Positioning System)付きの制御装置15及び推進装置16が設けられており、制御装置15によって推進装置16、浮き袋11や移動用大型空気袋12へ空気を充填する圧縮機(図示略)が制御される。
【0012】
プラットホーム2と充填タンク3との間には、メタンガス送気ホース21及び空気送気ホース22が接続されている。そして、充填タンク3内に充填されたメタンガスが、メタンガス送気ホース21を通してプラットホーム2へ送られ、プラットホーム2を介してメタンガス回収船Sのガスタンク23に回収される。また、空気送気ホース22には、プラットホーム2から空気が送り込まれる。
また、プラットホーム2と充填タンク3とは、浮上・移動用ケーブル24によって連結されている。この浮上・移動用ケーブル24は、プラットホーム2に設けられた巻取装置(図示略)によって巻き取り可能とされている。
【0013】
充填タンク3には、コンプレッサ31が設けられており、このコンプレッサ31には、複数本のメタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43が接続されている。これらメタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43は、それぞれ二本一組に束ねられ、それぞれチューブ巻取機44によって充填タンク3側に巻き取り可能とされている。そして、これら二本一組に束ねられたメタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43は、移動回収機4に接続されている。
【0014】
図2に示すように、移動回収機4は、内部が密閉された回収機本体50を有しており、この回収機本体50の後端部に、チューブコネクタ51を介してメタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43が接続されている。
また、この回収機本体50には、その下部に、無限軌道からなる走行機構52が設けられている。走行機構52は、両端に配置された駆動輪53と、これら駆動輪53の間に設けられた転輪54と、これら駆動輪53及び転輪54を囲むように巻回された履板55とから構成されており、回収機本体50内には、駆動輪53を回転駆動させる駆動モータ56が設けられている。
【0015】
この移動回収機4は、回収機本体50の先端部に、掘削機61及び熱水ガス化装置62を備えている。熱水ガス化装置62には、メタンガス送気チューブ42が接続されるメタンガス管63が接続されている。このメタンガス管63は、掘削機61側からガスタンク64及び送気ポンプ65が順に設けられている。
また、移動回収機4は、回収機本体50内に、燃料電池71及びバッテリー72を備えており、燃料電池71にて発電された電力がバッテリー72に蓄えられ、このバッテリー72から駆動モータ56に電力が供給可能とされている。このバッテリー72は、充放電可能な二次電池であり、例えば、ニッケル水素バッテリーやリチウムイオンバッテリーなどにより構成されている。
燃料電池71には、空気送気チューブ43が接続される空気送気管73が接続されており、この空気送気管73を介して燃料電池71へ空気が供給可能とされている。
【0016】
また、燃料電池71には、掘削機61にて回収してガス化したメタンから取り出した水素ガスが、燃料ガス供給管74を介して供給可能とされている。そして、この燃料電池71は、掘削機61からの水素ガスを燃料ガスとし、また、空気送気管73からの空気を酸化ガスとし、燃料ガスと酸化ガスとを電気化学反応させて起電力を発生させる。なお、燃料電池71では、メタンから生成したメタノールを燃料として用いて発電することも可能である。
【0017】
さらに、回収機本体50には、GPS(Global Positioning System)付きの制御装置75が設けられており、制御装置75によって、走行機構52、駆動モータ56、掘削機61、熱水ガス化装置62、送気ポンプ65、燃料電池71などが制御される。
【0018】
上記構成のガス回収システム1では、ガスハイドレート層Cにて、各移動回収機4が、掘削機61にてガスハイドレートDを掘削して回収し、さらに、熱水ガス化装置62によってメタンガスにガス化し、メタンガス管63のガスタンク64へ送り込む。
そして、このガスタンク64へ送り込まれたメタンガスは、送気ポンプ65によってメタンガス送気チューブ42へ送り込まれ、さらに、コンプレッサ31によって充填タンク3内に貯留される。このように、コンプレッサ31によって充填タンク3へメタンガスを充填するので、充填タンク3へ多量のメタンガスを充填することができる。
【0019】
また、制御装置75は、GPSによって移動回収機4の位置を把握しながら走行機構52及び駆動モータ56の駆動を制御して移動回収機4を走行させ、ガスハイドレートDの存在する位置へ移動させ、ガスハイドレートDの回収作業を行う。
このとき、移動回収機4では、燃料電池71によって発電されてバッテリー72に蓄電された電力を動力源として掘削機61、熱水ガス化装置62、送気ポンプ65、走行機構52及び駆動モータ56が円滑に駆動される。
【0020】
その後、充填タンク3に貯留されたメタンガスは、メタンガス送気ホース21を通してプラットホーム2へ送られ、プラットホーム2を介してメタンガス回収船Sのガスタンク23に回収される。つまり、プラットホーム2は、充填タンク3のメタンガスをメタンガス回収船Sへ送気するための橋渡しの機能を有している。
【0021】
移動回収機4によるメタンハイドレートDの回収の終了後は、移動回収機4が自走して充填タンク3の図示しない格納部へ戻り、メタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43が、チューブ巻取機44によって充填タンク3に巻き取られる。このとき、メタンガス送気チューブ42及び空気送気チューブ43と回収機本体50との接続を、チューブコネクタ51にて解除しても良い。
【0022】
メタンハイドレートDの回収場所を移動する場合は、プラットホーム2の移動用大型空気袋12へ空気を充填することにより、プラットホーム2の浮力を高めるとともに、浮上・移動用ケーブル24を巻き取り、充填タンク3を海底面Bから引き上げる。
この状態にて、プラットホーム2の制御装置15が、GPSによって位置を把握しながら推進装置16によってプラットホーム2を、次にメタンハイドレートDを回収する目標位置へ移動させる。
【0023】
目標位置に移動したら、浮上・移動用ケーブル24を送り出すとともに移動用大型空気袋12から空気を抜いて充填タンク3を海底面Bに配置させ、メタンハイドレート層Cへ移動回収機4を送り込み、メタンハイドレートDの回収作業を開始させる。
【0024】
また、このメタンハイドレートDの回収作業時に天候が悪化するなどにより、海水面Aでの波が高い場合は、図3に示すように、プラットホーム2を密閉カバー81によって覆うとともに、浮き袋11から空気を抜いて浮力を下げ、プラットホーム2を海中に沈ませる。
このようにすると、海水面A上での波浪によるプラットホーム2への影響を低減させつつメタンハイドレートDの回収作業を継続することができる。
【0025】
以上、説明したように、上記実施形態に係るガス回収システムによれば、移動回収機4に燃料電池71を搭載したので、この燃料電池71にて発電した電力を動力源として移動回収機4をガスハイドレート層C内にて移動させながらガスハイドレートDを効率良く回収することができる。
また、燃料電池71を動力源として移動回収機4が自走可能であるので、この移動回収機4の自由度を高めることができる。
また、移動回収機4に、燃料電池71にて発電された電力を蓄電する二次電池であるバッテリー72が搭載されているので、動力源である電力を要する掘削機61、熱水ガス化装置62、送気ポンプ65、走行機構52及び駆動モータ56などの駆動部へ安定的に電力を供給することができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、移動回収機4を2台備えたガス回収システム1を例にとって説明したが、移動回収機4の台数は2台に限定されず、2〜10台程度設置しても良く、また、移動回収機4は1台であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ガス回収システムを示す全体構成図である。
【図2】移動回収機を示す断面図である。
【図3】悪天候時でのガス回収作業を説明するガス回収システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1…ガス回収システム、4…移動回収機、71…燃料電池、72…二次電池、C…ガスハイドレート層、D…ガスハイドレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中のガスハイドレート層からガスハイドレートを回収するガス回収システムであって、
前記ガスハイドレート層にて移動しながら前記ガスハイドレートを取り込む移動回収機を備え、前記移動回収機には、燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応によって発電する燃料電池が動力源として搭載されているガス回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス回収システムであって、
前記移動回収機には、前記燃料電池にて発電された電力を蓄電する二次電池が搭載されているガス回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−59731(P2010−59731A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228241(P2008−228241)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】