説明

ガス浄化部材及びガス浄化装置

【課題】製造が容易であると共に、浄化効率を向上させたガス浄化部材及びガス浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるガス浄化部材は、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シート12を九十九折してなると共に、九十九折した間の空間部13内に低圧損のスペーサ14を各々配設してなる九十九折状シート積層体15と、前記九十九折状シート積層体15を保持する枠体16とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材及びガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中の硫黄酸化物の除去方法として、活性炭素繊維を用いたガス浄化装置が提案されている。このガス浄化装置の一例を図20に示す。図21に示すように、ガス浄化装置は、硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガス101が流通する浄化塔104内に設けられ、活性炭素繊維層で形成される触媒層107と、上記浄化塔104内に設けられ、上記触媒層107に硫酸生成用の水を供給する水供給手段111とからなるものである。前記活性炭素繊維からなる触媒層107で生成ガス101を浄化し、浄化ガス109としている(特許文献1)。図21中、符号121は排ガスを押し込む押込みファン、111は洗浄水105を供給する水供給装置、115は排ガスを冷却する増湿冷却水、116は増湿冷却装置、108、152はポンプ、153は弁、122は散水ノズルを各々図示する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−028216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のガス浄化装置に用いられる触媒層としては、図22に示すように、前記触媒層107を構成する活性炭素繊維層125が、平板活性炭素繊維シート126と波板状の活性炭素繊維シート127とを接合してその断面が三角形状の通路128に構成されており、両者を接合しているのでその成形に手間がかかる、という問題がある。また、両者の接合部分では排ガスの浄化を行うことができない、という問題がある。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑み、製造が容易であると共に、浄化効率を向上させたガス浄化部材及びガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シートを九十九折してなると共に、九十九折した間の空間部内に低圧損のスペーサを各々配設してなる九十九折状シート積層体を形成してなると共に、前記九十九折状シート積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0007】
第2の発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、該折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、前記断面コの字型シート体ユニットと低圧損のスペーサとを交互に配設して第1のシート状積層体を形成し、且つ前記第1のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0008】
第3の発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、該折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、前記断面コの字型シート体ユニットの開口部を交互に配置して第2のシート状積層体を形成してなり、且つ前記第2のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0009】
第4の発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、前記コの字型シート体ユニットの開口部を交互に配置して連続シート体ユニットを形成し、前記連続シート体ユニット同士の間に低圧損のスペーサを配置して第3のシート状積層体を形成してなり、且つ前記第3のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0010】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記繊維シートが活性炭素繊維シートであることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0011】
第6の発明は、硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガスが流通する浄化塔内に、第1乃至4のいずれか一つのガス浄化部材を設けてなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維シートを折り曲げるという簡易な構造のガス浄化部材であると共に、ガス浄化面積が向上するので、排ガス処理が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0014】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るガス浄化部材を示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るガス浄化部材10−1は、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する繊維シート12を九十九折してなると共に、九十九折した間の空間部13内に低圧損のスペーサ14を各々配設してなる九十九折状シート積層体15と、前記九十九折状シート積層体15を保持する枠体16とからなるものである。
図1においては、ガス浄化部材10−1の下方側から排ガス11を導入すると共に、上方から水17を例えばシャワー状に散水するノズル19が設けられており、ガス浄化部材10−1を湿潤状態としている。
【0015】
次に、本実施例に係るガス浄化部材10−1の製造工程の概略を図2に示す。
図2に示すように、先ず連続した繊維シート12を九十九折状となるようにして、九十九状に折り曲げた間の空間部13内に、低圧損のスペーサ14を開口部12a側から挿入して九十九折状シート状積層体15を形成する。
次に、九十九折状シート体15を枠体16内に挿入して図1に示すように固定・保持する。この枠体16内に保持された九十九折状シート体15は、連続したシート体であるので、導入する排ガス11のリークを回避することができる。
また、従来のような平板シートと波板シートとを接合して形成するものとは異なり、接合部分が無いので、接合部分での排ガス浄化面積のロスが無くなる。また、安価に製造することもできる。
【0016】
図3はガス浄化部材10−1を装置本体内に配設してなるガス浄化装置の断面図である。図3に示すように、ガス浄化装置30の装置本体31内には1段のフィルタであるガス浄化部材10−1が配設されているものである。なお、このガス浄化部材10−1は複数段としてもよい。
【0017】
ここで、前記繊維シート12はその幅が例えば50〜250cm程度で長尺の連続したものを用いている。また、繊維シートは不織布又は織布のいずれでもよい。
また、前記繊維シート12を活性炭素繊維シートとすることにより、その繊維層において、活性炭素繊維の触媒作用により排ガス11中に含まれるSO2を亜硫酸とし、散水された水により希硫酸18として装置本体31の下方側へ洗い流すようにしている。
【0018】
すなわち活性炭素繊維を用いる場合には、その表面では、例えば、以下の反応により脱硫反応が生じる。
即ち、(1)活性炭素繊維層への排ガス中の二酸化硫黄(SO2)の吸着がなされる。(2)次いで、吸着した二酸化硫黄(SO2)と排ガス中の酸素(O2)(別途供給することも可である)との反応による三酸化硫黄SO3への酸化がなされる。(3)その後、酸化した三酸化硫黄(SO3)が水(H2O)へ溶解され、硫酸(H2SO4)の生成がなされる。(4)生成された硫酸(H2SO4)が活性炭素繊維層から離脱される。
【0019】
この時の反応式は以下の通りである。
SO2+1/2O2+H2O→H2SO4
【0020】
この結果、排ガス11中の微粒子(SO3ミスト)以外に、さらに二酸化硫黄(SO2)を吸着して酸化し、水(H2O)と反応させて硫酸(H2SO4)を生成して離脱除去し、排ガス中の脱硫を行うことができる。
【0021】
前記装置本体31の側壁下端側には、排ガス11のガス入口部31aが設けられている。また、装置本体31の頂部側には、ガス浄化部材10−1により浄化された浄化ガス32を排出するガス出口部31bが設けられている。
【0022】
また、前記ガス浄化装置30には、前記装置本体の下方に溜まった希硫酸18を循環させるための水循環ライン23と循環ポンプ24とが設けられている。また、水循環ライン23には必要に応じて別途図示しない水供給装置により水17を添加するようにしている。
【0023】
前述したように、本発明では、排ガス11が通過するガス導入及び排出側を閉塞した連続のシートとすることにより、排ガス11中の例えば微粒子であるSO3ミストの除去効率が飛躍的に向上する。
【0024】
この結果、例えばボイラ排ガス中の微粒子(煤塵、SO3ミスト)の除去率が安定すると共にその除去率が向上し、煙突出口から排出される排煙からの紫煙の低減又は消滅を図ることができる。
【実施例2】
【0025】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図4は、実施例に係るガス浄化部材を示す概略図である。
図4に示すように、本実施例に係るガス浄化部材10−2Aは、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する活性炭素繊維シート12を所定長さで断面コの字型に折り曲げてなると共に、折り曲げた間の空間部13内に低圧損のスペーサ14を配設してなる断面コの字型シート体ユニット21を形成してなると共に、前記シート体ユニット21−1〜21−4と低圧損のスペーサ22−1〜22−3とを交互に配設して第1のシート状積層体23Aを形成してなるものである。そして、前記第1のシート状積層体23Aは、実施例1のガス浄化部材と同様に枠体16で固定・保持するようにしている。
【0026】
ここで、図4に示すガス浄化部材10−2Aは、断面コの字型シート体ユニット21のガス導入側に開口部12aを設けるようにしているが、図5に示すように、ガス排出側に開口部12aを設けて、ガス浄化部材10−2Bとするようにしてもよい。
【0027】
ここで、図10−1、図10−2、図11−1、図11−2、図12−1及び図12−2を用いて、スペーサ22から構成される両端開放通路と、断面コの字型シート体ユニット21の通路の端部を閉塞した場合のフィルタの圧力分布について説明する。
図10−1は両端開放通路24、24同士が隣接されている場合を示し、図10−2はその通路における高さ方向の圧力分布図である。なお、以下の説明においては、前述したようなスペーサを図示する斜線部分は省略し、実際に排ガス11が通過する様子を明確に示すようにしている。
図11−1はスペーサ22により形成される両端開放通路24と閉塞部を下端部に有するコの字型シート体ユニット21のガス導入側閉塞通路25Aとが隣接されている場合を示し、図11−2は、排ガス11を導入した際におけるその瞬間の各通路における高さ方向の圧力分布図である。なお、図中、符号12bは通路の側壁を図示する。
図12−1及び図12−2は、排ガス11を導入しつづけた場合における夫々の通路24、25Aでの高さ方向の圧力分布図である。
【0028】
図12−2に示すように、排ガス11を導入した際において、両端開放通路24とガス導入側閉塞通路25Aとの圧力分布には相違があり、排ガスを導入しつづけた場合に、それを解消しようとして両端開放通路24を通過する排ガス11がガス導入側閉塞通路25A内に侵入する。
これにより、排ガス11中に含まれる微粒子12が側壁12bを通過する際に、該側壁12bの繊維層にて捕集されることとなる。
【0029】
ここで、排ガス11中の微粒子の一種であるSO3ミストの除去メカニズムについて更に詳述する。
1) まず、閉塞部を有する通路25Aとすることにより、該閉塞(プラッギング)されたガス導入側閉塞通路25A内は、圧力が両端開放通路24側の出口圧となる。
この際、排ガス11は、閉塞されていない両端開放流路24を通過する。
2) 排ガス11が通過する両端開放通路24では、繊維層表面の摩擦損失で流れ方向に圧力分布が発生する。
3) 排ガス11が通過する両端開放通路24と隣接するガス導入側閉塞通路25Aとの間では、通路側壁12bを介して圧力差が発生する。
4) この圧力差が駆動力となり、排ガス11が通過する両端開放通路24から閉塞通路25Aへ側壁12bを介して排ガス11が流れる。
5) 排ガス11が側壁12bを通過する際に、側壁12bを構成する繊維層において、ろ過作用によりSO3ミストが除去される。
この結果、排ガス11中の微粒子の一種であるSO3ミストが効率的に除去される結果、煙突からのSO3ミスト排出量が低減し、紫煙の発生が低減することとなる。
【0030】
このように、ガス導入側を閉塞した閉塞通路24のいずれかの側面が両端開放開口通路25Aに接していることにより、圧力差が必ず発生するようにし、これによりフィルトレイション効果により微粒子の捕集を確実なものとしている。
【0031】
ここで、前記繊維状フィルタの坪量としては、例えば80〜200g/m2、好ましくは100〜150g/m2とするのがよい。
また、充填率は10%以下、より好ましくは9%以下とするのが好ましい。
【0032】
また、前記繊維状フィルタの厚さとしては、0.5〜5.0mm、好ましくは0.8〜1.6mmとするのがよい。
【0033】
一例として、坪量が120g/m2で、フィルタの厚さを0.8mmとした場合に、閉塞部を設けた場合には、SO3ミストの除去率が60%となり、閉塞部を設けない場合の40%に較べて1.5倍の除去性能を発揮することができた。
【0034】
また、坪量の調整に、数μm、或いは1μm以下の極細繊維を所定量配合するようにして、微粒子の捕集効率を向上させるようにしてもよい。
【0035】
次に、フィルタ13を構成する繊維層における排ガス11中の微粒子の捕集のメカニズムについて図13を参照して説明する。
ここで、前記排ガス11中の微粒子の内、例えば1m/s程度のガス流速に対し、約0.3μm以下の微粒子はブラウン捕集にて繊維層に捕集されるが、約0.3μm以上の微粒子については慣性衝突、遮り衝突、重力捕集等により繊維層に捕集されることになる。
図13は繊維層におけるサブミクロンの微粒子のブラウン拡散捕集の模式図である。図13に示すように、微粒子を含む排ガス11がフィルタ繊維の側壁を通過する際に、繊維層61を構成する単一繊維61aそれぞれに対し、限界粒子軌跡62が決定され、前記限界粒子軌跡62の内側に含まれるサブミクロン微粒子が単一繊維表面にブラウン拡散で捕集される。
よって、坪量及びフィルタ厚さ、繊維径を適宜調整することにより、捕集効率の向上を図ることができる。
【0036】
次に、図14−1、図14−2、図15−1及び図15−2を用いて、ガス排出側を閉塞部で閉塞した通路25Bとした場合のフィルタの圧力分布について説明する。
図14−1は両端開放通路24とガス排出側閉塞通路25B同士が隣接されている場合を示し、図14−2は、排ガス11を導入した際におけるその瞬間の各通路における高さ方向の圧力分布図である。
図15−1及び図15−2は、排ガス11を導入しつづけた場合における夫々の通路での高さ方向の圧力分布図である。
【0037】
図15−2に示すように、排ガス11を導入した際において、両端開放通路24とガス導入側閉塞通路25Bとの圧力分布に相違があり、排ガスを導入しつづけた場合に、それを解消しようとしてガス排出側閉塞通路25Bを通過する排ガス11が両端開放塞通路24内に侵入する。
これにより、排ガス11中に含まれる微粒子がフィルタの側壁12bを通過する際に、該側壁12bの繊維層にて捕集されることとなる。
【0038】
このように、ガス排出側を閉塞したガス排出部側閉塞通路25Bのいずれかに両端開放開口通路24に接していることにより、圧力差が必ず発生するようにし、これによりフィルトレイション効果により微粒子の捕集を確実なものとしている。
【実施例3】
【0039】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図6は、実施例に係るガス浄化部材を示す概略図である。
図6に示すように、本実施例に係るガス浄化部材10−3は、排ガス中11の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する活性炭素繊維シート12を断面コの字型に折り曲げてなると共に、折り曲げた間の空間部13内に低圧損のスペーサ14を配設してなる断面コの字型シート体ユニット21を形成してなり、且つ前記コの字型シート体ユニット21の開口部12aをガス導入側と排出側とに交互に配置してなると共に断面コの字型シート体ユニットの側壁12b、12b同士を隣接して連続した第2のシート状積層体23Bを形成してなるものである。そして、前記シート状積層体23Bを枠体16で固定・保持するようにしている。
【0040】
このようなフィルタとすることにより、図16に示すように、各通路を構成する側壁12b、12bを排ガス11が2回通過することとなるので、SO3ミストの捕集効率が向上する。
【0041】
図17に実際に排ガス中のSO3ミストを捕集する場合について説明する。
図17に示すように、ガス排出側閉塞通路25B内に導入された排ガス11は、該ガス排出側閉塞通路25Bの側壁12bと、ガス導入側閉塞通路25Aの側壁12bとを2回通過することとなり、SO3ミストの捕集効率を向上する。
【実施例4】
【0042】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図7は、実施例に係るガス浄化部材を示す概略図である。
図7に示すように、本実施例に係るガス浄化部材10−4Aは、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、所定の幅を有する活性炭素繊維シート12を断面コの字型に折り曲げてなると共に、折り曲げた間の空間部13内に低圧損のスペーサ14を配設してなる断面コの字型シート体ユニット21−1を形成している。そして、前記コの字型シート体ユニット21の開口部12aをガス導入側となるように配置してなると共に、断面コの字型シート体ユニット21の側面同士を隣接して連続したもの(本実施例では3個の断面コの字型シート体ユニット21−2、21−3、21−4の連続体と、2個の断面コの字型シート体ユニット21−5、21−6の連続体)をスペーサ22−1、22−2で介装して第3のシート状積層体23Cを形成してなるものである。
そして、前記第3のシート状積層体23Cを枠体16で固定・保持するようにしている。
本実施例では、3個の断面コの字型シート体ユニット21−2、21−3、21−4を連続した連続体と、2個の断面コの字型シート体ユニット21−5、21−6を連続した連続体とを組み合せているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
ここで、図7に示すガス浄化部材10−4Aは、断面コの字型シート体ユニット21−1の開口部12aをガス導入側に設けてなるが、図8に示すように、ガス排出側に開口部12aを設けて、ガス浄化部材10−4Bとするようにしてもよい。
【0044】
また、図9に示すガス浄化部材10−4Cのように、断面コの字型シート体ユニット21の側面同士を隣接して連続したもの(本実施例では2個断面コの字型シート体ユニット21−1、21−2を連続した連続体を3個用い、これらをスペーサ22−1、22−2で介装して第3のシート状積層体23Cを形成するようにしてもよい。
【0045】
本実施例のガス浄化部材を用いたガス浄化装置とすることにより、実施例3で示したガス浄化部材10−3のように全てが閉塞部とした場合における圧損の解消を図るようにしている。また、スペーサ22を隣接しているので、前述した側壁12bへのガスの流入効率も向上するものとなる。
【0046】
図18に実際に排ガス中のSO3ミストを捕集する場合について説明する。
図18に示すように、ガス排出側閉塞通路25B内に導入された排ガス11は、該ガス排出側閉塞通路25Bの側壁12bと、ガス導入側閉塞通路25Aの側壁12bとを2回通過することとなり、SO3ミストの捕集効率を向上する。
また、スペーサ(図示せず)からなる両端開放通路24を設けることにより、排ガス11を通過するようにして、圧力損失を低減させ、長時間操業した際における煤塵の堆積による閉塞を防止するようにしている。
【実施例5】
【0047】
ここで、本発明によるガス浄化装置を用いた排ガスを処理する排煙脱硫システムの一実施例について、図19を参照して説明する。
図19に示すように、本実施例にかかる排煙脱硫システムは、蒸気タービンを駆動する蒸気を発生させるボイラ100と、該ボイラ100からの排ガス11中の煤塵を除去する除塵機101と、除塵された排ガスをガス浄化装置30内に供給する押込みファン102と、ガス浄化装置30に供給する前に排ガス11を冷却すると共に増湿を行う増湿冷却装置103と、前記ガス浄化部材10−1、10−2Aを2段内部に配設し、塔下部側壁の導入口112aから排ガス11を供給すると共に、上方から水17を供給して、排ガス11中のSOxを希硫酸(H2SO4)へ脱硫反応させると共にSO3ミストを捕集するガス浄化装置30と、頂部の排出口112bから脱硫された浄化ガス32を外部へ排出する煙突104と、ガス浄化装置20からポンプ110を介して希硫酸(H2SO4)121を貯蔵すると共に石灰スラリー111を供給して石膏を析出させる石膏反応槽112と、石膏を沈降させる沈降槽(シックナー)113と、石膏スラリー114から水分を排水(濾液)117として除去して石膏115を得る脱水器116とを備えてなる。なお、ガス浄化装置30から排出される浄化された浄化ガス32を排出するラインには必要に応じてミストエリミネータ105を介装し、ガス中の水分を分離するようにしてもよい。
【0048】
ここで、上記ボイラ100では、例えば、火力発電設備の図示しない蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させるために、石炭や重油等の燃料fが炉で燃焼されるようになっている。ボイラ100の排ガスには硫黄酸化物(SOx)が含有され、排ガスは図示しない脱硝装置で脱硝されてガスガスヒータで冷却された後に集塵機101で除塵されている。
そして、ガス浄化装置30において所定量の水17を供給しつつ排ガス11中の脱硫を効率良く行うことができる。
【0049】
この排ガス浄化システムでは、ガス浄化装置30で得られた希硫酸121に石灰スラリー111を供給して石膏スラリー114を得た後、脱水して石膏115として利用するものであるが、脱硫して得られた希硫酸121をそのまま硫酸として使用するようにしてもよい。その場合には、希硫酸121を濃縮する濃縮槽を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施例ではボイラ100からの排ガス11を例示したが本発明の浄化対象となる排ガスはこれに限定されるものではなく、ガスタービン、エンジン、ガス化炉及び各種焼却炉から排出されものとしてもよい。
【0051】
また、図20に示すように、増湿冷却装置103の後流側にミストエリミネータ105を介装し、増湿した際の水分ミストを積極的に除去し、ガス浄化装置30内に余分な水ミスト(例えば1μm以上のミスト)の持込を防止するようにしてもよい。これにより、ガス浄化部材では紫煙の原因となるSO3ミストの除去効率を向上させることができる。
【0052】
本発明にかかるガス浄化装置は、例えば石炭等の硫黄分を含む排ガスのみならず、その他の有害煤塵や有害ミストを含む排ガスを浄化することができる。
また、フィルタとして活性炭素繊維を用いることにより、その化学的な触媒酸化作用により、SO2や重金属(水銀、砒素等)等の有害成分の吸着除去を効率良く行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係るガス浄化部材は、簡易な構造であると共に、ガス浄化面積が向上するので、微粒子の効率的な除去処理に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1に係るガス浄化部材の概略図である。
【図2】実施例1に係るガス浄化部材の製造工程概略図である。
【図3】実施例1に係るガス浄化装置の概略図である。
【図4】実施例2に係るガス浄化部材の概略図である。
【図5】実施例2に係る他のガス浄化部材の概略図である。
【図6】実施例3に係るガス浄化部材の概略図である。
【図7】実施例4に係るガス浄化部材の概略図である。
【図8】実施例4に係る他のガス浄化部材の概略図である。
【図9】実施例4に係る他のガス浄化部材の概略図である。
【図10−1】両端開放通路同士が隣接されている場合の概略図である。
【図10−2】その通路における高さ方向の圧力分布図である。
【図11−1】両端開放通路と排ガス導入側を閉塞した閉塞通路同士が隣接されている場合の概略図である。
【図11−2】排ガスを導入した際におけるその瞬間の各通路における高さ方向の圧力分布図である。
【図12−1】両端開放通路と排ガス導入側を閉塞した閉塞通路同士が隣接されている場合の概略図である。
【図12−2】排ガスを導入しつづけた場合における夫々の通路での高さ方向の圧力分布図である。
【図13】繊維層での微粒子の捕集の模式図である。
【図14−1】両端開放通路と排ガス排出側を閉塞した閉塞通路同士が隣接されている場合の概略図である。
【図14−2】排ガスを導入した際におけるその瞬間の各通路における高さ方向の圧力分布図である。
【図15−1】両端開放通路と排ガス排出側を閉塞した閉塞通路同士が隣接されている場合の概略図である。
【図15−2】排ガスを導入しつづけた場合における夫々の通路での高さ方向の圧力分布図である。
【図16】側壁の断面図である。
【図17】実施例3のガス浄化部材を用いた排ガス中のSO3ミストを捕集する模式図である。
【図18】実施例4のガス浄化部材を用いた排ガス中のSO3ミストを捕集する模式図である。
【図19】実施例5の脱硫システムの概略図である。
【図20】実施例5の他の排煙脱硫システムの概略図である。
【図21】従来のガス浄化装置の概略図である。
【図22】従来のフィルタの概略図である。
【符号の説明】
【0055】
10−1 10−2A、10−2B、10−3、10−4A、10−4B ガス浄化部材
11 排ガス
12 繊維シート
13 空間部
14 スペーサ
15 九十九折状シート積層体
21−1〜21−5 断面コの字型シート体ユニット
22−1〜22−3 スペーサ
23A 第1のシート状積層体
23B 第2のシート状積層体
23C 第3のシート状積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、
所定の幅を有する繊維シートを九十九折してなると共に、九十九折した間の空間部内に低圧損のスペーサを各々配設してなる九十九折状シート積層体を形成してなると共に、前記九十九折状シート積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項2】
排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、
所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、該折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、前記断面コの字型シート体ユニットと低圧損のスペーサとを交互に配設して第1のシート状積層体を形成し、且つ前記第1のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項3】
排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、
所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、該折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、前記断面コの字型シート体ユニットの開口部を交互に配置して第2のシート状積層体を形成してなり、且つ前記第2のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項4】
排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、
所定の幅を有する繊維シートを断面コの字型に折り曲げ、折り曲げた間の空間部内に低圧損のスペーサを配設して断面コの字型シート体ユニットを形成してなると共に、
前記コの字型シート体ユニットの開口部を交互に配置して連続シート体ユニットを形成し、前記連続シート体ユニット同士の間に低圧損のスペーサを配置して第3のシート状積層体を形成してなり、且つ前記第3のシート状積層体を枠体で保持してなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記繊維シートが活性炭素繊維シートであることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項6】
硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガスが流通する浄化塔内に、請求項1乃至4のいずれか一つのガス浄化部材を設けてなることを特徴とするガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−203171(P2007−203171A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23718(P2006−23718)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】