説明

ガス濃度モニタリングシステム、固定局及び移動局、並びにガス濃度計測方法

【課題】野外の広い貯留対象域においてガス濃度をモニタリングする場合、風等により漏洩した可燃性ガスが移動するため、天候(特に風)によっては可燃性ガスが漏洩した位置を正確に特定することは困難となるという問題点があった。
【解決手段】1つの光源ユニットと、旋回傾斜機構と、ガス異常監視区域内の計測用フォトダイオードを有する複数のレーザ光受光用の固定局と、固定局に設けられた風向風速計とを備え、風向風速計にて計測された風向計測値及び風速計測値に基づき、演算されたガス濃度のガス噴出想定範囲を演算するようにした。これにより、可燃性ガスが漏洩した位置を正確に特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスプラント、天然ガスパイプライン、化学プラントなどのガスを発生または排出する可能性のある施設及びその周辺、地下駐車場、トンネル、渋滞道路、高速道路の料金所、或いは温室効果ガスの地中処分対象領域等の天候の影響を受ける野外の広いガス異常監視区域において、大気中の異常ガスのガス濃度を分析し監視するガス濃度モニタリングシステム、レーザ光受光用の固定局及び移動局、並びにガス濃度計測方法に関する。
【0002】
なお、大気(空気)中の異常ガスとは、二酸化炭素、メタン、ハロカーボン、地上オゾン、一酸化炭素等の温室効果ガス(GHG)のみならず、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化硫黄、アンモニア、その他の可燃性ガス、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)、車両或いは各種のプラントから排出される排ガス等の、通常の大気には含まれないガス、或いは通常の大気の成分より割合が多いガス等をいう。
【背景技術】
【0003】
本願の出願人は、図15、図16に図示の近赤外波長を使用した可変半導体レーザ吸収分光(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy)法(以下、近赤外波長TDLAS法という)を利用したガス濃度計測装置を提案した。(例えば、特許文献1。)
なお、このガス濃度計測装置については、三菱重工技報 Vol.41 No.4(2004−7)、208−211頁にも記載されている。(例えば、非特許文献1。)
【0004】
この従来のガス濃度計測装置は、図15、図16に図示のように、光源ユニット20にレーザ発振器が設けられている。
このレーザ発振器は、LDモジュール21と、LDモジュール21から発振されたレーザ光を反射するミラー22aと、ミラー22aで反射されたレーザ光の一部を光学窓25に向けて反射するとともに一部を透過させるハーフミラー22bと、ハーフミラー22bを透過したレーザ光を参照セル23に向けて反射するミラー22cとを備えている。
【0005】
また、受光部の光学窓の近傍には、計測用フォトダイオード45及び背景光用フォトダイオード46が設けられている。
計測用フォトダイオード45は、レーザ光軸上に配置されると共に、計測域の上方を通過したレーザ光を受光するようになっている。
背景光用フォトダイオード46は、レーザ光軸から外れたところに配置されると共に、計測域の背景光(バックグラウンド)を受光するようになっている。
これら計測用フォトダイオード45,背景光用フォトダイオード46は、計測ユニット27を経由してAD変換器ADに受光信号をそれぞれ送るように接続されている。
AD変換器ADは中央制御監視装置10に接続され、さらに中央制御監視装置10はディスプレイを備えた表示装置に接続されている。
【0006】
従来のガス濃度計測装置は、上述のごとく構成されており、LDモジュール21から発振されたレーザ光は、ハーフミラー22bで2つに分けられる。
このうち透過光は、参照セル23を通り、参照用フォトダイオード24で受光され、ガス濃度の検定と波長安定化とに用いられる。
一方、反射光は、計測域へ光学窓25を介して導入され、計測域を通過した後に計測用フォトダイオード45により受光される。
【0007】
更に、計測用レーザ光の光軸から外れたところに配置された背景光用フォトダイオード46により計測域から発される背景光を受光する。
これら参照用フォトダイオード24、計測用フォトダイオード45,背景光用フォトダイオード46からの電気信号を計測ユニット27で処理する。
計測ユニット27は処理したアナログデータをAD変換器ADに送り、これをAD変換器ADはデジタルデータに変換し、これを中央制御監視装置10に送る。
中央制御監視装置10は、送られてきたデータをメモリに保存するとともに、これを数値化又はグラフ化して表示装置(図示せず)の画面に表示している。
さらに、中央制御監視装置10は、計測用フォトダイオード45で受光した光(レーザ光+背景光)の強度と背景光用フォトダイオード46で受光した光(背景光)の強度との差分を演算により求め、これも表示装置の画面に表示するようになっている。
【0008】
なお、図16中の、80はランプ波発生器、81、82はサイン波発生器、83は加算器、84は増幅器、85、86、88は位相敏感検波器、87はローパスフィルタ、89はアンプ/ローパスフィルタである。
【0009】
しかしながら、特許文献1或いは非特許文献1には、天候の影響を受ける野外の広い領域においてどのようにして大気中の異常ガスのガス濃度を分析し監視するかについては何等開示されていない。
【0010】
また、本願の出願人は、図17、図18に図示のガス濃度モニタリングシステムを提案した。(例えば、特許文献2。)
図17に図示の特許文献2には、温室効果ガス地下処分場の貯留対象域の地表側において温室効果ガスの濃度を検出し、該温室効果ガス地下処分場貯留対象域103から地表に漏れ出してくる温室効果ガスを監視するガス濃度モニタリングシステムであって、前記温室効果ガス地下処分場貯留対象域103に立てたポール上に設けられ、計測対象となる温室効果ガス種に固有な吸収波長のレーザ光を前記温室効果ガス地下処分場貯留対象域103の地表近傍に存在する大気に向けて発振する少なくとも1つの光源部100と、移動体102に搭載されて移動可能に設けられ、前記温室効果ガス地下処分場貯留対象域103の地表近傍に存在する大気中を通過した前記光源部から発振されたレーザ光を受光する少なくとも1つの受光部101と、前記光源部100から発振されるレーザ光の発振波長を変調し、前記受光部101で受光した信号の中から変調された信号を復調し、復調信号に基いて前記計測対象温室効果ガス種の濃度を求める波長可変半導体レーザ吸収分光手段と、を具備したものが記載されている。
また、特許文献2には、図18に図示のように、貯留対象域103に、反射部104を固定配置したものも記載されている。
【0011】
しかしながら、図17、図18に図示のものでは、天候の影響を受ける野外においては、地表に漏れ出した温室効果ガスが風等によって移動するため、温室効果ガスの噴出位置を特定するためには更なる改善が必要である。
【0012】
なお、図17に図示のものでは、野外の広い領域において常時監視するためには常に移動体102を可動させる必要があり、計測作業が煩雑になる。
また、図18に図示のものでは、例えば半径2kmの野外の広い貯留対象域103においてガス濃度をモニタリングする場合、漏れ出してくる温室効果ガスの位置を特定するためには、例えば、100mピッチで反射部104を配置する場合、合計数百個の反射部104が必要である。
【0013】
一方、図19に図示のように、可燃性ガスの貯蔵設備等を備えた地域において、複数のタンク110の中央に検出ユニット111を配置し、エリア周辺に反射鏡112を設けて、複数の往復計測光路113を設定して、1組のユニットで赤外線レーザの投光方向を順次切換えて、ガス漏洩を検出するものが提案されている。(例えば、特許文献3。)
しかしながら、図19に図示のものも、風等により漏洩した可燃性ガスが移動するため、天候(特に風)によっては可燃性ガスが漏洩した位置を正確に特定することは困難となる。
【0014】
【特許文献1】特開2001−74653公報
【特許文献2】特開2004−219379公報
【特許文献3】特開昭56−147034号公報
【非特許文献1】三菱重工技報 Vol.41 No.4(2004−7)、208−211頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような問題点を解決すべく提案されたものであり、大気(空気)中の異常ガスのガス濃度を、天候による影響を考慮して分析し監視することのできるガス濃度モニタリングシステム、レーザ光受光用の固定局及び移動局、並びにガス濃度計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたもので、特許請求の範囲に記載された各発明は、ガス濃度モニタリングシステム、これに使用されるレーザ光受光用の固定局及び移動局、並びにガス濃度計測方法として、それぞれ以下に述べる各手段を採用したものである。
【0017】
(1)第1の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、
ガス異常監視区域に配置され計測対象となるガスに固有な吸収波長のレーザ光を前記ガス異常監視区域に向けて発光するLDモジュールを有する少なくとも1つの光源ユニットと、
前記光源ユニットが発光する前記レーザ光の投光方向及び仰角を制御する旋回傾斜機構と、
前記ガス異常監視区域内の前記光源ユニットの周囲に配置され前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードを有する複数の固定局と、
前記固定局に設けられた風向風速計と、
前記固定局の前記計測用フォトダイオードにて計測されたレーザ光計測値に基づき前記光源ユニットと前記固定局との間の大気中のガス濃度を演算するガス濃度演算器及び、前記風向風速計にて計測された風向計測値及び風速計測値に基づき、演算された前記ガス濃度のガス噴出想定範囲を演算する重畳表示作成器を有する中央制御監視装置と、
前記計測値及び演算結果を記憶する記憶器と、
その演算結果を表示する表示器と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
(2)第2の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第1の手段において、
前記光源ユニットは、
前記LDモジュールと、
計測対象となるガスが所定のガス濃度で封入されると共に前記LDモジュールから発光の一部を透過させる参照セルと、
前記参照セルを透過した透過光を受光する参照用フォトダイオードとを有し、
前記固定局は、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に背景光用フォトダイオードを有していることを特徴とする。
【0019】
(3)第3の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第2の手段において、
前記固定局は、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を有していることを特徴とする。
【0020】
(4)第4の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第2又は3の手段において、
前記中央制御監視装置の前記ガス濃度演算器は、次式により前記大気中のガス濃度Cを求めるものであることを特徴とする、
大気中のガス濃度C={(レーザ光計測値DX−背景光計測値DN)/参照ガス濃度計測値Do}×(参照セル長さLo/計測区間距離L)×参照セル内ガス濃度Co、
但し、
レーザ光計測値DX:計測用フォトダイオードによる計測値、
背景光計測値DN:背景光用フォトダイオードによる計測値、
参照ガス濃度計測値Do:参照用フォトダイオードによる計測値、
参照セル長さLo:参照セルの長さ、
計測区間距離L:光源ユニットから計測用フォトダイオード迄の距離、
参照セル内ガス濃度Co:参照セル内に封入されたガスの濃度。
【0021】
(5)第5の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第1〜4のいずれかの手段において、
前記中央制御監視装置は、前記固定局の設置位置と前記光源ユニットの設置位置とから前記光源ユニットの向き及び仰角を演算して光源ユニットを前記固定局に向け、その後、光源ユニットの向き及び仰角を設定された所定の走査幅及び走査高さの範囲内で走査し、前記固定局の計測用フォトダイオードからのレーザ光計測値が最大となる位置を特定する特定位置演算器を有していることを特徴とする。
【0022】
(6)第6の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第5の手段において、
前記中央制御監視装置は、前記所定の走査幅及び走査高さの範囲及びこれより小さな所定の走査幅及び走査高さの範囲にて、前記特定位置演算器による位置の特定を少なく共2回行なうものであることを特徴とする。
【0023】
(7)第7の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第1〜6のいずれかの手段において、
前記中央制御監視装置の重畳表示作成器は、任意の計測地点において演算された前記ガス濃度が複数個ある場合に、風上側の前記固定局での前記ガス濃度を選定するものであることを特徴とする。
【0024】
(8)第8の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第1〜7のいずれかの手段において、
前記固定局は、
電力を発生させる太陽電池と、電力を蓄える二次電池と、太陽電池で発生した電力を二次電池に充電すると共に固定局内の各種の装置に電力を供給する充放電盤とを有していることを特徴とする。
【0025】
(9)第9の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第1〜8のいずれかの手段において、
前記固定局は、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡を有していることを特徴とする。
【0026】
(10)第10の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第9の手段において、
前記固定局は、
照度計と、
前記照度計にて計測された照度が所定値を超えた場合に閉じるシャッターと、
を有していることを特徴とする。
【0027】
(11)第11の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第2〜10のいずれかの手段において、
更に、前記ガス異常監視区域に移動可能に配置され、前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有するレーザ光受光用の移動局を備えたことを特徴とする。
【0028】
(12)第12の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第11の手段において、
前記移動局は、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
風向風速計と、
前記光源ユニットの方位を探知する無線方位探知機用パラボラアンテナ及び無線方位探知機と、
を有していることを特徴とする。
【0029】
(13)第13の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第11又は12の手段において、
前記移動局は、
前記移動局の設置位置を計測するGPS用アンテナ及びGPS受信機を有していることを特徴とする。
【0030】
(14)第14の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第13の手段において、
前記移動局は、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計及びGPS受信機にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を有していることを特徴とする。
【0031】
(15)第15の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第11〜14のいずれかの手段において、
前記中央制御監視装置の前記ガス濃度演算器は、前記移動局についても第3の手段に規定する前記式により前記大気中のガス濃度を求めるものであることを特徴とする。
【0032】
(16)第16の手段に係るガス濃度モニタリングシステムは、第11〜15のいずれかの手段において、
前記中央制御監視装置の前記特定位置演算器は、前記移動局の設置位置と前記光源ユニットの設置位置とから前記光源ユニットの向き及び仰角を演算して光源ユニットを前記移動局にも向け、その後、光源ユニットの向き及び仰角を設定された所定の走査幅及び走査高さの範囲内で走査し、前記レーザ光受光用の移動局の計測用フォトダイオードからのレーザ光計測値が最大となる位置を特定するものであることを特徴とする。
【0033】
(17)第17の手段に係るレーザ光受光用の固定局は、
光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードと、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に設置された背景光用フォトダイオードと、
周囲の風向風速を計測する風向風速計と、
照度計と、
前記照度計にて計測された照度が所定値を超えた場合に閉じるシャッターと、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
電力を発生させる太陽電池と、
電力を蓄える二次電池と、
太陽電池で発生した電力を二次電池に充電すると共に固定局内の各種の装置に電力を供給する充放電盤と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を備えたことを特徴とする。
【0034】
(18)第18の手段に係るレーザ光受光用の移動局は、
光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードと、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に設置された背景光用フォトダイオードと、
周囲の風向風速を計測する風向風速計と、
設置位置を計測するGPS用アンテナ及びGPS受信機と、
前記計測用フォトダイオードの向き及び仰角を制御する傾斜旋回駆動装置と、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計、GPS受信機にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を備えたことを特徴とする。
【0035】
(19)第19の手段に係るガス濃度計測方法は、
ガス異常監視区域に配置され計測対象となるガスに固有な吸収波長のレーザ光を前記ガス異常監視区域に向けて発光するLDモジュールを有する少なくとも1つの光源ユニットと、
前記光源ユニットが発光する前記レーザ光の投光方向及び仰角を制御する旋回傾斜機構と、
前記ガス異常監視区域内の前記光源ユニットの周囲に配置され前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有する複数のレーザ光受光用の固定局と、
前記ガス異常監視区域に移動可能に配置され、前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有するレーザ光受光用の移動局とを備え、
常時、前記固定局により前記ガスの異常を計測し、
ガス異常が検出されたときに、ガス異常が検出された前記固定局の風上側につき前記移動局により前記ガスの異常を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
特許請求の範囲に記載の各請求項に係る発明は、上記の各手段を採用しているので、大気(空気)中の異常ガスのガス濃度を、天候、特に風向風速による影響を考慮して分析し監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図11に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムの全体配置図である。
図2は、図1に図示の光源ユニット20を備えたガス投入・監視センター6の模式図である。
図3は、図1に図示のレーザ光受信用の固定局8の模式図である。
図4は、図1に図示のレーザ光受信用の移動局9の模式図である。
図5は、図2に図示の中央制御監視装置10における固定局8による計測の場合の制御ブロック図である。
図6は、図5に図示の特定位置の特定の詳細制御ブロック図である。
図7は、図5に図示のガス濃度の検出・演算の詳細制御ブロック図である。
図8は、図2に図示の中央制御監視装置10における移動局9による計測の場合の制御ブロック図である。
図9は、図6に図示の特定位置を特定する方法を示す図である。
図10は、図2に図示の表示器12の表示例を示す図である。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る漏洩ガスの位置を特定する方法を示す模式図である。
【0038】
〔第1の実施の形態における全体の構成〕
先ず、図1に基づき、本発明の第1の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムの全体の構成につき説明する。
図1に図示のものは、大気(空気)中の異常ガスの一つであるCOガスを地中に貯留するCOガス地中処分プラントの例である。
図1に図示のように、天候の影響を受ける野外の広い、例えば半径が2kmのCOガス地中処分プラントの貯留対象域であるガス異常監視区域4の適所には鋼管杭等からなる複数の貯留投入ポート5が地中深くに打ち込まれている。
【0039】
貯留投入ポート5の下端は、地下数百メートルから数キロメートルに存在する閉塞帯水層1または準化石塩水層2に達している。
貯留投入ポート5には、図示略のCO分離回収装置(図示せず)、ガス圧入機が連通し、COガスが貯留投入ポート5を介して閉塞帯水層1または準化石塩水層2に所定の圧力で圧入されるようになっている。
閉塞帯水層1に圧入されたCOガスは、CO超臨界流体の形態で貯留される。
また、準化石塩水層2に圧入されたCOガスは、塩淡境界を超えて海中3に流入し、海水成分と反応して固定化される。
【0040】
ガス異常監視区域4の中央或いは適宜箇所には、ガス投入・監視センター6が設置されている。
このガス投入・監視センター6上にはポール或いは鉄塔が設置され、鉄塔の頂部にはレーザ光送光局7の光源ユニット20が設置されている。
また、ガス投入・監視センター6内には、後述する中央制御監視装置10、記憶器11、表示器12(図2参照)、上述のCO分離回収装置、ガス圧入機、ガス圧入機制御盤等も設置されている。
なお、ポール或いは鉄塔及び光源ユニット20をガス異常監視区域4の全範囲が見渡せるような場所に設置し、ガス投入・監視センター6を交通の便利な場所に、分離して設置するようにしても良い。
【0041】
ガス異常監視区域4の周縁の適宜箇所には、レーザ光受光用の固定局8が設置されている。
また、ガス異常監視区域4においてCOが滞留しやすい窪んだ箇所、低い箇所等には、必要に応じて適宜、レーザ光受光用の固定局8が設置されている。
更に、車両等に搭載されたレーザ光受光用の移動局9を少なくとも1台備えている。
【0042】
〔レーザ光送光局の構成〕
次に、図2に基づき、光源ユニット20、ガス投入・監視センター6等により構成されたレーザ光送光局7の構成につき詳細に説明する。
なお、図2において、図15、図16と同じ符号のものは同一の部材であり、先に提案した特許文献1(図15、図16参照)に記載の近赤外波長TDLAS法を利用したガス濃度計測装置を使用している。
【0043】
図2に図示のように、レーザ光送光局7において、ガス投入・監視センター6上のポール28の頂部には、旋回傾斜機構30を介して光源ユニット20が設置されている。
この旋回駆動機構30は、光源ユニット20の向きを上下左右に駆動するものであり、ポール28の頂部に旋回可能に設けられたターンテーブル34、旋回軸33、ターンテーブル34を左右に旋回駆動するブレーキ付きギヤーモータ等の旋回用駆動機36、光源ユニット20の下部に設けられた垂直部材32、垂直部材32とターンテーブル34とを連結する水平軸31、及び光源ユニット20を上下方向に駆動(傾斜駆動)するブレーキ付きギヤーモータ等の傾斜用駆動機35とにより構成されている。
【0044】
(光源ユニット)
光源ユニット20内には、図15、図16に図示のものと同様に、LDモジュール21と、LDモジュール21から発振されたレーザ光を反射するミラー22aと、ミラー22aで反射されたレーザ光の一部を光学窓25に向けて反射するとともに一部を透過させるハーフミラー22bと、ハーフミラー22bを透過したレーザ光を参照セル23に向けて反射するミラー22cと、参照セル23を透過したレーザ光を受光する参照用フォトダイオード24が設けられている。
参照セル23は所定の参照セル長さLoを有しており、参照セル23内には、計測対象であるCOが所定のガス濃度Coで封入されている。
参照用フォトダイオード24にて検出された参照ガス濃度計測値Doは、図16に図示のように、計測ユニット27に入力されてガス濃度の検定と波長安定化とに用いられる。
【0045】
なお、光源としてのLDモジュール21は、例えば、半導体レーザ素子、半導体レーザ素子の温度調節を行うためのペルチェ素子等を備えている。
この半導体レーザ素子は、これに限定されるものではなく、その他の波長変調が可能なレーザ発振器のすべてに適用可能であり、さらに、レーザ以外の光・電磁波の場合も、波長変調が可能な場合には、すべて適用可能である。
これに加えて、光源ユニット20の前面には、光源ユニット20が向いている方向の照度を計測する照度計44pが設けられている。
【0046】
更に、光源ユニット20の上部には、後述する移動局9が光源ユニット20の方向を探知するために、無線方位探知用電波を発信する無線方位探知用電波発信アンテナ38が設けられている。
なお、無線方位探知用電波発信アンテナ38及び後述する無線方位探知用電波発信器39は、必ずしも必要なものではなく、後述するデータ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42pから発信される電波を利用して、移動局9が光源ユニット20の方向を探知するようにしても良い。
【0047】
(ガス投入・監視センター)
ガス投入・監視センター6内には、各種計測器にて計測されたデータを処理すると共に旋回傾斜機構30等を制御する中央制御監視装置10、各種計測器にて計測されたデータ及び演算された各種のデータを記憶する記憶器11、表示器12、キーボード13が設けられている。
また、ガス投入・監視センター6には、図1に図示のレーザ光受光用の固定局8又は移動局9と交信するデータ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42p、無線送受信機42pにて受信した信号を変換して後述する計測ユニット27にデータを送信するためのDA変換器DAが設けられている。
【0048】
更に、ガス投入・監視センター6には、風向風速計40p、温度計43p、及び中央制御監視装置10に送信するデータを変換するAD変換器ADも設けられている。
そして、風向風速計40p、温度計43pにより計測された光源ユニット20近傍の風向計測値WDo、風速計測値WVo、温度Toは、AD変換器ADを介して中央制御監視装置10に送信される。
中央制御監視装置10では、これらのデータを、データ番号j及び計測年月日時間TMjと共に、記憶器11の所定のメモリエリアに記憶する。
【0049】
ガス投入・監視センター6内には、中央制御監視装置10からの送信開始信号に基づき、無線方位探知用電波発信アンテナ38に無線方位探知用電波を発信する無線方位探知用電波発信器39も設けられている。
ガス投入・監視センター6内には、傾斜用駆動機35、旋回用駆動機36を制御する旋回傾斜制御装置37も設けられている。
また、ガス投入・監視センター6内には、光源ユニット20内の照度計44pにて計測された照度の信号を変換するAD変換器ADも設けられている。
【0050】
ガス投入・監視センター6内には、図15、図16に図示のものと同様に、LDドライバユニット26、計測ユニット27、AD変換器ADも設けられている。
LDドライバユニット26は、光源ユニット20内のLDモジュール21に接続されており、LDモジュール21の温度設定、電流設定を行い、レーザ光の発信波長を設定するようになっている。
【0051】
(計測ユニット)
計測ユニット27には、光源ユニット20内の参照用フォトダイオード24にて計測された参照ガス濃度計測値Doが入力される。
更に、計測ユニット27には、データ送受信用アンテナ41p、無線送受信機42p、DA変換器DAを介して、後述するレーザ光受光用の固定局8内の計測用フォトダイオード45f及び背景光用フォトダイオード46fにて計測されたレーザ光計測値DXj及び背景光計測値DNj、或いは、後述する移動局9内の計測用フォトダイオード45m及び背景光用フォトダイオード46mにて計測されたレーザ光計測値DXj及び背景光計測値DNjが入力される。
【0052】
そして、入力された参照ガス濃度計測値Do、レーザ光計測値DXj及び背景光計測値DNjは、計測ユニット27内のローパスフィルタ87にて高周波成分が除去された後、AD変換器ADにてデジタル信号に変換されて、中央制御監視装置10に送信される。
中央制御監視装置10では、これらのデータを、データ番号j及び計測年月日時間TMjと共に、記憶器11の所定のメモリエリアに記憶する。
【0053】
(記憶器)
記憶器11には、次のデータが記憶されるメモリエリアを有している。
a)共通データ(キーボード13により修正可能)
ガス異常監視区域4の地形図、参照セル長さLo、光源ユニット20の位置Po(緯度xo、経度yo、標高Ho)、レーザ光受光用の固定局8の番号i及び位置情報Pi(番号i、緯度xi、経度yi、標高Hi、固定局8迄の距離Li):但しi=1〜n。
【0054】
b)レーザ光受光用の固定局8用或いは移動局9用のデータ
・データ番号j、計測年月日時刻TMj、参照ガス濃度計測値Doj
・計測した固定局8或いは移動局9の位置情報Pj(計測した固定局8の番号i、或いは計測した位置の緯度xj、経度yj、標高Hj、固定局8或いは移動局9迄の計測区間距離Lj)
・固定局8或いは移動局9における風向計測値WDj、風速計測値WVj、温度Tj
・ガス投入・監視センター6における風向計測値WDoj、風速計測値WVoj、温度Toj
・レーザ光計測値DXj、背景光計測値DNj、演算した大気中のガス濃度Cj
【0055】
なお、固定局8用のデータ番号i及び移動局9用のデータ番号jは、重複しない一貫番号とする。
また、本明細書、図面において、符号中のiは、固定局8の通し番号であり、また、符号中のjは、固定局8或いは移動局9にて計測したときの計測データ群の一貫番号であり、明細書、図面中において省略することもある。
本明細書において、各種の計測値、演算された値の符号は、高周波成分が除去された後のもの、AD変換器前(アナログ信号)のもの、AD変換後(デジタル信号)のもの、等、同じ符号を使用するものとする。
【0056】
記憶器11に記憶されているデータは、キーボード13から入力された指令に基づき、最新の計測値の表示のみならず、ある特定位置における過去から現在迄の大気中のガス濃度Cjの推移も、中央制御監視装置10を介して、表示器12に表示できるようになっている。
固定局8を増設、廃止する場合には、キーボード13により、増設した固定局8の上記データを追加し、廃止した固定局8のデータを削除できるようになっている。
【0057】
(中央制御監視装置)
中央制御監視装置10は、地形図照合器14、ガス濃度演算器15、特定位置走査器16、重畳表示作成器17等の演算サブブロックを備えている。
そして、中央制御監視装置10により、計測された各種のデータの管理、記憶器11への書き込み、読出し、表示器12への表示等が行なわれるが、その詳細は後述する。
また、中央制御監視装置10は、大型コンピュータの形態をなしており、中央制御監視装置10には、ガス圧入機制御盤としての機能も演算プログラムとして組み込まれている。
しかしながら、中央制御監視装置10を、ガス濃度モニタリングシステム専用のコンピュータとしても良い。
【0058】
〔レーザ光受信用の固定局の構成〕
次に、図3に基づき、レーザ光受光用の固定局8の構成につき詳細に説明する。
なお、図3に図示のものは、先に提案した特許文献1(図15、図16参照)に記載の近赤外波長TDLAS法を利用したガス濃度計測装置における受光部を備えている。
【0059】
レーザ光受光用の固定局8は、図1に図示のように、ガス異常監視区域4の周縁、或いはCOが滞留しやすい窪んだ箇所、低い箇所等に、各々前面が光源ユニット20に向くように適宜設置されている。
図3に図示のように、固定局8には、固定局8内の各種の計測器からの各計測値の収集、各機器の制御、計測値送信信号の作成、レーザ光送光局7との交信の制御を行なう制御監視装置47fが設けられている。
【0060】
固定局8には、図1、図2に図示のガス投入・監視センター6と交信するデータ送受信用アンテナ41f及び無線送受信機42fが設けられている。
更に、固定局8には、風向風速計40f、温度計43f、照度計44f、及び制御監視装置47fに送信するデータを変換するAD変換器ADが設けられている。
そして、風向風速計40f、温度計43f、或いは照度計44fにより計測された固定局8近傍の風向計測値WDj、風速計測値WVj、温度Tj、或いは照度は、AD変換器ADを介して制御監視装置47fに送信される。
【0061】
固定局8内には、図15或いは図16に図示のものと同様の、計測用フォトダイオード45f、背景光用フォトダイオード46fも設けられている。
なお、背景光用フォトダイオード46fは、計測用レーザ光Rの光軸(或いは、計測用フォトダイオード45)からできるだけ離れたところに、計測用フォトダイオード45fと同じ向きに向くように配置されている。
また、計測用フォトダイオード45fの前方には、光源ユニット20から出射されたレーザ光Rを集光するために、中央部にレーザ光通過用の孔の空いた大きな凹面鏡51と、凹面鏡51より前方の小さな反射鏡52(凸面鏡或いは平面鏡)とが設けられている。
計測用フォトダイオード45f、背景光用フォトダイオード46fにて計測されたレーザ光計測値DXj及び背景光計測値DNjは、AD変換器ADを介して制御監視装置47fに送信される。
【0062】
また、北向き以外の固定局8の内、太陽光が凹面鏡51及び凹面鏡51より集光して計測用フォトダイオード45f当たる可能性のあるものについては、固定局8の前面に、必要に応じてシャッター48及びシャッター駆動装置49が設けられている。
なお、固定局8の前面には、日や雨を防ぐために庇70が設けられている。
そして、照度計44fにより計測された照度が所定値を超えた場合、制御監視装置47fからの指令に基づき自動的にシャッター駆動装置49によりシャッター48を閉鎖するようになっている。
【0063】
また、固定局8には、固定局8内の各種の装置の駆動用電源として、電力を発生させる太陽電池53、電力を蓄える二次電池55、太陽電池53で発生した電力を二次電池55に充電すると共に固定局8内の各種の装置に電力を供給する充放電盤54が設けられている。
なお、この駆動用電源は、ガス投入・監視センター6等から電力供給電線により供給するようにしても良い。
【0064】
制御監視装置47fは、固定局8内の各種の機器の故障診断機能、二次電池55の電圧異常低下判定機能等も備えており、機器の故障、電圧異常低下、シャッター48遮蔽中の場合は、固定局異常と判定するようになっている。
そして、レーザ光送光局7からのデータ送信要求に応じて、制御監視装置47fは、レーザ光計測値DXj、背景光計測値DNj、風向計測値WDj、風速計測値WVj、温度Tj、及び固定局異常のデータを、無線送受信機42f及びデータ送受信用アンテナ41fを介してレーザ光送光局7に送信する。
【0065】
また、固定局8の側壁には、表示器付き操作パネル66fが備えられている。
この表示器付き操作パネル66fにより、機側にて固定局8内の各機器の調整、故障原因の分析、表示等ができるようになっている。
【0066】
〔レーザ光受信用の移動局の構成〕
次に、図4に基づき、レーザ光受光用の移動局9の構成につき詳細に説明する。
レーザ光受光用の移動局9は、基本的にレーザ光受光用の固定局8のものと同じ装置を供えている。
固定局8と異なる点は、GPS用アンテナ56、GPS受信機57、無線方位探知機用パラボラアンテナ58、無線方位探知機59、傾斜軸60、傾斜軸駆動機61、旋回軸62、旋回駆動機63、及び傾斜旋回駆動装置64を備えている点にある。
そして、移動局9は、ガス異常監視区域4において任意の箇所に、移動体69(車両等)に搭載して移動、或いは人が持ち運びできるようになっている。
【0067】
電源については、固定局8(図3参照)のように、太陽電池53、充放電盤54及び二次電池55を必ずしも設ける必要はなく、搭載する移動体69等から電源用コネクタ67を介して電力を供給するようにしても良いが、固定局8と同様に太陽電池53、充放電盤54及び二次電池55、或いは別置き型の電池を設けても良い。
また、移動局9は、操作員が操作するため、必ずしも図3に図示のシャッター駆動装置49、レーザ光透過板50を設ける必要はないが、誤操作時或いは移動中に、太陽光が集光しないようにシャッター駆動装置49、レーザ光透過板50を設けても良い。
【0068】
図4に図示のように、移動局9には、移動局9内の各種の計測器からの各計測値の収集、各機器の制御、計測値送信信号の作成、レーザ光送光局7との交信の制御を行なう制御監視装置47fが設けられている。
また、移動局9には、キャブタイヤケーブル、信号線用コネクタを介して表示器付き操作パネル66mが接続されている。
この表示器付き操作パネル66mにより、機側にて移動局9内の各機器の調整、操作を行なえるようになっている。
なお、移動局9の前面には、日や雨を防ぐために庇70が設けられている。
【0069】
移動局9には、図4に図示のように、図1、図2に図示のガス投入・監視センター6と交信するデータ送受信用アンテナ41m及び無線送受信機42mが設けられている。
更に、移動局9には、風向風速計40m、温度計43m、照度計44m、及び制御監視装置47mに送信するデータを変換するAD変換器ADが設けられている。
そして、風向風速計40m、温度計43m、或いは照度計44mにより計測された移動局9近傍の風向計測値WD、風速計測値WV、温度T、或いは照度は、AD変換器ADを介して制御監視装置47mに送信される。
【0070】
そして、移動局9内には、図15、図16に図示のものと同様の、計測用フォトダイオード45m及び背景光用フォトダイオード46mが設けられている。
また、計測用フォトダイオード45mの前方には、光源ユニット20から出射されたレーザ光を集光するために、中央部にレーザ光通過用の孔の空いた大きな凹面鏡51と、凹面鏡51より前方の小さな反射鏡52(凸面鏡或いは平面鏡)とが設けられている。
計測用フォトダイオード45m、或いは背景光用フォトダイオード46mにて計測されたレーザ光計測値DXj或いは背景光計測値DNjは、AD変換器ADを介して制御監視装置47mに送信される。
【0071】
また、移動局9には、GPS用アンテナ56及びGPS受信機57が設けられており、移動局9を設置した場所の位置(緯度x、経度y)を計測できるようになっている。
なお、GPS用アンテナ56及びGPS受信機57は、移動局9とは切り離して設け、計測した位置を表示器付き操作パネル66mから入力するようにしても良い。
【0072】
移動局9には、無線方位探知機用パラボラアンテナ58及び無線方位探知機59が設けられている。
また、移動局9の下部には、傾斜軸60、傾斜軸駆動機61、旋回軸62、旋回駆動機63、及び傾斜旋回駆動装置64が備えられている。
【0073】
上述の構成の移動局9を計測したい場所に移動し設置する。
そして、無線方位探知機用パラボラアンテナ58及び無線方位探知機59により、光源ユニット20に設けられた無線方位探知用電波発信アンテナ38から発信される無線方位探知用電波を受信する。
次に、傾斜旋回駆動装置64により傾斜軸駆動機61及び旋回駆動機63を駆動して、無線方位探知用電波が最も強くなる方向(光源ユニット20の方向)に、凹面鏡51、反射鏡52及び計測用フォトダイオード45mを向ける。
移動局9の設置及び凹面鏡51、反射鏡52及び計測用フォトダイオード45mの向きの設定が完了したら、制御監視装置47mによる計測を開始する。
【0074】
そして、制御監視装置47mは、移動局9を設置した場所の位置(緯度xi、経度yi)、レーザ光計測値DXj及び背景光計測値DNj、風向計測値WDj、風速計測値WVj、及び温度Tjのデータを、無線送受信機42m及びデータ送受信用アンテナ41mを介してレーザ光送光局7に送信する。
【0075】
〔中央制御監視装置における制御〕
図5〜図7、及び図9〜図11に基づいて、中央制御監視装置10により、固定局8を用いて計測する場合の制御につき説明する。
【0076】
(固定局による計測)
図5に図示のように、例えば1日に1回等、定期的に(或いはキーボード13から入力された指令に基づき)、固定局8による計測を開始する(ステップS0)。
なお、この時点で、記憶器11から、光源ユニット20の位置Po(緯度xo、経度yo、標高Ho)を読み出しておく。
先ず、計測すべき固定局番号iを0(ゼロ)とし(ステップS1)、固定局番号iをi=i+1とする(ステップS2)。
次に、記憶器11から、i番目の固定局8(以下、固定局8iと称する)の位置情報Pi(緯度xi、経度yi、標高Hi、計測区間距離Li)を読み出す(ステップS3)。
【0077】
なお、計測区間距離Liは必ずしも必要なものではなく、光源ユニット20の位置情報Po(緯度xo、経度yo、標高Ho)と固定局8iの位置情報Pi(緯度xi、経度yi、標高Hi)とから算出するようにしても良い。
また、計測区間距離Lを演算する場合、参照セル長さLoが数十cmであるのに対し、計測区間距離Lは数百m〜数kmであり、計測区間距離Lの計測起点(或いは後述するLm)がLDモジュール21の出口であっても光学窓25の出口であっても、これによる誤差は1%以下である。
【0078】
次に、データ送受信用アンテナ41p、無線送受信機42pを介して、固定局8iに計測開始信号を発信する(ステップS4)。
そして、所定時間、固定局8iより準備完了信号を待つ。
もし、所定時間経過しても固定局8iからの応答が無かったり、固定局8iから固定局異常の信号を受信した場合(ステップS5)は、固定局8i異常と判定し、固定局8iでの計測を終了し(ステップS16)、ステップS2に戻る。
固定局8iが正常な場合、固定局8iからデータ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42pを介して、レーザ光計測値DXj、背景光計測値DNj、風向計測値WDj、風速計測値WVj及び温度Tjを受信する(ステップS5)。
【0079】
光源ユニット20の位置Po(緯度xo、経度yo、標高Ho)と固定局8iの位置Pi(緯度xi、経度yi、標高Hi)とから、光源ユニット20の初期の向き及び仰角を演算する(ステップS6)。
この場合、光源ユニット20と固定局8iとは、約2km離れているものもあり、上記の演算された向き及び仰角により光源ユニット20の向き及び仰角を制御したのみでは、光源ユニット20から送光された計測用レーザ光Rが固定局8iで受光できるとは限らない。
【0080】
そこで、特定位置走査器16(図2参照)により、上記の演算された初期の向き及び仰角を基準として、計測用フォトダイオード45fにて計測されたレーザ光計測値DXが最大となる特定位置への向き及び仰角が走査され、特定位置が特定され、光源ユニット20の前面が固定局8iの方向に向くように、旋回傾斜制御装置37を介して傾斜用駆動機35及び旋回用駆動機36が駆動される(第1の位置走査ステップS7a、第2の位置走査ステップS7b)。
【0081】
第1の位置走査ステップS7aでは、図6に図示のように、先ず、上記の初期の向き及び仰角を中心とした、所定の横方向の走査幅b、高さ方向走査幅a、高さ方向ピッチΔHを設定する(ステップS41)。
なお、横方向の走査幅b、高さ方向の走査高さa、高さ方向ピッチΔHは、プログラムに定数として設定しても良く、記憶器11に記憶しておき記憶器11から読み出すようにしても良い。
また、第1の位置走査ステップS7aにおいては、例えば、横方向の走査幅b=10m、高さ方向の走査高さa=10m、高さ方向ピッチΔH=1mが設定される。
【0082】
次に、走査開始の範囲の高さを、最大のH+aとする(ステップS42)。
そして、この高さHにおいて、旋回軸33を駆動(ステップS43)して横方向走査幅=±bの範囲における横方向走査を行い(ステップS44)、固定局8の計測用フォトダイオード45fにて計測されたレーザ光計測値DXを入手する(ステップS45)。
【0083】
次に、水平軸31を駆動して走査開始の範囲の高さH=H−高さ方向ピッチΔHとする(ステップS46)。
そして、走査開始の範囲の高さH<H−aか否かを判定し、否の場合にはステップS43に戻り、次の高さにおけるレーザ光計測値DXを入手する(ステップS43〜S47)。
【0084】
走査開始の範囲の高さH<H−aと判断した場合には、走査を終了し、図9に図示のようなグラフ或いはデータを得る。
そして、レーザ光計測値DXが最大となる特定位置の横方向位置(x,y)及び高さH(即ち、向き及び仰角)を演算する(ステップS48)。
この特定位置へ水平軸31及び旋回軸33を駆動して(ステップS49)、第1の位置走査(ステップS7a)を終了する。
【0085】
この第1の位置走査は、高さ方向ピッチΔH=1mでありピッチが荒い。
そこで、次に範囲を絞って、図6に図示のように、第2の走査を行なう(第2の位置走査ステップS7b)。
第2の位置走査ステップS7bにおいては、例えば、横方向の走査幅b=1.5m、高さ方向の走査高さa=1.5m、高さ方向ピッチΔH=0.3mが設定される。
そして、再度図6に図示のように、ステップS41〜ステップS49により特定位置が演算される。
このようにして、光源ユニット20の前面は、正確に固定局8iに向けられる。
【0086】
次に、図5に図示のように、計測を開始し、固定局8iからデータ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42pを介して、レーザ光計測値DX、背景光計測値DN、風向計測値WD、風速計測値WV及び温度Tを受信する。
そして、ガス濃度演算器15(図2参照)により、レーザ光計測値DX、背景光計測値DNと、参照ガス濃度計測値Doと、計測区間距離Lと、記憶器11からの参照セル長さLoとに基づき、大気中のガス濃度Cが演算され、データ番号j、計測年月日時刻TMjと共に記憶器11に記憶される(ステップS8)。
【0087】
ステップS8では、図7に図示のように、先ず、光源ユニット20の参照用フォトダイオード24からの参照ガス濃度計測値Doを入手する(ステップS51)。
これと並行或いは前後して、固定局8iから計測用フォトダイオード45fにて計測されたレーザ光計測値DX及び背景光用フォトダイオード46fにて計測された背景光計測値DN、風向計測値WD、風速計測値WV及び温度Tを入手する(ステップS52)。
【0088】
これらのデータに基づき、次式により大気中のガス濃度Cが演算される(ステップS53)。
大気中のガス濃度C={(レーザ光計測値DX−背景光計測値DN)/参照ガス濃度計測値Do}×(参照セル長さLo/計測区間距離L)×参照セル内ガス濃度Co
【0089】
例えば、図10に図示の例では、レーザ光送光局7と各固定局8iとを結ぶ計測線M1の濃度Di=0.1%、レーザ光送光局7と各固定局8i+1とを結ぶ計測線M2の濃度Di+1=0.2%、レーザ光送光局7と各固定局8i+2とを結ぶ計測線M3の濃度Di+2=0.15%、レーザ光送光局7と各固定局8i+3とを結ぶ計測線M4の濃度Di+3=0.1%、レーザ光送光局7と各固定局8i+4とを結ぶ計測線M5の濃度Di+4=0.1%という値が演算される。
【0090】
その後、データ番号j、計測年月日時刻TMjと共に、固定局8の位置Pi(固定局8の番号i、或いは計測した位置の緯度xi、経度yi、標高Hi、固定局8迄の計測区間距離Li)、レーザ光計測値DXj(=DX)、背景光計測値DNj(=DN)、演算した大気中のガス濃度Cj(=C)、風向計測値WDj(=WD)、風速計測値WVj(=WV)及び温度Tj(=T)が、記憶器11に記憶される(ステップS54)。
【0091】
そして、記憶器11に記憶されたデータに基づき、図10に図示のように、表示器12に、レーザ光送光局7と固定局8i(i=i〜i+4)とを結ぶ計測線M1〜M5における大気中の各ガス濃度Ci(i=i〜i+4)(i=j−α)が表示される(ステップS9)。
【0092】
全ての固定局8iにつき、計測が終了(i=n)したか否かを判定し(ステップS10)、否の場合はステップS2に戻り、次の固定局8iにつき、ステップS2〜S9にて大気中のガス濃度Cを演算し、結果を表示器12に追加表示する。
そして、ガス濃度Ciが異常な固定局8iが有るか否かを判定し(ステップS11)、なかった場合には、計測を終了する(ステップS12)。
【0093】
一方、ガス濃度が異常な固定局8iが有ると判定(ステップS11)された場合には、重畳表示作成器17(図2参照)により、ガス濃度Cjが異常な固定局8iの風向計測値WDj、風速計測値WVj、温度Tjのデータに基づき、計測した濃度のガス噴出想定範囲Ziが演算される。
即ち、図10に図示の例では、固定局8i+1、固定局8i+2が規定値異常と判定される。
そして、固定局8i+1、固定局8i+2における、風速計測値WVi+1、風速計測値WVi+2から、その濃度の風上側の上限線M8、M9を得る。
また、また、風向計測値WDi+1、風向計測値WDi+2から、周囲の限界線M6、M7を得る。
【0094】
このようにして、ガス濃度Ci=0.2%のガス噴出想定範囲Zi+1は、レーザ光送光局7と各固定局8i+1とを結ぶ計測線M2、レーザ光送光局7と各固定局8iとを結ぶ計測線M1、上限線M8、限界線M6で囲まれた範囲となる。
また、ガス濃度Ci+1=0.15%のガス噴出想定範囲Zi+2は、レーザ光送光局7と固定局8i+2とを結ぶ計測線M3、レーザ光送光局7と固定局8i+1とを結ぶ計測線M2、上限線M9、限界線M7で囲まれた範囲となる(ステップS13)。
【0095】
このとき、レーザ光送光局7と固定局8i+1とを結ぶ計測線M2のレーザ光送光局7付近は、ガス濃度=0.15%のガス噴出想定範囲Zi+2にも入っているが、重複した範囲については、風上側のガス濃度Ciを選定する。
【0096】
計測線M1、計測線M2、上限線M8及び限界線M6で囲まれたガス濃度が0.2%のガス噴出想定範囲i+1、計測線M2、計測線M3、上限線M9及び限界線M7で囲まれたガス濃度が0.15%のガス噴出想定範囲Zi+2は、図10に図示のように、重複した範囲については風上側のガス濃度Ciが選定されて表示器12に重畳表示され(ステップS14)、移動局9による計測に移行する(ステップS15)。
なお、図10に図示のものは、ガス異常監視区域4の一部を示したものであるが、ガス異常監視区域4を中心として周囲の全て(n個)の固定局8を表示するようにしても良く、或いは全体表示と部分表示とを選択し表示するようにしても良い。
【0097】
(移動局による計測)
次に、ガス濃度の異常が検出された場合には、図8に図示のように、車両等の移動体69にレーザ光受光用の移動局9を搭載してガス濃度の計測を開始する(ステップS20)。
先ず、レーザ光送光局7から、無線方位探知用電波発信アンテナ38及び無線方位探知用電波発信器39により無線方位探知用電波を発信する(ステップS21)。
一方、移動局9は、計測の準備が完了したら、移動局9の位置P(緯度x、経度y)、計測の準備が完了したとの情報を送信する。
【0098】
レーザ光送光局7の中央制御監視装置10は、移動局9から位置P(緯度x、経度y)、計測の準備が完了したとの情報を、データ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42pを介して受信する(ステップS22)。
【0099】
レーザ光送光局7の中央制御監視装置10では、記憶器11に記憶された地形図に基づき、地形図照合器14(図2参照)にて、受信した移動局9の位置P(緯度x、経度y)における高さH(標高)を演算する。
そして、移動局9の位置P(緯度x、経度y、標高H)と、光源ユニット20の位置情報Po(緯度xo、経度yo、標高Ho)との関係から、移動局9迄の距離L、向き及び仰角を演算する(ステップS23)。
その後、固定局8の場合と同様に、第1の位置走査ステップS24a、第2の位置走査ステップS24b(詳細処理内容は図6に同じ)により、移動局9の計測用フォトダイオード45mのデータが最大となる特定位置への向き及び仰角を演算し、光源ユニット20の前面が特定位置に正確に向くように、傾斜用駆動機35及び旋回用駆動機36を駆動する。
【0100】
次に、図8に図示のように、計測を開始し、移動局9からデータ送受信用アンテナ41p及び無線送受信機42pを介して、レーザ光計測値DX、背景光計測値DN、風向計測値WD、風速計測値WV及び温度Tを受信する。
そして、レーザ光計測値DX、背景光計測値DNと、光源ユニット20の参照用フォトダイオード24からの参照ガス濃度計測値Doと、記憶器11からの参照セル長さLo及び計測区間距離Lとに基づき、大気中のガス濃度Cが演算され、記憶器11に記憶される(ステップS25)。
【0101】
即ち、固定局8の場合と同様に、図7に図示のステップS51〜S54の処理により、次式により大気中のガス濃度Ciが演算される。
大気中のガス濃度C=(レーザ光計測値DX/参照ガス濃度計測値Do)×(参照セル長さLo/計測区間距離L)×参照セル内ガス濃度Co
【0102】
その後、新たなデータ番号j、計測年月日時刻TMjと共に、移動局9の位置Pj(計測した位置の緯度x、経度y、標高H、計測区間距離L)、レーザ光計測値DXj(=DX)、背景光計測値DNj(=DN)、演算した大気中のガス濃度Cj(=C)、風向計測値WDj(=WD)、風速計測値WVj(=WV)及び温度Tj(=T)が、記憶器11に記憶される。
計測が終了すると、計測が終了した旨の信号を、無線送受信機42p、データ送受信用アンテナ41pを介して移動局9に発信する(ステップS26)。
【0103】
そして、記憶器11に記憶されたデータに基づき、図10に図示のように、表示器12に、レーザ光送光局7と移動局9とを結ぶ計測線M10における大気中のガス濃度Cが追加表示される(ステップS27)。
そして、移動局9における、風速計測値WVjから、その濃度の風上側の上限線M12を得る。
また、また、風向計測値WDjから、周囲の限界線M11を得る。
なお、図10に図示の例では、ガス濃度が0.15%の上限線M12は、ガス濃度が0.1%の計測線M1より風上にあるので使用しない。
【0104】
このようにして、ガス濃度=0.2%のガス噴出想定範囲から、移動局9での計測によるガス濃度=0.15%のガス噴出想定範囲が除かれる(ガス濃度=0.2%のガス噴出想定範囲が絞り込まれる)(ステップS28)。
この演算結果は、図10に図示のように、表示器12に重畳表示される(ステップS29)。
そして、計測が終了したか否かを判定し(ステップS30)、否の場合は、レーザ光受光用の移動局9を次の計測場所に移動させ、ステップS22に戻る。
そして、次の計測場所につき、ステップS22〜S29にて、新たに大気中のガス濃度Cを演算する。
計測が終了したら、記憶器11に記憶された諸データに基づきガス濃度分布状況を演算、表示し(ステップS31)、終了する(ステップS32)。
【0105】
このガス噴出地点の、レーザ光送光局7から放射方向における探査状況を図11に示す。
図11に図示のように、レーザ光送光局7と固定局8との間にガス噴出地点がある場合、先ず、固定局8にてガス濃度の異常が検出される。
そこで、移動局9により、レーザ光送光局7から固定局8に向かって移動しつつ計測を行なうと、レーザ光送光局7近傍ではガス濃度の異常は検出されない。
そして、ガス噴出地点に近づくとガス濃度が高くなり、ガス噴出地点を過ぎると、次第にガス濃度が低くなっていく。
このようにして、ガス噴出地点は特定される。
【0106】
〔本発明の第2の実施の形態におけるレーザ光送光局の構成〕
次に、図12に基づき、本発明の第2の実施の形態における光源ユニット20a、ガス投入・監視センター6等により構成されたレーザ光送光局7の構成につき詳細に説明する。
図12は、本発明の第2の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムにおける光源ユニットを備えたガス投入・監視センターの模式図である。
なお、図12において、本発明の第1の実施の形態(図2等参照)のものと同じ符号のものは同一の部材である。
【0107】
本発明の第1の実施の形態のものと異なる点は、光源ユニット20aを旋回駆動する旋回傾斜機構30(図2等参照)に加えて、更に、微駆動用の旋回傾斜機構30aを追加した点にある。
即ち、レーザ光受信用の固定局8(或いは、移動局9)の凹面鏡51の直径は1〜2m前後である。
そして、例えば2km先に設置された直径が1〜2mの凹面鏡51、並びにレーザ光透過板50、計測用フォトダイオード45f、45mに、光源ユニット20aから発光するレーザ光Rを当てるためには、高精度な位置調整が必要となる。
【0108】
そこで、本発明の第1の実施の形態(図2等参照)のものと同様に光源ユニット20aとポール28との間に旋回傾斜機構30を設置すると共に、これに加えてミラー22cの向き及び仰角をかえるための旋回傾斜機構30aが設けられている。
全方向用の旋回傾斜機構30は、ガス異常監視区域4の全域に向くように光源ユニット20aを旋回、傾斜駆動する。
微駆動(或いは走査)用の旋回傾斜機構30aは、例えば、固定局8或いは移動局9における上述の横方向の走査幅b=10m、高さ方向の走査高さa=10mの2倍の範囲内でミラー22cを旋回、傾斜駆動する。
【0109】
上述の全方向用の旋回傾斜機構30と微駆動(或いは走査)用の旋回傾斜機構30aとを兼ね備えた本発明の第2の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムによれば、次の計測点(固定局8或いは移動局9)への旋回駆動は全方向用の旋回傾斜機構30により高速で行われ、特定位置における走査は微駆動(或いは走査)用の旋回傾斜機構30aにより高精度に行なわれる。
【0110】
〔本発明の第3の実施の形態におけるレーザ光送光局の構成〕
次に、図13に基づき、本発明の第3の実施の形態における光源ユニット20b、ガス投入・監視センター6等により構成されたレーザ光送光局7の構成につき詳細に説明する。
図13は、本発明の第3の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムにおける光源ユニットを備えたガス投入・監視センターの模式図である。
なお、図13において、本発明の第1の実施の形態(図2等参照)のものと同じ符号のものは同一の部材である。
【0111】
本発明の第1の実施の形態のものと異なる点は、光源ユニット20を旋回駆動する旋回傾斜機構30(図2等参照)に代えて、微駆動用の旋回傾斜機構30bを設けた点にある。
即ち、光源ユニット20bは、ポール28上に直に取り付けられている。
そして、レーザ光Rを照射させるためのミラー22cを、ガス異常監視区域4の全域に向くように旋回、傾斜駆動する微駆動用の旋回傾斜機構30bが、光源ユニット20b内に設けられている。
【0112】
上述の全方向用の旋回傾斜機構30bを備えた本発明の第3の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムによれば、次の計測点(固定局8或いは移動局9)への旋回駆動は遅くなるものの、本発明の第2の実施の形態のものと同様に、特定位置における走査は微駆動(或いは走査)用の旋回傾斜機構30aにより高精度に行なわれる。
なお、本発明の第3の実施の形態のものは、照度計44pが不要の場合であるが、照度計44pが必要な場合には、別途、照度計旋回駆動機構を設ける必要がある。
【0113】
〔本発明の第4の実施の形態における全体の構成〕
次に、本発明の第4の実施の形態を図14に基づいて説明する。
図14は、本発明の第4の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムの全体配置図である。
本発明の第4の実施の形態のものは、本発明の第1の実施の形態のものに対し、移動局9は設けず、固定局8のみをガス異常監視区域4内に配置したものである。
【0114】
図14に図示のように、ガス異常監視区域4の中央或いは適宜箇所には、光源ユニット20(20a,20b)を有するレーザ光送光局7aが、少なくとも1組配置されている。
このレーザ光送光局7aは、第1〜3の実施の形態(図2、図12、図13参照)におけるレーザ光送光局7と同様に、光源ユニット20、旋回傾斜機構30(及び/又は旋回傾斜機構30a、旋回傾斜機構30b)、旋回傾斜制御装置37、ポール28、LDドライバユニット26、計測ユニット27、無線方位探知用電波発信アンテナ38、無線方位探知用電波発信器39、風向風速計40p、データ送受信用アンテナ41p、無線送受信機42p、温度計43p、照度計44p、AD変換器AD、DA変換器DA等を備えている。
【0115】
本発明の第1の実施の形態のものと同様に、ガス異常監視区域4の周縁の適宜箇所には、レーザ光受光用の固定局8が設置されている。
また、ガス異常監視区域4においてCOが滞留しやすい窪んだ箇所、低い箇所等には、必要に応じて適宜、レーザ光受光用の固定局8が設置されている。
また、ガス異常監視区域4の周縁、或いは、貯留ガスの受け入れ箇所には、ガス投入・監視センター6aが設置されている。
このガス投入・監視センター6aには、図2に図示の、ガス濃度演算器15、特定位置走査器16及び重畳表示作成器17を有する中央制御監視装置10、記憶器11、表示器12、及びキーボード13が備えられている。
【0116】
上述の本発明の第4の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムによれば、本発明の第1の実施の形態のものに対して精度は粗くなるものの、本発明の第1の実施の形態のものと同様にガス濃度演算器15、特定位置走査器16及び重畳表示作成器17を有しているため、大気(空気)中の異常ガスのガス濃度を、天候、特に風向風速による影響を考慮して分析し監視することができる。
【0117】
なお、レーザ光送光局7を図14に図示のように、2組設けることにより、ガス噴出地点をより正確に特定することが可能となる。
但し、この場合、各固定局8は、レーザ光透過板50、凹面鏡51、反射鏡52、計測用フォトダイオード45f、背景光用フォトダイオード46f等を2組設ける必要があるものの、制御監視装置47f、太陽電池53、充放電盤54、二次電池55、GPS用アンテナ56、GPS受信機57、無線方位探知機用パラボラアンテナ58、無線方位探知機59等を共有することができる。
【0118】
〔本発明の第5の実施の形態における送受信データの構成〕
次に、ガス投入・監視センター6(6a)と、固定局8或いは移動局9との送受信データの構成につき説明する。
上述のごとく、固定局8からガス投入・監視センター6(6a)へは、
計測用フォトダイオード45fにて計測されたレーザ光計測値DX、背景光用フォトダイオード46fにて計測された背景光計測値DN、風向風速計40fにて計測された風向計測値WD及び風速計測値WV、温度計43fにて計測された温度T、及び故障の有無の信号が各々送信される。
また、移動局9からガス投入・監視センター6(6a)へは、
計測用フォトダイオード45mにて計測されたレーザ光計測値DX、背景光用フォトダイオード46mにて計測された背景光計測値DN、風向風速計40mにて計測された風向計測値WD及び風速計測値WV、温度計43mにて計測された温度T、GPS受信機57にて計測された移動局9を設置した場所の位置(緯度x、経度y)が各々送信される。
【0119】
この場合、各種のデータを時間分割により一つの共通する送信信号に纏めるようにしても良い。
この送信信号は、次のような構成となる。
a)送信信号の開始フラグ
b)レーザ光計測値DX
c)背景光計測値DN
d)風向計測値WD
e)風速計測値WV
f)温度T
g)故障の有無(移動局9の場合はブランク)
h)緯度x(固定局8の場合はブランク)
i)経度y(固定局8の場合はブランク)
j)送信信号の終了フラグ
【0120】
このように、固定局8或いは移動局9からガス投入・監視センター6(6a)への送信信号を共通のフォーマットにすることにより、データの管理、運営が簡素になる。
【0121】
〔その他の実施の形態〕
以上、本発明の実施の各形態に係るガス濃度モニタリングシステムについて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
【0122】
例えば、固定局8或いは移動局9とガス投入・監視センター6(6a)との交信は、無線に限定されるものではなく、有線(電線又は光ファイバケーブル)を介して行なうようにしても良い。
また、固定局及び移動局には、計測用フォトダイオード45f及び背景光用フォトダイオード46fを設けず反射鏡のみとし、光源ユニット20に、計測用フォトダイオード45f及び背景光用フォトダイオード46fを設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムの全体配置図である。
【図2】図1に図示の光源ユニット20を備えたガス投入・監視センターの模式図である。
【図3】図1に図示のレーザ光受光用の固定局の模式図である。
【図4】図1に図示のレーザ光受光用の移動局の模式図である。
【図5】図2に図示の中央制御監視装置における固定局による計測の場合の制御ブロック図である。
【図6】図5に図示の特定位置の特定の詳細制御ブロック図である。
【図7】図5に図示のガス濃度の検出・演算の詳細制御ブロック図である。
【図8】図2に図示の中央制御監視装置における移動局による計測の場合の制御ブロック図である。
【図9】図6に図示の特定位置を特定する方法を示す図である。
【図10】図2に図示の表示器の表示例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る漏洩ガスの位置を特定する方法を示す模式図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムにおける光源ユニットを備えたガス投入・監視センターの模式図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムにおける光源ユニットを備えたガス投入・監視センターの模式図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係るガス濃度モニタリングシステムの全体配置図である。
【図15】従来のガス濃度計測装置の全体構成図である。
【図16】図15に図示のガス濃度計測装置の要部を示すブロック図である。
【図17】従来の移動体によるガス濃度モニタリングシステムを模式的に示す斜視図である。
【図18】従来の周囲に反射部を設置したガス濃度モニタリングシステムを模式的に示す斜視図である。
【図19】従来のガス漏洩検出装置をLNG貯蔵基地に適用した場合の概念図である。
【符号の説明】
【0124】
1 閉塞帯水層
2 準化石塩水層
3 海洋
4 ガス異常監視区域
5 ガス投入配管
6、6a ガス投入・監視センター
7、7a レーザ光送光局
8 (レーザ光受信用の)固定局
9 (レーザ光受信用の)移動局
10 中央制御監視装置
11 記憶器
12 表示器
13 キーボード
14 地形図照合器
15 ガス濃度演算器
16 特定位置走査器
17 重畳表示作成器
20,20a,20b 光源ユニット
21 LDモジュール
22a ミラー
22b ハーフミラー
22c ミラー
23 参照セル
24 参照用フォトダイオード
25 光学窓
26 LDドライバユニット
27 計測ユニット
28 ポール
30、30a、30b 旋回傾斜機構
31 水平軸
32 垂直部材
33 旋回軸
34 ターンテーブル
35 傾斜用駆動機
36 旋回用駆動機
37 旋回傾斜制御装置
38 無線方位探知用電波発信アンテナ
39 無線方位探知用電波発信器
40p、40f、40m 風向風速計
41p、41f、41m データ送受信用アンテナ
42p、42f、42m 無線送受信機
43p、43f、43m 温度計
44p、44f、44m 照度計
45、45f、45m 計測用フォトダイオード
46、46f、46m 背景光用フォトダイオード
47f、47m 制御監視装置
48 シャッター
49 シャッター駆動装置
50 レーザ光透過板
51 凹面鏡
52 反射鏡
53 太陽電池
54 充放電盤
55 二次電池
56 GPS用アンテナ
57 GPS受信機
58 無線方位探知機用パラボラアンテナ
59 無線方位探知機
60 傾斜軸
61 傾斜軸駆動機
62 旋回軸
63 旋回駆動機
64 傾斜旋回駆動装置
66f、66m 表示器付き操作パネル
67 電源用コネクタ
68 信号線用コネクタ
69 移動体
70 庇
AD AD変換器
DA DA変換器
R 計測用レーザ光
Lo 参照セル長さ
L 計測区間距離
Lo 参照セル長さ
Do 参照ガス濃度計測値
j データ番号
TM 計測年月日時刻
P 固定局の位置情報
i 固定局の番号
x 固定局の緯度
y 固定局の経度
H 固定局の標高
xo 光源ユニットの緯度
yo 光源ユニットの経度
Ho 光源ユニットの標高
WDo ガス投入・監視センターにおける風向計測値
WVo ガス投入・監視センターにおける風速計測値
To ガス投入・監視センターにおける温度
WD 固定局或いは移動局における風向計測値
WV 固定局或いは移動局における風速計測値
T 固定局或いは移動局における温度
C 大気中のガス濃度
Co 参照セル内ガス濃度
DX レーザ光計測値
DN 背景光計測値
M1〜M5 計測線
M6、M7 限界線
M8、M9 上限線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス異常監視区域に配置され計測対象となるガスに固有な吸収波長のレーザ光を前記ガス異常監視区域に向けて発光するLDモジュールを有する少なくとも1つの光源ユニットと、
前記光源ユニットが発光する前記レーザ光の投光方向及び仰角を制御する旋回傾斜機構と、
前記ガス異常監視区域内の前記光源ユニットの周囲に配置され前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードを有する複数の固定局と、
前記固定局に設けられた風向風速計と、
前記固定局の前記計測用フォトダイオードにて計測されたレーザ光計測値に基づき前記光源ユニットと前記固定局との間の大気中のガス濃度を演算するガス濃度演算器及び、前記風向風速計にて計測された風向計測値及び風速計測値に基づき、演算された前記ガス濃度のガス噴出想定範囲を演算する重畳表示作成器を有する中央制御監視装置と、
前記計測値及び演算結果を記憶する記憶器と、
その演算結果を表示する表示器と
を備えたことを特徴とするガス濃度モニタリングシステム。
【請求項2】
前記光源ユニットは、
前記LDモジュールと、
計測対象となるガスが所定のガス濃度で封入されると共に前記LDモジュールから発光の一部を透過させる参照セルと、
前記参照セルを透過した透過光を受光する参照用フォトダイオードとを有し、
前記固定局は、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に背景光用フォトダイオードを有していることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項3】
前記固定局は、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を有していることを特徴とする請求項2に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項4】
前記中央制御監視装置の前記ガス濃度演算器は、次式により前記大気中のガス濃度Cを求めるものであることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス濃度モニタリングシステム、
大気中のガス濃度C={(レーザ光計測値DX−背景光計測値DN)/参照ガス濃度計測値Do}×(参照セル長さLo/計測区間距離L)×参照セル内ガス濃度Co、
但し、
レーザ光計測値DX:計測用フォトダイオードによる計測値、
背景光計測値DN:背景光用フォトダイオードによる計測値、
参照ガス濃度計測値Do:参照用フォトダイオードによる計測値、
参照セル長さLo:参照セルの長さ、
計測区間距離L:光源ユニットから計測用フォトダイオード迄の距離、
参照セル内ガス濃度Co:参照セル内に封入されたガスの濃度。
【請求項5】
前記中央制御監視装置は、前記固定局の設置位置と前記光源ユニットの設置位置とから前記光源ユニットの向き及び仰角を演算して光源ユニットを前記固定局に向け、その後、光源ユニットの向き及び仰角を設定された所定の走査幅及び走査高さの範囲内で走査し、前記固定局の計測用フォトダイオードからのレーザ光計測値が最大となる位置を特定する特定位置演算器を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項6】
前記中央制御監視装置は、前記所定の走査幅及び走査高さの範囲及びこれより小さな所定の走査幅及び走査高さの範囲にて、前記特定位置演算器による位置の特定を少なく共2回行なうものであることを特徴とする請求項5に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項7】
前記中央制御監視装置の重畳表示作成器は、任意の計測地点において演算された前記ガス濃度が複数個ある場合に、風上側の前記固定局での前記ガス濃度を選定するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項8】
前記固定局は、
電力を発生させる太陽電池と、電力を蓄える二次電池と、太陽電池で発生した電力を二次電池に充電すると共に固定局内の各種の装置に電力を供給する充放電盤とを有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項9】
前記固定局は、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項10】
前記固定局は、
照度計と、
前記照度計にて計測された照度が所定値を超えた場合に閉じるシャッターと、
を有していることを特徴とする請求項9に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項11】
更に、前記ガス異常監視区域に移動可能に配置され、前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有するレーザ光受光用の移動局を備えたことを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項12】
前記移動局は、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
風向風速計と、
前記光源ユニットの方位を探知する無線方位探知機用パラボラアンテナ及び無線方位探知機と、
を有していることを特徴とする請求項11に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項13】
前記移動局は、
前記移動局の設置位置を計測するGPS用アンテナ及びGPS受信機を有していることを特徴とする請求項11又は12に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項14】
前記移動局は、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計及びGPS受信機にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を有していることを特徴とする請求項13に記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項15】
前記中央制御監視装置の前記ガス濃度演算器は、前記移動局についても請求項3に規定する前記式により前記大気中のガス濃度を求めるものであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項16】
前記中央制御監視装置の前記特定位置演算器は、前記移動局の設置位置と前記光源ユニットの設置位置とから前記光源ユニットの向き及び仰角を演算して光源ユニットを前記移動局にも向け、その後、光源ユニットの向き及び仰角を設定された所定の走査幅及び走査高さの範囲内で走査し、前記レーザ光受光用の移動局の計測用フォトダイオードからのレーザ光計測値が最大となる位置を特定するものであることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載のガス濃度モニタリングシステム。
【請求項17】
光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードと、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に設置された背景光用フォトダイオードと、
周囲の風向風速を計測する風向風速計と、
照度計と、
前記照度計にて計測された照度が所定値を超えた場合に閉じるシャッターと、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
電力を発生させる太陽電池と、
電力を蓄える二次電池と、
太陽電池で発生した電力を二次電池に充電すると共に固定局内の各種の装置に電力を供給する充放電盤と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を備えたことを特徴とするレーザ光受光用の固定局。
【請求項18】
光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオードと、
前記光源ユニットからのレーザ光を集光させる凹面鏡及び前記凹面鏡より小さい反射鏡と、
前記計測用フォトダイオードから離れた位置に設置された背景光用フォトダイオードと、
周囲の風向風速を計測する風向風速計と、
設置位置を計測するGPS用アンテナ及びGPS受信機と、
前記計測用フォトダイオードの向き及び仰角を制御する傾斜旋回駆動装置と、
前記計測用フォトダイオード、前記背景光用フォトダイオード、前記風向風速計、GPS受信機にて計測された各計測値を収集し、計測値送信信号を作成し発信させる制御監視装置と、
各機器の調整、故障原因の表示が可能な表示器付き操作パネルと、
を備えたことを特徴とするレーザ光受光用の移動局。
【請求項19】
ガス異常監視区域に配置され計測対象となるガスに固有な吸収波長のレーザ光を前記ガス異常監視区域に向けて発光するLDモジュールを有する少なくとも1つの光源ユニットと、
前記光源ユニットが発光する前記レーザ光の投光方向及び仰角を制御する旋回傾斜機構と、
前記ガス異常監視区域内の前記光源ユニットの周囲に配置され前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有する複数のレーザ光受光用の固定局と、
前記ガス異常監視区域に移動可能に配置され、前記光源ユニットが発光する前記レーザ光を受光する計測用フォトダイオード及び風向風速計を有するレーザ光受光用の移動局とを備え、
常時、前記固定局により前記ガスの異常を計測し、
ガス異常が検出されたときに、ガス異常が検出された前記固定局の風上側につき前記移動局により前記ガスの異常を計測することを特徴とするガス濃度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−116263(P2008−116263A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298162(P2006−298162)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】