説明

ガス濃度測定装置

【課題】濃度測定センサの近傍を試料ガスの雰囲気で満たすことにより、測定環境雰囲気の変動によらずに試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定する。
【解決手段】試料ガス中の測定対象物の濃度を測定するガス濃度測定装置であって、光源が配置された光源ユニットと、前記光源の光路上に配置され、試料セルユニットと、前記光源の光路上に配置され、前記試料セルユニットを透過した前記光源の光を受光して前記測定対象物の濃度を測定する濃度測定センサが配置されたセンサユニットと、前記濃度測定センサ近傍に前記試料ガスを導入する導入手段とを備えたガス濃度測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のガスの濃度を測定する装置が開発されている。たとえば医療現場において精製空気(医療用空気)を調製する場合には、医療用空気は、100%O2のボンベガスと100%N2のボンベガスとを所定の割合で混合する装置を用いる方法や、空気精製装置(圧縮、乾燥、ダスト処理機構を装備)を用いる方法等で調製されている。これらの方法により調製された医療用空気における二酸化炭素(CO2)濃度は、最大CO2量が500ml/m3(500ppm)以下となるよう連続的に測定され、管理されている。
【0003】
また、植物のCO2吸収または排出機能の評価装置(光合成評価装置)においても、CO2分析計が設けられている。かかる評価装置は、たとえば特開2010−10号公報に開示される装置であり、自然環境下における植物の光合成による二酸化炭素吸収または排出機能を評価する装置である。そして、当該評価装置の構成中にはCO2分析計が設けられており、かかるCO2分析計は、CO2濃度を測定することにより、植物によるCO2吸収または排出機能を高い測定精度により把握することを目的として設置されている。
【0004】
これら装置における試料ガスの測定方法の1つとして、たとえば図10および図11に示されるように、非分散赤外線吸収法を用いてCO2濃度を測定する方法がある。この場合、ガス濃度測定装置13は、光源14が配置された光源ユニット15、必要に応じて光断続手段16、試料セルを配置した試料セルユニット17、濃度測定センサ18(検出器)で構成されてなる。
【0005】
一般的に、大気中のCO2などの微量成分を測定するには、これらの成分が数百ppmオーダーでしか含有されていないため、高感度の測定が必要となる。そのため、光源14には光量の大きいカンタル線などをフィラメントに使用したものを使用し、必要に応じてチョッパーなどで機械的に光を断続する光断続手段16が備えられている。チョッパーを使用する場合は、チョッパーを駆動するためのモータや外部電源が必要となりガス濃度測定装置13の部品点数が増加する結果、試料セルと濃度測定センサ18との間に隙間Sが生じやすい。
【0006】
ここで、大気中のCO2濃度は一般に約300〜400ppmであるが、人の呼気には数%のCO2が含まれているため、ガス濃度測定装置13の設置場所に人が出入りする場合や人がガス濃度測定装置13を操作する場合は、ガス濃度測定装置13の周辺のCO2濃度が変動することとなる。また、燃焼器具がガス濃度測定装置13の近傍に設置されている場合も同様に、ガス濃度測定装置13の周辺のCO2濃度が上昇し、光学系周辺(特に濃度測定センサ18の近傍)のCO2濃度が変動し、正確なCO2濃度を測定できない。
【0007】
さらに、人の出入りが制限されている場合であっても、そもそもビル管理法に基づく特定建築物(3000m2以下の商業施設・事務所など)内のCO2濃度の基準は、1000ppm以下と規定されており、医療用空気の基準よりも高いものである。そのため、人の出入りを制限した場所にガス濃度測定装置13を設置した場合であっても充分に安定かつ正確な測定対象物の濃度を測定できるとは限らないという問題がある。そのため、図10に示されるように完全に密閉された装置収納ケース19にガス濃度測定装置13そのものを収納してガス濃度測定装置13の周辺空気の流入を遮断したり、すべての隙間をシール材で埋めたり、特許文献1に示されるように分析計を隙間ごとN2などの不活性ガスでパージする等の手法が採用されている。
【0008】
かかる問題は、医療用空気中のCO2濃度の測定のみならず、空気中のH2O濃度を測定する場合にも同様に生じる問題である。また、上記光合成評価装置において植物のCO2吸収または排出機能を、CO2濃度の測定を通じて把握する場合にも同様に生じる問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭64−2889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、完全に密閉されたケースに装置そのものを収納する場合、装置全体の大型化が問題となる。また、装置を人が操作する場合、ケースの外部から操作できるよう装置を設計せねばならず、技術的にもコスト的にも困難である。また、隙間をシール材で封止するにしても、あらゆる隙間を漏れなく封止ことは困難であり、封止できたとしても、装置のメンテナンス時にそれらのシール材も剥がして交換しなければならず、手間やコストがかかるという問題がある。
【0011】
さらに、特許文献1に記載のガス濃度測定装置では、光学系の隙間を不活性ガスでパージしているため、測定環境の雰囲気が変動した場合でも周囲の影響(たとえば人の呼気に含まれる高濃度のCO2が検出されることによる測定値の増加)を受けない傾向があるものの、測定対象物以外の不活性ガスをパージガスとして測定時間中常に供給する必要があり、コスト面で問題がある。また、不活性ガスを導入するための装置を備える必要がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、濃度測定センサ又は光源の近傍を試料ガスの雰囲気で満たすことにより、測定環境雰囲気の変動によらずに試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定することのできるガス濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るガス濃度測定装置は、試料ガス中の測定対象物の濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
光源を有する光源ユニットと、
光源の光路上に配置され、試料ガスが導入される試料セルユニットと、
光源の光路上に配置され、試料セルユニットを透過した光源の光を受光して測定対象物の濃度を測定する濃度測定センサを有するセンサユニットと、
試料ガスをセンサユニット又は光源ユニットの近傍に供給し、当該センサユニット又は光源ユニットの内部を試料ガスの雰囲気で満たすための導入手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
上記のガス濃度測定装置によれば、濃度測定センサ又は光源の近傍が試料ガスの雰囲気で満たされるため、測定環境雰囲気が変動する場合であっても、安定かつ正確に試料ガス中の測定対象物の濃度を測定することが可能である。また、パージガスを別途準備する必要が無く、密閉ケースによる装置の保護や、隙間を極端に減らした装置設計も不要であり、低コストとなるガス濃度測定装置を提供することができる。
【0015】
上記導入手段は、上記試料セルユニットと上記センサユニット又は光源ユニットとの接続部を覆い、試料ガスが導入されるカバーを有していてもよい。
【0016】
当該構成を有することにより、カバー内を試料ガスで満たすことができるため、濃度測定センサまたは光源周囲の試料ガス雰囲気の変動を防止することができる。その結果、より安定かつ正確に試料ガス中の測定対象物の濃度を測定することが可能となる。
【0017】
ガス濃度測定装置は、濃度測定センサ又は光源の近傍に配置され、光源から発せられた赤外線を間欠的に遮蔽する光断続機構をさらに備えていてもよい。
【0018】
この構成により、光源からの赤外線照射を間欠的に行わずとも、赤外線照射を連続的に行いながら、該赤外線の光路を断続することにより、濃度測定センサに到達する赤外線が擬似的に間欠照射されたものとして取り扱うことができる。
【0019】
導入手段は、光断続機構の近傍に設けられていてもよい。
この構成により、光断続機構の近傍が試料ガスの雰囲気で満たされるので、測定環境雰囲気が変動する場合であっても、安定かつ正確に試料ガス中の測定対象物の濃度を測定することが可能である。特に、光断続機構を駆動するためのモータや外部電源が必要となり全体の部品点数が増加する結果、試料セルと濃度測定センサ又は光源との間に隙間が生じやすい。したがって、導入手段を光断続機構の近傍に設けることで、
光断続機構を設けたガス濃度測定装置における問題が解決される。
【0020】
上記試料ガス中の測定対象物が、CO2またはH2Oであってもよい。
【0021】
当該構成を有することにより、これらの測定対象物の赤外線吸収能を利用して、たとえば非分散赤外線吸収法により不活性ガスを比較対照とした正確な測定が可能となる。
【0022】
導入手段は、ガス流通路に配置されたスクラバをさらに有していてもよい。
【0023】
当該構成を有することにより、たとえば試料ガスが排ガス等の粉塵等を含むガスである場合において、有害な粒子および/またはガス成分を吸着、除去することができ、より正確な測定に供できる。また、装置そのものの故障等を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、濃度測定センサの近傍を試料ガスの雰囲気で満たすことにより、測定環境雰囲気の変動によらずに試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定することのできるガス濃度測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態1)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図
【図2】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態1)にかかるガス濃度測定装置の要部を拡大して示す模式図
【図3】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態3)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図
【図4】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態3)にかかるガス濃度測定装置の別例を説明するための模式図
【図5】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態4)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図
【図6】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態5)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図
【図7】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態6)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図。
【図8】本発明のガス濃度測定装置の一実施形態(実施の形態7)にかかるガス濃度測定装置を説明するための模式図。
【図9】実施例1にかかるガス濃度測定装置と比較例1にかかるガス濃度測定装置を用いたCO2濃度測定試験の結果を示すグラフ
【図10】従来のガス濃度測定装置を説明するための模式図
【図11】従来のガス濃度測定装置の要部を拡大して示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態にかかるガス濃度測定装置1は、図1に示されるように、光源2が配置された光源ユニット3と、上記光源2の光路上に配置され、試料ガスが導入される試料セルユニット4と、上記光源2の光路上に配置され、上記試料セルユニット4を透過した上記光源2の光を受光して上記測定対象物の濃度を測定する濃度測定センサ5が配置されたセンサユニット6と、上記試料ガスを導入する導入手段7とを備えてなる。
【0027】
光源ユニット3は、光源2を配置した部位である。
【0028】
光源ユニット3における光源2としては特に限定されず、後述の濃度測定センサ5の種類により適宜選択することができる。たとえば、濃度測定センサ5として赤外線受光部を有する濃度測定センサ5を使用する場合は光源2として赤外線光源を選択することが好ましく、その他、可視光源、紫外線光源など種々目的に応じて選択することができる。本実施の形態では、試料ガスとして医療用空気を採用し、測定対象物としてCO2を選択しているため、赤外線光源を選択している。
【0029】
図1に示されるように、光源2から発せられた光は光路Aのごとく光源ユニット3から、光源2の光路上に配置された試料セルユニット4に導入される。試料セルユニット4は、試料ガスが導入される部位である。
【0030】
試料ガスとしては、測定対象物を含んでいるものであれば特に限定されない。測定対象物は、種々選択することができ、たとえばCO2、H2O等を選択することができる。試料ガスが、試料セルユニット4に設けられた導入口より試料セルユニット4内に導入される。参照符号A1は、試料ガスの経路を示している。本実施の形態では、測定対象物としてCO2を選択し、そのCO2を含む試料ガスとしては医療用空気を選択している。さらに、測定対象物としてCO2を選択しているため、CO2が有する赤外線吸収能を利用して濃度を測定することが簡便である等の理由から、光源2として赤外線光源を採用している。
【0031】
試料セルユニット4は、管状の本体部20と、試料ガスを本体部20内に導入する導入口21と、試料ガスを本体部20から外に導出する導出口25とを備える。また、本体部20の両端には赤外線透過窓6a(図2参照)が取り付けられる。試料セルユニット4の材質としては特に限定されず、たとえばステンレス製、アルミニウム製、塩化ビニル製などの管を本体部として使用することができる。また、管の内面にはたとえば金などの金属でメッキを施してもよい。また、赤外線透過窓の材質としては特に制限されず、たとえばフッ化カルシウム、サファイア、その他フッ化リチウム、フッ化バリウム等を使用することができる。本実施の形態では管の内面に金メッキを施したステンレス管を本体部とし、フッ化カルシウム製の赤外線透過窓が使用されている。
【0032】
濃度測定センサ5は、試料ガス中の測定対象物の濃度を測定するセンサである。濃度測定センサ5は、光源2の光路上に配置されてなり、これにより、光源2より発せられた光が試料セルユニット4内の測定対象物中を通過し、濃度測定センサ5に到達することとなる。
【0033】
ここで、赤外線光源を用いた測定対象物の濃度測定方法(非分散型赤外線分析法)について説明する。すなわち、光源2より発せられた赤外線は、試料ガス中を通過するときに、試料ガス中に含まれる測定対象物に特有の波長の赤外線が吸収される。その吸収量を測定することにより対象成分の濃度を測定することができる。吸収量から濃度を算出する際には、以下の一般式(1)で示されるランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer law)を利用する。
log10(I1/I0)=−εcl (1)
(式中I0は入射光の強度、I1は出射光の強度、εはモル吸光係数、cはサンプル濃度、lは吸光層の厚さを指す)
【0034】
すなわち、光源2より発せられた赤外線は、試料セル部分を通過して、濃度測定センサ5に到達する。濃度測定センサ5には、CO2の吸収波長帯および吸収の無い波長帯(基準波長:REF)を選択的に通過させる光学フィルタ(図示せず)と固体型赤外線検出器(パイロセンサ)(図示せず)とが組み込まれている。
【0035】
試料セル部分にCO2を含む試料ガスが入ると、CO2固有の波長の赤外線が吸収され、対応する濃度測定センサ5に入射する赤外線量が減少する。一方、基準検出器(REF)への入射光は、吸収の無い波長を選択しているため光量は変化しない。したがって、CO2濃度の検出は、基準検出器の出力と測定成分の濃度測定センサ5の出力の差として算出することができる。
【0036】
導入手段7は、試料セルユニット4から上記試料ガスを排出させ、排出された上記試料ガスを前記センサユニット6又は光源ユニット3に供給し、センサユニット6又は光源ユニット3の内部を当該試料ガスの雰囲気で満たすための手段である。
以下、導入手段7が試料ガスをセンサユニット6に供給する実施形態を説明する。
・実施の形態1では、図1に示されるような試料セルユニット4とセンサユニット6との接続部41を覆うカバーを採用し、試料セルユニット4から導出された試料ガスを当該カバー内に導入している。具体的には、導出手段としてのカバーは、試料セルユニット4の本体部20の外周を覆うように配置されている。カバーには、本体部20から延びる導入管23が接続されている。また、カバーには、導出口25が設けられている。
・後述する実施の形態3では、試料セルユニット4とセンサユニット6とを隔てる隔壁に連通孔(図3および図4参照)を設けて導入手段7としている。
・後述する実施の形態4では、図5に示されるように、試料セルユニット4とセンサユニット6を接続する流路を別途設け、センサユニット6の一部(図5では側壁)に試料ガスの出口を設ける構成とする。
【0037】
従来のように当該導入手段7が無い場合は、センサユニット6の内部は空気で充満されている。そのため、図2に示されるような多くの隙間Sから装置周囲の空気が流入し、たとえば装置周囲の空気が人の呼気を含む場合であって、測定対象物がCO2の場合には、呼気中のCO2が濃度測定センサ5の近傍に流入し、安定かつ正確なCO2濃度が測定できないという問題がある。
【0038】
しかしながら、前述の実施の形態3のように、試料セルユニット4とセンサユニット6とを隔てる隔壁に連通孔を設けている場合には、当該連通孔を介してセンサユニット6内の空間が試料ガスで満たされることとなる。また、前述の実施の形態1の図1および図2に示されるように、カバーが設置されている場合も同様に、隙間Sの周囲も含めてセンサユニット6内がすべて試料ガスで充満されることとなる。そのため、仮に隙間Sから気体が流入するとしても、かかる気体は試料ガスそのものであり、それが濃度測定センサ5の近傍に流入したとしても、測定値が変動することは無く、安定かつ正確な測定が可能となる。
【0039】
さらに、本実施の形態にかかるガス濃度測定装置1には、上記センサユニット6に、赤外線光源から発せられた赤外線を間欠的に遮蔽する光断続手段8が備えられてなる。当該光断続手段8は、赤外線光源から発せられた赤外線がセンサユニット6内の濃度測定センサ5に間欠的に到達するよう光路を遮る役割を担っている。すなわち、赤外線光源より発せられた赤外線が試料セルユニット4内の測定対象物により一部が吸収され、当該吸収量が濃度測定センサ5で検知されるが、濃度測定センサ5として焦電型赤外線センサやコンデンサマイクロフォンを採用する場合では、赤外線吸収量の検知は、赤外線が到達した瞬間の検出器の出力に依存している。そのため、連続的に新規なデータを検知し続けるためには、濃度測定センサ5に赤外線を間欠的に到達させる必要がある。
【0040】
ここで、赤外線光源から発せられる赤外線そのものを間欠的に照射することも考えられるが、測定対象物がCO2の場合は、試料ガス中に測定対象物が微量しか含まれていないため、光源2として光量の大きなカンタル線などをフィラメントに使用する必要がある。このような光量の大きな光源2を使用する場合、照射時から非照射時に移行する場合に熱が残存してしまい、間欠的な照射にならないという問題が生じるおそれがある。そのため、赤外線光源を連続的に照射させながら、濃度測定センサ5に届く前に、光路を間欠的に遮断する光断続手段8を設けることにより、連続的に新規なデータの取得を可能としている。
【0041】
光断続手段8としては特に限定されず、たとえばモータ8aにより駆動可能なチョッパー8bを用いることができる。本実施の形態では、モータ8aにより回転駆動可能なチョッパー8bが備えられてなる。参照符号A2はチョッパー8bの回転方向を示している。なお、図2に示されるように、モータ8aにより駆動可能なチョッパー8bの周囲には多くの隙間Sが存在するが、これらの隙間Sはすべてカバーで覆われており、カバー内には試料ガスが導入されているため、隙間Sから濃度測定センサ5近傍に気体が流入するとしても、かかる気体は試料ガスそのものであるため、測定値が変動することは無く、安定かつ正確な測定が可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態では、濃度測定センサ5として焦電型赤外線センサを用いているため、光断続手段8を備える場合を例示して説明したが、濃度測定センサ5として、たとえばサーモパイル型赤外線センサなどの赤外線吸収量をそのまま出力できるセンサを使用することも可能である。そして、そのような場合には、光断続手段8(チョッパー)は不要となるため、チョッパー周囲の隙間も存在しないこととなる。しかしながら、当該センサを使用する場合であっても、当該センサはメンテナンスを容易に行うことができるよう固着部材によりセンサユニット6内に固着されてなるため、かかる固着部材により生じる隙間Sから気体が流入する可能性がある。本実施の形態では、前述の通り、これらの隙間Sはすべてカバーで覆われることとなるため、そのような場合であっても安定かつ正確な測定が可能となる。
【0043】
本実施の形態にかかるガス濃度測定装置1によれば、濃度測定センサ5の近傍が試料ガスの雰囲気で満たされるため、測定環境雰囲気が変動する場合であっても、試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定することが可能となる。また、パージガスを別途準備する必要が無く、密閉ケースによる装置の保護や、隙間Sを極端に減らした装置設計も不要であり、低コストとなるガス濃度測定装置1を提供することができる。さらに、本実施の形態で採用するカバーを使用することにより、試料セルユニット4の周囲を隙間Sも含めてすべてカバーで覆い、カバー内を試料ガスで満たすことができるため、気体が隙間Sから流入されたとしても濃度測定センサ5の周囲における試料ガスの雰囲気の変動を防止することができる。
【0044】
なお、上記光源2が赤外線光源であることが好ましい。当該構成を有することにより、試料ガス中のCO2、H2Oなどの測定対象物により、光源2から照射された赤外線が、測定対象物の濃度に応じた量が吸収される。
【0045】
当該吸収後の赤外線検出値を、既知濃度の測定対象ガスの赤外線検出値と比較することにより、測定対象物の濃度を測定することができる。さらに、赤外線光源から発せられた赤外線を間欠的に遮蔽する光断続手段8としてチョッパー8bが設けられているため、赤外線照射を間欠的に行わずとも、赤外線照射を連続的に行いながら、濃度測定センサ5に到達する赤外線が擬似的に間欠照射されたものとして取り扱うことができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態におけるガス濃度測定装置は、測定対象物がH2Oである以外は実施の形態1と同様であり、装置の構成そのものは図1および図2に示される実施の形態1にかかるガス濃度測定装置1と同様であるため、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0047】
すなわち、測定対象物がH2Oの場合、測定地の地理的条件、天候の変動、室内環境等により湿度が変動する場合においても、導入手段7により試料ガスを濃度測定センサ5の近傍に導入することができ、ガス濃度測定装置周辺の空気の湿度変化によらず、安定かつ正確に試料ガス中の測定対象物の濃度を測定することが可能となる。
【0048】
(実施の形態3)
本実施の形態におけるガス濃度測定装置9は、図3および図4に示されるように、試料セルユニット4とセンサユニット6とを隔てる隔壁に連通孔を設けて導入手段7とした以外は実施の形態1と同様であり、同一の参照符号を付して説明を省略する。図3では、試料ガスが試料セルユニットに設けられた導入口21により導入され、センサユニット6に設けられた導出口27により排出される。なお、試料ガスが医療用空気などの特に汚染されていないガスの場合、センサユニット6内の濃度測定センサ5やその近傍が汚染されるおそれが無いことから、図4に示されるように、図3の導入口21を導出口として使用し、図3の導出口27を導入口として使用することも可能である。
【0049】
(実施の形態4)
本実施の形態におけるガス濃度測定装置10は、図5に示されるように、試料セルユニット4とセンサユニット6とを接続する流路31を設けて導入手段7とし、センサユニット6に試料ガスの導出口27を設けた以外は実施の形態1と同様であり、同一の参照符号を付して説明を省略する。図5では、当該流路31は試料セルユニット4の下部側壁からセンサユニット6の底部に接続されているが、当該流路を設ける箇所は特に制限されない。
【0050】
(実施の形態5)
本実施の形態におけるガス濃度測定装置11は、図6に示されるように、導入手段7にスクラバ12が設けられている以外は実施の形態1と同様であり、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0051】
スクラバ12は、排ガスなどの粉塵等を含む汚染された試料ガスを測定する場合において、濃度測定センサ5の近傍の汚染や、汚染による誤動作を防止するために設けられてなる。スクラバ12としては特に制限されないが、たとえば内部に活性炭が充填されたスクラバを使用することができる。本実施の形態では、内部に活性炭が充填されたスクラバ12が用いられている。
【0052】
以上、上記実施形態のガス濃度測定装置によれば、濃度測定センサの近傍を試料ガスの雰囲気で満たすことにより、測定環境雰囲気の変動によらずに試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定することのできるガス濃度測定装置を提供することができる。また、パージガスを別途準備する必要が無く、密閉ケースによる装置の保護や、隙間を極端に減らした装置設計も不要であり、低コストとなるガス濃度測定装置を提供することができる。さらに、測定対象ガスが粉塵等を含む汚染されたガスであったとしても、当該ガスから粉塵等を除去して、濃度測定センサの汚染や汚染による誤動作を防止することができる。
【0053】
(実施の形態6)
以下に述べる実施形態では、図7に示すように、ガス濃度測定装置51は、試料セルユニット53と比較セルユニット55が並んで配置され、それぞれに対応する一対の光源57、一対の濃度測定センサ59(コンデンサマイクロフォンなどのニューマチック検出器を含む)、一対の光学フィルタ61が設けられている。試料セルユニット53及び比較セルユニット55と一対の光学フィルタ61との間には、光断続手段8としてのチョッパーが設けられている。試料セルユニット53には、試料ガスが導入される導入口54が設けられている。
【0054】
この実施形態では、上述のように濃度測定センサ59、光学フィルタ61及び光断続手段8によって、センサユニット60が構成されている。さらにセンサユニット60は、導入手段7としての密閉ケースによって覆われている。さらに、密閉ケースには、試料セルユニット53から延びる導入管67が接続されている。また、密閉ケースには、試料ガスが導出される導出口69が設けられている。
【0055】
当該構成を有することにより、密閉ケース内を試料ガスで満たすことができるため、濃度測定センサ周囲の試料ガス雰囲気の変動を防止することができる。その結果、より安定かつ正確に試料ガス中の測定対象物の濃度を測定することが可能となる。
【0056】
(実施の形態7)
以下、導入手段7が試料ガスを光源ユニット3に供給する実施形態を説明する。なお、ガス濃度測定装置71の基本的な構造は実施の形態6と同様であるので説明を省略する。
【0057】
図8に示されるように、光断続手段8が光源57側に配置され、光源ユニット56の一部となっている。ガス濃度測定装置71は、光源ユニット3において光断続手段8が配置された空間を覆う導入手段7としてのカバーを有しており、試料セルユニット53から導出された試料ガスを当該カバーに導入している。さらに、カバーには、試料セルユニット53から延びる導入管77が接続されている。また、カバーには、導出口79が設けられている。
その結果、光源ユニット56内が試料ガスで充満されることとなる。そのため、安定かつ正確な測定が可能となる。
【0058】
導入手段として、光源ユニット全体をカバーで覆ってもよい。
導入管にスクラバを設けてもよい。
導入手段として、試料セルの光源側隔壁に連通孔を形成してもよい。
【0059】
(実施の形態8)
前記実施形態では、いずれも光断続手段を有していた。しかし、光断続手段を有していないガス濃度測定装置において導入手段を設けてもよい。その場合にも前述と同様の効果が得られる。なお、この場合は、赤外線光源から発せられる赤外線そのものが間欠的に照射される。
【0060】
以下、実施例により上記実施形態のガス濃度測定装置を具体的に説明する。
【実施例】
【0061】
図1および図2にかかるガス濃度測定装置1を用いて、N2ガスを試料ガスとしてCO2濃度を測定した。測定は、2010年8月3日の14時より連続18時間行った。ガス濃度測定装置の概要は以下の通りである。
光源:赤外線光源(カンタル線、約7W)
試料ガス:N2(流速:1L/min)
測定対象物:CO2
濃度測定センサ:焦電型赤外線検出器(パイロセンサ)
光断続手段:チョッパー(回転周波数:5Hz)
導入手段:プラスチック製カバー
ガス濃度測定装置の設置場所:(株)堀場製作所内実験室
【0062】
実施例1
上記ガス濃度測定装置を用いてCO2濃度の経時変化を測定した。結果を図9に示す。
表1における参照符号Rcは周辺CO2濃度(ppm)を示し、参照符号R1は実施例1のCO2濃度測定結果(FS%(Full Scale %))を示す。
【0063】
比較例1
導入手段を設けない上記ガス濃度測定装置を用いてCO2濃度の経時変化を測定した。結果を図9に示す。参照符号R2は比較例1のCO2濃度測定結果(FS%)を示す。
【0064】
図9に示されるように、導入手段を設けていない比較例1のガス濃度測定装置では、周辺CO2濃度の変動により検出されるCO2濃度の値が変動した、一方、導入手段を設けた実施例1にかかるガス濃度測定装置では、周辺CO2濃度が変動した場合であっても、検出されるCO2濃度の値は変動しなかった。
【0065】
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
例えば、実施の形態1〜5のガス濃度測定装置の基本的構造に対して、実施の形態6又は7の導出手段を適用してもよい。さらに実施の形態6及び7のガス濃度測定装置の基本的構造に対して実施の形態1〜5のいずれかの導出手段を適用してもよい。
また、前記実施形態では、光源側及びセンサ側のいずれか一方のみに導入手段を設けていたが、両側に導入手段を設けてもよい。
【0066】
本実施形態によれば、濃度測定センサの近傍を試料ガスの雰囲気で満たすことにより、測定環境雰囲気の変動によらずに試料ガス中の測定対象物の濃度を安定かつ正確に測定することのできるガス濃度測定装置を提供することができる。また、パージガスを別途準備する必要が無く、密閉ケースによる装置の保護や、隙間を極端に減らした装置設計も不要であり、低コストとなるガス濃度測定装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1、9、10、11 ガス濃度測定装置
2 光源
3 光源ユニット
4 試料セルユニット
5 濃度測定センサ
6 センサユニット
6a 赤外線透過窓
7 導入手段
8 光断続手段
8a モータ
8b チョッパー
12 スクラバ
19 装置収納ケース
A 光路
A1 試料ガスの経路
A2 チョッパーの回転方向
G ガスケット
Rc 周辺CO2濃度
R1 実施例1のCO2濃度測定結果
R2 比較例1のCO2濃度測定結果
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガス中の測定対象物の濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
光源を有する光源ユニットと、
前記光源の光路上に配置され、試料ガスが導入される試料セルユニットと、
前記光源の光路上に配置され、前記試料セルユニットを透過した前記光源の光を受光して前記測定対象物の濃度を測定する濃度測定センサを有するセンサユニットと、
前記試料ガスを前記センサユニット又は前記光源ユニットの近傍に供給し、当該センサユニット又は前記光源ユニットの内部を前記試料ガスの雰囲気で満たすための導入手段とを備えたガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記導入手段は、前記試料セルユニットと前記センサユニット又は前記光源ユニットとの接続部を覆うカバーである請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記センサユニット又は前記光源ユニットに、赤外線光源から発せられた赤外線を間欠的に遮蔽する光断続機構が設けられてなる請求項1または2記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記導入手段は、前記光断続機構の近傍に設けられている、請求項2又は3に記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記試料ガス中の測定対象物が、二酸化炭素または水である請求項1〜4のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項6】
前記導入手段が、スクラバをさらに備える請求項1〜5のいずれかに記載のガス濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−150095(P2012−150095A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252078(P2011−252078)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】