説明

ガス燃料用レギュレータ

【課題】ガス燃料用レギュレータについて、組付け性を損なうことなく弁軸とダイヤフラムの連結部分から異音が生じないようにする。
【解決手段】弁軸10中途位置に形成した弁体11とシート部材16からなる調圧弁を有し弁軸10先端側を大径化した軸頭部12をダイヤフラム14中央下部側の軸頭挿入部21に挿入・係合してなり、ダイヤフラム14の変位動作で調圧弁を開閉しながら導入したガス燃料を所定圧力に減圧・調整して下流側に送出するガス燃料用レギュレータ1Aにおいて、軸頭部12と軸頭挿入部21の連結部分で軸頭部12上面と軸頭挿入部21頂壁との間に形成される隙間内で軸頭部12が軸線方向に動くのを抑制するための樹脂製の隙間充填部材23を、軸頭挿入部21内で軸頭部12との隙間を埋めるようにして配設して、ダイヤフラム14の振動で軸頭部12外面が軸頭挿入部21内面に連続的に衝突するのを回避するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料を所定圧力に調整して送出するためのガス燃料用レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃料用レギュレータのボディ構造としては、例えば特許第3649612号公報に記載され、図2の縦断面図に示すガス燃料用レギュレータ1Bの構造が周知である。このガス燃料用レギュレータ1Bは、弁体31を中途位置に形成した弁軸30、弁体31にシート面を密着・離間して弁体31とともに調圧弁を構成するシート部材36を有している。
【0003】
その弁軸30先端側を大径化して形成した軸頭部32を、ダイヤフラムプレート40下面側に係止構造として形成した軸頭挿入部41に挿入することで、軸頭挿入部41の張り出した底面側に軸頭部32の張り出した下面側を引っ掛けた状態にして係合させて、弁軸30先端側をダイヤフラム34中央下部側に連結しており、ダイヤフラム34の往復変位動作で弁軸30を軸線方向に往復摺動させることにより調圧弁を開閉動作させながら、導入した高圧のガス燃料を所定圧力に減圧・調整して下流側に送出するものである。
【0004】
しかしながら、この弁軸30の軸頭部32を軸頭挿入部41に挿入・係合させて連結する際の組付けの容易性を考慮して、軸頭部32を軸頭挿入部41に挿入した状態で軸頭挿入部41頂壁と軸頭部32上面との間に隙間が形成されるようにしているのが通常であるため、車両登載時に下流側インジェクタの作動パルスによる脈動がダイヤフラム34に振動となって伝達され、軸頭部32と軸頭挿入部41との間で連続的な衝突が発生して、これによる金属接触音が燃料配管で増幅され異音として聞こえてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3649612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、ガス燃料用レギュレータについて、組付け性を損なうことなく弁軸とダイヤフラムの連結部分から異音が生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、弁軸中途位置に形成した弁体とシート部材からなる調圧弁を有して、前記弁軸先端側を大径化した軸頭部をダイヤフラム中央下部側に形成した軸頭挿入部に挿入・係合してなり、前記ダイヤフラムの往復変位動作で前記調圧弁を開閉しながら導入したガス燃料を所定圧力に減圧・調整して下流側に送出するガス燃料用レギュレータにおいて、前記軸頭部と前記軸頭挿入部の連結部分において、前記軸頭部上面と前記軸頭挿入部頂壁との間に形成される隙間内で前記軸頭部が軸線方向に動くのを抑制するための樹脂製の隙間充填部材が、前記軸頭挿入部内で前記軸頭部との隙間を埋めるようにして配設されており、前記ダイヤフラムの振動で前記軸頭部外面が軸頭挿入部内面に連続的に衝突することを回避することにした。
【0008】
このように、弁軸先端側とダイヤフラム中央下部側との連結部において、軸頭挿入部内
で軸頭部が軸線方向に動くのを抑制する樹脂製の隙間充填部材を配設したことにより、組付けを容易にする軸頭挿入部の軸線方向のサイズはそのままでその内側で軸頭部が動かないものとして、ダイヤフラムの振動を原因とした軸頭挿入部内での軸頭部による連続的な衝突を回避することができる。
【0009】
また、この場合、その隙間充填部材は、軸頭挿入部内で少なくともその一部分を軸頭部上面と軸頭挿入部頂壁との間に嵌め込んだ状態で配設されるものとなっている、ことを特徴としたものとすれば、軸頭部が軸頭挿入部内で軸線方向に動くことを確実に抑制することができる。
【0010】
さらに、上述したガス燃料用レギュレータにおいて、その軸頭挿入部は軸線に対し直角方向の一面側が開放部とされており、その開放部を介して軸頭部を側方から挿入して連結するものとされ、その隙間充填部材が、少なくとも軸線に対し直角方向の一面側が開放部とされてその左右側を構成する部分で軸頭部の外周面を左右から挟み込む構造とされており、先にこの隙間充填部材を軸頭挿入部の奥側に配設してから軸頭部を挿入して組み付けるものとすれば、隙間充填部材の配設を含む組付け作業が容易であるとともに、隙間充填部材が脱落しにくい。
【0011】
さらにまた、上述したガス燃料用レギュレータにおいて、その隙間充填部材は所定の弾性変形能を有する軟質樹脂又は弾性樹脂からなり、軸頭部外面と軸頭挿入部内面との間で衝撃緩衝作用を発揮するものとすれば、連結部における異音の発生をさらに抑制しやすい。
【発明の効果】
【0012】
軸頭挿入部内で軸頭部が軸線方向に動作することを抑制する樹脂製の隙間充填部材を配設した本発明によると、組付け性を損なうことなく弁軸とダイヤフラムの連結部分から異音が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態のガス燃料用レギュレータの部分縦断面図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大した部分縦断面図である。
【図3】従来例を示す縦断面図である。
【図4】図3の破線で囲まれた部分を拡大した部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態のガス燃料用レギュレータ1Aの部分縦断面図を示している。このガス燃料用レギュレータ1Aは、シート面を形成したシート部材16と先端側にティーパ面を形成した弁体11とで調圧弁を構成して、その弁体11を中途位置に有した弁軸10がダイヤフラム14の中央下部側に連結され、その往復変位動作に連動して調圧弁を開閉するようになっており、図示しない燃料タンクから導入した高圧のガス燃料を、所定圧力に減圧・調整しながら下流側に送出するようになっている。
【0016】
また、弁軸10の先端側を大径化してキノコ状に形成した軸頭部12が、ダイヤフラム14中央位置を挟むように設けたダイヤフラムプレート20の中央下部側に係合構造として形成してなる軸頭挿入部21内に挿入・係合されて、弁軸10先端側とダイヤフラム14中央下部側を連結した状態にある。
【0017】
この軸頭挿入部21は、軸線(弁軸10の中心軸線)に対し直角方向の一面側が開放部
とされており、この開放部を介して軸頭部12を軸線に対し直角方向(図中左側)から挿入して係合することで連結されており、その軸頭部12は上面が球面状に形成されて縦断面R形状となっている。また、軸頭挿入部21の上下幅は、組付けの容易さを確保するために軸頭部12の上下幅よりもやや大きく形成されて軸頭部12上面と軸頭挿入部頂壁との間に隙間が形成されている。
【0018】
図3に示した従来例において、連結状態でこのような隙間が形成されることにより、インジェクタの噴射に伴うダイヤフラム14の振動により軸頭部32が軸頭挿入部41内で軸線方向に連続的に往復動作して金属同士が衝突することによる異音の発生が生じることになるが、本発明においては、その隙間内で軸頭部12が軸線方向に往復動作するのを抑制するための樹脂製の隙間充填部材23を軸頭挿入部21内に配設したことにより、ダイヤフラム14の振動に連動して軸頭部12が軸頭挿入部21内側面に連続的に衝突するのを回避可能とした。
【0019】
図2は、図1のX−X線に沿う拡大した縦断面部分図を示している。隙間充填部材23が軸頭挿入部21の奥側に配設された状態で、軸頭部12が挿入されて係合した状態となっている。隙間充填部材23は、その上下幅が軸頭挿入部21の上下幅とほぼ同一の平面視略コ字状に形成された部材であって、ある程度の弾性変形が可能な軟質樹脂で形成されており、軸線に対する直角方向の一面が開放部とされて、その左右側を構成する部分で軸頭部12の外周面を左右から挟み込む構造である。
【0020】
そして、この隙間充填部材23は、組付け時において先に軸頭挿入部21の奥側に配設してから、その開放部に収めるように軸頭12を挿入するものであり、その内周面上端側の部分が内側に突出して軸頭部12のR状上面の外周端縁側から所定の範囲まで軸頭挿入部21頂壁との間に嵌め込む構造となっている。
【0021】
このような構成としたことにより、隙間充填部材23の配設手順が必要となっても組付け時の手間がさほど増すことはなく、組付け後に隙間充填部材23は内側面で軸頭部12の外周側及び上面の一部に密着しながら、外側面で軸頭挿入部21内側の頂壁及び側面に密着するため、軸頭部12が軸頭挿入部21内で軸線方向に往復動作するのを完全に規制することが可能となる。
【0022】
したがって、このガス燃料用レギュレータ1Aの下流側に配設したインジェクタの作動パルスによる脈動が調圧室内15内に伝達され、ダイヤフラム14の受圧部に作用することでダイヤフラム14が振動しても、軸頭挿入部21内で軸頭部12が軸線方向に動作して金属同士が連続的に衝突することが抑制されるため、作動に伴う異音の発生が完全に防止される。
【0023】
また、軸頭12と軸頭挿入部21との隙間を充填するように嵌め込まれた隙間充填部材23を、非強化型で弾性変形可能な軟質樹脂又は弾性樹脂で作成したことにより、レギュレータ吐出圧力の変化時に起こる軸頭部12と軸頭挿入部21との間の位置関係の微小な変化がその弾性変形能により吸収できるものとなり、これが両部材間で緩衝作用を発揮することでさらに異音が発生しにくくなり、且つ、ダイヤフラム14の振動が弁軸10を介して弁体11に伝わりにくいものとなる。
【0024】
尚、本実施の形態の応用例として、隙間充填部材23を軸頭挿入部21内に配設する際に、その頂壁と側面の密着箇所に接着剤等を用いて予め接着・固定しておくことにより、異音発生の抑制効果がさらに確実なものとなる。
【0025】
以上、述べたように、ガス燃料用レギュレータについて、本発明により、組付け性を損
なうことなく弁軸とダイヤフラムの連結部分からの異音の発生がない。
【符号の説明】
【0026】
1A ガス燃料用レギュレータ、10 弁軸、11 弁体、12 軸頭部、14 ダイヤフラム、20 ダイヤフラムプレート、21 軸頭挿入部、23 隙間充填部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁軸中途位置に形成した弁体とシート部材からなる調圧弁を有して、前記弁軸先端側を大径化した軸頭部をダイヤフラム中央下部側に形成した軸頭挿入部に挿入・係合してなり、前記ダイヤフラムの往復変位動作で前記調圧弁を開閉しながら導入したガス燃料を所定圧力に減圧・調整して下流側に送出するガス燃料用レギュレータにおいて、前記軸頭部と前記軸頭挿入部の連結部分において、前記軸頭部上面と前記軸頭挿入部頂壁との間に形成される隙間内で前記軸頭部が軸線方向に動くのを抑制するための樹脂製の隙間充填部材が、前記軸頭挿入部内で前記軸頭部との隙間を埋めるようにして配設されており、前記ダイヤフラムの振動で前記軸頭部外面が軸頭挿入部内面に連続的に衝突することを回避することを特徴とするガス燃料用レギュレータ。
【請求項2】
前記隙間充填部材が、前記軸頭挿入部内で少なくともその一部分を前記軸頭部上面と前記軸頭挿入部頂壁との間に嵌め込んだ状態で配設されることを特徴とする請求項1に記載したガス燃料用レギュレータ。
【請求項3】
前記軸頭挿入部が、軸線に対し直角方向の一面側が開放部とされており、前記開放部を介して前記軸頭部を側方から挿入して連結するものであり、前記隙間充填部材が、少なくとも軸線に対し直角方向の一面側が開放部とされて該開放部の左右側を構成する部分で前記軸頭部の外周面を左右から挟み込む構造であって、先に前記隙間充填部材を前記軸頭挿入部の奥側に配設してから前記軸頭部を挿入して組み付けることを特徴とする請求項1または2に記載したガス燃料用レギュレータ。
【請求項4】
前記隙間充填部材が、所定の弾性変形能を有する軟質樹脂又は弾性樹脂からなり、前記軸頭部外面と前記軸頭挿入部内面との間で衝撃緩衝作用を発揮することを特徴とする請求項1,2または3に記載したガス燃料用レギュレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−7480(P2012−7480A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141289(P2010−141289)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】