説明

ガス状で存在する、または溶媒に溶解した対象化合物を検出および/または定量するための装置および方法

本発明は、ガス状態で存在する、または溶媒に溶解した対象化合物を検出および/または定量するための装置および方法に関する。本発明による装置は、2つの電極を含む電気デバイスと、電気デバイスの2つの電極間の電荷の変動を測定するためのデバイスとを含む。電気デバイスは、受容体分子の層がその上にグラフトされた、絶縁性誘電材料で作製された層を含み、最終的に、半導体材料の層が該受容体分子層上に堆積される。本発明は、特にガスまたは溶液として存在する対象化合物の検出および/または定量の分野において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状でまたは溶媒中の溶液として存在する対象化合物を検出および/または定量するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状でまたは溶媒中の溶液として存在し得る多くの化合物は、迅速に、作業場所において直接的に、および選択的に検出および/または定量され得る必要がある。
【0003】
そのような化合物は、例えば、様々な化学基が結合したリン原子で構成される分子である有機リン化合物であり、前記基の性質が、化合物の厳密な特性を決定付ける。サリン、ソマン、タブン、シクロサリン、GV、VX、VE、VGおよびVMガス、ならびに、DFP(フルオロリン酸ジイソプロピル)、DCP(クロロリン酸ジエチル)およびDMMP(メチルホスホン酸ジメチル)型の神経毒性有機リン化合物の作用を模倣する分子の開発に至った、第二次世界大戦中およびその後の戦闘用ガスに関する広範な研究の対象であった有機リン化合物は、今日では主に農業において殺虫剤または除草剤として使用されている。存在する多種多様な有機リン化合物系農薬のうち、特に、パラチオン、マラチオン、メチルパラチオン、クロルピリホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ホスメット、テトラクロルビンホスおよびメチルアジンホスを挙げることができる。
【0004】
有機リン化合物の作用機序は、神経インパルス伝達に関与する酵素、コリンエステラーゼに対する有機リン化合物の親和性に基づく。実際に、有機リン化合物は、この酵素の活性部位に特に強力および安定に結合する特性を有する。有機リン化合物は、結合すると、コリンエステラーゼが、神経興奮中にニューロンのシナプスで放出される神経伝達物質であるアセチルコリンを分解するのを防止し、アセチルコリンから不活性なコリンおよびアセチル化合物への分解の欠如により、ニューロンは絶えず興奮し、これによって中枢神経系が麻痺して死に至る可能性がある。
【0005】
有機リン化合物により遮断される神経インパルス伝達に関与するメカニズムは、動物界全体にわたり同一であるため、殺虫剤として使用される有機リン化合物は、虫に対してだけでなく、人間を含むいかなる動物に対しても毒性を有する。このため、生分解性の低い有機塩素化合物系殺虫剤の代替となることを可能にした、比較的良好な生分解性にもかかわらず、そのはるかに高い毒性は、特別な使用上の注意を必要とする。具体的には、有機リン化合物は、植物、水、または有機リン化合物を含有する食物を摂取した動物の肉に残留物が存在する場合、環境または食物連鎖全体における蓄積により、極めて深刻な問題を引き起こす可能性がある。これらの殺虫剤は、農業における産業従事者だけでなく、一個人によっても最も広範に使用されているものの1つであるため、有機リン化合物の検出および定量的測定は、公衆衛生における関心事であり、また農業食品業界に特に有用となる。
【0006】
さらに、1997年に禁止されているにもかかわらず、戦闘用ガスはまだ脅威的な存在である。一方で、サリン、ソマンまたはVX型の戦闘用ガスの生成は容易であり、また一方で、これらの化合物は無色無臭であるため、個人が気付かずに吸引する可能性がある。したがって、そのようなガスの存在の即時的検出が、戦場における兵士だけでなく、テロリズムの危険に直面している一般市民を保護するための主要な問題となる。これらの脅威は、1995年、東京地下鉄でテロリストグループ、オウム真理教により実行された、多数の死者を出したサリン事件以降、特に明確に認識された。
【0007】
有機リン化合物を検出するための多くの方法およびデバイスが開発されている。
【0008】
それに従い、殆どは「電子鼻」の原理で作動する有機リンガス感受性化学センサが市販されている。例えば、米国特許第5,571,401号は、非導電性ポリマーおよび導電性材料で構成された抵抗器を備えるアレイで構成された化学センサを記載しており、化学物質分子が導電性材料と接触すると、抵抗の差が検出される。これらのセンサは、あまり特異的でない、および擬陽性に対し非常に高感度であるという欠点を有する。カーボンナノチューブの2次元グリッドに基づくセンサもまた開発されている(WO2006/099518)が、それらは、非常に高感度で多数の分子を検出するものの、有機リン化合物に対する特異的および選択的応答を得ることができない。
【0009】
最近、溶液中の有機リン化合物の蛍光測定に基づく選択的検出方法が記載されている。Zhangらは、第1級アルコールおよび非平面の柔軟な弱共役発色団に空間的に近接したアミンを有する分子の存在下で、有機リン化合物が第1級アルコールと反応し、得られたホスフェートが分子内求核置換反応により環化を可能にし、発色団を面内に安定化して、蛍光の増加をもたらすことを示した(S.−W.ZhangおよびT.M.Swager、J.Am.Chem.Soc.、2003、125、3420〜3421)。したがって、この環化は、溶液中の有機リン剤の蛍光による検出を可能にする。その後、J.Rebek,Jr.のチームは、第3級アミンに近接した第1級アルコールを含むいくつかのケンプ酸誘導体もまた、神経毒性有機リン種を検出するための良好な候補であることを示した(T.J.Dale&J.Rebek,Jr.、J.Am.Chem.Soc.、2006、4500〜4501)。S.−W.Zhangらが以前に示したように、第1級アルコールが有機リン化合物と反応すると、得られたホスフェートは、以下のスキームで示される反応に従い、分子内求核置換反応による環化を可能にし、第4級アンモニウムを得ることができる。
【0010】
【化1】

【0011】
次いで、Rebekらは、Rがフルオロフォアであるケンプ酸誘導体を開発した。開環状態において、蛍光は、アミンに起因する光誘起電子移動により防止される。環化は、この電子移動を無効にし、分子の蛍光を増加させる。フルオロフォアに結合したケンプ酸を備えるフィルタの、10ppmのDFPを含む雰囲気中での5秒間の暴露は、UVランプ下で読み出すことによって、蛍光によるこの有機リン化合物の検出を可能にする。この検出は、特異的ではあるが、様々な欠点を有する。まず、低光量環境下で行う必要がある。したがって、有機リン化合物の存在がリアルタイムで検出されるべき場所では、必ずしも使用され得るとは限らない。さらに、UVランプの使用が必要であり、これはかさを増加させるため、有機リン化合物を検出および/または定量するためのデバイスの携帯性を低減する。
【0012】
有機リン化合物に対する親和性を有する酵素、例えばコリンエステラーゼを含むバイオセンサの使用に基づく方法もまた開発されている。PCT出願WO2004/040004では、膜においてアセチルコリンエステラーゼを発現する単細胞藻類が、水性媒体中の有機リン化合物の存在についての試験に使用されており、アセチルコリンエステラーゼの阻害パーセントは、試験された水性液体中の有機リン化合物の濃度に相関していた。この方法は、その検出の前に、有機リン化合物の可溶化を必要とする。
【0013】
Ishii A.らは、有機リン殺虫剤を検出するためのカーボンナノチューブをベースとしたセンサを記載している。
【0014】
このセンサは、2つの電極と、一方の面に絶縁材料がコーティングされ、その絶縁材料の上に有機リン化合物を検出するアセチルコリンエステラーゼの分子がグラフトされ、他方の面に半導体材料がコーティングされた基板とを備える。
【0015】
2つの電極間を流れる電流を測定するためのデバイスは、有機リン化合物の存在の検出を可能にする。
【0016】
このセンサは、面のそれぞれに「活性」部分を備える。
【0017】
したがって、一方の面において、活性部分は、有機リン化合物を検出する分子であり、他方の面において、活性部分は、電気デバイス自体、すなわち半導体材料および電極の層で表される。
【0018】
したがって、センサの製造中、基板を裏返し、既に生成されている「活性化」面を保護することが必要であり、これが製造の容易性を抑制し、センサの劣化の原因を生み出すため、このセンサの製造およびそのデバイスへの統合は難しい。
【0019】
これはまた、これらのセンサのより完全なデバイスへの統合中、センサの2つの面を保護しながら利用可能性を維持するように準備することが必要であることを暗に意味している。
【0020】
最後に、この種のセンサでは、溶液中の有機リン化合物の検出のみが可能である。
【0021】
PCT出願WO2006/099518A2自体は、熱酸化物の層およびナノチューブのグリッドでコーティングされた基板と、2つの電極とを備えるセンサ、ならびに2つの電極間の静電容量の差を測定するためのデバイスを記載している。
【0022】
この文献はまた、有機リン化合物の検出を可能とする受容体分子が、ナノチューブの堆積後に酸化ケイ素表面上に堆積され得ること、およびこれらの分子がナノチューブを部分的に被覆することを教示している。
【0023】
しかしながら、熱酸化物層を受容体分子のグラフト前に表面活性化することができない(一般にプラズマ、オゾン分解、またはフッ化水素酸および硝酸を含有する溶液(ピアニア溶液)を用いた処理により行われるこの活性化は、半導体層、すなわちここではカーボンナノチューブを損傷するため)ことから、多数の分子を熱酸化物層上に堆積またはグラフトすることが不可能であることにより、この種のセンサの感度は制限される。
【0024】
要約すると、有機リン化合物を検出するための現在利用可能な方法は、有機リン化合物選択的ではないこと、または溶液中の試料の試験にのみ使用可能であること、または蛍光リーダおよび低光量環境を必要とするといういずれかの欠点を有する。したがって、ガス状および任意の媒体中の溶液の両方の有機リン化合物を、その光度とは無関係に選択的に検出するための、迅速、効果的および特異的な方法の開発、ならびに単純、迅速および選択的な検出のための小型で携帯が容易なデバイスの開発は、依然として、戦場における兵士およびテロリズムの危険に曝されている一般市民を保護する上での、より広範には有機リン酸農薬の検出のための、主要な問題となっている。
【0025】
他の対象化合物は、第2水銀イオンHg2+である。
【0026】
水銀は、その有機形態の全てにおいて、およびその化学状態の全ての点で、毒性および/または生態毒性化合物であることが周知である。
【0027】
その理由は、水銀は生体内で蓄積し、数々の疾患の原因となり、特に腎臓、消化器系、および神経系に影響するためである。
【0028】
全ての酸化状態のうち、最も毒性が強いのは、水銀(II)のイオン、Hg2+である。
【0029】
この元素に対する選択的センサの開発は、自然環境、水および食品中のこの元素の定量および検出の目的において特に興味深い。
【0030】
さらに、飲料水に関する規制および危険物に関する規制に関連して、食品における使用を意図した水中の水銀濃度の決定が必要である。
【0031】
水中の水銀を定量するために現在使用されている技術は、原子吸光分光法の技術である。
【0032】
この技術は、正確で信頼性があるものの、いくつかの欠点を有する。
【0033】
具体的には、原子吸光分光法は、運搬が困難な重い機材を必要とする。
【0034】
第2水銀化合物はまた、発色団またはフルオロフォアをジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物上にグラフトすることにより、選択的な蛍光、比色センサを使用して検出することができる。
【0035】
ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物は、Hg2+イオンを選択的に錯化し、この錯化は、それらの化合物に結合した発色団またはフルオロフォアの特性に変化をもたらす。
【0036】
この発色団またはフルオロフォアの光学特性の変化は、発色団を枯渇させる水銀の電子求引作用に起因する。
【0037】
したがって、Zhuら、Org.Lett.、2008、10、1481〜1484において、トリカルボシアニン色素がグラフトされたジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物を使用してHg2+イオンを錯化し、これにより、Hg2+イオンがクラウンエーテルにより錯化された際に色素の色の変化がもたらされる、第2水銀イオンHg2+に対する化学センサが提案されている。
【0038】
この色の変化は、肉眼で視認できる。
【0039】
しかしながら、この技術では、少量のHg2+イオンを検出することができず、さらに、分析されている試料中のHg2+濃度を決定することができない。
【0040】
同文献は、第2水銀イオンHg2+の検出が、クラウンエーテル上にグラフトされた色素により発光される蛍光を分析することによっても達成され得ることを示している。
【0041】
この技術は、Hg2+イオンの濃度を決定することが不可能であることの他に、低光量環境中で実行する必要があるという欠点を有し、これによって、この技術は現場で直接実行することができない。
【0042】
米国特許第7,385,267B2号は、導電性材料のナノチューブまたはナノワイヤが、試料中の検出検体と接触すると特性の変化を生じる分子で官能化された電気デバイスを記載している。
【0043】
このデバイスでは、導電性材料の特性の変化を検出することにより、試料中の検出検体を検出することができる。
【0044】
この文献中には、Hg2+イオンの検出、または、第2水銀イオンHg2+と接触するとHg2+イオンを錯化する化合物が結合した半導体材料の導電特性の改質に関する言及はない。
【0045】
他の対象化合物は、窒素含有化合物、より具体的にはTNT等の窒素含有爆発物およびアンモニア等の塩基性分子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】米国特許第5,571,401号
【特許文献2】WO2006/099518
【特許文献3】WO2004/040004
【特許文献4】米国特許第7,385,267B2号
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】S.−W.ZhangおよびT.M.Swager、J.Am.Chem.Soc.、2003、125、3420〜3421
【非特許文献2】T.J.Dale&J.Rebek,Jr.、J.Am.Chem.Soc.、2006、4500〜4501
【非特許文献3】Zhuら、Org.Lett.、2008、10、1481〜1484
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
したがって、例えば空気中にガス状で、または水中もしくは未知の溶媒中の溶液として存在する対象化合物を検出および/または定量するための装置であって、光量条件とは無関係に現場で直接使用することができ、運搬可能であり、高い感度を有することができ、容易におよび大規模に製造することができる装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0049】
この必要性を満たすことを目的として、本発明は、分析される試料中の対象化合物の存在を強調し、またそれを定量するために、錯化もしくは環化または任意の他の化学反応により対象化合物と反応する基を有する、「受容体」分子として知られる分子の導入時に誘導される電荷の変動を使用することを提案する。
【0050】
より具体的には、本発明は、ガス状でまたは溶媒中の溶液として存在する対象化合物を選択的に検出および/または定量するための装置であって、
2つの電極と、
絶縁性誘電材料の層と、
絶縁性誘電材料の層にグラフトされた少なくとも1種の受容体分子Aを含む受容体分子の層を含む層であって、前記受容体分子は、対象化合物と反応することができる基Rを有する、層と、
受容体分子の層上に堆積された半導体材料の層と
を備える電気デバイスと、
2つの電極間の正電荷の変動を検出および/または測定するためのデバイスと
を備える装置を提案する。
【0051】
好ましくは、受容体分子Aは、受容体分子Aの絶縁性誘電材料の層へのグラフトを可能とする基Rをさらに有する。
【0052】
本発明の対象化合物を選択的に検出および/または定量するための装置の第1の実施形態において、絶縁性誘電材料は、ケイ素をベースとした絶縁性誘電材料、アルミニウムまたはハフニウムをベースとした絶縁性誘電材料、および有機絶縁性誘電材料から選択される。
【0053】
本発明の対象化合物を選択的に検出および/または定量するための装置の第2のより具体的な好ましい実施形態において、絶縁性誘電材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびポリヘキセンジイミドから選択される。
【0054】
第1の好ましい実施形態において、絶縁性誘電材料は、ケイ素をベースとし、好ましくは酸化ケイ素(SiO)であり、また受容体分子Aの基Rは、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基である。
【0055】
第2の好ましい実施形態において、絶縁性誘電材料は、アルミニウムをベースとし、好ましくは酸化アルミニウム(Al)であり、また受容体分子Aの基Rは、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基である。
【0056】
第3の好ましい実施形態において、絶縁性誘電材料は、有機誘電絶縁性材料、好ましくはポリヘキセンジイミドであり、また受容体分子Aの基Rは、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基である。
【0057】
受容体分子Aは、基Rを基Rに接続するスペーサ部をさらに有してもよく、このスペーサ部は、直鎖または分岐鎖C〜C20(両端炭素数を含む)炭化水素系鎖で構成され、少なくとも1個のヘテロ原子および/または芳香族基および/またはヘテロ芳香族基を含有してもよい。
【0058】
第1の実装方法において、対象化合物は、有機リン化合物であり、受容体分子Aの基Rは、第3級アミン基に空間的に近接して位置する第1級アルコール基で構成される基である。
【0059】
この第1の実装方法において、前記受容体分子Aは、ケンプ酸から得られる分子であってもよく、以下の一般式(I):
【0060】
【化2】

【0061】
(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部を備えるグラフト基を表す)を有する。
【0062】
以上から分かるように、この式(I)中、受容体分子Aの基Rは、1,5,7−トリメチル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−メタノール基である。
【0063】
しかしながら、前記受容体分子Aはまた、以下の一般式(II)または(III):
【0064】
【化3】

【0065】
(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部を備えるグラフト基を表す)の分子であってもよい。
【0066】
この場合、好ましくは、基Rは、トリメトキシシラン基である。
【0067】
本発明の装置の第2の実装方法において、対象化合物は、第2水銀イオンHg2+であり、受容体分子Aの基Rは、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N’−(ヒドロキシエチル)アミン、N,N’−(カルボキシエチル)アミンおよびこれらの化合物の少なくとも2種の混合物から選択される。
【0068】
好ましくは、受容体分子Aの基Rは、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル基である。
【0069】
本発明の装置の第3の実装方法において、対象化合物は、窒素含有化合物であり、受容体分子Aの基Rは、ポリメトキシアレーン基、好ましくはジメトキシベンゼンである。
【0070】
本発明の装置の第4の実装方法において、対象化合物は、塩基性化合物であり、受容体分子Aの基Rは、酸性基である。
【0071】
本発明の装置の全ての実施形態および実装方法において、電気デバイスは、抵抗型であってもよい。
【0072】
しかしながら、電気デバイスはまた、好ましくは、電界効果トランジスタであってもよい。
【0073】
半導体材料の層に関して、好ましくは、この層は、カーボンナノチューブおよび/またはSiをベースとしたナノワイヤおよび/またはグラフェンシートの層である。
【0074】
本発明はまた、対象化合物を検出および/または定量するための方法であって、
a)対象化合物を含有する傾向のある試料を、検出および/または定量装置の少なくとも1種の受容体分子Aと接触させるステップと、
b)電気デバイスの2つの電極間の電流または電圧の差を測定することにより、受容体分子Aと対象化合物との反応により誘導された電荷変動を読み出すステップと
を含むことを特徴とする方法を提案する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下の説明の記述を読めば、本発明がより良く理解され、また本発明の他の特徴および利点がより明確となろう。
【0076】
ガス状でまたは水もしくは任意の他の溶媒等の溶媒中の溶液として、試料中に存在する対象化合物を選択的に検出および/または定量するための装置は、当然ながら単一のデバイスを形成するように組み合わせることができる、以下の2つのデバイスを備える。
−本発明による絶縁性誘電材料の層により互いに離間した2つの電極を備える電気デバイスであって、少なくとも1種の受容体分子Aが、この絶縁性誘電材料の層にグラフトされて受容体分子の層を形成し、この層が次いで半導体材料の層でコーティングされる電気デバイス、ならびに、
−電気デバイスの2つの電極間の正電荷の変動を検出および/または測定するためのデバイス。
【0077】
したがって、驚くべきことに、受容体分子Aは、半導体材料の層でコーティングされると、高感度で検出される対象化合物と反応し続けることが判明した。
【0078】
さらに、受容体分子Aをグラフトするための多数の反応部位を形成するために、半導体材料の層を損傷することなく絶縁材料の表面を活性化することができる(半導体材料の層がまだ存在しないため)ことから、受容体分子Aは、1013分子/cmを超える高い表面密度でグラフトされ得る。
【0079】
そのような表面活性化は、半導体材料が既に存在している時に受容体分子Aがグラフトまたは堆積されなければならない場合には不可能であった。
【0080】
さらに、これにより、半導体材料が既に存在する場合の半導体材料間の任意の寄生反応が回避されるが、この半導体材料自体がある特定の数の表面欠陥を有し、これらの欠陥が受容体分子Aの反応性官能基(基RおよびR)と反応する。
【0081】
受容体分子Aは、いかなる場合も、一部分たりとも半導体材料の層を被覆しない。
【0082】
電気デバイスは、2つの電極間に配置された導電性材料で構成されるデバイスであるトランジスタ等の抵抗型電気デバイスであってもよく、または、電界効果トランジスタ(FET)型デバイスであってもよい。
【0083】
電界効果トランジスタは、既に実証されているが、優れた検出特性、特にガス検出特性を有する。
【0084】
電界効果トランジスタのうち、半導体材料がカーボンナノチューブまたはSiナノワイヤの層である、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNTFET)またはSiナノワイヤトランジスタを挙げることができる。
【0085】
また、半導体材料が有機材料である電界効果トランジスタ(OFET)を挙げることができる。
【0086】
電気デバイスの電極に関して、電極は、金属であってもよく、例えば、金、銀、パラジウム、白金、チタン、ドープシリコン、銅、ニッケルまたはケイ化物で作製されてもよい。
【0087】
しかしながら、電極はまた、カーボンナノチューブをベースとした導電性材料および/またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)で作製されてもよい。
【0088】
半導体材料の層に関して、この層は、当業者が思い付くと見込まれる任意の半導体材料で作製されてもよい。
【0089】
好ましくは、半導体材料は、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、またはこれらの混合物で作製されるか、またはそれらをベースとした材料である。
【0090】
本発明において、「Xをベースとした材料」という表現は、材料中に存在する全モル数に対し、少なくとも20mol%のXを含む材料を指す。
【0091】
半導体材料はまた、オリゴマー、ポリマー、または1000g.mol−1未満の重量平均分子量を有する小分子、例えばペンタセン等の有機半導体材料であってもよい。
【0092】
例えば、有機半導体材料は、チオフェンおよびクアテルチオフェン等のヘテロ環芳香族化合物ならびにP3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)等のその誘導体;ポリピロール等のピロール;トリフェニルアミン等のアリールアミンおよびポリ(トリアリールアミン)等のその誘導体;ヘテロ環式大員環、例えばテトラフェニルポルフィリンおよびフタロシアニン等のポルフィリン、ならびに銅テトラフェニルポルフィリンおよびニッケルフタロシアニン等のその誘導体;ペンタセン等の芳香族多環式アセンおよびトリイソプロピルシリルペンタセン等のその誘導体;ピレン等のアリーレンおよびジシアノペリレンジイミド(PDI−CN)等のその誘導体をベースとした材料であってもよい。
【0093】
そのような好ましい有機半導体材料の例は、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ(トリアリールアミン)、アントラセン、ペンタセン、ペリレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレンおよびポリフルオレンである。
【0094】
しかしながら、極めて特に好ましい半導体材料は、ケイ素ナノワイヤおよび/もしくはナノチューブ、ならびに/またはカーボンナノワイヤおよび/もしくはナノチューブ、ならびに/またはケイ素およびゲルマニウムをベースとした材料、例えばモル組成Si0.7Ge0.3の合金のナノワイヤおよび/もしくはナノチューブで構成される。
【0095】
絶縁性誘電材料に関して、この材料は、有利にはケイ素をベースとした絶縁材料、例えば酸化ケイ素等、アルミニウムをベースとした絶縁材料、例えば酸化アルミニウム等、または有機材料をベースとした絶縁材料、例えばポリヘキセンジイミドである。
【0096】
受容体分子Aは、電気デバイスの絶縁性誘電材料にグラフトされる。
【0097】
この目的において、好ましくは、受容体分子Aは、受容体分子Aの絶縁性誘電材料へのグラフトを可能とする官能基を含む基Rを有する。
【0098】
基R全体を構成し得る、グラフトを可能とする官能基は、絶縁性誘電材料に適合される。基Rは、一般に、トリハロシラン基、トリ(C〜C)アルコキシシラン基、ならびにカルボン酸および/またはスルホン酸および/またはリン酸基から選択される。
【0099】
基Rのグラフトは、自己組織化単分子層の形成をもたらし得る。
【0100】
したがって、絶縁性誘電材料がケイ素をベースとする場合、より具体的には酸化ケイ素(SiO)である場合、基R(またはより具体的には基Rの官能基)は、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、最も好ましくはトリメトキシシラン基である。
【0101】
絶縁性誘電材料がアルミニウムをベースとする場合、より具体的には酸化アルミニウム(Al)である場合、基Rは、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基を含むか、またはその基である。
【0102】
絶縁性誘電材料が有機絶縁性誘電材料である場合、より具体的にはポリヘキセンジイミドである場合、基Rは、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基を含むか、またはその基で構成される。
【0103】
検出および/または定量される対象化合物と反応することができる基、すなわち基Rに関して、この基は、当然ながら、対象化合物の性質に依存するであろう。
【0104】
グラフト基Rおよび対象化合物と反応することができる基、すなわち基Rは、スペーサ部により互いに離間してもよい。
【0105】
このスペーサ部は、直鎖または分岐鎖C〜C20(両端炭素数を含む)炭化水素系鎖で構成され得る。
【0106】
「C〜C20炭化水素系鎖」という表現は、本発明において、飽和結合(単結合)ならびに/または不飽和結合(二重結合および/もしくは三重結合)により互いに結合した1個から20個の炭素原子で構成される鎖を指す。
【0107】
この鎖は、少なくとも1個のヘテロ原子および/または芳香族基および/またはヘテロ芳香族基を含有してもよい。
【0108】
基Rは、対象化合物が有機リン分子である場合、第3級アミン基に空間的に近接して位置する第1級アルコール基を含む基で構成される。
【0109】
この場合、および第1の変形例において、受容体分子Aは、ケンプ酸の誘導体であり、以下の一般式(I):
【0110】
【化4】

【0111】
(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部により窒素原子から離間したグラフト基、または受容体分子のグラフトのための官能基を含む基を表す)を有する。
【0112】
さらに、検出される対象化合物が有機リン化合物である場合、受容体分子Aはまた、以下の一般式(II)または(III):
【0113】
【化5】

【0114】
の分子であってもよい。
【0115】
本発明において特に好ましい式(I)の受容体分子Aは、基Rとして、1,5,7−トリメチル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−メタノール基を有する分子であり、より具体的には、同時にグラフト基Rがトリメトキシシラン基である分子である。
【0116】
式(I)または式(II)もしくは(III)の受容体分子Aにより、受容体分子Aの有機リン化合物への暴露中、第1級アルコールと有機リン化合物との間の反応により、不安定なリン酸エステル中間体が形成される。
【0117】
これに続いて、第3級アミンによるリン酸エステル中間体の求核置換反応を介した分子内環化反応および第4級アンモニウムの形成が生じる。
【0118】
環化反応中、塩が形成され、したがって異なる電荷(陽イオンおよび陰イオン)が生成される。
【0119】
アンモニウム官能基の形成を介した電荷の生成により、分子の静電気環境を突然変化させることができ、この変化が、本発明の検出および/または定量装置の検出および/または測定デバイスにより、例えば電流または電圧の変動の測定によって測定される。
【0120】
対象化合物が第2水銀イオンである場合、受容体分子Aは、上で定義されたような絶縁性誘電材料上へのグラフト基の他に、第2水銀イオンの錯化を可能にすると見込まれる基Rを有する。
【0121】
したがって、この場合、受容体分子Aは、第2水銀イオンHg2+を錯化する化合物から得られる分子である。
【0122】
本発明において好ましいそのような化合物は、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル、N,N’−(ヒドロキシエチル)アミン、N,N’−(カルボキシエチル)アミン、およびこれらの化合物の少なくとも2種の混合物である。
【0123】
第2水銀イオンHg2+の検出および/または定量の場合に極めて特に好ましい1つの化合物は、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテルである。
【0124】
当然ながら、この場合、受容体分子Aのグラフト基はまた、上で定義されたスペーサ部と同じであってもよいスペーサ部を介して、第2水銀イオンHg2+を錯化する基Rに結合され得る。
【0125】
第2水銀イオンHg2+の錯化中、本発明による電気デバイスの2つの電極間の伝導電流に変動が生じ、この2つの電極間の伝導電流の変動が、本発明による2つの電極間の正電荷の変動を測定するためのデバイスにより検出および/または測定される。
【0126】
対象化合物が窒素含有化合物、例えばTNT等の窒素含有爆発物である場合、基Rは、ポリメトキシアレーン基、例えばジメトキシベンゼン基等の電子が豊富な基である。
【0127】
対象化合物がアンモニア等の塩基性分子である場合、基Rは、カルボン酸基、スルホン酸基またはリン酸基、例えば安息香酸基等の酸性基である。
【0128】
本発明の検出および/または定量装置は、低コストで大規模な製造を可能とする単純な構造を有する。
【0129】
実際に、このセンサの2つの活性部分、すなわち電極および半導体で構成された純粋な電気部品ならびに受容体分子Aの層は、共に基板の同じ面上に存在する。
【0130】
したがって、基板の2つの面が活性部分を備える場合とは異なり、直列で製造することが非常に容易である。
【0131】
またこれによって、本発明の装置は非常に小さいサイズのものとすることができ、機能する上で必要なエネルギーが少なくなり、またその携帯性が向上する。
【0132】
ここで、本発明をより良く理解するために、純粋に例示的かつ非限定的な例として、例示的実施形態を説明する。
【実施例1】
【0133】
ガス状の有機リン化合物、フルオロリン酸ジイソプロピル(DFP)を検出および/または定量するための装置の製造。
【0134】
表面に100nmの厚さの酸化ケイ素の層を備える、酸化ケイ素の層で被覆されたシリコン基板上に電気デバイスを製造した。
【0135】
Ti/Au(5/30nm)で作製された電極を、本発明による電気デバイスの絶縁性誘電材料を構成する酸化ケイ素表面上に、蒸着により堆積させた。
【0136】
表面ヒドロキシル官能基を形成するために、酸化ケイ素層の表面をプラズマ処理により活性化する。
【0137】
次いで、室温で24時間、11−アジドウンデシルトリメトキシシランのトルエン中の1mM溶液中に含浸することにより、表面を官能化する。
【0138】
次いで、基板を、ジクロロメタン、水およびアセトンで完全に洗い流してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0139】
次に、アルキン化合物に対し1mol%のCuSO.5HOおよび5mol%のアスコルビン酸Naを含有する、1−(4−エチニルベンジル)−1,5,7−トリメチル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−メタノールの2mM溶液に、基板を浸漬することにより、有機リン化合物の環化を生じさせる基を、室温でN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中でアジド単分子層にグラフトした。
【0140】
次いで、このように官能化された基板を、連続的にDMF、水およびメタノール中で2分間超音波照射してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0141】
次に、このように官能化された絶縁性誘電材料の表面上に、半導体材料の層を堆積させた。
【0142】
これは、カーボンナノチューブの溶液を噴霧することにより行った。
【0143】
次いで、電気デバイスを、真空炉内で、100℃および1mbarで12時間乾燥させる。
【0144】
このデバイスを、フルオロリン酸ジイソプロピル蒸気と合わせ、抵抗の変動を測定した。
【0145】
42%の抵抗の相対的変動△R/Rが測定された。
【0146】
上記実施例1において、受容体分子Aのグラフトは、2つのステップで行われ、すなわち、まずスペーサ部およびトリメトキシシラングラフト基を有する分子を、絶縁性誘電材料の層上にグラフトし、次いで、受容体分子Aのスペーサ部の別の部分に結合した環化基R、1−(4−エチニルベンジル)部を、アジドウンデシルグラフト基の遊離部分にグラフトした。
【0147】
しかしながら、受容体分子Aのグラフトは、本発明の範囲から逸脱せずに、単一のステップで行うことができる。
【実施例2】
【0148】
ガス状の有機リン化合物、フルオロリン酸ジイソプロピル(DFP)を検出および/または定量するための装置の製造。
【0149】
表面に100nmの厚さの酸化ケイ素の層を備える、酸化ケイ素の層で被覆されたシリコン基板上に電気デバイスを製造した。
【0150】
Ti/Au(5/30nm)で作製された電極を、本発明による電気デバイスの絶縁性誘電材料を構成する酸化ケイ素表面上に、蒸着により堆積させた。
【0151】
次に、誘電材料の表面上に、半導体材料の層を堆積させた。
【0152】
これは、カーボンナノチューブの溶液を噴霧することにより行った。
【0153】
次いで、室温で24時間、11−アジドウンデシルトリメトキシシランのトルエン中の1mM溶液中に含浸することにより、カーボンナノチューブで被覆されていないためにまだ利用可能である表面を官能化する。
【0154】
次いで、基板を、ジクロロメタン、水およびアセトンで完全に洗い流してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0155】
次に、アルキン化合物に対し1mol%のCuSO.5HOおよび5mol%のアスコルビン酸Naを含有する、1−(4−エチニルベンジル)−1,5,7−トリメチル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−メタノールの2mM溶液に、基板を浸漬することにより、有機リン化合物の環化を生じさせる基を、室温でN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中でアジド単分子層にグラフトした。
【0156】
次いで、このように官能化された基板を、連続的にDMF、水およびメタノール中で2分間超音波照射してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0157】
次いで、電気デバイスを、真空炉内で、100℃および1mbarで12時間乾燥させる。
【0158】
このデバイスを、フルオロリン酸ジイソプロピル蒸気と合わせ、抵抗の変動を測定した。
【0159】
17%の抵抗の相対的変動△R/Rが測定された。
【0160】
上記実施例1において、受容体分子Aのグラフトは、2つのステップで行われ、すなわち、まずスペーサ部およびトリメトキシシラングラフト基を有する分子を、絶縁性誘電材料の層上にグラフトし、次いで、受容体分子Aのスペーサ部の別の部分に結合した環化基R、1−(4−エチニルベンジル)部を、アジドウンデシルグラフト基の遊離部分にグラフトした。
【0161】
しかしながら、受容体分子Aのグラフトは、本発明の範囲から逸脱せずに、単一のステップで行うことができる。
【実施例3】
【0162】
第2水銀イオンを検出および/または定量するための装置の製造。
【0163】
表面に100nmの厚さの酸化ケイ素の層を備える、酸化ケイ素の層で被覆されたシリコン基板上に電気デバイスを製造した。
【0164】
Ti/Au(5/30nm)で作製された電極を、本発明による電気デバイスの絶縁性誘電材料を構成する酸化ケイ素表面上に、蒸着により堆積させた。
【0165】
表面ヒドロキシル官能基を形成するために、酸化ケイ素層の表面をプラズマ処理により活性化する。
【0166】
次いで、室温で24時間、11−アジドウンデシルトリメトキシシランのトルエン中の1mM溶液中に含浸することにより、表面を官能化する。
【0167】
次いで、基板を、ジクロロメタン、水およびアセトンで完全に洗い流してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0168】
アルキン化合物に対し1mol%のCuSO.5HOおよび5mol%のアスコルビン酸Naを含有する、N−(4−エチニルフェニル)−ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテルの2mM溶液に、基板を浸漬することにより、Hg2+を錯化する基を、室温でN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中でアジド単分子層にグラフトした。
【0169】
次いで、このように官能化された基板を、連続的にDMF、水およびメタノール中で2分間超音波照射してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0170】
次に、このように官能化された絶縁性誘電材料の表面上に、半導体材料の層を堆積させた。
【0171】
これは、カーボンナノチューブの溶液を噴霧することにより行った。
【0172】
次いで、電気デバイスを、真空炉内で、100℃および1mbarで12時間乾燥させる。
【0173】
このデバイスを、過塩素酸水銀(II)の10μM溶液と5分間合わせ、抵抗の変動を測定した。
【0174】
14%の抵抗の相対的変動△R/Rが測定された。
【0175】
上記実施例2において、受容体分子Aのグラフトは、2つのステップで行われ、すなわち、まずスペーサ部およびトリメトキシシラングラフト基を有する分子を、絶縁性誘電材料の層上にグラフトし、次いで、受容体分子Aのスペーサ部の別の部分に結合した環化基R、1−(4−エチニルベンジル)部を、アジドウンデシルグラフト基の遊離部分にグラフトした。
【0176】
しかしながら、受容体分子Aのグラフトは、本発明の範囲から逸脱せずに、単一のステップで行うことができる。
【実施例4】
【0177】
第2水銀イオンを検出および/または定量するための装置の製造。
【0178】
表面に100nmの厚さの酸化ケイ素の層を備える、酸化ケイ素の層で被覆されたシリコン基板上に電気デバイスを製造した。
【0179】
Ti/Au(5/30nm)で作製された電極を、本発明による電気デバイスの絶縁性誘電材料を構成する酸化ケイ素表面上に、蒸着により堆積させた。
【0180】
次いで、このように官能化された絶縁性誘電材料の表面上に、カーボンナノチューブの溶液を噴霧することにより、半導体材料の層を堆積させた。
【0181】
次いで、室温で24時間、11−アジドウンデシルトリメトキシシランのトルエン中の1mM溶液中に含浸することにより、表面を官能化する。
【0182】
次いで、基板を、ジクロロメタン、水およびアセトンで完全に洗い流してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0183】
アルキン化合物に対し1mol%のCuSO.5HOおよび5mol%のアスコルビン酸Naを含有する、N−(4−エチニルフェニル)−ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテルの2mM溶液に、基板を浸漬することにより、Hg2+を錯化する基を、室温でN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中でアジド単分子層にグラフトした。
【0184】
次いで、このように官能化された基板を、連続的にDMF、水およびメタノール中で2分間超音波照射してから、アルゴン気流下で乾燥させる。
【0185】
次いで、電気デバイスを、真空炉内で、100℃および1mbarで12時間乾燥させる。
【0186】
このデバイスを、過塩素酸水銀(II)の10μM溶液と5分間合わせ、抵抗の変動を測定した。
【0187】
7%の抵抗の相対的変動△R/Rが測定された。
【0188】
上記実施例2において、受容体分子Aのグラフトは、2つのステップで行われ、すなわち、まずスペーサ部およびトリメトキシシラングラフト基を有する分子を、絶縁性誘電材料の層上にグラフトし、次いで、受容体分子Aのスペーサ部の別の部分に結合した環化基R、1−(4−エチニルベンジル)部を、アジドウンデシルグラフト基の遊離部分にグラフトした。
【0189】
しかしながら、受容体分子Aのグラフトは、本発明の範囲から逸脱せずに、単一のステップで行うことができる。
【0190】
受容体分子から形成された層は、概して、および好ましくは、3nm未満の厚さを有し、これは本発明の装置の小型化に適合する。
【0191】
これらの層は、半導体材料の層でコーティングされ、半導体材料を被覆しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状でまたは溶媒中の溶液として存在する対象化合物を選択的に検出および/または定量するための装置であって、
2つの電極と、
絶縁性誘電材料の層と、
少なくとも1種の受容体分子Aを含む受容体分子の層を含む層であって、前記受容体分子Aは、対象化合物と反応することができる基Rを有する、層と、
半導体材料の層と
を備える電気デバイスと、
2つの電極間の正電荷の変動を検出および/または測定するためのデバイスと
を備える装置において、
受容体分子Aの層が、絶縁性誘電材料の層にグラフトされ、半導体材料の層でコーティングされていることを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1種の受容体分子Aが、受容体分子Aの絶縁性誘電材料へのグラフトを可能とする基Rをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
絶縁性誘電材料が、ケイ素をベースとした絶縁性誘電材料、アルミニウムまたはハフニウムをベースとした絶縁性誘電材料、および有機絶縁性誘電材料から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
絶縁性誘電材料が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびポリヘキセンジイミドから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
絶縁性誘電材料が、ケイ素をベースとし、好ましくは酸化ケイ素SiOであり、また受容体分子Aの基Rが、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
絶縁性誘電材料が、アルミニウムをベースとし、好ましくは酸化アルミニウムAlであり、また受容体分子Aの基Rが、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
絶縁性誘電材料が、有機誘電絶縁性材料、好ましくはポリヘキセンジイミドであり、また受容体分子Aの基Rが、トリハロシランまたはトリ(C〜C)アルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
受容体分子Aが、基Rを基Rに接続するスペーサ部をさらに有し、このスペーサ部が、直鎖または分岐鎖C〜C20(両端炭素数を含む)炭化水素系鎖で構成され、少なくとも1個のヘテロ原子および/または芳香族基および/またはヘテロ芳香族基を含有してもよいことを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
対象化合物が、有機リン化合物であり、受容体分子Aの基Rが、第3級アミン基に空間的に近接して位置する第1級アルコール基で構成される基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記受容体分子Aが、ケンプ酸から得られ、以下の一般式(I):
【化1】

(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部を備えるグラフト基を表す)を有することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記受容体分子Aが、以下の一般式(II):
【化2】

(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部を備えるグラフト基を表す)の分子であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記受容体分子Aが、以下の一般式(III):
【化3】

(式中、Rは、必要に応じてスペーサ部を備えるグラフト基を表す)の分子であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
基Rが、トリメトキシシラン基であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
対象化合物が、第2水銀イオンHg2+であり、受容体分子Aの基Rが、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N’−(ヒドロキシエチル)アミン、N,N’−(カルボキシエチル)アミンおよびこれらの化合物の少なくとも2種の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
受容体分子Aの基Rが、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル基であることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
対象化合物が、窒素含有化合物であり、受容体分子Aの基Rが、ポリメトキシアレーン基、好ましくはジメトキシベンゼンであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
対象化合物が、塩基性化合物であり、受容体分子Aの基Rが、酸性基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
電気デバイスが、抵抗型であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
電気デバイスが、電界効果トランジスタであることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
半導体材料の層が、カーボンナノチューブおよび/またはSiをベースとしたナノワイヤおよび/またはグラフェンシートの層であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
対象化合物を検出および/または定量するための方法であって、
a)対象化合物を含有する傾向のある試料を、請求項1から20のいずれか一項に記載の検出および/または定量装置の少なくとも1種の受容体分子Aと接触させるステップと、
b)電気デバイスの2つの電極間の電流または電圧の差を測定することにより、受容体分子Aと対象化合物との反応により誘導された電荷変動を読み出すステップと
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2013−505439(P2013−505439A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529320(P2012−529320)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000630
【国際公開番号】WO2011/033195
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【Fターム(参考)】