説明

ガス発生器

【課題】ガス発生器のカップ体とホルダを確実に固定し、カップ体とホルダの接合部において、ガス発生方向と同方向強度(縦方向保持力)を、簡易な構成において向上させたガス発生器を提供する。
【解決手段】有底円筒形状で開口部にフランジ12が延設されているカップ体3と、点火機構を有する点火器4と、カップ体のフランジ部を嵌合する嵌合溝6、及びカップ体のフランジ部をかしめ固定するかしめ鍔7、及び点火器をかしめ固定する円筒状の点火器保持部8を有し、カップ体と点火器を固定する円筒形状のホルダ5と、カップ体と、点火器と、ホルダとに囲まれて区画形成される燃焼室9を備え、燃焼室にガス発生剤が収容されたガス発生器1であって、嵌合溝の底部に少なくとも一つの連続した円周溝10が形成され、カップ体のフランジ部に凸部11が形成され、円周溝と凸部が係合するように配設されていることを特徴とするガス発生器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートベルトプリテンショナー等を作動させるためのガス発生器に関する。特に燃焼室を区画するカップ体を確実に係止し、カップ体の抜けや回転を抑制したガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突時に生じる衝撃から搭乗員を保護する様々な車両搭乗者安全装置が考案され、自動車に設置されている。これらの車両搭乗者安全装置の多くは、ガス発生器が起動装置として適用され、車両安全装置モジュールに組み込まれている。シートベルトプリテンショナー装置は、自動車の衝突時にシートベルトのたるみを巻き取り、搭乗者を確実に拘束する目的の安全装置である。係るシートベルト用のプリテンショナー装置は、例えば特許文献1に記載されているように、シートベルトを引っ張るための機構と、この機構を作動させる小型のガス発生器により構成されている。係る小型のガス発生器は、ガス発生剤が充填されたカップ体と、係るガス発生剤を着火させるための点火器と、係る点火器を保持するホルダとを備える。当該小型ガス発生器のホルダは、点火器を点火器保持部にてかしめ固定すると共に、カップ体もかしめ固定する機能の部材であり、各部材を固定保持することによりガス発生剤が装填される燃焼室を区画形成する。当該小型ガス発生器は、ガス発生剤の燃焼によりガスを生成し、そのガス圧力により前記カップ体底面を破断し、圧力を伴ったガスをガス発生器外へ放出するものである。シートベルト用のプリテンショナー装置において、この小型ガス発生器は、ガス放出側であるカップ体側を、シートベルトを引っ張るためのモジュール機構へ挿入し、設置される。前記モジュール機構に当該ガス発生器を挿入して組み付け設置作業をする際、当該ガス発生器のカップ体とホルダとの間で回転滑りが無いよう、堅固に固定されてあることが必要である。
【0003】
それらガス発生器を具える安全装置の作動機構を以下に説明する。まず、衝突事故発生時等に衝突センサーから発せられる電気信号を、点火デバイスであるガス発生器の点火器が受信し、点火器が発熱する。係る点火器の発熱により、ガス発生剤が発火燃焼し、これに伴い高温・高圧ガスが発生する。発生した高温・高圧ガスのガス圧力により、安全装置が作動することとなる。このときガス発生器の燃焼室内は、瞬時に高温・高圧条件下にさらされるため、ガス発生器の点火器の燃焼室の構成は、かかる高温・高圧条件に耐え得る設計とならなければならない。すなわち、高温・高圧条件下にさらされても、燃焼室が確保されるような構造となっていなければならない。
【0004】
更に、ガス発生器に装填されるガス発生剤は、水分による品質劣化が懸念されるものである。したがってカップ体とホルダにより区画される燃焼室は、外気の侵入を遮断した気密性が保たれた構造であることが必須である。また燃焼室は、ガス発生器作動直後に所定の生成ガス圧力を得るために、耐圧気密性が維持されることが必要である。したがって燃焼室を区画形成するカップ体とホルダのかしめ固定は、強固でかつ気密性を保持した係合形態であることが重要である。
【0005】
係るガス発生器において、燃焼室を区画するカップ体とホルダを堅固に固定する構造が知られている。特許文献2には、ガス発生器のカップ体またはホルダの少なくとも一方に凸部を設置し、前記他方にこれに係合する凹部を設置したガス発生器を開示している。該凸部の具体的な形態は複数のピン状の突起である。また、該凸部及び相対する凹部の設置部位は、ホルダのかしめ鍔の内側壁面及び、これと相対するカップ体フランジ外壁面に設置されている。
【0006】
また特許文献3には、小型ガス発生器において、ホルダにおいてカップ体固定用のかしめ鍔をカップ体側壁に食い込ませることにより、ホルダとカップ体との間のすべり(ずれ)を防止できる構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−518832号公報
【特許文献2】国際公開番号WO02/060728号
【特許文献3】特開2008−37389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガス発生器は、所定のガス圧力を指向性を持ってシートベルトプリテンショナー装置に送り込み、装置機構を起動させるものである。その機能を確実に発揮するためには、ガス発生剤を装填したカップ体を、点火器を内在させたホルダに堅固に、且つ気密性を保持して固定保持させる必要がある。前述した先行技術文献は、いずれもホルダのかしめ鍔をカップ体を固定する機構において、凸部を形成したカップ体、若しくはホルダ部材により相対する部材を凹型に変形させて係合させる構成を採用したものである。しかしながら、これらの構成は、係る部材の変形部位の肉薄化を伴うものであり、係合部の接合強度は増すものの、部材の機械的強度は低下することが懸念される。すなわち、カップ体とホルダとの接合部の回転強度は増すものの、ガス発生方向と同軸の縦方向の強度は、部材の機械的強度の低下に伴い、十分な縦方向引っ張り強度を確保できない懸念があった。従来技術の場合、この課題を補うために、凹型被変形部材の部材肉壁を予め厚くする対応を必要とし、該ガス発生器の重量増大、若しくは該ガス発生器の大型化をもたらすものであった。
さらに従来のガス発生器では、ガス発生剤の充填量は400〜1000mgと少量のガス発生剤充填量であった。しかしながら、より強い駆動力を必要とする車両安全装置機構を設計する際、ガス発生剤充填量を1000〜2000mgと増量した高出力型ガス発生器を提供する必要があり、ガス発生器を構成する部材の機械的強度向上、及び各部材の組付け強度向上を考慮しなければならない。特に高出力型ガス発生器において多量のガスが発生し、カップ体がガス発生時にホルダから飛び出す可能性が高まることから、カップ体のより強固な保持が要求されている。
本発明は、ガス発生器のカップ体とホルダを確実に固定し、カップ体とホルダの接合部において、ガス発生方向と同方向強度(縦方向保持力)を、簡易な構成において向上させたガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行なった結果、嵌合溝の底部に連続した円周溝を配設したホルダとフランジ部に凸部を配置したカップ体を備えたガス発生器が、上記課題を解決することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1) 車両搭乗者拘束装置を作動させるためのガス発生器であって、ガス発生剤と、有底円筒形状で開口部にフランジが延設されているカップ体と、電気信号により起動される点火機構を有する点火器と、前記カップ体のフランジ部を嵌合する嵌合溝、及び前記カップ体のフランジ部をかしめ固定するかしめ鍔、及び前記点火器をかしめ固定する円筒状の点火器保持部を有し、前記カップ体と前記点火器を固定する円筒形状のホルダと、前記カップ体と、前記点火器と、前記ホルダとに囲まれて区画形成される燃焼室を備え、前記燃焼室に前記ガス発生剤が収容されたガス発生器であって、前記嵌合溝の底部に少なくとも一つの連続した円周溝が形成され、前記カップ体のフランジ部に凸部が形成され、前記円周溝と前記凸部が係合するように配設されていることを特徴とするガス発生器、である。
車両搭乗者拘束装置の具体例として、シートベルトプリテンショナー装置が挙げられる。上記構成によれば、カップ体とホルダとの接合部において、カップ体側のフランジ部に形成された凸部と、ホルダ側の円周溝とが係合し接合強度が向上する。具体的には、回転方向強度の指標である回転トルク値が向上すると共に、ガス発生時のカップ体の飛び出し防止機構の指標である縦方向保持力値も優位に向上する結果が得られる。併せて、燃焼室の気密性も満足できる基準で保持されるものである。したがって、当該ガス発生器をシートベルトプリテンショナー装置に取付けた際に、当該小型ガス発生器の所望の性能を発揮させ、前記シートベルトプリテンショナー装置を確実に作動させ得るものである。上記構成によるガス発生器は、カップ体とホルダのかしめ固定の際、カップ体のフランジ部は塑性変形により凸部形成するものであるが、変形に伴うフランジ部の肉薄化が発生せず、部材の機械的強度は保持されている。また、従来技術による凹凸部を配したガス発生器と比較して、本発明に係る構造は部材加工が容易であり、部材製造面において、部材構造精度の確保や部材製造コストの点で有利である。部材構造において高い精度が確保できることから、組み立てられた当該ガス発生器の性能の品質確保の点でも優れた効果が発揮されるものである。
【0010】
(2) (1)に記載のガス発生器において、前記円周溝の溝幅(W)と前記嵌合溝の溝幅(L)の比率(W/L)が0.2〜0.6であることが好ましい。
上記円周溝の設計を嵌合溝との相対関係に従う構成にすることにより、相対するカップ体のフランジ部との接合面を確保でき、前記フランジ部に形成される凸部と前記円周溝が確実に係合でき、カップ体とホルダの接合強度を確保することができる。
(3) (1)又は(2)に記載のガス発生器において、前記円周溝の深さ(D)と前記カップ体フランジ部の板厚み(T)の比率が(D/T)が0.3以上であることが好ましい。
上記円周溝の設計をフランジ部の板厚みとの相対関係に従う構成にすることにより、前記フランジ部に形成される凸部が円周溝との係合が、カップ体の保持力向上に寄与する構成とすることができる。
【0011】
(4) (1)〜(3)に記載のガス発生器において、前記円周溝の溝幅が0.2〜0.8mmの円周溝であり、前記嵌合溝の溝幅が0.8〜3.2mmであることが好ましい。
(5) (1)〜(4)に記載のガス発生器において、前記円周溝の深さが0.1〜0.8mmの円周溝であり、前記カップ体フランジ部の板厚みが0.3〜0.7mmであることが好ましい。
上記構成に従い、円周溝の形状、嵌合溝とかしめ鍔からなるホルダのカップ体保持部形状、及びカップ体フランジ部形状を規定することにより、相対するカップ体のフランジ部が塑性変形により凸部を形成できると共に、形成されたフランジ部の凸部と前記円周溝が確実に係合でき、カップ体とホルダの接合強度を確保することができる。
【0012】
(6) (1)〜(5)のいずれか一項に記載のガス発生器において、前記嵌合溝の溝幅が1.2〜2.4mmであり、前記カップ体外壁面から連続しているフランジ外壁面と、前記かしめ鍔の前記フランジに接する側の面の形状が合致して接合していることが好ましい。
上記構成に従うことにより、ホルダのカップ体保持部とカップ体フランジ部の接触面積を増大させることにより、ホルダとカップ体の保持力は更に向上する。
【0013】
(7) (1)〜(6)のいずれか一項に記載のガス発生器において、前記嵌合溝が前記ホルダの外周部に沿い形成され、前記円周溝が前記嵌合溝の底部の最外周部に形成されていることが好ましい。
(8) (1)〜(6)のいずれか一項に記載のガス発生器において、前記嵌合溝が前記ホルダの外周部に沿い形成され、前記円周溝が前記嵌合溝の底部の最外周部及び最内周部に1つずつ形成されていることが好ましい。
上記構成は、ホルダの嵌合溝底部に配置される円周溝の形成位置を特定したものであり、カップ体とホルダの回転方向及び縦方向保持力の両方の保持力を優位に向上させるガス発生器を提供できるものである。
(9) (1)に記載のガス発生器において、ガス発生剤が1200mg以上の充填量であることが好ましい。本願に係るガス発生器はカップ体とホルダが堅固に保持されるものであり、従来の小型ガス発生器よりガス発生剤装填量が多い高出力型小型ガス発生器に適用できるものである。
(10) ガス発生剤と、有低円筒形状で開口部に凸部を有するフランジが延設されているカップ体と、電気信号により起動される点火機構を有する点火器と、前記カップ体のフランジ部を嵌合する嵌合溝、及び前記カップ体のフランジ部をかしめ固定するかしめ鍔、及び前記点火器をかしめ固定する円筒状の点火器保持部、嵌合溝の底部に少なくとも一つの連続した円周溝を有し、前記カップ体と前記点火器を固定する円筒形状のホルダと、
前記カップ体と、前記点火器と、前記ホルダとに囲まれて区画形成される燃焼室を備え、前記燃焼室に前記ガス発生剤が収容されたガス発生器の製造方法であって、
(i)前記円筒形状のホルダに点火器を取付け、円筒状点火器保持部を縮径するように変形させて点火器をかしめ固定し、点火器付きホルダを作成する点火器取付け工程、
(ii)ガス発生剤を充填したカップ体を、前記点火器付きホルダに嵌合する嵌合工程、
(iii)前記ホルダのかしめ鍔を縮径するように変形させ、前記カップ体のフランジ部を前記嵌合溝と前記かしめ鍔で挟み込み、それと同時に、ホルダの円周溝に相対するフランジ部をかしめ鍔のかしめを介して塑性変形させ、凸部を形成させるかしめ工程、
を含むガス発生器の製造方法が挙げられる。上記製造方法により、カップ体のホルダへの固定と同時に、カップ体フランジ部に凸部を形成することができ、当該凸部がホルダの円周溝に確実に係合する配置を取ることを可能とするものである。更に、従来のガス発生器の製造工程は同じであり、特別な製造設備の新設を必要としない利点を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来技術と比較して、ガス発生器のカップ体とホルダの接合部における縦方向保持力及び回転方向保持力が、優位に向上したガス発生器を提供できる。該接合部の確実な接合に伴い、燃焼室の気密性も十分確保されるものであり、簡易な構成でありながら、信頼性の高いガス発生器を提供できるものである。更に、本発明のガス発生器は、複雑な形状を要しないホルダ部材により、従来と同じ製造工程により製造することができ、製造プロセスに係るコストを抑えることができる。また、従来構成と比較して、カップ体とホルダの堅固な保持が達成できることから、カップ体およびホルダの部材の肉薄化や軽量材質の採用を可能とするものであり、当該ガス発生器の小型化や軽量化を達成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る小型ガス発生器の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る小型ガス発生器の、カップ体とホルダの接合部位(図1の点線で囲まれた部位)の拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る小型ガス発生器の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る小型ガス発生器の、カップ体とホルダの接合部位(図3の点線で囲まれた部位)の拡大断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る小型ガス発生器の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る小型ガス発生器の、カップ体とホルダの接合部位(図5の点線で囲まれた部位)の拡大断面図である。
【図7】従来技術による小型ガス発生器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るガス発生器の第1実施形態を示す断面図である。図1に示すガス発生器は、主としてシートベルトのプリテンショナー装置に使用される小型のガス発生器1である。かかる小型のガス発生器1は、金属製のカップ体3、ガス発生剤2を着火させるための点火器4、及び前記カップ体3と点火器4を保持する金属製の円筒形状のホルダ5を具える。そして、カップ体3、点火器4、及びホルダ5に囲まれて区画される燃焼室9が形成され、この区画にガス発生剤2が充填されている。衝突事故発生時にガス発生剤2を即座に着火させるために、点火器4は、ガス発生剤2と隣接するように配置されている。
【0018】
点火器4は、電気信号により起動し火炎を発生させ、ガス発生剤2を着火させて燃焼を開始させるための点火装置である。点火器4は内部に図示しない点火薬と、この点火薬を着火させるための図示しない抵抗体とを含んでいる。抵抗体は一対の電極ピン14,15と接続されており、それぞれの電極ピンが基部19に挿通・保持され、外部に貫通している。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。金属カバー18は点火器4から発生する高温の火炎に指向性を与え、ガス発生剤2を確実に燃焼させるために設置される。
【0019】
点火器4は、ホルダ5における円筒状で開口端部が縮径している点火器保持部8と点火器の基部19が当接する形態で、ホルダ5に保持されている。電極ピン14,15は孔13に挿入され、電極ピン先端部がコネクター挿入部16側に挿通している。孔13は、複数の電極ピン14,15をまとめて挿入できる1つの孔でも、電極ピンを各々個別に挿入できる複数の孔であっても良い。点火器4とホルダ5との間には、気密性を向上させるためにOリング17が介在されている。Oリング17は、耐熱性及び耐湿性を有するゴム製材料からなるものである。
【0020】
カップ体3は、カップ底方向側面先端部が小径化した縮径円筒部と、開口端方向側面部が大径化した大径円筒部の2段にプレス成形され、開口端の端が折り曲げられて円盤状のフランジ部12が形成されている。このカップ体3の底には脆弱部20が設置されている。脆弱部20の具体的な形態としては、カップ体に肉薄部の設置が挙げられ、より具体的には、複数の線状の切欠きが配置されている。カップ体内に充填されるガス発生剤2の燃焼時に、この脆弱部20が破断され、図示しないシートベルトプリテンショナー機構に生成ガスが圧力を伴い放出される機構である。
カップ体3に使用される材質は、アルミニウム、鉄、銅、鋼、またはこれらの合金、並びに樹脂等の材質から選択され、鍛造加工、プレス加工、絞り加工、モールド加工等により成形される。本発明において、アルミニウム製、またはアルミニウム合金製のカップ体を採用することが好ましい。なお、燃焼したガス発生剤2による発生ガスの出力に応じて、当該カップ体の材質及び厚みを選定することにより、カップ体3とホルダ5の固定を確実にする。
【0021】
カップ体3に配置されるフランジ部12は、後述するホルダ嵌合溝6に嵌る縁幅を有する円盤形状である。すなわちフランジ部12は嵌合溝6と同形状の連続した円盤状であり、嵌合溝幅より小さい縁幅である。フランジ部12はかしめによりホルダ5に固定されるものであり、かしめ力において固定が保たれるよう、かしめ固定されたフランジ部の板厚み(T)は少なくとも0.1mm以上の板厚みを必要とする。より好ましくはフランジ部の板厚み(T)は0.3mm以上を必要とする。
カップ体のフランジ部12とホルダ5の保持部において、その間にはシール剤(図示しない)が塗布されている。このシール剤は必須のものではないが、ホルダ5とカップ体3との間を確実に気密封止するために必要に応じて塗布される。シール剤としては、透湿性の低い耐久性に優れた材料の利用が好ましく、たとえばシリコーン系シール剤を利用することが好ましい。また、溶剤に固形成分を溶解させたシール剤を利用する場合には、シール剤の塗布乾燥後にハウジングのかしめ固定を行なうとよい。
【0022】
ホルダ5は中空略円筒状の部材からなり、たとえばアルミニウム合金等を用いた成形品にて構成される。ホルダ5は、点火器4を挿入し基部19を覆うように保持する点火器保持部8を有する。この点火器保持部8は、かしめにより点火器の基部19上下方向から挟持して保持する。また、他端方向には円筒状のコネクター挿入部16が設置され、孔13にて点火器保持部8側と連通している。
ホルダ5の円筒外周部には、カップ体3を保持するための嵌合溝6、及びかしめ鍔7を具えている。カップ体3はフランジ部12が嵌合溝6に嵌合され、かしめ鍔7がフランジ部12と係合して、ホルダ5にかしめ固定されている。したがってかしめ鍔7は、かしめによりホルダ5の円筒中心部側に塑性変形を受け、端部が中央側に縮径された形状である。
【0023】
本発明の第1実施形態に係るガス発生器1は、前記嵌合溝6の底部の中央部分に、1本の連続した円周溝10が形成されており、更にフランジ部12に、前記円周溝10に係合する凸部11が形成されていることを特徴とするものである。具体的には図1の点線で囲った部分を拡大した図2に示すような構造を有する。以下に、図2を用いて説明する。
【0024】
カップ体3に形成されるフランジ部12は、ホルダ5の嵌合溝6に挿入されている。更にホルダ5のかしめ鍔7は、フランジ部12の外壁部と当接する形態で屈曲変形され、ホルダ5の内側方向に縮径している。すなわち、かしめ鍔7は、カップ体3のフランジ部12の板厚み(T)でホルダ内側方向に折り曲げられた形状である。前記嵌合溝6の底部の中央部分に1本の連続した円周溝10が形成されている。フランジ部12のカップ体3の内壁側は、嵌合溝6の底部と当接配置され、更にフランジ部12は、前記円周溝10に相対する位置に凸部11が形成されている。前記円周溝10と前記凸部11は互いに係合するよう配置されている。本願の第1実施形態に係るガス発生器1は、カップ体3が、かしめ鍔7と嵌合溝6によりかしめ固定され、且つ円周溝10とフランジ凸部11が係合する機構を併せることにより、カップ体3のホルダ5への強固な固定を達成し得るものである。
【0025】
カップ体フランジ部12に形成される凸部11は、カップ体フランジ部12がホルダ嵌合溝6に挿入され、カップ体3をホルダ5にかしめ固定する際に、フランジ部12が、かしめ鍔7によるかしめにより円周溝10に相対する部分において塑性変形され、形成されるものである。したがって、かしめ鍔7を変形させる力は、かしめ鍔7を塑性変形させて縮径部を形成させると共に、且つフランジ部12を塑性変形させ凸部11を形成させるに十分な力を加えることが必要である。係る方法を採用することにより、凸部11は違いなく円周溝10に係合する配置を取り得る。
【0026】
本願の第1実施形体に係るガス発生器1は、前記構成によりカップ体3がホルダ5に強固に保持されるものであるが、カップ体3及びホルダ5の各部構成における好適な範囲を採用することにより、更に確実にその機能が発揮されるものである。
具体的には、円周溝10は、その溝幅(W)が嵌合溝6の溝幅(L)に対して、W/Lが0.2〜0.6の範囲において配設されることが好ましい。または円周溝10は、その深さ(D)とカップ体フランジ部12の板厚み(T)の比率(D/T)が0.3以上であることが好ましい。より好ましくはW/Lが0.2〜0.6の範囲であり、且つD/Tが0.3以上の相対配置で設置されたガス発生器を挙げることができる。嵌合溝6の底部に配設される円周溝10は、その溝幅(W)が小さい場合、すなわち嵌合溝との相対関係においてW/Lが0.2より小さい場合、フランジ部12の凸部11との十分な係合が達せられない。また、円周溝10の溝幅(W)が大きく、すなわちW/Lが0.6より大きい場合、フランジ部12の凸部11と円周溝10との係合は確保されるものの、凸部11の強度が弱くなり、カップ体3とホルダ5の係止強度が低下する。また、円周溝10の深さ(D)が、カップ体フランジ部12の板厚み(T)に対して十分な深さがない場合、フランジ部12に配設される凸部11も自ずと小さいものとなり、カップ体3とホルダ5の十分な係止強度が得られない。したがって、円周溝10の深さ(D)とフランジ部12の板厚み(T)の相対的な比率(D/T)は0.3以上であることが好ましい。
更に具体的には、ホルダ5の嵌合溝6は溝幅(L)が0.8〜3.2mmで設置されることが好ましい。嵌合溝幅が0.8mmより小さい場合、カップ体フランジ部12がかしめ鍔7に覆われる部分が小さいため保持力が十分でなく、カップ体の確実な固定が困難である。嵌合溝幅が3.2mmより大きい場合、当該ガス発生器の大径化をきたすため好ましくない。かしめ鍔7の高さは0.8〜3.2mmで設置される。かしめ鍔7はカップ体のフランジ部12を覆い縮径する形状で屈曲しているが、そのかしめ鍔7の高さとは嵌合溝6の底部から前記縮径端部までの長さを指す。かしめ鍔7の高さがこの設定範囲を外れる場合、カップ体保持力が不十分となる場合や、当該小型ガス発生器の大径化をきたし不都合が生じる。かしめ固定されたフランジ部12の板厚み(T)は0.3〜0.7mmに設定されることが好ましい。フランジ部12の板厚みが0.3mmより小さい場合、凸部11が形成される際、フランジ部12の肉薄化のためカップ体3の機械的強度低下が著しく、結果としてカップ体保持力が低下する。また0.7mmより大きい場合、かしめ鍔7の大型化を要するため好ましくない。
【0027】
更に前記嵌合溝底部の中央部分に形成される円周溝10は、円周溝の溝幅(W)が0.2〜0.8mm、深さ(D)が0.1〜0.8mmの範囲において形成されることが好ましい。円周溝10の溝幅(W)が0.1mmより小さい場合、凸部11と円周溝10との十分な係合が達せられない。またかしめ鍔7のかしめによるフランジ部12の塑性変形による凸部11形成が十分に達せられない。円周溝10の溝幅(W)が0.8mmより大きい場合、フランジ部12の肉薄化が懸念される。一方、円周溝10の深さ(D)が0.2mmより小さい場合、凸部11と円周溝10との十分な係合が達せられない。またかしめ鍔7のかしめによるフランジ部12の塑性変形にて、凸部11が十分に形成されない。円周溝10の深さ(D)が0.8mmより大きい場合は、ホルダ5全体強度の低下が懸念される。したがってカップ体3及びホルダ5の各部構成における好適な設計範囲を外れる場合、円周溝10と凸部11との係合、並びにかしめ鍔7によるかしめ固定強度が達成されず、カップ体3とホルダ5の十分な保持力が確保されない。
第1の実施形態におけるさらに好ましい設計数値において、嵌合溝6の溝幅(L)は1.2〜2.4mm、かしめ鍔7高さは1.2〜2.4mmと設定されるものである。また、円周溝10は溝幅(W)が0.4〜0.7mm、深さ(D)が0.3〜0.7mmと設定されるものである。そして円周溝10は、その溝幅(W)が嵌合溝6の溝幅(L)に対して、W/Lが0.2〜0.6の範囲において配設されることが好ましい。または円周溝10は、その深さ(D)とカップ体フランジ部12の板厚み(T)の比率(D/T)が0.3以上であることが好ましい。
【0028】
図7に、従来技術によるガス発生器の断面図を提示した。従来の小型ガス発生器301は、カップ体303の開口端部にフランジ部312が形成される。またホルダ305は、カップ体303を保持するため、最外殻円周部に、カップ体のフランジ部303を挿入する嵌合溝306、及びカップ体のフランジ部312を固定する円筒状で端部がホルダ内側方向に縮径しているかしめ鍔307を具えている。カップ体303は、フランジ部312を嵌合溝306に挿入し、かしめ鍔307をかしめることにより端部が中央側に縮径され、ホルダ305に固定されている。係る構成により、カップ体303、点火器304、及びホルダ305に囲まれて区画される燃焼室309が形成される。しかしながら、従来技術によるカップ体とホルダとの固定、及び燃焼室内の気密性に確保に関し、フランジ部312を嵌合溝306とかしめ鍔307による挟み込み機構による固定では充分且つ確実であるとは言えず、カップ体とホルダのより強固な固定方法の確立が希求されている。本発明に係るガス発生器は、その課題を解決し得るものである。
【0029】
次に、図1に示す本発明の第1実施形態に係るガス発生器1の組立作業の要領を、同図に基づき説明する。まず円筒形状のホルダ5に、点火器4を電極ピン14,15側から挿通し、点火器4をOリング17を介してホルダ5の円筒状の点火器保持部8に収納するように装着する。次いで、点火器の基部19を覆うようにして、点火器保持部8を変形させて、点火器4をホルダ5にかしめ固定して一体に装着する。次に、点火器が装着されたホルダ5を、予めガス発生剤2が充填されているカップ体3に挿入する。このとき、円筒形状ホルダ5の嵌合溝6にカップ体3のフランジ部12を嵌合し、かしめ鍔7をかしめ固定する。この際、当該フランジ部12は、かしめ鍔7のかしめにより塑性変形を受け、嵌合溝12底部に配置された円周溝10に相対する部位に、凸部11が形成される。かしめ鍔7の塑性変形、及びフランジ部12の塑性変形による凸部11の形成のため、かしめ鍔7のかしめ力は、15〜35kNが必要である。
【0030】
上記したガス発生器1が作動し、シートベルトプリテンショナー装置が安全装置として機能する原理を以下に説明する。まず、車両が衝突すると、衝突センサーから衝突検出信号が発信され、電気制御ユニット(ECU)を介し、かかる信号を点火器4が受信する。衝突を検知した際には、電極ピン14,15を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、図示しない点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎(高温ガスおよび熱粒子)は、ガス発生剤2を点火する。抵抗体に電流が流れてから点火装置が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。カップ体3、円筒形状ホルダ5および点火器4によって区画形成される燃焼室9にはガス発生剤2が充填されている。ガス発生剤2は、点火器4の起動により発生する高温の火炎によって着火、燃焼し、燃焼に伴いガス発生剤2から多量のガスを発生させる。発生したガスは、燃焼室9内を所定内圧以上として、カップ体3の脆弱部20を破裂開放し、プリテンショナー機構に送り込まれる。その結果、ガス圧力によりプリテンショナー機構が作動し、シートベルトが引っ張られ、乗員の安全性が確保されることとなる。
シートベルトプリテンショナー機構を正確に作動させるためには、当該ガス発生器は、プリテンショナー機構へ規定のガス圧力を、指向性をもたせて発生させる必要がある。本発明に係る小型ガス発生器1は、ガス発生剤2の燃焼に伴い高温ガスが生成した場合において、カップ体のフランジ部12と、円筒形状ホルダの嵌合溝6及びかしめ鍔7との接合部の確実な固定、及び気密封止が達成されていることから、燃焼室9内の内圧を十分に確保することができる。尚且つ、燃焼室内圧が十分に高まった場合において、当該接合部分においてカップ体3の抜けや圧力破断がなく、所定のガス噴出口であるカップ体3の底面切り欠き部20を介してシートベルトプリテンショナー機構に高圧ガスを導出することができる。本願に係る小型ガス発生器を適用したシートベルトプリテンショナー機構は、所定のガス圧力を所定の方向に起動ガスを送り込まれるため、所定の作動時間において所定のシートベルト巻取り力で作動できる。
【0031】
シートベルトプリテンショナー機構を起動させるためのガス発生剤2としては、無煙火薬(ニトロセルロース)の成形体や、含窒素有機化合物と酸化剤を含む非アジ化系組成物の成形体などが用いられる。また、近年においては、一酸化炭素などの有害成分の生成量が極めて少ない非ニトロセルロース系ガス発生剤が、シートベルト装置のプリテンショナー用のガス発生剤として利用されるようになっている。ガス発生剤2の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものが利用される。また、成形体内部に孔を有する有孔状(たとえば、マカロニ状や蓮根状等)の成形体も利用されている。これらの形状は、ガス発生器が組み付けられるユニットの仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が変化するように最適の形状が選択される。また、ガス発生剤の形状の他にも、ガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズが適宜選択される。
【0032】
ガス発生剤2の充填量は、組み付けられるユニットの仕様に応じて適宜変更されるが、通常200〜2000mg程度のガス発生剤が用いられ装填される。一般的な仕様の場合、ガス発生剤の充填量は400〜1000mgである。しかしながら、当該小型ガス発生器の多様な利用に対応するため、より強い駆動力を発揮するガス発生器の開発が進められており、ガス発生剤装填量の増量が検討されている。具体的には、ガス発生剤を1000〜2000mg充填した高出力ガス発生器の開発が進められている。このような高出力型ガス発生剤の場合、発生ガスに対する耐久性基準がより高い水準のガス発生器を要求される。本願に係るガス発生器1は、従来構成によるガス発生器301と比較し、カップ体3とホルダ5における保持力が格段に優れるものであり、高出力型ガス発生器において好適に採用し得るものである。
【0033】
<第2実施形態>
次に、図3及び図4を用いて、本発明の第2実施形態に係るガス発生器101について説明する。図3は本願のガス発生器に係る第2実施形態の断面図であり、図4は図3の点線で囲った部分の拡大断面図である。なお、本実施形態において符号が付された部位のうち下2桁の数字が、第1実施形態の符号と同じ数字のものは同様の部位であり、説明を省略することがある。
【0034】
本実施形態のガス発生器101は、円筒形状ホルダ105の外周部に嵌合溝106が形成されている。この嵌合溝底部における最外周側で、かしめ鍔107に隣接する位置に、1本の連続した円周溝110が形成されている。カップ体103の開口端部にはフランジ部112が形成され、これが嵌合溝106に挿入され、ホルダ105内側に縮径した形状のかしめ鍔107によりかしめ固定されている。フランジ部112には、前記円周溝110と相対する位置に凸部111が形成され、この凸部111と円周溝110が係合するよう配置されている。本願の第2実施形態に係るガス発生器101は、カップ体103のフランジ部112が、かしめ鍔107と嵌合溝106によって挟み込み固定され、且つ嵌合溝106の最外周部に形成された円周溝110とフランジ部112の凸部111が係合する機構を併せることにより、カップ体103のホルダ105への強固な固定を達成し得るものである。
【0035】
以下に前記ガス発生器101の、更に具体的な説明をする。かしめ鍔107はかしめにより開口端が縮径した形状に塑性変形され、フランジ部112の外壁部と当接配置する。すなわち、かしめ鍔107は、カップ体103のフランジ部112の板厚み(T)でホルダ内側方向に折り曲げられた形状である。フランジ部112の凸部111は、フランジ部112の円周溝110に相対する位置が、かしめ鍔107のかしめ力により、塑性変形され形成されるものである。したがって、かしめ鍔107をかしめる力は、かしめ鍔107を塑性変形させて縮径部を形成させるとともに、フランジ部112を塑性変形させて凸部111を形成させるように、十分な応力を加えることが必要である。係る方法を採用することにより、凸部111は違いなく円周溝110に係合する配置を取り得る。この第2実施形態に係るガス発生器において、フランジ部112は嵌合溝108から円周溝110に延設する形状に沿った湾曲した形状に変形し、その先端部が円周溝110に落とし込まれる形状で凸部111を形成するものである。したがって、この第2実施形態は、フランジ部112の板厚み(T)変化を伴わない形態で凸部111が形成されるものであり、フランジ部112の板厚み(T)が比較的薄い肉厚のカップ体103の部材を用いたガス発生器において、好適に適用され得る形態である。
【0036】
本願の第2実施形態に係るガス発生器101は、前記構成によりカップ体103がホルダ105に強固に保持されるものであるが、カップ体103及びホルダ105の各部構成における好適な設計数値の範囲を採用することにより、更に確実にその機能が発揮されるものである。
具体的には、円周溝110は、その溝幅(W)が嵌合溝106の溝幅(L)に対して、W/Lが0.2〜0.6の範囲において配設されることが好ましい。または円周溝110は、その深さ(D)とカップ体フランジ部112の板厚み(T)の比率(D/T)が0.3以上であることが好ましい。より好ましくはW/Lが0.2〜0.6の範囲であり、且つD/Tが0.3以上の相対配置で設置されたガス発生器を挙げることができる。嵌合溝106の底部に配設される円周溝110は、その溝幅(W)が小さい場合、すなわち嵌合溝との相対関係においてW/Lが0.2より小さい場合、フランジ部112の凸部111との十分な係合が達せられない。また、円周溝110の溝幅(W)が大きく、すなわちW/Lが0.6より大きい場合、フランジ部112の凸部111と円周溝110との係合は確保されるものの、凸部111の強度が弱くなり、カップ体103とホルダ105の係止強度が低下する。また、円周溝110の深さ(D)が、カップ体フランジ部112の板厚み(T)に対して十分な深さがない場合、フランジ部112に配設される凸部111も自ずと小さいものとなり、カップ体103とホルダ105の十分な係止強度が得られない。したがって、円周溝110の深さ(D)とフランジ部112の板厚み(T)の相対的な比率(D/T)は0.3以上であることが好ましい。
具体的には、ホルダ105の嵌合溝106はフランジ部112が挿入される大きさであることが必須であるが、溝幅(L)が0.8〜3.2mmで設置されることが好ましい。より好ましくは溝幅(L)が1.2〜2.4mmである。かしめ鍔107の高さは0.8〜3.2mmで設置される。かしめ鍔はカップ体のフランジ部112外壁部を覆い縮径する形状で屈曲しているが、そのかしめ鍔107の高さとは、嵌合溝6の底部から前記縮径端部までの長さを指す。より好ましくは、かしめ鍔107の高さは1.2〜2.4mmで設計される。かしめ固定されたフランジ部112のフランジ縁幅は、前記嵌合溝106の溝幅(L)より小さいものである。フランジ部112は塑性変形し凸部111を形成し得るために、その板厚み(T)は重要因子であり0.3〜0.7mmに設定されることが好ましい。
【0037】
更に、前記嵌合溝106底部の最外周部に形成される円周溝110は、円周溝110の溝幅(W)が0.2〜0.8mm、深さ(D)が0.1〜0.8mmの範囲において形成されることが好ましい。円周溝110の溝幅(W)が0.2mmより小さい場合、凸部111と円周溝110との十分な係合が達せられない。またかしめ鍔107のかしめによる塑性変形にて凸部111が十分に形成されない。円周溝110の溝幅が0.8mmより大きい場合、フランジ部112の肉薄化が懸念される。また、円周溝110の深さ(D)が0.1mmより小さい場合、凸部111と円周溝110との十分な係合が達せられない。またかしめ鍔107のかしめによる塑性変形にて凸部111が十分に形成されない。一方、円周溝110の深さが0.8mmより大きい場合は、ホルダ105全体強度の低下が懸念される。したがってカップ体103及びホルダ105の各部構成における好適な設計範囲を外れる場合、円周溝110と凸部111との係合、並びにかしめ鍔107によるかしめ固定強度が達成されず、カップ体103とホルダ105の十分な保持力が確保されない。
第2の実施形態においてより好ましい設計数値において、嵌合溝106の溝幅(L)は1.2〜2.4mm、かしめ鍔107の高さは1.2〜2.4mmで設定されるものである。また、当該円周溝110は溝幅(W)が0.4〜0.7mm、深さ(D)が0.3〜0.7mmで設定されるものがより好ましい。更に円周溝110は、その溝幅(W)が嵌合溝106の溝幅(L)に対して、W/Lが0.2〜0.6の範囲において配設されることが好ましい。または円周溝110は、その深さ(D)とカップ体フランジ部112の板厚み(T)の比率(D/T)が0.3以上であることが好ましい。
本願の第2の実施形態に係るガス発生器101は、該フランジ部112に形成される凸部111が円周溝110に係合する構成により、カップ体103の確実な固定を達成するものであり、縦方向保持力が従来技術と比較して優位に向上したガス発生器を提供できる。該接合部の確実な接合に伴い、燃焼室の気密性も十分確保されるものである。
【0038】
<第3実施形態>
次に、図5及び図6を用いて、本発明の第3実施形態に係るガス発生器201について説明する。図5は本願のガス発生器に係る第3実施形態の断面図であり、図6は図5の点線で囲った部分の拡大断面図である。なお、本実施形態において符号が付された部位のうち下2桁の数字が、第1実施形態の符号と同じ数字のものは同様の部位であり、説明を省略することがある。
【0039】
本実施形態のガス発生器201は、円筒形状ホルダ205の外周部に嵌合溝206が形成されている。この嵌合溝206底部において、最外周側のかしめ鍔207と隣接する位置、及び最内周側の点火器保持部208に隣接する位置に、それぞれ連続した円周溝210a、210bが形成されている。カップ体203の開口端部にはフランジ部212が形成され、これが嵌合溝206に挿入され、ホルダ205内側に縮径した形状のかしめ鍔207によりかしめ固定されている。フランジ部212には、円周溝210a、210bと相対する位置に、それぞれ凸部211a、211bが形成されている。凸部211aはフランジ部212の先端部が円周溝210aに沿うように湾曲して形成され、凸部211bはフランジ部212の内周部分が円周溝210bに落とし込まれるように形成される。この凸部211a、211bと円周溝210a、210bがそれぞれ係合するよう配置されている。本願の第3実施形態に係るガス発生器201は、カップ体203のフランジ部212が、かしめ鍔207と嵌合溝206により挟み込み固定され、且つ嵌合溝206の最外周部及び最内周部にそれぞれ形成された円周溝210a、210bとフランジ部の凸部211a、211bが係合する機構を併せることにより、カップ体203のホルダ205への強固な固定を達成し得るものである。
【0040】
以下にガス発生器201の更に具体的な説明をする。かしめ鍔207はかしめにより開口端が縮径した形状に塑性変形され、フランジ部212の外壁部と当接配置する。すなわち、かしめ鍔207は、カップ体203のフランジ部212の板厚み(T)でホルダ内側方向に折り曲げられた形状である。フランジ部212の凸部211a、211bは、フランジ部212の円周溝210a、210bに相対する位置が、かしめ鍔207をかしめる力により、塑性変形され形成されるものである。したがって、かしめ鍔207のかしめ力は、かしめ鍔207を塑性変形させ縮径部を形成させ、且つフランジ部212を塑性変形させ凸部211a、211bを形成させるよう、十分な応力を加えることが必要である。係る方法を採用することにより、凸部211a、211bは違いなく円周溝210a、210bに係合する配置を取り得る。この第3実施形態に係るガス発生器において、2本の円周溝210a、210bの配置に伴い、フランジ部212に2本の凸部211a、211bが形成され、係る構成で2箇所の係合部が設置される形態である。したがって、第3の実施形態は円周溝と凸部の2箇所の係合によるより強い保持力が発揮され得る。
【0041】
本願の第3実施形体に係るガス発生器201は、前記構成によりカップ体203がホルダ205に強固に保持されるものであるが、カップ体203及びホルダ205の各部構成における好適な設計数値の範囲を採用することにより、更に確実にその機能が発揮されるものである。
具体的には、円周溝210a又は210bは、それぞれの溝幅(Wa又はWb)が嵌合溝206の溝幅(L)に対して、Wa(又はWb)/Lが0.2〜0.6の範囲において配設されることが好ましい。または円周溝210a又は210bは、それぞれの深さ(Da又はDb)とカップ体フランジ部212の板厚み(T)の比率(Da(又はDb)/T)が0.3以上であることが好ましい。より好ましくはWa(又はWb)/Lが0.2〜0.6の範囲であり、且つDa(又はDb)/Tが0.3以上の相対配置で設置されたガス発生器を挙げることができる。本の円周溝210a、210bは同一幅、同一深さであっても、異なる溝幅、溝深さであっても、前記範囲にされている円周溝であれば特に問題はない。嵌合溝206の底部に配設される円周溝210a又は210bは、その溝幅(Wa又はWb)が小さい場合、すなわち嵌合溝との相対関係においてWa(又はWb)/Lが0.2より小さい場合、フランジ部212の凸部211a又は211bとの十分な係合が達せられない。また、円周溝210a又は210bの溝幅(Wa又はWb)が大きく、すなわちWa(又はWb)/Lが0.6より大きい場合、フランジ部212の凸部211a又は211bと円周溝210a又は210bとの係合は確保されるものの、凸部211a又は211bの強度が弱くなり、カップ体203とホルダ205の係止強度が低下する。また、円周溝210a又は210bの深さ(Da又はDb)が、カップ体フランジ部212の板厚み(T)に対して十分な深さがない場合、フランジ部212に配設される凸部211a又は211bも自ずと小さいものとなり、カップ体203とホルダ205の十分な係止強度が得られない。したがって、円周溝210a又は210bの深さ(Da又はDb)とフランジ部212の板厚み(T)の相対的な比率(Da(又はDb)/T)は0.3以上であることが好ましい。
具体的には、ホルダ205の嵌合溝206はフランジ部212が挿入される大きさであることが必須であるが、溝幅(L)が0.8〜3.2mmで設置されることが好ましい。より好ましくは溝幅(L)が1.2〜2.4mmである。かしめ鍔207の高さは0.8〜3.2mmで設置される。かしめ鍔207はカップ体のフランジ部を覆い縮径する形状で屈曲しているが、そのかしめ鍔207の高さは嵌合溝206の底部から前記縮径端部までの長さを指す。より好ましくは、かしめ鍔207の高さは1.2〜2.4mmで設計される。かしめ固定されたフランジ部212は、前記嵌合溝206の溝幅(L)より小さいものであるが、塑性変形し凸部211a、211bを形成し得るために、その板厚み(T)は重要因子であり0.3〜0.7mmに設定されることが好ましい。
【0042】
更に前記嵌合溝206底部最外周部に形成される円周溝210a、210bは、円周溝210a、210bの溝幅(W)がそれぞれ0.2〜0.8mm、深さ(D)が0.1〜0.8mmの範囲において形成されることが好ましい。2本の円周溝210a、210bは同一幅、同一深さであっても、異なる溝幅、溝深さであっても、前記範囲にされている円周溝であれば特に問題はない。円周溝210a、210bの溝幅(W)が0.2mmより小さい場合、凸部211a、211bと円周溝210a、210bとの十分な係合が達せられない。またかしめ鍔207のかしめによる塑性変形にて、凸部211a、211bが十分に形成されない。円周溝210a、210bの溝幅(W)が0.8mmより大きい場合、フランジ部212の肉薄化が懸念される。また、円周溝210a、210bの深さ(D)が0.1mmより小さい場合、凸部211a、211bと円周溝210a、210bとの十分な係合が達せられない。またかしめ鍔207のかしめによる塑性変形にて凸部211a、211bが十分に形成されない。一方、円周溝210a、210bの深さが0.8mmより大きい場合は、ホルダ205全体強度の低下が懸念される。したがってカップ体203及びホルダ205の各部構成における好適な設計範囲を外れる場合、円周溝210a、210bと凸部211a、211bとの係合、並びにかしめ鍔207によるかしめ固定強度が達成されず、カップ体203とホルダ205の十分な保持力が確保されない。
第3の実施形態において更に好ましい設計において、嵌合溝206の溝幅(L)は1.2〜2.4mm、かしめ鍔207の高さは1.2〜2.4mmで設定されている。また、当該円周溝210a、210bは溝幅(W)が0.4〜0.7mm、深さ(D)が0.1〜0.7mmで設定されている。
本願の第3の実施形態に係るガス発生器201は、該フランジ部212に形成される凸部211a、211bと円周溝210a、210bにおいて2箇所の係合部を形成する構成により、カップ体203の確実な固定を達成するものであり、縦方向保持力、及び回転方向強度が従来技術と比較して優位に向上したガス発生器を提供できる。該接合部の確実な接合に伴い、燃焼室の気密性も十分確保されるものである。
【実施例】
【0043】
以下に本願に係るガス発生器の具体的な形態に関し、実施例を挙げ詳細に説明するとともに、その効果の検証を試験例を挙げて示す。
【0044】
実施例1
図1に示した円周溝10が嵌合溝6の中央部に設置されたガス発生器1が用いられた。ガス発生器のカップ体3はアルミニウム合金製、ホルダ5はアルミニウム合金製、嵌合溝部6の溝幅(L)=1.58mm、円周溝10の溝幅(W)=0.38mm、溝深さ(D)=0.5mmであり、フランジ部12板厚さ(T)=0.55mmであった。かしめ鍔7をかしめ荷重25kNにて縮径するようにかしめて、実施例1に係るガス発生器を製造した。
【0045】
実施例2
図3に示した円周溝110が嵌合溝106の最外周部に設置されたガス発生器101が用いられた。ガス発生器のカップ体103はアルミニウム合金製、ホルダ105はアルミニウム合金製、嵌合溝部106の溝幅(L)=1.58mm、円周溝110の溝幅(W)=0.79mm、溝深さ(D)=0.5mmであり、フランジ部112の板厚さ(T)=0.55mmであった。かしめ鍔107をかしめ荷重25kNにて縮径するようにかしめて、実施例2に係るガス発生器を製造した。
【0046】
実施例3
図5に示した円周溝210a、210bが嵌合溝206の最外周部、及び最内周部に設置されたガス発生器201が用いられた。ガス発生器のカップ体203はアルミニウム合金製、ホルダ205はアルミニウム合金製、嵌合溝部206の溝幅(L)=1.58mm、円周溝210a、210bの溝幅(W)はW(210a)=0.65mm、W(210b)=0.65mm、溝深さ(D)はD(210a)=0.15mm、D(210b)=0.15mmであった。フランジ部212の板厚さ(T)=0.40mmであった。かしめ鍔207をかしめ荷重25kNにて縮径するようにかしめて、実施例3に係るガス発生器を製造した。
【0047】
比較例1
図7に示したガス発生器301が用いられた。ガス発生器のカップ体303はアルミニウム合金製、ホルダ305はアルミニウム合金製、嵌合溝部306の溝幅(L)=1.58mmであった。フランジ部312の板厚さ(T)=0.55mmであった。かしめ鍔307をかしめ荷重25kNにて縮径するようにかしめて、比較例1に係るガス発生器を製造した。
【0048】
試験例1;カップ体押抜き試験
実施例1〜3、及び比較例1に係るガス発生器において、点火器(4,104,204,304)及びガス発生剤(2,102,202,302)を取り除き、燃焼室部分(9,109,209,309)に生じた空間にエポキシ樹脂を流し込み、これを固めたものを各ガス発生器のカップ体押抜き試験測定用供試サンプルとした。これに電極ピン(14,15など)の挿通用の孔(13、113,213,313)から押抜き治具を挿入し、カップ体内側方向から押抜き力を徐々に加えた。カップ体がホルダから解離する負荷荷重値を読み取り、当該ガス発生器におけるカップ体押抜き力試験値とした。当該カップ体押抜き試験において押抜き力値の数値が大きいほどカップ体の縦方向における保持力が高いことを示す。各供試サンプルの試験結果を表1にまとめた。
【0049】
試験例2;カップ体の回転トルク試験
実施例1〜3、及び比較例1に係るガス発生器において、点火器(4,104,204,304)及びガス発生剤(2,102,202,302)を取り除き、燃焼室部分(9,109,209,309)に生じた空間にエポキシ樹脂を流し込み、これを固めたものを各ガス発生器のカップ体回転トルク測定用供試サンプルとした。供試サンプルのホルダ(5,105,205,305)を固定治具にて固定しトルク試験機にセットする。カップ体(3,103,203,303)に手動で回転負荷を加え、カップ体が回転し位置ずれが生じたトルク値を、回転トルク値とした。当該カップ体回転トルク試験において、回転トルク値の数値が大きいほどカップ体の横方向回転における保持力が高いことを示す。各供試サンプルの試験結果を表1にまとめた。
【0050】
試験例3;気密性試験
実施例1〜3、及び比較例1に係るガス発生器を供試サンプルとした。各供試サンプルを一方の槽に入れた。次に、アルミニウム合金の塊から、各試供サンプルと外形は同形状で内部空間は存在しないマスターサンプルを削り出して準備し、他方の槽に入れる。槽同士は差圧計を通して繋げた。そして、両方の槽を空気にて900kPaに加圧し、そのときに生じる差圧を検知し、気密性試験値とした。当該気密性試験において、気密性試験値の数値が小さいほど試供サンプルのカップ体とホルダとの接合部における気密性が高いことを示す。各供試サンプルの試験結果を表1にまとめた。
【0051】
表1:試験例1〜3の試験結果一覧
試験例1 試験例2 試験例3
供試試料 押抜き試験 回転トルク試験 気密性試験
実施例1 カップ体破断(2300N) 8.16N・m 34Pa
実施例2 カップ体破断(2100N) N.T. N.T.
実施例3 カップ体破断(2300N) 6.32N・m 36Pa
比較例1 1280N(カップ体抜け) 4.89N・m 34Pa
N.T.;未測定
【0052】
本願に係るガス発生器である実施例1〜3は、試験例1のカップ体の押抜き試験において何れの供試サンプルもカップ体の母材が破断するものであり、実施例におけるカップ体のホルダかしめ部による縦方向保持力は計測不能であった。その際の押抜き負荷荷重は2100〜2300Nを指し、カップ体(3,103,203)とホルダ(5,105,205)との縦方向保持力は、当該カップ体母材の機械的強度以上であった。一方、従来構成によるガス発生器である比較例1は、負荷荷重値が1280Nにおいて、カップ体303がホルダ305のかしめ鍔307と嵌合溝308により構成されるかしめ部分からすり抜け、カップ体303が脱離する現象が観察された。したがって、実施例1〜3に係るガス発生器のカップ体の縦方向保持力は、比較例より格段に向上していることが明らかとなった。また試験例2において、カップ体の横回転方向の保持力を検証したところ、実施例1及び3は比較例1より優位に高い回転トルク抵抗性を示した。更に試験例3にて、本願に係るガス発生器はカップ体とホルダにおける気密性も十分に確保されていることが証明された。これら試験例1〜3の結果から、本願に係るガス発生器は、当該カップ体の縦方向及び横方向の双方向に対して、従来構成のガス発生器と比較して高い保持力を有し、且つ十分な気密性を保っていることが明らかとなった。特に縦方向保持力において顕著に優れた向上効果が確認されたことから、本発明のガス発生器は高い縦方向保持力が要求される高出力型ガス発生器へ好適に適用し得る構造であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願に係るガス発生器は、車両搭乗者安全装置の起動装置として機能し、特に自動車のシートベルトプリテンショナー等を起動させるための小型ガス発生器として好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0054】
1,101,201,301 小型ガス発生器
2 ガス発生剤
3,103,203,303 カップ体
4,104,204,304 点火器
5,105,205,305 ホルダ
6,106,206,306 嵌合溝
7,107,207,307 かしめ鍔
8 点火器保持部
9 燃焼室
10,110,210a,210b 円周溝
11,111,211,311 凸部
12,112,212,312 フランジ部
16 コネクター挿入部
L 嵌合溝幅
W 円周溝幅
D 円周溝深さ
T フランジ部厚み



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭乗者拘束装置を作動させるためのガス発生器であって、ガス発生剤と、有底円筒形状で開口部にフランジが延設されているカップ体と、電気信号により起動される点火機構を有する点火器と、前記カップ体のフランジ部を嵌合する嵌合溝、及び前記カップ体のフランジ部をかしめ固定するかしめ鍔、及び前記点火器をかしめ固定する円筒状の点火器保持部を有し、前記カップ体と前記点火器を固定する円筒形状のホルダと、前記カップ体と、前記点火器と、前記ホルダとに囲まれて区画形成される燃焼室を備え、前記燃焼室に前記ガス発生剤が収容されたガス発生器であって、
前記嵌合溝の底部に少なくとも一つの連続した円周溝が形成され、前記カップ体のフランジ部に凸部が形成され、前記円周溝と前記凸部が係合するように配設されていることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記円周溝の溝幅(W)と前記嵌合溝の溝幅(L)の比率(W/L)が0.2〜0.6である請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記円周溝の深さ(D)と前記カップ体フランジ部の板厚み(T)の比率が(D/T)が0.3以上である請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記円周溝の溝幅が0.2〜0.8mmの円周溝であり、前記嵌合溝の溝幅が0.8〜3.2mmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記円周溝の深さが0.1〜0.8mmの円周溝であり、前記カップ体フランジ部の板厚みが0.3〜0.7mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記嵌合溝の溝幅が1.2〜2.4mmであり、前記カップ体外壁面から連続しているフランジ外壁面と、前記かしめ鍔の前記フランジに接する側の面の形状が合致して当接している請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記円周溝が前記嵌合溝の底部の最外周部に形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記円周溝が前記嵌合溝の底部の最外周部及び最内周部に1つずつ形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記ガス発生剤が総充填量が1200〜2000mgのガス発生剤である請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項10】
ガス発生剤と、有底円筒形状で開口部に凸部を有するフランジが延設されているカップ体と、電気信号により起動される点火機構を有する点火器と、前記カップ体のフランジ部を嵌合する嵌合溝、及び前記カップ体のフランジ部をかしめ固定するかしめ鍔、及び前記点火器をかしめ固定する円筒状の点火器保持部、嵌合溝の底部に少なくとも一つの連続した円周溝を有し、前記カップ体と前記点火器を固定する円筒形状のホルダと、前記カップ体と、前記点火器と、前記ホルダとに囲まれて区画形成される燃焼室を備え、前記燃焼室に前記ガス発生剤が収容されたガス発生器の製造方法であって、
(i)前記円筒形状のホルダに点火器を取付け、円筒状点火器保持部を縮径するように点火器をかしめ固定し、点火器付きホルダを作成する点火器取付け工程と、
(ii)ガス発生剤を充填したカップ体を、前記点火器付きホルダに嵌合する嵌合工程と、
(iii)前記ホルダのかしめ鍔を縮径するようにかしめ固定する際に、前記カップ体のフランジ部を前記嵌合溝と前記かしめ鍔で挟み込み、それと同時に、ホルダの円周溝に相対するフランジ部をかしめ鍔を介したかしめ力により塑性変形させ、凸部を形成させるかしめ工程、
を含む、ガス発生器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218932(P2011−218932A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89111(P2010−89111)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】