説明

ガス発生装置

【課題】金属等の固体のガス発生剤と反応液とを接触させて水素ガスや酸素ガスなどを発生させる燃料電池用水素ガス発生装置、医療現場用、災害時などでの酸素ガス発生装置などのガス発生装置を提供する。
【解決手段】固体のガス発生剤と反応液とを有し、前記ガス発生剤と反応液はそれぞれ別々の収容容器21,31に収容され、それぞれの収容容器が毛管連結することで、ガス発生剤収容容器内に反応液が供給され、ガスを発生するガス発生装置Aであって、ガスの圧力が高まると、毛管連結が分断されることを特徴とするガス発生装置。
【効果】簡易な機構により、ガスが消費されていないときは、ガスの発生を自動的にコントロールできるため、過剰なガスの発生を制御することができるガス発生装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属等の固体のガス発生剤と反応液とを接触させて水素ガスや酸素ガスなどを発生させるガス発生装置に関し、特に、燃料電池に水素ガスを供給するための技術として有用なガス発生装置、並びに、メンタルヘルスケア用、医療現場用、災害時などでの酸素ガス発生装置として有用なガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器用の燃料電池として、金属と水溶液から水素ガスを取り出し、燃料として用いる固体高分子形燃料電池(PEFC)の開発が盛んになってきている。
一般に、水素を燃料として用いるタイプの燃料電池は、出力がダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の場合と比べて高いという特徴を有している上に、発電部自体はシンプルな構造にできるという特徴を有している。
【0003】
従来において、燃料電池用の水素ガス発生装置としては、例えば、水を収容するためのタンクと、水との化学反応により水素を生成する金属を収容する反応容器と、該反応容器を収容するための収容部と、該収容部に接して設けられ、前記反応容器を加熱するための加熱手段と、前記タンクから前記収容部に収容された反応容器に水を供給する導入管と、前記反応容器内で生成した水素及び未反応の水を前記タンク内に導入するための戻り管と、該タンク内の水素及び水を排出するための前記タンクから延びる排出管とを含んでなり、前記反応容器が前記収容部に対して着脱可能であることを特徴とする水素発生装置(例えば、特許文献1参照)や、固体の水素発生剤と反応液とを反応させて水素を発生させる水素発生装置において、前記水素発生剤を複数に区分して収容する第1収容部と、前記反応液を複数に区分して収容する第2収容部と、前記第1収容部の各区分と前記第2収容部の各区分とを仕切る仕切部材を有し、その仕切部材を解除して前記第1収容部の各区分収容物と前記第2収容部の各区分収容物とを順次接触可能とする仕切手段とを備えることを特徴とする水素発生装置(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の水素発生装置では、一端水素ガス発生が始まると、それを止めることは困難であり、例えば、機器の使用を停止したとしても、水素ガス発生を止めることは困難であるという課題がある。また、水溶液をポンプ等で供給する場合であれば、ポンプからの総液量を制御することで、水素発生量を制御することは可能であるが、この場合は装置が大がかり且つ複雑であるため、小型の水素発生装置及び携帯機器用燃料電池用の燃料発生源としては不向きであった。
【0005】
更に、上記特許文献2の水素発生装置では、各区分に収容した水素発生剤と反応液とを仕切手段などにより順次接触させることにより水素ガスを発生させるものであるが、連続的な水素ガスの供給が一時的に止まったり、水素ガスの供給が十分に行われない場合があるなどの課題があり、また、水素発生に応じて反応を制御できるものではないので、機器の必要に応じて水素ガスを供給することができないという課題がある。
【0006】
一方、酸素ガス発生装置としては、例えば、反応液を内部に収容し、反応液を流出させるための開封可能なシール部を備えた第一容器と、第一容器を内部に収容し、反応液の流出速度を制御するための制御孔を備えた第二容器と、少なくとも第二容器と酸素発生剤とを内部に収容した第三容器とを含む携帯用酸素発生器であって、携帯用酸素発生器の最外殻の容器に酸素を外部へ供給するための排出口が備えられている携帯用酸素発生器(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、この特許文献3に記載の酸素発生器は、酸素の発生速度を調節することができるが、上記特許文献1の水素発生装置と同様に、一端酸素ガス発生が始まると、それを制御することが困難であったりするなどの課題がある。
【特許文献1】特開2004−149394号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2006−327871号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2004−168569号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のガス発生装置における課題等に鑑み、これを解消するためになされたものであり、水素ガス、酸素ガスなどのガス発生を簡便な機構で停止させることにより、過剰な水素ガスや酸素ガスの発生を制御できるガス発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、固体のガス発生剤と反応液とを有し、前記ガス発生剤と反応液はそれぞれ別々の収容容器に収容され、それぞれの収容容器が特定の手段で連結することで、ガス発生剤収容容器内に反応液が供給され、ガスを発生するガス発生装置において、ガスの圧力が高まると、上記連結を特定の機構で分断させることにより、上記目的のガス発生装置が得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(10)に存する。
(1) 固体のガス発生剤と反応液とを有し、前記ガス発生剤と反応液はそれぞれ別々の収容容器に収容され、それぞれの収容容器が毛管連結することで、ガス発生剤収容容器内に反応液が供給され、ガスを発生するガス発生装置であって、ガスの圧力が高まると、毛管連結が分断されることを特徴とするガス発生装置。
(2) 発生するガスが、水素ガス又は酸素ガスであることを特徴とする請求項1記載のガス発生装置。
(3) ガス発生剤収容容器と反応液収容容器とに、毛管力を有する多孔体が設けられると共に、それぞれが接触することにより毛管が連結され、反応液が供給されることを特徴とする請求項1又は2記載のガス発生装置。
(4) ガスの圧力が高まると、反応液収容容器又はガス発生剤収容容器がスライドすることで、多孔体が非接触となり、毛管連結が分断されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のガス発生装置。
(5) 反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器とは弾性部材の弾性力によって、接続されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のガス発生装置。
(6) 反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器とは弾性部材の弾性力によって、分断されており、ガスの消費に伴う負圧によって接続されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のガス発生装置。
(7) 多孔体は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体の何れか一つから構成されていることを特徴とする請求項3〜6の何れか一つに記載のガス発生装置。
(8) 反応液は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体の何れか一つからなる毛管力を有する反応液吸蔵体に吸蔵されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載のガス発生装置。
(9) 固体のガス発生剤は、下記A群から選ばれる金属又は下記B群から選ばれる触媒から構成されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載のガス発生装置。
A群:鉄、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、水素化ホウ素ナトリウム
B群:二酸化マンガン、白金
(10) 反応液は、水、酸類、アルカリ類、アルコール類、過酸化水素水の少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載のガス発生装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な機構により、ガスが消費されていないときは、ガスの発生を自動的にコントロールできるため、過剰なガスの発生を制御することができるガス発生装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら、詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明の実施形態の一例となるガス発生装置を示すものであり、図1はガス発生装置の概略断面図、図2はガス発生装置の縦断面図、図3は、ガス発生装置の反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器を詳細に説明するための縦断面図、図4は、ガス発生装置において、内圧が高まり、反応液収容容器がスライドし、毛管連結が分断された状態を説明するための縦断面図である。
【0012】
本実施形態のガス発生装置Aは、有底筒状となる装置本体10を備え、該装置本体10内の下方側に固体のガス発生剤20を収容した収容容器21が嵌合等により固着されると共に、上方側に、反応液を吸蔵した反応液吸蔵体30を収容した収容容器31がスライド自在に収容される構成となっている。
装置本体10は、ガス不透過化性等の耐久性を有する合成樹脂製等で構成されており、底部にガス排出口となる排出孔11が形成されると共に、該排出孔11に連通して筒状部12が形成されている。該筒状部12内には、密閉弁13がストッパー部材14により取り付けられている。
密閉弁13は、中央部にスリット孔13aが形成されており、金属性又は合成樹脂製のガス供給管15が装着自在となっている。この密閉弁13は、上記筒状部12に収容された際に、径方向に圧縮されることで、前記スリット孔13aが密閉され、装置10内で発生したガスは装置外へ排出されない状態となっている。この密閉弁13は、ガス透過性の低い材料から構成されるものが好ましく、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられ、通常の射出成形や加硫成形などによって製造することができる。
【0013】
ガス発生剤収容容器21は、収容するガス発生剤に対して反応性のない合成樹脂製等で構成されており、略筒状体で、底部に平板状の下部フィルター部材22を保持する保持部23を有している。このガス発生剤収容容器21内には、底部に平板状の下部フィルター部材22が保持されると共に、該下部フィルター部材22上に固体のガス発生剤20、上部フィルター部材24が収納され、空気置換孔25a、25aを有する樹脂製の蓋部材25が収容容器21の開口部に嵌合等により固着されている。また、上記固体のガス発生剤20に凹部20aが形成されると共に、上部フィルター部材24及び蓋部材25には貫通孔24a,25bが形成されている。この貫通孔24a,25bには、下部多孔体26が挿通されて凹部20aの底部まで装着されている。
上記下部フィルター部材22、上部フィルター部材24は、固体のガス発生剤20と反応液30との反応により発生するガスが透過する部材であり、例えば、平均孔径1〜100μmの細孔径を有するフッ素樹脂製などのガス透過性の樹脂板から構成されている。
【0014】
反応液収容容器31は、反応液に対して反応性のない合成樹脂製等で構成されており、下部が開口部31aとなる容器体であり、収容容器31内には反応液を吸蔵する毛管力を有する反応液吸蔵体30が収容されている。この反応液吸蔵体30は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体などから選択される毛管力を有する材質等から構成されている。
また、反応液収容容器31の開口部31aには、空気置換孔32a、32aを有する樹脂製の蓋部材32が嵌合等により固着されている。上記反応液吸蔵体30には、凹部30aが形成されると共に、蓋部材32には貫通孔32bが形成されている。この貫通孔32bには、上部多孔体33が挿通されて凹部30aの底部(図示では上部)まで装着されている。
この上部多孔体33及び上記下部多孔体26は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体などから選択される毛管力を有する材質から構成されており、上部多孔体33を下部多孔体26に毛管連結することにより、反応液吸蔵体30に吸蔵される反応液を上部多孔体33、下部多孔体26を介して固体のガス発生剤20に供給する構成となっている。なお、反応液吸蔵体30に吸蔵される反応液を上部多孔体33を介して下部多孔体26に効率良く供給できるように、上部多孔体33、下部多孔体26の毛管力(気孔率等)を調整することが好ましい。
【0015】
上記反応液吸蔵体30等が収容された反応液収容容器31は、装置本体10内の上方側に、スライド自在に収容されると共に、コイルスプリングなどの弾性部材34の弾性力により常時下方側に附勢されて反応液収容容器31とガス発生剤収容容器21とは上記弾性部材の弾性力によって接続される構成となっている。すなわち、弾性部材34の上端側は、装置本体10の上端開口部に嵌合等により固着される開口部40aを有する蓋本体40内に取り付けられると共に、下端側が反応液収容容器31の上部面に取り付けられて、反応液収容容器31を弾性部材34の弾性力により常時下方側に附勢されて反応液収容容器31とガス発生剤収容容器21とは上記弾性部材34の弾性力によって接続されている。これにより、十分な毛管連結を確保することができる。
また、反応液収容容器31の外周面の凹部31aには、発生したガスを装置本体10と反応液収容容器31の隙間35から漏出しないようにシリコーンゴム製等のシーリング部材36が取り付けられている。
【0016】
本発明に用いる固体のガス発生剤20、吸蔵体30に吸蔵される反応液は、発生せしめるガス種により種々の組み合わせを挙げることができ、例えば、水素ガスや酸素ガスであれば、固体のガス発生剤20として、下記A群から選ばれる金属又は下記B群から選ばれる触媒が挙げられ、また、反応液としては、水(精製水、イオン交換水等)、酸類(塩酸、硫酸等)、アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム水溶液等)、アルコール類(メタノール水溶液、エタノール水溶液等)、過酸化水素水の少なくとも1つを挙げることができる。
A群:鉄、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、水素化ホウ素ナトリウム
B群:二酸化マンガン、白金
なお、上記金属は反応液と反応して効率よくガスが発生できるように、例えば、粒状、粉末状、タブレット状等に構成することができる。また、固体のガス発生剤20の収容量、吸蔵体30への反応液の吸蔵量は、固体のガス発生剤の種類、反応液の種類、反応により発生するガス種などを考慮して夫々最適な量を収容することが好ましい。
【0017】
具体的な組み合わせとして、水素ガスであれば、例えば、固体のガス発生剤が鉄(還元鉄)、反応液が塩酸、固体のガス発生剤がマグネシウム、反応液が硫酸、固体のガス発生剤がアルミニウム、反応液が水、固体のガス発生剤が水素化ホウ素ナトリウム、反応液が硫酸等が挙げられる。
また、酸素ガスであれば、固体のガス発生剤が酸化マンガン、反応液が過酸化水素水等が挙げられる。
【0018】
このように構成される本実施形態のガス発生装置Aでは、図1〜図3に示すように、固体のガス発生剤20(例えば、還元鉄)と反応液(例えば、塩酸)とがそれぞれ別々の収容容器21,31に収容され、それぞれの収容容器21,31に挿着される毛管力を有する下部多孔体26,上部多孔体36を弾性部材36の弾性力により毛管連結することで、ガス発生剤収容容器21内に反応液が供給されて、水素ガスを発生することとなる。生成した水素ガスは、シーリング部材36により上方側へ漏出することなく、密閉弁13に挿入したガス供給管15を通過して装置本体10外へ排出することができる。この装置本体10外に水素ガス供給管を介して燃料電池本体に接続すれば、燃料電池用の水素ガス発生装置として有用となる。
【0019】
また、本実施形態のガス発生装置Aでは、上記毛管連結により水素が生成している状態で、水素が使用されない状態、例えば、ガス供給管15を密閉弁から取り外した場合等では、水素は密閉弁13により装置本体10外へ流出することがなく、装置10内に充満する水素ガス、具体的には、水素ガスの圧力は、上部フィルター部材29を通過して上部側に充満していき、水素ガスの内圧が更に高まると、反応溶液収容容器21がその圧力を受け、上記弾性部材34の弾性力よりも大きくなった場合に、図4に示すように、上方側にスライドし、下部多孔体26と上部多孔体36の毛管連結が分断する(非接触となる)ことにより、反応液の供給が止まり、水素ガスの発生が停止されることとなる。
従って、本実施形態のガス発生装置Aでは、簡便な機構により、しかも、電気的、人為的な制御をすることなく、水素ガスなどのガスが消費されていないときには、水素ガス等のガスの生成を自動的に停止させることができるので、過剰なガスの生成を抑制することができるものとなる。
【0020】
図5及び図6は、本発明の他の実施形態を示すガス発生装置を示すものであり、図5はガス発生装置の縦断面図、図6は、ガス発生装置において、内圧が低下し、反応液収容容器31がスライドし、毛管連結した状態を説明するための縦断面図である。なお、上記実施形態のガス発生装置Aと同様の構成は同一の図示符号を示してその説明を省略する。
本実施形態のガス発生装置Bは、発生ガスの圧力によって反応液収容容器31と、ガス発生剤収容容器21との毛管連結を分断するものではなく、反応液収容容器31とガス発生剤収容容器21は、弾性部材37の弾性力によって、分散されており、ガスの消費に伴う負圧によって、反応液収容容器31が下方に移動し、ガス発生剤収容容器21と毛管連結することを特徴とするガス発生装置である。
【0021】
このように構成される本実施形態のガス発生装置Bでは、固体のガス発生剤20(例えば、還元鉄)と反応液(例えば、塩酸)とがそれぞれ別々の反応液収容容器31と、ガス発生剤収容容器21とに収容し、これらの間に、弾性部材37が挿入されたものであり、通常時は、図5に示すように、連結が分断されており、水素ガス消費時に容器の内圧が低下することで、図6に示すように、反応液収容容器31が、ガス発生剤収容容器21へスライド(弾性部材37が収縮)し、毛管連結することで、水素ガス発生反応が始まりものである。
【0022】
この実施形態のガス発生装置Bにより生成した水素ガスは、漏出することなく、密閉弁13に挿入したガス供給管15を通過して装置本体10外へ排出することができる。この装置本体10外に水素ガス供給管を介して燃料電池本体に接続すれば、燃料電池用の水素ガス発生装置として有用となる。従って、本実施形態のガス発生装置Bは、反応液収容容器31と、ガス発生剤収容容器21とは弾性部材37の弾性力によって、分断されており、ガスの消費に伴う負圧によって接続される構成としたので、簡便な機構により、しかも、電気的、人為的な制御をすることなく、水素ガスなどのガスが消費されていないときには、水素ガス等のガスの生成を自動的に停止させることができるので、過剰なガスの生成を抑制することができるものとなる。
【0023】
本発明のガス発生装置は、上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。
例えば、上記実施形態において、水素ガスの発生装置について説明したが、固体のガス発生剤20を酸化マンガンとし、反応液を、例えば、過酸化水素水とし、それぞれを別々の収容容器21,31に収容すれば、酸素ガスの発生、並びに、生成した酸素ガスは、漏出することなく、密閉弁13に挿入したガス供給管15を通過して装置本体10外へ排出することができ、この装置本体10外の、例えば、メンタルヘルスケア用、医療現場用、災害時などでの酸素ガス発生機構に接続すれば、これらの用途へ酸素ガス発生装置として有用となる。
【0024】
また、上記実施形態のガス発生装置Aにおいて、反応液収容容器31にシーリング部材を取り付けることなく、装置10内に嵌合等により固着せしめ、ガス発生剤収容容器21の外周にシリコーンゴム製等のシーリング部材を取り付けてガス発生剤収容容器21を装置本体10内の下方側に、スライド自在に収容し、ガス発生剤収容容器21の下方に取り付けたコイルスプリングなどの弾性部材の弾性力により常時上方側に附勢し、ガス発生剤収容容器21と反応液収容容器31とを接続し、下部多孔体26,上部多孔体36を上記弾性部材の弾性力により毛管連結した構成として、上記ガス発生装置Aと同様の作用機構としてもよいものである。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により、更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
下記作製法により、ガス発生装置を得た後、その水素発生量を評価した。
(装置本体の作製)
外寸法:φ16×15mm
内寸法:φ14×11mm
材質:塩化ビニル樹脂製
(蓋本体)
寸法:φ14×5mm
材質:塩化ビニル製
(密閉弁)
寸法:長径5mm×短径4mm
材質:ブチルゴム製
(取り付け部材)
寸法:φ4×2mm
材質:塩化ビニル製
(ガス供給管)
寸法:外径φ1×15mm、内径φ0.7×15mm
材質:ステンレス製
【0027】
(ガス発生剤収容容器の作製) 図1〜図3に準拠
ガス発生剤収容容器:外寸法φ16×15mm
内寸法φ14×11mm
材質 塩化ビニル樹脂製
下部及び上部フィルター部材:フッ素樹脂製多孔体(孔径100μm)
:寸法 φ14×1mm 2枚
反応液供給多孔体:寸法 φ4×12mm、PET製繊維収束体、気孔率:50%
ガス発生剤:還元鉄(和光純薬社製) 1g
【0028】
(反応液収容容器の作製) 図1〜図3に準拠
反応液収容容器:外寸法 φ14.5×34mm
内寸法 φ12.5×30mm
材質:塩化ビニル樹脂製
反応液吸蔵体:寸法 φ12×28mm
材質:PET製繊維収束体、気孔率:70%
反応液供給多孔体:寸法 φ3×17.5mm
材質:PET製繊維収束体、気孔率60%
シールリング部材:φ14×1mm 2個
材質:ブチルゴム製
弾性部材:φ12×15mm、0.3N/mm
材質:ステンレス製、7mmに圧縮して装着、装着時押し圧2.1N
反応液:6N塩酸水溶液(和光純薬社製) 2g
【0029】
上記ガス発生装置(水素ガス発生装置)を用いて、25℃の環境下で水素ガスを発生させたところ、0.8リットルの水素ガスを生成することができた。
また、ガス供給管15を取り外して水素ガスの取り出しを停止することで、水素発生器の内圧が上昇し、20kPaに達したところで、反応液収容容器31がスライドし、毛管連結が分断され、水素発生が停止した。停止後の水素ガス発生器の内圧は30kPaであった。
これらの結果より、本実施例のガス発生装置は、簡便な機構により、しかも、電気的、人為的な制御をすることなく、水素ガスが消費されていないときには、水素ガスの生成を自動的に停止させることができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すガス発生装置の概略断面図である。
【図2】ガス発生装置の縦断面図である。
【図3】ガス発生装置の反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器を詳細に説明するための縦断面図である。
【図4】ガス発生装置において、内圧が高まり、反応液収容容器がスライドし、毛管連結が分断された状態を説明するための縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態の他例を示すガス発生装置の概略断面図である。
【図6】図5のガス発生装置において、内圧が高まり、ガス発生剤収容容器がスライドし、毛管連結が分断された状態を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A ガス発生装置
10 装置本体
20 ガス発生剤
21 ガス発生剤収容容器
30 反応液吸蔵体
31 反応液収容容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体のガス発生剤と反応液とを有し、前記ガス発生剤と反応液はそれぞれ別々の収容容器に収容され、それぞれの収容容器が毛管連結することで、ガス発生剤収容容器内に反応液が供給され、ガスを発生するガス発生装置であって、ガスの圧力が高まると、毛管連結が分断されることを特徴とするガス発生装置。
【請求項2】
発生するガスが、水素ガス又は酸素ガスであることを特徴とする請求項1記載のガス発生装置。
【請求項3】
ガス発生剤収容容器と反応液収容容器とに、毛管力を有する多孔体が設けられると共に、それぞれが接触することにより毛管が連結され、反応液が供給されることを特徴とする請求項1又は2記載のガス発生装置。
【請求項4】
ガスの圧力が高まると、反応液収容容器又はガス発生剤収容容器がスライドすることで、多孔体が非接触となり、毛管連結が分断されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のガス発生装置。
【請求項5】
反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器とは弾性部材の弾性力によって、接続されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のガス発生装置。
【請求項6】
反応液収容容器と、ガス発生剤収容容器とは弾性部材の弾性力によって、分断されており、ガスの消費に伴う負圧によって接続されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のガス発生装置。
【請求項7】
多孔体は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体の何れか一つから構成されていることを特徴とする請求項3〜6の何れか一つに記載のガス発生装置。
【請求項8】
反応液は、繊維収束体、フェルト、不織布、焼結体、発泡体、スリット体の何れか一つからなる毛管力を有する反応液吸蔵体に吸蔵されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載のガス発生装置。
【請求項9】
固体のガス発生剤は、下記A群から選ばれる金属又は下記B群から選ばれる触媒から構成されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載のガス発生装置。
A群:鉄、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、水素化ホウ素ナトリウム
B群:二酸化マンガン、白金
【請求項10】
反応液は、水、酸類、アルカリ類、アルコール類、過酸化水素水の少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載のガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−11962(P2009−11962A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178146(P2007−178146)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】