説明

ガス発生装置

【課題】作動時に閉塞部材が飛散することを防止可能なガス発生装置を提供すること。
【解決手段】本発明のガス発生装置10では、閉塞部材11は、ハウジング22内において周縁を外周壁23側に連結させて、ハウジング22の天井壁24に形成される流出孔25を閉塞するように、配設される。閉塞部材11には、スクイブ19の作動時に破断可能とされる薄肉状の破断予定部が、中央から略放射状に延びる線状に形成される。スクイブ19の作動時に、破断予定部が破断して、閉塞部材11における破断予定部間の部位が、扉部として、それぞれ、放射状に開くように構成される。天井壁24における閉塞部材側の面に、燃焼ガスを流出可能な開き角度を確保して、扉部の開き角度を90°未満とするように、開いた扉部を当接させるストッパ部26が、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼時にガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、ハウジング内に収納されてガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成のガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス発生装置としては、元部側にスクイブを収納させて、スクイブから延びるように構成される外周壁と、外周壁の先端側において外周壁を塞ぐ天井壁と、を、備えるスクイブの外周壁と天井壁との間に、ガス発生剤を充填させた構成のものがあった。この従来のガス発生装置では、スクイブと対向して配置される天井壁の略中央に、スクイブの作動時に発生する燃焼ガスを流出可能な流出孔が、形成され、この流出孔は、ハウジング内外の通気を遮断可能な閉塞部材によって閉塞されていた。そして、スクイブの作動時に、この閉塞部材を破断させることにより、流出孔を開口させて、ガス発生剤が燃焼して発生する燃焼ガスを流出させる構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−514145公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のガス発生装置では、スクイブが作動してガス発生剤に点火する際の起爆力が大きいことから、スクイブの作動時に、閉塞部材全体が分離され、飛散する場合が生じていた。そのため、例えば、このガス発生装置を、ハウジングに収納させて、エアバッグの膨張用ガス発生用のインフレーターの作動装置として使用する場合、飛散した閉塞部材が、インフレーターのガス吐出口から、膨張用ガスとともに流出してしまう虞れが生じ、このような閉塞部材が飛散することを極力防止することが望ましい。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時に閉塞部材が飛散することを防止可能なガス発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るガス発生装置は、燃焼時にガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、ハウジング内に収納されてガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされて、
ハウジングが、元部側にスクイブを収納させるとともに、スクイブから延びるように構成される外周壁と、外周壁の先端側において外周壁を塞ぐとともにスクイブと対向して配置される天井壁と、を、備えて、スクイブの先端側となる外周壁と天井壁との間に、ガス発生剤を充填させた構成とされて、
天井壁の略中央に、スクイブの作動時に発生する燃焼ガスを流出可能な流出孔が、形成され、
ハウジング内外の通気を遮断可能として、かつ、スクイブの作動時に破断可能とされる閉塞部材が、流出孔を閉塞するように、配設される構成のガス発生装置であって、
閉塞部材が、薄肉状とされるともに、ハウジング内において、ガス発生剤側と天井壁とを区画するように、周縁を、外周壁側に連結させて構成され、
閉塞部材に、スクイブの作動時に破断可能とされる薄肉状の破断予定部が、中央から略放射状に延びる線状に形成され、
スクイブの作動時に、破断予定部が破断して、閉塞部材における破断予定部間の部位が、扉部として、それぞれ、外周壁近傍となる部位付近を中心として、放射状に開くように構成され、
天井壁における閉塞部材側の面に、燃焼ガスを流出可能な開き角度を確保して、扉部の開き角度を90°未満とするように、開いた扉部を当接させて扉部の開きを規制するストッパ部が、形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明のガス発生装置では、閉塞部材に設けられる扉部の開き時の先端側に配置されるハウジングの天井壁に、扉部の開き角度を90°未満とするように、扉部の開きを規制するストッパ部が、形成されていることから、スクイブの作動時に、閉塞部材に設けられた扉部が、着火時の起爆力を受けて開くこととなっても、90°未満の開き角度でしか開かない。そして、開き角度が90°未満では、遠心力を抑制できて、開き時の中心である外周壁近傍となる部位付近に応力が集中しがたいことから、扉部が外周壁側から分離することを防止できる。そのため、本発明のガス発生装置では、開いた扉部が外周壁側から分離して飛散することを的確に防止でき、ガス発生剤の燃焼時に発生する燃焼ガスに伴って流出孔から流出することを防止できる。また、本発明のガス発生装置では、閉塞部材に設けられた扉部は、燃焼ガスを流出可能な開き角度を確保して開く構成とされている。換言すれば、本発明のガス発生装置では、ハウジングの天井壁に設けられたストッパ部は、扉部の過度の開きを防止するものの、燃焼ガスの流出に必要な扉部の開き動作を妨げないことから、スクイブの作動時に、燃焼ガスを、流出孔から迅速に流出させることができる。
【0007】
したがって、本発明のガス発生装置では、作動時に閉塞部材が飛散することを防止することができる。
【0008】
そして、このようなガス発生装置は、内部にエアバッグを膨張させるための膨張用ガス発生用の加圧ガスを充填させるとともに、破裂板により閉塞されたガス吐出口を備えるケース部と、
ケース部に溶接されて、作動時に、破裂板を破裂させることにより、ケース部内に充填された加圧ガスをガス吐出口から吐出可能とされる作動装置と、
を有した構成のハイブリッドタイプのインフレーターの作動装置に使用することが好ましい。
【0009】
インフレーターの作動装置に使用する場合、扉部の飛散が防止できることから、閉塞部材の扉部の破片が、インフレーターのガス吐出口から吐出される膨張用ガスに伴って、エアバッグ内へ流出することも防止できる。そのため、従来インフレーターに必要とされていたガス吐出口近傍に設けられるフィルタを省略することができて、インフレーターを軽量化することができる。また、ガス吐出口の開口面積も大きく設定することが可能となって、インフレーターの出力特性を容易に変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグに膨脹用ガスを供給するインフレーター1の作動装置10として使用されているガス発生装置を、例に採り、説明する。実施形態のインフレーター1は、図1に示すように、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされるもので、後述するガス吐出口5側に、図示しないエアバッグ内に膨脹用ガスを流出可能なディフューザー29を連結させて使用されるものである。実施形態の場合、インフレーター1は、略円筒状のケース部3の一端側に、ガス吐出口5を備えた口金部4を配設させ、他端側に、ガス発生装置としての作動装置10を配設させた構成とされている。
【0011】
ケース部3は、鋼製の金属パイプから形成されるもので、軸方向の両端側を開口された略円筒状として、軸方向に沿った両端側を、それぞれ、口金部4及び作動装置10により閉塞されて、内部に、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、または、それらの混合ガス等からなる加圧ガスを充填させた構成とされている。
【0012】
口金部4は、鋼等の金属材料から形成されるもので、図1に示すように、ケース部3の一端側を閉塞するように配設されて、元部4a側の周縁を溶接されてケース部3に固定されるとともに、先端4b側に、複数のガス吐出口5を備える構成とされている。実施形態の場合、口金部4は、先端4b側の部位を、元部4a側の部位よりも小径として、ガス吐出口5を、先端4b側において、略円筒状の外周面の周方向に沿った全域にわたって多数配設させた構成とされている。また、実施形態では、ディフューザー29は、口金部4における元部4a側の部位に、周方向に沿った全域にわたって形成される凹溝部6に、元部側をかしめることにより、インフレーター1に連結されている。
【0013】
また、口金部4の元部4a側には、口金部4とケース部3とを区画してガス吐出口5を塞ぐように、破裂板7が、配設されている(図1参照)。この破裂板7は、作動装置10の後述するスクイブ19が点火されて発生した火炎により、作動装置10の後述するカップ部11内に充填されたガス発生剤17が燃焼して発生した燃焼ガスGがケース部3内に流出されて、ケース部3内の内圧が上昇した際に、破裂して、口金部4をケース部3に連通させ、ガス吐出口5から膨張用ガスが吐出されることとなる。
【0014】
ガス発生装置としての作動装置10は、図2に示すように、燃焼時にガスを発生するガス発生剤17を内部に充填させたハウジング22と、ハウジング22内に収納されてガス発生剤17に点火可能とされるスクイブ19と、ハウジング22内外の通気を遮断可能とされる閉塞部材としてのカップ部11と、を備えて構成されている。
【0015】
スクイブ19は、ハウジング22におけるケース部3から離れた元部側において、元部側に形成されるターミナル19aをハウジング22外へ露出させるように、所定箇所をハウジング22における後述する外周壁23に連結固定させるようにして、ハウジング22内に収納されるもので、このターミナル19aを、図示しないリード線に結線させる構成とされている。スクイブ19は、図2に示すように、ターミナル19aの先端側に、ハウジング22に取り付けられる略円板状のフランジ部19bと、フランジ部19bより小径とされてフランジ部19bから先端側に突出するように構成される点火部19cと、を配設させた構成とされている。そして、スクイブ19は、インフレーター1をエアバッグ装置として車両に搭載させた際に、リード線を介して、車両の制御装置に電気的に接続されることとなり、制御装置からの作動信号を受けて、点火部19cから火炎を発生させるように作動して、カップ部11内に充填されたガス発生剤17を燃焼させる構成とされている。
【0016】
閉塞部材としてのカップ部11は、ハウジング22の内外の通気(流出孔25外とガス発生剤17及びスクイブ19を収納させているハウジング22の内部との通気)を遮断して、流出孔25を閉塞するように、構成されている。換言すれば、カップ部11は、ハウジング22内部を略全域にわたって覆うように構成されるもので、スクイブ19から延びるように構成されてハウジング22における外周壁23の内周側を略全面にわたって覆う略円筒状の周壁部12と、スクイブ19に対向して周壁部12の先端側(ケース部3側)を塞ぐように構成される略円板状の先端壁部13と、を備える構成とされている。カップ部11は、アルミニウム合金等の金属製とされており、周壁部12の元部側を、スクイブ19のフランジ部19bに連結させるようにして、スクイブ19と一体化されるもので、実施形態の場合、スクイブ19を介して、ハウジング22の外周壁23側に連結されている。実施形態の場合、カップ部11は、周壁部12の外径寸法D1(図3参照)を、スクイブ19における点火部19cを挿入可能に、点火部19cの外径寸法D2より若干大径として、かつ、スクイブ19におけるフランジ部19bの外径寸法D3より小径とするように、構成されている(図2参照)。
【0017】
カップ部11の先端壁部13には、スクイブ19の作動時に破断可能とされる薄肉状の破断予定部14が、先端壁部13の中央から略放射状に延びる線状に形成されている。実施形態の場合、破断予定部14は、先端壁部13に、内面側から、先端壁部13の肉厚の1/2程度の深さの切り込みを連続的に設けるようにして構成されるもので(図3参照)、図4に示すように、先端壁部13の中央から放射状に延びるように、複数箇所(実施形態の場合、6箇所)に、形成されている。さらに詳細には、破断予定部14は、先端壁部13を分断するように形成されるものではなく、端部を先端壁部13の外周縁より若干内側に位置させるようにして、構成されている。そして、この先端壁部13における破断予定部14間の部位が、スクイブ19の作動時において破断予定部14が破断された際に、扉部15として、それぞれ、周壁部12との境界部位付近(ハウジング22の外周壁23近傍部位)を中心として、放射状に開くこととなる。すなわち、実施形態の場合、扉部15は、略三角形状として、6枚形成され、図3,4の二点鎖線に示すように、それぞれ、ハウジング22の外周壁23近傍(周壁部12との境界部位付近)となる外周縁13a近傍部位(元部15b側)を中心として、先端壁部13の中央付近となる先端15a側をケース部3側に向けるように、開く構成とされている。なお、実施形態の場合、扉部15は、開き時に、先端15a側を流出孔25内に挿通させるようにして、開くこととなる(図5参照)。
【0018】
ガス発生剤17は、燃焼時に燃焼ガスGを発生可能な所定の薬剤を、所定形状に成形して、構成されるもので、実施形態の場合、略球状とされて、カップ部11内におけるカップ部11とスクイブ19との間の隙間(換言すれば、ハウジング22におけるスクイブ19の先端側となる外周壁23と天井壁24との間の隙間)に充填されている(図2参照)。
【0019】
ハウジング22は、実施形態の場合、鋼等の金属材料から形成されるもので、内部にカップ部11及びスクイブ19を収納させて構成されるとともに、ケース部3の他端側を閉塞するように、配設されている。ハウジング22は、略円筒状とされるもので、カップ部11とスクイブ19との周方向に沿った外周側を全周にわたって覆う円筒状の外周壁23と、外周壁23の先端23a側(ケース部3側)においてカップ部11の先端壁部13の外周側を覆う略円板状の天井壁24と、を備える構成とされている。外周壁23は、元部23b側において、スクイブ19のフランジ部19bを連結させて構成されるとともに、スクイブ19のターミナル19aを露出可能に、ケース部3から離れた元部端を開口させて構成されている。換言すれば、ハウジング22の外周壁23は、元部23b側に配置されるスクイブ19から延びるように構成されている。また、天井壁24は、外周壁23を塞ぐとともにスクイブ19と対向して配置されている。外周壁23は、内径寸法D4(図2参照)を、カップ部11における周壁部12を挿通可能に、周壁部12の外径寸法D1より若干大きくして、構成されている。換言すれば、外周壁23は、周壁部12との間にほとんど隙間を設けないようにして、周壁部12の外周側を覆っている構成である。
【0020】
スクイブ19と対向して配置される天井壁24の略中央には、スクイブ19の作動時に発生する燃焼ガスGをケース部3側に向かって流出可能な流出孔25が、形成されている。実施形態の場合、流出孔25は、天井壁24の中央の1箇所に形成され、内径寸法D5(図2参照)を、外周壁23の内径寸法D4の1/3程度として、構成されている。また、天井壁24における先端壁部13側の面(元部側面24a)には、スクイブ19の作動時における各扉部15の開き角度を90°未満とするように、開いた扉部15を当接させて扉部15の開きを規制するストッパ部26が、形成されている。実施形態の場合、天井壁24の元部側面24aは、外周縁24b側をカップ部11における先端壁部13の外周縁13a近傍に位置させ、流出孔25周縁にかけてへこませるように、略すり鉢状に傾斜させた傾斜面24cを有した構成とされている。そして、開いた扉部15は、それぞれ、開き時にこの傾斜面24cに当たることとなって、それ以上の開きを抑えられることとなり、この傾斜面24cが、ストッパ部26を構成している。実施形態の場合、傾斜面24cは、カップ部11における先端壁部13(カップ部11の軸直交方向)に対する傾斜角度α(図2参照)を、45°に設定されている。傾斜面24cの外周縁24bは、扉部15の開き時の中心となる先端壁部13の外周縁13a近傍に位置していることから、扉部15の開き角度は、傾斜面24cの傾斜角度と略一致することとなり、実施形態の場合、扉部15は、略45°の開き角度で、開くこととなる。また、実施形態の場合、流出孔25と傾斜面24cとの境界部位は、開いた扉部15の先端15c付近が当たった際に、扉部15を傷付けることを防止可能に、R形状(弧面状)に面取りされている(図2参照)。
【0021】
また、ハウジング22における流出孔25周縁には、作動装置10とケース部3とを区画するように、破裂板27が、配設されている(図1,2参照)。この破裂板27は、スクイブ19の作動時において、カップ部11の扉部15が開く際に、略同時に、破裂して、作動装置10とケース部3とを連通させ、ガス発生剤17の燃焼により発生した燃焼ガスGを、ケース部3内に流出させることとなる。
【0022】
実施形態のインフレーター1では、エアバッグ装置として車両に搭載した状態において、作動装置10のスクイブ19に、図示しないリード線を介して作動信号が入力されると、スクイブ19が点火され、カップ部11内に充填されたガス発生剤17が燃焼して、燃焼ガスGが発生することとなる。また、スクイブ19の作動時に、閉塞部材としてのカップ部11の先端壁部13に形成された破断予定部14が破断されて、扉部15が、図4に示すように、開くこととなる。そして、ガス発生剤17の燃焼により発生した燃焼ガスGが開いた扉部15間の隙間から、流出孔25を経て、ケース部3内に流出し、ケース部3内の内圧を上昇させて、破裂板7を破裂させ、ガス発生剤17が燃焼して発生した燃焼ガスGと、ケース部3内に充填されている加圧ガスと、が、膨張用ガスとして、口金部4のガス吐出口5からエアバッグ内に吐出されることとなる。
【0023】
そして、実施形態のインフレーター1に用いられる作動装置(ガス発生装置)10では、閉塞部材としてのカップ部11の外周側を覆うハウジング22の天井壁24に、扉部15の開き角度を90°未満とするように、扉部15の開きを規制するストッパ部26が、形成されていることから、スクイブ19の作動時に、扉部15が、着火時の起爆力を受けて開くこととなっても、90°未満の開き角度でしか開かない。そして、開き角度が90°未満では、遠心力を抑制できて、開き時の中心である扉部15と周壁部12との境界部位付近(先端壁部13の外周縁13a付近であって、外周壁23近傍の部位)に応力が集中しがたいことから、扉部15が周壁部12に対して分離することを防止できる。そのため、実施形態のインフレーター1の作動装置(ガス発生装置)10では、開いた扉部15が周壁部12から分離して飛散することを的確に防止でき、ガス発生剤17の燃焼時に発生する燃焼ガスGに伴って流出孔25から流出することを防止できる。また、実施形態のインフレーター1の作動装置(ガス発生装置)10では、扉部15は、燃焼ガスGを流出可能な開き角度を確保して開く構成とされている。換言すれば、実施形態のインフレーター1の作動装置(ガス発生装置)10では、ハウジング22の天井壁24に設けられたストッパ部26は、扉部15の過度の開きを防止するものの、燃焼ガスGの流出に必要な扉部15の開き動作を妨げないことから、スクイブ19の作動時に、燃焼ガスGを、流出孔25から迅速に流出させることができる。
【0024】
ちなみに、扉部15が90°以上の開き角度で開く場合、開き時の中心である扉部15と周壁部12との境界部位付近に、遠心力が大きく作用して、応力集中が生じ、扉部15の元部15b近傍において、破断予定部の元部端から切れ目が伝播して、扉部15全体が、周壁部12から分離するような態様となる。
【0025】
したがって、実施形態のインフレーター1の作動装置(ガス発生装置)10では、作動時に閉塞部材としてのカップ部11の扉部15が飛散することを防止することができる。
【0026】
なお、実施形態のインフレーター1の作動装置10では、カップ部11の先端壁部13に、6本の破断予定部14が配置されて、6枚の扉部15が開く構成であるが、破断予定部及び扉部の配置数はこれに限られるものではなく、破断予定部を、相互に交差させるように、少なくとも2本形成して、扉部を2枚以上配置させる構成とすればよい。なお、開き時における燃焼ガスの流出を考慮すれば、開き角度が小さくとも円滑に燃焼ガスを流出可能なように、破断予定部を4本以上形成して、扉部を4枚以上配置させるように、構成することが好ましい。
【0027】
また、実施形態のインフレーター1の作動装置10では、ストッパ部26が、天井壁24の元部側面24aを、外周縁24bをカップ部11における先端壁部13の外周縁13a近傍(扉部15の開きの中心の近傍)に位置させ、流出孔25周縁にかけてへこませるように略すり鉢状に傾斜させた傾斜面24cから、構成されているが、ストッパ部の外形形状は、これに限られるものではない。例えば、図6に示すように、ストッパ部26Aとして、天井壁24Aの元部側面24aを、外周縁から流出孔25A周縁にかけて断面略円弧状に凹むように湾曲させて、形成したハウジング22Aを使用してもよく、また、逆に、図7に示すように、ストッパ部26Bとして、天井壁24Bの元部側面24aを、断面略円弧状にスクイブ19側に向かって突出させるように湾曲させて、形成したハウジング22Bを使用してもよい。さらには、天井壁における元部側面の外周縁も、実施形態のごとく、扉部の開きの中心の近傍に配置させなくともよく、天井壁における元部側面の外周縁を、扉部の開きの中心から離れた位置に配置させ、元部側面にストッパ部を形成してもよい。天井壁をこのような構成とする場合、扉部における開きの中心近傍となる元部側の部位は、90°の開き角度で開くこととなるが、扉部における開きの先端部位が、ストッパ部に当たって、開きを規制されることとから、扉部全体が、90°以上の開き角度で開くことを防止できる。そのため、扉部に作用する遠心力を抑制できて、扉部が周壁部に対して分離することを防止できる。
【0028】
そして、実施形態のインフレーター1では、スクイブ19の作動時に、カップ部11における扉部15の飛散が防止できることから、扉部15の破片が、インフレーター1のガス吐出口5から吐出される膨張用ガスに伴って、エアバッグ内へ流出することも防止できる。そのため、実施形態のインフレーター1では、従来インフレーターに必要とされていたガス吐出口5近傍に設けられるフィルタを省略することができる。また、ガス吐出口5の開口面積も大きく設定することが可能となって、インフレーター1の出力特性を容易に変更することが可能となる。
【0029】
なお、実施形態では、閉塞部材として、ハウジング22の内周側を略全域にわたって覆うとともに内部にガス発生剤17を充填させたカップ部11を使用しているが、閉塞部材はこれに限られるものではなく、ハウジング内に直接ガス発生剤を充填させ、ガス発生剤と天井壁との間に薄肉板状として扉部を有した閉塞部材を、配設させる構成としてもよい。
【0030】
また、実施形態では、ガス発生装置として、ハイブリッドタイプのインフレーターの作動装置として使用されるものを例に採り説明したが、例えば、マイクロガスジェネレータ等に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態であるガス発生装置を使用したインフレーターの概略断面図である。
【図2】図1のインフレーターにおける作動装置(ガス発生装置)の部位付近を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1のインフレーターにおけるカップ部の先端壁部の部位付近を示す部分拡大断面図である。
【図4】図1のインフレーターにおけるカップ部の先端壁部の部位を示す概略斜視図である。
【図5】図1のインフレーターにおけるスクイブの作動時を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態であるインフレーターの作動装置の部位付近を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態であるインフレーターの作動装置の部位付近を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…インフレーター、
3…ケース部、
5…ガス吐出口、
7…破裂板、
10…作動装置(ガス発生装置)、
11…カップ部(閉塞部材)、
12…周壁部、
13…先端壁部、
14…破断予定部、
15…扉部、
17…ガス発生剤、
19…スクイブ、
22…ハウジング、
23…外周壁、
24…天井壁、
24a…元部側面、
25…流出孔、
26…ストッパ部、
G…燃焼ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼時にガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、該ハウジング内に収納されて前記ガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされて、
前記ハウジングが、元部側に前記スクイブを収納させるとともに、前記スクイブから延びるように構成される外周壁と、該外周壁の先端側において前記外周壁を塞ぐとともに前記スクイブと対向して配置される天井壁と、を、備えて、前記スクイブの先端側となる前記外周壁と前記天井壁との間に、前記ガス発生剤を充填させた構成とされて、
前記天井壁の略中央に、前記スクイブの作動時に発生する燃焼ガスを流出可能な流出孔が、形成され、
前記ハウジング内外の通気を遮断可能として、かつ、前記スクイブの作動時に破断可能とされる閉塞部材が、前記流出孔を閉塞するように、配設される構成のガス発生装置であって、
前記閉塞部材が、薄肉状とされるともに、前記ハウジング内において、前記ガス発生剤側と前記天井壁とを区画するように、周縁を、前記外周壁側に連結させて構成され、
前記閉塞部材に、前記スクイブの作動時に破断可能とされる薄肉状の破断予定部が、中央から略放射状に延びる線状に形成され、
前記スクイブの作動時に、前記破断予定部が破断して、前記閉塞部材における前記破断予定部間の部位が、扉部として、それぞれ、前記外周壁近傍となる部位付近を中心として、放射状に開くように構成され、
前記天井壁における前記閉塞部材側の面に、燃焼ガスを流出可能な開き角度を確保して、前記扉部の開き角度を90°未満とするように、開いた前記扉部を当接させて前記扉部の開きを規制するストッパ部が、形成されていることを特徴とするガス発生装置。
【請求項2】
内部にエアバッグを膨張させるための膨張用ガス発生用の加圧ガスを充填させるとともに、破裂板により閉塞されたガス吐出口を備えるケース部と、
該ケース部に溶接されて、作動時に、前記破裂板を破裂させることにより、前記ケース部内に充填された加圧ガスを前記ガス吐出口から吐出可能とされる作動装置と、
を有した構成のハイブリッドタイプのインフレーターの前記作動装置に、使用されることを特徴とする請求項1に記載のガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76582(P2010−76582A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246697(P2008−246697)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】